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落下星 (27) R18
「亮にされるのは、気持ちよかったよ?」
「ホント?」
「うん、ホント」
素直にそう答えると、亮は本当に嬉しそうな顔をした。
「亮?」
「いや、だって嬉しいじゃん。俺相手だから、ちゃんと気持ちよくなれて、イケたって……俺のこと、特別に思ってくれてるからでしょ?」
「そうなのかな?」
「…そうだって、思わせといてよ」
ちょっと情けないような顔で、亮は笑った。
亮だからだ、て。
亮のことが好きで、特別だから、て――――自惚れさせていて。
「亮のこと、好きだからか……何かいいね、それ」
「ぅん?」
「んふふ、亮のこと好きだから、ちゃんと出来るの、俺」
そう言って睦月はかわいらしく笑うが、言っていることはかなり大胆だ。
亮はちょっとドキドキしながら、再開を告げるように、睦月に口付けた。
「ん…」
甘い舌を堪能し、太ももの内側を撫で上げる。
睦月の反応を窺いながら、亮は腕をその後ろに回した。
「ぁ…」
「ここ、使うんだよ? 出来る?」
女性の体ほど柔らかくはない尻の間に指を滑らせると、睦月はハッと目を開け、戸惑うような視線を亮に向けた。
今さら聞くまでもなく、睦月この行為の続きも意味も分かっているだろうけれど、果たして最後まで受け入れてくれるのか。体はもちろんのこと、心もすべて。
「睦月?」
睦月からの返事はないが、かといって嫌がる素振りもない。
続けるとしても、もちろんこのままでは出来ないから、亮はローションを手に取ると、それを睦月の前にかざした。
「睦月、…続けてい?」
「…いいよ」
「怖い?」
「…………、…うん」
少し間を置いてから、睦月は素直に頷いた。
「でも平気だから、続けて?」
「怖いけど、平気?」
「…亮だから」
はにかむような表情でそう言って、睦月は目を伏せた。
――――だからその言葉と仕草に、亮が再び、暴走しそうなくらい熱を高めたことなんて、気付く由もなくて。
亮はごまかすように、乾いた唇を舐めた。
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
落下星 (28) R18
「睦月、ちょっと伏せになってくれる?」
「ん? うつ伏せ? うつ伏せに寝るの?」
「うつ伏せっつーか…、膝立ててさ」
睦月は、素直にコロリと身を返してうつ伏せに寝そべったが、亮はその腰を上げさせ、四つん這いの格好から肘を折り崩したような状態にした。
「何か…恥ずかしいんだけど…」
お尻を亮のほうに突き出す格好になってしまい、睦月は羞恥に肌を染めながら、チラリと亮を振り返った。
「このほうが楽だと思うんだけど…、じゃあ、仰向けになる? でも足ガバッて開くよ?」
「えー…そのほうが恥ずかしい気がする…」
亮の提案に、睦月は顔を曇らせる。
この体勢も十分恥ずかしいけれど、仰向けになって足を大きく開かされるのは、我慢できないくらい恥ずかしい。
それならば、どんな格好がいいのかと言われても、セックスのときの格好なんて、冷静になって考えれば、どれもみんな恥ずかしいし、そんなに格好いいものでもない。
自分は結局、何をされても許してしまうし、受け入れてしまうのだろうと、睦月は思った――――相手が亮だから。
「いいよ…亮の好きにして」
もう決めたから。
亮に抱かれたいって、そう思ったんだから。
「んっ…ふ、ぅ…」
やわやわと尻の肉を揉まれ、睦月は顔をうずめた枕の端を、ギュウと握り締めた。
「やっ、やぁだ…!」
「ヤダ? でも気持ちいいでしょ?」
「あっ、ぁん…」
「大丈夫、怖がらないで素直に感じて?」
汗ばんだ睦月の肌が、ほんのりと色づく。
こんなことされて、恥ずかしいし、気持ちいいわけない、て思うのに、余計なことを考えるのをやめて、素直に行為に溺れれば、確かに亮の言うとおり、それが快感に繋がるから不思議だと思う。
「ん、ぁっ…!」
亮の指が尻の間の窄まりに触れると、睦月の背がわずかにしなる。
一瞬、睦月は背後を振り返ろうとしたが、その部分に触れているのは亮だと、だから怖がる必要はないと言い聞かせ、枕に顔を戻した。
「睦月、冷たかったらゴメンね」
「え…? ひゃっ」
何のこと? と思う前に、亮の指に撫でられていたその場所に、冷たく、濡れた感触がして、驚いて睦月はビクリと大きく体を震わせた。
「やっ…な、何?」
「大丈夫、ローションだから」
「あ、やっ、つめた…うぅんっ!」
ヌルヌルと襞の周りをなぞっていた亮の指が、少しだけ睦月の中に入り込んできた。
思わず睦月は身を硬くして、その拍子に亮の指先を締め付けてしまう。
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
落下星 (29) R18
「あ、ぁ…ひゃ、ぁ…」
「睦月、ちゃんと息吐いて。そしたらもっと楽になるから」
亮が、まだほんの少ししか指を進めていないのは、睦月にもよく分かる。これ以上、事を進めるには、このままじゃダメなことも。
けれど、そんな気持ちとは裏腹に、体のほうは少しも言うことを聞いてくれなくて、睦月は掴んでいただけの枕を強く抱き締めた。
「睦月…」
背中に、多い被さる気配。
背後から抱き締められ、耳元にキスされる。
「ん、んっ…」
耳に熱い吐息が掛かり、耳たぶをしゃぶられる。
睦月自身、亮にそうされるまで気付いていなかったけれど、耳は感じるポイントの1つのようで、そこをちょっと弄られただけで、下腹部の違和を忘れてしまうくらい、快感が背中を駆け上がる。
「ふっ…ん、ん…」
じわり。
体の温度が上がるのが、自分でも分かる。
睦月は、自分の中に篭る熱を持て余すように、ゆるゆると首を振る。
「あぁっ…」
ズルリと、指先だけしか収まっていなかった亮の指が、ゆっくりと睦月の中を穿つ。
慣れない異物感が下腹部を襲うけれど、亮の唇が耳元から首筋を愛撫していくから、どちらに気を取られているのか分からなくなって、睦月の思考はグルグルし出す。
気持ちいいのか、そうでないのか。
痛い? 痛くない?
けれど、すぐ近くに亮を感じる。
「りょ、うっ…、んんっ!」
何本かに増やされた指が、睦月の中でバラバラに動いていて、その指がある一か所を掠めたとき、睦月は大きく身を震わせた。
「え、睦月?」
「あぁ、やっ…」
亮としても、意図してやったわけではないので、睦月の大きな反応に驚いて、その様子を窺おうとするが、睦月は枕に顔をうずめたまま、ビクビクと打ち震えている。
痛いのかとも思ったが、睦月の中はざわざわと蠕動しながら、引き抜こうとする亮の指を、逃がすまいとでもするように締め付けてくる。
「や、や、亮…、中、変っ…」
そんなの、睦月にだって分からない。
ただ、亮の指が中で蠢き、その部分に触れられると、体中に甘い痺れが走って、下腹部には熱が溜まって、睦月自身、自分の体がどうなっているのか、どうなってしまうのか、分からなくなってしまうのだ。
「あぁっ!」
確かめるように、亮は睦月の中の、その部分、小さく痼ったその場所を撫で付ければ、睦月は甘い声を上げて体を震わす。
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テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
落下星 (30) R18
「やっ…亮っ…!」
睦月は必死に後ろに手を伸ばして、亮の腕を押さえた。
「痛い?」
「ちが、分かんな、あっ、あ…」
よく分からないが自分の行動が、しかも耳への愛撫ではなく、睦月の中にうずめた指が睦月の熱を煽るようで、そっと前に手を伸ばせば、1度イッてからロクに触れていなかったのに、すでにはち切れんばかりに熱を帯びている。
「ヤダぁ、怖いっ…!」
自身を直接愛撫しても、なかなかうまく達することの出来なかった睦月にしたら、今までそんなに丹念に触れられたこともない場所で一気に追い上げられるのは恐怖に近く、快感との狭間で泣き出した。
「睦月…」
「あぅっ!」
亮は手を止めると、睦月の体を横向きにさせて、向かい合うように抱き寄せた。
睦月は縋るように亮に抱き付いて、けれどそうすることで、中にある亮の指の存在を自ら知らしめてしまい、思わず声を上げてしまった。
「うーうー…亮…」
「ぅん?」
