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愚かだということは分かっている (3)
「ヤ」
逃げようと思えば、先生の手を振り解いてでも逃げられるけど、そういう強硬な手に出ると、正直、何されるか分かんないから、出来れば穏便に済ませたい。
だって先生は、俺がメイドのコスプレしてる写真を持ってるし。他の人には見せない、ていう約束ぽいことはしてあるけど、先生の機嫌を損ねたら、腹いせに晒されちゃうかもしんない…。
「先生、」
「帰んないでよぉ、マナくん」
「ッ…」
何かこう…、子犬がうるうるっ…とした目で見上げてくるみたいに、先生が見つめてくるから、一瞬、心が揺らぎそうになったけれど、すぐに我に返る。
この人はかわいい子犬でも何でもない、頭がおかしい変態の大学講師なんだ。
「帰ります。先生、手…」
「ミキくん、さっきから何騒いでんのー? …ん?」
「!?」
何とか先生を説得しなきゃ…て思ってたら、リビングの奥のドアが開いて、誰か出て来た…!!
意味が分かんな過ぎて、ポカンとなる。でも、玄関はそっちじゃないから、その人は外からやって来たわけじゃなくて…………つまり、ずっとこの家の中にいたってこと…!?
「え…、は…?」
「ちょっ、森下も引き留めて! マナくんが帰っちゃうっ」
わけが分からないでいる俺を無視して、先生は俺の腕を掴んだまま、その男の人に声を掛けた。
つか今、『森下』つったよな? てことは、この人が森下さん…!?
「いるんじゃんっ!」
「え?」
思わず俺が突っ込むと、いきなり俺が大きな声を出したからか、慌てたふうな様子だった先生が、キョトンとなってこちらを見た。
いや、そりゃデカい声だって出すでしょ。だって俺は、森下さんが出張でいないから、ご飯を作るために呼ばれたんだから。森下さんがいるなら、俺が来る必要ないじゃん!
「先生、どういうことですか!?」
「何が?」
俺が声を荒げて問い詰めてみても、先生は全然分かっていない様子で小首を傾げている。
分かっててやってるのか、それとも本気で分かってないのか…………全然読めない。
「何がじゃなくて! 森下さんがいるなら、俺、別にご飯作りに来る必要なかったじゃないですか!」
「ぅ?」
初対面の森下さんに、こんな大きな声出してる姿を見られて、何なんだコイツ、とか思われるかもしんないけど、頭に来ちゃって、何かもう止めらんない。
俺だって、来たくてこんなところに来てるわけじゃないのに。約束が違う!
「ご飯…? あぁうん。マナくん、今日はご飯作んなくていーよ、森下いるし」
「は?」
「ホントはマナくんのご飯が食べたいけど、マナくんがご飯作ってくれるのは、森下がいないときだけだし…、だから今日はご飯作んなくていいよ? これ着て一緒に遊ぼ?」
「………………。はぁ~!?」
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愚かだということは分かっている (4)
俺は単に、森下さんがいないときに呼ばれて、ご飯を作ってやればいいだけだと思ってたけど、先生は、森下さんがいないときはご飯を作ってもらい、いるときはいるときで、コスプレとかさせて遊ぼうと考えてたってことか…!
「ホンット、バカだなアンタッ!」
「ぅ? 何で? 何で?」
もう何度も思ったことだけど、俺は声を張り上げた。
いや、もしかしたらバカなのは俺かもしれないけど、もうそう言う以外に、言葉が見当たらなかった。
「あっはっはっはっ」
「!?」
もーホントにっ! て地団駄を踏みたい気持ちでいたら、場の雰囲気に全然合わないバカ笑いがして、何事かと思って声のほうを見たら、森下さんだった。
な…何でそんな大爆笑…??
すべてが意味不明で、俺は何だか混乱してきて、怒りのボルテージが下がって来た。
だって、俺がこんなに腹を立ててるってのに、先生は全然堪えてないし、森下さんはすごい笑ってるし、俺だけ1人熱くなってるのが、恥ずかしい…。
「そんな……面と向かって、そこまで思いっ切り『バカ』とか言う人、初めて見た…!」
そう言いながら森下さんは、目に涙まで浮かべて、腹を抱えて笑ってる。
いや、確かに森下さんの言い分は間違っちゃいない。いい大人が、自分より目上の人に向かって、冗談でなくここまで本気でバカだと言うことなんて、普通あり得ないし。
でも森下さん、三木本先生と一緒に暮らしてて、この人がどんだけバカで頭おかしくて変態なのか、分かってるはずでしょ!? 俺がここまで言いたくなる気持ちも分かるでしょ!?
それとももしかして、一緒にい過ぎて、感覚鈍っちゃったんじゃ…!?
「つか森下! 何でもいいから、マナくんのこと引き留めて!」
こんななった原因のすべてがアンタだよ! てのに、先生はマイペースで、俺の腕を掴んで離さないまま、森下さんに怒鳴ってる。
もちろん最初からセーラー服なんて着る気はなかったけど、森下さんがいるなら、なおさら着れるわけがないのに、どうしても俺にセーラー服を着せるつもりなんだろうか。
「ねぇミキくん、引き留めるったって…、見るからにマナくん、すごい嫌そうにしてるけど…………何したの?」
「まだ何もしてねぇよ!」
「まだ、ね…」
先生の反論に、森下さんが微妙な顔になってる。
…うん、だよね。確かに先生は『まだ』何もしてないけど、手に持ってるそのセーラー服、俺に着せようとはしてるもんね。森下さんだって、それには気付いちゃうよね。
「えー…っと。もうすぐお昼になるから、マナくん、よかったら一緒に食べてく?」
先生に、俺のことを引き留めろと言われた森下さんが、とりあえず形だけ、俺を引き留めるような言葉を吐く。
森下さん的には、俺が帰ろうが残ろうが、どっちでもいいことだろうだけど、先生は引き留めろと言うし、でも俺は帰りたがってるから、そんなふうに言うしかないんだろうな。
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愚かだということは分かっている (5)
「ぅぬ~マナくん…」
先生のことを無視して、俺は森下さんに丁寧にそう答えて頭を下げれば、腕を掴んでる先生の手の力が、ちょっと強くなった。…ホントに俺のこと帰す気ないな。
つか、これで俺が無理にでも帰っちゃうと、引き留めろと言われていた森下さんは、一体どうなっちゃうんだろう。どうでもいいけど、何かご愁傷様。
「ねぇ~マナく~ん、何で帰っちゃうの? 一緒にご飯食べよ? 森下の作ったヤツだけど。ねっ?」
「嫌です」
「何で? 何がヤなの? 森下のご飯?」
「違います!」
さっき、セーラー服を着たくない、て言ったじゃん!
何で食べたこともない森下さんのご飯が、帰る理由になるんだよ!
「ミキくん…。恐らくミキくんがマナくんに着せたがっていると思われる、その手にしているものが原因だということを、そろそろ認めようよ」
「グ…」
このままじゃ切りがないと思ったからか、森下さんが、遠回しというか、わざとらしくというか、何かちょっと鬱陶しい感じでフォローしてくれた。
三木本先生が相当変だから分かりにくいけど、森下さんもちょっと変なのかな。それとも、三木本先生には普通に言っても通じないから、こういうふうにしか言えないんだろうか。
「だってさ、森下だって見たいでしょ? マナくんがこれ着たトコ」
「………………。えー……っと。俺、それに何て答えたら正解なんだろ」
「自分の気持ちを素直に言ったらいいんだよ!」
片手は俺の腕を掴んだまま、もう一方の手に持ってたセーラー服を森下さんに突き付けて、先生はまた意味分かんないことを言っている。当然森下さんは、何とも言い難い表情になるわけで。
森下さん、何て答える気だろう。
「そうだなぁ…………ぜんっぜん見たくない」
「ちょっ森下っバカ!」
ちょっと読めない感じの森下さんが何て言うのかと思ってたら、俺にとってはとてもありがたい返事をしてくれた。
もちろん先生は1人で慌てて、しかも森下さんを蹴っ飛ばそうとしてるけど、森下さんという味方が付いたのだ。怖いものはない。
「ホラ先生、森下さんも見たくないて言ってるし、俺、やっぱり帰ります」
「ぬぁ~~~~!!!」
俺の言葉だけじゃ先生は納得しないけど、森下さんもそう言ってくれれば、先生だって諦めないわけにはいかないだろう。
そう思ってホッとした――――のも束の間。
「まぁまぁマナくん。セーラー服はともかく、ご飯食べてったら? もうお昼だし」
「ちょっ森下さん…!」
何でそんな余計なこと付け加えるんだよ、森下さん! 俺は、もちろんセーラー服なんか着たくないけど、それだけじゃなくて、一刻も早くここから立ち去りたいのに!
ホラ、森下さんがそんなこと言うから、悔しそうな顔をしてた先生が、さっそく目を輝かせてるじゃんか!
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愚かだということは分かっている (6)
「ちょっ!」
結局はどちらか一方の味方ではなかった森下さんが、またしても俺を引き留めるような言葉を吐いたものだから、先生がここぞとばかりに俺の腕を引っ張った。
絶対に、『セーラー服はともかく』なんて思ってないくせに…!
