恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

君といる十二か月

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君といる十二か月 (tittle:as far as I knowさま)


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【ファーストシーズン :: 君といる十二か月】
 四月 きっとなにかがはじまる
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 五月 水面には君という波紋
  (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 六月 隣の君は肩を濡らして
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 七月 嫌がらせの至近距離
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)
 八月 瑠璃色の夕べに君はいない
  (1) (2) (3) (4) (5)
 九月 じりじりと焦がれる初秋
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 十月 猶予はあとどれくらい
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 十一月 蹲る身体を貫き去る風
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 十二月 滲む涙も君との聖夜
   (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13)
 一月 かじかむ指とそまる頬
  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 二月 原点はチョコレートじゃない
  (1) (2) (3) (4) (5)
 三月 続く日々も君とありたい
  (1) (2) (3)

【セカンドシーズン :: 恋するカレンダー12題】

【シーズン番外編 :: Baby Baby Baby Love】

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四月 きっとなにかがはじまる (1)


 いくら2流、3流だとしても、大学にさえ受かってしまえば、こっちのものだ。とりあえずは、人生の猶予期間ってことで、4年間は自由の身である。

 そしてこの春、めでたくも同じ大学に合格したのは、小学校からの腐れ縁、秋月亮(アキヅキ リョウ)・九条和衣(クジョウ カズイ)・山口翔真(ヤマグチ ショウマ)の3人。
 小中学校は校区が同じだから仕方ないにしても、高校まで一緒だって知ったときには、さすがに笑った。でもそれにしたって、大学まで同じだなんて、腐れ縁もここまで来ると笑うに笑えない。

「しょうがないじゃん、結局頭のレベルが同じなんだから」

 ファーストフード店の窓際の席。
 バニラシェイクを飲みながらそう言ったのは、和衣。
 隣の翔真も無言で『ウンウン』と頷いているが、向かい側の亮だけは、まだ現実を直視できないような顔でチーズバーガーに齧(かぶ)り付いた。

「そんなに嫌なら、別んとこ行きゃー良かったのに」
「ショウちゃん、それを言ったら、ここしか受かんなかった亮がかわいそうだよ」
「あぁー……じゃあ、俺たちが受かった別の大学に入学すれば良かったかなぁ?」
「うるせぇよ!」

 亮抜きに勝手なことを言っている隣の2人に、とりあえず突っ込んでおく。
 そうは言っても、別に今さら浪人までして他の大学を受け直すつもりもないし、2人に、一緒は嫌だから他の大学に入学してくれなんて言うつもりもない。

 高校生活最後の春休みを、相も変らぬ3人で過ごしている時点で、何となく離れられないような運命を感じてみたり。

「―――あ、あの子、かわいい」

 亮のトレイからポテトを1本失敬した翔真が、窓ガラスの向こうを指差した。

「どれどれ?」

 すぐに興味を示す亮と和衣。

「あの、ニットのロングカーデの子」
「白の?」
「そうそう」

 言われて視線を向ければ、ガラスの向こう、ミディアムウルフの黒髪の子が携帯電話を掛けている。
 前髪は少し長めで、羽織っている白いニットのロングカーディガンの袖も長めで、指先がちょこんと覗いていて、確かにかわいい。

「待ち合わせかな」

 携帯電話を耳に押し当てたまま、彼女の表情はみるみる曇っていく。何か会話している様子もないまま電話を切っているところを見ると、相手はどうやら電話に出なかったようだ。

「彼氏がデートの待ち合わせに遅刻、ってとこか」

 3人が、ガラス越しの彼女の状況を好き勝手に言っていると、カバンに携帯電話をしまった彼女のもとに、いかにも遊んでいるふうな若い男の2人連れが近付いていった。

「ナンパか?」

 挟むように両脇に立った男たちは、笑いながら、何やら彼女に話しかけている。ただでさえ曇っていた彼女の表情が、ますます険しくなる。

「ナンパされて付いていくに1票」
「断わって逃げるに1票」
「ちょうどいいタイミングで彼氏が助けに来るに1票」

 まさかガラス越しのファーストフード店の店内で、そんなことを話されているとは思ってもみないだろう、彼女は不機嫌そうな顔のまま、男たちに何か言い返している。
 しかしそんなことお構いなしといった感じで、1人が彼女の肩を抱いた。

「おぉ!? やっぱ付いてくか!?」

 勝手に盛り上がる3人。
 しかしその直後に彼女が取った行動は、亮たち3人も、声を掛けた2人連れもまったく予想だにしていないものだった。

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四月 きっとなにかがはじまる (2)


