読み切り掌編
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- おれの恋人はとてもかわいくない
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読み切り掌編集 INDEX
2008.09.16 Tue
*シリアスもラブラブも特に表記なく入り乱れてますので、ご注意ください。
↑OLD ↓NEW
■おれの恋人はとてもかわいくない (tittle:lisさま)
■戻れない (tittle:lisさま)
■君のてのひら
■幸せをみると泣きたくなる。私には手に入らないから。 (tittle:lisさま)
■No Smoking!?
■ある夏の日 (tittle:lisさま)
■チャンス (前編) (後編)
■甘いのは、唇
■きみはばかだ (tittle:lisさま)
■甘い言葉はいらないの (tittle:雨霰さま)
■いつも傍にいたい (tittle:as far as I knowさま)
■Midnight Butterfly
*@MKさんへ素敵なイラストとともに出張中です。2009.7.4記事「Midnight Butterfly 出張中」
■so sweet
■叶わないと知っている (だから、だからきっと) (tittle:雨霰さま)
■愛すことよりずっとカンタン (突き放してしまえば楽なのに) (tittle:雨霰さま)
■おはようのキス
■きみはまぶしいひかり (tittle:lisさま)
■lips
■stray love
■ナビゲーション
■好き。だから、好き。
■赤色の嘘 (tittle:lisさま)
■今日は雨の日 (tittle:lisさま)
■信頼関係
■世界の果てまで行こう (tittle:lisさま)
■君がニャンと鳴いたから*会話SS
*@MKさんのクリスマスフリー絵に、間抜けなSSを付けてしまいましたっ…!!
*しかもこんなSSに、とってもすてきなボイスまで付けていただきました!!
→@MKさんvoiceページ
■ふしだらな男
*「ひまつぶし」伽羅さんの『秋の特別企画』に参加させていただきました。
■死にたい三月 (tittle:lisさま)
↑OLD ↓NEW
■おれの恋人はとてもかわいくない (tittle:lisさま)
■戻れない (tittle:lisさま)
■君のてのひら
■幸せをみると泣きたくなる。私には手に入らないから。 (tittle:lisさま)
■No Smoking!?
■ある夏の日 (tittle:lisさま)
■チャンス (前編) (後編)
■甘いのは、唇
■きみはばかだ (tittle:lisさま)
■甘い言葉はいらないの (tittle:雨霰さま)
■いつも傍にいたい (tittle:as far as I knowさま)
■Midnight Butterfly
*@MKさんへ素敵なイラストとともに出張中です。2009.7.4記事「Midnight Butterfly 出張中」
■so sweet
■叶わないと知っている (だから、だからきっと) (tittle:雨霰さま)
■愛すことよりずっとカンタン (突き放してしまえば楽なのに) (tittle:雨霰さま)
■おはようのキス
■きみはまぶしいひかり (tittle:lisさま)
■lips
■stray love
■ナビゲーション
■好き。だから、好き。
■赤色の嘘 (tittle:lisさま)
■今日は雨の日 (tittle:lisさま)
■信頼関係
■世界の果てまで行こう (tittle:lisさま)
■君がニャンと鳴いたから*会話SS
*@MKさんのクリスマスフリー絵に、間抜けなSSを付けてしまいましたっ…!!
*しかもこんなSSに、とってもすてきなボイスまで付けていただきました!!
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■ふしだらな男
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■死にたい三月 (tittle:lisさま)
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カテゴリー:読み切り掌編
おれの恋人はとてもかわいくない
2008.09.16 Tue
俺の恋人は、かわいくない。
「…………弘人、うぜぇ」
ドカッ。
ゲームに向ってた俺の背中を直撃したのは、床でゴロゴロしてる和希の足の裏。
……うざいって―――俺、何もしてないんですけど。
っていうか、和希のほうがうざい。だからとりあえず無視。ゲーム、いいとこだし。
「何で無視すんだよぉ!!」
ドカドカ。
予想どおりの反応に、思わず吹き出しそうになる。
俺の背中を両足の裏で蹴っ飛ばしながら、和希がジタバタ暴れてる。
「弘人のバーカ、バーカ」
あぁ、ホントにうざい。
全然ゲームに集中できないんですけど。
「あのねぇ、」
「あ、やっとこっち向いた」
いい加減イライラしてきて、少し低い声で振り返れば、俺のそんな様子、全然分ってないのか、和希は嬉しそうに笑った。
ポーズを掛けるのを忘れていたゲームから、ゲームオーバーを告げる間抜けな音が響く。
むかつくなぁ。
とりあえずむかつきに任せて、ダラリと俺のももに乗っけてる和希の足を掴んで持ち上げた。
「うわっ!? 何すんだよ、バカ弘人!」
ジタバタしてみたって、和希の抵抗なんか大したことない。グイッとその足を引っ張って、自分のほうに引き寄せた。
ゴチッ。
「いでっ!」
あ、ヤバ。
突然のことにバランスを取り切れなかった和希が、床に思い切り頭をぶつけた。
大丈夫かな? これ以上悪くなったりしないよね?
「バカ! 弘人、ざけんな! 放しやがれ!!」
「ほらほら、そんな乱暴な言葉遣いしないの」
「うぜぇよ! 放せって!」
何とか俺のことを蹴っ飛ばそうと、掴まれてる足をもがいてるけど、反対の足は自由なんだから、そっちでやればうまくいくよね、きっと。何で気付かないんだろ。
「何ニヤニヤしてんだよ! キモい、弘人!」
ホントに、さっきからうざいだのキモいだの、よく恋人に向ってそこまで言えるよね。
「はーなーせ……ひぁっ!?」
もがいてる和希の足をもうちょっと引っ張って、さっきから俺に乱暴してくるその足の裏をペロッと舐めた。
「な、な、な……何すんだよ、この変態!!」
あーあ、耳まで真っ赤にしちゃって。
夜になればもっといろいろしてるくせに、何でこのくらいのことでこんなに照れてるの、この子は。
「はいはい、そんなに暴れないでよ」
掴んでた足を望どおりに放してやったら、案の定、すぐさま蹴飛ばされた。
「バカ、死ね!」
あー、ホントにもう。
どうしてこの子は、口を開けばかわいくないことばっかりなのかな。
「ねぇねぇ、和希。その口、ちょっと塞いでもいーい?」
「バカ弘人…………へ!?」
にっこり笑って問い掛ければ、和希はそのままの格好で固まった。
「ね、いい?」
「あ…え? あの…」
見る見る間に顔が蒼ざめていく。
そんなに怖がらせるようなこと、言ったかなぁ?
