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九月 じりじりと焦がれる初秋 (6)
2009.01.05 Mon
「具合は? 別に寝不足ってだけじゃねぇんだろ? 昨日あんな時間から寝てんのに」
「…」
昨日、帰って来た後、部屋の前で和衣と祐介が話していたのを、睦月はドア越しに聞いて知っていた。
決してうまいとは言えないごまかし方で、和衣は懸命に睦月との約束を守ろうとしてくれていた。
だがそれは、まだ夜の8時にもならない時間で、そんな時間から寝ているのに、今朝もまだ寝不足だなんて、それを知らない亮ならともかく、ちょっと考えたら分かる苦しい言い訳だった。
「具合悪いなら、病院行くか?」
「…行かない」
メロンパンを齧りながら、睦月は視線を落とした。
「…何があったのか、言ったほうがいいよね?」
「単に風邪引いただけ、とかじゃないんだったら、ぜひそうしてもらいたいけど」
デスクのところにあるキャスター付きの椅子を引っ張って来て、祐介はそのベッドサイドで腰を下ろした。
やはり睦月の様子を見て、ご飯を置いて帰るだけ、というつもりは最初からなかったようだ。
「……昨日、バイトの後、ちょっと具合悪くなっちゃったの」
「そのわりには、和衣、ずいぶん深刻そうだったけど」
顔を上げれば、祐介と目が合って、ヘタなごまかしは効かないと睦月は観念し、昨日のバイトの後に起こったことをすべて、祐介に話した。
昨日の夜は、とても当分話せそうもないと思っていたが、実際に口を開いてしまえば、すんなりと伝えることが出来た。
祐介は、睦月が話し終わるまで、何も言わずにずっと聞いていてくれた。
「…だからバイトなんかすんな、つっただろ?」
話し終わって少しの沈黙の後、祐介の声は静かだったけれど、どこか責めるような響きがあって、睦月は「ゴメン」と俯いた。
「昔のこと、……あのときのこと、忘れたわけじゃないよ? ゆっちにもいっぱい助けられたし」
今の学校ではもう、睦月と祐介しか知らない、過去のこと。
睦月の中の、つらい記憶。
思い出して、睦月の手は、かすかに震えた。
「…でも、ずっとこのままじゃいられないじゃん。一生ゆっちに心配されながら生きてくわけにいかないでしょ? 出来ることからしてかなきゃ、て思って」
「……」
「だからもう大丈夫だってこと、ゆっちに見せたかった。……結局ダメだったけど。やっぱゆっちの言うこと、聞いておけば良かったね。ゴメン」
睦月は無理に笑って、顔を上げた。
やはり過保護な幼馴染みの言うことは、聞いておくべきだった。
今まで祐介の言うとおりにしてきて、間違ったことは1度だってなかったし、それに逆らった結果がこれだ。
もうあの冷やしラーメン男に会うことはないかもしれないけれど、バイトに行けば、そのときの不安から、昨日のように過呼吸に陥ってしまう可能性はある。そんな状態で、働き続けるなんて、果たして出来るだろうか。
「…ゆっち」
「え?」
「カズちゃんのこと……責めないでね?」
「……」
「…」
昨日、帰って来た後、部屋の前で和衣と祐介が話していたのを、睦月はドア越しに聞いて知っていた。
決してうまいとは言えないごまかし方で、和衣は懸命に睦月との約束を守ろうとしてくれていた。
だがそれは、まだ夜の8時にもならない時間で、そんな時間から寝ているのに、今朝もまだ寝不足だなんて、それを知らない亮ならともかく、ちょっと考えたら分かる苦しい言い訳だった。
「具合悪いなら、病院行くか?」
「…行かない」
メロンパンを齧りながら、睦月は視線を落とした。
「…何があったのか、言ったほうがいいよね?」
「単に風邪引いただけ、とかじゃないんだったら、ぜひそうしてもらいたいけど」
デスクのところにあるキャスター付きの椅子を引っ張って来て、祐介はそのベッドサイドで腰を下ろした。
やはり睦月の様子を見て、ご飯を置いて帰るだけ、というつもりは最初からなかったようだ。
「……昨日、バイトの後、ちょっと具合悪くなっちゃったの」
「そのわりには、和衣、ずいぶん深刻そうだったけど」
顔を上げれば、祐介と目が合って、ヘタなごまかしは効かないと睦月は観念し、昨日のバイトの後に起こったことをすべて、祐介に話した。
昨日の夜は、とても当分話せそうもないと思っていたが、実際に口を開いてしまえば、すんなりと伝えることが出来た。