思わず泣き出してしまったせいで、まだ目元は濡れていたけれど、睦月はもう怖いと喚くことなく、亮の胸に頭を預けていた。
少し睦月が落ち付いたのだと気付いた亮は、宥めるようなキスを繰り返す。
「りょぉ…」
「なぁに?」
「指ぃ…」
甘やかすような言い方の亮の問い掛けに、睦月は、分かってるくせに…! と、恨めしげな視線を向ける。
「抜いてほしいの?」
「だって何か変なんだもん…、あんっ! やっ、亮、動かしちゃヤダ…!」
「でも動かさなきゃ、抜けないよ?」
「うー…」
詭弁だと言われるかもしれないが、亮はそんなことを言って、睦月を困らせる。
「でも、気持ちよくない? ここ弄られんの」
「んぁっ! やぁっ、バカ…!」
中でクイと指を曲げられて、ゾワリとした快感が背中を駆け上がる。
うつ伏せになっていた先ほどまでと違って、今度は腕を伸ばせば亮がいる。睦月は堪えるように、亮にしがみ付いた。
「大丈夫、怖くないから…。だからもっと感じて?」
平気だよ? と宥めすかすように言って、睦月の後ろにローションを注ぎ足せば、睦月は甘い鳴き声を上げて亮に抱き付いた。
「りょおっ…!」
また睦月を怖がらせて、泣かせてしまうかもしれない。
そう思ったけれど、睦月の中はそれと裏腹に、与えられる快感に素直で、だから亮はその手を止めることが出来なくて。
「睦月、好き…。ね、俺のこと、受け入れてくれる…?」
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
落下星 (31) R18
俺のこと、受け入れてくれる? と言った亮の言葉の意味を分かっているのかいないのか、ポヤンとした表情で、睦月は亮を見つめていた。
「いい? 睦月」
「…え…? あっ…」
睦月の返事を聞く前に、亮は睦月の中にうずめていた指をズルリと引き抜いた。
たっぷりと垂らしていたローションがトロリと中から溢れて、亮は不覚にも、その光景だけで熱を高ぶらせてしまう。
「あ…」
足を少し広げられ、会陰と後ろの窄まりの間を熱く濡れたものに撫でられて、ハッと目を開けた睦月は、それが亮の屹立したものなのだということに気が付いた。
戸惑うように視線を上げれば、亮と目が合う。
最初に話していたとおり、亮は無理に事を進める気はないようで、けれどここまで来て止めることも出来なくて。
「…ダメ?」
「……ダメじゃない、けど…」
「けど?」
問い直されて、けれど睦月はそこで口籠ってしまった。
「睦月?」
「いい、よ…?」
睦月は目を伏せて、おずおずとそう申し出た。
その仕草に、思わず亮の喉が鳴る。
睦月にそんな気がないことは百も承知だが、無意識の仕草は亮の熱を煽るばかりで。
亮は大きく1つ息をついてから、睦月にキスをして、抱えていた足を下ろした。
「亮…?」
急に離れた亮の気配に、睦月が不安そうな声を上げる。
どうして? と睦月の視線が亮を追い掛ければ、亮はガサガサとベッドサイドをあさって、コンドームを取り出した。
睦月はその様子を、ジッと見つめている。
「え、何? 睦月」
パッケージの封を切って中身を出したところで、亮は、自分を見つめる睦月の視線に気が付いた。
別にコンドームを付けるところくらい、見られて困ることはないが、そんなにジロジロと見られると、何だかちょっと気恥ずかしい。
「…付けるの?」
まだ色香を漂わせた表情で、睦月は不思議そうに亮に尋ねた。
「え?」
「それ。ゴム。俺、男だよ?」
「…知ってるけど?」
睦月が男だなんてこと、百も承知の上で進めてきたセックスだ。何を今さらと思うが、睦月はよく分からない、という顔で亮を見ている。
「何? どうしたの? 教えて?」
睦月がセックスについて、ひどく偏った考えを、刷り込みのように持っていることは、もうよく分かった。きっと今も、亮が思い付かないようなことを考えているに違いない。
言葉足らずで誤解を招くのはもう嫌だから、下腹部はのっぴきならない状況だけれど、ちゃんと聞いて確かめたい。
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
落下星 (32) R18
「だって俺、男なのに、亮、何でゴム付けんの?」
「何でって…」
亮としては、セックスのときにコンドームを付けるのは、やっぱりマナーかな、と思っただけのことで、別に相手が男だろうと女だろうと、その辺のところはあまり意識していなかった。
ただ睦月は、男相手なのにコンドームを付けるのが、とても不思議なようで、亮が説明をしても、まだよく分からないという顔をしている。
「何で? そんなに不思議?」
「だって俺、女の子じゃないし、別に妊娠とかしないのに」
「そうだけど…。でもヤじゃない? 生で入れられんの」
「…………、ヤ、……だった」
少しの沈黙の後、睦月はそう答えて、唇を噛んだ。
本当は嫌だった。
あのとき。
知らない男の精液を、体の奥で受け止めたこと。
すごく気持ち悪かったけれど、学校の授業では、望まない妊娠をしないためにコンドームを付けなさい、て教わったから、男の睦月は、嫌でも我慢しなきゃいけないんだと思った。
だから亮とセックスするときは、好きな人のだから我慢できる、て思おうとしていた。
なのに亮は、睦月が何も言わないのに、当たり前のようにコンドームを取り出したから、すごくビックリしたのだ。
「…そっか。むっちゃん、ホントは嫌だったのにね」
「うん、嫌だったの。だから亮がゴム出したとき、すごいビックリしたけど、……何か嬉しかった」
そう言って睦月は、はにかむように笑った。
睦月が昔経験したセックスは、愛を確かめ合うものではなくて、相手の欲望を一方的に受け入れるだけの行為だった。
好きな人とするセックスを、愛し合うための行為を睦月は知らなくて、だから、普通の人にしたら何でもないような些細なことも、睦月にはすごく嬉しかったのだ。
「俺が睦月の嫌がること、するわけないじゃん」
「…ん」
額をくっ付けて、そのまま甘やかすようなキスをされる。
触れる肌のぬくもりが、ひどくいとおしい。
「亮…」
「ん?」
「いいよ。大丈夫だから、……続けて?」
睦月はそっと亮に手を伸ばして、その首に腕を絡めた。
「続けるよ?」
睦月の耳元で囁けば、コクリと小さく頷いた。
亮はこめかみにキスを落としてから、睦月の足を抱え直す。
「ぁ…」
平気だとは言ったけれど、やっぱり怖くて、睦月はキュッと目を瞑った。
後ろの窄まりに感じる、亮の熱。
ゆっくりとそこを押し広げられる感覚に、ゾワリと肌が泡立つ。
「やっ、あっ、あ…」
我慢できずに睦月は、腰を押さえる亮の腕に手を添えて押し留めようとしたけれど、その手をやんわりと外され、首の後ろへと回させられた。
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
落下星 (33) R18
「あぁ、あ、亮っ…!」
「ッ…、ゴメ…睦月、息吐いて、力抜いて?」
「ん、ぅ、あぁっ」
自分のためにも、亮のためにも力を抜いたほうがいいのは分かるが、体がそれに全然ついていかない。
めり込むように侵入してくる熱く猛った亮自身に、本来とは逆の動きを受け止めようとしている後孔が、睦月の心とは裏腹に抵抗を示す。
それは、人間本来の生理的な現象にすぎないし、亮も睦月が苦しいことは分かっているけれど、そんなに締め付けられては堪え切れない。
「睦月、」
「ひ、ぅ、う…」
奥歯を噛みながら睦月の前に手を伸ばせば、痛みと言い知れぬ恐怖に萎えてしまった性器に指を絡ませ、亮はゆっくりとさらに腰を進める。
新しい刺激に驚いたのか、反射的な動きだったのか、ガクリと喉を仰け反らした睦月は、かぶりを振りながら、進んでくる亮から逃げるようにヘッドボードのほうへとずり上がった。
「やっ、やぁっ!」
侵入してくる。
暴かれる。
「あっ、やだぁっ…!!」
「ッ…、ちょっ」
「イヤぁ! いやっいやぁっ!!」
突如、堰を切ったように感情を爆発させて、睦月の抵抗が激しくなる。
両手足を必死にバタつかせて、何とか亮から逃れようと暴れ出し、そのたびに睦月の頭がヘッドボードにぶつかる。
「ちょっ、睦月、睦月っ!?」
睦月のこの抵抗は尋常ではない。
状況は状況だが、このまま続けられるはずもなく、かと言って、拒む心に呼応するように、亮のモノを中ほどまで咥え込んだ睦月のそこはキツクなって、亮は後ろに引くことも、つまり抜くことも出来ない。
「いやっ、やっ、助け…」
「むつ、き…?」
――――助けて?
