恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2015年12月

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恋は七転び八起き (86)


「いや、央ちゃん、ちゃんと槇村くんに言ってよ。お兄ちゃんに言った、て。後でばれたとき、気まずいじゃん!」
「そぉ? 純平くんがばれないようにしてたら、ばれないんじゃない?」

 今し方、純平への隠し事への後ろめたさからすべてを明かしたというのに、性懲りもなく央はあっさりとそんなこと言う。しかしそれは、純平が許さなかった。

「ダメだよ、央ちゃん。ちゃんと槇村くんに言わないと、嘘つきさんになるよ?」
「う…。分かった、ちゃんと言っとく…」

 嘘つきだと言われると、それは確かにそうに違いなく、居心地が悪い。央は観念して頷いた。そもそも槇村は、純平には話したほうがいいというようなことを言っていたから、言っても問題はないだろう。

「絶対だからね、央ちゃん。電話番号聞いたんだったら、月曜日までに言っといてよ? 月曜に会社行って、槇村くん、俺が知らないと思って、ばれないように必死で隠そうとしてたら、何かこっちまで悪いことしてる気分になるから」
「分かった分かった。電話かー…。あ、でも槇村くんて、毎日電話とかそんなんしたらウザいとか思う人かな?」
「どうだろうなぁ」
「純平くん、知らないの?」
「知らないよぉ。俺、そもそも槇村くんの番号も知らないんだから」
「むー…」
「でも槇村くん、会社でも殆どスマホ弄ってないから、あんましないんじゃないかな? 分かんないけど」

 槇村くんとそんな話したことないから…と純平はすまなそうに眉を下げる。
 今どきの若者は、いつでもどこでも誰かと繋がっていたいと思う気持ちが強いように言われるけれど、槇村は、そういう感情を持つには少し年がいっているから、頻繁な電話やメールは面倒くさがりそうな気はする。もちろん年齢に関係なく、SNSの類を好きな人はいるけれど、純平の話を聞く限り、槇村はそういうタイプではなさそうだ。

「なぁ、純平くーん」
「何ですか」
「俺、槇村くんと付き合うことになったんだよー?」
「え、うん。それは聞いたよ」
「…………夢かなぁ?」
「ええぇっ!? まさかの夢オチ!? いや、俺は今央ちゃんから聞いただけだから、ホントのところは知らないけど…………違うでしょ? 電話番号とか教えてもらったんでしょ?」
「うん。でも何か、すごすぎて、夢みたいで…」

 央はポテッと隣の純平に体を預けた。
 昨日の夜、電車の中で槇村に会ってから、まだ24時間も経っていない。それなのに、央はもう諦めなければ…と思っていた槇村への想いを実らせ、槇村と付き合うことになり、キスをして、槇村の家に泊まって来たのだ。頭が付いて行かない。

「純平くん…、俺、槇村くんと付き合うことになったんだよ…?」
「分かった分かった。夢じゃないんでしょ? おめでとう、央ちゃん」
「…うん。だから、純平くんも、あれだよ?」
「ん?」
「お休みの日に、1人でお家に引き籠ってないで、彼女作らないとダメだよ?」
「辛辣!!」



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恋は七転び八起き (87)


  央・圭人・七海



「…何でお前がいんだよ」

 日曜日の朝、圭人の家に来た央は、通された圭人の部屋に、なぜかすでに七海がいるのを見つけて、露骨に嫌な顔をしたが、七海はまったく以て平然とした顔で、「おはよう、央ちゃん」なんて言っている。

「いや、俺が呼んだんだけど…」
「圭ちゃん…」
「だって、昨日の電話、あれホントなん? あれ聞いたら、ななみんも呼ばなきゃ! て思うし…。一応メッセージ送ったんだけど…………見てない?」
「えっ、あ、見てない…」

 昨日の央からの電話といえば、『俺、槇村くんと付き合うことになったから! 明日、圭ちゃんち行って話するね!』と、一方的に央が喋るだけのもので、圭人が何か口を挟む前に、お母さんにご飯だと呼ばれたと言って一方的に切れたのだ。その後、何度掛け直しても繋がらないとなれば、圭人1人ではとても抱え切れないと思って当然だ。

「そーそー、央ちゃん。何で俺のことはぶろうとすの。人でなしだぁ」
「うっさい、アホ! 俺は圭ちゃんに一番に話したかったの!」
「でも昨日電話で圭人に言ったんでしょ? 槇村くんと付き合うことになった、て。一番に言ってんじゃん。なら、2番目は七海にしてよぉ」
「かわい子ぶんな、キモイ」

 七海も呼ぼうと判断したのは圭人だけれど、こうして、のん気な七海と苛立って毒突く央を見ていると、七海を呼んだのは間違いだったかなぁ…と少しばかり思う。話が進まない。
 別に央は七海のことが嫌いというわけではなく、時には気持ち悪いくらいベッタリしていることもあるのに、今みたいに恐ろしいくらい邪険に扱うこともある。その切り替えのスイッチはどこなのか圭人には分かりかねるが、どちらにしても、七海は全然堪えておらず、むしろ楽しんでいるくらいだ。

「でも、ホントに槇村さんと付き合うことになったの? すごいじゃん! おめでとう、央ちゃん」
「お、おぅ、ありがとう…」

 からかうのではなく、真面目な顔で七海が言うと、まっすぐなその言葉に、央は照れてもじもじしながら視線を落とした。

(央…、ツンデレスキルの発動のしどころ、間違ってる…)

 圭人は2人のやり取りに、溜め息を漏らす。ただの友人である七海にやって何になる。槇村がそういう属性を喜ぶかどうかは知らないが、ここでやるなら槇村の前でやってやれ。
 しかも、央の七海に対するツンデレは、どう見ても七海のコントロールによるものとしか思えず、乗せられている央は、完全に無自覚、無意識だ。だから圭人は溜め息をつきたくなるのだ。

「それよりも央! ちゃんと話聞かせてよ! そのために来たんでしょ!?」

 少しも進まない話に焦れて、圭人は話を軌道修正する。槇村と付き合うことになったのを、確かに圭人は七海よりも先に教えてもらったかもしれないが、その一言しか聞いていないのだ。状況がまったく分からないという点では、七海と同じだ。



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恋は七転び八起き (88)


「…ん、あのね、一昨日の帰りさ、槇村くんに会ったじゃんか」
「いや、知らないけど…………会ったの? え、会いに行ったの!?」
「央ちゃん、正気!?」

 央の話は時々、相手が自分と同じことを知っているという体で始まることがあるが、一昨日の金曜日、央と一緒に帰ったわけではない圭人も七海も、央が槇村と会ったという事実をもちろん知らない。央はサラッと話し始めたが、2人が会うとなると、当然央がまた槇村に会いに行ったという発想に辿り着くわけで、圭人も七海もギョッとして央に詰め寄った。

「正気に決まってんだろ! お前とは違うわ!」
「俺のほうが絶対に正気だし!」

 驚愕している2人のうち、央が七海のほうにだけ突っ込みを入れるから、七海は心外だとばかりに声を荒げた。七海の言い方もひどかったが、しかし圭人は央のことを庇ってやることが出来ない。そのくらい圭人も驚いている。
 だって央は、最後に槇村に会ったとき、かなり悲惨な振られ方をしている。今まで8回も失恋し、七海曰く失恋のプロである央が、もう一生立ち直れないかというくらい凹んで、さすがにもう槇村には会えない、諦めるしかない、という言葉を初めて口にしたのに、それから1週間で、もう槇村に会いに行ったのか。舌の根の乾かぬうちに…とはよく言ったものだ。
 しかし、槇村と付き合うことになったというからには、前提として、あの日以降、央と槇村がどうにかして顔を合わせているわけで、央の頭が正気かどうかはともかく、2人が会ったのは事実なのだろう。

「央、ホントに槇村さんち行ったの? 槇村さん、怒らなかった?」
「んー…、槇村くんちに行ったのは、槇村くんが、来る? て言ったからだよ?」
「はぁっ!?」

 央が全然順序立てて話さないものだから、意味の分からない圭人と七海は、央の一言にいちいち驚かなければならない。圭人は、やはり七海を呼んでよかった、と心から思った。自分1人だったら、とても神経が持たない。

「ちょっと待って、央。お願いだから順番に話して? どこで槇村さんと会ったって? 何で槇村さんち行くことに……や、槇村さんが何で央に、来る? て言ってくれたわけ? だってこの前…、や、ちょっと待って、もしかして俺が電話したとき、槇村さんちだったとか?」

 聞きたいことがたくさんありすぎて、一体何から聞いていいか分からなくなり、圭人の質問もだいぶ的を射ないものになっている。しかし、わけが分からないのだから仕方がない。最後に槇村に会ったとき、槇村は、央の顔など見たくないとまで言ったのだ。それなのに、どうして槇村のほうから央を誘うようなこと…。

「んとね、金曜日な、帰るとき、俺、電車で痴漢に遭って」
「「はぁ~~~~!!!???」」

 央が槇村と付き合うことになったとか、央が槇村の家に行ったのが、槇村のほうから誘ったものだったとか、いろいろと衝撃的な事実が浮かび上がって来るが、またしてもあっさりと爆弾が落とされて、圭人と七海は揃って大きな声を出してしまった。いやこれは、出さざるを得ないだろう。



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恋は七転び八起き (89)


「ちっ痴漢て!」
「央、ホントに!? 大丈夫だったの!?」

 央は確かに高校2年生のわりには華奢で小柄なほうだが、決して女と間違うような容姿などしていない。学校の帰りなら制服姿だったわけで、それならなおさら。それなのに痴漢なんて。

「そんときは大丈夫じゃなかったけど、もう大丈夫だよ? 槇村くんが助けてくれたから」
「そこで槇村さん登場!?」
「カッコよすぎるっ…!」

 央が1人で帰った日に限って痴漢なんて…と圭人が自己嫌悪に陥り、七海もさすがにふざけることが出来ずに本気で心配した矢先、央の口から、まるで少女漫画のような展開が発せられて、2人は驚いていいのか、突っ込んでいいのか分からなくなった。
 しかし同時に、央の言うことが本当なのかという気持ちも芽生える。央が嘘をついているとは思わないが、あまりに出来過ぎた展開に、もしかして妄想と現実の区別がつかなくなったのでは…と思えて来たのだ。

「央ちゃん…、あの…」

 もう1度、正気なのかと尋ねようとして、しかし七海はうまく言葉が出ない。先ほどのように、『正気に決まってんだろ!』と突っ込み返してくれればいいが、そうでなかったら…。

「俺、痴漢に遭ったの、初めてだよ? 圭ちゃんも気を付けてね」
「お…おぅ、ありがとう、央」

 相手が男だと分かったうえで痴漢行為を働く輩の場合、どういうタイプが好みなのかは分からないが、身の丈180cmの七海よりは、何となく圭人のほうが狙われやすそうだ。わざわざ圭人の心配までしてくれる央は、やはり妄想の世界ではなく、しっかりと現実を生きているのだろうか。

「でも央、俺んち来るのに、電車で来たんでしょ? 大丈夫だった?」

 再び央が痴漢に遭ったのではないかという心配と、そんな目に遭った後なら、電車に乗るのもちょっとしたトラウマになっていそうだから、普通に電車など乗れるのだろうかという心配で、圭人は尋ねる。

「ん、純平くんが一緒に来てくれたから」
「えっ、兄ちゃん一緒に来たの? 嘘! まさか今、外で待ってるとか!?」
「んーん、駅まで。俺、大丈夫だって言うたのに、心配だから、て付いて来た。でも駅でバイバイしたよ?」
「そっかぁ…」

 圭人も央のことをわりと過剰に心配するほうだが、純平の過保護っぷりといったら…。気持ちは分かるが、純平にもちょっとしたストーカー気質があるのではないかと疑いたくなる。血は争えない。

「それより央ちゃん、その痴漢の話! どうなったの。槇村さんが助けてくれた、て」

 その話が妄想なのか現実なのか、話を進めて行けば分かるはずだと、七海は先を促す。今日、兄の純平がわざわざ央を送ってくれたことを考えると、本当のことだと思っていいはずなのだが、それでもまだ信じられないので。



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恋は七転び八起き (90)


「どう、て……俺、痴漢されてて、どうしようて思ってたら、槇村くんが声掛けてくれた」
「同じ電車に乗ってたんだ?」
「俺、全然気付かなかったけど、でも途中に槇村くんが乗る駅あるじゃんか、会社の近くの。そこで乗ったんじゃないかな?」
「それで、槇村さんちに行くことになったの? 央が痴漢に遭って、心配だから、家来る? て言ったってこと?」

 痴漢に遭っている央に槇村が声を掛けて、その場はそれで収まったとしても、槇村の下車駅は央より先なので、痴漢がそれより先に電車を降りるか、駅員にでも突き出されるかしない限り、再び央が狙われる可能性はある。
 槇村は央に顔も見たくないと言い放ったけれど、それでも、顔見知りの高校生が痴漢に遭っているのを放っておけずに声を掛けたのは、倫理観と併せて考えてもあり得ない話ではないが、そこから、槇村の家に行くという展開があまりに飛躍しすぎていて、よく分からない。行くべきところは、駅長室なのでは?

「多分、槇村くんは痴漢を捕まえようとしたんだと思うけど、それどころじゃなくて…」
「どういうこと?」
「…んとな、」

 金曜日、帰りの電車で央は、男なのに痴漢に遭っていることや、それに対して何も出来ない情けなさや、周りに知られたら恥ずかしいという思いやらで、気持ちはグチャグチャになっていた。気付かなければ助けようもないが、誰も助けてくれないこともショックだった。
 降りるべき駅はまだ先だったが、痴漢から逃げるため、一旦電車から降りようかとも考えたものの、付いて来られても怖いし、どうしていいか分からずにいたら、槇村が声を掛けてくれたのだ。それにより、痴漢男も行為がばれて離れていくと思ったのに、男は最後まで央から離れなかった――――最後まで。

 槇村は痴漢を捕まえるつもりだったのかもしれないが、電車の中でズボンに精液を掛けられた恐怖に、央が思わず槇村にしがみ付いてしまったものだから、結局央を連れて電車を降りるだけに留まった。
 槇村は、上着で央のズボンの汚れを隠してトイレまで連れて行き、自分のハンカチでそれを落としてくれたし、槇村の上着まで汚れたことも、気にするなと言ってくれた。顔も見たくないほど嫌いだと言ったくせに、泣きじゃくる央を慰めてくれたし、心配するなと言っても、心配するのをやめなかった。
 その後、央は電車で帰ろうとしたけれど、恐怖に足が竦んで動けなくなって。そんな央を連れて改札を抜けた槇村は、タクシーという選択肢もくれたのだが、央はタクシー代など持ち合わせていなかったから、最終的に槇村の家に行くことになったというわけだ。

「ちっ…痴漢て……そんなん変態じゃん! 痴漢どころの騒ぎじゃないしっ!!」
「うん、だから圭ちゃんも気を付けてね?」
「気を付けるけど! 気を付けるけれどもっ! 他人事みたいに言わないでよ!」

 ここまでの話を聞き終えた圭人が、堪りかねて声を荒げた。槇村の家に行くまでの経緯は分かったが、それまでに、そんな大変な出来事があったなんて知らなかった。
 央が今もそのときの恐怖で怯えているのでないなら、それに越したことはないが、それにしたって平然としすぎだ。



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恋は七転び八起き (91)


「てか央、俺が電話したとき、もう槇村さんちにいたの!?」
「うん」
「てことは、その痴漢に遭った後ってことじゃん! 何で大丈夫なんて言ったの!?」
「だって…、もう槇村くんちいたし、大丈夫かな、て…」
「央…」

 圭人から電話が来たときは、もう痴漢の手から逃れていたし、人の家で長電話をするのも気が引けた。それに、たまたま央が1人で帰った日にそんなことになったとなれば、圭人はひどく気にするだろうから、電話ではなく、会って元気な姿を見せて話したほうがいいと思ったのだ。

「でもその痴漢、結局捕まってないんでしょ? 央ちゃん、まだ気を付けないとダメなんじゃないの? どうしたって電車で1人になるんだから」
「そうだよ央!」

 わざと央を怒らせて楽しんでいるところもある七海だが、今は、槇村と付き合えることになって浮かれている央が、事の重大さに気付いていないせいで、逆に七海のほうが怒っている。
 央は、今回助かったからもう大丈夫と思っているようだが、その卑劣な痴漢男は捕まっていないのだから、絶対に安全だとは言えない状況だ。男がいつも同じ時間帯の電車で痴漢をしているのなら、そこを避ければいいけれど、まったくの無差別なら、また出くわしてしまうかもしれないし、今回のことで高校生に目を付けるようになったら、危険度は格段に増す。央は、それを分かっていない。

「いつでも槇村さんが助けてくれるわけじゃないんだから」
「分かってるし…。でも、電車乗らないと、学校行けないじゃんか!」

 例えば朝なら、純平と一緒に行くという手がある。純平の降りる駅のほうが先だが、それまでに圭人や七海が電車に乗るから、乗る車両を示し合わせておけば、央が1人になることはない。
 しかし問題は帰りだ。3人一緒に帰ったところで、どうしても圭人と七海のほうが先に降りてしまうし、朝と違って、純平が同じ時間の電車に乗れるとは限らないのだ。

「大丈夫だって! ちゃんと気を付ける! 俺だって、もうあんな目に遭いたくないもんっ!」

 言い出せば切りのないことで、例えば電車の中で誰かとずっと一緒だったとしても、その相手が純平でもない限り、電車を降りてから家までは、どうしたって1人になってしまうのだ。電車の中で何もなくとも、1人になったタイミングで狙われる可能性だってある。

