恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2013年06月

DATE

  • このページのトップへ

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カテゴリー:スポンサー広告

愚かだということは分かっている (3)


「先生、手を離してください」
「ヤ」

 逃げようと思えば、先生の手を振り解いてでも逃げられるけど、そういう強硬な手に出ると、正直、何されるか分かんないから、出来れば穏便に済ませたい。
 だって先生は、俺がメイドのコスプレしてる写真を持ってるし。他の人には見せない、ていう約束ぽいことはしてあるけど、先生の機嫌を損ねたら、腹いせに晒されちゃうかもしんない…。

「先生、」
「帰んないでよぉ、マナくん」
「ッ…」

 何かこう…、子犬がうるうるっ…とした目で見上げてくるみたいに、先生が見つめてくるから、一瞬、心が揺らぎそうになったけれど、すぐに我に返る。
 この人はかわいい子犬でも何でもない、頭がおかしい変態の大学講師なんだ。

「帰ります。先生、手…」
「ミキくん、さっきから何騒いでんのー? …ん?」
「!?」

 何とか先生を説得しなきゃ…て思ってたら、リビングの奥のドアが開いて、誰か出て来た…!!
 意味が分かんな過ぎて、ポカンとなる。でも、玄関はそっちじゃないから、その人は外からやって来たわけじゃなくて…………つまり、ずっとこの家の中にいたってこと…!?

「え…、は…?」
「ちょっ、森下も引き留めて! マナくんが帰っちゃうっ」

 わけが分からないでいる俺を無視して、先生は俺の腕を掴んだまま、その男の人に声を掛けた。
 つか今、『森下』つったよな? てことは、この人が森下さん…!?

「いるんじゃんっ!」
「え?」

 思わず俺が突っ込むと、いきなり俺が大きな声を出したからか、慌てたふうな様子だった先生が、キョトンとなってこちらを見た。
 いや、そりゃデカい声だって出すでしょ。だって俺は、森下さんが出張でいないから、ご飯を作るために呼ばれたんだから。森下さんがいるなら、俺が来る必要ないじゃん!

「先生、どういうことですか!?」
「何が?」

 俺が声を荒げて問い詰めてみても、先生は全然分かっていない様子で小首を傾げている。
 分かっててやってるのか、それとも本気で分かってないのか…………全然読めない。

「何がじゃなくて! 森下さんがいるなら、俺、別にご飯作りに来る必要なかったじゃないですか!」
「ぅ?」

 初対面の森下さんに、こんな大きな声出してる姿を見られて、何なんだコイツ、とか思われるかもしんないけど、頭に来ちゃって、何かもう止めらんない。
 俺だって、来たくてこんなところに来てるわけじゃないのに。約束が違う!

「ご飯…? あぁうん。マナくん、今日はご飯作んなくていーよ、森下いるし」
「は?」
「ホントはマナくんのご飯が食べたいけど、マナくんがご飯作ってくれるのは、森下がいないときだけだし…、だから今日はご飯作んなくていいよ? これ着て一緒に遊ぼ?」
「………………。はぁ~!?」



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

愚かだということは分かっている (4)


 先生のその言葉を聞いて、俺はようやく、俺と先生の考えていることの違いに気が付いた。
 俺は単に、森下さんがいないときに呼ばれて、ご飯を作ってやればいいだけだと思ってたけど、先生は、森下さんがいないときはご飯を作ってもらい、いるときはいるときで、コスプレとかさせて遊ぼうと考えてたってことか…!

「ホンット、バカだなアンタッ!」
「ぅ? 何で? 何で?」

 もう何度も思ったことだけど、俺は声を張り上げた。
 いや、もしかしたらバカなのは俺かもしれないけど、もうそう言う以外に、言葉が見当たらなかった。

「あっはっはっはっ」
「!?」

 もーホントにっ! て地団駄を踏みたい気持ちでいたら、場の雰囲気に全然合わないバカ笑いがして、何事かと思って声のほうを見たら、森下さんだった。
 な…何でそんな大爆笑…??