「睦月、睦月!」
「いやぁっ!」
何とか逃げようと、身を捩ってジタバタする睦月のキュッと瞑った瞳から、涙が一筋、零れ落ちる。
頭をヘッドボードにぶつけて、もう逃げ場はなくて、それでも睦月は必死に亮から逃れようとする。
「睦月、目開けて」
「やっ…――――」
そしてまたしても、睦月の唇は途切れ途切れの言葉を紡ぐのだ――――助けて、と。
「睦月、目開けて、お願い」
睦月に亮の言葉は届かない。
何も見えていないし、伝わらない。
「睦月っ!」
「んんっ…!」
亮は半ば強引に睦月の顎を掴むと、悲鳴を堪えられない睦月の唇に、噛み付くようなキスを落とした。
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落下星 (34) R18
もしかしたら、逆効果かもしれない。
余計に睦月の恐怖を煽ってしまうかもしれないけれど、亮は合わせた唇の隙間から睦月の口内に舌を忍ばせる。脅えるように縮こまった舌に、あやすように自分の舌を絡ませる。
「は、ぅ、ぅん…」
「むつ…ん、」
ヘタしたら舌を噛み切られるんじゃないかと内心思っていたが、キスを繰り返すうち、睦月の抵抗は次第に弱くなっていく。
今、睦月と繋がっているのが亮だということが認識できたのだろうか、それとも単に、抵抗するという行為が無意味だと思ったからなのか。
「睦月…」
「あ…?」
少しだけ唇を離し、もう1度名前を呼べば、固く瞑った睦月の目蓋がピクリと動いた。
「…………りょ、う……?」
茫然とした表情の睦月が呟いた言葉は、ひと言、亮の名前だった。
強く瞑り過ぎていた目の縁は赤くなっている。
「りょう…?」
「そうだよ、俺だよ? 睦月の中にいるの、俺だよ?」
「亮…」
強く、まるで噛み締めるように亮のモノを咥え込んでいた睦月の中が、亮を認識した途端、ホッとしたように力が抜けて行った。
「…怖がらせて、ゴメンね?」
本当は泣かせない、て。
睦月のこと、怖がらせたりなんかしない、て思っていたのに。
無理に事を進めようとしたわけではないけれど、睦月をひどく怯えさせてしまったのも事実で。
「ゴメンね、睦月」
「ちが…」
黒曜のような瞳を、ブワッと膜のように涙が覆う。
睦月は大きく1つしゃくり上げて、違うの、と首を振った。
「違うの? 何が違うの?」
体のほうは、そんなにゆっくりと話を聞いていられるような状況ではなかったけれど、何かを懸命に亮に伝えようとする睦月の言葉に、耳を傾けないわけにはいかない。
汗でしっとりと濡れてしまった髪を撫でてやると、睦月はグズリと鼻を啜り上げた。
「ちょっ…」
「え…?」
鼻を啜った拍子に、自分の中が亮を締め付けてしまうだなんて、よもや思いもしなかっただろう、焦った声を上げた亮を、睦月は不思議そうに見つめた。
「亮…?」
「ゴメ…あのね、」
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落下星 (35) R18
先ほどひどく抵抗し、亮を拒絶した睦月の態度も気になるし、違う違うと言う伝えてきた睦月の言葉も気になるが、このままで話を聞くには辛すぎる。
不謹慎かもしれないが、男の体なんてそんなもんだ。
亮は深呼吸してから、睦月の中から自身を引き抜いた。
「むーっちゃん」
亮は睦月から体を離すと、不安げな顔で見上げている睦月の体を起してやって、自分の足の上に座らせた。
「んっ…」
まだ熱を持ったままの亮自身が足の間に触れて、睦月は少し身を竦ませる。
「ね、さっきの、違うて何?」
「え…? ぁん…」
「教えて?」
唇を合わせたまま、吐息とともに尋ねられ、困ったように目を伏せた。
問われたことに答えようとしているのに、亮は睦月の髪を撫でながらキスを仕掛けてくるから、うまく話せない。
「だから…、亮が謝るとか、ないし…」
「でも怖がらせちゃったでしょ? 睦月のこと」
「そ…じゃなくて、亮のせいじゃな…」
亮の胸に体を預け、その肩口に額を乗せた。
「分かんな…亮だって分かってたのに、でも…」
「…」
ちゃんと分かっていた。
キスしてくれるのも、抱き締めてくれるのも、愛してくれるのも、全部亮だってこと、ちゃんと分かっていたのに。
ゆっくりと睦月の中に侵入してくる熱い塊に、固く瞑った目の裏に映ったのは、亮ではなくて――――。
顔なんて覚えていない。
けれど、あのとき覆い被さって来た男の影が、睦月がどんなに抵抗しても押しやることの出来なかった男の姿が、どうしてか今さら亮と重なって。
「ッ…」
急にゾワリとした感覚が背筋を駆け上って、睦月は大きく体を震わせた。
その感覚は決して快感ではなく、嫌悪の情。
睦月は、本当に自分のことが嫌になった。
亮はこんなに優しくしてくれて、何も怖がることもなくて、自分だって平気だし無理じゃない、て言ったのに。
「辛いこと、思い出した?」
「……、…ないっ…!」
「ん?」
「思い出してない! 思い出さない…!」
亮は違う。
あの男とは、全然違う。
辛いことなんて何もないし、何も思い出さないから。
だから、このままやめたりなんかしないで。
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落下星 (36) R18
「睦月、目開けて、俺のこと見て?」
優しい表情の亮が睦月のことを見つめている。
ねぇ、何でこんな俺のこと、嫌いにならないの?
「目、閉じたらダメだよ?」
「え…?」
どういう意味? と思う前に、唇を塞がれた。
優しいキスは徐々に深くなっていって、舌を絡ませられて、睦月が思わず目を閉じてしまうと、唇を離され、「閉じちゃダメ」と囁かれる。
「亮…?」
「目閉じないで? 俺のこと、見てて?」
「ぁ…」
何も怖がらないで。
睦月に触れるのは亮だから。
キスするのも、愛撫するのも、その体内を暴こうとするのも。
「愛してるから。睦月のこと、愛してるのは、俺だけでしょ?」
「りょ、う…」
腰を抱かれ、ズルリとももの上で引き寄せられる。
触れる、欲望。
「睦月にこんなことするのは、俺だけでしょ? ……睦月が受け入れてくれるのも」
「あ、あんっ…」
睦月の口から零れるのは、悲鳴ではなくて、甘い嬌声。
ももの上に乗せた睦月をギリギリまで自分のほうに引き寄せた亮は、熱く滾った自身を睦月の後孔に擦り付けるように腰を動かした。
「んっ…亮っ…!」
挿入されるわけでもない、けれど意図しなければ触れられることのない場所を熱いモノで撫で付けられ、どうしていいか分からずに彷徨わせた睦月の手は、そのまま空を掻いて終わった。
「あん、あ、あ、」
「睦月、ダメ、目開けて?」
「あぁ…や、あっ、あっ」
得体の知れない快感に支配されそうになって、怖くて睦月が目を瞑ろうとすれば、それはすぐに亮に制される。
怖くはないから。
あのときとは違う。
今でも睦月の目の裏に浮かぶ、あの男とは違う。
――――だから目を開けて、俺のことを見て?
「あ…あ、亮っ…!」
「怖がんないで、俺のこと感じて?」
「んんっ…あ、や…熱い…」
素直に亮のことを、亮のことだけを見つめる睦月の唇にキスを落とすと、先ほど1度は断念したそこに、再び自身を押し当てた。
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落下星 (37) R18
「怖かったら、言っていいんだからね?」
「う、ん…」
亮のももの上に乗ったままの不安定な体勢に脅えながらも、下から体内へと侵入してくる亮の熱を、睦月は必死に受け入れようとした。
怖がって目を閉じたりしない。
もう睦月のそこを暴こうとするのは、こんなふうに睦月の中にまで入り込んで来ようとするのは、亮しかいないのだから。
「あ…あ…っ…」
1度半ばまで侵入を許したそこは、先ほどよりかは抵抗なく亮を飲み込んでいく。睦月の緊張がいくらかは解けたせいもあるのだろう。
睦月は亮に言われたことを忠実に守って、その瞳に亮を映し続ける。
「あっ…」
尻たぶに亮の下生えを感じて、完全にももの上に座らせられる状態になったとき、睦月はようやく亮のすべてを飲み込んだのだと分かった。
十分に解されたのと、亮が丁寧に腰を動かしてくれたおかげで、痛みは殆どなかったけれど、ものすごい圧迫感が腹部を襲う。
「亮っ…」
戸惑うように亮の名を呼べば、亮は目を眇めて奥歯を噛んでいた。
「えっ亮?」
「ッ、ゴメ、へーき…?」
「う、ん…。亮?」
睦月に平気なのかと尋ねる亮のほうが、ずっと苦しそうな顔をしていて、それも分からなくて、困って睦月が身を動かせば、亮が慌ててその動きを封じた。
「ちょっ、待って、睦月…」
「え? あっあんっ」
自分で動いたのがいけないのだが、中の亮に腸壁を擦られて、腰の辺りをゾワゾワとしたものが這い上がっていく。
「そんな、締め付けないで、マジで持たないからっ…」
「え、え、分かんな……あ、やっ、おっき…しないでっ…!」
睦月としては、意識して何かをしたつもりはない。
亮の言っていることの意味もよく分からないのに、いきなり受け入れていた亮のモノが質量を増すから、睦月はうろたえた。
「なっ…あ、亮っ…あ、あっ…」
「睦月、ちょっ」
身じろぐ睦月を抱き竦める。
だって睦月が動くたび、亮自身を締め付け、刺激するんだから。
「ん…」
ようやく落ち着いてきたのか、締め付けがいくらか和らいで、亮は大きく息をついた。
睦月は亮の言うことを素直に聞いて、ジッと亮を見つめていた。
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落下星 (38) R18
「睦月、怖い?」
「……、…ううん」
フルフルと首を振った睦月に、亮は「いい子」とキスをした。
それから睦月をももの上に乗せたまま、亮がゆっくりと腰を動かし始めれば、緩やかに快感が湧き上がって来て、睦月は思わずギュッと目を瞑ったが、慌てて目を開けた。
「んっ…、ゃ…りょうっ…」
亮の首に回している睦月の腕に力が入る。
睦月の口からは甘い吐息と、イヤイヤする声。けれどそれが本当に嫌がっているものではないことが分かるから、亮は腰の動きを止めない。
突き上げるのではなく、揺するようにしてやるほうが感じるのか、愉悦に満ちた顔をしている。
「あー…、あ、あっ…」
「気持ちい?」
「んっ…ぅん、」
快感に翻弄されながらも、睦月はコクリと頷いた。
それが嬉しくて、思わず亮の口元も緩む。
「睦月、舌出してみ?」
「…んぁ?」
それがどういう意味なのかもよく分からないまま、睦月は半開きだった唇から、素直に舌を少し覗かせる。
けれど亮に、もっと出して? と言われ、戸惑いながらも更に舌を伸ばせば、その真っ赤な舌を亮の舌に絡め取られた。
「ぁン…!」
ピチャリと絡んで来た亮の熱い舌に、睦月はビックリして舌を引っ込めようとしたけれど、逆に捕まえられて、亮の口の中へと引き摺り込まれる。
亮の口の中、熱い…なんて頭の隅でぼんやり思っていたら、舌を少し強めに吸われて、ビクンと腰が震えた。
「んっんっ…ふ…」
舌を吸うたび、睦月の中はキュッキュッと亮を締め付けて来る。おそらく無意識の反応に違いないが、何だか全部がリンクしているみたいで、嬉しい。
ふと視線を移せば、睦月は先ほどまでがんばって開けていた目を閉じてしまっていて、けれど亮の行為を怖がっている様子もなく、貫かれたまま体を揺すられたり、舌をいっぱい絡められてキスされたりする快感に、身を委ねているようだった。
「あっ、はっ…」
息を吸おうと睦月が小さく口を開けたのを見て、亮は絡み合わせたままの舌を、唾液とともに睦月の口の中に押し込んだ。
睦月の口の端を、どちらのものともつかない唾液が流れ落ちていって、亮はそれを舌先で舐め取って、もう1度、睦月の舌を絡める。
「んんっ――――……!!」
ビクビクと震えている睦月の背中を支えて、亮は唇を合わせたまま、舌を絡めたまま、睦月をベッドに押し倒した。
体位が変わったことで、中の亮が敏感な場所を抉ったのか、睦月は背中をシーツから離れるほど撓らせて、身を強張らせた。
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オフ会に参加してまいりました
さて、自他ともに認める引き籠りブロガー如月久美子が、11日の日曜日、仙台まで行ってきましたよ、やったね!