「つかさ、ミキくん。さっきから『森下が作ったのだけど』て、俺のご飯、そんなに嫌なの~? しょっちゅう食べてるくせに~」
口の悪い先生に、森下さんは眉を下げてるけど……問題はそこじゃねぇよ、森下さん!
俺がこれだけ帰りたがってんの、感じ取ってるでしょ!? 何とかしてよっ!
「俺は森下のメシより、マナくんが作ったのが食べたいの!」
俺の腕を離さないまま、先生が森下さんに噛み付いてる。
それにしても、いっつもご飯作ってくれてる人を前にして、よくここまで言えるよな。
「…つか、作りませんよ?」
また、俺にメシを作れ、て話に戻って来たので、即行で拒絶する。
いくら褒めようがおだてようが…………脅そうが、もう先生にご飯は作らないんだ。
「分かってるよぉ。今日は森下のご飯で我慢する、てば!」
「今日て……今日だけじゃなくて、これから先も、もうずっと作りません」
「何で!?」
俺の腕にくっ付いてる先生に、嫌そうに申し出たら、まさに『ガーン』ていう顔で先生は固まった。
でも悪いけど、俺はもう2度と先生のためにご飯なんか作んないし、コスプレもしないし、ここにも来ないんだから!
「ちょっそんな…、じゃあ俺はこれから何食べてってったらいいの…?」
「森下さんが作ってくれるでしょ」
「森下がいないときは?」
「知りません」
最初は、森下さんが出張とかでいないときは、ご飯を作りに…ていう約束みたいなことをしたけど、もうそんなの知ったこっちゃない。
絶対に先生のために料理なんかするもんか。
「そんな…、マナくんは一体俺の何が嫌なの…?」
「全部です」
「に゛!?」
相手は先生だけど、俺はここぞとばかりに言ってやった。
何が嫌かって言ったら、その疲れる性格と変態なところと……とにかく全部だ。
「あははっ、マナくん、おもしろいねぇ」
「おもしろくねぇっ! 死ね森下っ!」
俺は不機嫌マックスだってのに、森下さんはまた笑い出すし(大人なのに、空気読めないの…?)、そのせいで先生もギャーギャー騒ぎ出すしで、大変だ。
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愚かだということは分かっている (7)
「ヤダ!」
「ヤダじゃねぇよ、離せっ!」
しがみ付いてくる先生を引き剥がそうとするけど、先生はますます腕に力を込めてくる。
「森下! ボケッと突っ立ってないで、何とかしろっ!」
「森下さんっ! この人、何とかしてくださいっ!」
今のところどっちの味方でもない森下さんが、先生のほうに付いちゃうと、俺の分が悪くなっちゃうから、俺も負けじと森下さんに助けを求める。
森下さんがどれだけ役に立つかは分かんないけど、とりあえず2対1のほうが有利だと思う。
「森下!」
「森下さんっ!」
2人して、森下さんのことを呼ぶ。
でも、さすがこんな変な先生と同居してるだけあって、森下さんも普通の人じゃなかった。
「え、えー? 何もう2人してー。そんなに俺のこと好きなの~?」
「「アホかっ!!」」
思わず森下さんに突っ込んだら、先生もまったく同じタイミングで、同じセリフを吐いたもんだから、思い切りハモった。
何かムカつくけど、今ばかりは息が合うのも仕方がない。
「バカか、ホント。死ねよ森下」
「もうミキくんてばぁ」
先生の辛辣な言葉にも、森下さんはヘラヘラ笑ってる。
俺は何も言わなかったけど、心の中は、先生の言葉と同じ気持ちだ。先生もかなり疲れるけど、この森下さんも、相当面倒くさい…。
「先生、」
「マナくん、帰っちゃヤダ」
「…………」
離して、と続けようとした俺の言葉は、先生の言葉に遮られる。きっと俺が、ここでご飯を食べてく、て言わない限り、ずっとこの繰り返しなんだろう。
…結局は俺が諦めないといけないんだ。先生の言いなりにはなりたくないのに、言うことを聞かないと、帰るにも帰れなくて。
「…分かりました。ご飯、食べてけばいいんでしょ?」
「ヤッター! マナくん大好きっ!」
「抱き付くなっ!」
あぁもう。結局こうなった。
…先生のしつこさに勝てないのが、究極の敗因だ。
愚かだということは分かっている
(…森下さんのご飯、俺が作るのより、よっぽどうまいんですけど…)
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (1)
(point of view : morishita)
何て言うか…。
「だーかーらー! もう帰る、つってんだろ!」
「何で! これ着てよぉ!」
「着るか、バカっ!」
おもしろい人たちだなぁ…、この2人。
「森下! 何とかしろっ!」
「森下さんっ!」
助けを求めて俺を呼ぶのは、ミキくんとマナくん。
来た瞬間から帰りたがってるマナくんを、何とかご飯食べてくところまでは引き留めたんだけど、食べ終わった途端、マナくんが『もう帰る』と言い出したから、この騒ぎ。
そりゃ、コスプレが趣味でもない大学生男子が、セーラー服着てくれ、て男から迫られたら、この反応するよな。
俺としては、どっちの味方にもなる気はないから、とりあえず黙って見守ってるんだけど。
でも、これでマナくんがこのまま帰っちゃったら、ミキくんが大変機嫌を損ねて、俺まで被害を受けそうだから、ミキくんを応援したほうがいいんだろうか。
だけど、今どきの若者に恨みを買うのも、何か怖そうだしなぁ…。
ちなみにマナくんは、ミキくんが講師してる大学の学生で、なぜかミキくんに目を付けられちゃった、かわいそうな子。
この間、俺が出張でいないときに、メイドさんの格好をさせられ、オムライスを作らされる羽目になったらしい。しかもその姿を、スマホにバッチリと収められてる、ていうね…。
その写真は他の人に見せない約束になってるらしく、ミキくんもその約束を一応は守ってるみたいなんだけど、俺の口車に乗せられちゃったせいで、俺には見せてるんだよね。
今はマナくんの手前、俺はそのときの事情を何も知らないという体で、今日ここに呼ばれたマナくんが、初めてコスプレというものをさせられそうになり、それがセーラー服ときたものだから、ひどく嫌がっているのだ、と思っていることにしている。
もちろんコスプレは嫌なんだろうけど、それ以上に、ミキくんの性格とか性癖とかがいろいろ嫌なんだろうことは、分かるけど。
「マナくぅん、これ着てよぉ~」
「何で! 先生さっき、着なくていい、つったじゃないですか!」
「言ってないもん、そんなこと!」
いい年して『もん』とか、ミキくん…。そんなんで大学講師とか、勤まるの?
でもまぁ確かに、さっきミキくんは、『セーラー服はともかく』て言っただけで、『セーラー服は着なくていい』とは言ってないよね。うーん、言葉って難しいなぁ。
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (2)
「先生と生徒ごっこする気」
「しねぇよ!」
至極まっとうなマナくんからの質問に、真顔で変態なことを答えてるミキくん。
つか、『先生と生徒ごっこ』て何だよ。
何かエロい方面のこと思い浮かべがちだけど、前にメイドさんのコスプレさせたとき、ご飯を作ってもらっただけのことを考えると、そういうことじゃないんだろうなぁ。
「ねぇねぇミキくん」
ずっと傍観者でいるのにも飽きたんで、とりあえず声を掛けてみれば、「あぁんっ?」と、すっげー柄悪くミキくんが振り返った。
何この、俺の嫌われっぷり。
「ミキくんてさ、マナくんにそのセーラー服着せたいの? それとも、先生と生徒ごっこやりたいの? どっち?」
「はぁ? 何言ってんの、お前」
尋ねたら、ミキくんが呆れたように言って来た。
いや、でも俺にしたら、ずっと疑問に思ってたことなんだけど。
「だって、先生と生徒ごっこやりたいだけなら、こんなに嫌がってるマナくんにセーラー服着せなくたって、ミキくんがセーラー服着て、生徒になればいいじゃない」
「違ぇよ、バカ森下。マナくんが生徒役やんなくちゃ意味ないの!」
「…そうなの?」
いや…、マナくんが生徒役やるんだとしても、その先生と生徒ごっこに何か意味があるとは思えないけど…。
「じゃあ、何でセーラー服なの?」
「かわいいから」
そもそもマナくんは男で、制服にだって男物と女物の2種類がある中で、何でわざわざセーラー服なんだろう、て思って尋ねれば、ミキくんは至極真面目な顔でそう答えた。
見たところ、マナくんもミキくんも化粧道具を持ってないみたいだから、マナくんはまたすっぴんでそのセーラー服を着ることになるんだろうけど…………かわいいか?