「物騒だぁ…。何で世の中、そんな変態ばっかりなん…」
「でも央ちゃんだって、1歩間違えたら、そうなってたかもしれないんだけど? ストーカーの1歩手前だったじゃん」
「誰がストーカーやねん!」

 蒼褪める圭人の横で、七海がいつもの調子で央のことを言う。あまり央を脅かし過ぎるのもよくないと、少しは思ったのかもしれないし、央がストーカーの1歩どころか0.5歩くらい手前だったのも事実だ。



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恋は七転び八起き (92)


「まぁまぁ。それでどうなったって? 槇村さんち行って、そんで? 何で槇村さんと付き合うことになるわけ?」
「央ちゃん、また槇村さんちに行けたから、浮かれて、告ったん?」
「違うわ!」

 ようやく話は、央が槇村の家に行ったところまで進んだが、圭人が話を進めようとすると、七海が口を挟んで、それに央が突っ込みを入れるから、全然進まない。
 七海がいらないことを言うのはいつものことだから、央もいちいち反応しなければいいのだが、大人しくしていられないのが央だ。分かっていて七海が言っていることに、全然気付けていない。

「槇村くんちでね、お風呂借りて、それから槇村くんの焼きそば食った」
「何それ…」

 央が、槇村家に着いてからの出来事を、ほんの一言にまとめて話したら、圭人も七海も変な顔をした。でも、友だちの家に泊まりに行ったときだって、ご飯を食べたり、風呂に入ったりくらいする。

「いや…、だって、その時点でまだ、槇村さんと付き合うとかになってないんでしょ? 何のん気にメシとか食べてんの」
「何でだろ」

 ご飯だとか風呂だとか、そういうことは普通、すべてが一段落してからなのではないだろうか。すでに付き合っている2人だったらいいけれど、この時点で槇村はまだ、央に嫌いだと言ったままなのだ、焼きそばなど作っている場合ではなかろう。

「俺も、意味分かんなかったの。槇村くん、俺のこと嫌いなはずなのに、めっちゃ優しいんだもん。俺があんな目に遭ったから、心配してくれんのは分かるけど、普通に話とかして来るし」
「じゃあ、槇村さん、そのときもう央ちゃんのこと嫌いじゃなかったってこと? まぁそっか、嫌いだったら、最初から家になんか連れてかないか」

 そもそも痴漢に遭っているのを助けただけでも、大人としての役目を十分に果たしているし、電車を降りてから、駅員か警察に後を任せることだって出来たのに、電車で帰ることの出来ない央を、わざわざ家に泊めてやるなんて、本当に央のことを顔も見たくないほど嫌っていたら、絶対に出来ないことだ。

「俺も、何で優しくすんだよ! て思ったよ。だって俺、槇村くんのこと諦めなきゃ、て思ってんのに、そんな優しくされたら、諦められないじゃんか。それなのに槇村くん、謝って来るんだよ? こないだ嫌いだって言って悪かった、て」
「マジで!? 何それ!」
「知るか! 俺だって、バッカじゃね!? て思ったし。思ったし、バカて言ったし!」
「言ったんだ…」

 央の話だけ聞くと、槇村は、央がどれほど思い悩んだか知らない、鈍感で間抜けな男に思えるが、恐らく槇村には槇村の思うところがあったのだろう。今までに何度も央の告白に立ち会い、あの夜も央と一緒にいた圭人には、あれ以来、槇村も、言い過ぎたと落ち込んでいるのではないかと、何となく思っていた。



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恋三昧の今後について(fc2ブログのアカウント凍結)


 お気付きのかたもいらっしゃると思いますが、実は昨夜(2015.12.8)、突如アカウントを凍結されてしまいました。
 現在は復旧しましたが、それまでの間、ブログを見ることも出来ず、私自身も管理ページにログインできませんでした。

 理由は不明ですが、私に、fc2の規約に違反する行為があったようです。
 もちろん自分で意図した違反はありませんが、知らずに何か違反していたのかもしれません。

 ただ、ネットを見ますと、私だけでなく、昨日あたりからfc2で大量のアカウントの凍結があったようです。
 よくは分かりませんが、規約を厳格に適用するようになったのではないか、とのことです。
 「恋三昧」は18禁の内容を含んでいますが、そもそもアダルトジャンルにカテゴリしているため、その点は問題ないと思います。しかし、もしかしたら、ここ最近投稿していた内容に「高校生」というキーワードが多かったため、児童ポルノと判断されたのかもしれません。

 現在、fc2さんに問い合わせをしていますが、上記のとおり、凍結は大量のようですので、当然問い合わせも殺到していると思われ、返事は遅れるか、来ない可能性があります(BLがアダルトジャンルにカテゴリされたときがそうでした)。

 今のところfc2さんからの返信はありませんが、ブログの閲覧は可能になり、私も管理情報にログインできるようになりました。
 ただ、返信がないため、何が理由でアカウントが凍結されたのか(何が規約に違反していたのか)不明で、このブログの何を改善したらいいか分からない状態です。
 そのため、もしかしたらまた何の前触れもなくアカウントが凍結され、ブログの閲覧が出来ない状態になるかもしれません。

 しばらくは状況を見ますが、今後アカウントが再度凍結された場合、「恋三昧」は閉鎖ということになります。
 私としては、創作が好きで、それを皆様に読んでいただいたり、読んだかたから反応があったりすると、すごく嬉しくて、本当にこの「恋三昧」での活動が大好きでしたから、閉鎖という事態は避けたいのですが、アカウントが凍結された状態では、活動を再開しようにも、再開することは出来ません。

 もちろん、他のサーバーに移転して活動を再開することも可能です。
 しかし、現在の私の力(能力だけでなく、気力や体力など)では、それが難しい状況です。今回のアカウント凍結で、精神的にもダメージが大きく、ブログを続ける力や自信がなくなってしまいました。

 当面は様子を見たいと思いますが、私はツイッターなどのSNSをやっていないため、このブログが閲覧できなくなった際に、みなさまに状況を説明できる場がありません。
 一応、「明日」 というお題配布サイトと、その日誌という形でのブログ「遊び心がない」というものをやっていますので、何かあったらそちらで報告したいと思います。
 「明日」のURL http://kotobato.web.fc2.com/
 「遊び心がない」のURL http://ashita-nisshi.jugem.jp/

 また、最近更新をさぼりがちですが、100のだいすき。をアップしている「さよならドロシー」というブログもあります。
 「さよならドロシー」のURL http://babypinkgirl.jugem.jp/

 「遊び心がない」と「さよならドロシー」は、fc2でないサーバーですし、アダルトやアフェリエイトな内容を含んでいないため、いきなりの凍結はないと思います。
 「明日」はfc2で、しかも「恋三昧」と同じFC2IDで作成しているため、今後どうなるかが分かりません(現在は閲覧可能です)。


 今後につきましては、当面はfc2さんからの返信待ちとなりますので、しばらくお待ちください。
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【続報】恋三昧の今後について(fc2ブログのアカウント凍結)


 fc2さんから返信がありましたので、その内容及び「恋三昧」の今後について、お話したいと思います。

 まずは、fc2さんからの返信ですが、以下メールの件名および本文を引用します。

件名:【FC2】ブログ誤凍結の件に関してのお詫び

[********** ]様、

平素よりFC2をご利用いただきありがとうございます。
FC2事務局でございます。

このたびは、ブログの誤凍結によりお客様には大変ご迷惑をおかけし、
誠に申し訳ございませんでした。

今回のブログ凍結の原因は、弊社キーワードによる自動検出システムにて、
お客様のブログを誤って検出してしまった事にあります。

弊社にてお客様のブログの凍結を解除させていただきました。
つきましては、お手数ですがお客様のブログの表示および
管理ページへのログインをご確認ください。

大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした。
以後このような事のないよう、再発防止に努めてまいります。

今回の件に関連し引き続きブログの操作についてご不明な点がございましたら、
以下のサポート窓口へご連絡ください。

https://form1ssl.fc2.com/form/?id=15028

今後ともFC2をよろしくお願いいたします。

FC2
http://fc2.com/


 ここまでfc2さんからの返信メール引用(********** には、私がfc2さんに登録しているメールアドレスが入ります)。



 「恋三昧」のアカウント凍結は誤りで、特に私に規約違反があったわけではないようです。
 誤凍結の原因は、『キーワードによる自動検出システムにて、恋三昧を誤って検出したこと』とのことですが、それ以上の説明がないため、詳しくは分かりません。
 一般カテゴリではNG(規約違反)となるワードや表現があったのかもしれません(「恋三昧」はアダルトカテゴリのブログです)。

 ひとまず、今までどおりの運用をしていれば、fc2さんの規約が変わらない限り、「恋三昧」がアカウントを凍結されることはなさそうですので、明日からは通常どおりの更新を行いたいと思います。

 ただ、先の記事にも書いたとおり、今後、再びアカウントが凍結した場合、「恋三昧」は閉鎖せざるを得ないのかな、と思っています。
 他のサーバーへ移転しての活動は、現在の私の力や気持ちの状態では、難しいのが現状なので。

 そのときが来るまでは、fc2さんで、今までどおり「恋三昧」の更新をがんばっていきますので、これからもお付き合いいただければと思います。

 いつも「恋三昧」にお出でいただいている皆様には、混乱やご心配をお掛けしまして、誠に申し訳ありませんでした。
 これからも「恋三昧」をよろしくお願いいたします。
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カテゴリー:read me

恋は七転び八起き (93)


「そしたら、その後、好きだって言われた…」
「ホントに!? じゃあ、槇村さんから言われたんだ!」
「言われた」
「でも何で? ホント、何で? 央ちゃんのこと、そんなに嫌いじゃなかったんだとして、言い過ぎたのを謝ったのは分かるけど、そっから何で告白に繋がんの?」
「そんなの俺が知りたいわ!」

 槇村が、そこまで央のことを嫌いではなかったのに言い過ぎてしまって、どう謝ろうかと1週間考えていたとすれば、謝罪の言葉はすんなり出て来るだろうけれど、そこから告白までの流れは、央にだって分からない。槇村に聞いても、好きだと口にした直前に、その気持ちに気が付いた、なんて言う始末だし。
 つまりは、央を家に連れて来た時点では、嫌いではないけれど、特別に好きだという気持ちを持っていなかった――――もしくは、持っていたけれど自覚していなかったわけで、何が槇村にその感情を気付かせるきっかけになったのかは分からないが、場合によっては、槇村は央への想いに気付かないまま終わっていたかもしれないのだ。

「好きだって言う直前に気付いた、て…、好きだって思ってすぐに告ったってこと? 槇村さん、何かすごいな…」
「でも、てことは槇村さん、謝ったときもまだ、央のことを好きだと思ってたわけじゃなくて、ホントに、言い過ぎたのを謝っただけで…………でも央、それで槇村さんにバカだって言ったんでしょ? なのに、何で槇村さん、央のこと、好きだって思ったんだろ」

 いくら考えても、何が槇村の心の引き金を引いたのか、さっぱり分からない。結果オーライだから、これでよしとしていいんだろうけど…………大人って難しい。

「あっ、そういえば槇村くん、圭ちゃんにも謝らなきゃ、て言ってたよ?」
「え、俺に? 何で?」
「圭ちゃんが電話くれたじゃんか? 俺のことめっちゃ心配してくれてたから、何か」
「そうなんだ」

 確かに、圭人が央に電話をしたのは、あれ以来、央がひどく落ち込んでいるのが心配だったからで、本を正せば槇村が原因ということにはなるが、そこまで気に掛けるなんて、律儀な人だ。そんな人なら、たとえ好きだという気持ちをずっと持っていたとしても、17歳の高校生男子と付き合うことに躊躇するに決まっている。

「央、槇村さんと付き合えて、よかったな」

 央のどの行動が槇村の心を動かしたのかは知らないが、単に槇村が央のことを好きだという気持ちに気付いただけでは、きっと告白までには至らなかっただろうから、付き合えることになって本当によかったと圭人は思う。けれど同時に、槇村の性格からして、当分の間――――少なくとも央が高校を卒業するまでは、央が思うほど先へは進めないだろうとも思う。そして圭人や七海は、そのたびに央から愚痴を聞かされるはめになるのだろう。

「あ、でも聞いてよ。俺さ、槇村くんから電話番号とか聞いたんだけど、やっぱり毎日電話とかしたらウザがられるの? 俺、めっちゃ電話したいんだけど! 純平くんに聞いても、よく分かんないて言われるし」
「いや、それ、俺らのほうが、もっと分かんないんだけど…」

 さっそく央の恋愛相談に巻き込まれ、圭人と七海は、顔を見合わせて苦笑した。



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恋は七転び八起き (94)


  槇村・純平・逢坂



 日曜日に予定がないとはいえ、ただひたすらゲームをして過ごすというのは、34歳の男として如何なものかと思いつつ、槇村はベッドの上でゲーム機を構えていた。しかし、全然集中できない。いつもだったら簡単にクリアで

きるところも、まったく思うようにいかない。上手くいかない苛立ちが、またミスを呼ぶという悪循環。
 理由は分かっている。央だ。いや、央に直接の原因はない。だって恋人だ。ケンカをしたわけでもない。央のせいではなく、央と付き合うことになったせいだ。
 別に央と付き合う殊になったのを後悔しているわけではないが、1人になると、何となく居た堪れない気持ちになって、ギャ~~とか言いながら、床を転がり回りたくなる。…まぁ、しないけど。
 だって槇村は、央と付き合うことになったのだ。高校生の央と。34歳の男が17歳の高校生男子と付き合うことになって、いつもどおりの気持ちでいられるわけがない。

(央と…………付き合うのかぁ…)

 槇村はとうとうゲーム機を投げ出した。
 そういえば央は、自分たちが付き合うことになったのを、圭人や七海に話したいと言っていたが、その気持ちに変わりはないのだろうか。圭人も七海も今さらの間柄なので、央が話したいと言うのなら、拒み切れない。
 それにしても、そんな話が好きなのは、槇村はてっきり女性の思考だと思っていたけれど、央を見ていると、必ずしもそうではないようだ。

 槇村といえば、わざわざ自分からそういう話をするほうではないのだが、今回ばかりは、逢坂や板屋越に話したほうがいいだろうか、と思っている。2人は、槇村が央にひどいことを言い放った、というところまで話を知っているのだ。
 逢坂は槇村の恋愛事情にそこまで興味がないだろうからともかくとして、板屋越は、槇村よりも央のことを気に掛けているから、話しておいたほうがよさそうだ。そもそも、明日学校で央に会ったら、その様子からして、何かあったと感付きそうだ。

 2人にどう話そうかと槇村がウダウダと思っていたら、傍らにあったスマホが震えた。そういえば央は、流行りの曲なのか何か知らないが、何かの曲を着信音にしていたが、槇村は最初から設定されていた音そのままだ。
 画面を覗くと、表示されていた名前は央。このたび、初めて連絡先を交換したのだが、さっそく掛けてきたようだ。

「――――もしもし?」
『あ、槇村くん! あ、あのね、あの……あ、今大丈夫?』
「大丈夫だけど」

 声色だけで、彼がすごく嬉しそうなのが分かる。急いて用件を言おうとして、しかし今電話をして大丈夫なのかを確認して来るあたり、かわいいと思う。



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恋は七転び八起き (95)


『あのね、あの、純平くん……その、昨日、純平くんには言わない、て言ったじゃん? その…、あの…、俺らの………………うっさい、あっち行け!』
「? 央?」
『あ、ゴメン!』

 要領を得ない話し方だったが、恐らく、2人が付き合うことになったのを、兄である純平に言うか言わないかの話だろう。央は、圭人や七海には話すと言ったが、純平に話すことだけは、なぜか拒んだのだ。
 未だに2人の関係を口にすることが恥ずかしいのか。意識するからかえって恥ずかしいのではないか、と槇村は思ったが、それよりも気になることが1つ。

「誰かいるのか?」

 央の、『うっさい、あっち行け!』は、明らかに槇村でなく、他の誰かに向けられたセリフだった。これから話そうとする内容で、そばにいて不思議ではないのは、2人の関係を知っている人物で、それは圭人か七海くらいだろう。予想どおり、月曜日を待ち切れずに、話しに行ったようだ。

『あ、うん…。今圭ちゃんちで…………もぉ~こっち来んなよっ!』
「…………」

 央の声の他に、誰か別の声も聞こえて来るし、ドタバタと動き回る音もする。自分の家でなく圭人の家だというのに、随分と賑やかなものだ。
 来るな、と言っている相手が圭人なのか七海なのかは分からないが、聞かれたくないなら、家に帰ってから電話すればいいのに…。

『ご…ゴメン、あの、話……えと、純平くんに、』

 どこに逃げ込んだのか、ようやく電話の向こうが静かになる。ついでに央の声まで小さくなっている。純平に言うか言わないかだけの話のはずだが、本当に誰かに聞かれたくない話のようになっている。

「兄ちゃんに言ったのか? 俺らのこと」
『あ、うん…。何か純平くん、めっちゃ心配してて…。それにちょっといろいろあったというか……何もないんだけど、』
「どっちだよ」
『…分かんない。でも純平くんに話しちゃった。言わない、て言ってたのに、ゴメンなさい』

 槇村としては、純平にも話したほうがいいと思っていたので、央が約束を反故にして、話してしまったとしても、別にそれを責めようとは思わない。それよりも、それを気にしてわざわざ連絡をくれるあたり、律儀だなぁと思う。

『あの…、電話、ゴメンなさい…』
「何で謝んだよ」
『何となく…。こんなの、メールとかでもよかったんだけど…………その、槇村くんの声、聞きたくて………………あわわわわそのっ、何て言うかっ…』