すてきなBL小説でおなじみ「BL風味のさくらんぼ」柚子季さんのオフ会開催のお声掛けに、遠慮なしに参加してまいりました。
そして生意気にも、そのレポなんかを書いてしまおうかと。
柚子季さんのブログにもオフ会報告のレポが上がってるんで、ぜひ読んでくださいね。絶対に私のより分かりやすいんで。
で、オフ会なんですが。
実は私、金曜日の夜、あんまり覚えてないんですけど、だいぶ飲みすぎちゃったみたいでですね、土曜日は吐くほどの二日酔いだったんですよ(三連休の初日がこれとか。バカ!)
ヤバイヤバーイて思ってたのに、日曜の朝になったら元気いっぱいで、自分でもビックリ!
これが腐のパワー? 人体の神秘?
とにかく元気にいっぱいで出発しました。
私の住んでるところからだと、車+新幹線で計3時間くらい掛かるんですけど、柚子季さんを始めみなさんから、遠くからお疲れ様です~、みたいな温かな雰囲気で迎えていただきまして、本当に嬉しかったです。
私を含め7人の参加ということで、カラオケに行って、喋ったり歌ったり、本人映像の曲をかけて、
PV見えないから歌詞ちょっと邪魔! とか言ったりしてました。
やっぱり、根本に持っているものが同じだからでしょうかね、非常に話が盛り上がりまして、とっても楽しかったです。
それにみなさま、なかなかの情熱と腐のフィルターといろんな知識をお持ちで、大変感動しました。
で、片道3時間掛かる私は、日帰りはちょっと無理でしょ自分の体力的にも、てことで、お泊りをすることにしてたんですが、夜ごはん前にホテルにチェックイン。
柚子季さんにホテルまで連れて行っていただいて……私自身、遠回りだったのかよく分からないままホテルに着いてたんで、迷ったていう気は一切ないですよ、柚子季さん! (笑)
それから教えていただいていた居酒屋に行きました。居酒屋って言っても、お店の人みんな着物だし、超お上品な感じでしたよ。
例のオムレツもいただきました。最高においしかったです~!
それと柚子季さんにもバラされてますが、お隣の席がね、何だかとっても気になる感じだったんですよ。襖みたいので仕切られてるんですけど、それがちゃんと開くように出来てたんですよね。
そりゃ、覗くでしょ(いやいや)
あと、このたび来てくださっていたみなさん、嬉しいことに、このブログに足を運んでくださっているとか。
本当にありがとうございます。
それを知った瞬間、本当に感激しました。
でもその直後、「今日の分、まだ読んでないから読む」てみなさんが携帯電話を取り出した瞬間は、本気で羞恥プレイだと思いました(笑)
そして夜ごはんの後、参加者のみなさんが徐々に帰られる中、場所を変えて飲み続け、私以外のみなさんは日帰りだったんですが、最後に帰られるかたを駅まで送る途中、なななななぁ~んと、プリクラを撮ることにっ…!
何か若者ぽい行動をする自分に感激…!
でも私、何もしてないけど(爆) 全部、人任せでした。
しかもそのかたをお見送りした後、再び飲み屋に向かう私たち。
WOW! 前日に二日酔いで1日中寝てた人間とは思えないね!
学習能力て何?
いや確か、お店に向かう前に、「ノンアルコールで」て誰かが言ったような気はするんですが…(でも1杯飲んだ後、ノンアルコールも飲みましたよね(笑))
キレイな女性の店員さんに惚れそうになりながら、でもやっぱイケメン店員にはしっかり目を奪われました。
最終的に、私が一番遅い時間までご一緒させていただいたのですが、柚子季さんたちは次の日(12日)、仕事だってよー!!
キャーびっくり!!
私は休みです。
そんな情報いらないか。
翌日お仕事だというのに、遅い時間までありがとうございました。
最高に楽しかったです。
それからご一緒させていただいたみなさん、とっても楽しかったです~。
でもみなさん、普段お話を読んでくださってるんですよね?
いや、半端なく嬉しいんですが、今私、わりとシリアスな感じの話、書いてるじゃないですか。あんな間抜けな姿さらしといて、何カッコつけたこと書いてんだ、私、て思ったら、めっちゃ恥ずかしくなりました。
これぞ羞恥プレイ。
あえて最後は太字にもしてみました。
ということで、この三連休は、吐きまくりの二日酔いに始まり、いろんな経験をさせていただきました(二日酔いと比較されても…)。
行き帰りの新幹線の中で、2本もお話書いちゃったしね!
そりゃpomeraの電池も切れるっつーの!
KIOSKの乾電池、高いっつーの!
てことで、書けば書くほどグダグダです。
GUDA・GUDAです!
あえての略さずです。
柚子季さんを始め、参加したみなさん、ありがとうございました。
とても楽しかったです。
またお会いできる機会があったらいいですね(*^_^*)
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- 創作者バトン (前編) (2009/10/30)
- オフ会に参加してまいりました (2009/10/12)
- 10万Hitしてました。ありがとうございます。 (2009/09/13)
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落下星 (39) R18
「ッ…睦月、」
「やぁっ、これ…! ふぅ…くっ、ん、んっ!」
首を振りながら必死に耐える睦月に、亮も宥めてあげたいと思うけれど、睦月がギチギチに締め付けてくるから、自分が堪えるので精いっぱいだ。
「亮、りょぉ…!」
睦月に名前を呼ばれ、思わずハッとした。
目は瞑っているけれど、亮だということを、睦月はちゃんと分かってくれているのだ。
「睦月…」
「あぁっ…」
耳元で名前を呼べば、睦月は切なげな吐息を漏らした。
ユサユサと揺さぶられながら、睦月は潤んだ瞳を開けた。
押し倒されたベッド、シーツはもう乱れていて。
睦月に覆い被さっているのは、睦月を深く穿ちつつも優しく愛撫してくれるのは――――亮。
「りょ、う…」
もう1度名前を呼ばれて、亮は少しだけ動きを緩くする。
瞬きとともに、睦月のこめかみを涙が伝い落ちて、亮はその涙を拭うと、しっかりとシーツを握り締めている睦月の手を離させ、指を絡めるように繋いだ。
「怖い?」
「あっ…」
何か腰の辺りとか、背中とか、ゾワゾワする。
亮が出たり入ったりするのが分かる。
熱い。
グチュグチュ音がしてる、亮がローションて言ってた。
けど。
怖い?
(怖くは、ない…………気がする)
飛びそうな意識の中、睦月はぼんやりとそう思った。
でも自分の体が、自分のものでないみたな感覚。
中に、亮が。
熱い。
頭の中、チカチカする。
「ここ、気持ちいーの?」
「あっ…んっ、分かん、なっ……ひっ、あ…」
先ほど睦月が大きく反応した場所を狙って腰を動かせば、睦月の中は蠢きながらさらにキツクなる。
堪え切れず、睦月は繋いでいた手を解いて、亮の首に腕を回してしがみ付いた。
「ヤ…、も…ツラ…」
「ぅん? 辛い?」
「ひんっ…!」
過去のこともあってか、これまで性に対して淡白であった睦月にしたら、こんなに強い快感に襲われたことなんてなくて、やめてほしくないけど、やめてほしい。 体の奥を突かれるたびに、ビクンビクンと睦月の体が跳ね上がる。
思わず睦月が太ももで間にある亮の体を挟み込めば、腕と足で亮の体を引き寄せるような形になってしまい、亮の顔がいっそう近づく。
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落下星 (40) R18
間近に見える亮の顔はいつもと違う雰囲気がする。
いつも見ている顔なのに、雰囲気のせい? 何だかドキドキする。でもそんなの何か見惚れてるみたいで、恥ずかしいし悔しい。
いっそ目を閉じてしまえば……て思ったら、いきなり唇を塞がれた。
「りょ、うっ…!」
すぐに熱い舌が忍び込んで来て、睦月は夢中で舌を絡ませる。
上も下も繋がった状態に、睦月は息苦しさとともに、不思議と幸せを感じていた。辛いだけだと思っていたセックスは、やっぱり相手が亮だからか、とっても気持ちよくて、ちょっと辛くて、そして幸せ。
「ひぅっ…ん、んっ…」
腰を押さえていた亮の手が、汗ばんだ睦月の肌を辿り、指先が胸の突起を押し潰した。
その瞬間、睦月の下半身が大きく震え上がったけれど、亮と繋がっていたせいもあって、すぐに押さえ込まれてしまう。
強い快感に飲み込まれそうになって、どうしていいか分からなくて、揺さぶられて。
限界を訴えるように睦月が身を捩れば、キスが解かれて、亮は今度は露わになった首筋に舌を這わす。
一度にいろんなところを刺激されて、睦月の全身が痙攣するようにビクビクと震え出した。
「やっ、やっ…そこ、やぁっ…!」
「ん? どこ?」
もう1度ベロリと首筋を舐め上げられて、耳の中に舌を差し込まれる。
どこ、とかじゃない。
今の睦月は、もうどこを触られても、気持ちよくなってしまって、自分でもわけが分からない。
「どこ、ヤなの?」
「あっ…ひぅ、ッ、亮っ…!」
「睦月?」
「ッ…んっ、バカぁ…!」
本当はヤダとかじゃなくて、睦月が今どんななのかなんて、亮だって分かっているくせに、わざとそんなふうに聞いてくるから、亮のバカ! 意地悪! て思う。
でも抗議しようと開いた口からは、甘ったるい喘ぎ声しか出なくて、亮じゃなくて俺のバカ! て思い直した。
「くぅ、っ…ふ、ぅん…!」
まるで大きな波が押し寄せてくるように、絶え間なく快感にさらわれて。
りょう、りょう…と甘く切ない声で名前を呼ばれ、亮も堪らなくなって、夢中で腰を動かす。
「睦月っ、」
「やっ、いやぁ…!」
しがみ付く睦月の腕を少し緩めて、亮は睦月の片膝の裏を掬うと、高ぶっている睦月の中心に指を絡めた。
睦月は、本来はそうでない部分に亮を受け入れ、揺さぶられることに、恐怖や痛みはもう感じていないようだし、十分気持ちよさそうにしているけれど、ちゃんとイケない…と言っていたことを思えば、やはり直接の刺激があったほうがいいのだろう。
先走りでグチャグチャになっている性器を擦り上げると、睦月はもう口を閉じることも出来ないまま、身を強張らせる。
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落下星 (41) R18
「ひっ、ひぁっ…」
「気持ちい? 睦月、ねぇ?」
「あぁっ、あっ、りょうっ…」
もう片方の手で、汗で額にベッタリ張り付いた髪を掻き上げてやり、睦月の頭を抱き込む。
所在をなくした睦月の手が、亮の肩にかかる。
「うぅん…!」
「イク? イキそう?」
「分かんな、あっ、んっんっ!」
固く目を閉じた睦月から答えはなかったけれど、肩を掴む指先にキュッと力が籠って、限界が近いことを伝えてくる。
「睦月、好きっ…、好きだよ」
「いっ…うぅ…」
どうか、伝わって。
この行為が持つ意味。
亮がどうして睦月を抱くのか。
男同士でするセックスが気持ち悪いとか気持ち悪くないとか、そんな言葉の意味を証明したいんじゃない。睦月のことが好きだから。
(――――好き、だからだよ)
睦月は自分のこと、変だって言うけれど、そんなこと全然ないし、でももしそうだとしても、別に構わない。
そんなのどうでもいい。
どうでもいいくらい、愛してる。
愛してる。
「睦月、愛してる」
どうか伝われ。
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落下星 (42) R18
中に目いっぱい亮が入って来ては、ズルズルと引き出されるし、前も複雑な手の動きでグチュグチュと弄られて。
後ろも前もいっぺんに刺激され、睦月はもう息も絶え絶え、意識を繋ぎ止めておくのが精いっぱいの中、亮の言葉に目を開ければ、目の前には、ひどく真剣な表情の亮の顔。
こんな切羽詰まった状況の中だというのに、睦月はふと、最初の亮の言葉を思い出した。
『睦月がね、ホントにセックスしてみないんじゃ、俺の言葉を信じられないって言うなら、ちゃんと証明してあげるよ? でも分かって。俺が抱くのは、そのためだけじゃないって。睦月のこと好きだからなんだよ、てこと、知ってて?』
好きだからだよ。
睦月のこと抱くのは、好きだから。
「りょ、う…!」
熱い。
体の奥。
亮の熱。
好き?