「俺は、セーラー服を着たマナくんと、先生と生徒ごっこがしたい」
「…………あ、そう…」
相変わらず変態だなぁ、ミキくん。
前にもメイドさんの格好をさせられてるから、マナくんだってミキくんが変態なことは分かってると思うけど、改めてそれを確信したのか、今の発言にドン引きしてる。
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (3)
「あー……」
とうとう目を潤ませちゃったマナくんが、必死に俺に助けを求めてくる。
でもそれはヤバいよ、マナくん。ミキくん、そういう顔大好きだからね。ますます君のこと気に入っちゃうよ――――て、あ、もうミキくんの顔付きが違う。
「ッッッ、、、マナくん、かわいいっ!!」
「ギャ~~~~~!!!」
…ホラね。
嫌がるマナくんを無視して、ミキくんがむぎゅ~~とマナくんに抱き付いてる。
「離せぇ~~~~!!!」
「ヤダかわいいぃ~~~!!」
案の定、マナくんはミキくんを引き剥がそうと必死だけど、そんな邪険に扱われてるのに、ミキくんはすっごい笑顔。
何かもう…今のままでも十分楽しそうだけど…………それでもミキくん、先生と生徒ごっこやりたいの?
大体、元からミキくんは大学の先生で、マナくんはその大学の学生なんだから、わざわざ『ごっこ』をしなくたって、すでにその関係性は出来上がってんじゃん。
「あのさぁー」
別にどっちかだけを助けるつもりはないし、2人のやり取りを見てるのもおもしろいんだけど。
でも、そろそろ間に入ったほうがいいかな、て思って声を掛けてみたら、ミキくんはすごく嫌そうな顔で、マナくんは縋るような目で、俺のほうを見た。
とりあえず、マナくんのほうから助けてみるか。
「ミキくん、それ以上やってると、本気でマナくんに嫌われちゃうよ?」
「えっ…」
もうすでに、十分嫌われてるかもしんないけど、いきなりそこまで言うのはかわいそうかなぁ…て思って、ちょっと手前の加減で言ってあげる。
それでもミキくんには効果絶大だったみたいで、口をあんぐり開けて固まってしまった。まさか、これだけやってて、嫌われないとでも思ってたんだろうか。
「俺、マナくんに嫌われたくない…」
俺の言葉を納得したらしいミキくんが、おずおずとマナくんから手を離せば、マナくんはあからさまにホッとした様子で俺を見た。
でもね、俺は君だけを助けるつもりはないんだよ? だって、ミキくんの機嫌損ねると、俺も被害受けちゃうからね。
「てことで、マナくん。ミキくんのこと、嫌いになんないでくれるよね?」
「えっ!?」
ニッコリ。笑顔でマナくんに問い掛ける。
一応、質問するみたいな言い方はしてるけど、『はい』以外の返事は認めない、そんな口調で。
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (4)
「ぅん? ミキくん、マナくんのこと、すごい気に入ってるみたいだし、嫌われたくないみたいだから。今日、もういい加減にしてあげたら、嫌いにならないでくれるかな、て思って。いいよね?」
「それは…」
味方だと思っていた俺が、ミキくんをフォローするようなことを言い出したせいか、今度はマナくんが固まっちゃった。ヤダな。俺、さっきも中立の立場だったじゃない。
だって、このくらいのことを言っておかないと、後でミキくんに、『お前のせいでマナくんが帰った』とか『お前のせいでマナくんに嫌われた』とか、言われかねないからさ。
「いいよね? お願い」
そこで、ダメ押しの笑顔でお願い。
嫌々ながらも、メイドさんの格好したり、今日またここに来たりするマナくんは、押しに弱い性格なんだろう。ミキくんだけじゃなくて、俺からもそんなこと言われたら、断り切れないはずだ。
「マナくん」
「…分かりました」
もうちょっと抵抗するかと思ったのに、笑顔で名前を呼んだら、マナくんはあっさりと承諾してくれた。
初対面の俺には、ミキくんに言うように、噛み付くことが出来なかったのかな。それとも、俺にこんなこと言われると思わなかったから、言い出せなかったの?
まぁどっちでもいい。本題はこれからだ。
「あ、それと俺、来週また出張でいないんだよね」
形勢がこちらに有利なうちに、サラッと切り出す。
困惑してるマナくんに、追い打ちをかけるみたいだけど、しょうがない。
「来週…?」
「そう。だから、ご飯作りに来てあげてくれない? ミキくんのこと嫌いじゃないなら、いいよね?」
「えっ…」
俺の言葉に、マナくんはすっかり動揺してるみたいだ。
たった今、ミキくんのことを嫌いにならないで、ていうお願いに、わけも分からぬまま返事をしてしまったばかりなのに、もう来週のことにまで話が進んじゃってるもんね。そりゃ動揺するわ。
「マナくん、来週来てくれるの!?」
「いや、ちょっ」
まだマナくんは何の返事もしてないのに、ミキくんはもうその気になっちゃったみたいで、嬉しそうな顔になってる。
こうなるとミキくんがしつこいのは、きっとマナくんも分かっているに違いない。下手したら、来週も来るて約束をしない限り、今日は帰してもらえないかもしれないことも。
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (5)
「そうじゃないですけどっ、でも俺が来なくたって、どうにでもなるでしょっ…?」
もう俺は頼れないと思ったのか、マナくんは俺じゃなくて、直接ミキくんと対決しようとしてる。
でも別に、用事はないとか、そんなの正直に言わなくたって、適当に言って断っちゃえばいいのに。そう出来ない性格なのかな。なのに俺、こんなこと言っちゃって…………悪い大人だなぁ。
「でもマナくんに来てほしい~。俺、マナくんのご飯食べたいの」
「それはっ…」
焦ってるマナくんの腕に纏わり付ながら、ミキくんは、下からその顔を覗き込んでる。
あ、ミキくんのその仕草、完全に計算だな。うーん…、いい大人がかわい子ぶってもなぁ…。
「お願ぁ~い」
「ど…どうしても、来ないとダメ、ですか…?」
あらら。かわい子ぶってるミキくん、俺的にはかなりの萎えポイントだったんだけど、マナくんには効果あったのかな。何か流され掛けてる。
押しに弱いというか……絆されやすいのかな。子犬とか捨てられてたら、絶対に放っておけないタイプだな。
「ね、マナくん、いいでしょ~?」
「でも…」
ピンクのセーラー服を手にしたミキくんが、懸命に『お願いビーム』を放出してる。何か…すっごい分かりやすい、ぶりっこキャラのアイドルみたいで、ちょっとキモい。
でも、マナくん、心は揺れ動いてるみたいだけど、なかなかすんなり『うん』とは言ってくれない。俺にはその原因、分かってるけど、果たしてミキくんは気付くんだろうか。
「ねぇねぇ、ミキくん」
「あぁん?」
ミキくんじゃ、きっと一生掛かっても分からないだろうな、て思って声を掛けたら、思い切り睨まれた(だから、俺に対する態度…!)。
でも俺は優しいから、教えてあげるよ。
「あのさぁミキくん。多分マナくんは、来週来たら、またそのセーラー服を着させられそうになるんじゃないかと思って、答えを渋ってるんだと思うよ?」
「え、」
まぁ、マナくんが嫌がってる理由はそれだけじゃないだろうけど、とりあえず来週来ることを渋る原因の1つではある。
一応今は、もういい加減にする、てことにはなって、そのセーラー服を着るよう迫らせることはなくなったけど、それが来週まで有効とは限らないからね。
しかも来週は、ミキくんと2人きりなわけだし。
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (6)
やっぱり気付いてなかったの? そんなの持ったまま、ご飯作るだけでいいから来て、て言われたって、絶対信用ならないでしょ。100%それ着せられる、て思うってば。
「マナくん、セーラー服、ヤなの…?」
「ずっとそう言ってるよっ」
ミキくんが本気で分かってなかったことを知って、マナくんがキレてる。
今まであれだけのやり取りしてて、今さらこんなこと言われたんじゃ、そりゃキレたくもなる。でもミキくんの場合、とぼけてるんじゃなくて、相手が嫌がってるなんて、本気で気付いてないこと多いからね。
俺、この後に続くミキくんの言葉、何となく想像できる。
「じゃあ、セーラー服じゃなかったら、何がいい? 俺、来週までに用意しとく!」
…やっぱりね。
ここで、マナくんがコスプレ自体を嫌がってることが分かんないトコが、ミキくんなんだよね。自分がやらせようとしてることを、人が嫌がるなんて、ゆめゆめ思ってないんだろうな。
うーん、そういう図太い思考て、生きていくには楽かもね。真似はしたくないけど。
「ねぇマナくん、何着たい?」
「何も着ねぇよっ!」
「え、裸っ!?」
「バカかっ!」
ミキくんの突拍子もない発想に、マナくんは地団太を踏んでる。
ここまで物分かりの悪い人て、そういないもんね。そりゃ地団駄も踏みたくなるよね。
「コスプレをしたくねぇんだよっ!」
「そうなの? だってマナくん、メイドさ…ングッ!」
「余計なこと言うんじゃねぇよ!」
ミキくんが言い掛けたところで、マナくんがミキくんの口を両手で塞いだ。…まぁ、聞こえたけどね。
こないだメイドさんの格好でご飯作らされたことは、ミキくんからは聞いてるけど、一応俺は知らないことになってるから、今も聞こえなかったことにしておこう。
「マナくんてさぁ、やっぱ怒ると口が悪くなるよね。ギャップ萌え?」
「ッッッ~~~~~!!!」
口から手が外されると、ミキくんはまた火に油を注ぐようなことを言い出す。
マナくんがこれだけ怒ってるのに、よくもまぁ、そんな全然見当違いなこと言えるなぁ、ミキくん。俺も大概空気読めないとか言われるけど、今のミキくんには敵わないよ。
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (7)
もうここには来たくないマナくんを、俺が何とか説得するたびに、肝心のミキくんがマナくんの気持ちを逆撫でする、ていう。
もしかしてミキくんて、もちろんマナくんにまたここに来てほしがってはいるけど、それよりも、今みたいなこのやり取りを楽しんでんじゃないだろうか。
そうじゃなきゃ、ここまでの行動て、なかなか取れないと思う。
でも、いよいよミキくんとじゃ会話が成り立たなくなってきてるから、しょうがない、また口を挟んでみるか。
「ーじゃあさ、とりあえずマナくんは、コスプレさえしなくていいなら、また来てくれる、てことだよね? 結論からすると」
「えっ…」
マナくんの結論的には、『コスプレに関係なく、もうここには来たくない』なんだろうけど。
分かっててわざと都合のいいふうに解釈してみれば、マナくんは当然ながら困惑した表情になったけど、意外にもすぐに拒絶の言葉は出て来なかった。
あぁ、ただ『嫌だ』て言うだけじゃ、ミキくんがしつこく食い下がってくるのが分かってるから、言葉に詰まっちゃったの?