 すべてが意味不明で、俺は何だか混乱してきて、怒りのボルテージが下がって来た。
 だって、俺がこんなに腹を立ててるってのに、先生は全然堪えてないし、森下さんはすごい笑ってるし、俺だけ1人熱くなってるのが、恥ずかしい…。

「そんな……面と向かって、そこまで思いっ切り『バカ』とか言う人、初めて見た…!」

 そう言いながら森下さんは、目に涙まで浮かべて、腹を抱えて笑ってる。
 いや、確かに森下さんの言い分は間違っちゃいない。いい大人が、自分より目上の人に向かって、冗談でなくここまで本気でバカだと言うことなんて、普通あり得ないし。
 でも森下さん、三木本先生と一緒に暮らしてて、この人がどんだけバカで頭おかしくて変態なのか、分かってるはずでしょ!? 俺がここまで言いたくなる気持ちも分かるでしょ!?
 それとももしかして、一緒にい過ぎて、感覚鈍っちゃったんじゃ…!?

「つか森下! 何でもいいから、マナくんのこと引き留めて!」

 こんななった原因のすべてがアンタだよ! てのに、先生はマイペースで、俺の腕を掴んで離さないまま、森下さんに怒鳴ってる。
 もちろん最初からセーラー服なんて着る気はなかったけど、森下さんがいるなら、なおさら着れるわけがないのに、どうしても俺にセーラー服を着せるつもりなんだろうか。

「ねぇミキくん、引き留めるったって…、見るからにマナくん、すごい嫌そうにしてるけど…………何したの?」
「まだ何もしてねぇよ!」
「まだ、ね…」

 先生の反論に、森下さんが微妙な顔になってる。
 …うん、だよね。確かに先生は『まだ』何もしてないけど、手に持ってるそのセーラー服、俺に着せようとはしてるもんね。森下さんだって、それには気付いちゃうよね。

「えー…っと。もうすぐお昼になるから、マナくん、よかったら一緒に食べてく?」

 先生に、俺のことを引き留めろと言われた森下さんが、とりあえず形だけ、俺を引き留めるような言葉を吐く。
 森下さん的には、俺が帰ろうが残ろうが、どっちでもいいことだろうだけど、先生は引き留めろと言うし、でも俺は帰りたがってるから、そんなふうに言うしかないんだろうな。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

愚かだということは分かっている (5)


「お気持ちは嬉しいですが、もう帰ります。ありがとうございます」
「ぅぬ~マナくん…」

 先生のことを無視して、俺は森下さんに丁寧にそう答えて頭を下げれば、腕を掴んでる先生の手の力が、ちょっと強くなった。…ホントに俺のこと帰す気ないな。
 つか、これで俺が無理にでも帰っちゃうと、引き留めろと言われていた森下さんは、一体どうなっちゃうんだろう。どうでもいいけど、何かご愁傷様。

「ねぇ~マナく~ん、何で帰っちゃうの? 一緒にご飯食べよ? 森下の作ったヤツだけど。ねっ?」
「嫌です」
「何で? 何がヤなの? 森下のご飯?」
「違います!」

 さっき、セーラー服を着たくない、て言ったじゃん!
 何で食べたこともない森下さんのご飯が、帰る理由になるんだよ!

「ミキくん…。恐らくミキくんがマナくんに着せたがっていると思われる、その手にしているものが原因だということを、そろそろ認めようよ」
「グ…」

 このままじゃ切りがないと思ったからか、森下さんが、遠回しというか、わざとらしくというか、何かちょっと鬱陶しい感じでフォローしてくれた。
 三木本先生が相当変だから分かりにくいけど、森下さんもちょっと変なのかな。それとも、三木本先生には普通に言っても通じないから、こういうふうにしか言えないんだろうか。

「だってさ、森下だって見たいでしょ? マナくんがこれ着たトコ」
「………………。えー……っと。俺、それに何て答えたら正解なんだろ」
「自分の気持ちを素直に言ったらいいんだよ!」

 片手は俺の腕を掴んだまま、もう一方の手に持ってたセーラー服を森下さんに突き付けて、先生はまた意味分かんないことを言っている。当然森下さんは、何とも言い難い表情になるわけで。
 森下さん、何て答える気だろう。

