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十一月 蹲る身体を貫き去る風 (4)
2009.01.17 Sat
「暗くなるの早いよなぁー」
「何か日が短くなると、寂しいよね」
「そだね」
まだ6時を過ぎたばかりだというのに、11月、店を出てみれば、日はすっかり暮れていた。
「てかさ、和衣、服買いすぎじゃね?」
いくつものショップの袋を大変そうに抱えながら歩く和衣に、祐介は苦笑する。
商品を見ても、買うまでにはじっくり考える祐介と違って、和衣の場合、欲しいと思うとつい手が伸びてしまって、その結果が、これだ。
「だってさ、買わないで後悔すんの、ヤじゃん。あんとき買っとけばよかった~、て」
「でも店員さんのおだてに乗りすぎ」
「だって、めっちゃ褒めるんだもん! 何かさ、ついその気になっちゃわない!?」
「あはは、和衣、超いいお客さんだよ」
「むぅ~…」
さすがに今日は買いすぎたかな、と和衣も思っていた。
下がってしまったテンションを無理やり上げたせいで、感覚が少しおかしくなっていたのかもしれない。
しばらくは節約しないと…。
「でも、似合ってたよ、和衣に」
「えっ…」
「え、」
「え…」
「あの、…うん、似合ってた、よ…?」
「あ…りがと…」
不意を突く祐介の言葉に、和衣は頬が熱くなるのを感じる。
もう1度言われて、やっと返事をしたけれど。
(暗いし…顔赤いの、バレてないよね…)
男に褒められて顔を赤くしている男なんて、変に思われ兼ねない。
冷たい風が頬を撫でていく。早くこの熱くなった顔が、冷めてくれたらいい。
「…メシでも食って帰ろっか」
「う、ん」
ぎこちなくならないように、精一杯いつもどおりに振舞って、和衣は頷いた。
「何食べる? てか、近くがいいよね?」
「え、何で?」
祐介の提案に首を傾げていると、
「だって、荷物多くて大変でしょ?」
「…………」
祐介が、すごく当たり前みたいに、さりげなくそう言ってくれるから。
バカだと思うけど、こんなことで胸が熱くなったり、いっぱいになったりして、そのたびに、やっぱり祐介のことが好きなんだって、実感してしまう。
「俺、別にファミレスとかでいいよ」
きっとデートなら、すてきな雰囲気のお店に行くんだろうけど、今日は一緒に出掛けられただけでも幸せだから、それは次の楽しみにとっておこうって思う。
それに、買い物しすぎて、もうお金の持ち合せもあんまりないから。
和衣の言葉に、結局この近くのファミレスに行くことになって、そちらに向かって歩き出せば、少しして、向こうから来た自分たちと同い年くらいの女の子が、声を掛けてきた。
「祐ちゃん、久し振りー!」
祐介を呼ぶその呼び方は、和衣の周りにはいない。けれど祐介が普通にそれに応えているところを見ると、大学以外の友人なのだろう。
女の子は、11月のこの寒空の下、元気にミニスカート姿で、祐介の友人にしてはちょっと珍しいかも、と思えるような、少し派手な雰囲気を持っていた。
「あ、高校のころの同級生で…」
見ず知らずの女の子の登場に和衣が戸惑っていると、祐介がそう紹介してくれ、その子にも和衣が大学の同級生だと紹介した。
話によると、彼女は高校を卒業してから、美容師の専門学校に通うため、祐介たちと同じように地元を離れていたらしい。
卒業以来だよねー、という女の子の声に、お盆に帰ったとき会わなかったんだ、などと、和衣は心の中で声を掛ける。
久々の再会に盛り上がる2人の話に、当然のことながら和衣はついていけない。これでもっと口上手だったり、人見知りをしたりしなければ、積極的に会話に混じっていけるけれど、それも出来ない。
さっきまであんな些細なことで、1人幸せに浸ってたっていうのに。
今はもう、こんなにも胸が痛い。
「ね、もうご飯食べた? 一緒に食べ行かない?」
その子の提案に、和衣はギクリとした。
単に、久々に会った同級生を誘うだけの言葉だろう。もちろん和衣にも一緒に行こうと言ってくれる。
どうする? という感じで、祐介は和衣を見た。
何も答えられない。
だって今日は。
2人きりだけれど、デートではないけれど、でも。
「…俺はいいや。もう帰るし、祐介、食べてきなよ?」
「え? は?」
視線を合わせずにそう言う和衣に、戸惑ったような祐介の声。
「俺、先に帰るから…、じゃ」
和衣は女の子に頭を下げると、祐介の顔を見ようともせずに、その脇をすり抜けていった。