逃げられないように和希の足首を掴んで、それから肩を押さえて圧し掛かる。
「ちょ、ちょ、ちょ……ひろ、んっ!?」
ギュッて目を瞑った和希に顔を近付けて、その口を…………塞ぐ―――――唇で。
「んん~っ!!??」
しばらくして、やっと事態を把握したらしい和希が、ジタバタと暴れ出す。
でも力だったら、俺だって和希には負けてないからね。
「なに、なっ……何すんっ…!」
「だからー、口塞ぐ、って言ったでしょ?」
「ふさっ…」
あ、もしかして、ガムテープとかで塞いじゃうと思った?
言っとくけど、俺にそんな趣味ないよ? それとも和希、そういうプレイでもしたいの?
「バカ弘人!!」
真っ赤な顔で目を潤ませながら怒鳴ったって、少しも迫力ないんですけど。
「バカバカバカ!!」
「あーはいはい」
前言撤回。
俺の恋人は、十分かわいいです。
彼らのお話、こんなのあります ↓
今日は雨の日
「…………弘人、うぜぇ」
ドカッ。
ゲームに向ってた俺の背中を直撃したのは、床でゴロゴロしてる和希の足の裏。
……うざいって―――俺、何もしてないんですけど。
っていうか、和希のほうがうざい。だからとりあえず無視。ゲーム、いいとこだし。
「何で無視すんだよぉ!!」
ドカドカ。
予想どおりの反応に、思わず吹き出しそうになる。
俺の背中を両足の裏で蹴っ飛ばしながら、和希がジタバタ暴れてる。
「弘人のバーカ、バーカ」
あぁ、ホントにうざい。
全然ゲームに集中できないんですけど。
「あのねぇ、」
「あ、やっとこっち向いた」
いい加減イライラしてきて、少し低い声で振り返れば、俺のそんな様子、全然分ってないのか、和希は嬉しそうに笑った。
ポーズを掛けるのを忘れていたゲームから、ゲームオーバーを告げる間抜けな音が響く。
むかつくなぁ。
とりあえずむかつきに任せて、ダラリと俺のももに乗っけてる和希の足を掴んで持ち上げた。
「うわっ!? 何すんだよ、バカ弘人!」
ジタバタしてみたって、和希の抵抗なんか大したことない。グイッとその足を引っ張って、自分のほうに引き寄せた。
ゴチッ。
「いでっ!」
あ、ヤバ。
突然のことにバランスを取り切れなかった和希が、床に思い切り頭をぶつけた。
大丈夫かな? これ以上悪くなったりしないよね?
「バカ! 弘人、ざけんな! 放しやがれ!!」
「ほらほら、そんな乱暴な言葉遣いしないの」
「うぜぇよ! 放せって!」
何とか俺のことを蹴っ飛ばそうと、掴まれてる足をもがいてるけど、反対の足は自由なんだから、そっちでやればうまくいくよね、きっと。何で気付かないんだろ。
「何ニヤニヤしてんだよ! キモい、弘人!」
ホントに、さっきからうざいだのキモいだの、よく恋人に向ってそこまで言えるよね。
「はーなーせ……ひぁっ!?」
もがいてる和希の足をもうちょっと引っ張って、さっきから俺に乱暴してくるその足の裏をペロッと舐めた。
「な、な、な……何すんだよ、この変態!!」
あーあ、耳まで真っ赤にしちゃって。
夜になればもっといろいろしてるくせに、何でこのくらいのことでこんなに照れてるの、この子は。
「はいはい、そんなに暴れないでよ」
掴んでた足を望どおりに放してやったら、案の定、すぐさま蹴飛ばされた。
「バカ、死ね!」
あー、ホントにもう。
どうしてこの子は、口を開けばかわいくないことばっかりなのかな。
「ねぇねぇ、和希。その口、ちょっと塞いでもいーい?」
「バカ弘人…………へ!?」
にっこり笑って問い掛ければ、和希はそのままの格好で固まった。
「ね、いい?」
「あ…え? あの…」
見る見る間に顔が蒼ざめていく。
そんなに怖がらせるようなこと、言ったかなぁ?
逃げられないように和希の足首を掴んで、それから肩を押さえて圧し掛かる。
「ちょ、ちょ、ちょ……ひろ、んっ!?」
ギュッて目を瞑った和希に顔を近付けて、その口を…………塞ぐ―――――唇で。
「んん~っ!!??」
しばらくして、やっと事態を把握したらしい和希が、ジタバタと暴れ出す。
でも力だったら、俺だって和希には負けてないからね。
「なに、なっ……何すんっ…!」
「だからー、口塞ぐ、って言ったでしょ?」
「ふさっ…」
あ、もしかして、ガムテープとかで塞いじゃうと思った?
言っとくけど、俺にそんな趣味ないよ? それとも和希、そういうプレイでもしたいの?