祐介は、睦月が話し終わるまで、何も言わずにずっと聞いていてくれた。
「…だからバイトなんかすんな、つっただろ?」
話し終わって少しの沈黙の後、祐介の声は静かだったけれど、どこか責めるような響きがあって、睦月は「ゴメン」と俯いた。
「昔のこと、……あのときのこと、忘れたわけじゃないよ? ゆっちにもいっぱい助けられたし」
今の学校ではもう、睦月と祐介しか知らない、過去のこと。
睦月の中の、つらい記憶。
思い出して、睦月の手は、かすかに震えた。
「…でも、ずっとこのままじゃいられないじゃん。一生ゆっちに心配されながら生きてくわけにいかないでしょ? 出来ることからしてかなきゃ、て思って」
「……」
「だからもう大丈夫だってこと、ゆっちに見せたかった。……結局ダメだったけど。やっぱゆっちの言うこと、聞いておけば良かったね。ゴメン」
睦月は無理に笑って、顔を上げた。
やはり過保護な幼馴染みの言うことは、聞いておくべきだった。
今まで祐介の言うとおりにしてきて、間違ったことは1度だってなかったし、それに逆らった結果がこれだ。
もうあの冷やしラーメン男に会うことはないかもしれないけれど、バイトに行けば、そのときの不安から、昨日のように過呼吸に陥ってしまう可能性はある。そんな状態で、働き続けるなんて、果たして出来るだろうか。
「…ゆっち」
「え?」
「カズちゃんのこと……責めないでね?」
「……」
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柚子季杏 ⇒ なにがーー?
過去に何があったんだ?!
そして、最後の会話のゆっちの「・・・」が気になる(涙
むっちゃんもカズちゃんも、大丈夫かな?
うぅ・・・シクシク
ゆっちの気持ちがさっぱり見えないのがなぁ~。
如月さんの焦らしPlayに新年からやられてます(^^;
そして、最後の会話のゆっちの「・・・」が気になる(涙
むっちゃんもカズちゃんも、大丈夫かな?
うぅ・・・シクシク
ゆっちの気持ちがさっぱり見えないのがなぁ~。
如月さんの焦らしPlayに新年からやられてます(^^;
りり ⇒ ゆっちは誰が好きなの?
ゆっちがむっちゃんのこと好きだったらどうしよう?
ああ。
あんまり切ないと泣いちゃうので~~~。
ゆっちの気持ちが知りたい。
むっちゃん、辛い過去があったんですね。
天真爛漫なお姫様ってだけじゃなかったんですね。
ゆっちの過保護のわけもそれか。
でもでも最後の「…」がやっぱり気になる!!
ああ。
あんまり切ないと泣いちゃうので~~~。
ゆっちの気持ちが知りたい。
むっちゃん、辛い過去があったんですね。
天真爛漫なお姫様ってだけじゃなかったんですね。
ゆっちの過保護のわけもそれか。
でもでも最後の「…」がやっぱり気になる!!
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
おバカな乗りから一転。
微妙なシリアスムードです。
ゆっちさんも相変わらず、分かってるのか分かってないのかだし…。
> 如月さんの焦らしPlayに新年からやられてます(^^;
私も書いてて、じりじりです~。
次の更新で、明らかに!?
お待たせしてます~。
コメントありがとうございました!
微妙なシリアスムードです。
ゆっちさんも相変わらず、分かってるのか分かってないのかだし…。
> 如月さんの焦らしPlayに新年からやられてます(^^;
私も書いてて、じりじりです~。
次の更新で、明らかに!?
お待たせしてます~。
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >りりさん
ゆっちさんの「……」が、みんなをジリジリさせている~(^_^;)
ホントに彼だけは、心の中がまったく見えないというか、実はいろいろ考えている……ようで考えてないも…。まったく分かりませんです(汗)
むっちゃんの過去、ついに次回明らかになります。
お待たせした割に在り来たりだったら、ごめんなさいです~!
コメントありがとうございました!
ホントに彼だけは、心の中がまったく見えないというか、実はいろいろ考えている……ようで考えてないも…。まったく分かりませんです(汗)
むっちゃんの過去、ついに次回明らかになります。
お待たせした割に在り来たりだったら、ごめんなさいです~!
コメントありがとうございました!