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十一月 蹲る身体を貫き去る風 (3)
2009.01.16 Fri
夕べ睦月と一緒に選び抜いた服を着て祐介に会えば、すぐに「いつもと雰囲気違うね」という欲しかった言葉を貰って、それだけで和衣の心は浮足立っていた。
でも、「祐介と出掛けるからだよ」とまでは言えなくて、「…ちょっとね」とごまかしてしまったけれど。
「映画、おもしろかったね!」
「うん」
興奮気味に話す和衣に、祐介は笑って答える。
こんなに喜んでもらえるなら、誘った甲斐があったと思う。
「でも和衣がこんなに映画好きだって知らなかった」
「ん、結構見に行ったりするよー。祐介も、結構行く?」
「まぁ、時々。じゃあ、また何かおもしろそうなの来たら、見に行こっか」
「えっ…」
祐介のさり気ない一言に、和衣は一瞬言葉を詰まらせる。別に嫌だからというわけではない。むしろ逆だ。
まさか、祐介からそんなことを言ってもらえるとは思ってなかったから、ビックリしてしまったのだ。
「え、ヤダ? あ、俺よか彼女だよなー、映画見に行くなら」
「ちっ違うの! 行きたい! あの、何か…また誘ってもらえると思わなくて、ビックリして…。行きたいよ、祐介と。うん、行きたい!」
「そう? 何かそんなに言われると、ついいっぱい誘っちゃいそう」
「い…いいよ! いっぱい誘ってよ!」
「うはは、何かそのうちウゼェて言われそう」
「言わないよ!」
それは単なる社交辞令的な言葉なのかもしれないけれど、和衣にしたら、また次がある、そう思うだけで、それこそ天にも昇る心地だ。
「まだ時間早いし、どっか寄ってく? それとも何か食う?」
「あ、えと…うん」
「ん? どうする?」
もしこれが女の子とのデートだったら、こんなセリフ、きっと自分が言うのだろう。高校のころ付き合っていた彼女とのデートも、大体そんな感じだった。
でもそれを今、祐介から言われて、勝手にデート気分が盛り上がってしまう。
……まぁ、実際はデートでも何でもないんだけれど。
「…ん、どっか寄ってきたい。で、ご飯食べてから帰る」
自分でも欲張りなことを言っていると思ったけれど、でもまだ一緒にいたい。
普段から一緒につるんでいるといえばつるんでいるけれど、2人きりになるチャンスはめったにないから、今の時間を大切にしたい。
「じゃあ、どこ行く?」
和衣が、欲張りすぎたかなとドキドキしているのとは裏腹に、祐介はあっさりとそれに乗ってきてくれた。
しかも和衣の意見を優先しようとしてくれるし、優しい。
他意がないからこそ、なのだろうけど。
(でも、そんな優しくされたら、勘違いしそうになっちゃうじゃん…)
根本的に祐介は、誰に対してもひどく優しい男だ。
幼馴染みの睦月には時々厳しいことも言うが、それも彼を心配してのことだというのは、すぐに分かる。
なのに、2人きりのときに、こんな風に優しくされたら、まるで自分だけにみたいな気がしてしまって。
もしかしたら、想いが通じ合えてるんじゃないかって、錯覚しそうになる。
(こんなこと……もし他の誰かも同じこと思ってて、先越されちゃったらどうしよう…。相手が女の子だったら、勝ち目ないよね…)
デート気分で、1人で勝手に舞い上がっていたけれど、今日のことだって、祐介にしたら、単に友人の1人を誘ったに過ぎないわけで。でもこれがもし女の子だったら、本当にデートになるんだろう。
祐介の性格からして、お付き合いもしていない女の子と、2人きりで映画になんか出掛けるとも思えないから。
男だから、気軽に誘ってくれた。
友人だから。
(なのに、もし告白したら?)