「バカ弘人!!」
真っ赤な顔で目を潤ませながら怒鳴ったって、少しも迫力ないんですけど。
「バカバカバカ!!」
「あーはいはい」
前言撤回。
俺の恋人は、十分かわいいです。
彼らのお話、こんなのあります ↓
今日は雨の日
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戻れない R18
2008.09.17 Wed
*R18です。18歳未満のかた、そういった表現の苦手なかたはご遠慮ください。
足を踏み入れたのは、底の見えない、深く暗い沼。
沈んで、沈んで…………もう戻れない。
「んっ……んん…」
唇を噛んで、その上から両手で自分の口を押さえて、必死で声を堪える。
キュウと強く瞑った瞳の端から、キレイな涙が零れ落ちる。
「やぁっ!!」
グイ、と腰を押し進めると、我慢できずに春也は身を捩った。拍子に両手が口元から外れ、甘い声が漏れる。
「お兄ちゃん……そんな声出したら、お母さんたちに聞こえちゃうよ…?」
「…ッ!!」
耳元で囁くように言われ、春也はハッとして唇を噛んだ。
潤んだ瞳を開けると、智也の―――弟の智也の、細めた目と視線が合った。
智也は血の繋がった弟で、3つ下の弟で、けれど今自分はその弟の下に組み敷かれて、本来はそうでない場所に、彼の屹立したものを受け入れている。
力強く押さえ込まれ、腰を動かされ、いいように揺さ振られて。
「とも……もぉ…」
苦しい。
彼を受け入れているその場所も、塞がれた唇も。―――認めたくはない、この快感も。
もう何度となく実弟を受け入れて、そして慣らされてしまった体。
どんなに否定しても反応してしまう自分の体が、余計に春也を苦しめる。
「気持ちい?」
「や…ちが……」
「何が違うの? こんなにして。弟に突っ込まれて、感じまくってんでしょ? 淫乱…」
「やだやだぁ…!」
「ほら、静かにしなよ。お母さんたちに気付かれてもいいの? もしかして見られたいとか?」
「い、いや……違う…ちが……」
ポロポロと零れ落ちる春也の涙を、智也は舌で舐め取ってやる。
快楽と懺悔の気持ちの狭間で、感情の昂ってしまった春也は、ただただ泣きじゃくるばかり。
「…………お母さん、ゴメンなさ……」
しゃくり上げながら、春也が呟くように言った。
「―――お兄ちゃ…」
「んぁっ!?」
優しく口付けた後、いきなり智也が大きく腰を動かした。
驚いて春也は大きな声を上げたが、慌てて枕に顔を押し付けて、声を殺す。
何が突然、智也をこんな狂気に駆り立てたのか、春也には分からない。けれど、両親にばれてしまわないよう、ただひたすら唇を噛んで、静かに涙を零した。
淫らな吐息。
軋むベッド。
「と…ともっ……」
体を反転させられ、伏せの格好で枕に顔をうずめた春也は、嬌声を堪えて智也の名前を呼ぼうとするがままならず、掴まれた腰を激しく揺さ振られる。
「智也……んっ…―――――」
最奥の一番感じる場所を突かれた瞬間、春也は智也の手の中に欲望を解き放ち、そのまま意識を手放した。
「春也、愛してる…」
その最後、智也の声が聞こえた気がした。
さよなら、神様
足を踏み入れたのは、底の見えない、深く暗い沼。
沈んで、沈んで…………もう戻れない。
「んっ……んん…」
唇を噛んで、その上から両手で自分の口を押さえて、必死で声を堪える。
キュウと強く瞑った瞳の端から、キレイな涙が零れ落ちる。
「やぁっ!!」
グイ、と腰を押し進めると、我慢できずに春也は身を捩った。拍子に両手が口元から外れ、甘い声が漏れる。
「お兄ちゃん……そんな声出したら、お母さんたちに聞こえちゃうよ…?」
「…ッ!!」
耳元で囁くように言われ、春也はハッとして唇を噛んだ。
潤んだ瞳を開けると、智也の―――弟の智也の、細めた目と視線が合った。
智也は血の繋がった弟で、3つ下の弟で、けれど今自分はその弟の下に組み敷かれて、本来はそうでない場所に、彼の屹立したものを受け入れている。
力強く押さえ込まれ、腰を動かされ、いいように揺さ振られて。
「とも……もぉ…」
苦しい。
彼を受け入れているその場所も、塞がれた唇も。―――認めたくはない、この快感も。
もう何度となく実弟を受け入れて、そして慣らされてしまった体。
どんなに否定しても反応してしまう自分の体が、余計に春也を苦しめる。
「気持ちい?」
「や…ちが……」
「何が違うの? こんなにして。弟に突っ込まれて、感じまくってんでしょ? 淫乱…」
「やだやだぁ…!」
「ほら、静かにしなよ。お母さんたちに気付かれてもいいの? もしかして見られたいとか?」
「い、いや……違う…ちが……」
ポロポロと零れ落ちる春也の涙を、智也は舌で舐め取ってやる。
快楽と懺悔の気持ちの狭間で、感情の昂ってしまった春也は、ただただ泣きじゃくるばかり。
「…………お母さん、ゴメンなさ……」
しゃくり上げながら、春也が呟くように言った。
「―――お兄ちゃ…」
「んぁっ!?」
優しく口付けた後、いきなり智也が大きく腰を動かした。
驚いて春也は大きな声を上げたが、慌てて枕に顔を押し付けて、声を殺す。
何が突然、智也をこんな狂気に駆り立てたのか、春也には分からない。けれど、両親にばれてしまわないよう、ただひたすら唇を噛んで、静かに涙を零した。
淫らな吐息。
軋むベッド。
「と…ともっ……」
体を反転させられ、伏せの格好で枕に顔をうずめた春也は、嬌声を堪えて智也の名前を呼ぼうとするがままならず、掴まれた腰を激しく揺さ振られる。
「智也……んっ…―――――」
最奥の一番感じる場所を突かれた瞬間、春也は智也の手の中に欲望を解き放ち、そのまま意識を手放した。
「春也、愛してる…」
