恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2008年11月

DATE

  • このページのトップへ

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カテゴリー:スポンサー広告

いつか王子様が (5)


「あの……これ、飲む…?」

 口直しにどうぞ、て俺は自分のお茶を開けて、祐人のほうに差し出した。自分のっていってもまぁ、もとは祐人が買ったヤツだけど。
 祐人は無言でそれを受け取ると、これもまた一気にグィーって飲んで、缶を俺のほうに返してきた。
 あ、半分以上飲んでる…。
 何? ヤケ酒みたいなもん?

「タツミー」
「んー?」
「やっぱ、ホモはダメかなぁ?」
「何、急に」
「ダメ?」
「…ダメかどうかは知らないけど、好きになっちまうのはしょうがないんじゃね?」
「そっかぁ」

 俺は、残りのお茶を飲み干して。
 祐人の持ってたしるこの缶と一緒に、自販機のとこのゴミ箱に捨てた。

「あーあ、タツミがホモだったら、俺、惚れてたのになぁ」

 ……………………。

「おいっ!」

 何言ってんだ!
 今、もしお茶飲んでたら、絶対吹き出してたわ!

「冗談じゃん、ノリの悪いヤツだなぁ、タツミ」
「タチ悪い」
「あはは」

 何のんきに笑ってんだ。
 祐人の冗談なんか、ホントおもしろくない。

「いつかめっちゃかっこいい彼氏作るの。そしたらもうタツミと一緒になんか帰らないの。その人と一緒に帰るんだから」
「そうだな。そしたら俺もかわいい彼女作って、その子と帰るわ」
「タツミが寂しがったって、絶対一緒に帰ってやらない」
「俺だって」
「うー…」

 祐人が、何かすごい悔しそうに俺のほうを見る。
 寂しがるのは、祐人のほうだろ? 毎日毎日、飽きもせずに俺のとこ駆け寄ってきてたくせに。
 もしホントに俺が彼女作ったら、どうすんの? 俺らの間に割り込んで、『かっこいい人見つけた!』って報告しに来る気?

「……絶対、寂しがらないもん…」

 そう言って祐人は、むぅっと、アヒルみたいに唇を突き出す。

「祐人が寂しがるといけないから、祐人に彼氏が出来るまでは一緒に帰ってやるよ」
「そんなの、こっちのセリフだし!」

 そうムキになって言い返してきて。
 絶対、絶対、ぜーったい、タツミより先に彼氏作ってやる! てしょうもない決意を固める祐人。


 あぁ、どうせまた明日には、『めっちゃかっこいい人、見つけた!』て、祐人は、玉砕覚悟の恋を報告しに来るんだろう。




 でもそんな毎日を、不思議と嫌だと思わない自分のこんな感情には、まだ、気付かない振り。






*END*
関連記事

カテゴリー:読み切り短編
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

メインカプに質問祭り 将来の夢編


 ――――さぁ、どんどん参りましょう! メインカプに質問祭り!!! 第2問、行きますよ~!

真琴「まだ続くんだ…」


 ――――あなたの将来の夢を教えてください! まずは慶太くんから。

慶太「え、俺から!? え、えっと、ちゃんと卒業して、就職する…?」
智紀「…ホンット、普通だな、お前の答え」
慶太「すいません…」


 ――――続いてマコちゃんですが、いかがですか?

真琴「えっとー、はーちゃんのお嫁さんになること! で、かわいい赤ちゃんを産む!」
遥斗「えっ!? 赤ちゃ…!? いや、あの、」
真琴「…え、イヤ…?」
遥斗「いや、そうじゃなくて! 結婚はともかくとして、赤ちゃんは、だって男同士だし! あの、えっと! (アタフタ)」


 ――――(日本で、男同士の結婚て出来たかな…?) 最後に悠也さんですが…。

悠也「えー…総合格闘家になって、PRIDE優勝」
拓海「悠ちゃん…。だから、何でそういうどうでもいい嘘つくの…?」


 ――――いやぁ、みなさん色んな夢をもってますね~。うんうん、若いっていいなぁ! では次回もお楽しみに!