祐介の友情が、愛情に変わってくれたらいい。
でも、そうでなかったら、その先に待っているのは、友情の崩壊しかない。
(…怖い)
もう自分は、祐介なしではいられないくらい、好きになってしまっているのに。
「和衣? どうした? 疲れた?」
急に黙り込んでしまった和衣に、隣を歩いていた祐介が顔を覗き込んで来る。
よほど深刻そうな顔をしていたのか、すぐに祐介の表情が心配そうなものに変わった。
「…ううん、違う、ちょっと考え事…、ゴメン」
「そう? 寒いし、どっか入ろうぜ?」
「うん」
もう考えるのはやめよう。
今は、一緒にいられるこの時間を、楽しもう。
「あのね、俺、行きたい店あんの。そこ、行ってもいい?」
泣きたいような気持ちを隠して、和衣は精一杯笑った。
でも、「祐介と出掛けるからだよ」とまでは言えなくて、「…ちょっとね」とごまかしてしまったけれど。
「映画、おもしろかったね!」
「うん」
興奮気味に話す和衣に、祐介は笑って答える。
こんなに喜んでもらえるなら、誘った甲斐があったと思う。
「でも和衣がこんなに映画好きだって知らなかった」
「ん、結構見に行ったりするよー。祐介も、結構行く?」
「まぁ、時々。じゃあ、また何かおもしろそうなの来たら、見に行こっか」
「えっ…」
祐介のさり気ない一言に、和衣は一瞬言葉を詰まらせる。別に嫌だからというわけではない。むしろ逆だ。
まさか、祐介からそんなことを言ってもらえるとは思ってなかったから、ビックリしてしまったのだ。
「え、ヤダ? あ、俺よか彼女だよなー、映画見に行くなら」
「ちっ違うの! 行きたい! あの、何か…また誘ってもらえると思わなくて、ビックリして…。行きたいよ、祐介と。うん、行きたい!」
「そう? 何かそんなに言われると、ついいっぱい誘っちゃいそう」
「い…いいよ! いっぱい誘ってよ!」
「うはは、何かそのうちウゼェて言われそう」
「言わないよ!」
それは単なる社交辞令的な言葉なのかもしれないけれど、和衣にしたら、また次がある、そう思うだけで、それこそ天にも昇る心地だ。
「まだ時間早いし、どっか寄ってく? それとも何か食う?」
「あ、えと…うん」
「ん? どうする?」
もしこれが女の子とのデートだったら、こんなセリフ、きっと自分が言うのだろう。高校のころ付き合っていた彼女とのデートも、大体そんな感じだった。
でもそれを今、祐介から言われて、勝手にデート気分が盛り上がってしまう。
……まぁ、実際はデートでも何でもないんだけれど。
「…ん、どっか寄ってきたい。で、ご飯食べてから帰る」
自分でも欲張りなことを言っていると思ったけれど、でもまだ一緒にいたい。
普段から一緒につるんでいるといえばつるんでいるけれど、2人きりになるチャンスはめったにないから、今の時間を大切にしたい。
「じゃあ、どこ行く?」
和衣が、欲張りすぎたかなとドキドキしているのとは裏腹に、祐介はあっさりとそれに乗ってきてくれた。
しかも和衣の意見を優先しようとしてくれるし、優しい。
他意がないからこそ、なのだろうけど。
(でも、そんな優しくされたら、勘違いしそうになっちゃうじゃん…)
根本的に祐介は、誰に対してもひどく優しい男だ。
幼馴染みの睦月には時々厳しいことも言うが、それも彼を心配してのことだというのは、すぐに分かる。
なのに、2人きりのときに、こんな風に優しくされたら、まるで自分だけにみたいな気がしてしまって。
もしかしたら、想いが通じ合えてるんじゃないかって、錯覚しそうになる。
(こんなこと……もし他の誰かも同じこと思ってて、先越されちゃったらどうしよう…。相手が女の子だったら、勝ち目ないよね…)
デート気分で、1人で勝手に舞い上がっていたけれど、今日のことだって、祐介にしたら、単に友人の1人を誘ったに過ぎないわけで。でもこれがもし女の子だったら、本当にデートになるんだろう。
祐介の性格からして、お付き合いもしていない女の子と、2人きりで映画になんか出掛けるとも思えないから。
男だから、気軽に誘ってくれた。
友人だから。
(なのに、もし告白したら?)