その最後、智也の声が聞こえた気がした。
さよなら、神様
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君のてのひら
2008.09.18 Thu
アルコールが回っているせいか、繋いだ手が、熱い。
ていうか、何で手なんか繋いでるんだ、って話だけど。
「律ー、コンビニ寄って帰ろー?」
帰り道から少し外れたところに見えたコンビニの明かりに、朋春が声を上げた。
少し後ろを歩いていた朋春に、繋いだ手を手を引っ張られた律は、思わず眉を寄せた。
「……何?」
律の機嫌は、すこぶる悪い。酔いが醒めるほどに。いや、むしろ悪酔いしそうだ。
原因は言わずもがな、朋春と繋いだ、その手。
外ではもちろんのこと、家でたとえ2人きりでも手なんか繋ぎたくない、その良さが分からないと、公言している律には、人通りがないとはいえ、屋外でこうして朋春と手を繋いでいるという事実が何とも許しがたい。
何度か振り解こうとしたが、ただでさえ力のある朋春が、今は酔っ払っているせいで、いつも以上に力が強く、そうすることも敵わない。
「コンビニー」
そんな律の気持ちを知ってか知らずか、朋春は繋いだ手をブンブン揺らしている。
普段は朋春も、外で手を繋ぐなど以ての外と言っているから、おそらく平生ならこんなことはないだろうが、何しろ今日の朋春は酔っ払っている。
律の眉間に寄っているシワになど気付くはずもなく、「なぁー、コンビニー」なんて、呑気に言っていて。
「コンビニなんか寄らんよ」
不機嫌さに任せて、律はぶっきらぼうに返した。
「何でぇ? 俺、のど渇いたし」
「あっこに自販機あんじゃん」
「いやだー、コンビニ行きたい。なぁ、律ー」
ブンブン。駄々を捏ねる子供のように、朋春が手を揺らす。
律のイライラが募る。
「律ー、なぁ。なぁって」
「うっさい、ボケェ! 行かねぇよ!!」
とうとう怒りが頂点に達してしまった。
別にそんな、キレやすいというほどの性格でもないのに。
繋ぎたくもない手を、ずっと繋いでいたせいか。酔っ払いのやっていることに、いちいちムキになるなんて、そんなの。
勢いを付けて繋いだ手を解くと、朋春がポカンとした顔で律を見ていた。
「律、怒ってんの?」
今さら何を、と突っ込みたくなるようなことを言う朋春に、律は大げさなほど大きく溜め息をついた。
朋春は、律の怒る理由など皆目見当もつかないのか、律の溜め息に、むくれた顔をする。
「なら、1人で行くし」
クルリと踵を返すと、朋春はさっさとコンビニのほうへと歩いて行ってしまう。律が拍子抜けするほど、あっさりと。
「おい、ちょっ…トモ!」
そうは言っても、足元がふらついている。外で飲んだのに、ここまで朋春が酔っ払ったのは、やはり律と2人きりだったからだろうか。
けれどその朋春は1人、律のもとを離れて行ってしまって。
律は舌打ちを1つすると、小さくなりかけているその背中を追い掛けた。
「トモ!」
グイッと肩を掴むと、その勢いにガクリと体を揺らして朋春が立ち止まった。
「何?」
さっきまで怒っていたのは、律だったのに。
朋春1人がご機嫌で、律はずっと不機嫌だったのに。
今はもう、勝手に拗ねてしまった朋春の何とか機嫌を直そうと、必死になろうとしてる。
「トモ、ほら、手」
「何が」
「手ぇ貸せ」
何のことだか分かっていない朋春の手を強引に掴むと、律はその手を引いて歩き出した―――――コンビニとは逆方向、今来た道を戻る。
「ちょっ、どこ行くんだよ!」
まだコンビニに未練があるのか、朋春は慌てるが、そんなことお構いなしに律はズンズンと歩いて行く。
「あそこの自販で好きなの買ってやるから」
「コンビニ行かんの?」
「コンビニ行ったら、手ぇ繋げないだろ?」
「…………、」
思い掛けない律の言葉に、朋春はキョトンとしてから、ニコッと口元を緩めた。
「アイスカフェラテがいいな」
「何だそれ。お前ホントに飲むのか?」
「飲むよ」
いまだかつて朋春の口から、そんなしゃれた飲み物の名前なんか聞いたことがないし、飲んでいるところを見たこともない。
第一、そこの自動販売機に、朋春の所望しているアイスカフェラテなど、あるのだろうか。
なかったら、またご機嫌を斜めにしてしまうのではなかろうかと、律は無駄な心配をしてしまう。
そんな律の気持ちをよそに、朋春は律の手を引っ張った。
結局自分は、思っている以上に、朋春に対して甘い人間なのだ。
「なぁ、律ー」
「何だ」
「お前の手、汗ばんでるー」
「………………。やかましいわ! お前もだろ!」
お前が繋ぎたがるから、やってんだぞ! ―――――そう突っ込みたい気持ちを抑えて、律は朋春の手を繋ぎ直した。
確かに汗ばんでいる、手。熱い。
アルコールのせいか、それとも。
「ホラ、トモ。どれにすんの? 選べよ」
目的の自販機までやって来て、律は朋春と繋いでいるのとは逆の手で小銭を探り、機械の中に落とす。
「トモ、」
「んー……これ!」
「えっ!? ちょっ、おまっ…」
えいっ! と朋春が押したそのボタンは、カフェラテには程遠いコーンポタージュ。当然ホット。
「お前、何してんだ! アイスカフェラテじゃねぇのか!? 何"あったか~い"買ってんだ!」
「ひゃっひゃっ」
律が空いた手で突っ込んでみても、ご機嫌な酔っ払いはまったく堪えておらず、へらへら笑っているだけだ。
仕方なく律が商品取り出し口に手を突っ込んでみると、やはり季節柄、購入する人があまりいないせいか、朋春が選んだコーンポタージュは、"あったか~い"どころか、"あっつー!!"というほどに缶が熱くなっている。
「お前なぁ、あっつ! これ、ホントに飲むのか? すっげぇ熱いんだけど」
「んふふ。律にあげる」