好き。
――――好きだから。
「やっ…好き、っ…」
「、むつ、きっ…」
好き、好き……と、何度も繰り返しながら、睦月は必死にしがみ付いた。
だって、好き。
亮が、好きだから睦月のことを抱くのだというのなら、睦月だって好きだから亮を受け入れるのだ。
「んっ、あ、あぁッ! 亮っ…!」
もう、分からない。
亮の顔を見ていたいのに、強い衝撃と快感に目を瞑れば、瞼の裏がチカチカする。
体中、痙攣みたく震えているのに、それも止められない。
中を動く亮の熱だけが分かる。
「やぁっ、あっ、ああぁっ!」
ギュウと抱き締められた亮の腕の中、睦月は一気に上り詰め、亮の手の中に欲望を放った。
「はぁっ…、うぅんっ…!」
さっきと違って、今度は自分でも射精したのが、睦月にも分かった。
でもそれでも亮は、腰を動かすのも、前を弄る手も止めてくれなくて、睦月の体の震えも止まらない。
「も…ダメぇ…!」
「睦月っ…!」
「はっ、ん、ぅんっ、あ、ぁむ…」
これ以上はもう本当にダメになる。
こんな、甘くて切なくて気持ちいいことを覚えてしまったら、何も知らなかったころには戻れない、きっと。
でも亮に口付けられて、それも拒めず、睦月は甘い快楽を享受する。
「んっ、あ、りょ…、あっ、もぉ…!」
「ゴメ…イクっ…!」
イッた直後の睦月の中が、蠕動しながらキツク締め付けて来て、もっと加減してあげなきゃダメだ、て分かっていたのに、亮はもう堪えることが出来ず、睦月の細い体を抱き締めて達した。
「ッ…はっ…」
放たれた亮の熱。
あのときと違って、薄い被膜の中に放たれたそれは、睦月の中には流れ込んで来なくて。
その不思議な感覚をぼんやりと受け止めていたら、亮の腕の力が少し弱まって、睦月の体はスプリングの効いたベッド沈んだ。
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落下星 (43) R18
「はぁっ…、ゴメ…睦月…」
「…ふぇ…何が…?」
まだ息も整わないままの亮がいきなり謝るから、睦月はただでさえ思考が纏まらないというのに、わけが分からなくてを見上げた。
「いや…途中から何か止まんなくなっちゃった」
ポワンとした顔の睦月をかわいいとか思いながら、汗で額に貼り付いた前髪を掻き上げてやる。
亮が、最後は歯止めの効かなくなってしまった自分に苦笑すれば、睦月はようやく意味が分かったのか、「別に平気だし…」とそっけなく返しつつ、恥ずかしげに目を伏せた。
最後は睦月も何だかよく分かんなくなって、でも怖いとかなくて、えっとだから、夢中になってた? 何かそんな感じだったから、亮ももしそんなだったんだとしたら、自分だけじゃなくて、何かちょっと嬉しいかも?
恥ずかしいから絶対言わないけど。
(あ…まだ中に亮が…)
ようやく落ち着いてきて、ふと気付けば、まだ2人、繋がったまま。
どうしよう、亮、抜かないのかな。抜いて、て言ったほうがいいのかな? と、睦月が戸惑っていると、髪を撫でてくれていた亮が上体を起こした。
「あっン…!」
亮が動いたことで、まだ敏感だった中を抉られて、睦月は思わずあられもない声を上げてしまった。
その声に、亮がピタリと動きを止める。
睦月も恥ずかしさのあまり少しも動けず、それでもがんばって視線だけ上げれば、亮とバッチリ目が合って、俄かに頬が熱くなるのを感じた。
散々エッチなことをして、しどけない姿を曝したくせに、今さら声くらいで、とは思うが、冷静になってからだからこそ、余計に羞恥が増す。
だいたい、亮がなかなか自身を抜かずに、いきなり動いたのがいけないのだから、睦月のそんな声くらい気付かないふりをしてくれたらいいのに、え? みたいな感じで固まるから、恥ずかしくなるのだ。
「亮、ちょっ…」
「…え? あ、うん、ゴメ……いや、かわいい声出すから、つい」
ヘラリと亮が締まりのない顔で笑えば、恥ずかしさも手伝って、睦月のご機嫌バロメーターが一気に、拗ね拗ねモードへと向かっていく。
「何言って、バカ、早く抜いてよぉ!」
「ちょっ、睦月、動かないでっ!」
何で自分だけこんな恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ、と睦月が足をバタバタさせるものだから、その振動が中の亮にまで伝わって来て、うっかりまた自身に熱が籠り始める。
「やぁん、亮…!」
わずかながら反応を見せ始めた亮自身に気付いたのか、睦月はハッとして、狼狽えながら足を動かすのをやめた――――が、時すでに遅し。
ようやく体を起してくれたはずの亮が、再び睦月に伸し掛かってくる。
「亮、ちょっ、待っ…」
「今のは睦月が悪い!」
「わぁ~んっ!」
そして1度は治まったはずの熱を高められて。
睦月はまた、快楽の波へと攫われていくのだった。
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落下星 (44)
ラブホテルの、広くておしゃれなバスルーム。
たっぷりとお湯を溜めたバスタブに、すっかりご機嫌を損ねている睦月と一緒に身を沈めれば、睦月はバカバカ~と喚き散らしながら、力の入らないこぶしでポコポコと亮の腕やら胸を叩いてくる。
「だからゴメンて、むっちゃん…」
「むっちゃんとか言うな~! 亮のくせにぃ~!!」
「わかっ…分かったから…! お湯零れる!」
睦月がジタジタするたび、バスタブからもったいないくらいにお湯が零れていって、亮は逆効果だと知りながら睦月の体を抱き竦めれば、案の定、睦月は「触んな、バカ~」とますます暴れ出す。
それでも睦月が亮を置いて出て行かないのは、激しいセックスの結果、足腰が立たなくなってしまったからで、バスルームまで来れたのも、亮のお姫様抱っこがあってのことだった。
もちろん睦月は、最初と同様、一緒に入ることには激しく抵抗したのだが、動けないのでは逃げ出す術もなく、結局2人で入るはめになってしまったのだ。
「うぅ~…」
「ゴメンね、睦月。まさか立てなくなるとか思わなくて…」
だってそんなの、本気でマンガの中だけのことだと思っていた。
というか、現実にあったとしても、もっと年を取って足腰が弱くなって来てからとかのことかと思っていたのに。
勢いで第2ラウンドまで進んでしまった後、クタクタになった睦月が、シャワーを浴びるためにベッドから降りようとした次の瞬間、ふと姿を消した。
這いずるようにベッドの上を移動する睦月を見守っていた亮は、思わず「はっ!?」と大きな声を上げてしまった。だって本当に、急に姿が見えなくなってしまったのだ。
慌ててベッドの下を見れば、そこには唖然とした顔でへたり込んでいる睦月の姿。
『……立てない…。足、力入んないんだけど…』
ベッドの上から覗き込む亮に、睦月は呆然とそう告げた。
睦月は姿を消したのではなく、立とうとしても立てなくて、ベッドの下にペタンと座り込んでしまっていたのだ。
亮は慌てて睦月を抱き上げ、バスルームまで連れて行き、今度こそ1人で入る! と言う睦月に、責任持ってお風呂入れてあげるから! と強制的に一緒に入って来て――――そして今に至る。
亮は言葉どおり、責任持って睦月を風呂に入れてあげるつもりらしく、甲斐甲斐しく頭と体を洗ってあげ、力の入らない体を抱いてバスタブにも浸けてあげたのだが、そんな亮の努力も空しく、睦月のご機嫌はなかなか直らない。
「あー、ホラ、お風呂の中、ライト点くよ?」
「…ぅ?」
必死に場を取り繕おうとがんばる亮が、バスルームの照明を落とし、ライトのスイッチを入れると、カクテルライトがバスタブの中を照らした。
「あっ、すっげ!」
ムードの漂う色で照らし出されたバスタブに、睦月は物珍しさからか、キャーすご~い! と、パシャパシャお湯を波立たせる。
意外と単純な睦月は、今までの亮の苦労は何だったのかと思うくらいあっさりと上機嫌になって、すごいすごい、と亮にくっ付いてきた。
それにしても、睦月の機嫌が直ったのはいいけれど、
(そんなに無邪気にくっ付かれると…)
ようやく治まった、亮の男としての部分が、また反応してしまいそうになる。