祐介の友情が、愛情に変わってくれたらいい。
でも、そうでなかったら、その先に待っているのは、友情の崩壊しかない。
(…怖い)
もう自分は、祐介なしではいられないくらい、好きになってしまっているのに。
「和衣? どうした? 疲れた?」
急に黙り込んでしまった和衣に、隣を歩いていた祐介が顔を覗き込んで来る。
よほど深刻そうな顔をしていたのか、すぐに祐介の表情が心配そうなものに変わった。
「…ううん、違う、ちょっと考え事…、ゴメン」
「そう? 寒いし、どっか入ろうぜ?」
「うん」
もう考えるのはやめよう。
今は、一緒にいられるこの時間を、楽しもう。
「あのね、俺、行きたい店あんの。そこ、行ってもいい?」
泣きたいような気持ちを隠して、和衣は精一杯笑った。
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒ カズちゃんも
辛いですね~~(T_T)
切ないな…ゆっちにとってはただの友達なんだもんね。
ゆっちもカズちゃんを好きになってくれればイイのに~地団駄!
難しいなぁ~友達から恋人へ。
男女間でも難しいですよね…それが男同士だし。
んー。
カズちゃんも亮ちゃんも、ガンガレー!!
切ないな…ゆっちにとってはただの友達なんだもんね。
ゆっちもカズちゃんを好きになってくれればイイのに~地団駄!
難しいなぁ~友達から恋人へ。
男女間でも難しいですよね…それが男同士だし。
んー。
カズちゃんも亮ちゃんも、ガンガレー!!
りり ⇒ お、乙女…!!
か、可愛い…何ていじらしいのカズちゃん。
お洋服も頑張って、ひとことひとことに神経をそばだてて。
乙女だ。可愛いよカズちゃ~ん。
誰にでも優しい男、というのも困ったもんですよね。
ついつい期待してしまうし。
ゆっちカズちゃん泣かすなよ!
これで両思いになったら最高なんだけど。
お洋服も頑張って、ひとことひとことに神経をそばだてて。
乙女だ。可愛いよカズちゃ~ん。
誰にでも優しい男、というのも困ったもんですよね。
ついつい期待してしまうし。
ゆっちカズちゃん泣かすなよ!
これで両思いになったら最高なんだけど。
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
ゆっちさん、まじめなんで、相手が女の子だったら、きっと2人きりでも出掛けないだろうな、と。
カズちゃんが男の子だからこそ、気兼ねなく誘ったり、誘いに応じたりしてるんだろうなぁ、みたいな。
友だちから恋人て、ただでさえ難しいのに、男同士ですからね。
くわえてゆっちさん、何考えてるのか分からないとこ多いですからねぇ(苦笑)
ただいまみんなが混乱中、といった感じで。
> カズちゃんも亮ちゃんも、ガンガレー!!
この応援、しかとみんなに送りたいと思います!
コメントありがとうございました!
カズちゃんが男の子だからこそ、気兼ねなく誘ったり、誘いに応じたりしてるんだろうなぁ、みたいな。
友だちから恋人て、ただでさえ難しいのに、男同士ですからね。
くわえてゆっちさん、何考えてるのか分からないとこ多いですからねぇ(苦笑)
ただいまみんなが混乱中、といった感じで。
> カズちゃんも亮ちゃんも、ガンガレー!!
この応援、しかとみんなに送りたいと思います!
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >りりさん
かわいい男好きが高じて、うっかりカズちゃんが乙女に…。
でも、ゆっちにかわいいって言ってもらえるならがんばる! てカズちゃんの根性、私も見習いたいとこです…。
ゆっちの優しさが、誰にでもなのか、自分にだけなのか、未だに分かりかねるカズちゃん。
優しすぎる男てのも、ホント困りものですね。
その優しさでカズちゃんを泣かせなきゃいいと、私も思ってます(爆)
コメントありがとうございました!
でも、ゆっちにかわいいって言ってもらえるならがんばる! てカズちゃんの根性、私も見習いたいとこです…。
ゆっちの優しさが、誰にでもなのか、自分にだけなのか、未だに分かりかねるカズちゃん。
優しすぎる男てのも、ホント困りものですね。
その優しさでカズちゃんを泣かせなきゃいいと、私も思ってます(爆)
コメントありがとうございました!