「あげるじゃねぇよ! 俺の金で買ったヤツだよ、バカ」
ダメだ。恐らくこれ以上何を言っても埒が明かない。
そう判断した律は、まだあっつあつの缶を空いているほうの手の中で転がしながら、自販機の横に朋春を座らせた。
「なん? 帰らんの?」
いったん手を離して、今度こそ冷たい飲み物を購入する。
朋春が当初望んだアイスカフェラテは売っていなかったので(もしあって買ったとしても、恐らく飲まないだろうし)、無難に緑茶のペットボトル。
「ホレ」
ジッと律の行動を見つめていた朋春にペットボトルを放ると、律はその隣に腰を下ろした。
「開けて」
どう考えても、力なら朋春のほうがあるだろうに、酔っ払った拍子に甘え癖まで出てしまったのか、仕方なく律は素直にペットボトルのキャップを開けてやって、朋春にそれを返した。
「律、飲む?」
半分くらい開けたところで、朋春が飲みかけのペットボトルを律のほうに差し出して来た。
それが、実のところ、"もう飲みたくないから、残り全部飲んで"というサインなのを律は知っているから、何も言わずに受け取った。
片手に冷たい緑茶のペットボトル、もう片方にホットのポタージュの缶。変な感じだ。
「律ー」
「あぁ?」
「律ぅー」
「何だよ」
「好きー」
「こんなとこで言うな、アホ」
「ひゃっひゃっ」
ペットボトルの残りを飲み干して、今度はコーンポタージュを開ける。
「あち…」
口を付ければ、まだ熱い。
チラリ、隣に視線を向ければ、"ホントにそれ飲むの?"という朋春の視線とぶつかったが、何も返さず、ポタージュを口に含む。
ご丁寧にも、コーンの粒々が入っているタイプ。本当に鬱陶しい。
「あっついなぁ、律ぅ」
「…おう」
そう言いながらも、朋春は律の手に自分の手を重ねてくる。
熱い。
「熱い、なぁ」
真夏の夜。
"あたたか~い"のコーンポタージュも。
繋いだ手も。
熱い。
何もかも。
「熱いなぁ」
それでも、繋いだ手が、解けない。
あんまり涼しくならないうちに…。
ていうか、何で手なんか繋いでるんだ、って話だけど。
「律ー、コンビニ寄って帰ろー?」
帰り道から少し外れたところに見えたコンビニの明かりに、朋春が声を上げた。
少し後ろを歩いていた朋春に、繋いだ手を手を引っ張られた律は、思わず眉を寄せた。
「……何?」
律の機嫌は、すこぶる悪い。酔いが醒めるほどに。いや、むしろ悪酔いしそうだ。
原因は言わずもがな、朋春と繋いだ、その手。
外ではもちろんのこと、家でたとえ2人きりでも手なんか繋ぎたくない、その良さが分からないと、公言している律には、人通りがないとはいえ、屋外でこうして朋春と手を繋いでいるという事実が何とも許しがたい。
何度か振り解こうとしたが、ただでさえ力のある朋春が、今は酔っ払っているせいで、いつも以上に力が強く、そうすることも敵わない。
「コンビニー」
そんな律の気持ちを知ってか知らずか、朋春は繋いだ手をブンブン揺らしている。
普段は朋春も、外で手を繋ぐなど以ての外と言っているから、おそらく平生ならこんなことはないだろうが、何しろ今日の朋春は酔っ払っている。
律の眉間に寄っているシワになど気付くはずもなく、「なぁー、コンビニー」なんて、呑気に言っていて。
「コンビニなんか寄らんよ」
不機嫌さに任せて、律はぶっきらぼうに返した。
「何でぇ? 俺、のど渇いたし」
「あっこに自販機あんじゃん」
「いやだー、コンビニ行きたい。なぁ、律ー」
ブンブン。駄々を捏ねる子供のように、朋春が手を揺らす。
律のイライラが募る。
「律ー、なぁ。なぁって」
「うっさい、ボケェ! 行かねぇよ!!」
とうとう怒りが頂点に達してしまった。
別にそんな、キレやすいというほどの性格でもないのに。
繋ぎたくもない手を、ずっと繋いでいたせいか。酔っ払いのやっていることに、いちいちムキになるなんて、そんなの。
勢いを付けて繋いだ手を解くと、朋春がポカンとした顔で律を見ていた。
「律、怒ってんの?」
今さら何を、と突っ込みたくなるようなことを言う朋春に、律は大げさなほど大きく溜め息をついた。
朋春は、律の怒る理由など皆目見当もつかないのか、律の溜め息に、むくれた顔をする。
「なら、1人で行くし」
クルリと踵を返すと、朋春はさっさとコンビニのほうへと歩いて行ってしまう。律が拍子抜けするほど、あっさりと。
「おい、ちょっ…トモ!」
そうは言っても、足元がふらついている。外で飲んだのに、ここまで朋春が酔っ払ったのは、やはり律と2人きりだったからだろうか。
けれどその朋春は1人、律のもとを離れて行ってしまって。
律は舌打ちを1つすると、小さくなりかけているその背中を追い掛けた。
「トモ!」
グイッと肩を掴むと、その勢いにガクリと体を揺らして朋春が立ち止まった。
「何?」
さっきまで怒っていたのは、律だったのに。
朋春1人がご機嫌で、律はずっと不機嫌だったのに。
今はもう、勝手に拗ねてしまった朋春の何とか機嫌を直そうと、必死になろうとしてる。
「トモ、ほら、手」
「何が」
「手ぇ貸せ」
何のことだか分かっていない朋春の手を強引に掴むと、律はその手を引いて歩き出した―――――コンビニとは逆方向、今来た道を戻る。
「ちょっ、どこ行くんだよ!」
まだコンビニに未練があるのか、朋春は慌てるが、そんなことお構いなしに律はズンズンと歩いて行く。
「あそこの自販で好きなの買ってやるから」
「コンビニ行かんの?」
「コンビニ行ったら、手ぇ繋げないだろ?」
「…………、」
思い掛けない律の言葉に、朋春はキョトンとしてから、ニコッと口元を緩めた。
「アイスカフェラテがいいな」
「何だそれ。お前ホントに飲むのか?」
「飲むよ」