けれど、もしここで同じ過ちを繰り返してしまえば、当分睦月の機嫌は地の底を這うに違いない(睦月のことだ、もしかしたら、絶交! とか言いかねない)。
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落下星 (45)
亮が人知れず溜め息をついているそばで、睦月は上機嫌でスイッチの並んだパネルを覗き込んでいる。
「あー、ブロアバスだって」
「フロア?」
「ブロア。フロア、て床じゃん」
何それ? みたいな顔をしながら、睦月がスイッチを押すと、少しの振動音とともに細かい気泡がバスタブの底から湧き上がって来た。
「ひゃっ!?」
「ちょっ、危なっ」
あまりに思い掛けないことにビックリした睦月が、バランスを崩してバスタブの中に沈みそうになるから、亮が慌ててその体を抱き止めた。
「び…ビックリし…」
「大丈夫だった?」
相当驚きはしたらしいが、心地よい泡の感触に気をよくしたのか、睦月は大人しく亮の腕に抱かれている。
「亮、こういうのだって、知ってたの?」
「…え、」
問い詰めるようでも、咎めるようでもない、睦月は単純に、浮かび上がった疑問を亮にぶつけただけなのだろう。しかし尋ねられた亮としては、どう答えたらよいのか、返事に困る。
だって、睦月とは初めてラブホテルに来るのだ。もし亮が知っているとすれば、前に女の子と来たて一緒に入ったときということになるわけで……そんなこと、本当に聞きたいのだろうか。
へたに答えて、せっかく直り掛けている睦月のご機嫌がまた悪くなったら…。
「すっご~い、あわあわ~」
「え、あ、うん」
しかしそんな亮の心配をよそに、睦月は湧き上がってくる気泡に気を取られていて、亮が答えを言い淀んでいることには気付いていない。
もしかしたら、もう答えなんてどうでもいいのかもしれない。
そう言えばここに来る前、睦月は亮に、ラブホテルに来たことがあるか普通に尋ねてきたし、昔、バレンタインに亮がうっかり女の子からチョコを受け取ってしまったときも、そのことに怒るのではなくて、自分が女の子から貰えなかったことに憤慨していたっけ…。
どうも怒りや嫉妬のポイントが人とは違うようで、妙な嫉妬をされないのはいいが、逆にこちらが面食らわされる。
「ウチの風呂もこんなだったらいいのにねー」
「え、寮の風呂ってこと?」
「うん。気持ちいーじゃん」
「えーでも寮の風呂で、こんないい雰囲気出したって、虚しいだけじゃね?」
色気もそっけもない寮の大浴場を、カクテルライトで照らしつつ、ブロアバスにする……間抜けもいいところだろう。
そう言えば、睦月は「そっかぁ」と少し残念そうに納得した。
「てか、むっちゃん。ラブホでこういうお風呂に入ったのは、みんなに内緒だからね?」
「ぅ??」
「そういうことは、あんまりみんなに喋っちゃいけないの。分かった?」
「そうなの? ざーんねん。せっかくカズちゃんに自慢しようと思ったのに」
睦月のこのテンションからして、口止めしておかなければ、すぐにみんなに言い触らしてしまいかねない。
その手の話題で盛り上がっているときに、ちょっと触れるくらいならまだしも、誰彼なく言って回ることではないから、先に念を押しておいた。
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落下星 (46)
体の向きを変えて、亮のほうを向く。
胸に頭を乗せて、ぴっとりと寄り添って。
「何かさ、最初に亮がさ、信じてて、て言ったじゃん? 何かそれ、ちょっと分かった……かも」
「えっ」
急な言葉に驚いて、亮は抱き寄せていた体を離して、睦月のほうを見た。
けれど睦月は、バスタブの底から湧き上がってくる細かな気泡を、ただ見つめていた。
「いや、分かんないけど…」
「分かんないけど、分かった?」
「エッチしてるときね、俺も亮のこと、好きだなぁ、て思ったの。好きだから…、何か怖くなかったし、好きだって思ったし、だから分かんないけど、亮が言いたかったの、そういうことなのかな、て! す…好きだから抱くとか、」
恥ずかしさからか、最後のほうは一気にまくし立てて、睦月は泡立った水面をバシャバシャと叩いた。
男同士のセックスなんて気持ち悪いと言われて、祐介にそんなことはないと、何度言われても、理解できなくて。
亮は、気持ち悪いなんて思ってないことを証明してあげると言ったし、それだけじゃなくて、睦月のこと好きだから抱くんだって言った。
そのことが、亮に抱かれて、睦月はようやく分かった気がした。
好きだから。
好きな人と1つになる行為に、気持ち悪いなんてこと、あるはずもなくて。好きだからこそ、1つになりたいと思えるんだってこと。
「伝わった?」
「ちょっ、ちょっとだけどっ…」
「ちょっとでもいいよ」
顔を上げてくれない睦月を、もう1度腕に抱き止める。
睦月は大人しく抱かれているけれど、やはり恥ずかしいらしく、顔を背けたままだ。
「…ねぇ亮。俺らってさ、エッチする前と、何か変わった?」
ふと口を突いて出た言葉に、睦月自身も驚いた。
でもそれは、聞きたかったこと。
何も変わってない、なんてことは、ない。でも、何が変わったの?
「うーん、どうかな。俺は前より睦月のこと、好きになったけどね」
月並みなことを言うようだけれど、でもそれは本当のこと。
何か変わったとすれば、前よりも"好き"が増えたと思う。より強く睦月のことを信じられるようになった。
「好きに? 前より?」
「うん。好きで睦月のこと抱いたけど、もっと好きになった。…恥ずかしいこと言ってる? 俺?」
「…ちょっとね」
苦笑しながらも、睦月は今の亮の言葉を頭の中で繰り返した。
前よりも、もっと好きになった、て。
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落下星 (47)
「……、俺は…亮のこと、あの…うん、もっと好きになったけどさ、何て言うか、特別な感じがする」
「俺のこと?」
「うん。好きなんだから、前から特別なんだけどさ、だから、何て言うか、」
睦月は、一生懸命、言葉を選びながら、自分の思いを伝えようとしてくれる。
口八丁のくせに、思っていることを素直に伝えるのが苦手で、だからスラスラとは出て来ない言葉を、真剣にひとつ一つ考えながら。
そんな睦月の気持ちが分かるから、亮も急かすことはしないで、ゆっくりと待っている。
「あのね、俺の中でゆっちは、ずっと特別な存在だったの。その、恋愛感情とかはさ、全然ないんだけど、でも特別で、亮のことは確かに好きなのに、ゆっちのこと特別とか、変なの、て思うけど、でも」
「別に変じゃねぇよ。特別にだっていろいろあるし、俺だって、カズとかショウとか、やっぱ特別だし」
「…うん」
睦月にとっての祐介が、それ以上の繋がりだということは、亮にもよく分かっている。
だからこそ勝てないと、亮はずっと思っていたのだ。
「今でもゆっちは特別だけど、……でも今は、亮のことがすごい特別」
「俺、少しは祐介に追い付いた?」
「ゆっち以上だよ」
ようやく睦月が顔を上げた。
少し恥ずかしげにしながら、けれどブレることのない、真実を伝えようとする瞳。
「ゆっちも特別だけど、亮は大好きで、特別」
そう言って笑った睦月の顔が、本当にかわいくて、いとおしくて、亮は思わず抱き締める腕に力を込めた。
「ちょっ…亮、苦し…」
「ゴメン。だって嬉しくて」
「嬉し?」
少しだけ腕を緩めてもらって、けれど睦月は亮から離れなかった。
「そりゃ嬉しいよ。睦月、好き」
「俺も亮のこと、好き。大好き……でも、」
「ん?」
「何かもう、あちぃ…」
「えっ」
睦月の言葉に、慌ててその顔を覗き込めば、照れとかそう言うことでなく、睦月の頬が真っ赤になっている。
温めの温度に設定してあるが、長風呂に慣れていない睦月にしては、いつもより長く浸かっていたせいで、逆上せかけているのだろう。
「もう上がろ? 立てる?」
「せっかくのあわあわなのにー」
「ホントに逆上せちゃうよ」
顔を真っ赤にしながら、それでも睦月はブロアから送り出されている空気の気泡に手を伸ばす。
でもさすがにこれ以上は浸かっていられないと判断したのか、名残惜しそうにしながらも、睦月はフラフラと立ち上がった。