 自分で言って慌てている央がおかしい。
 しかし、央が槇村の声を聞きたかったというのは、本心だろう。自惚れでなく、それは分かる。



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恋は七転び八起き (96)


『央ちゃん、電話のこと、槇村さんに聞いといたほうがいいなじゃないの?』
『ちょっ、何こっち来てんだよっ、あっち行け、ボケっ!』
『ななみん、央のことからかうの、いい加減やめなよ』

 静かだと思っていた電話の向こうが、また騒がしくなる。
 先ほどと違って、はっきりと聞こえた声のうち、央以外の1人は聞いたことのある圭人のもので、その声が、央が追っ払おうとしている誰かを窘めているから、先ほどから央にちょっかいを掛けていたのは、圭人でなくもう1人の誰か――――七海だろう。

「央? どうした? 電話が何?」
『なっ、何でもないっ』
『ホントに聞かなくていいの~? 央ちゃん、後でめっちゃ悩んで、超ウザいんだから、聞いといたほうがいいって』
『うるさいっ』

 槇村と話しているのか、七海と話しているのか、央はどちらの話にも返事をしたり突っ込んだりして、大忙しだ。
 央が槇村に何か聞きたいことがあるのは確かなようだが、恐らく側に圭人や七海がいるから、恥ずかしくて話し出せないのだろう。高校生だと、そういうことは分からないのかぁ…とも思ったが、先ほど来の七海の話し振りからして、分かっていてやっている感が、すごくする…。

『ま、また今度聞くねっ?』
「お…おぅ」
『あの、急に電話して、ゴメン、ホントっ』
「いや、いいけど…………そんなに気にしないで、また電話しろよ」
『ッ…………んっ、ぅんっ!』

 必死な央の返事と、それをからかう七海の声と、いい加減にしろという圭人の声を残して、電話は切れた。恐らくこの後、央は散々七海に冷やかされるのだろう。
 槇村は、高校生といえば、通勤電車の中で見掛けるくらいしか接点はなく、電車が混んでいても高校生は元気だが、さすがにここまでは騒がないから、3人のやり取りは何だか新鮮だ。
 こんなことを考えるなんて、年を取った証拠だろうか。高校の教師をしている板屋越は、こんな連中と毎日付き合っているのだから、大したものだ。いつもかったるそうな雰囲気を醸し出しているくせに、学校ではハツラツとしているのだろうか。まったく想像が付かない。

 それにしても、央が純平に2人のことを話したとなると、いよいよ槇村は板屋越だけでなく、逢坂にも話したほうがいい雰囲気になって来た。
 この1週間、純平は目に見えて凹んでいて、槇村に一切絡まないのはもちろんのこと、いつものようなくだらないギャグを言うこともなければ、笑顔すら殆ど見せなかったのだ。それはもう、逢坂でさえフォローできないくらいに。それが、央が元気になったとなれば、確実に復活するだろう。それはもう、誰もフォローできないくらいに。
 それを見た逢坂が、何も気付かないはずがない。

 とはいえ、休みである今日に、まさかこんなことを話すために2人を呼び出すのも何だし、電話とかも気持ち悪い。やはり明日会社に行ってからにしよう。
 槇村は再びゲーム機を手に取った。



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恋は七転び八起き (97)


 月曜日、出勤した槇村は、ギョッとして言葉を詰まらせた。
 前にも言ったが、槇村は別に、一番に出社することに命を懸けているわけではないので、自分より先に誰かが来ていたとしてもまったく構わないのだが、それが純平となると、話は変わる。
 嫌な予感がして、槇村は純平から逃げようとしたが、純平に、「あー待って! 別に槇村くんに何かしようとか、聞こうとか思って早く来たわけじゃないからっ」と止められた。

「違うの、ホント。央ちゃんと一緒に来たから、早くなっただけで」
「…央?」

 槇村が予想していたとおり、純平は先週までの凹み具合はどこへやら、まだテンションはそこまで上がっていないものの、以前と変わらぬ様子で槇村に話し掛けて来た。
 しかし、いきなり央の名前が出たので、槇村は若干狼狽える。純平も、槇村と央のことは知ってしまっているし、元から2人のことをなぜか反対していなかったので、焦る必要はないのだが、やはりちょっと気まずい。

「何か央ちゃん、痴漢…」
「あ…、あぁ、おう…」

 声を潜めて純平が口にした言葉に、槇村は金曜日の出来事を思い出す。
 帰りの電車で、痴漢と簡単に一言では済まされないようなことをされた央は、その後、家に帰ろうと電車に乗ろうとしても、恐怖で足が竦んで出来なかったのだ。
 槇村の家に泊まった翌日、央は大丈夫だと言ったが、央の家の最寄駅まで一緒に電車に乗って、送って行ったのだ。そのときは電車も空いていて、席に着くことが出来たせいか、央は特に怖がるような素振りを見せなかったのだが。
 今日、純平が央と一緒に来たのも、そのときの槇村と同じ思いからだろう。

「央ちゃんは大丈夫だって言ったんだけど、心配だからしばらくは一緒に来ようかな、て思って。うちの会社より学校のが向こうだけど、俺が降りる前にお友だちが乗って来るから、行くときは大丈夫だと思うんだよね」
「そうだな」
「帰りも心配なんだけど、心配しすぎると、央ちゃんが怒るから…」
「…だな」

 その姿なら、槇村も何となく想像が付く。兄の優しさは、いつも全力で空回りしているようだ。

「てか、槇村くん、ホントに央ちゃんと付き合うんだねぇ…」
「なっ何だよ、いきなりっ」

 純平も、まだ他の誰も来ていないことを分かっていて言ったのだろうが、純平がそんなことしみじみと言うものだから、槇村は、恥ずかしさも相俟って、動揺して純平の頭をど突いた。



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恋は七転び八起き (98)


「いや…、央ちゃんが、ホントに嬉しそうにしてたから。ありがとう、槇村くん」
「知るか、アホ」
「でも、槇村くんと央ちゃんが付き合ってるなんて、何かいろいろ妄想するわー」
「妄想!?」
「あ、想像だ」
「……どっちにしても嫌だわー…」

 央が嬉しそうなのはいいけれど、そこからいちいち純平に何か感付かれるのが恥ずかしい。圭人や七海は、槇村と会うことがそんなにないから、央の態度からどう推測しようといいけれど、純平とはほぼ毎日顔を合わせるのだ。央を介して、間接的に自分の動向まで知られると思うと、非常に居た堪れない。
 こんなことなら、やはり純平には言わないでおくことにしておけばよかった…。

「――――おはようございまー…………す…!? お、え、純平っ…………えと、おはよう…?」

 槇村が後悔の念に駆られていると、いつも騒々しい男の声が聞こえて来たが、そこにすでに純平がいたこと……というより、純平が槇村と普通に話している姿を見つけたせいで、途中で変に声が裏返っていた。

「おはようございまっす、逢坂くん!」
「………………」
「いやっ、その目っ!!」

 純平が元気よく挨拶をすれば、逢坂はひどく蔑んだ目で純平のことを見た。凹みっ放しだった純平のことを、逢坂だってずっと心配していたのに、いざ純平が元の調子に戻ればこれだ。

「お前はあれだな」
「何でしょう、逢坂さん」
「少しは凹んでるくらいがちょうどいいな」
「ありがとうございます!」
「褒めてないわ」

 いつもだったら、『褒めてないわっ』の言葉とともに、鋭い突っ込みが炸裂するところ、声も張り上げず、ど突きもしなかった逢坂は、正直、それよりも呆れの気持ちが強かったのだろう。
 大げさに溜め息をついた逢坂は、もう純平のことなど相手にせず、槇村に視線を向けた。どういうことなのか、この場で問われても気まずいと思ったが、逢坂なりにいろいろと察したのか、何も言わずに自分の席に着いた。



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恋は七転び八起き (99)


 昼休みに一緒に昼食へ行き、自分の恋愛話を、しかも逢坂相手にするというのは、気持ち悪いの一言に尽きる。それだけは絶対に嫌だ。そもそも、板屋越にも話すのであれば、逢坂だけに話しても二度手間になるから、やはりこの案はなしだ。絶対ない。
 そう思った槇村は、苦肉の策として、この間のようにまた3人で飲みに行こう、と逢坂に声を掛けようとしたのだが、それと同じタイミングで、逢坂が無言でスマホを突き付けて来たので、思わず固まった。

「え…………何?」

 画面を槇村のほうに向けているので、それを見ろということなのだろうが、無言なのが怖い。一応、『何?』と聞いたのだから、少しくらい何か発してくれてもいいのに。
 逢坂の様子を窺いつつ画面を覗くと、『今日の仕事の後、この間の居酒屋に集合。持ち物:財布、槇村。忘れずに。』という板屋越からのメールが表示されていた。
 持ち物て…。
 しかし、板屋越もよく考えたものだ。槇村を誘った場合、嘘でも適当な理由を付けて断れる可能性があるが、これなら槇村に拒否権はなく、連行されるのみだ。槇村が逢坂に逆らい切れないことが、ちゃんと計算に入っている。

「いい話、聞かせてくれるんだろうな? これ以上、お前のお悩み相談室なんて開きたくないぞ?」

 ギロリと凄まれて、槇村は怯んだ。
 昨日槇村が思ったとおり、2人とも純平と央の態度から何かしらを感じ取ったらしいが、槇村が央と付き合うことになったのは、果たして、逢坂の言う『いい話』に当たるのかどうかは、正直分からなかった。

 槇村が何も言えずにいると、逢坂はスマホをしまい、席を立って出て行った。昼食に向かったのだろう。
 事務室には、逢坂と槇村の他には電話番の担当しか残っておらず、だったらこういう場合、槇村のことを誘うものではないかと思ったが、それこそ今2人で昼食にでも行った日には、話題に困った気まずいランチタイムになるのは火を見るよりも明らかなので、逢坂も槇村を置いていったのだろう。考えることは同じだ。

 話は夜、3人で集まってからでいい。今日はまだ月曜日だから、どうか深酒するようなことになりませんように、と祈りつつ、槇村も事務室を後にした。



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恋は七転び八起き (100)


  槇村・逢坂・板屋越



 前回同様、居酒屋の4人掛けの席で、2対1の1のほうに座らされる席割となった槇村は、前回ほどの気の重さはないものの、やはりどうしても気まずくて、身を縮こまらせた。
 板屋越は口を、本当に言葉どおりに『への字』に結んで、店員を呼ぶためのボタンに手を掛けている。槇村のことで苛立っているのか、腹が減っているのか、早く酒が飲みたいのか、よく分からない。

 ビールと適当な食事を注文し終えると、沈黙しか残らなかった。今日集まった目的は、誰も何も言っていないが、言っていないだけでみんな分かっているのに、誰も口火を切らない。
 集合を掛けたのは板屋越だが、今日一番話をしなければならないのは槇村のはずで、そういう意味では槇村が話し出せばいいのだろうが、なかなかそれが出来なかった。恐らく2人は、槇村と央の関係が好転したことは察しているだろうが、だからといって、『俺、央と付き合うことになったんだ~!』と明るく切り出せる雰囲気では、まったくないのだ。

「お待たせしましたぁ~!」

 何の会話もなく、どんよりとした空気の漂った男3人のテーブルに、若い女性店員が明るい雰囲気とともにビールを持って来てくれる。その爽やかさをどうか分けてほしいものだと、槇村は切に思った。

「これは、あれか? 乾杯をしたほうがいいヤツか?」

 ジョッキに手を掛けた板屋越が、槇村に視線を向ける。飲み物が揃ったらとりあえず乾杯するのが日本の一般的な飲み会だけれど、今板屋越が言いたいのは、もちろんそういうことではなく。
 板屋越の視線に耐え切れずに目を逸らしたのに、隣の逢坂も、しっかりと槇村のことを見つめていた。

「……」

 槇村はおずおずとジョッキを掲げた。逢坂は表情を変えなかったが、板屋越はニヤリと口元に笑みを乗せた。

「それでは2人の門出を祝して、」
「ちょお待て、なつめ」

 たちの悪いジョークだとは言わないが、槇村はまだ何も言っていないのに、勝手にそこまで話を進めるな。

「何だ。今日の央の浮かれ具合から察するところの、お前たちが付き合い始めた、という俺の推測が、何か間違ってるとでもいうのか? あぁ?」

 乾杯が、と言い出したのは板屋越だったのに、槇村に止められて待ち切れなくなったのか、話ながら勝手に飲み始めてしまった。しかも、どういうキャラ設定なのか知らないが、柄も悪い。
 央と付き合うことについて、別に乾杯までしてほしいわけではないから、しないならそれでいいのだけれど、だったら槇村がジョッキを持つ前に言ってほしかった。すごく恥ずかしい。



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恋は七転び八起き (101)


「央、そんなに浮かれてた?」

 板屋越が飲み始めたことで、本当に乾杯などどうでもよくなったのか、逢坂もさっさとジョッキに口を付ける。手にしたジョッキのやり場に困って、仕方なく槇村もビールを飲み始めた。

「先週1週間、出欠取るとき1回も顔上げなかったのが、今日はめっちゃ笑顔で前向いて話聞いてた」
「分かりやすっ!」

 今日の央の様子が容易に想像できたのか、逢坂は思わず吹き出した。
 央がそんなに元気になったのなら、それはよかったけれど、槇村としては、先週1週間、そこまでの状態だったことのほうが気になるし、結構ショックだ。

「槇村、お前、それでもまだ央と何でもないとか言うつもりじゃないだろうな?」
「別にまだ何も言ってないだろ」

 板屋越が勝手にいろいろ言っているだけで、槇村はまだ何も、一言も言ってはいない。言ったことといえば、板屋越への突っ込みくらいだ。

「なら言え。早く言え。央と付き合うことになりました、と。とうとう男子高校生に手を付けました、と」
「嫌な言い方すんなよ!」

 央と付き合うことになったのはいいとして、手を付けるとか、その言い方…!
 少なくとも央が元気を取り戻したことには安堵しているようだが、それでも板屋越は、槇村が央と付き合うことになったのを、よかったと思っているのか、よくないと思っているのか、その態度からはさっぱり分からない。

「どんな言い方をしようと、真実はいつも1つ!」
「いや、まぁ…」
「………………」
「……央と、付き合うことになりました」

 言っていることは正しいが、何か違う…と思いつつ、槇村は板屋越の目力に気圧され、観念して答えた。
 逢坂は、板屋越のキャラがおもしろかったのか、槇村が(もう2人とも分かっているだろうこととはいえ)重大な発表をしたにもかかわらず、ずっとバカ笑いしている。
 槇村も、このことを2人に話さなければ、と思っていたから、こうして集まる機会を作ってくれたことには感謝するが、それにしても2人だって槇村の話を聞きたかったはずだろうに、真面目に聞く気があるのかないのか…。

「さぁて。じゃあ、どうやって高校生を落としたのか、じっくり聞かせてもらおうか」
「落とした、て…」

 店に来てからまだそれほど時間も経っていなければ、話もまだ殆ど進んでいないというのに、槇村はもうすでにかなり疲れているのだが、板屋越は水を得た魚のようにいきいきとし始めている。
 この間は、最後には、槇村に愛想を尽かしたような顔をしていたくせに。



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恋は七転び八起き (102)


「あっはっは、槇村が央のこと落としたの? 央が槇村をじゃなくて?」

 板屋越のセリフに呆れたのは槇村だけで、逢坂は何がおもしろいのか、大層ウケている。
 大笑いしているせいで、突っ込みらしい突っ込みにはなっていないが、しかし逢坂の言っていることは間違いではない。想いを通わせ合ったあの日、好きだと先に口にしたのは確かに槇村だったが、そもそもは央のほうが先に、しかも何度も告白して来ているのだ。落としたのは央のほうで、槇村は落とされたほうだ。

「でも、コイツは1回……じゃない、何回も央のこと振ってんだぞ。それが、今回急に受け入れるはずがない。そもそも、こないだめっちゃヒドイこと言ったんだから、央がまた告白しに行くわけない。つまりは、槇村が央に告って、央のことを落としたんだ」
「なるほどなぁ。じゃあ、今まで槇村が央のことを振ってたのも、作戦のうちってことか。小悪魔だわぁ」
「アホか、お前らっ!」

 板屋越の推論はまぁいいとして、その後に続く逢坂の話にはもう我慢ならなくて、槇村は声を張り上げた。そんな作戦を立てた覚えはもちろんないし、それ以前に、30代も半ばになろうかという男に向かって『小悪魔』とか、よく恥ずかしげもなく言えるものだ。

「でも、槇村が告ったんだろ? 結局」
「そ…それはまぁ…」

 槇村に怒鳴られても、平然と逢坂は聞き返してくる。逢坂のこの図太さを見ていると、一体どこまで詳しく聞かれるのかと、ちょっとゾッとしてくる。
 央に思いを告げたときのことは、今思い出しても赤面するほどに恥ずかしいのだ。こんな年にもなって、あんなドラマにもならないような、劇的な告白をするとは思ってもみなかった。さすがにこれは話せない。

「なら槇村、わざわざ央に会いに行ったんだ? お前、1週間の間に、何の心境の変化があったんだよ。会社で会っても、めっちゃ暗い顔しかしてなかったのに」
「その暗い顔の下で、ずっと央のことを考えてたってことだ。央がずっと槇村のことを考えてたみたいにな」
「一途だなぁ」

 槇村を抜きに、槇村の心境までも踏まえて話が進んでいく。
 確かに槇村はこの1週間、ずっと央のことは考えていたけれど、それは、どうやって謝ったらいいかを思案していただけで、央への恋心を募らせていたわけではないのに。