でも、弱みに付け込むみたいで悪いけど、何も言わないなら、俺は一気に畳み掛けちゃうよ?
「来週来てくれる、てことでいいんだよね? ありがとう」
「…………、はい…」
念を押すようにもう1度繰り返すと、マナくんは呆然としながらも頷いた。
…つか、オッケーしてくれたのは有り難いし、そのつもりで言ったんだけど、何で俺にはこんなに素直なのよ、マナくん。逆に怖いよ。
ミキくんが変態で嫌だから、抵抗したくなるのは分かるけど、今俺に返事した内容は、そのミキくんのところに、来週また来る、て内容だよ? ホントにいいの?
「ヤッター! マナくん大好きっ!」
「抱き付くなぁ~~~!!」
言った俺ですら、マナくんの素直さにちょっと驚いてるくらいなのに、俺の苦労も、マナくんの葛藤もまったく分かっていないミキくんは、子どもみたいに無邪気に喜んでる。
で、どさくさに紛れてマナくんに抱き付いて、すっごい嫌がられてるし。
「つかっ! 来週来ることは来ますけど、もし、ちょっとでもコスプレさせようとしたら、すぐ帰りますからねっ!」
「メイドさんも?」
「当たり前だっ!」
嫌々ながらも、来週の約束を取り付けてしまったマナくんが、きっぱりとミキくんにそう宣言する。もちろんミキくんは多少食い下がってみるけど、今度こそマナくんは折れない。
俺としても、コスプレしないなら来てくれるよね? てことでマナくんにオッケーさせた手前、これ以上は何も言えないなぁ、て思って、黙ってる。
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世界の危機を救うヒーローにはなれない (8)
だって、押しに弱いマナくんは、今のところ最終的には絆されちゃってるけど、ミキくんがいつもこんな調子じゃ、いつかミキくんのことを見限るか、キレるか……どうにかはなる。
そうなったら、もうここには本当に来てくれなくなるでしょ?
別に俺は、そこまでマナくん自身には興味ないけど、マナくんが本当にミキくんのこと見捨てちゃったら、絶対に俺までとばっちり食うからさ。それだけは避けたいわけ。
それに、こうやってミキくんとマナくんのやり取りを見てる分には、おもしろいし飽きないとは思うからね(マナくんには悪いけど)。
「でもマナくん、俺のためにご飯は作ってくれるんだよね?」
「…はい」
「今日も」
「今日?」
約束は約束だから、まっとうするつもりらしく、マナくんはミキくんの再度の念押しにも頷いたが(真面目…)、その後に付け加えられた言葉には、眉を寄せた。
「今日が何ですか?」
「ご飯」
「さっき食ったじゃないですか」
「夜ご飯」
「……」
さっき昼飯食ったばっかなのに、もう夕食の話を始めるミキくんに、マナくんはもちろん、さすがの俺も閉口した。
まぁ…、要はまだマナくんに帰ってほしくない、てわけね。
「冗談じゃないっ、もう帰るに決まってんだろっ!」
「何で? 一緒に遊ぼうよぉ。先生と生徒ごっこじゃなくてもいいから。そんで夜ご飯一緒に食べよ?」
そういえばマナくんが来てから、昼飯を食う以外は、セーラー服を着るだの着ないだの、そんな言い合いをしてただけで、他には何もしてなかったっけ。
俺もそれに付き合ってたんだから、どうこう言える立場じゃないけど、よくもまぁこんな無為なことに時間を費やせるなぁ。
「まぁまぁミキくん。マナくんとのご飯は、来週のお楽しみ、てことにしておきなよ」
「お楽しみ…。じゃあ、もんのすごい楽しみにしてていい?」
どっちの味方もしないつもりが、結果的にミキくんの肩を持つ感じになっちゃったから、ちょっとはマナくんも庇ってあげないと…て思って言ってみたんだけど、かえってミキくんの変態心を燃え上がらせちゃった?
でもしょうがないよ、ミキくんてこういう人だもん。
「楽しみに、て……ご飯作るだけ…」
「マナくん、俺、来週すっごい楽しみにしてるねっ」
「…………」
マナくんが蒼褪めながら念を押そうとしたけれど、ミキくんはまるで聞こえていない様子で、すっごい目をキラキラさせながら笑顔を向けるから、マナくんは言葉を失ってしまったようだ。
あー、これは来週、コスプレから逃れられたけど、ただ食事を作るだけじゃ済まないことは確定しちゃったぽいな。
ご愁傷様。
世界の危機を救うヒーローにはなれない
「んふふ、マナくんに何してもらおっかなー」
「…マナくん、やっぱり早めにミキくんのこと見限ったほうが…」
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あなたの思うがまま (1)
(point of view : mikimoto)
仕事終わって帰ろうと思ったら、今日から森下が出張でいないんだってこと、思い出した。
森下がいなくても、メシは食って帰ればいいけど、セックスしてぇなぁ、て思ってたから、なーんか当てが外れた、て感じ。
「しょうがねぇなぁ…」
とりあえずスマホを出して、アドレス帳を確認。
誰でもいいんだけど、有沢の名前が一番上にあったから、有沢に電話してみる。
有沢は、2年くらい前にクラブで出会った男。
出会った…てか、ナンパされたんだけど。イケメンだし、まぁいっかーて思ってホテル行ったら、セックスもうまくて、そっから何か続いてんだよね。あ、体の関係が。
森下よりノリが軽いのが楽でいいけど、森下ほど従順じゃないのが面倒くさい。
『もしもーし。ミキちゃん、どうしたの~?』
2コールで電話は繋がり、有沢の能天気そうな声がする。
つか、ミキちゃん言うな。キモイ。
「メシ食ってセックスしたい」
『相変わらず直球だね。メシとセックス、どっち先がいいの?』
「セックス」
俺は車に乗り込んで、今1人だけど、電話の向こうは何かざわざわしてるから、有沢はきっと外にいるんだろう。
なのに、そんなこと普通に聞いてくる有沢は、きっと俺と同じくらい変態なんだと思う。
『オッケ。俺、今家に向かってるトコだから、俺んちおいで?』
何も聞かずに俺の都合を優先してくれる有沢は、いいヤツだ。
思いどおりになった俺は、満足してエンジンを掛けると、車を走らせた。
*****
有沢のマンションの近くにある駐車場に車を停めて歩き出したら、サングラス掛けてカッコつけてんのに、スーパーだかコンビニの買い物袋下げてる有沢を発見した。
つかお前、仕事帰りじゃねぇの? 何でサングラスなんかしてんだよ。しかも、その格好で仕事行ってるとは思えないくらい、私服感が満載の服着てるし。
でも俺、有沢と出会ってから2年も経つのに、コイツが何してるヤツなのか知らない。まぁ、これからご出勤じゃないてことは、夜のお仕事ではなさそうだけど。
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あなたの思うがまま (2)
「あ、ミキちゃん、いらっしゃーい」
背後から有沢に声を掛けたら、まだ部屋まで行ってないのに、『いらっしゃい』とか言われた。
変なヤツ。
「ワイシャツ姿のミキちゃんて、何かストイックな感じで、逆にエロいね」
「何それ。変態」
「ミキちゃんに言われたくないんですけど」
今日は学校出て、そのまま有沢んちに来たから、白衣を脱いだだけでの格好だ。
でも別にスーツの下に着るようなワイシャツじゃなくって、わりとカジュアル目だし、ネクタイしてるわけでもないし…………ストイックか?