智紀「何だこのまとめ方…」





 何となく夜中にアップ。意味はないです、思い付いたんで。


にほんブログ村 トラコミュ BL妄想劇場へBL妄想劇場 ←参加しました。素敵な妄想いっぱい。
関連記事

カテゴリー:質問+小ネタ
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

メインカプに質問祭り Hの場所編 (前編)


*内容が内容なだけに、念のため、R15てことでお願いします。
 ――――メインカプに質問祭り! 第3問は……

悠也「もう飽きた」
真琴「同じくー」
慶太「まぁまぁ」


 ――――今までにやったことのある、Hの場所は!?

慶太「ブッ!!」
悠也「おぉ~!!」
真琴「ちょっと楽しくなってきた!!!」
慶太「(何で!?)」


 ――――まずは家の中……ベッド以外でやったことのある場所は、どこかありますか?

真琴「えっとー…」
悠也「お前、何かそういうの好きそうだよな。ベッド以外とか」
真琴「何それー。ちゃんとベッドでやるのも好きだよ?」
慶太「(帰りたい…)」

悠也「…………お前は?」
慶太「えっ!?」
悠也「聞きたい。何かいっつもあんま答えないし」
慶太「(ひぃ~~~、何か目が怖いっ…!!)」
真琴「俺も聞きたい、聞きたい! 教えて、ケータ!」

 ――――どこですか!? 慶太くん!

慶太「……え、ベッド以外って……いや、えっと…ソ…ソファとか…」
悠也「ソファかー、俺、ソファあんまり好きじゃないなぁ」
真琴「何で?」
悠也「狭いから」
真琴「いいじゃん、何かギュッとくっ付いてられて」
悠也「落ちる。つーか、落ちた」
真琴「マジで!?」
悠也「で、頭来て、拓海のこと蹴っ飛ばした」
真琴「ひでぇ…。何も蹴らなくたって…。ねぇ慶太?」
慶太「でも…1回、家の人いないからって、玄関でやられそうになったときは、思わず蹴っちゃったけど…」
悠也「だよなー」
真琴「えー…」

 ――――マコちゃん的に、玄関はOKなんですか?

真琴「したことはないけどー…、でも何かそんなとこで求められるって、相当じゃない!? 何か燃えそう!」
悠也「ヤダ」
真琴「何でー?」
悠也「大体、床とかヤダもん。体痛ぇ」
真琴「そっかー」

 ――――他に、家の中で、ありますか?

真琴「んー…お風呂とか」
悠也「あぁ、風呂はある。でも狭いからなぁ。お前は?」
慶太「え、いや…ないですけど…」
真琴「一緒にお風呂入っても、エッチしないの?」
慶太「え、だって風呂自体、一緒に入ったことないし…」
悠&真「「マジでっ!?」
慶太「(こ…怖い…)」


 ――――あ、そろそろ時間になったみたいですが…

真琴「えー、もう!?」
慶太「(ホッ…)」


 ――――では、続きは次回で。お楽しみに!!!

慶太「えぇ!? (続くの!?)」





 長くなりそうなので、続きはまた。


にほんブログ村 トラコミュ BL妄想劇場へBL妄想劇場 ←参加しました。素敵な妄想いっぱい。
関連記事

カテゴリー:質問+小ネタ
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

メインカプに質問祭り Hの場所編 (後編)


*内容が内容なだけに、念のため、R15てことでお願いします。
 ――――さぁ、どんどん参りましょう、メインカプに質問祭り! 「今までにやったことのある、Hの場所は!?」の後編です! 家以外の場所では、どこがありますか? ラブホとか、行きますか?

真琴「お互いの家じゃなかったら、大体ラブホ。慶太、行く?」
慶太「え、あ…うん」
悠也「おぉー、行くんだ?」
慶太「何の驚きですか?」
悠也「何か行こうってなったら、恥ずかしいからヤダ!! とか言って、拒否りそう」
慶太「でもお互い実家暮らしだから、家でやるよりはまだそのほうが…」
悠也「あー…確かに。でも男同士で入るのって、何かヒヤヒヤしない? 俺、拓海とは1回しか行ったことない」
真琴「ガレージインのとことか。だったら誰にも会わなくていいよ?」
悠也「車がねぇー! 俺、昔乗ってたけど、今は超ペーパーだし! やっぱ家でいいや」