 肩に回された手を勢いよく振り払った彼女は、さすがにムッとした男が無理やり手を引こうとするより先、そのシャツの胸倉を掴み上げたのだ。

「マジ!?」

 相手は男2人だというのに、一向に怯むことのない彼女。そればかりか、最終的には2人のナンパ男は、彼女に頭を下げながらその場を去って行ったのだ。

「すげぇ」
「つーか、怖ぇ…」

 すごいはすごいが、これが自分の彼女だと思うと、確かに怖い。

「あれ? こっち来る」

 2人のナンパ男を撃退した彼女は、不機嫌そうな顔のまま、3人のいるファーストフード店に入ってきた。
 当然、3つの視線は、彼女に釘付け。
 街中で男の胸倉を掴み上げる女の子なんて、ちょっと興味ある。でも声でも掛けた日には、先ほどの2人の二の舞を演じかねないだろう。

 彼女は何も注文しないまま、亮たちの隣のテーブル席に座った。
 3人が顔を見合わせてから、好奇心の視線を彼女に向けていると、カバンの中の携帯電話が音を立てたのか、彼女は携帯電話を取り出した。
表示された名前を見て顔を顰めたところを見ると、おそらく待ち合わせの相手からなのだろう。

「―――遅いっ!!」

 電話を耳元に持っていって、まずその一声。きっと相手が『もしもし』も言っていないタイミング。

「はぁ? 俺、もうとっくに来てんだけど。は? 聞こえない―――もしかしてまだ駅? 電車乗ってねぇの?」

 予想どおり、電話の相手は、彼女に待ちぼうけを食わせている人物らしい。
 しかしそこで和衣が、ふと気が付いた。

「ねぇ、何か声……男の声っぽくない?」

 そうなのだ。
 電話で話す彼女の声は、"彼女"というにはあまりにも低く、女のそれではない。

「…………オカマ?」

 外見が女で、中身が男、もしくは昔は男だった―――ということなのだろうか。

「でも、自分のこと、"俺"って言ってたけど…」
「??? 男……ってこと?」

 わけが分からない、といったふうに3人が考え込んでいると、ふと、電話を切った彼女―――いや、彼? が3人のほうを見た。
 隣の席から送られてくるあまりに不躾な視線に、自分が見られていることに気が付いたらしい。
 慌てて3人は視線を逸らした。
 何か言われるだろうかと思ったが、女のようで男のような彼は、何も言わずに席を立つ。懲りずに視線を送れば、どうやら何かを注文しに行ったらしい。

「やっぱ男かな?」
「男……か?」
「見た目以外は、男だよね」

 もし彼が本当に男だとすれば、先ほどの2人連れを追っ払ったときの状況も、納得できる。

「何だ、男か。つまんねぇ」

 そう言ってのけたのは、亮だ。
 いくらかわいくても、男に興味はない。

「もし女だったとしても、声掛けたら、さっきの奴らみたいに殴りかかられちゃうよ」
「勘弁してくれ…」

 まったくもって勝手なことを喋り続けている3人。
 もちろんそんなことを知らない彼は、買った飲み物を持って、先ほどと同じ、亮たちの隣のテーブルに戻ってきた。

(黙ってりゃ、女だよな…)

 両手で紙コップを持ってストローを銜えている姿は、間違えて、それこそナンパしてしまうかもしれない、などと思いながら、3人はまた別のくだらない話を興じ始めた。

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四月 きっとなにかがはじまる (3)


 それからどのくらい時間が経ったか、3人がそろそろ帰ろうかと席を立つと、隣のテーブルに人影が増えた。
 ついそちらに視線を向ければ、今度は3人組の若い男。

「またナンパされてる」
「でも、男だろ?」

 女ではないということを知ってしまった3人は、また彼がどんな行動を取るのか気になって、ダストボックスの前で止まって様子を窺った。
 こっそりと聞き耳を立てていると、やはり3人組は彼をナンパしようとしているらしい。
 しかし虫の居所の悪い彼は、ことごとくそれを無視している。反応がないことがおもしろくないのか、男たちの口調が徐々に荒くなっていく。

「あーあ、適当にあしらっちゃえばいいのに」

 口を開けば男だということが分かるのだから、穏便にこの場を去って行ってくれるだろうに。
 けれど彼は、返事を返すのも面倒臭いといった感じで、だんまりを決め込んでいる。