「槇村、央の家でちゃんと親御さんに挨拶したか?」
「だから、行ってないって。勝手に話を膨らますな」
「なら、どうやって央に会ったんだ。学校か? 学校行ったのか? それはそれでちょっと…」
「学校にも行ってないっ!」

 どうしても逢坂は、槇村が央に会いに行って告白をした、という体で話を進めたがるが、槇村は央の家にも学校にも、行ったことなどない。
 学校へは、央に謝らなければと思っていたとき、最終手段的に考えたことはあるが、逢坂が嫌そうに顔を歪めたのも分かる、なかなかの行動だ。行かなくてよかった。



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恋は七転び八起き (103)


「なら、何だよ」
「たまたま電車で会った」
「たまたまぁ~? 待ち伏せたんじゃなくて?」
「違うわっ、何でだよっ!」

 一昔前なら、待ち伏せも1つのテクニックだったかもしれないが、このご時世、言葉の響きだけで怪しさが漂ってくるうえに、ちょっとした恐怖感さえある。
 それこそ央の学校に行くのも家に行くのも、結局は待ち伏せすることになるわけで…………ますます行かなくてよかったと思う一方で、そういえば央が槇村の家の前で槇村の帰りを待っていたのって、正しく待ち合わせだよなぁ…と余計なことに気付いてしまった。

「そんなの、同じ路線の電車使ってんだから、会うことだってあるだろ」

 電車は日に何本も通っているから、同じ電車の同じ車両にたまたま乗り合わせる確率は高くはないだろうが、2人とも毎日乗っているのだから、あり得ないことではない。それなのに、槇村の待ち伏せ説を押そうとする逢坂を、槇村は面倒くさそうに睨んだ。

「じゃあ、たまたま電車で会ったから、そんで告ったってことか。こんなとこで会うなんて運命の出会い! …みたいな感じか?」
「アホか」
「何でだよ、央はそう思って、お前に告ったんだろ?」

 確かに電車の中で央を見掛けたとき、まだ央にどうやって謝ったらいいのかと悩んでいたときだったから、こんなところで出くわしてしまうなんて、と運命を感じたが、それは決していい意味ではなかった。
 しかし、央が槇村のことを想うようになったのは、電車の中で槇村のことを見掛けたのがきっかけなわけで、逢坂の言うとおり、央は運命の出会いとでも思ったかもしれない。

「しかし、槇村さんよぉ。いくら央のことが好きでも、駅とか……そんな人前で告白とかするなよ、いい大人が」
「駅じゃないわ! 電車の中でもないし!」

 逢坂の勝手な話の展開と乙女的な思考にも参るが、板屋越の勝手な呆れ返りも困る。
 央とはたまたま電車で会ったが、その出会いにいくら槇村が動揺したとしても、駅だの電車だの、そんな場所で告白などするわけがない。槇村の性格を知る板屋越が、それに気付かないはずがないから、分かっていてボケたのだろうが、今は疲れるだけなのでやめてもらいたい。

「それなら、どこだ。央の家にも行ってないんだろ? …………え、まさかお前んちか? 自分ちに連れ込んだのか?」
「ちょ、その言い方やめて!」

 どんな言い方をしようと…とは、先ほど板屋越に言われたところだが、34歳の男が高校生を自分の家に連れ込んだ、という表現は、どう考えてもよろしくない。事実はそうかもしれないが、お願いだから、もっと別の言い方をしてください。



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恋は七転び八起き (104)


「でも事実なんだろ?」
「まぁ…………」

 違う言い方を望んだ槇村だったが、板屋越に念を押されて、嘘もつけずに頷いた――――仕方なく。事実は事実だが、それには止むに止まれぬ事情があったのだから、素直には頷けない。
 だが、その事情を説明するとなると、央が痴漢に遭ったことを話す必要があるため、勝手に話すのも躊躇われた。槇村は関係者ではあるが、当事者ではないから。
 とはいえ、板屋越は央の通う高校の教師だし、これ以上の被害を出さないためにも、そういう情報は伝えておいたほうがいいのだろうか。ふざけていても、口が軽くないことは保証できるし。

「…ホントは俺が勝手に言ったらダメだと思うけど、なつめは央の学校の先生やから、こういう情報も知っといたほうがいいと思って言うけど」

 そう前置きする槇村に、自分も話を聞いていいものかと逢坂は神妙な顔になり、先ほどまでは槇村の反応をおもしろがってした板屋越も、空気を感じ取ったのか、黙って槇村を見た。

「実は…………央が電車で痴漢に遭ってて」

 賑やかな店内は、よほど大きな声を出すか、よほど聞き耳を立てられでもしていない限り、隣のテーブルに会話など聞こえないだろうが、それでも槇村は声を潜めて打ち明けた。

 混雑した電車の中、央に声を掛けようと近付いた槇村は、彼が痴漢に遭っているのに気が付いて驚愕した。央には嫌いだと言ったきり、謝ってもいなければ、関係もまったく修復していない状態だったが、何とかしなければと咄嗟に思った。
 ちょうど自分の降りる駅に到着するところだったから、男を捕まえて駅員に突き出そうと思ったが、央にしがみ付かれて、それは出来なかった。痴漢されていたのを周囲に知られたくなかったのか、単に怖くてそうしたのかは分からないけれど、そんな状態の央を電車に残しておくことも出来ず、央を連れて降りたのだ。
 電車での痴漢というと、胸や尻を触られるというのがすぐに思い付く手口だが、実際に央はそれだけでなく、制服のズボンに精液を掛けられるという、何ともおぞましい行為だった。
 駅のトイレでそれはキレイにしてあげたけれど、央はショックで電車に乗ることが出来なくて、ひとまず槇村は央を連れて改札を出たのだ。タクシーで帰すことも考えたが、央は1人でタクシーに乗ったことがないと言うし、金の持ち合わせもないと言うから、結局一緒に槇村の家に行くこととなったのである。

 …しかし、そのときは、央はもちろん激しく動揺していただろうけど、槇村もあまりのことに冷静さを欠いていたと、今になってみれば思う。『連れ込んだ』という表現も、槇村は言い方が悪いと言ったが、間違ってはいない。
 央は顔見知りだけれど、だからといってそれは、誘拐犯ではないと言える絶対的な証拠ではない。央が嫌がらずに付いて来たとしても。

「…そんで央のこと、家に連れて行ったんだけど…………そうだな、警察に行けばよかったんだな。『連れ込んだ』て言われるなんて、まだいいほうだな。下手したら誘拐だし」
「いや、それよりも痴漢! 痴漢て! そんなのもう痴漢の域、超えてるだろ! 変質者っ」

 自らの行動を省みて溜め息を零す槇村に対し、板屋越は眉を寄せたまま何も言わなかったが、逢坂はそれよりも痴漢への憤慨の気持ちが強いのか、ガンガンとこぶしでテーブルを叩いている。



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恋は七転び八起き (105)


「…また、誰が被害に遭うか分からないし、学校に言っとくわ」

 興奮冷めやらぬ逢坂の手を制して、板屋越が静かにそう告げた。別に、逢坂のように腹を立てていないわけではない。怒りの度が過ぎただけだ。逢坂と違って、それが外に出なくなるのが板屋越の特徴だ。

「そんで、央は大丈夫なのか? 電車乗んの、怖がってんだろ? 学校行くの…」
「朝、純平が一緒に来たって」
「あぁ、そんでアイツ、朝早かったのか」

 痴漢に遭った後、央が電車に乗るのを怖がったため、その日は槇村の家に泊まることになったのだ。そうしたトラウマは、時間とともに和らぐこともあるが、金曜の夜にそんな恐ろしい目に遭って、いくらその後、好きな人と想いを1つに出来たとはいえ、月曜の朝には普通に学校に行けるものかと、逢坂は思ったようだが、そこには兄である純平のサポートがあったようだ。

「今日、学校で見た限りだと、痴漢に遭ったショックより、お前と付き合えることになった喜びのほうが、完全にデカかったからなぁ。お前にそんな話されなかったら、絶対気付かないな」

 央の学校での様子を思い出し、板屋越が言った。
 槇村の家から帰るときも、電車に乗るのに怖がる様子も見せなかったし、昨日掛かってきた電話でも元気そうだったから、痴漢のことはさほど引き擦っていないのだろうと思う反面、心配を掛けまいと、わざとそんなふうに振る舞っているのではないかとも思っていたのだが、板屋越の話を聞けば、元気なのは間違いなさそうだ。

「で、結局何で央と付き合うことになったんだよ。央が槇村んちに行ったのは分かったけど、そんな状況で、何で? 告白する雰囲気になるか?」
「え…」

 長い話を終えて、槇村はすっかり話し尽くしたとばかり思っていたら、逢坂にそう言われて、はたと手を止めた。言われてみればそうだった。
 いや、だが、その部分の話をするのは、非常に恥ずかしい。相手が央でなかったとしても、自分が誰かに告白したという事実を話すのだって恥ずかしいのに、どんな状況だったかを詳しく話すなんて。

「なぁなぁ、どうだったんだよ?」
「べっ別にいいだろ、そんなのどうだって」
「何でよ、その話聞くために来たのに、そこを省くなよぉ」

 いやいや、槇村が央と付き合うようになったことを話すために集まっただけで、どのようにかを詳しく言うためではない。そもそも、もう30も半ばになろうかという男の告白時の状況を、同年代の男が聞いて何が楽しいというのだ。普通に気持ち悪いだけだろう。

「逢坂、そんくらいにしとけ」

 いつもだったら逢坂に乗っかって、もしくは逢坂以上に食い付いてくる板屋越が、意外にも逢坂を止めてくれて、槇村は心底ホッとした――――のも束の間。



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恋は七転び八起き (106)


「話を聞く機会なら、これから先、いくらでもあるからな。事あるごとに。各種イベントごとに。それぞれにじっくり聞いてやろう」
「ッ…!」

 板屋越のセリフに、酔いの回り掛けている逢坂は、「そうだなぁ!」とケラケラ笑っているだけだが、板屋越がニヤリと浮かべた人の悪そうな笑みに気付いた槇村は、突っ込むことすら出来ず、コブシを握った。
 言い返せば、2倍にも3倍にもなって返って来ることは分かっているが、それでもやっぱり癪に障るから突っ込むべきか、無駄な精神力の消耗はやめておこうか、悩みどころではある。

「…トイレ」

 結局、言い返すのはやめて、槇村は席を立った。トイレに行きたかったのは本当だが、ポケットの中でスマホが震えたので、それを確認したかったのだ。
 短く震えたそれは、電話ではなくメールかメッセージだろうから、仕事関係の急ぎの用事ではなさそうだが、着信に気付いて無視するのも何なので。

「…ふぅ」

 以前から2人には央のことを相談していたし、特に板屋越は央のクラス担任ということもあるから、今回のことは言わなければならないと思ったけれど、まさかこんな感じで盛り上がるとは思いもしなかった。
 単純に、央と付き合うことになった事実だけを話して終わるとは思っていなかったけれど、どんなふうに告白したのかまで白状させられそうになるとは。酔っ払った逢坂の思考回路は侮れない。

「央…」

 用を足してからスマホを確認すると、央からのメッセージが届いていた。槇村はこういうことにあまりまめではないが、央はどう見ても、どう考えても好きそうだ。
 央に限らず、彼くらいの年代はみんなそうなのだろうか、槇村が学生だったころは、まだそこまで携帯電話もサービスも普及していなかったから、自分と照らし合わせて考えることは出来ない。

 央からのメッセージには、今朝、いつも自分より遅い電車で出勤する兄の純平が一緒の電車で行ったことや、帰りに、圭人と七海が央の家の最寄駅まで付いて来ようとしたことが書かれていて、槇村が思っている以上に、央はみんなから愛されているようだ。
 先日、央が圭人のことを『圭ちゃん』と呼んだのを真似して同じように言ってみたら、央はちょっと拗ねた様子になっていたけれど、それよりも槇村のほうが央の周囲に妬いたほうがよさそうだ。

 ひとまず、央が大丈夫そうなことが分かってホッとしたが、それでも槇村は央に、大丈夫か、と心配する返信をしてしまう。電車通学のこともそうだが、恐らく昨日、圭人と七海(…というより、ほぼ七海1人)に散々からかわれただろうから。
 それから、昨日の電話で槇村に何か聞きたそうにしていたが、それは何だったのかと尋ねておく。



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恋は七転び八起き (107)


 しかし、央からこんなふうに電話やメッセージが届いて、それを嬉しいと思って、返信をする日が来るとは。
 初めて央に会ったとき、動揺のあまり(と槇村自身は思っているが、逢坂や板屋越曰く『迂闊だから』)央に自宅場所を知られてしまい、押し掛けられるようになり、絶対に連絡先だけは教えられないと思っていたのに。

「ん? 早っ」

 槇村は、いつ既読マークが付くか、それからどのくらい早く返信が来るかなんて、そこに1分1秒を争う性格ではないし、むしろスマホをその辺に置きっ放しにしてしまうタイプだから、どちらかというと返信は決して早いほうではない。
 だから今も、央からの返信を待たずに席に戻ろうとしたのに、槇村がスマホをしまう前に返信が来たので、非常に驚いた。

『大丈夫だよ』
『ちゃんと1人で帰って来た』
『2人とも心配しすぎなんだよ』

 立て続けに入って来たメッセージは、しかしそこで終わっている。槇村が画面を開いているから、既読になっているのは央にも分かるはずで、だから槇村の返事を待っているのだろうか。
 槇村としては、央が大丈夫だという確認はもちろんのこと、央が槇村に聞きたかったことが何なのかを知りたいのだが。
 しかし、しばらく待ってみても、状況は変化しない。もしかして触れられたくないことだったのだろうか。そういえばあのときも、七海が聞けと唆しているだけで、央はそれほど積極的に尋ねようと言う態度ではなかった気がする。
 央にとって、あまり触れられたくないことなのであれば、再度促すこともあるまい。槇村は、央が大丈夫ならよかった、という返信の内容を打ち始めたが、送信する前に央からメッセージが送られて来た。

『俺、毎日でも電話とかメールしたい人だけど、槇村くんはそういうのウザいとか思う人なのかと思って。純平くんに聞いても知らないて言うし、圭ちゃんたちに相談したら、直接聞けば、て言われて。でもそんなの直接聞くのおかしいじゃん? おかしくない? 昨日電話したとき、七海が聞けって言ってたのもそれで』

 先ほどまでとは打って変わっての長文。この文章を作成するのに時間が掛かったから、なかなか次のメッセージが来なかったようだ。
 なるほど、槇村の予想どおり、央はやはり電話やメールの類が好きらしい。だが一方で、それを槇村にぶつけていいものか悩んでいたらしい――――お付き合いするに至るまで、懲りずに何度も槇村の家に押し掛けていた央が。

(なぜ今悩む…!)

 付き合い出したからこそ、考えるようになってしまったことなのかもしれないが。むしろ槇村のほうこそ、電話に出られなかったり、返信が遅かったりして、央に不満に思われないかと心配なのに。
 電話もメールも好きなときにしていいけれど、返事が遅くても許してほしいと返信すると、槇村はスマホをしまってトイレを出た。



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恋は七転び八起き (108)


「――――ッ…!!!」

 席に戻った槇村は、テーブルの上の惨状に言葉をなくし、回れ右をしようとしたが、逢坂にガシッと腕を掴まれて、逃げることは出来なかった。

「なっ…何だ、これっ!」
「何が。早く座れ。そこにいたら邪魔になるから」
「お前は何を尤もらしいことを言ってんだ…!」

 うろちょろする子どもを窘めるように言う逢坂に、槇村は突っ込みの言葉とともに手を振り解いて、自分の席に着いた。目の前には、飲み掛けのビールの横に、新しい生ビールの大ジョッキ…。
 逢坂や板屋越の新しいビールが、今までと同じ中ジョッキなのにもかかわらず、なぜに槇村だけ大ジョッキ…!?
 しかも、槇村がトイレに立つまではなかったし、注文もしていなかった料理が、山のように並んでいる。

「これは…」

 どう考えても、アラサーの男3人で食べ切れる量ではない気がいする。しかも、3人のうち1人(板屋越)は、その見た目どおり、食が細いから何の戦力にもならないのに。

「お…お前ら…、俺がいない間に何を…」
「んー…、次の酒頼もうとして店員さん呼んだらぁ、なつめがこれとこれとこれとこれ食いたいて」
「なつめの仕業か…!」

 酔ってトロトロとした口調になりながら逢坂が説明してくれるが、それを聞いた槇村は、あーもうっ、と頭を抱える。
 一番食べられない人間が、何をこんなに注文しているのだ。いつもだったら逢坂が、アホかっ、と止めてくれるはずなのに、酒が回っているせいで、肝心なところで役に立っていない。

「しかも何で俺だけ大だ!」
「だって、めでたいんだから、デカいのにしとけー、てなつめが言うから…」
「なつめの言いなりかっ!」

 こんなところで何を素直になっているのだ。酔っているからかもしれないが、逢坂だって決して酒が弱いわけではないのに、今日はやけに酔いが回るのが早い。前回は話の内容も重くて、そんなに飲んでいられなかったのかもしれないが、それにしたって。
 それに対して、仕掛けた張本人の板屋越は、ゲラゲラ笑っているだけだ。子どもか。

「どうすんだ、ホント…。こんなに頼んで、全部食えるのか? 残すなんて、あり得ないぞ」
「食べられるに決まってるだろ! 食え! 飲め! 次を頼むぞっ」
「待たんかい!」



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恋は七転び八起き (109)


 板屋越から、店員を呼ぶためのボタンを奪い取る。自分では絶対に食べ切れないのに、何をやっているだ。もしかしたら、板屋越も相当寄っているのかもしれない。
 槇村の前には、トイレに行く前に飲んでいた中ジョッキの他に、新しく来た大ジョッキのビールがあるけれど、今2人の前にあるビールが、同じように槇村が席を立つ前に飲んでいたものの、すぐ次に来たビールだと、どうして言える? 槇村がいない間に、さらに1杯空けているかもしれないではないか。
 それはそれでゾッとするが、しかしそう考えないと、この2人の酔い方に説明がつかない。

「ちょっ…、お前ら、今日月曜日なんだからな?」
「だから何だ、そんな細かいこと気にするなよ! 小っちゃい男だなっ!」
「やかましわっ」

 会社員たる槇村や逢坂が、昨夜の酒が残った状態で出勤するのも非常によろしくないが、高校の教師である板屋越はさらにもっと絶対によくないだろうに、気にしなすぎだ。

「いいだろー、お前が央からメール来てめっちゃ浮かれてるから、飲まなきゃやってられないんだよっ」
「なっ…、何で知って…!」

 確かに央から連絡は来たが、それをどうしてこの2人が知っている。しかも、そうだとしても、それがたくさん飲む理由であっていいはずがない。

「なっ、逢坂。ホントに央から連絡あったんだぞ。見てみ、槇村の顔。図星て顔してる。俺の言うこと、当たってただろ?」
「ホントだなぁ。なつめ、すごいなぁ」

 顔!? と槇村は慌てて自分の顔に手をやる。自分が今、どんな顔をしているのか分からない。しかし、トイレで手を洗うときに鏡を見た限りでは、そんな変な顔なんてしていなかったはずだ。

「央からメール来て嬉しいのが、顔に出てるわ」
「央のこと好きなのが、溢れ出してるなっ」

 へらへらと笑いながら好き勝手なことを言う2人に、槇村はもう何も言い返せない。
 本当に2人が言うような顔をしているのかは分からないが、言っていないのに、央から連絡があったことを見抜いたからには、少なからずそんな表情をしているのだろう。

(こ…こんな酔っ払いに気付かれるくらいて…………俺今、どんな顔してる…!?)