後ろで、祐介の引き止めるような声がしたけれど、振り返らなかった。
角を曲がって、祐介たちの視界から自分が消えただろう瞬間、和衣は走り出した。
肩から下げているショップの袋が邪魔して、うまく走れない。けれど、和衣は足を止めなかった。
走って走って、人気の途絶えたところで、立ち止まって蹲った。
「うぅ…」
涙は、気付かないうちからずっと零れていたらしい。
蹲って抱えた膝に、どんどん染み込んでいく。
胸が痛い。
痛い。
この感情、この醜い感情が何なのか、和衣は知っている。
――――嫉妬だ。
冷たい風が、和衣の体を貫いた。
「何か日が短くなると、寂しいよね」
「そだね」
まだ6時を過ぎたばかりだというのに、11月、店を出てみれば、日はすっかり暮れていた。
「てかさ、和衣、服買いすぎじゃね?」
いくつものショップの袋を大変そうに抱えながら歩く和衣に、祐介は苦笑する。
商品を見ても、買うまでにはじっくり考える祐介と違って、和衣の場合、欲しいと思うとつい手が伸びてしまって、その結果が、これだ。
「だってさ、買わないで後悔すんの、ヤじゃん。あんとき買っとけばよかった~、て」
「でも店員さんのおだてに乗りすぎ」
「だって、めっちゃ褒めるんだもん! 何かさ、ついその気になっちゃわない!?」
「あはは、和衣、超いいお客さんだよ」
「むぅ~…」
さすがに今日は買いすぎたかな、と和衣も思っていた。
下がってしまったテンションを無理やり上げたせいで、感覚が少しおかしくなっていたのかもしれない。
しばらくは節約しないと…。
「でも、似合ってたよ、和衣に」
「えっ…」
「え、」
「え…」
「あの、…うん、似合ってた、よ…?」
「あ…りがと…」
不意を突く祐介の言葉に、和衣は頬が熱くなるのを感じる。
もう1度言われて、やっと返事をしたけれど。
(暗いし…顔赤いの、バレてないよね…)
男に褒められて顔を赤くしている男なんて、変に思われ兼ねない。
冷たい風が頬を撫でていく。早くこの熱くなった顔が、冷めてくれたらいい。
「…メシでも食って帰ろっか」
「う、ん」
ぎこちなくならないように、精一杯いつもどおりに振舞って、和衣は頷いた。
「何食べる? てか、近くがいいよね?」
「え、何で?」
祐介の提案に首を傾げていると、
「だって、荷物多くて大変でしょ?」
「…………」
祐介が、すごく当たり前みたいに、さりげなくそう言ってくれるから。
バカだと思うけど、こんなことで胸が熱くなったり、いっぱいになったりして、そのたびに、やっぱり祐介のことが好きなんだって、実感してしまう。
「俺、別にファミレスとかでいいよ」
きっとデートなら、すてきな雰囲気のお店に行くんだろうけど、今日は一緒に出掛けられただけでも幸せだから、それは次の楽しみにとっておこうって思う。
それに、買い物しすぎて、もうお金の持ち合せもあんまりないから。
和衣の言葉に、結局この近くのファミレスに行くことになって、そちらに向かって歩き出せば、少しして、向こうから来た自分たちと同い年くらいの女の子が、声を掛けてきた。
「祐ちゃん、久し振りー!」
祐介を呼ぶその呼び方は、和衣の周りにはいない。けれど祐介が普通にそれに応えているところを見ると、大学以外の友人なのだろう。
女の子は、11月のこの寒空の下、元気にミニスカート姿で、祐介の友人にしてはちょっと珍しいかも、と思えるような、少し派手な雰囲気を持っていた。
「あ、高校のころの同級生で…」
見ず知らずの女の子の登場に和衣が戸惑っていると、祐介がそう紹介してくれ、その子にも和衣が大学の同級生だと紹介した。
話によると、彼女は高校を卒業してから、美容師の専門学校に通うため、祐介たちと同じように地元を離れていたらしい。
卒業以来だよねー、という女の子の声に、お盆に帰ったとき会わなかったんだ、などと、和衣は心の中で声を掛ける。
久々の再会に盛り上がる2人の話に、当然のことながら和衣はついていけない。これでもっと口上手だったり、人見知りをしたりしなければ、積極的に会話に混じっていけるけれど、それも出来ない。
さっきまであんな些細なことで、1人幸せに浸ってたっていうのに。
今はもう、こんなにも胸が痛い。
「ね、もうご飯食べた? 一緒に食べ行かない?」
その子の提案に、和衣はギクリとした。
単に、久々に会った同級生を誘うだけの言葉だろう。もちろん和衣にも一緒に行こうと言ってくれる。
どうする? という感じで、祐介は和衣を見た。
何も答えられない。
だって今日は。
