恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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十一月 蹲る身体を貫き去る風 (3)


 夕べ睦月と一緒に選び抜いた服を着て祐介に会えば、すぐに「いつもと雰囲気違うね」という欲しかった言葉を貰って、それだけで和衣の心は浮足立っていた。
 でも、「祐介と出掛けるからだよ」とまでは言えなくて、「…ちょっとね」とごまかしてしまったけれど。

「映画、おもしろかったね!」
「うん」

 興奮気味に話す和衣に、祐介は笑って答える。
 こんなに喜んでもらえるなら、誘った甲斐があったと思う。

「でも和衣がこんなに映画好きだって知らなかった」
「ん、結構見に行ったりするよー。祐介も、結構行く?」
「まぁ、時々。じゃあ、また何かおもしろそうなの来たら、見に行こっか」
「えっ…」

 祐介のさり気ない一言に、和衣は一瞬言葉を詰まらせる。別に嫌だからというわけではない。むしろ逆だ。
 まさか、祐介からそんなことを言ってもらえるとは思ってなかったから、ビックリしてしまったのだ。

「え、ヤダ? あ、俺よか彼女だよなー、映画見に行くなら」
「ちっ違うの! 行きたい! あの、何か…また誘ってもらえると思わなくて、ビックリして…。行きたいよ、祐介と。うん、行きたい!」
「そう? 何かそんなに言われると、ついいっぱい誘っちゃいそう」
「い…いいよ! いっぱい誘ってよ!」
「うはは、何かそのうちウゼェて言われそう」
「言わないよ!」

 それは単なる社交辞令的な言葉なのかもしれないけれど、和衣にしたら、また次がある、そう思うだけで、それこそ天にも昇る心地だ。

「まだ時間早いし、どっか寄ってく? それとも何か食う?」
「あ、えと…うん」
「ん? どうする?」

 もしこれが女の子とのデートだったら、こんなセリフ、きっと自分が言うのだろう。高校のころ付き合っていた彼女とのデートも、大体そんな感じだった。
 でもそれを今、祐介から言われて、勝手にデート気分が盛り上がってしまう。
 ……まぁ、実際はデートでも何でもないんだけれど。

「…ん、どっか寄ってきたい。で、ご飯食べてから帰る」

 自分でも欲張りなことを言っていると思ったけれど、でもまだ一緒にいたい。
 普段から一緒につるんでいるといえばつるんでいるけれど、2人きりになるチャンスはめったにないから、今の時間を大切にしたい。

「じゃあ、どこ行く?」

 和衣が、欲張りすぎたかなとドキドキしているのとは裏腹に、祐介はあっさりとそれに乗ってきてくれた。
 しかも和衣の意見を優先しようとしてくれるし、優しい。
 他意がないからこそ、なのだろうけど。

(でも、そんな優しくされたら、勘違いしそうになっちゃうじゃん…)

 根本的に祐介は、誰に対してもひどく優しい男だ。
 幼馴染みの睦月には時々厳しいことも言うが、それも彼を心配してのことだというのは、すぐに分かる。
 なのに、2人きりのときに、こんな風に優しくされたら、まるで自分だけにみたいな気がしてしまって。
 もしかしたら、想いが通じ合えてるんじゃないかって、錯覚しそうになる。

(こんなこと……もし他の誰かも同じこと思ってて、先越されちゃったらどうしよう…。相手が女の子だったら、勝ち目ないよね…)

 デート気分で、1人で勝手に舞い上がっていたけれど、今日のことだって、祐介にしたら、単に友人の1人を誘ったに過ぎないわけで。でもこれがもし女の子だったら、本当にデートになるんだろう。
 祐介の性格からして、お付き合いもしていない女の子と、2人きりで映画になんか出掛けるとも思えないから。

 男だから、気軽に誘ってくれた。
 友人だから。

(なのに、もし告白したら?)

 祐介の友情が、愛情に変わってくれたらいい。
 でも、そうでなかったら、その先に待っているのは、友情の崩壊しかない。

(…怖い)

 もう自分は、祐介なしではいられないくらい、好きになってしまっているのに。

「和衣? どうした? 疲れた?」

 急に黙り込んでしまった和衣に、隣を歩いていた祐介が顔を覗き込んで来る。
 よほど深刻そうな顔をしていたのか、すぐに祐介の表情が心配そうなものに変わった。

「…ううん、違う、ちょっと考え事…、ゴメン」
「そう? 寒いし、どっか入ろうぜ?」
「うん」

 もう考えるのはやめよう。
 今は、一緒にいられるこの時間を、楽しもう。

「あのね、俺、行きたい店あんの。そこ、行ってもいい?」

 泣きたいような気持ちを隠して、和衣は精一杯笑った。
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カテゴリー:君といる十二か月
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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柚子季杏 ⇒ カズちゃんも

辛いですね~~(T_T)
切ないな…ゆっちにとってはただの友達なんだもんね。
ゆっちもカズちゃんを好きになってくれればイイのに~地団駄!
難しいなぁ~友達から恋人へ。
男女間でも難しいですよね…それが男同士だし。
んー。
カズちゃんも亮ちゃんも、ガンガレー!!

  • |2009.01.16
  • |Fri
  • |07:32
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りり ⇒ お、乙女…!!

か、可愛い…何ていじらしいのカズちゃん。
お洋服も頑張って、ひとことひとことに神経をそばだてて。
乙女だ。可愛いよカズちゃ~ん。
誰にでも優しい男、というのも困ったもんですよね。
ついつい期待してしまうし。
ゆっちカズちゃん泣かすなよ!
これで両思いになったら最高なんだけど。

  • |2009.01.16
  • |Fri
  • |10:26
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如月久美子 ⇒ >柚子季さん

 ゆっちさん、まじめなんで、相手が女の子だったら、きっと2人きりでも出掛けないだろうな、と。
 カズちゃんが男の子だからこそ、気兼ねなく誘ったり、誘いに応じたりしてるんだろうなぁ、みたいな。

 友だちから恋人て、ただでさえ難しいのに、男同士ですからね。
 くわえてゆっちさん、何考えてるのか分からないとこ多いですからねぇ(苦笑)

 ただいまみんなが混乱中、といった感じで。

> カズちゃんも亮ちゃんも、ガンガレー!!

 この応援、しかとみんなに送りたいと思います!

 コメントありがとうございました!

  • |2009.01.16
  • |Fri
  • |22:51
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如月久美子 ⇒ >りりさん

 かわいい男好きが高じて、うっかりカズちゃんが乙女に…。
 でも、ゆっちにかわいいって言ってもらえるならがんばる! てカズちゃんの根性、私も見習いたいとこです…。

 ゆっちの優しさが、誰にでもなのか、自分にだけなのか、未だに分かりかねるカズちゃん。
 優しすぎる男てのも、ホント困りものですね。
 その優しさでカズちゃんを泣かせなきゃいいと、私も思ってます(爆)

 コメントありがとうございました!

  • |2009.01.16
  • |Fri
  • |22:55
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