「お前は、仕事帰りとは思えない格好だけどな。ゲーノージンか、つの」
「何~? 俺、そんなに格好いい~?」
「死ね」
調子に乗ってる有沢を睨み付けて、エレヴェータに乗り込む。
有沢が乗る前にドアを閉めてやろうとボタンを押したけど、間に合わなくて、有沢が閉まりかけのドアに挟まった。だっせ。
「何でそんな意地悪すんの、ミキちゃん…」
「何が?」
知らないふりですっとぼけると、有沢の溜め息が聞こえる。
チラッと横目で見たら、何か唇尖らせてて…………拗ねてんのかな? かわいいヤツ。俺は有沢の手を取って、指を絡ませた。
「ちょっ、ミキちゃん!?」
「なぁに?」
有沢の焦った声に、俺はニヤリと笑って見せる。
サングラスの向こうの有沢の目が泳いでる。エレヴェータの中、確かに防犯カメラくらい付いてるだろうけど、とりあえず2人きりだし、手繋いでるだけだし、そんなに焦んなくてもな。
「グフ」
「…ッ、」
有沢は何か言いたそうにしてたけど、結局何も言わないうちに、エレヴェータが到着した。
俺は有沢から手を離して、さっさとエレヴェータを降りる――――と、後ろからガシッと手を掴まれて、何かと思ったらそれは有沢で、そのまま俺を追い越して歩いてくから、俺は有沢に引っ張られるように連れて行かれる。
「ちょっ…何だよ、痛ぇよ、有沢!」
振り解こうとしたら、逆に有沢の手に力が籠って、手が痛くなったから、やめた。
何だよ、ちょっとからかっただけじゃん。そんなに怒ることねぇのに。バカ。
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あなたの思うがまま (3)
そのまま有沢の部屋に連れ込まれ、ドアが閉まったかと思うと、電気も点けない、靴も脱がないその場所で、ドアに背中を押し付けられて、キスされた。
ガサリと何かが落ちる音がして、視線を向ければ、有沢が持ってた買い物袋が床に落ちてる。
何だよ、エレヴェータの中で手繋いだだけなのに、そんだけで余裕なくすなよ。思春期か!
「ちょっ…」
有沢の片手は俺の手首を掴んだまま、もう一方の手は俺のベルトのバックルに掛かった。
え、ここでやる気?
別に、絶対にベッドじゃなきゃヤダとかはねぇけど、フローリングは腰とか膝とか痛いからヤなんだよなぁ。それに玄関だと、最悪コンクリの上てこともあるし。
コイツ、それ知ってんのに、何でこんなトコで盛ってんだよ。あ、立ったままヤる、てこと? それならまぁ、いいっちゃーいいけど……疲れそうだなぁ。
大体さぁ、玄関でヤったら、外に声聞こえね?
「ミキちゃん、何考えてんの…?」
「は? それはこっちのセリフなんですけど。有沢くんこそ、何考えてんですか?」
「いや…そういう意味じゃなくて、今何考えてたの? キスしてるとき。全然集中してない」
こんなトコで、お前のほうから仕掛けて来たくせに、『何考えてんの』とか、何で逆ギレしてんだよ、て思ったら、そういうことじゃなくて、言葉どおりの質問だったらしい。
まぁ確かに、キスには集中してなかった。ゴメン。
「ねぇ…」
「えー、このまま玄関ですんのかなぁ、とか考えてた」
「…ヤダ?」
「ヤダ――――て、おい!」
ヤダつってんのに、有沢は首筋に舌を這わせながら、俺のシャツをズボンから引き抜こうとしてる。
てめぇ、俺の言うこと聞けよっ。
「いいじゃん。ミキちゃんだって、すぐシタいでしょ?」
「ざけんなっ…」
俺が何言っても、このままヤる気なんだったら、『ヤダ?』とか聞くんじゃねぇよ。ったく、ちょっとリードされると、すぐムキになんだから。ガキだな、ホント。
つか、最終的に玄関でヤることになったらなったでいいけど、俺の意見が無視されんのがおもしろくない。
ムカついて有沢を睨んだけど、その直後にいいことを思い付いて、俺はキスに応えつつ、有沢のサングラスを外して床へ投げると、ズボンの上から有沢のチンコに触った。
俺がノッて来たと思ったのか、有沢は満足そうな顔で俺を見たけど、調子に乗ってられんのも今のうち。お前の思いどおりになんかさせねぇんだよ。
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あなたの思うがまま (4)
ホントは何も聞こえなかったけど、少しだけ唇を離して、心配そうな表情を作って有沢に言った。
いくらいいマンションとはいえ、本格的な防音マンションじゃないから、今みたいに玄関のドアに引っ付いてる状態なら、外の物音くらい聞こえてくるはず。
逆に言うと、玄関先で声上げたら、外に丸聞こえ、てこと。
「あぁ、だからミキちゃん、ここでヤんのヤダったの? 外に声聞こえちゃうから?」
俺が玄関でヤるのを嫌がる理由を、外に声が聞こえるからだと思い込んらしい有沢が、ニヤリと笑ってみせた。あっさり引っ掛かりやがって。ホント単純だな。
これで俺より優位に立てたとでも思ってんのか? 恥ずかしいからやめてくれ、て俺が泣いて縋るとでも?
「フフン」
「え?」
俺は鼻で笑って、有沢のズボンの前を寛げると、そこに手を突っ込んだ。
俺の行動が予想とは違っていたからだろう、有沢はギョッとした顔で俺を見た。
「有沢、お前さぁ、ここがどこだか分かってんの?」
「は?」
「別にここ、俺んちじゃねぇし。隣近所に声聞かれたところで、俺、ぜーんぜん恥ずかしくなんかねぇよ? 何なら、めっちゃ喘いで、隣の部屋の人とかに聞かせちゃおっか?」
「ッ…」
――――そう。玄関先でセックスして、隣の部屋の人とか、外の廊下を通る人とかに声聞かれちゃったところで、この部屋の住人じゃない俺には、何も関係ない。
そもそも隣人の顔も知らねぇし、出くわしたところで、その場限りだ。
でも、ここで生活してる有沢にしたら、そういうわけにはいかねぇよな? 何でもない振りだって出来るだろうけど、出来れば知られたくない部分だろうし。
「有沢、早くヤろうぜ?」
「ちょっ…いや、ゴメン、ミキちゃん、ベッド行こっ?」
形勢逆転。さっきまでの強気な態度はどこへやら、有沢は焦ったような顔で俺の手を退かすと、俺の機嫌を取るような仕草で、シャツの裾を整えてくれる。
バーカ、俺様に勝とうなんて、2億5000万光年くらい早ぇんだよ。
「はい」
「え?」
有沢の体が離れると、俺は有沢に向かって両手を差し出したけど、有沢はよく分かってないみたいで、キョトンとしてる。
もーホント、バカだな。
「連れてけよ、ベッドまで」
俺がわざと挑発するように言ったら、有沢は一瞬目を見開いたけど、すぐに笑って抱き上げてくれた。
よしよし。それでいーんだよ。
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あなたの思うがまま (5)
有沢が持ってた買い物袋も、してたサングラスもそのまま玄関。
ベッドの上に下ろされた後、覆い被さって来ようとした有沢をよけて、俺は有沢のズボンをパンツと一緒にずり下ろすと、そのまま有沢のチンコを銜えた。
「ン、ちゅ…」
「ミキちゃんさぁ、いっつもフェラしてくれんね…」
さっきの玄関先でのことのせいか、有沢のチンコはちょっと硬くなってて、それに気をよくした俺は、陰嚢を揉み込みながら、有沢のを喉の奥のほうまで入れる。
先っちょ、喉の奥で擦られると、超気持ちいいじゃん? だからさ、俺がんばってんの。
コイツのチンコ、アホみたいにデカいから、銜えてるだけで顎怠くなんのに、それでもやってあげちゃう俺って、超優しいと思う。
「フェラ好きなの? それとも、俺のチンコが好きっ…?」
「ん、ん、」
デカいチンコがさらに大きさを増してるし、カウパーめっちゃ出てるし、堪えてるつもりだろうけど息だって上がってんのに、有沢は何でもないふりで喋ってるから、何かおかしい。
お前、フェラされてるとき、いつもより饒舌になんの、気付いてねぇの?
「ミキちゃん、」
「おあえあれちゅりんすぃう…」
「うわっ、ちょっ、銜えたまま喋んなよっ!」
「…………」
…お前が聞いてきたから、答えようとしたんだろ。
でも、いちいちチンコ口から出して会話してたんじゃ、萎えること間違いないから、お喋りはやめて、フェラに集中する。
ちなみに、フェラはもちろん好きだけど、お前に最初にフェラしてやんのは、お前が絶倫すぎるからな。
森下も相当だけど、有沢てそれよりもだからさ、先に1回は抜いとかないと、こっちが持たねぇの。足腰立たなくなる。
「そういえばさ、ミキちゃん、何で今日メガネしてないのっ…?」
「あぁっ?」
…銜えたまま喋んなっつーなら、フェラしてる最中に話し掛けんじゃねぇよ。
イラッとしながらも、俺は口から有沢のチンコを出して、有沢を睨んだ。ちょっと顎も怠くなってきたとこだったから、まぁいいけど。
「メガネ? らって目悪くねぇもん」
「たまにしてんじゃん…。何で」
ベッチャベチャになってる口の周りを、有沢が拭ってくれる。
てか、フェラ途中で中断されて、萎えねぇの?