いまだかつて朋春の口から、そんなしゃれた飲み物の名前なんか聞いたことがないし、飲んでいるところを見たこともない。
第一、そこの自動販売機に、朋春の所望しているアイスカフェラテなど、あるのだろうか。
なかったら、またご機嫌を斜めにしてしまうのではなかろうかと、律は無駄な心配をしてしまう。
そんな律の気持ちをよそに、朋春は律の手を引っ張った。
結局自分は、思っている以上に、朋春に対して甘い人間なのだ。
「なぁ、律ー」
「何だ」
「お前の手、汗ばんでるー」
「………………。やかましいわ! お前もだろ!」
お前が繋ぎたがるから、やってんだぞ! ―――――そう突っ込みたい気持ちを抑えて、律は朋春の手を繋ぎ直した。
確かに汗ばんでいる、手。熱い。
アルコールのせいか、それとも。
「ホラ、トモ。どれにすんの? 選べよ」
目的の自販機までやって来て、律は朋春と繋いでいるのとは逆の手で小銭を探り、機械の中に落とす。
「トモ、」
「んー……これ!」
「えっ!? ちょっ、おまっ…」
えいっ! と朋春が押したそのボタンは、カフェラテには程遠いコーンポタージュ。当然ホット。
「お前、何してんだ! アイスカフェラテじゃねぇのか!? 何"あったか~い"買ってんだ!」
「ひゃっひゃっ」
律が空いた手で突っ込んでみても、ご機嫌な酔っ払いはまったく堪えておらず、へらへら笑っているだけだ。
仕方なく律が商品取り出し口に手を突っ込んでみると、やはり季節柄、購入する人があまりいないせいか、朋春が選んだコーンポタージュは、"あったか~い"どころか、"あっつー!!"というほどに缶が熱くなっている。
「お前なぁ、あっつ! これ、ホントに飲むのか? すっげぇ熱いんだけど」
「んふふ。律にあげる」
「あげるじゃねぇよ! 俺の金で買ったヤツだよ、バカ」
ダメだ。恐らくこれ以上何を言っても埒が明かない。
そう判断した律は、まだあっつあつの缶を空いているほうの手の中で転がしながら、自販機の横に朋春を座らせた。
「なん? 帰らんの?」
いったん手を離して、今度こそ冷たい飲み物を購入する。
朋春が当初望んだアイスカフェラテは売っていなかったので(もしあって買ったとしても、恐らく飲まないだろうし)、無難に緑茶のペットボトル。
「ホレ」
ジッと律の行動を見つめていた朋春にペットボトルを放ると、律はその隣に腰を下ろした。
「開けて」
どう考えても、力なら朋春のほうがあるだろうに、酔っ払った拍子に甘え癖まで出てしまったのか、仕方なく律は素直にペットボトルのキャップを開けてやって、朋春にそれを返した。
「律、飲む?」
半分くらい開けたところで、朋春が飲みかけのペットボトルを律のほうに差し出して来た。
それが、実のところ、"もう飲みたくないから、残り全部飲んで"というサインなのを律は知っているから、何も言わずに受け取った。
片手に冷たい緑茶のペットボトル、もう片方にホットのポタージュの缶。変な感じだ。
「律ー」
「あぁ?」
「律ぅー」
「何だよ」
「好きー」
「こんなとこで言うな、アホ」
「ひゃっひゃっ」
ペットボトルの残りを飲み干して、今度はコーンポタージュを開ける。
「あち…」
口を付ければ、まだ熱い。
チラリ、隣に視線を向ければ、"ホントにそれ飲むの?"という朋春の視線とぶつかったが、何も返さず、ポタージュを口に含む。
ご丁寧にも、コーンの粒々が入っているタイプ。本当に鬱陶しい。
「あっついなぁ、律ぅ」
「…おう」
そう言いながらも、朋春は律の手に自分の手を重ねてくる。
熱い。
「熱い、なぁ」
真夏の夜。
"あたたか~い"のコーンポタージュも。
繋いだ手も。
熱い。
何もかも。
「熱いなぁ」
それでも、繋いだ手が、解けない。
あんまり涼しくならないうちに…。
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幸せをみると泣きたくなる。私には手に入らないから。
2008.09.19 Fri
「千秋! 久し振り!」
「わっ、律哉!?」
授業が終わってカフェテリアに向かう途中、突然背後から抱き付かれ、このテンションの高さは恭平だと信じて疑わなかったのに、振り返ってみたらそれは律哉だった。
「ど…したの?」
「へへー。千秋髪切ったんだね。短いのも似合うー」
「うーん……ちょっと、会話が噛み合ってないよね」
相変わらずな律哉に、少し苦笑。
律哉の腕を緩めて振り返れば、今度は俺の髪をワシャワシャし出す。
「あ、ねぇねぇ、千秋にお願いあるんだけど、聞いてくれる?」
身長なんて数cmしか違わないのに、律哉はクリクリとした瞳で上目遣いに見上げてくる。
あーあー、そんなかわいい顔、惜しげもなく披露してくれちゃって。
「なぁに?」
もちろん律哉の願いを断われるはずなんかなくて。
でも。
「ねぇ、ちょっと胸触らして?」
でもでも!
…………律哉は相変わらずの不思議ちゃんだった。
「は?」
「む、ね! いいでしょ~? ね、捲くっていい? シャツ」
まだイイともダメとも答えてないのに、律哉はサッと俺のシャツの裾に手を掛けて、ここが学校の廊下だっていうのに、何の躊躇いもなくバッと俺のシャツの前を捲り上げてくれた。
「り…律哉くん、君は何がやりたいのかなー?」
次の授業が始まって、殆ど人が通らないのがせめてもの救いだけど。
廊下の真ん中。
いい年した男が、もう一方のシャツを捲り上げて胸を露にさせているなんて、どうかしてる!!
「わーやっぱすごい筋肉! ね、触っていい?」
「はい? わっ!?」
そしてこれまた律哉くんは、俺が何の返答もしないうち、ペタペタと俺の胸を触ってきて。
まぁ、男の子同士だし、セクハラってことはないけどさ……一体何なの??