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落下星 (48)
「…ん、さっきよりは無事そう」
ライトとブロアのスイッチを切った亮は、バスタブの縁に掴まって何とか立っている睦月の体を抱き上げた。
「何、亮」
「転んだら大変だし」
「へーきなのに…」
過保護だとは思うけれど、その覚束ない足取りを見ていると、心配せずにはいられない。
バスルームを出たところで、睦月の体をバスタオルで包んでやる。
「水持ってくるよ」
部屋に水のサーバーがあったのを思い出し、さっさと服を着た亮は、急いで水を取りに行った。
ホントに大丈夫…と思ったが、亮には無理をさせてしまったという負い目があるのか、それとももとからの気質なのか、なかなか甲斐甲斐しくしてくれる。
それで亮の気が済むのなら、委ねてみるのもいいかもしれない。
睦月はその背中を見送りながら、渡されたバスタオルで、モタモタと体を拭き始めた。
セックスの後、ベッドを下りようとして、全然立てなかったときを思えば平気だけれど、足や腰はまだダルくて、エッチするのって大変なんだなぁ…と、睦月はぼんやり思う。
「はい、水。睦月、しんどい?」
「…ちょっとだけ。でも大丈夫だよ」
まだ少し体は辛いけれど、だいぶマシになったし、亮にこれ以上の心配を掛けるもの悪いからってそう言えば、しかし亮は複雑な表情をする。
だってセックスしたいって、睦月も思ったんだから、亮だけに非があるわけではないのに。
「むーっちゃん。変なとこで意地張んなくていいの」
肝心なとき我慢してしまう睦月の悪い癖を見透かして、亮は睦月の着替えを手伝うと、洗面台の前に座らせた。
「え、何?」
「髪乾かしてあげる。睦月、前向いて」
「甘やかされてる…」
「いいじゃん。甘やかさせてよ」
これまで散々、祐介に過保護に扱われ、亮にだって十分に甘やかされてきたのに、こんなときに照れるなんて。
そんな睦月をかわいく思いながら、タオルで髪を拭いてやる。
睦月は恥ずかしそうにしながらも、正面の鏡に映る亮の姿を大人しく見つめた。
体がまだ少ししんどいのも事実で、正直、髪の毛にまで気は回っていなかったから、言われたとおり素直に亮に甘えることにする。
(かわいー)
大人しくしている睦月に気をよくして、亮は熱くなり過ぎないようドライヤーの風を当ててやる。
先日カットしたばかりの髪型を、さっぱりしたと睦月は大変気に入っていて、亮も確かにすごく似合っていると思うけれど、女の子に間違われるのが大嫌いなくせに、それでも一見しただけでは女の子と思われかねない雰囲気だ。
…女の子と間違われて、時々ナンパされてしまう見た目とは裏腹の、強気で勝ち気で男っぽい性格をしているのに、今は素直に目を閉じている。
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落下星 (49)
でも、少しだけ。
髪を乾かしてあげてるんだし(自分で好きで始めたんだけれど)、このくらいのご褒美を貰っても、ね。
ドライヤーを髪に当てたまま、顔を近付ける。
睦月は、亮の顔が近付いてきた気配には、少しも気付く様子がなくて。
無防備なその頬に、そっと唇を寄せる。
「…ん?」
頬に触れた柔らかな感触に睦月は目を開けたが、何をされたのか状況が分からないらしく、視線をキョロキョロさせている。
けれど亮がそしらぬ顔をしているから、ドライヤーの風が頬に当たったと思ったのか、また目を閉じた。
そんな睦月に、いたずら心が湧いてきて、もう1度、頬にキス。
「んん…」
目を開けない睦月に、何度もキスを繰り返しているうち、ようやく何かがおかしいことに気が付いたのか、睦月の目がうっすらと開いた。
「何…くすぐった…」
人に髪を乾かしてもらう心地よさと、ずっと目を閉じていた状況に、少し眠くなっていたらしい。
むにゅむにゅ、子どものような仕草で目をこすりながら、鏡越しに亮を見る。
「何、亮…」
「ぅん?」
睦月の声が小さかったこともあって、ドライヤーの音でよく聞き取れない。
けれど睦月も、半分寝惚けているような中で言った言葉で、大した意味もなかったのか、また目を閉じてしまった。
20歳にしては早寝の睦月にしたら、時間的にも、もう眠くなっているのかもしれない。
前は、自分の前で無防備に眠る睦月を見て、そりゃご飯係ならなぁ…なんて卑屈にもなっていたけれど、それだけ自分に対して安心して委ねてくれているんだと、今なら、思えるようになった。
睦月の中で、ちゃんと特別な存在になれている。
「…睦月、好き」
耳元でドライヤーがうるさくしているせいで、亮の声が聞こえないのか、睦月の反応がない。
けれどそれに、焦りも不安もない。
きっと以前とは、そこが違うんだと、亮は思う。
前は、どこかに不安があった。自分の言葉は、気持ちは、睦月にちゃんと届いているのか分からなくて、自信も持てなくて。
でも今は。
(…好き)
声が届かなくても、気持ちは伝わっている、て分かるから。
「睦月ー、好きー」
「えっ何?」
少し大きな声で言ったら、声を掛けられたのは分かったのか、ビクリと肩を震わせて、睦月はハタと目を開けた。
この反応からして、どうやらウトウトしていたに違いない。
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落下星 (50)
「ホラ、前向いてー」
聞こえないとは思ったけれど、そう言って睦月に前を向かせる。
また目を閉じるのかな、と思ったが、先ほどのいたずらなキスのこともあり、亮が自分に何か仕掛けていることに、薄々だがようやく感づいた睦月は、怪訝そうに鏡の中の亮を見る。
「何ー? 亮、何つったのー?」
「好きだって言ったんだよ」
「え? え?」
鏡越し、亮が何か言ったのは唇の動きで分かるのだけれど、それを読み取るまでは出来なくて、睦月は、何? 何? と亮のほうを向きたがる。
あらかた髪を乾かし終え、亮はドライヤーのスイッチを切った。
「亮、何て言ってたのー?」
「んー?」
「てか、髪乾かしてるとき、何かしなかった?」
今さらそんなことを聞いてくるなんて、随分のん気なものだ。
亮は思わず笑いたくなったけれど、笑ったら機嫌を損ねるのは分かっているので、何とか噛み殺す。
「何もしてないよ」
教えてあげてもよかったけれど、あのときのかわいい睦月の様子は、自分の中にしまっておこうと思う。
「嘘、何かしたでしょ? 何かそんな顔してる」
「そんな顔って、どんな顔よ。…はい、完了」
備え付けてあったブラシで、乾かした髪を解かしてあげて、亮の即席美容室は終了だ。
手先の器用な亮は、髪のセットがうまい。
帰ったらもう寝るだけなのに、これからお出掛けでもするみたいな雰囲気の仕上がりに、睦月もご満悦な表情だ。
「亮の髪、俺が乾かしたげる。お返しに」
「え、いいよ。もう殆ど乾いてるし」
「ヤ! するの! はい、座って」
「え、えー」
気持ちは有り難いが、超が付くほど不器用な睦月に、たとえ髪を乾かすだけとはいえ、任せるのは何だか不安だ。
けれど睦月はやる気満々でドライヤーを構えていて、逆らえずに亮は大人しく睦月と場所を交代した。
楽しそうにドライヤーのスイッチを入れた睦月だったが、やはり元の性格が反映するのだろう、その乾かし方は、決して丁寧とは言い難い、雑なものだった。
(まぁ、そこが睦月らしいけど)
耳の辺りとか、思い切り熱風が掛かっているのだが、睦月に声を掛けても返事はない。
ドライヤーの音にかき消されたのか、髪を乾かすことに集中していて、声が届かなかったのか、とにかく鏡の中の睦月は、真剣な表情で亮の頭に集中している。
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落下星 (51)
ただ乾かすだけでなく、亮のようにちゃんとセットもしてあげたいのか、懸命に毛先を弄る睦月の顔が、すごく近い位置にある。
さっきも散々いたずらにキスをしたというのに、またしたくなってしまう衝動。
そりゃ好きなんだし、いつだって触れ合っていたいし、いっぱいキスしたい。
色惚けしてる?