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あなたの思うがまま (6)
「やめたの?」
「飽きた」
ブームぽかったのもあって、メガネしてるほうが、いつもよりちょっとモテたけど、まぁもういいかな、て。
だって、メガネ、なかなか面倒くさいし。
「ミキちゃん、今日メガネは?」
「あぁ? カバン中入ってんじゃね? …んだよ、続けんぞ?」
「メガネ掛けてやってよ」
「はぁ?」
有沢が意味不明なことを言い出すから、再び有沢のチンコを銜えようとしてた俺は、眉を寄せて顔を上げた。
でも、ちょっと考えたら、有沢が何させたがってんのかが分かって、アホか、て言ってやりたくなった。
「…お前、ホント変態だな」
「まだ『メガネ掛けてやって』しか言ってねぇじゃん。つか、変態とか、ミキちゃんに言われたくないねっ」
「俺よりお前のほうが変態だよ。お前、あれだろ? メガネ顔射とかしてぇんだろ?」
「何で分かったの? させてよ」
「……」
全然否定もしないし、隠しもしないとこが、逆にスゲェな。蔑むつもりが、言葉が出て来なかったわ。
でも、メガネ掛けてフェラすんのはいいとして、その後に待ってるのが顔射だぞ? 精液、顔にぶっ掛けられんだぞ? AVかっつの。
「じゃあ、メガネはいいから、顔射させて」
「…死ねばいいのに」
もー、何で俺、こんなヤツとセックスしようとしてんだろ。メガネがヤなんじゃなくて、顔射がヤなんだよ、バカ。
でも今さら他のヤツ探すのもメンドイし、有沢は変態だけどセックスはうまいから、最終的には満足させてくれるだろうし……そう思えばこのまま続けるしかない。
「あっ、ちょっ…」
俺は諦めにも似た気持ちで、有沢のチンコを銜え直した。
咎めるような有沢の声が聞こえたけど、無視。
「ッ、ぁ、ヤバい、てっ…」
ムカつくから、一気にイカセに掛かる。さっさとイカせて、ハメさせれば、もう顔射とか言ってる場合じゃねぇだろ。
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あなたの思うがまま (7)
フン、俺様のフェラテクを舐めんじゃねぇぞ。
「はっ、ぁ…ッ、ミキちゃ…」
根元のほうを手で強めに擦り上げながら、もう片方の手で陰嚢を揉んでやる。
有沢がめっちゃ感じてる声出すから、どんな顔してんだろ、て思って視線を上げたら、有沢とバッチリ目が合って、その直後に有沢のがさらにデカくなるから、ウェッてなった。
お前な、目が合ってチンコデカくなるとか、純情派か。
「あーもう、ちょっ、マジッ…」
有沢の焦った声。
俺は構わず、尿道口に舌先を差し込んで、射精を促す。顔射されるくらいなら、口に出されるほうがマシだ。…いや、マシか? 口の中に出されんのも、かなりだぞ?
うーん、結局のところ、どっちがマシなんだろ。
「ミキちゃっ…」
あーでも、顔なら洗えば済むもんな。
人のチンコ銜えた上に、口の中に精液出されるとか、そのほうが…
「…は?」
何か頭押さえられてんなぁ…て思って、ふと見たら、目の前に有沢のチンコ。銜えてたはずなのに。
しかも、何か顔がヌルヌルする…
「――――て、有沢、てめぇっ!」
結局、顔射しやがったのかよっ!
フェラしながら、何か気持ちが全然違うほうに行ってたから、有沢がイッたことに気が付かなかったの。その直前に、口からチンコ引き抜かれてたことにも。
「ゴメン、ゴメン、つい」
「……」
全然悪いとか思ってない感じの口調で謝られて、イライラが増す。
でもそれよりも、精液が顔を伝ってく感触が気持ち悪い。
「ぅ~~~…」
相手の精液を自分の体のどこかで受け止める、て意味では、口に出されんのも、顔に掛けられんのも、そう変わんない気がするから、別にいいかな、て思えなくもないけど、顔に掛けられたときのこのヌルヌル感が気色悪い…。
とにかく早く顔拭かないと…て、手探りで拭くものを取って、即行で顔に掛かった精液を拭った。
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あなたの思うがまま (8)
「知るかバカー! お前が顔に掛けっからだろーっ!!」
何を掴んだのかも分からずに顔を拭いてたんだけど、どうやらそれは、さっきまで有沢が着てた服のようだった。
でも俺は、即行で顔を拭きたかったんだ。お前が顔射とかするから。だから、お前の服で顔を拭いたところで、俺が文句を言われる筋合いなんかない。
「はーっ、ホントお前、最悪だな」
「だってしょうがねぇじゃん、ミキちゃんがかわいかったんだもん」
「死ね」
気持ち悪さがないくらいまでしっかりと顔を拭いた後、その有沢の服をポイと床に投げた。
「でもさ、されるほうはアレかもだけど、するのはめっちゃいいわ、顔射」
「…………」
精液でベタベタになった服に、もう諦めてしまったのか、有沢は服についてはもう何も言って来なかったけれど、代わりにまたぶっ飛ばしたくなるようなことをほざきやがった。
「……あーそうかよ。じゃあ今からお前の顔にぶっ掛けてやっから、ツラ貸せ、このヤロウっ!」
「わーっ、ゴメンなさいっ!! ミキちゃん、早まらないでっ!」
有沢をベッドに突き飛ばして、その顔目掛けて射精してやろうかと思ったら、有沢に無理やり取り押さえられた。
「ミキちゃん、ゴメンて」
「ぅン…!」
押し倒されてキスされて、ねじ込まれた舌で口の中を蹂躙されたら、もうダメ。
後は有沢の好きなようにさせるしかない。
「ッ、はっ…」
「ミキちゃんも勃ってる…。フェラすると感じんの? それとも顔射?」
「んぁっ!」
少しだけ唇を離されて、何を言うのかと思えば、またアホなこと言い出すから、殴り飛ばしてやろうとしたのに、有沢にチンコの先を握られ、快感が走って何も出来なくなった。
「あっ、ん…、んっ」
「ミキちゃん、かーいい」
見えないけど、チンコからすげぇカウパー出てんのが分かる。だって、すげぇグチャグチャ言ってんのが聞こえる。
あー…後ろも弄ってほしい…。
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あなたの思うがまま (9)
「ンッ、ぅん、すっげぇいい…。あ、あっ…もっと…」
「もっとしてほしい? チンコ弄ってほしいの? こっちじゃなくて?」
「ひゃうっ!」
前だけじゃなくて、後ろも弄ってほしいとは思ってたけど、快感に翻弄されて油断してたから、急に後ろに指を這わされて、ビクッてなった。
「あー…はぁ、はぁっ…ん、指入れて、もっと…」
「ちょっと待って、ローション…」
サイドテーブルに手を伸ばした有沢が、ローションのボトルを掴む。
手っとり早くていいけどさ、少しは隠しとけよ、そういうモンは。
「んぁっ…! バッ…冷てっ…」
「ゴメン、ゴメン。はい、指入れますよー」
「んんんっ、あっ…、あぁっ!」
ズブズブと有沢の指が、遠慮なく中へと進んでいく。
中を擦られんのが、堪んなく気持ちいい。
「あーっ、あっ、ンッ、気持ちいっ…、あぅ、んっ」
「すっごいね、ミキちゃん。指3本入ってんだよ? 分かる?」
「あ、あ、あ、やっ、有沢、そこヤッ…」
「何で? ここ、ミキちゃんの気持ちいいトコでしょ?」
後ろと前の両方をいっぺんに刺激され、ただでさえ堪んなくなってんのに、前立腺をグリグリ押されて、一気に射精感が高まる。
「あぅっ、らめ、あっあっ、ぅんっ…!」
もう無理! て逃げ出しそうになった体を押さえられ、キスで唇を塞がれる。
頭の中がジンッ…と痺れてきて、もう何も考えらんない。
「んんっ…あああっ…!」
我慢するのはやめて、有沢にされるがまま快感に身を任せ、俺は一気に上り詰めた。
「――――…………はっ…ん、ん…」
…あーあ、有沢の入れる前にイッちゃった…。
これじゃ、何のために最初に有沢の抜いてやったんだか分かんねぇし…。
「すっげ出た。ミキちゃん、最近シテねぇの?」
「…シテるし」
有沢とのセックスに、ムードとか何も求めてねぇからいいけど、お前さ、イッた直後の相手に向かって、手で受け止めた精液とか見せ付けてくんなよ。
俺、別にそういうプレイとか好きなわけじゃねぇから。
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あなたの思うがまま (10)
「何が?」
「相手」
「そーだけど。他に誰がいんだよ」
セフレはまぁ他にもいるけど、家に帰れば手軽な相手がいるんだから、わざわざ日々探し歩いたりはしない。
今日は、セックスしてぇなぁ、て思ったのに、森下が出張でいないから有沢に電話したけど、自分の右手で事足りることだってある。
「何か森下のセックスて、ねちっこそう」
「でも、お前ほどしつこくはない」
有沢と森下は互いに面識あるけど、相手がどんなセックスするかまでは知らないだろうに、有沢は何か勝手なこと言ってる。
それは、あながち間違っちゃいないけど、お前もなかなかだぞ?