 もうダッシュでこの2人から逃げ出し、出来れば鏡でもう1度自分の顔を確認したかったが、そんなことをしなくても顔が赤いことは、熱くなった頬で十分に分かるし、いや、その前にこの大量の料理…!!

「槇村ー、せいぜい逮捕されないようになっ!」
「やかましいっ!」



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年末年始だよ、全員集合! 各作品のキャラに話を聞いちゃおうよ企画!! (1)


 年の瀬も押し迫ってまいりました。
 ただいま連載中のお話もまだ終わっていないところではありますが、今日からは、恒例の年末年始企画をお届けします。
 通常更新を待っていたみなさま、申し訳ありません。お正月ということで、どうかお許しください。
 ちなみに先に言っておくと、思いがけず長くなったので、年またぎ企画です。まさに『年末年始』です。どうかお許しください。

 では、どうぞ!



みなさーん! こーんばんはー! 『年末年始だよ、全員集合! 各作品のキャラに話を聞いちゃおうよ企画!!』 はっじまっるよ~!

睦月:「え…」
和衣:「えっ…」
翔真:「え…?」
直央:「???」
遥希:「え?」
千尋:「ウザッ!」

『年末年始だよ、全員集合! 各作品のキャラに話を聞いちゃおうよ企画!!』 その名のとおり、様々な作品に登場するキャラに集合してもらい、話を聞いちゃおうという企画でございます!

翔真:「まんまだな」
和衣:「全員集合、て……全然全員じゃないけど…」
千尋:「企画タイトルが、衝撃のダサさだな」

いやいや千尋くん、『年末年始だよ、全員集合!』の部分は、『○時だョ! 全員集合』に掛けてるから。そのセリフ、ド○フに対する冒涜だから。

千尋:「いや、多分俺、世代的にド○フとか知らないはずだから。設定として」

設定とか、そういうのはないから。二次元キャラじゃないから。フィクションだけど、一応実在してる体だから。その辺は大人の事情で察しろ。

千尋:「マジのトーンで怒られた…」
遥希:「開始早々…」
翔真:「てか、『○時だョ! 全員集合』の、伏せ字の意味…」

さぁ、さっそく参りましょう! 司会はわたくし、天の声でお届けします!

睦月:「天の声、テレビみたい…!!」
和衣:「むっちゃん、何感動してんの…?」
翔真:「いや、誰よ、天の声」
千尋:「帰りたい気分が、100のうち80くらいにまで達した」
遥希:「ちーちゃん、早い!」
直央:「(何か…………よく分かんない…)」

いや、全体的にテンション低いから。睦月くんみたいにテンション上げて!

千尋:「ウザい! 帰るっ!」←椅子を蹴散らし、立ち上がる
遥希:「ダメだって! ちょっ…ちーちゃん待って! 誰か! 止めて!」←千尋の腕に必死にしがみ付く
睦月:「(止めろって……どう止めんだよ…)」
和衣:「(お友だちさん…、大変そう…)」
翔真:「(これじゃ終わらないどころか、始まらない…)」
直央:「(テンションは、高い気がする…)」

ちなみに途中退席した場合は、本人がひた隠しにしている秘密を公にします。

千尋:「!」
遥希:「!?」
和衣:「!!??」
翔真:「え…」
睦月:「…」
直央:「秘密…?」
千尋:「…コイツ、何サラッととんでもないこと口走ってんの…?」
遥希:「天の声さん、急にマジの口調になるの、怖い…」
和衣:「(ひ…秘密? 何、秘密。俺、秘密にしてることなんかない。ない…よね!? でも、こんなこと言うってことは、何かしらの俺の秘密を知ってるのかな? それをばらされるの? そ…そんなの困る…!)」
睦月:「………………。カズちゃん、途中で帰んなきゃいいだけだよ。途中で帰んなきゃ、別に秘密もばらされないんだから」
直央:「俺の秘密?? 何ですか?」
翔真:「いや、今ここで天の声さんにそれ聞いて答えられたら、何もしてないのにみんなに秘密がばれますよ」

では、最初の質問から! デデンッ!

和衣:「えっ、この状態から始まるの!?」
睦月:「さすが天の声」
翔真:「そこは、『さすが』なの?」
千尋:「つか、『デデンッ』て自分で言うなよ」

みなさん、いろいろな作品から来てますから、まずは簡単に自己紹介してください。名前とか職業とか身長とか。

睦月:「職業…?」
千尋:「いや、職業よりも、何で身長? 自己紹介の項目として、身長て、そんなに早々挙がるもんじゃないでしょ」
翔真:「普通、身長よりは年齢とかのが先に来るよな」

まずは簡単に自己紹介してください。名前とか職業とか身長とか。

翔真:「ごり押し…!」
和衣:「多分、言うこと聞かないと先に進まなそうだから…」
遥希:「とりあえず、名前と職業と身長……言う?」
直央:「身長…」

(誰から…? という空気に包まれる)

では、和衣くんから始めてください。そこから時計回りに睦月くん、翔真くん、直央くん、遥希くん、最後に千尋くん、おもしろいことを言って締めてください。

千尋:「おい、ふざけんな! 何で俺のとこだけハードル上げんだよ!」
遥希:「さっき反抗したのの、仕返しじゃないの?」
睦月:「でも最後はトリだし、おもしろいことを期待しちゃう」
千尋:「お前も余計なこと言うなよ! 助けろよ!」
翔真:「(笑)」

では、和衣くんからどうぞ!

和衣:「え? え? ホントにいいの? 俺から始めて。え、身長…?」
翔真:「いや、いきなり身長からじゃなくていいんだよ」
遥希:「身長に洗脳されすぎ!」
直央:「でも、ちゃんと正確な身長を答えるために、身体測定したほうがいいんじゃないですか?」
千尋:「真面目か!」
睦月:「身体測定だと、体重も量んないとだよ」
和衣:「え、体重も答えるの!? 恥ずかしいよ!」
千尋:「女子か!」
翔真:「お手本のような突っ込み」

あの、時間なくなるんで、早く答えてください。とりあえず名前と職業だけでも。

和衣:「じゃあ、えっと…九条和衣です。大学3年生です。えーっと…………身長?」
千尋:「身長はいいって!」
和衣:「だってもう言うことない…」
遥希:「次行きましょーか! (汗)」

(しかし、誰も喋り出さない)

翔真:「…………」
直央:「…………」
遥希:「…………」
千尋:「…………」
和衣:「…………」
睦月:「………………あっ、俺か!」
千尋:「時計回り! いちいち時計板思い浮かべて、針の回る方向、指で確認すんな!」
直央:「さっき、天の声さんが答える順番言ってたのに…」
遥希:「ちーちゃんがトリだって、自分で言ってたのに…」
翔真:「…これがむっちゃんだから」
睦月:「上原睦月、3年生です、大学の」
千尋:「…………」←『小学校の、の間違いでしょ』と言いたかったが、何とか黙った
翔真:「終わり? むっちゃん」
睦月:「身長は 170センチくらいです!」
遥希:「身長言った! (笑)」
翔真:「えーっと…、山口翔真です。同じく大学 3年生です。…これでいい?」
睦月:「ショウちゃんは身長言わない?」
翔真:「え…、じゃあ… 176です…」
和衣:「やっぱり身長は言ったほうがよかったの!?」
千尋:「いや、いいよ、言わなくて。次、身体測定しないといけないヤツだから」
直央:「………………俺!」

直央:「えと、えと、瑞原直央です。24歳、コンビニで働いてます!」
遥希:「直央さんは社会人だったのですね」
直央:「はい!」
翔真:「(年上だったんだ…)」
直央:「ちなみに身長は、中学のときから測ってないので分かりません!」
和衣:「ねぇこの身長ネタ、どこまで引っ張るの…?」
遥希:「次、俺だね。えーっと、小野田遥希、大学3年生です」
千尋:「え、ハルちゃんて3年生だったの?」
遥希:「そうだよ…、何初めて知ったみたいな顔してんの、ちーちゃん…」
千尋:「だって初めて知ったし」
遥希:「嘘でしょ!? 何年一緒にいると思ってんの!?」
千尋:「分かんない。数えてないよ、そんなの」
遥希:「………………」
直央:「(友だち……なんだよね、この2人…)」
翔真:「(しょっぱい…)」
和衣:「次行きましょう! (汗)」
千尋:「俺か…」
睦月:「さぁ! 大トリの登場です!」
千尋:「お前、ホッント、ムカつくな!」
遥希:「(すごい…、ちーちゃんが押されてる…)」
千尋:「大体さぁ、合コンでも自己紹介のトリになると、超気まずいじゃん! それなのに、こんな何の得にもならない集まりで自己紹介のトリやって、何になんの!?」
和衣:「合コンの自己紹介…? 合コンなんて行ったことないから分かんない…」
千尋:「えっ、マジで? だって大学生なんでしょ?」
和衣:「そうですけど…」
千尋:「大学生なのに、合コンも行かないで何してんの? もっと人生楽しみなよ!」
翔真:「いいこと言ってるように見せ掛けて、意外と下衆なこと言ってる…」
遥希:「てか、さりげなく、『何の得にもならない集まり』とか言ってるし…」

千尋くん、早くおもしろいこと言ってください。

千尋:「だから何で俺のときだけ厳しいんだよ!」
遥希:「何でちーちゃんだけ天の声さんに目付けられてんの?」
千尋:「もぉっ! えーっと! 村瀬千尋、25歳、withていう店で働いてます!」

千尋くん、おもしろいこと、おもしろいこと!

千尋:「だから厳しいよ! もぉいいじゃんかっ!」
和衣:「天の声さ~ん、時間なくなるから、先に行きましょう~」
翔真:「そういえば、まだ自己紹介しかしてないよね」
睦月:「もう終盤気分」
千尋:「いい○夢気分」
遥希:「ちーちゃん、そういうどうでもいいところでボケなくていいんだよ」
翔真:「そして、どうせならもっと伏せて。伏せ字の意味ないから、それだと」

てめぇ、そのくらいボケる気力持ってんなら、自己紹介のところでボケやがれ。

直央:「天の声さん、急に柄が悪く…」
和衣:「何か、千尋さんに恨みでも…?」

個人的な恨みはありません。ついでに言うと、このメンバーの中の誰とも繋がりはありません、残念ながら。公正な立場でものを言うために、全然関係ない部署から来ました。

遥希:「その割に、ちーちゃんにすごい厳しいという…」
千尋:「理不尽…!」



続きはまた明日!
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年末年始だよ、全員集合! 各作品のキャラに話を聞いちゃおうよ企画!! (2)


じゃあ、定番の質問から行きますよ。準備はいいですか? では、好きなものは何ですか?

翔真:「結構普通の質問から来るのな。ずっとこんな調子?」
睦月:「だとしたら、千尋さんの力で、何とかおもしろくしてもらわないと」
千尋:「お前さぁっ!」
遥希:「ちーちゃん、落ち着いて!(これはいけない組み合わせだ…!)」
直央:「とにかく、早く答えないと! 終わらないです!」←自己紹介で自分が年上のほうだと気付いたのでがんばって纏めようとしている
和衣:「えっと、じゃあ……俺から? これは常に俺から答えるの? 時計回り?」
千尋:「ヤダよ! そしたら俺がいっつも最後じゃん!」
翔真:「じゃあ順番に行こうよ、トップバッター。1個ずつずれてけばいいじゃん」
睦月:「どーゆーこと?」
翔真:「さっきカズから始まったから、次はむっちゃんからで、その次は俺から、みたいな」
千尋:「それだ!」
睦月:「じゃあ、これは俺から答える、てこと? 好きなもの?」

好きなこととかでもいいです。ものに限りません。

遥希:「睦月くんには優しい、天の声さん」
千尋:「何なんだよっ」

あ、「恋人」以外の答えでお願いします。恋人のことが好きなのは分かってるんで。

睦月:「んー…、犬が好き。寝るのも。あと、お菓子とか、甘いの」
和衣:「むっちゃん、ジェットコースターとかも好きじゃん。絶叫系」
睦月:「好き好き。お化け屋敷も好き」
遥希:「遊園地が好きなの?」
睦月:「でも特に絶叫マシンとお化け屋敷が好き。ずーっと絶叫マシンに乗り続けてるでいい」
千尋:「恐ろしいヤツ…」
遥希:「ちーちゃん、絶叫系とか苦手だっけ?」
千尋:「苦手じゃないけど、ずーっとは乗ってなくていいよ。さすがにそこまでは好きじゃない」
睦月:「もしくは、ずーっとお化け屋敷の中にいるでもいい」
千尋:「最悪な性格だな」
直央:「じゃあ、怖い映画とかも見るんですか?」
睦月:「見ます。最近パソコンで見ることを覚えた、覚えました」
千尋:「何で敬語で言い直したわけ?」
睦月:「年上の人に聞かれたからだよ」
千尋:「俺だって年上だよ。てか、俺のほうが年上だよ!」
睦月:「敬語で質問されたから、敬語で答えた」
千尋:「…ッ!」
遥希:「ちょっ、ちーちゃん落ち着いて!」
千尋:「落ち着いてるよっ」
遥希:「さらに落ち着いて!」
直央:「(お…俺が敬語だったからまずかったんだ…、どうしよう…)」
和衣:「むっちゃんも落ち着いて!」
睦月:「俺は確実に落ち着いてるよ」
翔真:「カズが落ち着け」
直央:「よし、敬語なしにしよう!」
千尋:「どうした、急に」
直央:「敬語なしにしよう」
千尋:「俺見て言わなくていいよ。自慢じゃないけど、俺は1回も敬語使ってない」
遥希:「確かに自慢ではない…」

えーみなさん、収拾がつかないので、敬語はなしでやってください。敬語を使ったら、そのたびに秘密を1つ暴露します。

千尋:「はっ!?」
翔真:「罪が重すぎる!」
遥希:「そのたびに、て……どれだけ俺たちの秘密を知ってるの!?」
和衣:「も…俺帰りたいっ!」
睦月:「帰ったら帰ったで、秘密を暴かれるんだよ」
千尋:「何かこう…しっぺとかハリセンとかのほうがマシだよね。そのほうが精神的なプレッシャーが少ない気がする…」
直央:「ど…どうしよう…、俺が敬語なしにしよう、て言ったばっかりに…」
睦月:「自分を責めるなっ!」
直央:「えっ!? は、はい! あっ…」