「おい、何か言えよ」

 3人のうちの1人が、彼の肩を掴んで無理やり自分のほうを向けさせた。

「…うるせぇな」

 ビックリするぐらいの、怒りに満ちた低い彼の声。関係ないはずの亮たち3人も、思わず竦み上がりそうだ。

「バカに付き合ってる暇なんかねぇんだよ」

 持っていた紙コップをグシャッと握り潰して、彼は乱暴に立ち上がった。

「何だと、てめぇっ!」

 さすがにこれには男たちもぶち切れて、先ほどとは逆に、男のほうが彼の胸倉を掴み上げた。周囲のお客たちも、ただならぬ雰囲気にざわつき始める。

「何か……まずくね?」

 厄介ごとには出来るだけ係わりたくないが、先ほどから彼のことをおもしろがって見ていた身としては、このまま放っておくのも忍びない。
 3人は目配せした後、徐にそちらに近づき、彼と、揉めている3人の男たちの間に割って入った。

「ゴメンゴメン、遅くなっちゃって」
「何やってんの? こんなとこで」

 待ち合わせに遅れたふりで声を掛けたのは、和衣。白々しい質問は翔真。そして亮は、何気なく男の手を彼の胸元から放す。

「何…」

 あまりにも意外に登場してきた亮たち3人に、男たちも怒気を失ったようにポカンとしている。
 ただ、彼だけはまだムッとした表情のままで。

 3人組の男は、周囲の視線が自分たちに向いていることに気が付いたのか、顔を見合わせた後、すごすごと店を出ていった。
 仲裁に入ろうとそばまで来ていた店員にも、他のお客たちにも安堵の表情が広がった。

「あ、睦月!」

 静まり返った店内に、何とも言えない間抜けなタイミングで声が響いた。
 店員もみんなこちらに注目していたため、3人組の男たちと入れ違いにお客が入ってきたことに気が付かなかったのだ。
 聞こえた声は、そのお客が発したものだった。

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四月 きっとなにかがはじまる (4)


 入って来たのは、実直そうな若い男。亮たちと同年代くらいか。
 そして彼の発した「睦月」という言葉に反応したのが、今の今まで一発触発状態だった、例の彼で。
 さすがにこれには亮たちも驚いた。

「え……何? どうしたの?」

 席を立ったまま、不機嫌そうにしている『睦月』と呼ばれた彼。そしてそのそばに立つ亮・和衣・翔真。
 事情を知らずに見た者には、少々分かりづらい状況だ。

「あー……えっと…??」

 やって来た彼は、困ったように両者を見比べる。

「何? 何かしたの?」
「別に」

 怒り心頭の彼では埒が明かないと思ったのか、視線は亮たちのほうに向く。

「あ……いや、何か変なヤツらに絡まれたみたいで…」

 どんなふうに説明していいか分からず、先ほどまでの事態を、翔真が掻い摘んで話した。

「え? あ、もしかして助けてくれたの?」
「あ、いや、助けるってほどじゃ…」
「いえ、すみません、ホントに。睦月もちゃんとお礼言った?」

 同い年ぐらいだろうに、何とも保護者のような雰囲気を醸し出している友人の彼に、睦月は頬を膨らませている。

「睦月、」
「お前が遅れてくるからだろ、バカ! だいたいあいつらが先にケンカ吹っ掛けてきたんだ。俺は悪くない」
「何? ケンカしたの? あ、それを止めてくれた?」

 まだ状況を把握し切れていない友人くんが、3人を向く。

「まぁ……ケンカになりそうだったっていうか…」

 ケンカというか、初めはナンパだったのだけれど。
 しかも睦月は、"向こうが先にケンカを吹っ掛けてきた"と主張しているが、少々強引なナンパをケンカに発展させかけたのは、睦月のほうだ。

「そうなんだ。ホントにすいませんでした」

 ケンカを始めようとした張本人ではなく、無関係ともいえる、遅れてきた友人がなぜか謝っているという、不思議な光景。
 しかし睦月のイライラは収まらないのか、彼に言われたとおりに謝るどころか、苛立たしげに紙コップをテーブルに叩き付けると、3人の間を無理やり通り抜けて店を出て行ってしまった。

「あ、睦月、ちょっ…」

 慌てて後を追いかけようとして、けれど潰れた紙コップがそのままになっているのに気付いて、それをゴミ箱に捨ててから、友人くんは店を出ていった。

「何あれ」
「さぁ…」



 それは、高校最後の春休み、思い出作りというには、あまりにも強烈な印象を3人に与える出来事だった。

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