「ねぇねぇ、どっちがうまい? 俺と森下」
「はぁ? それ聞く?」
「だって何か森下ごときに負けたくねぇじゃん」
「はいはい、有沢くんのほうがうまいですよ」
確かに有沢はセックスがうまいけど、こういうこと聞いてくるトコが、森下よりガキだよな。
「じゃ今日も、いーっぱいミキちゃんのこと気持ちよくさせてあげられるように、がんばるね」
「いいよ、普通で――――て、ぅん…!」
この絶倫有沢にいっぱいがんばられたら、絶対に身が持たない…! て思って、さりげなくそれを拒もうとしたのに、その前に笑顔の有沢が体をまさぐって来やがった。
まだ体が敏感になってるまんまだから、触られると、すっげゾワゾワする。
でも有沢は手を止めてくんなくて、また俺ん中に指入れて掻き回しながら、乳首をキュウて抓んでくる。
「あぁぅんっ! ちょっ待っ…」
「何でー? 気持ちいいっしょ? ミキちゃん、乳首弄られんの好きじゃん?」
「バッ…死ねっ! あっ、ン!」
逃げようとジタバタ暴れても、有沢に伸し掛かられてて、身動きが取れない。重いんだよ、このデブ! いや、太っちゃいねぇけど、じゃなくて、ううぅんっ!
確かに乳首は感じる。弄られんのも好きだ。今だって、有沢に弄繰り回されて、中に入ってる指をキュウキュウ締め付けてんのが分かる。
でもこのままじゃ、有沢のチンコ入れられる前に、またイッちまいそう…。
「もっ…、有沢、しつけぇっ…!」
「ぁにが?」
分かってるくせに、有沢は俺の乳首に吸い付いて、唇と舌で嬲ってくる。
ダメダメ! 俺、後ろだけでもイケちゃう人なの。このままじゃ、ホントにイク。マジでダメ。お願い、もうやめて。
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あなたの思うがまま (11)
「んー?」
「クッ…」
俺がこんなに切羽詰ってるってのに、有沢がのん気な声で返事をするから、本気で殺意を覚える。
あーでも、今有沢に死なれたら、俺のこの昂った体をどうしたらいいか分かんなくなるから、やっぱり死んでもらっちゃ困る。
「なぁに、ミキちゃん」
「っ、んぅぁぁ…ん、ンっ…」
耳たぶを食まれて、ますます泣きたくなる。
耳と乳首とお尻。その三点責めに堪え切れる自信なんて、まったくもって更々ない!
「はぁんっ、もぉっ…、あ、あっ」
「ミキちゃん、腰めっちゃ動いてる…」
「やぁっ…、も、マジでっ…」
ここまで来て、焦らしプレイとか、マジでやめてくれ。
俺、焦らされんの、マジ嫌なの。ダメなの。早く入れて、ガンガン突いて。
「早くっ! 有沢、早く入れてよぉっ…!」
「指じゃダメなの? ミキちゃんの中、俺の指、めっちゃ締め付けてっけど。気持ちいいんでしょ?」
「ヤダヤダぁ! 有沢のっ…、有沢のがいいっ…!」
テメェだって入れてぇだろうが! 何、余裕ぶっこいてんだよ、このヤロウ!
俺は、涙と涎で顔をグチャグチャにしながらも、有沢のチンコに手を伸ばす。何だよ、もうっ。やっぱお前だって、バッキバキに硬くなってんじゃんか!
「ミキちゃん、超エッチ…。これ、欲しいの?」
「あ…」
有沢は俺の手を外させると、中からズルリと指を引き抜いて、俺の両足を抱え上げた。
まんぐり返しに恥ずかしいとか思う前に、有沢のチンコが後ろに宛がわれで、俺はようやく入れてもらえる…て期待に、有沢を見つめたけど、有沢はすぐには入れてくれない。
しかも、何かニヤッて笑った気がする…。
「入れてほしい?」
有沢の笑顔に、何となく嫌な予感を覚えていたら、案の定、有沢はまだ俺のことを焦らすつもりなのか、この期に及んで、そんなことを聞いてくる。
ここまで来て、入れられたくないわけないだろ! バカか!
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あなたの思うがまま (12)
「じゃあさ、かわいくおねだりして?」
「ッ、殺すっ…!」
「かわいく、て言ったのに…」
キッと睨み付けたら、有沢はオーバーなリアクションで肩を竦めた。
けど、穴の入り口んトコを有沢のでヌルヌルされてると、めっちゃ腰動く…。このまま我慢比べ、なんてことになったら、どう考えても、俺のほうが分が悪い。
「有沢…」
「ぅん?」
俺は観念して、有沢に声を掛けた。
「有沢のチンコ、入れて…」
「どこに?」
「、、、、、ッ…、俺の、お尻っ…! ――――あああぁっ…!」
恥ずかしいとかじゃなくて、悔しさのあまり、声が大きくなる。それでも有沢は十分に満足したみたいで、「…オッケ」て言って、ずぶずぶぅ~て一気に腰を進めてきた。
急にお腹の中が重たくなる。散々慣らされ、焦らされてたから、痛いとかはないけど、有沢のチンコはデカいから、衝撃が半端ない。目の前が白くなる。
「………………ちゃん、ミキちゃん!」
「―え…?」
「大丈夫?」
なぜか有沢に必死に名前呼ばれてて、何のことかと思って目を開ければ、有沢が何だか神妙な顔をしてた。
「ミキちゃん、今ちょっと意識飛ばしたでしょ。大丈夫?」
「そう…? 分かんない…」
あースッゲェいい! て思った後はもう、有沢に名前呼ばれてたし。
突っ込まれて、気持ちよくて、意識飛ばしちゃったの。俺、今日もうダメかも…。
「しかも、イッちゃってるし。まだ入れただけなのに」
「ウソ…。マジかぁ~」
トコロテンとか、ないわー。いや、気持ちいいから、トコロテン自体はいいんだけど、俺だけイキまくってんのが…。
だって、有沢がまだイッてないのは、中に入ってるヤツのチンコの硬さで分かる。これでメチャクチャに突かれたら、俺、またイッちゃうんだろうな……て思ってたら。
「つかっ…、ね、ミキちゃん、ちょっお願い…」
「は…?」
「もうちょい緩めて…。締め過ぎ…!」
「バカか」
さっきまで人の心配してたくせに、何なんだよ、お前。実は余裕ねぇのかよ。
…かわいいヤツ。
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あなたの思うがまま (13)
「イケよ」
「あっ、ちょっ、ミキちゃん!」
ちょっとシュンとなってる有沢をかわいく思いつつも、中に入ってるチンコをギュッと締め付けたら、有沢が焦り出すから、何か笑える。
俺は、有沢の髪をクシャッと撫でた。
「イケって、有沢。出してぇんだろ、精子。俺ん中に突っ込んで、締め付けられて、イキそうなんだろっ…?」
「ッ…、ミキちゃんっ…」
「ああぁっ! あっ、あっ、っ、あぁ…!」
俺が煽ったせいか、有沢は俺の足を掴み直すと、ガンガン突いてくる。
有沢のが出たり入ったりして、中を擦られて、半端なく気持ちいい。
「ひっ、ひぅっ、ン、すごっ…、ぁっ」
「はぁっ…、んっ、気持ちいぃっ…? ミキちゃんっ…」
「んっ、ぅん、んぁっ、あ、ッ気持ちいぃぃ…っ!」
「…ん、俺も」
そう言ったかと思うと、有沢は角度を変えて突き上げて来て、俺は堪えらんなくなって、側にあった枕にしがみ付いた。
んなもんに掴まったところで、どうしようもないけど、俺の足を掴んでる有沢には手が届かないから、こうでもしてないと、どうにもならなくなる。
…つか、イキそうだ、て言ったくせに、有沢はまだ全然元気で、俺のほうが先にイキそうなんですけど!