 ――――では、ラブホ以外にはありますか? えっと、ちなみに車とか。(←マコちゃんの方に視線)

真琴「何で俺見てんの? 俺、車でしたことないよ。だって俺、車持ってないし。はーちゃんは車あるけど、家まで我慢しなさいって言うし…」
慶太「(それが普通だよ…)」
悠也「俺、車はある」
真琴「えっ、あるの!? だって車持ってないんでしょ?」
悠也「拓海とはない。昔付き合ってた女の子と」 
真琴「すっごい!!」
悠也「すごくはない、普通」
慶太「(普通…?)」


 ――――え、えっと、では、学校とか…

悠也「学校はないな。だって俺、高校は男子校だったし」
真琴「??? それで何でないの?」
悠也「お前と違って、そのころは女の子が好きだったの!」
真琴「あ、そっか。カッコいい人いた?」
悠也「だから知らねぇって!」

 ――――マコちゃんはどうですか? 学校。

真琴「あー…はい、あります…」
悠也「やっぱり」
真琴「でも高校のころだよ? 今の学校じゃないよ!」
悠也「相手、男?」
真琴「うん」


 ――――ちなみに今は、ネットカフェとかでやる人もいるらしいですよ。

真琴「えー…俺、そういうマニアックな場所ではちょっと…」
慶太「お前が言うなよ」
悠也「夜中、カップルシートとか、すごいよ」
真琴「何で知ってんの?」
悠也「だって行くとやってるもん」
慶太「……覗いてるんすか?」
悠也「いかにも終わった後って感じのカップルが出てきたとこに、3回くらい遭遇したことある」
真琴「すごい確率…」


 ――――ま…まぁみなさん、節度を持って、ほどほどに楽しんでもらえれば…。

真琴「だよねー」
悠也「TPOとか」
真琴「うんうん」

慶太「(この2人にだけは言われたくない…)」


 ――――では、メインカプに質問祭り、次回をお楽しみに!!





 いったい私は何を書いているのだろう…。


にほんブログ村 トラコミュ BL妄想劇場へBL妄想劇場 ←参加しました。素敵な妄想いっぱい。
関連記事

カテゴリー:質問+小ネタ
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

君といる十二か月 (tittle:as far as I knowさま)


↑OLD ↓NEW

【ファーストシーズン :: 君といる十二か月】
 四月 きっとなにかがはじまる
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 五月 水面には君という波紋
  (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 六月 隣の君は肩を濡らして
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 七月 嫌がらせの至近距離
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)
 八月 瑠璃色の夕べに君はいない
  (1) (2) (3) (4) (5)
 九月 じりじりと焦がれる初秋
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 十月 猶予はあとどれくらい
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 十一月 蹲る身体を貫き去る風
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 十二月 滲む涙も君との聖夜
   (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13)
 一月 かじかむ指とそまる頬
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 二月 原点はチョコレートじゃない
  (1) (2) (3) (4) (5)
 三月 続く日々も君とありたい
  (1) (2) (3)

【セカンドシーズン :: 恋するカレンダー12題】

【シーズン番外編 :: Baby Baby Baby Love】
関連記事

カテゴリー:君といる十二か月

四月 きっとなにかがはじまる (1)


 いくら2流、3流だとしても、大学にさえ受かってしまえば、こっちのものだ。とりあえずは、人生の猶予期間ってことで、4年間は自由の身である。

 そしてこの春、めでたくも同じ大学に合格したのは、小学校からの腐れ縁、秋月亮(アキヅキ リョウ)・九条和衣(クジョウ カズイ)・山口翔真(ヤマグチ ショウマ)の3人。
 小中学校は校区が同じだから仕方ないにしても、高校まで一緒だって知ったときには、さすがに笑った。でもそれにしたって、大学まで同じだなんて、腐れ縁もここまで来ると笑うに笑えない。

「しょうがないじゃん、結局頭のレベルが同じなんだから」

 ファーストフード店の窓際の席。
 バニラシェイクを飲みながらそう言ったのは、和衣。
 隣の翔真も無言で『ウンウン』と頷いているが、向かい側の亮だけは、まだ現実を直視できないような顔でチーズバーガーに齧(かぶ)り付いた。