だって仕方ない。好きなんだから。
「出来たー」
「、」
不意にドライヤーの音が止んで、ハッと気付けば、睦月が満足げにドライヤーを置いていた。
またキスしちゃおっかな―とか、亮が良からぬことを考えているうち、どうやら髪のセットは終わっていたらしい。
「どう? 完ぺきでしょ?」
「どうもありがとうございました」
どんな仕上がりになるか、実は内心ヒヤヒヤしていたが、不器用な睦月にしては、上出来なほうだろう。
「亮の髪、ふわふわでワンコみたいー」
「え、それって褒め言葉?」
「うん。俺、ワンコ大好き」
…あまり褒められている感は湧かないが、睦月の"大好き"が貰えたから、よしとするか。
「ウチねぇ、ワンコ3匹飼ってんだよー。おっきいの。レトリバー」
「ふぅん。ウチもいるけど、ちっちゃいヤツだな」
「ちっちゃいのもかわいいよねー」
無邪気に笑いながら、睦月は乾いてふわふわになった亮の髪を弄っている。
実家にいるちっちゃなワンコたちもかわいいが、そう言ってニコニコしている今の睦月のほうが、ずっとかわいい。…犬と比べて何だけど。
「じゃ、睦月、支度して帰ろっか?」
名残惜しいけれど、今日は宿泊ではないから、そろそろ出ないと時間になってしまう。
けれど椅子から立ち上がろうとした亮の背中に、睦月がキュッと抱き付いてきたので、亮は立ち上がり損ねてしまった。
どうした? て尋ねても、睦月は亮の肩口に顔をうずめてしまって。
「睦月?」
「…何かさぁ、帰っちゃうと、ここにいること自体、何か夢? みたいな、何かそんな感じで。帰ったら、全部醒めちゃうかも?」
さっきまでのはしゃいだような声とは違う、寂しそうな雰囲気が漂ってきて、亮はおんぶするときみたいに両腕を後ろに回して、背中を抱いてあげる。
「亮と今日エッチしたの、夢だったらどうしよう。好きだって言われたの、」
全部、全部夢だったら。
あんなに睦月に愛してると言ってくれたのも全部夢で、やっぱり亮は、高校のころの同級生みたく、男同士のセックスなんて気持ち悪いって思ってたら。
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落下星 (52)
何だかあまりにもスムーズにことが進み過ぎて、現実感がなくなってきて。
何かもう、全部が全部、ずーっと夢見ているみたい。
「夢じゃねぇよ。俺は睦月のこと好きだし、だから睦月のこと抱いたんだし、……帰っても、寝て起きて明日の朝になっても、醒めないから。それとも睦月、全部夢にしたいの?」
少し強い口調で返され、睦月は言葉に詰まる。
亮は後ろに回していた手を解くと、睦月のほうに向き直って、今度は正面から抱き寄せた。
「睦月?」
「…したくない」
椅子に座ったままの位置からだと、立っている睦月を見上げるような格好になって。
下から顔を覗き込まれながら尋ねられ、睦月は観念して答えた。
夢になんて、したいわけがない。
したくないから、だから怖いのに。
夢から醒めるのが、怖い。
「…睦月、怖がんないで? 何も怖くないじゃん。俺、こんなに睦月のこと好きだし、睦月だってそのこと、分かってくれたんでしょ? なら、それだけで十分じゃん?」
きっと本当は、それだけじゃあダメなんだろうけれど。
愛だけじゃ、愛してるってだけじゃ、ダメなのかもしれないけれど、でも今出来ることは、たった1つの愛を信じることくらいだから。
「夢じゃねぇし。全部現実でしょ? こーやって睦月のことギューってしてんのも夢なんて、俺、信じないよ? …まぁ、これが夢で、2人しておんなじ夢見てるってのもいいよね。夢の中でも愛し合って……俺ら、超ラブラブじゃん?」
なのに、何を怖がるの?
こんなに愛し合ってる2人なのに。
「亮のこと、好きぃ…」
睦月はギュッと亮にしがみ付く。
苦しくなるくらいの強い思いが伝わってくる。
「俺も好き。睦月のこと好き。…だからもう帰ろ? 帰っても夢から醒めないこと、ちゃんと証明してやるよ」
睦月の顔を引き寄せ、唇を寄せる。
瞳を閉じないキス。
亮の瞳に映る自分が、あまりに幸せそうな顔をしていて、何だか少し恥ずかしくなる。
こんなに幸せそうな顔をしていて、一体何を怖がっていたのだろう。
「…ん、帰る」
ようやく決心がついたように、睦月は亮の腕から抜け出た。
睦月とくっ付いていられなくなったのが少し寂しかったけれど、元気を取り戻してくれて安心した。
カッコいいことは言ったけれど、どうやったら睦月が不安にならないか、亮はいつだって模索していて、もしかしたらそんな答え、一生出ないのかもしれないけれど、でも、睦月を好きだ、て気持ちだけは誰にも負けない、たった1つの想い。
どうかそれだけは信じていてほしい。
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落下星 (53)
クーラーもない、ボロの扇風機ががんばっているだけの寮の一室を思い出し、睦月はうんざりしたように言った。
「しょーがねぇじゃん。去年1年乗り切ったんだ、今年もガンバレ」
「だーってさぁ」
先を歩いていた睦月が立ち止まって、クルリと亮を振り返った。
「ん? おっと」
ピョンと軽やかに亮に飛び付いて来たかと思うと、睦月はギュウギュウと亮に抱き付く。
嬉しいけれど、一体どうしたと言うんだろう。
「睦月?」
「だってさ、あっちぃと、亮とこーゆーこと出来ないじゃん?」
でしょ? と見上げてくる睦月に、亮は柄にもなく大きく心臓を跳ね上げてしまう。
確かに四六時中くっ付いていたいくらい好きだけど、やっぱり暑さには敵わないから、ちょっぴり残念、なんて伏目がちに言われたら、ドキドキしないほうが絶対おかしい。
「睦月、かわいっ…!」
「ぐぇっ、苦し…」
睦月の細い体を、亮が力いっぱい抱き締めるものだから、潰され掛けた睦月が思わず声を上げる。
「亮、ちょっ、苦しいって」
「ヤダ。離したくない、帰りたくない」
「…バカ」
でも、そんなことを言われて、嬉しくなっている自分だって、相当なバカかもしれない。
それでもいい。
「…亮、愛してる」
亮を好きになって、少しずつ強くなっていく。
愛の力? ……恥ずかしいから絶対言わないけど。
愛してる。
*END*
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
その愛を見せてごらん (1)
ポツリ、ポツリと窓ガラスに当たる雨粒。
(そういえば悠ちゃん、傘持ってったのかな…?)
モソリと毛布の中から抜け出した拓海は、窓のほうを見遣った。
最近コンビニ大好きの悠也は、夜明けとほぼ同時に早速「コンビニ行きたい」と言い出した。
まだ眠い拓海は当然それを断わったのだが、すると悠也は、「まだ寝てていいよ、1人で行ってくるし。何か欲しいもんとか、ある?」とか言う。
それで結局、悠也が1人でコンビニに行くことになったわけで。
悠也に寝ててもいいとは言われたものの、何となく寝付けなくて、拓海はベッドの中でぼんやりと悠也の帰りを待っていた。
(……起きるか…)
拓海がだるい体を起こして、脱ぎっ放しのままになっていたシャツを羽織ると、玄関のほうから鍵を開ける音が響いた。
「お帰りなさい。雨、大丈夫だった?」
「あれ、起きた?」
リビングにやって来た拓海の姿を見つけて、悠也は少し驚いたように眉を上げた。まだ7時だ。拓海自身だって、ちょっと驚く。
でも、そんな時間にコンビニから普通に帰ってくる悠也にも普通にビビるけど。
「悠ちゃん、濡れてんじゃん」
「あ、途中で雨降ってきちゃって」
悠也はいたって普通に答えるけれど、それは決して小雨に当たった程度の濡れ方ではない。
白いシャツは肌に張り付いているし、濡れた前髪の先は細く尖っている。
「何普通に答えてんの! 風邪引くよっ! 寒くない?」
「ちょっと寒いかな…」
「笑ってる場合じゃないでしょ、早く拭かないと、」
「唇、青い?」
「それはプールから上がった子どもでしょ?」
まるで他人事のようにのん気な悠也に、拓海はすっかり毒気を抜かれてしまう。
けれど視線を向けた悠也の唇は、確かにほんのり色をなくしていて、彼の体が本当に冷えているのだと知る。
拓海は思わず悠也の体を抱き締めた。
「ちょ…拓海、濡れ…」
「悠ちゃんの体、すごい冷えてる」
「…ッ」
肩口に顔を埋めていた拓海が、悠也の首筋に舌を這わせた。
「ちょ、待っ…」
「ダメ、待たない」
片手で悠也の背中を抱き、もう片方の手で顎を押さえて唇を奪う。悠也は身を捩って逃げようとしたけれど、拓海はそれを許さず、唇を割って舌を滑り込ませてきた。クチュリ。
「ぅん…、拓海…」
ドサッ……悠也が手にしていたコンビニの袋が床に落ちた。
角度を変えて、深く口付ける。逃げる舌を追い駆けて、絡め合わせて。悠也の足が震える。寒さのせいじゃない。
「はぁ…」
長い口付けから解放されて、悠也は大きく息をついた。
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その愛を見せてごらん (2) R15
「もぉ……何でこんな…」
「だって、悠ちゃんの格好、何かそそられるんだもん」
「そそられるって…」
何言ってんの? 言いながら、けれど足に力が入らないのか、体はすっかり拓海へ預けてしまっている。目が少し潤んでいて、そんなところもそそられるんだけど。
拓海は、啄むように何度もキスをする。
「ねぇ、悠ちゃん…」
「何? ダメだよ、これ以上はしない」
「え、何で?」
こんな雰囲気なのに? ここまで来といて!? ―――拓海は目で訴えかけるが、悠也は「ダーメ」と、体を離そうとする。
「昨日あれだけやっといて、まだするつもり? しかもこんな朝っぱらから」
「だって俺、若いもん」
呆れ顔の悠也に、拓海は笑顔で返す。
「俺、寒いんだけど」
「あっためてあげる」
何を言われたって、今は言い包める自信がある。悠也のほうもそれを感じ取ったのか、小さく溜め息をつくと、抵抗をやめた。
拓海はその体を強く抱き締めると、首筋に顔を埋める。
「ちょっ…ね、」
「ん?」
「……ベッド……行かないの…?」
「ここでいいよ」
戸惑う悠也をよそに、拓海は性急に悠也の体を求めてくる。深い口付けに足をよろめかせた悠也は、背中を壁にぶつけ、ズルズルと床にへたり込んでしまった。
「ぁ…んっ」
口付けを交わしたまま、拓海は悠也の濡れたシャツの中に手を忍ばせた。
「ホント……冷たくなってるね、体」
拓海はそのまま手を下へと動かし、悠也のジーンズの前を寛げる。
「足、開いて?」
「ね、ベッド行こうよ…、ここじゃヤダ」
「開いて、足」
もう1度言うと、悠也は観念したのか、閉じていた膝をおずおずと開いた。すかさず拓海の手が中に入り込んできて、熱を持ち始めた悠也の中心に触れる。
「ここは、もう熱くなってる」
「ッ…」
ビクリと体を震わせて体を強張らせている悠也に、拓海はゆっくりと優しく手を動かしてやる。
「ぁ、はぁ…」
徐々に速度を上げていくと、そこは硬さを増し、悠也の口からは甘い吐息が漏れてくる。拓海は手を動かしながら、その唇を塞ぐ。舌を絡めると、手の中の悠也が反応した。
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