「りつ…」
「りつやーーー!!!」
…………ここが大学の構内の廊下だって分かってないヤツが、もう1名―――恭平だ。
奥の角を曲がって姿を現した恭平は、バッチリ俺と目が合ったと思ったら、すぐさまデカイ声で律哉の名前を呼びながら、全力疾走で駆け寄ってきた。
「りっりっりっちゃん!! 何してんの!?」
「恭平、うるさい」
何してるって…………俺のシャツ捲り上げて、胸をペタペタ。ホント、何やってるんでしょう。
「りっちゃん! よその男の胸を、そんな容易く触るんじゃないの!」
俺の胸を触っていた律哉の手は、恭平によって引き剥がされて。
とりあえず俺は、捲り上げられてたシャツを元に戻すけど。
「ねぇねぇ、千秋の胸、すごいんだよ!」
「は? 千秋の胸? 何が? 乳首?」
「るせぇよ!」
よく分からないけれど、妙に俺の胸を褒めてくれる律哉に対していらないボケをする恭平にとりあえず突っ込んでおく。
乳首小さいのは、俺だって気にしてんだよ、バカ!
「胸筋だってば! すっごい胸板厚いの! 俺ね、前に着替えるときちょっと見てさぁ、ちゃんと見たいと思ってたんだよねー。千秋、どのくらい鍛えてんの?」
「どのくらい、って言われても……でも結構サーフィンとか行ったし」
「サーフィン!? 超かっこいい! そんでそんなに胸板厚くなるんだ!? すごいすごい!!」
子供みたいに無邪気に感心する様がかわいくて、ついつい頬が緩んでしまう。そんな律哉の横で、恭平は苦虫を噛み潰したような顔をしてるけど。
「千秋、サーフィンよく行くの?」
「んー時間があればね。この夏は結構行ってるかな。よかったら律哉も一緒に行く?」
「マジで!? あ、でも俺やったことないし…………全然出来ないから、一緒に行ってもつまんないかも…」
「そんなことないよ。しっかり教えるし」
「ホント!? 行きたい行きたい!!」
キャー!! なんて、もう周りにパァッとお花でも飛ばしちゃってるんじゃないかっていうくらい満面の笑みで、律哉が顔を綻ばせながら抱き付いて来た。
せっかくだから抱き返してあげると、律哉はますますキュウと抱き付いてきて…………あぁ、何だかいい感じ。
「ちょちょちょちょちょっと!!」
グイッ。
そんないい感じの俺たちを引き剥がす手。
もちろん恭平だ。
「何すんだよ、恭平!」
俺から離された律哉は、そのまま恭平の腕の中にキュウキュウに抱き寄せられている。
「何すんだじゃないでしょ! ダメダメダメ! 何で千秋とサーフィンなわけ!?」
「だって俺も、千秋みたいにサーフィン出来るようになりたい。胸板厚くなりたいの」
「サーフィンなら俺もするし! つーかこれ以上胸板厚くしてどうすんの!?」
確かに。
かわいい顔して筋肉大好きの律哉は、最近やたら鍛えまくってて、すっかり逞しくなっているらしい。
脱いだところは見たことがないけれど、この顔であんまりムキムキなのもなぁ…。
でも本人が鍛えたがってるのを止めるのも気が引けるし、それに一緒にサーフィンとか行けるんだったら、すっごい嬉しいのにな。
…………でも。
でもさぁ…。
「でも恭平、今年まだ1回も海行ってないって言ってたじゃん。ホントにちゃんと出来るの?」
「出来るっつーの! てか、千秋と行くなんて、言語道断!!」
「言語道断…………あー……難しい言葉知ってて偉いねぇ、恭平くんは」
「偉いっしょ? だから千秋なんかとサーフィン行くのはやめて、俺と遊びに行こうね?」
「えー? ご飯は恭平の奢り?」
「もち」
「じゃあ、しょうがないから恭平と一緒に遊んでやるか」
「やた!」
ものすごい上から目線なんですけど……律哉さん。
でも恭平は渋々どころか、大喜びって感じで律哉と約束を取り付けてる。ってか、どうせ今日だって一緒に帰るんでしょ?
あーあ、やっぱ最後は恭平に持ってかれちゃうのか。
「ゴメンね、千秋。一緒にサーフィン行けそうもないや」
「残念だったね。恭平の教え方がへたくそだったらいつでも連絡してよ。駆けつけるからさ」
「んふふ、そうする!」
なるべく冗談に聞こえるようにそう言って、恭平の腕の中に収まってる律哉のふわふわの髪の毛を撫でてやる。
この髪の毛の1本ですら、俺のものにはならないなんて。
「じゃーね、千秋、バイバーイ」
「じゃあね」
恭平に引き摺られるようにして去っていく律哉。
無邪気に手を振って。
あぁ、やっぱ恭平には敵わないんだなって、思い知らされる。
どんなに強く想ったって、律哉の気持ちのベクトルは恭平のほうを向いていて。
こんな不毛な恋心……いっそ捨ててしまえればいいのに。
それでも幸せになれる日を思い描いてるなんて。
―――――手に入りっこないのに。
「わっ、律哉!?」
授業が終わってカフェテリアに向かう途中、突然背後から抱き付かれ、このテンションの高さは恭平だと信じて疑わなかったのに、振り返ってみたらそれは律哉だった。
「ど…したの?」
「へへー。千秋髪切ったんだね。短いのも似合うー」
「うーん……ちょっと、会話が噛み合ってないよね」
相変わらずな律哉に、少し苦笑。
律哉の腕を緩めて振り返れば、今度は俺の髪をワシャワシャし出す。
「あ、ねぇねぇ、千秋にお願いあるんだけど、聞いてくれる?」
身長なんて数cmしか違わないのに、律哉はクリクリとした瞳で上目遣いに見上げてくる。
あーあー、そんなかわいい顔、惜しげもなく披露してくれちゃって。
「なぁに?」
もちろん律哉の願いを断われるはずなんかなくて。
でも。
「ねぇ、ちょっと胸触らして?」
でもでも!