「そんなに嫌なら、別んとこ行きゃー良かったのに」
「ショウちゃん、それを言ったら、ここしか受かんなかった亮がかわいそうだよ」
「あぁー……じゃあ、俺たちが受かった別の大学に入学すれば良かったかなぁ?」
「うるせぇよ!」

 亮抜きに勝手なことを言っている隣の2人に、とりあえず突っ込んでおく。
 そうは言っても、別に今さら浪人までして他の大学を受け直すつもりもないし、2人に、一緒は嫌だから他の大学に入学してくれなんて言うつもりもない。

 高校生活最後の春休みを、相も変らぬ3人で過ごしている時点で、何となく離れられないような運命を感じてみたり。

「―――あ、あの子、かわいい」

 亮のトレイからポテトを1本失敬した翔真が、窓ガラスの向こうを指差した。

「どれどれ?」

 すぐに興味を示す亮と和衣。

「あの、ニットのロングカーデの子」
「白の?」
「そうそう」

 言われて視線を向ければ、ガラスの向こう、ミディアムウルフの黒髪の子が携帯電話を掛けている。
 前髪は少し長めで、羽織っている白いニットのロングカーディガンの袖も長めで、指先がちょこんと覗いていて、確かにかわいい。

「待ち合わせかな」

 携帯電話を耳に押し当てたまま、彼女の表情はみるみる曇っていく。何か会話している様子もないまま電話を切っているところを見ると、相手はどうやら電話に出なかったようだ。

「彼氏がデートの待ち合わせに遅刻、ってとこか」

 3人が、ガラス越しの彼女の状況を好き勝手に言っていると、カバンに携帯電話をしまった彼女のもとに、いかにも遊んでいるふうな若い男の2人連れが近付いていった。

「ナンパか?」

 挟むように両脇に立った男たちは、笑いながら、何やら彼女に話しかけている。ただでさえ曇っていた彼女の表情が、ますます険しくなる。

「ナンパされて付いていくに1票」
「断わって逃げるに1票」
「ちょうどいいタイミングで彼氏が助けに来るに1票」

 まさかガラス越しのファーストフード店の店内で、そんなことを話されているとは思ってもみないだろう、彼女は不機嫌そうな顔のまま、男たちに何か言い返している。
 しかしそんなことお構いなしといった感じで、1人が彼女の肩を抱いた。

「おぉ!? やっぱ付いてくか!?」

 勝手に盛り上がる3人。
 しかしその直後に彼女が取った行動は、亮たち3人も、声を掛けた2人連れもまったく予想だにしていないものだった。
関連記事

カテゴリー:君といる十二か月
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

四月 きっとなにかがはじまる (2)


 肩に回された手を勢いよく振り払った彼女は、さすがにムッとした男が無理やり手を引こうとするより先、そのシャツの胸倉を掴み上げたのだ。

「マジ!?」

 相手は男2人だというのに、一向に怯むことのない彼女。そればかりか、最終的には2人のナンパ男は、彼女に頭を下げながらその場を去って行ったのだ。

「すげぇ」
「つーか、怖ぇ…」

 すごいはすごいが、これが自分の彼女だと思うと、確かに怖い。

「あれ? こっち来る」

 2人のナンパ男を撃退した彼女は、不機嫌そうな顔のまま、3人のいるファーストフード店に入ってきた。
 当然、3つの視線は、彼女に釘付け。
 街中で男の胸倉を掴み上げる女の子なんて、ちょっと興味ある。でも声でも掛けた日には、先ほどの2人の二の舞を演じかねないだろう。

 彼女は何も注文しないまま、亮たちの隣のテーブル席に座った。
 3人が顔を見合わせてから、好奇心の視線を彼女に向けていると、カバンの中の携帯電話が音を立てたのか、彼女は携帯電話を取り出した。
表示された名前を見て顔を顰めたところを見ると、おそらく待ち合わせの相手からなのだろう。