今のはセーフです。

直央:「セーフ!」
遥希:「よ…よく分かんないけど、とりあえず先に進もう…。そして早く終わらせよう」
和衣:「う、うん…、そうしよう。で、何の話してたっけ? むっちゃんの…」
睦月:「俺? 俺の話してたっけ? 何だっけ? 忘れちゃった」
翔真:「怖い映画とか、パソコンで見てる、て話だよ」
遥希:「テレビじゃなくてパソコンで見るの?」
睦月:「自分の部屋のテレビで見ちゃいけないの、亮がダメって言うから。自分がいないときでも、ダメって言うの。だから、他の部屋の人の部屋に行って見たりしてたんだけど、最近、パソコンで見ればいい! て気が付いて。で、パソコンで見てる」
直央:「パソコンなら見てもいい、て言うの? 亮…さん?」
睦月:「いいとは言わないけど、ダメとは言わせない」
直央:「えっ、何それ」
睦月:「だってテレビは2人のだけど、パソコンは俺のモンだもん。自分のパソコンで何を見ようと、誰にも何も言わせない」
千尋:「何だその理屈! おもしろいけど!」
和衣:「でもむっちゃんて、ホラー映画だけじゃなくて、結構こう…スプラッター的なのも見るよね? 血みどろていうか、生々しいヤツ」
睦月:「見る見る。血がドブァ~ッてなるヤツ」
千尋:「ウゲェ…、そういうの見るヤツの気がしれない…。何がいいわけ?」
睦月:「血がドブァ~ッてなるところ」
千尋:「…おい、ホントに大丈夫か、コイツの精神状態。生き生きとした顔で何言ってんの」
翔真:「大丈夫…………と思う」
和衣:「むっちゃん、終わり? じゃあ次はショウちゃん?」
翔真:「あ、うん。てか、この順番、自分で決めといて何だけど、むっちゃんの次て大変だな」
睦月:「何で」
翔真:「いや…、俺、むっちゃんみたいにおもしろいこと言えないし」
睦月:「俺別におもしろいことなんか言ってないよ。好きなもの言ったんだよ」
翔真:「まぁそうだけど…、俺、そこまで好きなものとかないな、て思って」
直央:「犬は?」
翔真:「え? いや、嫌いじゃないけど……何で急に犬ピンポイントで聞いて…?」
直央:「いや、睦月さんが好きなものの最初に犬を挙げてたから…」
遥希:「じゃあ、あと……寝るの? 寝るのは好き?」
翔真:「え…、まぁ…普通かな…」
千尋:「何これ。コイツ(睦月)の好きなものについて、自分も好きかどうか答えてくわけ? なら次は……何だ? お化け屋敷? 絶叫マシン?」
睦月:「お菓子だよ!」
千尋:「何でもいいよ」
翔真:「ちょ…、あの、いいよ、もう…。これ以上掘り下げられても、おもしろい答え出ない」
和衣:「…ちょっと待って。ショウちゃんの時点でそんななのに、俺、この質問に答えるの、最後なんだけど! どうしたらいいの!?」
睦月:「がんばればいいの」
和衣:「何をどうがんばればいいわけ!?」
千尋:「しょっぱなにハードル上げたヤツに言われたくないよな」
翔真:「とりあえず、次に…」
直央:「俺? 俺ねぇー…、ん~………………ご飯!」
千尋:「ブッ…(笑)」
翔真:「 (笑)」
直央:「笑われちゃった…」
千尋:「いや…、そこまで溜めて言うから、何言うのかと思ったら…」
睦月:「でもご飯はいいよ! 俺もご飯好き!」
和衣:「まぁ、嫌いな人はそういないよね」
遥希:「うん。食べるのが嫌いな人を探すほうが難しそう」
直央:「ダメ? 好きなもの、ご飯」
千尋:「別にいいんじゃない? 好きなら」
直央:「純子さんの作るごはんが好き。おいしいから。おいしいご飯が好き!」
翔真:「まぁ……そうだよね…(笑) まずいよりはおいしいほうがいいよね」
睦月:「おいしいご飯が好き!」
和衣:「むっちゃんも、何反応してんの (笑)」
遥希:「睦月くんも、おいしいご飯が好き?」
睦月:「好き」
千尋:「だから、それ、嫌いなヤツいないって!」
遥希:「でも分かんないよ? 翔真くんは、おいしいご飯、『嫌いじゃない』くらいかもしれない」
翔真:「いや、好き…(笑)、それは…(笑)」
直央:「好きなもの、おいしいご飯」
遥希:「あはは…、ダメだ、ちょっと笑いが止まらない…」
千尋:「次、ハルちゃんだよ、早く答えてよ…(笑)」
睦月:「おいしいご飯を超える答えを言わないと」
遥希:「そんなの無理…(笑)」

(全体的に笑いが止まらず)

次の人、早く答えてください…(笑)

和衣:「天の声さんも、ちょっと笑ってる…(笑)」
千尋:「ダメだ、グダグダだ…。ハルちゃん、早く答えて! 笑えないようなヤツ!」
遥希:「何それ分かんないよ!」
和衣:「笑えないようなヤツ、ていうと、またちょっと違った意味に聞こえるんだけど…(笑)」
直央:「ダメだ! 笑ってる場合じゃない!」
千尋:「一番最初に笑わせたヤツが、何言ってんだ!」
遥希:「えーっと、えーっと、好きなもの? えーっと…」
睦月:「遥希さんも、好きなものは特になし? おいしいご飯にしておく?」
遥希:「しておかない!」
千尋:「違うんだよ、ハルちゃん、すっげぇ好きなものはあるんだけど、『恋人』て答えはなしだから、答えらんないんだよ」
和衣:「好きなもの……恋人! 俺も好き! みんなそうでしょ!?」
睦月:「だからそれ以外を答えろって言われたんだよ」
和衣:「あ、そっか…。じゃあ遥希くん、がんばってそれ以外の答え言わないと」
遥希:「だって…、もともとFATEの…………琉のファンだったし…」
和衣:「あぁ、FATEの人なんだっけ、付き合ってるの」
翔真:「琉てどっちだっけ?」
睦月:「どっちってどういうこと?」
翔真:「え、2人組じゃなかった?」
睦月:「何が?」
翔真:「FATE」
睦月:「は?」
翔真:「え?」
睦月:「え? 恋人の話はどこ行ったの?」
翔真:「いや、だから、もともとファンだったけど、今は恋人て答えはなしだから…」
和衣:「違うよショウちゃん。むっちゃんはFATEが何だか分かってない、まず」
睦月:「まず」
翔真:「あー…」
千尋:「…お前ら、ハルちゃんのこの顔見てみ? よくそんなこと平然と言えるね。鬼だね」
遥希:「…………」←衝撃を隠せない、絶望の表情
翔真:「あ…」
和衣:「あ…いや、俺は知ってるよ! FATE。すごい人気あるし! 知らないのはむっちゃんだけだよ!」
千尋:「違うね」
和衣:「違わないよ、ちゃんと知ってるよ! ショウちゃんだって、どっちがどっちかなだけで、FATEのこと知ってるよね? むっちゃんだけだよ、知らないのは」
睦月:「そんなに、俺だけって強調しないでよ!」
千尋:「お前だけじゃないよ、コイツ(直央)も絶対分かってない。何それ、て顔してるもん」
直央:「…………」
和衣:「あー……」
翔真:「(道理で静かだったわけだ…)」
遥希:「別に……傷付いてないっ…」
千尋:「まぁいいじゃん、知られてないほうが。どうせハルちゃん、アイツのこと誰かがキャーキャー言ってたら、焼きもち焼いてうっさいんだし」
遥希:「うるさくないっ」
千尋:「あっそ」
睦月:「(……しょっぱい…)」
翔真:「あー…えっと、もともとファンだったてことは、CDとか持ってんのっ…? (汗)」
和衣:「グッズは? 写真とか! (汗)」
遥希:「……」←無言で頷く
千尋:「ハルちゃんの自慢のコレクションの数々を説明してあげなよ、せっかくだから」
遥希:「何かちーちゃんの言い方、ムカつく!」
翔真:「(せっかく取り成してんのに、それをまったく無にする…!)」
和衣:「(今度こそ遥希くん、泣いちゃうよ…!)」
千尋:「こないだハルちゃんち行ったとき、俺にめっちゃ見せてきたじゃん、水落の写真とか。あれと同じことをすればいいんだよ」
遥希:「そっそんなに見せてないし…!」←アタフタ
千尋:「小一時間付き合わされた俺の身にもなってよ」
遥希:「ばらさないでよ、バカバカッ」←千尋の肩をバシバシ
千尋:「酔っ払ったハルちゃんが、その大量の写真にお酒ぶちまけないように、どんだけ俺が気を遣ったことか」
遥希:「あーん、ちーちゃんのバカッ、ありがとう、大好き!」←千尋に抱き付き
睦月:「(何がどうして『大好き』に繋がった)」
翔真:「(気を遣ったのは俺らだよ…)」
和衣:「(俺たちの苦労…)」
直央:「仲良しさん…(*´▽`*)」

えー……遥希くん、ここでグッズコレクションについて語りますか? それとも次に行っていいですか?

睦月:「次に行っていいです」
千尋:「何でお前が答えんだ。いや、次行っていいけど。あ、次俺か」
遥希:「ちーちゃんの好きなものこそ、言うまでもない、て感じだよね」
千尋:「じゃあ、言わないでおこっか」
直央:「言わないのもありなの!? 言うまでもないから!?」
和衣:「言うまでもなくないよ。俺たち、言ってもらわなきゃ分かんないよ!」
睦月:「ピンポーンッ!」
翔真:「いや、むっちゃん。今はクイズのコーナーじゃない。早押しボタンとかないから」
睦月:「筋トレ!」
千尋:「惜しい!」
和衣:「クイズコーナーになってる!?」
直央:「しかも惜しかったんだ」
翔真:「何でもありか」
千尋:「正解は、筋肉でした!」
睦月:「惜しかった…!」
翔真:「…………これ、どういうコント?」
和衣:「『○時だョ! 全員集合』!」
翔真:「急にそこ持ってくんな」

収拾つかなくなり始めてるんで、千尋くん、筋肉のどこがどう好きなのか、100文字以内に纏めて答えなさい。

千尋:「ちょっ、100文字じゃ語れないよ!」
翔真:「呟きですら140文字のこのご時世に…」
睦月:「筋肉て……人の筋肉が好きなの? 自分も鍛えて筋肉つけてんの?」
遥希:「100文字問題をまったく気にせず質問するね」
睦月:「だってさ、自分も鍛えてるなら、筋トレて答えも正解じゃない!?」
直央:「さっきのクイズ、続いてた!」
千尋:「鍛えるのも好き、鍛えるのも好き。人様の筋肉も大好き。前まではさ、ボディビルとかないな、て思ってたんだけど、今はそういう筋肉がいい」
遥希:「えっ、ハルちゃん、ボディビルダーみたいになりたいの!? ヤダ!」
千尋:「いや、違うんだよ。ボディビルの人と普通のアスリートじゃ、鍛える筋肉が違うんだよ。ボディビルの筋肉ていうのは、見せるための筋肉だから、」

しゅ~りょ~!

千尋:「ちょっ!」
和衣:「ホントに100文字以内だったんだ…」
千尋:「何だよもぉ! 何だよもぉ! 俺にも喋らせろよ!」
遥希:「やっぱり天の声さん、ちーちゃんに厳しいんだ…」
翔真:「語り出したら長くなる、て判断されたんじゃ…」
直央:「でもすごいね、体鍛えてるの、俺何にもしてないよ」
和衣:「俺だって、そんなに何もしてないよ。むっちゃんはたまに走ってるよね」
睦月:「走ってる。いっぱい食べたときとか」
千尋:「バカ、そういうときだけじゃダメなんだって。毎日のトレーニングが大事なんだから」
翔真:「ホントのアスリートみたいになってる」
直央:「千尋さんは毎日走ってるの?」
千尋:「ジム行ったりとか」
遥希:「えっ!?」
千尋:「え?」
遥希:「ちーちゃん、ジム行ってるの!? 俺、知らなかったよ! 聞いてない!」
千尋:「別に言ってないし」
遥希:「何で! 何で教えてくんないの!?」
千尋:「は? ハルちゃんに言って何になんの? 一緒に来る気?」
遥希:「行かないけど…。でも、ちーちゃんのことで知らないことがあったなんて、ショック!」
千尋:「俺の新しい一面が知れてよかったでしょ?」
遥希:「え…? う…うん…。???」
翔真:「簡単に言い包められ過ぎだよ」
睦月:「次はカズちゃんだ! カズちゃん、最後だよね? 最終問題はポイント2倍でっす! みなさん、がんばってくださいっ!」
直央:「がんばります!」
遥希:「え…、これは乗ったほうがいいの…?」
千尋:「つか、コイツ(直央)はボケたの? それともマジなの?」
睦月:「カズちゃんの好きなものは何でしょ~かっ!」
千尋:「お前が司会者か」
和衣:「ていうか、段々本来の質問に答えづらくなってる!」
翔真:「カズ、お前、相当おもしろいこと言わないとまずいんじゃね?」
和衣:「プレッシャー!」
直央:「はい!」
睦月:「はい、直央さん、どうぞ!」
遥希:「こっちはこっちで勝手に進めてるし」
直央:「いちご大福!」
睦月:「、、、、、、、、、、残念っ!」
直央:「あぁんっ!」
和衣:「ちょっとっ!」
睦月:「え、カズちゃん、いちご大福、好きだっけ? いや、嫌いだとは思ってないけど、そんなに大好きだった?」
和衣:「いや、そうじゃなくて! 2人して何やってんの!」
睦月:「別に2人してじゃないよ。みんなでだよ。みんなも答えてくれないと!」
千尋:「答えづらいわ」
睦月:「ちょっと答えが出ないみたいなんで、和衣さん、ここでヒントをお願いします!」
翔真:「むっちゃんは、飽くまでも司会者なんだね」
和衣:「ヒントて…………そんな、だって、まだ何言うかも考えてなかったのに…」
睦月:「好きなものだよ」
和衣:「それは分かってるけど! あ、お風呂! お風呂好き!」
睦月:「ちょっとカズちゃん! ヒントて言ったのに、いきなり答え言わないでよ!」
和衣:「あ、ゴメン!」
遥希:「そんな…別にホントにクイズコーナーだったわけじゃないんだから…」
睦月:「直央さん、残念ながら逆転なりませんでしたー」
直央:「がっかり…」
千尋:「いや、誰とポイント競ってたんだよ。誰に逆転しなかったんだよ」
翔真:「最終的に、誰が優勝したわけ?」
遥希:「てか、直央さん、ホントにすごいガッカリしてる…」
睦月:「ではここで、お風呂大好きな和衣さんに、詳しく話を聞いてみましょー」
和衣:「むっちゃんお願い、普通に戻って。話しづらいよ!」
睦月:「も~、せっかくいい調子になって来たのにっ」
千尋:「でも風呂て、ハルちゃんも風呂好きだよね。何か風呂場に変なのいっぱいあるもんね」
遥希:「変なのじゃないよ!」
千尋:「変なにおいするときあるし」
遥希:「変な、て言わないでよ! アロマだよ!」
和衣:「いいな! 俺もアロマバスしたいけど、寮のお風呂だからダメなの」
遥希:「部屋にお風呂がないてこと?」
和衣:「そう! だからさぁ、普段はあんまり何も出来ないの。残念…」
遥希:「でも俺んちも、お風呂そんなに広くないから、いろいろは置けないんだよ」
和衣:「けど、アロマとか出来るの、いいじゃん! 羨まし~!」
翔真:「…………」
千尋:「…………」
睦月:「…………」
直央:「…………」
翔真:「……千尋さん、『女子か!』て突っ込まないの?」
千尋:「こんなの、俺を以てしても、もう突っ込み切れないよ」
睦月:「しょうがないから、俺たちもお風呂の話題で盛り上がろう」
翔真:「盛り上がれるほどの話題も持ってないよ。むっちゃんだってそうでしょ? お風呂、すぐ上がるじゃん」
睦月:「逆上せるからね」
千尋:「俺もシャワーだけだな、普段」
睦月:「俺もそれだけでいい! でもカズちゃんが許してくれないから…」
直央:「許してくれない、て?」
睦月:「ちゃんとあったまりなさい、てゆわれる」
千尋:「それは、アイツ(和衣)がお母さんなの? コイツ(睦月)がガキなの?」
翔真:「…どっちだろうねぇ…(笑)」
直央:「一緒にお風呂入ってるの? 寮のお風呂、みんなで入るの? おっきいお風呂」
睦月:「お風呂は1個だけど、入る時間は決まってない。みんなバラバラ。俺はカズちゃんと一緒に入るけど」
千尋:「…何で? いや、別にいいけど、何でわざわざ一緒に入るわけ? お前、シャワーだけでいいぐらいなのに、何で風呂があんなに大好きなヤツと一緒に入んの?」
睦月:「カズちゃんのこと誘ってお風呂行くの」
千尋:「だから何でだよ。しかも、誘われるんじゃなくて、お前が誘ってんのかよ。意味分かんないよ。結局一緒に入りたいんじゃん」
睦月:「結局ね」
直央:「翔真さんは一緒には入らないの?」
翔真:「たまに風呂場で一緒になることはあるけど、わざわざ誘わないかなぁ。誘われもしないし。てか、あれだよね、むっちゃん、亮と部屋同じなのに、亮とは一緒に風呂行かないよね?」
睦月:「うん」
千尋:「いや…、それこそ何でだよ? え? 同じ部屋のヤツ誘わないで、何でアイツ(和衣)誘うの? だって、その同室のヤツが彼氏なんでしょ? いいんだけどさ、何で?」
睦月:「カズちゃん長風呂だから、付き合うの大変」
千尋:「ちょっと待て。そのセリフは、自分は嫌なのに、誘われて嫌々付き合ってるときに言うヤツじゃん。お前から誘ってんのに、何言ってんの?」
睦月:「一緒にお風呂行きたいから」
千尋:「は? え? ちょっと意味分かんないけど……何なの? 俺がバカなの?」
翔真:「いや……多分、あんまり深く考えないほうがいいヤツかな…」



明日に続きます!
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えー……次の質問に行ってもよろしいでしょうかー?

睦月:「最後の質問?」
翔真:「え、もう?」
千尋:「そうだよ。どんだけ喋ったと思ってんの?」
直央:「結構喋ってるよね」
翔真:「でも、名前とか言った後、好きなもの聞かれただけの気がするけど」
千尋:「それだけ聞かれれば十分だよ。もう終わろうよ」
直央:「あの2人はまだお風呂の話で盛り上がってるけど…………終わっていいのかな?」
睦月:「いい」
直央:「あ、いいんだ…」

よくないです。みんなで喋ってください。そして終わらないでくださーい。

睦月:「終わっちゃダメだって、ショウちゃん」
翔真:「まぁ…、だろうね」
千尋:「もーハルちゃんたち、お風呂の話、終わったのっ?」
遥希:「あ、ゴメンゴメン」
和衣:「えへへ、ゴメーン」
直央:「お風呂について、あんなに話すことあるなんてすごいね」
千尋:「つか、俺のときは無理やり話終わらせられたのに、何でこの2人は喋りっ放しでいいんだよ!」

あ、質問の前に、

千尋:「無視か!」

ここでみなさんに差し入れです!