2人きりだけれど、デートではないけれど、でも。
「…俺はいいや。もう帰るし、祐介、食べてきなよ?」
「え? は?」
視線を合わせずにそう言う和衣に、戸惑ったような祐介の声。
「俺、先に帰るから…、じゃ」
和衣は女の子に頭を下げると、祐介の顔を見ようともせずに、その脇をすり抜けていった。
後ろで、祐介の引き止めるような声がしたけれど、振り返らなかった。
角を曲がって、祐介たちの視界から自分が消えただろう瞬間、和衣は走り出した。
肩から下げているショップの袋が邪魔して、うまく走れない。けれど、和衣は足を止めなかった。
走って走って、人気の途絶えたところで、立ち止まって蹲った。
「うぅ…」
涙は、気付かないうちからずっと零れていたらしい。
蹲って抱えた膝に、どんどん染み込んでいく。
胸が痛い。
痛い。
この感情、この醜い感情が何なのか、和衣は知っている。
――――嫉妬だ。
冷たい風が、和衣の体を貫いた。
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒ せ、切ない・・・
恋してると、相手の些細な言動のひとつひとつに凸凹しちゃいますよね~。
カズちゃん切ないなぁ。
今の友達って立場じゃ、嫉妬するのもおかしいって分かってるだけに、どうにも出来ないですもんね(T_T)
ゆっちも、さすがに一日一緒にいて、何か感じたかな?
3人組とゆっち&むっちゃん。
一体どうなるんだー?!
カズちゃん切ないなぁ。
今の友達って立場じゃ、嫉妬するのもおかしいって分かってるだけに、どうにも出来ないですもんね(T_T)
ゆっちも、さすがに一日一緒にいて、何か感じたかな?
3人組とゆっち&むっちゃん。
一体どうなるんだー?!
りり ⇒ カズちゃん…
カズちゃ~ん、泣かないで~。
多くを望んでいるわけじゃなくても、カズちゃんにとっては大切な一日だたんですよね。
その最後に、押しの強めな女子…凹
ゆっちは一日一緒にいて、少しはカズちゃんの態度に軟化気付いてくれたでしょうか?
多くを望んでいるわけじゃなくても、カズちゃんにとっては大切な一日だたんですよね。
その最後に、押しの強めな女子…凹
ゆっちは一日一緒にいて、少しはカズちゃんの態度に軟化気付いてくれたでしょうか?
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
> 恋してると、相手の些細な言動のひとつひとつに凸凹しちゃいますよね~。
特にカズちゃんの場合、自分のヤキモチ妬きな性格を自覚していて、自己嫌悪しちゃう性格なんで、余計つらいですよね。
> ゆっちも、さすがに一日一緒にいて、何か感じたかな?
相変わらず気持ちの読めないゆっちさん。
みなさんをヤキモキさせてるんじゃないかって、ちょっと心配(苦笑)
そのうち行動を起こします。
お楽しみに(笑)
コメントありがとうございました!
特にカズちゃんの場合、自分のヤキモチ妬きな性格を自覚していて、自己嫌悪しちゃう性格なんで、余計つらいですよね。
> ゆっちも、さすがに一日一緒にいて、何か感じたかな?
相変わらず気持ちの読めないゆっちさん。
みなさんをヤキモキさせてるんじゃないかって、ちょっと心配(苦笑)
そのうち行動を起こします。
お楽しみに(笑)
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >りりさん
好きな人と一緒にいるんだから、ヤキモチくらい妬いたってしょうがないのに、ついつい自己嫌悪してしまうカズちゃん…。
そしてカズちゃんの大切な1日の締めくくりに、女子を登場させてしまう私…。
彼女に他意はないんですが、カズちゃんにとってはショックが大きすぎたみたいで、切ない思いをさせてしまいました(すみません!)
> ゆっちは一日一緒にいて、少しはカズちゃんの態度に軟化気付いてくれたでしょうか?
いまだに気持ちの読めないゆっちさん。
ヤキモキさせてすみません!
コメントありがとうございました!
そしてカズちゃんの大切な1日の締めくくりに、女子を登場させてしまう私…。
彼女に他意はないんですが、カズちゃんにとってはショックが大きすぎたみたいで、切ない思いをさせてしまいました(すみません!)
> ゆっちは一日一緒にいて、少しはカズちゃんの態度に軟化気付いてくれたでしょうか?
いまだに気持ちの読めないゆっちさん。
ヤキモキさせてすみません!
コメントありがとうございました!