でも、早くイケよ…て思う反面、気持ちよすぎて、まだまだこのままでいたいとも思ってしまう。だって、すっげぇ奥のほうまで入ってる。マジでダメ、そこは、
「あぁーっ! 有沢、有沢ぃー!」
「ん、んっ、分かったってっ…」
「あぅっ」
ズルッと有沢のが抜けて、え? と思う間もなく、俺の体は引っ繰り返され、今度はバックから突かれる。
有沢の手が支えててくれるからどうにかなってるけど、もう腰なんて全然立たなくなってて、俺は枕に顔を突っ伏した。
「やっ、も、すごっ、当たっ…」
「当たってる…っ…? どこっ?」
「分かんな、あっ、あっ…!」
「ミキちゃんの、気持ちいいトコ、でしょっ?」
気持ちいいトコつったって、もう体中、どっこも全部気持ちよくなっちゃってるもん。
背中に覆い被さってる有沢の荒い息遣いが耳元を掠めるだけで、全身に快感が駆け巡ってくの。
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あなたの思うがまま (14)
有沢の腰遣いが、さらに激しくなる。
ドスドスと奥を突かれて、俺も狂ったように腰を振った。
「――――……ッ、んぁあ…っっ…」
堪んないくらいの快感に犯された俺は、ギュッと枕を握り締め、固く目を閉じる。
その瞬間、有沢がトドメとばかりに最奥を突き上げて来て、俺は呆気なく陥落。思っきし精液を吐き出してた。
「うぅん…ん…」
どっちが先にイッたのかはよく分かんないけど、気付いたら有沢の腰は止まってた。
バックでやってたときの体勢のまんま、有沢は後ろから俺を抱き締め、首筋とかに唇を這わせてくるから、何か気持ちよくて、ウットリしてきちゃう。
でも、四つん這いが崩れたみたいな格好は、今の俺には股関節が怠くてキツいから、起き上がりたい…て思うけど、そのためには有沢がチンコ抜いてくんないとなんだけど。
「有沢、ちょっ…この体勢、ヤ…」
「何で? バックですんの、ヤダった?」
「いいけどっ…、これ以上は無理…。足腰立たなくなる…」
バックは恥ずかしいから嫌…とかじゃなくて(ホントに嫌なら、さっき体勢引っ繰り返された時点で、どうにかしてるし)、今、体勢的に苦しいから、何とかしてほしいだけ。
有沢も気ィ遣って、あんま俺に体重掛けないようにしてくれてるけど、チンコ突っ込まれたまま、腰を押さえられてる状態は、ヤッてる最中はいいけど、今となってはキツいだけだ。
「立たなくなってもいいじゃん。ミキちゃん、今日泊まってくっしょ?」
「泊まってくけどっ! 明日まで響くの! 俺、お前ほど若くねぇし、絶倫じゃねぇの!」
「若く、て……1個しか違わねぇじゃん」
今だけツライなら、ヤダけど、まぁ堪えられないこともない。
でも、明日に影響するのは困る。だって明日は、マナくんがご飯作りに来てくれる日だ。なのに、足腰立たないとか、絶対ヤダ…。
「じゃあ、明日もウチにいなよ。どうせ森下いないんだろ?」
「ダメ! 明日帰るの! すぐ帰る!」
「何で。すぐ、て」
有沢のセックスはすげぇ気持ちいいし、ずっとしてたい…て思うけど、それも、マナくんのかわいさには敵わない。マナくんのかわいさには敵わない!
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あなたの思うがまま (15)
「うっせぇな、言わねぇよっ……っあ!」
「えー知りたいなぁ」
「ちょっ有沢っ!」
何で? 何で? て子どもみたいに聞いてくる有沢の手は、その口調とは違って全然子どもみたいでなく、俺の胸をまさぐってくる。
逃げようとしたって、後ろからチンコ突っ込まれたままの状態じゃ、何をどうすることも出来ないのに。
「あ、ちょっ、バカっ…」
有沢の手付きが、本気で俺を追い上げようとしてるときと同じだ。
しかも、俺の中、有沢のチンコが硬さを増してる。
マ ジ で す か !
俺がマナくんのこと隠してるから、それにムカついて、こんな形で口を割らそうとしてんの? ガキか!
いや、でも今はそれどころじゃない。もっかいやるにしたって、ちょ…ちょっと休憩…!
「バッ…硬くすんなぁ…!」
「だって、ミキちゃんの中、気持ちいーんだもん…」
「さっさと抜けっ! そしたら収まっからっ…!」
このままじゃヤバイて思って、俺は必死に抵抗するものの、ガッチリと有沢に押さえられて逃げられない。
ウソ…、ヤダヤダ、無理!
だって俺、もう3回もイッてる。絶倫の有沢とは違うんだから、これ以上は無理だってば…!
「やっ、有沢っ…――――あああぁっっ…!!」
「ッ…」
急に視界がグンッ…と動いて、何事!? と思う間もなく、俺は下からの強い衝撃に仰け反った。
頭ン中が痺れるみたいになって、何も考えらんなくなる。
「あっ…あ……ぁ…」
また、意識を飛ばしちゃったんだろうか、よく分かんない。
痙攣するみたいにビクビク震える俺の足が視界に入ったところで、俺はようやく、有沢が俺に突っ込んだまま、俺の体ごと起き上がったんだってことに気が付いた。
バックから、背面座位の格好。
そりゃ、下から思いっ切り衝撃来るわけだわ――――て、おいっ!
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あなたの思うがまま (16)
「なわけねぇだろっ! バカかっ」
「もう精液、薄いのしか出ないね」
「んぁっ」
俺が怒鳴っても、有沢のバカには全然通じてないみたいで、チンコの先を揉み込むように弄ってくる。
体勢が変わって下から突き上げられたとき、俺は意識を飛ばしただけでなく、またイッちゃってたみたいだけど、薄いのしか出ない…て、当たり前だ。何回イッたと思ってやがる。
「や…やめ…、俺、何回イッたと思って…」
「大丈夫、俺も今イッちゃった」
いやいやいや、意味分かんねぇ。
何が大丈夫なんだ。イッちゃったんなら、何でチンコ硬いままなんだ。何でそんなに元気なんだ。お前の精子のタンクに、空という言葉はないのかっ!?
…でも、俺がどんなに思っても、そんなの有沢には何も伝わんないみたいで、少しも離してくれない。
「ミキちゃんも勃ってる…」
「やっ…、ヤダヤダ、無理っ……あぅんっ!」
俺は有沢から逃げ出そうとするけど、後ろから腕をお腹に回されて引き寄せられて、また深く有沢のを銜え込んでしまう。
勃ってるったって、そりゃ勃ちはするけどさ、もう出すモンねぇから、イケねぇって。
「大丈夫、明日お家まで送ったげるから」
「そーゆう問題じゃ…!」
ここには車で来たけど、明日、運転できないくらい足腰痛かったら、当然家まで送らせるつもりだ。でも、今俺が無理て言ってるのはそういうことじゃない。
あーもうっ! コイツ、どこまでバカなんだ!
でも、お腹のトコ押さえるのとは反対の手が、乳首をギューて抓んで来ると、もう出すモンもないのに、俺のチンコてば、素直に硬くなっちゃってるし…。
「ふっ、く、んっ…んぁっ!」
下から突き上げられて、どこにも掴まるところがないから、浮き上がった俺の体は、その衝撃を弱めることも出来ずに有沢の上に落ちて、またチンコがぶっ刺さる。
俺は有沢の胸に寄り掛かったまま、どうすることも出来ずに、ガクガクと揺さぶられるだけだ。
「あ…あっ…有沢っ…、イヤっ、やっ…」
「何がヤ? 気持ちいいのにヤなのっ?」
「はっ…激しっ…、お尻、壊れちゃっ、」
もう無理だっつってんのに、有沢は全然動きを止めてくれない。
じゅぶじゅぶ、すっげぇ音がする。
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あなたの思うがまま (17)
「あ、あぅっ…んっ…」
首筋から耳の裏っ側のトコまで舌と唇で嬲られながら、最後に耳元にそんな甘ったるい声を注ぎ込まれちゃったら、もう堪んなくなっちまうだろっ…!
もうダメだ。なけなしの理性が、デロデロになってく。
しかも、そんな俺を見透かしたみたいに、有沢の腰の動きはますます激しくなってくし。
「…っ、ん、ミキちゃんっ…、イキそっ…」
「はぁっ…ぅ、んっ…、ダメっ…」
「ダメ? イッたらダメっ…? まだっ、こうしててほしぃっ…?」
「んっ、ぅんっ…」
さっきまで、もう無理だって思ってたくせに、今は、この激しい突き上げを、やめないでほしいとか思ってる。もっとグチャグチャになるまで、どうにかしてほしい。
誰だよ、もう出すモンねぇから、イケねぇとか言ってたヤツは。あ、俺だ。
「あ、はっ…、有沢…」
「んっ、んっ…? 何…?」
「ぅん…」
体を少し捩って後ろへと手を伸ばして、有沢の頭を引き寄せる。
何? なんてアホなことを聞き返してくる有沢の唇をキスで塞げば、すぐに舌が入り込んできた。あーホント堪んない。
「んっ…ん……」
酸素足んなくなるくらい深くキスして。有沢にガツガツ突き上げられて。
俺はギュウギュウと有沢のを締め付ける。
「ぁ、ッ…ダメ、ホントっ…」
「ひッ、あぁああっ…!」
唇が離れて、有沢の本当に切羽詰った声が聞こえた次の瞬間には、スッゲェ深いとこまで突っ込まれて、背中をとんでもない快感が駆け上がっていく。
頭ン中、スパーク。
久々にドライでイッたわ…。
「っ、はっ…、ミキちゃん…」
あんなに激しかった腰の動きは止まって、有沢は突っ込んだまま、俺の背中にピットリとくっ付いてきた。
重ぇよ…。しかも暑いし。
でも、さすがに俺ももう全然動けなくて、そのままにさせておく。あーもうマジ、指1本動かせねぇ…。
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