…………律哉は相変わらずの不思議ちゃんだった。
「は?」
「む、ね! いいでしょ~? ね、捲くっていい? シャツ」
まだイイともダメとも答えてないのに、律哉はサッと俺のシャツの裾に手を掛けて、ここが学校の廊下だっていうのに、何の躊躇いもなくバッと俺のシャツの前を捲り上げてくれた。
「り…律哉くん、君は何がやりたいのかなー?」
次の授業が始まって、殆ど人が通らないのがせめてもの救いだけど。
廊下の真ん中。
いい年した男が、もう一方のシャツを捲り上げて胸を露にさせているなんて、どうかしてる!!
「わーやっぱすごい筋肉! ね、触っていい?」
「はい? わっ!?」
そしてこれまた律哉くんは、俺が何の返答もしないうち、ペタペタと俺の胸を触ってきて。
まぁ、男の子同士だし、セクハラってことはないけどさ……一体何なの??
「りつ…」
「りつやーーー!!!」
…………ここが大学の構内の廊下だって分かってないヤツが、もう1名―――恭平だ。
奥の角を曲がって姿を現した恭平は、バッチリ俺と目が合ったと思ったら、すぐさまデカイ声で律哉の名前を呼びながら、全力疾走で駆け寄ってきた。
「りっりっりっちゃん!! 何してんの!?」
「恭平、うるさい」
何してるって…………俺のシャツ捲り上げて、胸をペタペタ。ホント、何やってるんでしょう。
「りっちゃん! よその男の胸を、そんな容易く触るんじゃないの!」
俺の胸を触っていた律哉の手は、恭平によって引き剥がされて。
とりあえず俺は、捲り上げられてたシャツを元に戻すけど。
「ねぇねぇ、千秋の胸、すごいんだよ!」
「は? 千秋の胸? 何が? 乳首?」
「るせぇよ!」
よく分からないけれど、妙に俺の胸を褒めてくれる律哉に対していらないボケをする恭平にとりあえず突っ込んでおく。
乳首小さいのは、俺だって気にしてんだよ、バカ!
「胸筋だってば! すっごい胸板厚いの! 俺ね、前に着替えるときちょっと見てさぁ、ちゃんと見たいと思ってたんだよねー。千秋、どのくらい鍛えてんの?」
「どのくらい、って言われても……でも結構サーフィンとか行ったし」
「サーフィン!? 超かっこいい! そんでそんなに胸板厚くなるんだ!? すごいすごい!!」
子供みたいに無邪気に感心する様がかわいくて、ついつい頬が緩んでしまう。そんな律哉の横で、恭平は苦虫を噛み潰したような顔をしてるけど。
「千秋、サーフィンよく行くの?」
「んー時間があればね。この夏は結構行ってるかな。よかったら律哉も一緒に行く?」
「マジで!? あ、でも俺やったことないし…………全然出来ないから、一緒に行ってもつまんないかも…」
「そんなことないよ。しっかり教えるし」
「ホント!? 行きたい行きたい!!」
キャー!! なんて、もう周りにパァッとお花でも飛ばしちゃってるんじゃないかっていうくらい満面の笑みで、律哉が顔を綻ばせながら抱き付いて来た。
せっかくだから抱き返してあげると、律哉はますますキュウと抱き付いてきて…………あぁ、何だかいい感じ。
「ちょちょちょちょちょっと!!」
グイッ。
そんないい感じの俺たちを引き剥がす手。
もちろん恭平だ。
「何すんだよ、恭平!」
俺から離された律哉は、そのまま恭平の腕の中にキュウキュウに抱き寄せられている。
「何すんだじゃないでしょ! ダメダメダメ! 何で千秋とサーフィンなわけ!?」
「だって俺も、千秋みたいにサーフィン出来るようになりたい。胸板厚くなりたいの」
「サーフィンなら俺もするし! つーかこれ以上胸板厚くしてどうすんの!?」
確かに。
かわいい顔して筋肉大好きの律哉は、最近やたら鍛えまくってて、すっかり逞しくなっているらしい。
脱いだところは見たことがないけれど、この顔であんまりムキムキなのもなぁ…。
でも本人が鍛えたがってるのを止めるのも気が引けるし、それに一緒にサーフィンとか行けるんだったら、すっごい嬉しいのにな。
…………でも。
でもさぁ…。
「でも恭平、今年まだ1回も海行ってないって言ってたじゃん。ホントにちゃんと出来るの?」
「出来るっつーの! てか、千秋と行くなんて、言語道断!!」
「言語道断…………あー……難しい言葉知ってて偉いねぇ、恭平くんは」
「偉いっしょ? だから千秋なんかとサーフィン行くのはやめて、俺と遊びに行こうね?」
「えー? ご飯は恭平の奢り?」
「もち」
「じゃあ、しょうがないから恭平と一緒に遊んでやるか」
「やた!」
ものすごい上から目線なんですけど……律哉さん。
でも恭平は渋々どころか、大喜びって感じで律哉と約束を取り付けてる。ってか、どうせ今日だって一緒に帰るんでしょ?
あーあ、やっぱ最後は恭平に持ってかれちゃうのか。
「ゴメンね、千秋。一緒にサーフィン行けそうもないや」
「残念だったね。恭平の教え方がへたくそだったらいつでも連絡してよ。駆けつけるからさ」
「んふふ、そうする!」
なるべく冗談に聞こえるようにそう言って、恭平の腕の中に収まってる律哉のふわふわの髪の毛を撫でてやる。
この髪の毛の1本ですら、俺のものにはならないなんて。
「じゃーね、千秋、バイバーイ」
「じゃあね」
恭平に引き摺られるようにして去っていく律哉。
無邪気に手を振って。
あぁ、やっぱ恭平には敵わないんだなって、思い知らされる。
どんなに強く想ったって、律哉の気持ちのベクトルは恭平のほうを向いていて。
こんな不毛な恋心……いっそ捨ててしまえればいいのに。
それでも幸せになれる日を思い描いてるなんて。
―――――手に入りっこないのに。
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