「―――遅いっ!!」

 電話を耳元に持っていって、まずその一声。きっと相手が『もしもし』も言っていないタイミング。

「はぁ? 俺、もうとっくに来てんだけど。は? 聞こえない―――もしかしてまだ駅? 電車乗ってねぇの?」

 予想どおり、電話の相手は、彼女に待ちぼうけを食わせている人物らしい。
 しかしそこで和衣が、ふと気が付いた。

「ねぇ、何か声……男の声っぽくない?」

 そうなのだ。
 電話で話す彼女の声は、"彼女"というにはあまりにも低く、女のそれではない。

「…………オカマ?」

 外見が女で、中身が男、もしくは昔は男だった―――ということなのだろうか。

「でも、自分のこと、"俺"って言ってたけど…」
「??? 男……ってこと?」

 わけが分からない、といったふうに3人が考え込んでいると、ふと、電話を切った彼女―――いや、彼? が3人のほうを見た。
 隣の席から送られてくるあまりに不躾な視線に、自分が見られていることに気が付いたらしい。
 慌てて3人は視線を逸らした。
 何か言われるだろうかと思ったが、女のようで男のような彼は、何も言わずに席を立つ。懲りずに視線を送れば、どうやら何かを注文しに行ったらしい。

「やっぱ男かな?」
「男……か?」
「見た目以外は、男だよね」

 もし彼が本当に男だとすれば、先ほどの2人連れを追っ払ったときの状況も、納得できる。

「何だ、男か。つまんねぇ」

 そう言ってのけたのは、亮だ。
 いくらかわいくても、男に興味はない。

「もし女だったとしても、声掛けたら、さっきの奴らみたいに殴りかかられちゃうよ」
「勘弁してくれ…」

 まったくもって勝手なことを喋り続けている3人。
 もちろんそんなことを知らない彼は、買った飲み物を持って、先ほどと同じ、亮たちの隣のテーブルに戻ってきた。

(黙ってりゃ、女だよな…)

 両手で紙コップを持ってストローを銜えている姿は、間違えて、それこそナンパしてしまうかもしれない、などと思いながら、3人はまた別のくだらない話を興じ始めた。
関連記事

カテゴリー:君といる十二か月
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

四月 きっとなにかがはじまる (3)


 それからどのくらい時間が経ったか、3人がそろそろ帰ろうかと席を立つと、隣のテーブルに人影が増えた。
 ついそちらに視線を向ければ、今度は3人組の若い男。

「またナンパされてる」
「でも、男だろ?」

 女ではないということを知ってしまった3人は、また彼がどんな行動を取るのか気になって、ダストボックスの前で止まって様子を窺った。
 こっそりと聞き耳を立てていると、やはり3人組は彼をナンパしようとしているらしい。
 しかし虫の居所の悪い彼は、ことごとくそれを無視している。反応がないことがおもしろくないのか、男たちの口調が徐々に荒くなっていく。

「あーあ、適当にあしらっちゃえばいいのに」

 口を開けば男だということが分かるのだから、穏便にこの場を去って行ってくれるだろうに。
 けれど彼は、返事を返すのも面倒臭いといった感じで、だんまりを決め込んでいる。

「おい、何か言えよ」

 3人のうちの1人が、彼の肩を掴んで無理やり自分のほうを向けさせた。

「…うるせぇな」

 ビックリするぐらいの、怒りに満ちた低い彼の声。関係ないはずの亮たち3人も、思わず竦み上がりそうだ。

「バカに付き合ってる暇なんかねぇんだよ」

 持っていた紙コップをグシャッと握り潰して、彼は乱暴に立ち上がった。

「何だと、てめぇっ!」

 さすがにこれには男たちもぶち切れて、先ほどとは逆に、男のほうが彼の胸倉を掴み上げた。周囲のお客たちも、ただならぬ雰囲気にざわつき始める。

「何か……まずくね?」

 厄介ごとには出来るだけ係わりたくないが、先ほどから彼のことをおもしろがって見ていた身としては、このまま放っておくのも忍びない。
 3人は目配せした後、徐にそちらに近づき、彼と、揉めている3人の男たちの間に割って入った。

「ゴメンゴメン、遅くなっちゃって」
「何やってんの? こんなとこで」

 待ち合わせに遅れたふりで声を掛けたのは、和衣。白々しい質問は翔真。そして亮は、何気なく男の手を彼の胸元から放す。

「何…」

 あまりにも意外に登場してきた亮たち3人に、男たちも怒気を失ったようにポカンとしている。
 ただ、彼だけはまだムッとした表情のままで。

 3人組の男は、周囲の視線が自分たちに向いていることに気が付いたのか、顔を見合わせた後、すごすごと店を出ていった。
 仲裁に入ろうとそばまで来ていた店員にも、他のお客たちにも安堵の表情が広がった。