睦月:「差し入れ!」
遥希:「差し入れだって、ちーちゃん!」
千尋:「…聞こえてるよ」

どうぞー!

(いちごパイとブルーベリーパイ、コーヒーと紅茶が登場)

睦月:「アップルパイ!」
和衣:「違うよ (笑)、いちごとブルーベリーだよ」
遥希:「どこをどう見てアップルパイだと思ったの? (笑)」
睦月:「食べよう、早く食べよう!」
翔真:「むっちゃん、座って座って」
直央:「(おいしそう…)じゅる…」
千尋:「…………(今コイツ、じゅる、て…。コイツ、俺と1個しか違わないんだよな? 大丈夫か?)」
遥希:「ね、ね、どれにする? どれにする?」
睦月:「えっとね…………」←なぜか翔真に耳打ち
翔真:「え、何々? いちご? いちごのがいいの? つか、何で俺にこっそり言ったの?」
睦月:「えへ」
遥希:「睦月くん、いちごがいいの? はい。和衣くんは?」
和衣:「どうしよっかなぁー。直央さんは?」
直央:「お…俺ぇ…?」
遥希:「まだどっちでも大丈夫だよー。翔真くんはどうするー?」
翔真:「どっちでもいいよ、残ったほうで」
遥希:「ちーちゃんはー?」
千尋:「いらない」
遥希:「ダメー」
千尋:「何で。俺が甘いもの好きじゃないの、知ってるでしょ」
和衣:「むっちゃん、まだ食べちゃダメだよ! みんなのが決まってから!」
睦月:「むぅ…」
遥希:「直央さん、どっちー?」
直央:「ブ…ブルーベリー…!」
遥希:「どーぞ。和衣くんは?」
和衣:「じゃあ、いちご。ちょっとむっちゃん、待ってってば!」
千尋:「ちょ…犬じゃないんだから…(笑)。何回『待て』するんだよ」
翔真:「(笑)」
遥希:「俺、ブルーベリーにしよ! ちーちゃんと翔真くん、どっちにする? どっちも1個ずつあるよ? 翔真くん?」
翔真:「ホント、どっちでもいいよ。別にそんなにどっちも…………あ、じゃあ、ブルーベリーで」
遥希:「ちーちゃん、いちごでいい?」
千尋:「…何でもいいよ、もう(いらない、て言ってんのに…)」
和衣:「コーヒーと紅茶、どっち飲む?」
睦月:「コーラ」
和衣:「コーヒーと紅茶だってば」
千尋:「お前、我が道を行き過ぎだろ。選択肢の範囲で答えてよ」
睦月:「コーラが好きなの」
千尋:「知らないよ」
遥希:「俺、紅茶にしよー。他に紅茶の人は?」
直央:「じゃあ、俺も紅茶にする」
和衣:「俺もー」
翔真:「俺はコーヒーで。他にコーヒーいる人」
睦月:「はい!」
翔真:「え、むっちゃんが入れてくれるの? 大丈夫? ポット熱いよ? 出来る?」
千尋:「いや、出来るでしょ。コーヒー注ぐだけでしょ? 何言って…」
睦月:「あっ! アツッ」←勢いよく注ぎ過ぎて、カップからコーヒーが零れた
和衣:「むっちゃん危ない! 何自分でやろうとしてんの!」
千尋:「危ない? 何が? コーヒー入れるのが? 何で?」
睦月:「これ、入れ物が熱い…」
翔真:「俺がやるって! 危ないよ、むっちゃん、落としたらどうすんの!?」
千尋:「落とす? 何で? ねぇ何で?」
睦月:「コーヒー……ミルクとか入れる…」
和衣:「はい、ミルク。気を付けて入れてね?」
翔真:「他にコーヒーの人は?」
千尋:「ねぇ…、誰か俺の質問に答えてよ。頼むから答えてくれよ。何で何事もないみたいに進めてんの?」
直央:「熱いから、零したら危ない」
千尋:「ま…まぁそうなんだけど…………そうか? え? 零す? いや、零したけど」
遥希:「ちーちゃん、どっち飲むの?」
千尋:「え、気にしてんの、俺だけ? 俺が変なの? 気にし過ぎ? 今、目の前で起こった尋常じゃない過保護について、気にしてんの俺だけ? ………………えっと……コーヒーください…」
睦月:「いただきまっす!」
遥希:「おいしー!」
和衣:「おいしいおいしい」
直央:「おいひい…」
翔真:「…………」←甘いものはそんなに好きではないけれど、一応一口食べる
千尋:「…………」←甘いものはそんなに好きではないけれど、一応フォークは持ってみた

えー、食べながらでいいので、次の質問に行かせてくださーい。みなさん、自炊……自分で料理はしますか? 毎日? 殆どしないですか? いかがでしょうか。

和衣:「これも順番に答えるの?」
遥希:「料理するかしないかを答えるだけだから、どっちかに手を挙げる、ていうのは?」
翔真:「そのほうが、話が長くならなそう」
千尋:「それでいいけど、作ったり作らなかったりの場合はどうすればいいわけ? 料理はするけど、毎日毎食てわけじゃないよ、俺」

では、朝昼晩、それぞれについて、作る場合が多いか、作らない場合が多いかで答えてください。

千尋:「それぞれについて…(面倒くさいことになった…。余計な質問しなきゃよかった…)」
和衣:「えと…、じゃあ、朝ご飯、自分で作る人ー」

(和衣、翔真、直央、千尋が挙手)

和衣:「遥希くん、作んないの? 朝ご飯」
遥希:「作らなくはないけど…」
千尋:「ハルちゃんね、そもそも朝ご飯食べない子だから」
遥希:「たっ食べるよっ、食べるようにしてるよ、ちゃんと!」
千尋:「じゃあ手挙げなよ」
遥希:「そうだけど、作るか作らないかでいったら、作らないほうが多いかな、て思って…」
直央:「えー! 朝ご飯は食べたほうがいいよ! だって途中でお腹空いちゃう」
遥希:「朝、食欲ない…」
直央:「でも、お昼が食べられるかどうか分かんないし! もしかしたら夜も食べられないかもしれないし! 食べるものがあるときは、ちゃんと食べておいたほうがいい!」
千尋:「何急に力説始めてんの?」
和衣:「おいしいご飯が好きだから」
千尋:「そうか? まぁいいけど。だって。ハルちゃん、ちゃんと朝ご飯食べないと、コイツに怒られるよ。ちゃんとしな」
遥希:「はい…」
翔真:「じゃあ、次は昼? 作る?」

(直央が少しだけ挙手)

遥希:「お昼は大体学食…。休みの日は、家にいたら作るけど」
和衣:「俺もー」
翔真:「俺も」
千尋:「俺もそうだな。まぁ学食じゃないけど。昼は外で食べる。<直央を見て> 作るんだ?」
直央:「外で食べることもあるけど……なるべくお家で食べる。だって外で食べるとお金掛かるし。それに、俺そんなに料理が上手なわけじゃないから、練習したいし」
和衣:「真面目! 俺も見習わないと…」
遥希:「俺もー」
千尋:「えー? 別に食べられればいいよ。おいしいもの食べたけりゃ、食べに行けばいいし」
和衣:「ダメだよ! 自分でおいしいもの作ってこそだよ! だって、おいしいもの作ってあげたいじゃん!」
千尋:「お…おぉ…」
翔真:「千尋さん、鍛えるために食事とか気を付けてるんじゃないの?」
千尋:「まぁ…多少は。でも味については、そこまで極めようとは思ってないし。そりゃ、食べるなら不味いよりは上手いほうがいいけど、自分が食べるだけだし、そんな拘りないよ」
遥希:「ちーちゃんの中に、人のために作ってあげよう、て気持ちはないんだ?」
千尋:「え、あんま…」
直央:「ないんだ…(笑)」
和衣:「えっと、じゃあ次……夜ご飯だけど」
遥希:「てか、いいの? さっきから睦月くん、何も答えてないけど」
睦月:「…………」←食べるのに夢中
翔真:「まぁ…、料理する場合に手挙げるんだから、いいんじゃない?」
遥希:「あぁ、しないんだ、料理」
千尋:「料理しないならしないなりに会話に参加……」
睦月:「ご馳走様でした!」
千尋:「おい、お前の話してんだぞ!」
和衣:「むっちゃん、口のとこ付いてるよ」
睦月:「手がベタベタ…」
翔真:「はい、ウェットティシュー」
千尋:「いや、もう、甘やかすなって!」
直央:「睦月さん、食べるの速いね」
睦月:「おいしかったから」
直央:「おいしいねー」
千尋:「こっちはこっちで平和だな」
翔真:「むっちゃん、これも食べる?」←一口しか食べてない
睦月:「食べるー。ブルーベリー!」
和衣:「あー、ショウちゃん、後でむっちゃんに食べてもらおうと思って、ブルーベリーのほう選んだんでしょー。最初にむっちゃんがいちご選んだから」
翔真:「いや、まぁいいじゃん。はい」
睦月:「ありがとぉ! カズちゃん、半分食べる?」
和衣:「え? あ…、…………うん…(照)」
千尋:「………………。じゃあ俺はハルちゃんにあげるよ、はい」
遥希:「えっ!? いや、嬉しいけど……ちーちゃん、全然食べてないじゃん! 一口も!」
千尋:「一口は食べたよ、食べた」←先のほうをほんの少しだけ食べた形跡あり
遥希:「すっごいちょっと! こんな小っちゃい一口、見たことない…!」
千尋:「いいじゃん、ホラ、食べなよハルちゃん。いちごだよー」
遥希:「もぉー。じゃあ、直央さん、半分こしよ?」
直央:「えっ!」
遥希:「え? いらない?」
直央:「…………いる…(照)」
遥希:「(笑)」

すいませーん、夕ご飯について、作るか作らないか答えてくださーい。

和衣:「ん! 忘れてた!」
睦月:「作りません!」
千尋:「さっきからの流れで、お前に限っては、言わなくても答えが分かってたわ」
直央:「また、手挙げるの?」
翔真:「んー…俺、微妙だなぁ。作るけど、毎日てほどでもないし……どう手挙げていいか分かんない」
遥希:「じゃあー……毎日作る人!」

(直央が少しだけ挙手)

和衣:「あ、また直央さんだけ!」
遥希:「しかもまた遠慮がちに」
直央:「大体毎日作るけどね、でも大体純子さんが作ってくれるから、それお手伝いしたり教えてもらったりしてるだけだから。全部俺がやってるわけじゃないから…」
遥希:「でも毎日してるんでしょ?」
直央:「してる、一応」
和衣:「お昼だって練習してんのに、すごいね!」
遥希:「しかも先生付き! 絶対うまくなるよ」
直央:「んー…、でもやっぱり純子さんのご飯には全然敵わない…。もっとがんばらないと!」
和衣:「俺もがんばる!」
遥希:「俺もちゃんとしないと…。最近あんまちゃんと作ってない…」
和衣:「そうなの?」
遥希:「…ん。俺、今日から心を入れ替える!」
和衣:「がんばろ!」
千尋:「…………。何か……何だろうな、この2人(和衣と遥希)が揃うと、途端に女子力がアップするの…」
翔真:「でも、千尋さんだって、料理するんでしょ?」
睦月:「女子か!」
翔真:「いや、むっちゃん、言うの遅い…(笑)」
千尋:「タイミング!」
睦月:「ふへへ (笑)」
千尋:「も…ヤダ…。コイツ(睦月)が会話に入ると、気が抜ける…(笑)」
翔真:「(笑)」

あのーみなさん、夕食を作るかどうか、答えをお願いしますー。

遥希:「あ、そうだった。すぐ話が逸れちゃう」
和衣:「えと…、毎日作るのは直央さんだけで……じゃあ、週の半分とか? そのくらい作る人は?」

(和衣、翔真が挙手。遥希と千尋は顔見合わせ)

翔真:「え…、2人のその反応は何?」
遥希:「作りたい、、、ですっ…!」
和衣:「作りたい? え? あ、さっきもちゃんとしないと、て言ってたもんね」
遥希:「…ん。最近……ダメ…」
千尋:「最近、全然だよねー。うん、全然ダメ」
翔真:「え、何で千尋さんが断言するわけ? 千尋さんも全然ダメてこと?」
千尋:「俺はダメじゃないよ、だって最初からそんなに作る気ないし。だから、全然夕飯作ってないけど、俺はセーフ」
直央:「セーフ…?」
和衣:「えっと…、要は2人とも、最近殆ど夜ご飯作ってないけど、千尋さんは最初から作る気がないからセーフなのに対して、作ろうと思ってるのに作ってない遥希くんはアウトてこと?」
千尋:「そういうこと」
翔真:「その理論…」
睦月:「でも、遥希さんが全然ご飯作ってないの、何で千尋さんが知ってんの?」
千尋:「だってハルちゃん、最近いっつも俺とメシ食ってるもん、夜」
睦月:「いっつも?」
千尋:「週4日くらい、ここ最近」
和衣:「それは、1日置きのペースなのでは…」
遥希:「だって、1人でご飯食べるの寂しいんだもん…」
千尋:「まぁしょうがないんだけどね。ハルちゃん、俺以外に友だちいないからさぁ」
遥希:「いるよ! いるし!」
千尋:「だったらソイツらと食え」
遥希:「ヤダー! ヤダヤダヤダ、ちーちゃんがいいー!!」←じたばた
千尋:「何でだ」
直央:「2人で食べるのに、ご飯は作らないの?」
遥希:「…………外で食べるか、コンビニ…」
千尋:「ハルちゃんはね、早く飲みたいんだよ。メシ作る時間があったら、さっさと飲みたいの」
遥希:「あぅ…」
翔真:「あ、飲みたいんだ。2人でメシ食う、て要は飲みたいてことなんだ?」
遥希:「……」←無言で頷く
和衣:「でも、お料理がんばるんでしょ?」
遥希:「がんばる…」
千尋:「これからは家で飲むとき、ご飯作りなよ。俺が食べてあげるから」
遥希:「えぇー? だったら一緒に作ろうよぉ」
千尋:「ヤダよ、何で。作ってくれる人がいるのに、何でわざわざ俺まで料理しないといけないの?」
翔真:「もしかして千尋さんて、料理はするけど、出来ればしたくない人なの?」
千尋:「したくないよ! しなくていいなら絶対しない!」
和衣:「でも、遥希くんが一緒じゃない日、たまにはご飯作るんでしょ?」
千尋:「仕事がそこまで忙しくなかったら。だからハルちゃん、ご飯作って」
遥希:「『だから』の意味が分かんないー」
千尋:「だってハルちゃん、料理作りたいんでしょ? で、俺とご飯食べたいんでしょ? 俺のためにご飯作れば、その両方が叶うじゃん」
遥希:「そっかぁ…。じゃあ、今度からちーちゃんちでご飯作る!」
千尋:「よしよし」
翔真:「(…………本人がそれでいいならいいけど…)」
和衣:「(それで…………いいの…?)」
直央:「和衣さんと翔真さんは、週の半分くらい? 作る?」
和衣:「ん、もっと作ってるかな。たまにバイトの後、むっちゃんとご飯食べて帰ったり、あと、お出掛けして夜ご飯も外で食べたりするけど、それ以外は自分で作って食べる」
遥希:「コンビニご飯とか、しないの? だって、コンビニでバイトしてるでしょ?」
和衣:「んー…あんま買わないかな。俺、ご飯作るの好きだし」
遥希:「あぅ…」
千尋:「もぉ、ハルちゃんも見習いなよね」
遥希:「ちーちゃんに言われたくないし!」
直央:「でも、寮て1人部屋じゃないんでしょ? 同じ部屋の人の分は? 自分の分は自分で作るの? 和衣さんが作ってあげてるの?」
和衣:「俺は、殆ど俺が作ってる。一緒には食べないけど、作っとくと、食べてる」
遥希:「え、一緒に食べてないの? 同じ部屋なのに?」
和衣:「夜、俺がご飯食べる時間、まだ帰って来てないことが多い」
遥希:「時間が合わないんだ?」
和衣:「うん。何かいっつも夜遅い」
遥希:「1人ご飯、寂しい…。寂しくない? 寂しくないの?」
和衣:「まぁちょっとは…。でもしょうがないし」
遥希:「すごい…。大人だぁ」
和衣:「大人…かな? ショウちゃんは?」
翔真:「俺が作るかなぁ、殆ど。いや、蒼も料理するけど、アイツが作ったものを、俺は食べない」
直央:「どういうこと?」
翔真:「アイツ、結構衝撃的な料理作るから」
遥希:「衝撃的…? (笑)」
翔真:「目が覚めるような」
直央:「じゃあ、朝ご飯だったらちょうどいいね」
千尋:「(笑)」
和衣:「蒼ちゃんて、そんななんだ。知らなかった」
翔真:「今度食いに来てみ? 言えば作ってくれるよ」
和衣:「え…、でも衝撃的なんでしょ?」
千尋:「朝に食べるんだよ、朝に。目が覚めるから (笑)」
和衣:「えー、考えとく…」
遥希:「あとは睦月くんだけど、全然作んな…」
睦月:「………………」
和衣:「むっちゃん、むっちゃん!」←睦月の肩を揺さぶる
睦月:「…ん? ん? 何?」
和衣:「今寝てたでしょ? 寝てたよね?」
睦月:「寝てない、寝てない…」←目をこする
遥希:「寝てたね…(笑)」
翔真:「お腹いっぱいになったから、眠くなったんだね」
千尋:「ガキか!」
睦月:「や、寝てないって。目閉じてただけ」
直央:「それは寝ていたのではなくて?」
睦月:「違う違う、全然違う」
千尋:「目も開けてろって、みんな喋ってんだから」
睦月:「開ける開ける、大丈夫。もう大丈夫」
遥希:「もう? (笑)」
睦月:「何か料理の話だから、喋ることねぇな、て思ったら、目が閉じてただけだから」
千尋:「だから寝てたんだろ、それ」
睦月:「も…次の質問…」
和衣:「次の質問、お願いします (笑)」



1話あたりが長くてすみません。また明日。
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カテゴリー:notes

年末年始だよ、全員集合! 各作品のキャラに話を聞いちゃおうよ企画!! (4)


えー、では次の質問行きますよ? 睦月くん、料理について答えなくていいですか?