「あ、睦月!」

 静まり返った店内に、何とも言えない間抜けなタイミングで声が響いた。
 店員もみんなこちらに注目していたため、3人組の男たちと入れ違いにお客が入ってきたことに気が付かなかったのだ。
 聞こえた声は、そのお客が発したものだった。
関連記事

カテゴリー:君といる十二か月
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

recent entry

recent comments

thank you for coming

category

monthly archive

2037年 01月 【1件】
2017年 01月 【1件】
2016年 11月 【13件】
2016年 10月 【15件】
2016年 09月 【1件】
2016年 08月 【3件】
2016年 07月 【17件】
2016年 06月 【12件】
2016年 05月 【13件】
2016年 04月 【14件】
2016年 03月 【12件】
2016年 02月 【18件】
2016年 01月 【28件】
2015年 12月 【30件】
2015年 11月 【28件】
2015年 10月 【31件】
2015年 09月 【27件】
2015年 08月 【2件】
2015年 07月 【1件】
2015年 06月 【24件】
2015年 05月 【31件】
2015年 04月 【31件】
2015年 03月 【31件】
2015年 02月 【22件】
2015年 01月 【31件】
2014年 12月 【30件】
2014年 11月 【30件】
2014年 10月 【29件】
2014年 09月 【22件】
2014年 08月 【31件】
2014年 07月 【31件】
2014年 06月 【30件】
2014年 05月 【31件】
2014年 04月 【30件】
2014年 03月 【31件】
2014年 02月 【28件】
2014年 01月 【30件】
2013年 12月 【14件】
2013年 11月 【30件】
2013年 10月 【31件】
2013年 09月 【30件】
2013年 08月 【31件】
2013年 07月 【31件】
2013年 06月 【30件】
2013年 05月 【31件】
2013年 04月 【31件】
2013年 03月 【32件】
2013年 02月 【28件】
2013年 01月 【31件】
2012年 12月 【31件】
2012年 11月 【30件】
2012年 10月 【31件】
2012年 09月 【30件】
2012年 08月 【31件】
2012年 07月 【31件】
2012年 06月 【30件】
2012年 05月 【32件】
2012年 04月 【30件】
2012年 03月 【29件】
2012年 02月 【29件】
2012年 01月 【33件】
2011年 12月 【35件】
2011年 11月 【30件】
2011年 10月 【31件】
2011年 09月 【31件】
2011年 08月 【31件】
2011年 07月 【31件】
2011年 06月 【31件】
2011年 05月 【34件】
2011年 04月 【30件】
2011年 03月 【31件】
2011年 02月 【28件】
2011年 01月 【31件】
2010年 12月 【31件】
2010年 11月 【30件】
2010年 10月 【31件】
2010年 09月 【30件】
2010年 08月 【32件】
2010年 07月 【31件】
2010年 06月 【31件】
2010年 05月 【32件】
2010年 04月 【30件】
2010年 03月 【31件】
2010年 02月 【28件】
2010年 01月 【32件】
2009年 12月 【32件】
2009年 11月 【31件】
2009年 10月 【34件】
2009年 09月 【32件】
2009年 08月 【31件】
2009年 07月 【34件】
2009年 06月 【30件】
2009年 05月 【32件】
2009年 04月 【31件】
2009年 03月 【32件】
2009年 02月 【28件】
2009年 01月 【32件】
2008年 12月 【40件】
2008年 11月 【38件】
2008年 10月 【37件】
2008年 09月 【32件】
2008年 08月 【33件】
2008年 07月 【32件】
2008年 06月 【31件】
2008年 05月 【33件】
2008年 04月 【31件】
2008年 03月 【32件】
2008年 02月 【29件】
2008年 01月 【35件】

ranking

sister companies

明日 お題配布
さよならドロシー 1000のだいすき。
東京の坂道 東京の坂道ほか
無垢で無知 言葉の倉庫

music & books