睦月:「作りません!」

分かりました (笑)、では次に行きます。次の質問……デデンッ、お酒はどのくらい飲みますか?

直央:「『デデンッ』が復活した」
睦月:「デデンッ」
和衣:「真似しなくていいんだよ (笑)」
翔真:「これも、手挙げることにする?」
千尋:「それがいい、それが面倒くさくなくていい。お酒を飲む人! はい!」
遥希:「え、ちーちゃん、どのくらい飲むかだよ、質問」
千尋:「いや、もーいいって。話が長くなるじゃん、そんなの」

質問を勝手に省略しないでくださーい。

遥希:「ほらー、怒られたー」
千尋:「ハルちゃんが余計なこと言わなかったら、ばれなかったよ。もぉ!」
和衣:「ととにかく質問に答えようよっ、終わんないよっ」
睦月:「でも、どのくらい飲むかって、どうやって手挙げんの?」
千尋:「ほらぁ、面倒くさいことになって来たー。だからさっきあのまま進めておけばよかったのにー」
遥希:「だぁってぇ!」
翔真:「じゃあ、毎日飲むとか、週何日とか、そういうふうに答える?」
和衣:「でもそれも、時期によっていろいろじゃない?」
千尋:「いやもう、そんなに考えないようにしようよ。全体的にでいいじゃん、全体的に」
直央:「全体的??」
睦月:「最近のこと、てことだよ」
直央:「最近のこと?」
睦月:「うん」
千尋:「…違うけど、もうそれでいいよ」
和衣:「じゃあ普段、毎日飲んでる人ー!」

(誰も手を挙げない)

千尋:「…ハルちゃん、何で手挙げないの? 正直に答えなよ」
遥希:「まっ…毎日じゃな…」
千尋:「ほぼ毎日飲んでる人ー」
遥希:「………………」←項垂れながら手を挙げる
翔真:「一見すると、意外な感じだけどね」
和衣:「ほぼ毎日飲んでる?」
遥希:「う…、で、でもちーちゃんだって毎日飲んでるようなもんでしょっ?」
千尋:「ハルちゃんと一緒じゃないときは、俺、殆ど飲まないよ」
遥希:「嘘っ!?」
千尋:「ホントだよ。いや、この1週間くらいの話だったら、ほぼ毎日ハルちゃんとメシ食ってるから飲んでるけど、たまに全然会わないこととかあるじゃん? そういうときなんて殆ど飲んでないよ、俺。一緒に酒飲む相手なんて大体決まってるから、そうじゃないときは誰かとメシ食っても酒飲まないし」
遥希:「でもたまに1人で飲んでることない?」
千尋:「1人でも飲むよ、飲みたかったら。でも別に毎日じゃない」
遥希:「俺だって毎日じゃないし…。1人じゃ飲まないし…」
和衣:「千尋さんと会ってないときも飲むの?」
遥希:「…………飲む…。学校の友だちとかと……でもちょっとだからね、ちょっと! ホント、全然酔っ払うほどじゃ…!」
千尋:「何で俺に言い訳すんの? 俺に言ったって意味ないでしょ? ハルちゃんがめっちゃ酒癖悪いの、知ってんだから」
遥希:「ちーちゃんだって人のこと言えないでしょ!」
千尋:「ハルちゃんほどじゃないって。俺、酔っ払って迷惑掛ける相手なんて南條くらいだし。そんな、酔っ払って、見ず知らずの人とセック…ふがっ!」←遥希に口を押さえられる
遥希:「ちーちゃん、黙って」
直央:「遥希さんがすごい怖い顔してる…」
睦月:「目が怖い、目が」
翔真
:「どうした、どうした」
和衣:「何か…触れちゃいけないことに…」
遥希:「次行こう、次 (ニッコリ)」
和衣:「う…うん。えと…えー…週1日? とか2日? 飲む人?」

(翔真が挙手)

翔真:「多分そんくらい……だと思う、けど…(それよりも手! その手、口から離してやんないの?)」
睦月:「ショウちゃん、部屋で飲む? 自分の」
翔真:「え? えっと…(とりあえず、千尋さんが口塞がれてんのはスルーなの? それでいいの?)部屋飲みもたまにはするけど、普段は部屋ではあんま飲まないかな…」
直央:「寮だけど、お部屋で飲んでいいの?」
翔真:「ダメていう決まりはないけど、酔っ払って騒ぐとクレーム来るよ、壁薄いから」
直央:「怒られた?」
翔真:「俺は言われたことないけど…、たまに廊下通ったときに、うるさい部屋とかあるから、あれ、隣の部屋のヤツ、迷惑だろうなぁとは思ってる」
遥希:「あれ、何で壁厚く出来ないのかな? 絶対みんな、壁が厚いほうがいいと思ってるはずなのに」
睦月:「防音? 防音の部屋とかあるよね?」
和衣:「やっぱ高いんじゃないの? そういう壁のを使って家建てると」
遥希:「そっか…」
翔真:「でも、普通のアパートでしょ? 住んでるの。だったらきっと、ウチの寮よりましだよ」
遥希:「そーかなぁ、結構聞こえるよ? 隣の部屋の音。てか、俺もだけど…。隣の部屋の人に、ちょっと怒られたことある…」
和衣:「あるんだ…(笑)」
睦月:「直央さんちは?」
直央:「え?」
睦月:「聞こえないの? 隣の部屋の音とか」
直央:「そういえば聞こえない」
遥希:「聞こえないでしょ。だってすごいマンションなんでしょ? 絶対防音だよ」
直央:「なのかなぁ? 単に、静かな人が住んでるんだと思ってたんだけど…」
翔真:「いや、いくら静かな人だって、たまには物音するよ。全然聞こえて来ないんだったら、やっぱ防音なんだよ」
直央:「そっか…(照)」

すいませーん、お酒のこと話してくださいー。

和衣:「あ、そうだ…。いつの間にか壁の話してた」
遥希:「すぐ話逸れちゃうね」
睦月:「それでいいんだよ」
翔真:「そう? いや、いいんだけど、全然話進まないよ?」
睦月:「それがいいんだよ」
遥希:「そう? (笑) ちなみに何がいいの?」
睦月:「『それ』」
直央:「どれ? (笑)」
和衣:「えと…先行くよ? 今、週1くらいを聞いたから…、月1? 2, 3回とか…………てか、そろそろ手を…」
遥希:「え?」
和衣:「手…」
遥希:「大丈夫、疲れてない」
直央:「そういうこと!?」
睦月:「『大丈夫、疲れてない』 (笑)」
翔真:「いや、もういい加減、離してあげて…」
遥希:「そぉ? 翔真くんがそう言うなら」
翔真:「えっ、俺!? いや、まぁいいけど…」
千尋:「………………」←ようやく口元から手を離してもらった
和衣:「千尋さん、大丈夫?」
千尋:「何でもっと早く『手を離せ』て言わないんだよ! 無視して話進めんなっ」
翔真:「(それでも振り解かなかったのは、この人の優しさかな…)」
遥希:「そういえば、ちーちゃんちも、隣の部屋の音、あんま聞こえないよね?」
直央:「壁の話に戻ってる…(笑)」
睦月:「それでいいんだよ」
直央:「(笑)」
遥希:「いや、みんな自分ちの壁のこと話したから、ちーちゃんも言いたいかなぁ、て思って」
千尋:「だったら口塞ぐな! てか、壁の話なんかしたくないよっ!」
翔真:「じゃあ、質問の続き……行こっか。えと…月1とか2, 3回とか飲む人ー」

(和衣、睦月が挙手)

和衣:「クラスの飲み会とかで飲む…かな。あとはあんまり飲まない」
遥希:「翔真くん、同じクラスなんでしょ? 一緒に飲まないの?」
和衣:「その飲み会以外で? 飲んだこともあるけど……そんなにない…。ショウちゃんて、誰とそんなに飲んでんの?」
千尋:「お前…、浮気を問い詰めるような…(笑)」
翔真:「(笑) 別に疾しいこととかないよ。一緒にバイトしてるヤツとかだし」
和衣:「バイトの人か…。送別会に出たことはあるけど、普段はバイトの人とは飲まないなぁ…。バイト終わった後、むっちゃんとご飯食べて帰ることあるけど、お酒飲まないもんね?」
睦月:「飲まない」
遥希:「ご飯食べて帰るのに、飲まないの? お酒」
睦月:「飲まない。大体spicaて、お酒置いてあったっけ?」
和衣:「分かんない。意識したことなかった」
千尋:「酒飲まないヤツて、そうだよな。そもそもメニューでアルコールのページ見ない…ていうか、アルコールがあるかどうか気にしてない」←チラッと遥希を見る
遥希:「…俺ももう、ご飯食べに行っても、ドリンクメニュー見ない」
千尋:「違うでしょ、ご飯は作るんでしょ?」
遥希:「…これからは毎日ご飯作るし、お酒も飲まない」
翔真:「突然の禁酒宣言」
千尋:「そんなに突然でもないよ。ハルちゃん、結構しょっちゅうお酒やめる、て言ってるもん。そのわりに、やめたこと1回もないけど」
遥希:「…なるべく飲まないようにする」
和衣:「もう撤回した (笑)」
睦月:「あとは直央さんだけだ」
翔真:「月1も飲まない?」
直央:「…ん、多分、飲んだことない」
遥希:「えっ、そうなの?」
千尋:「マジで?」
和衣:「飲めないの? でも1回は飲んでみないと、飲めるかどうか、分かんないよね?」
直央:「ん。だから飲めるかどうか分かんない、飲んだことないから」
遥希:「それは何? 何かあるの?」
直央:「何もない。ただ飲んだことないだけ」
千尋:「それはそれで別にいいんだけど、何でなのかは、ちょっと知りたい」
直央:「何でだろう、分かんない。ただ単に、飲もうて思ったことがなかった」
遥希:「すごい…」
翔真:「確かに、そもそも飲もうていう発想がない、ていうのはすごいな…」
直央:「そう? よく分かんない」

ちなみにみなさん、お酒は強いほうですか?

和衣:「強いかどうかって自分じゃ分かんないよね? 分かる? あ、分かるか、俺、あんま強くないや」
千尋:「何1人で喋って完結してんだよ (笑)」
和衣:「えへ (笑)」
遥希:「じゃあ、相手と比べてどうか、てことで答える? その3人(和衣・睦月・翔真)の中じゃ、誰が強いの?」
和衣:「俺ら?」
睦月:「ショウちゃんじゃないの?」
和衣:「ショウちゃんが酔っ払ったの、見たことない!」
翔真:「いや、酔っ払うよ、俺だって。そうなる前に、お前のが酔っ払うんだって。だから気付いてないだけだよ」
遥希:「じゃあ、この中だったら、翔真くんが1番強い?」
翔真:「この3人だったら……そうかも。俺より強い人、いくらでもいるけど。でも、むっちゃんはホントにお酒弱いかどうか分かんないよね」
睦月:「どーゆーこと?」
翔真:「だって、すぐ寝ちゃうじゃん」
和衣:「あー…」
遥希:「え、それは弱いんじゃないの?」
翔真:「いや、酔っ払って寝ちゃうんじゃなくて、ただ単に眠くて」
千尋:「は?」
睦月:「だって、飲み会て夜じゃん。だから、途中で眠くなる。お酒飲んでても飲んでなくても」
遥希:「飲んでなくても眠くなっちゃうの?」
睦月:「なっちゃう、夜だから」
遥希:「夜だから…(笑)」
和衣:「でも、むっちゃんて最初の1杯くらいだよね、お酒飲むの。後は大体コーラ飲んでるじゃん」
直央:「コーラ好きだって言ってたもんね、さっき」
睦月:「コーラ好き。いや、お酒飲めたほうが楽しいかな、て思って飲んでみるんだけど、そんなにおいしいのないし。何とか…ていうのを教えてもらったんだけど、もう忘れちゃった。前飲んでからだいぶ経つし」
千尋:「コークハイとかじゃないの? コーラ好きなら」
睦月:「分かんない…。全然思い出せない」
遥希:「じゃあ睦月くんは、もしかしたらもっと飲めるかもしれないけど、おいしいのがないから1杯しか飲まないし、しかも飲んでも飲まなくても途中で寝ちゃうんだ?」
睦月:「そう」
千尋:「確かにこれじゃ、酒が強いかどうか、全然分かんないな。試しに強いの飲んでみたら? 1杯しか飲まなくても、それなら酒に強いかどうか分かるよ?」
睦月:「どれが強いかとか分かんないんだけど…。てか、強いとか弱いもだけど、そもそも変な味だったら飲めないよ」
千尋:「面倒くさいから、お前は飲むな」
遥希:「和衣くんは? あんま強くない、て言ったっけ?」
和衣:「強くないと思う…。すぐ酔っ払っちゃうし。だから特に外で飲むときとか気を付けてる、飲み過ぎないように。だってあんまり酔っ払ったらみっともないし」
遥希:「………………」
千尋:「………………」
遥希:「…ちーちゃん、言いたいことあるなら言ってよ!」
千尋:「別にー」
和衣:「じゃあ、2人は? 遥希くんと千尋さんだったら、どっちが強いの? 千尋さん?」
千尋:「そんなことないよ、俺もそんなに強くない。毎日飲んでるハルちゃんのが強いよきっと」
遥希:「ちょっと待ってよ、 毎日飲んでないし! てか、ちーちゃんのが強いよ、絶対!」
千尋:「そんなことないって。俺、すぐ酔っ払っちゃうもん。ハルちゃんだって、俺が酔っ払ってんの見たことあるでしょ? しょっちゅうでしょ?」
遥希:「そうだけど…、でも飲んでる量が違うよ! ちーちゃん、すごいペース速いもん。同じくらいのペースで飲んでたら、絶対に俺のほうが先に酔っ払っちゃうよ!」
睦月:「じゃあ、やっぱ千尋さんのが強い?」
和衣:「さっきも、遥希さんが酔っ払ってお酒写真に零さないように気を付けてあげてた、て言ってたもんね。千尋さん、あんま酔わない?」
千尋:「あー…、あれはね。違うんだよ。ハルちゃん、水落のことになると、てんでダメだから。浮かれちゃって。だからそういうときはあんまり飲まないようにセーブしてんの、俺。だから、たまたまだよ。普通だったら、もう全然、俺なんて。ハルちゃんには全然敵わない」
遥希:「うー…!」
翔真:「(この2人は…。何ですぐこうなっちゃうんだろ…)」
睦月:「直央さんは……飲んだことないから、強いか弱いか、分かんないのか」
千尋:「いや、もしかしたら、すっごい強いのかもしれない」
和衣:「飲んでみないと、分かんないけどね」
千尋:「違うって。飲んだことないわけじゃないんだよ、飲んだことあるんだよ」
翔真:「どういうこと? だって、飲んだことないって本人が…」
千尋:「酒だって知らないで飲んじゃったんだけど、強すぎて全然酔っ払わないから、本人も、酒飲んだとか思ってないんじゃね? 飲んでるけど、飲んでないと思ってるとか」
遥希:「さすがにそれは…(笑)」
千尋:「でもコイツ、ボンヤリしてるから分かんないよ? 知らずに飲まされてるけど、全然普通で、気付いてないの、酒飲んでる、て」
翔真:「そんな…(笑)」
睦月:「そうなの? 直央さん」
直央:「分かんない…」
千尋:「本人に聞いたって分かんないって。自分じゃ飲んだことないって思ってんだから。飲ませたヤツに聞いてみないと」
遥希:「飲ませたヤツなんて、探し出せないじゃん (笑)。どうやって聞くの?」
千尋:「探し出せなくもないんじゃない? 心当たりあるヤツなんて、案外そばにいるかもよ?」
直央:「でも俺、友だち殆どいないから、一緒にご飯食べたりする人なんて、何人もいないよ?」
睦月:「何人?」
直央:「3人」
翔真:「さっ…」
千尋:「ッ! ケホッ、ケホッ…。これ、アレだな。俺から振っといて何だけど、あんま追及しないほうがいいヤツだな…」
遥希:「3人て……そんな即答できるのがすごい…」
直央:「徳永さんと純子さんと蓮沼さん。純子さんは、そんなにしょっちゅう一緒には食べないけど、食べたことはある」
和衣:「そ…そっかぁ…」
遥希:「次……行こっか…(笑)」



 今年も1年大変お世話になりました。
 長期休みやらブログ凍結やらで、お越しいただいている皆様には大変ご迷惑とご心配をおかけいたしました。心よりお詫び申し上げます。
 これからも、BLが好きな人が、楽しくお話を書いたり読んだりする環境が続くといいですね(*^_^*)
 よいお年を。
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