「そうだなぁ…………ぜんっぜん見たくない」
「ちょっ森下っバカ!」

 ちょっと読めない感じの森下さんが何て言うのかと思ってたら、俺にとってはとてもありがたい返事をしてくれた。
 もちろん先生は1人で慌てて、しかも森下さんを蹴っ飛ばそうとしてるけど、森下さんという味方が付いたのだ。怖いものはない。

「ホラ先生、森下さんも見たくないて言ってるし、俺、やっぱり帰ります」
「ぬぁ~~~~!!!」

 俺の言葉だけじゃ先生は納得しないけど、森下さんもそう言ってくれれば、先生だって諦めないわけにはいかないだろう。
 そう思ってホッとした――――のも束の間。

「まぁまぁマナくん。セーラー服はともかく、ご飯食べてったら? もうお昼だし」
「ちょっ森下さん…!」

 何でそんな余計なこと付け加えるんだよ、森下さん! 俺は、もちろんセーラー服なんか着たくないけど、それだけじゃなくて、一刻も早くここから立ち去りたいのに!
 ホラ、森下さんがそんなこと言うから、悔しそうな顔をしてた先生が、さっそく目を輝かせてるじゃんか!



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

愚かだということは分かっている (6)


「そうだよマナくん。セーラー服はともかく、ご飯だけでも食べてきなよ。森下が作ったヤツだけど」
「ちょっ!」

 結局はどちらか一方の味方ではなかった森下さんが、またしても俺を引き留めるような言葉を吐いたものだから、先生がここぞとばかりに俺の腕を引っ張った。
 絶対に、『セーラー服はともかく』なんて思ってないくせに…!

「つかさ、ミキくん。さっきから『森下が作ったのだけど』て、俺のご飯、そんなに嫌なの~? しょっちゅう食べてるくせに~」

 口の悪い先生に、森下さんは眉を下げてるけど……問題はそこじゃねぇよ、森下さん!
 俺がこれだけ帰りたがってんの、感じ取ってるでしょ!? 何とかしてよっ!

「俺は森下のメシより、マナくんが作ったのが食べたいの!」

 俺の腕を離さないまま、先生が森下さんに噛み付いてる。
 それにしても、いっつもご飯作ってくれてる人を前にして、よくここまで言えるよな。

「…つか、作りませんよ?」

 また、俺にメシを作れ、て話に戻って来たので、即行で拒絶する。
 いくら褒めようがおだてようが…………脅そうが、もう先生にご飯は作らないんだ。

「分かってるよぉ。今日は森下のご飯で我慢する、てば!」
「今日て……今日だけじゃなくて、これから先も、もうずっと作りません」
「何で!?」

 俺の腕にくっ付いてる先生に、嫌そうに申し出たら、まさに『ガーン』ていう顔で先生は固まった。
 でも悪いけど、俺はもう2度と先生のためにご飯なんか作んないし、コスプレもしないし、ここにも来ないんだから!

「ちょっそんな…、じゃあ俺はこれから何食べてってったらいいの…?」
「森下さんが作ってくれるでしょ」
「森下がいないときは?」
「知りません」

 最初は、森下さんが出張とかでいないときは、ご飯を作りに…ていう約束みたいなことをしたけど、もうそんなの知ったこっちゃない。
 絶対に先生のために料理なんかするもんか。

「そんな…、マナくんは一体俺の何が嫌なの…?」
「全部です」
「に゛!?」

 相手は先生だけど、俺はここぞとばかりに言ってやった。
 何が嫌かって言ったら、その疲れる性格と変態なところと……とにかく全部だ。

「あははっ、マナくん、おもしろいねぇ」
「おもしろくねぇっ! 死ね森下っ!」

 俺は不機嫌マックスだってのに、森下さんはまた笑い出すし(大人なのに、空気読めないの…?)、そのせいで先生もギャーギャー騒ぎ出すしで、大変だ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

愚かだということは分かっている (7)


「とにかく! 先生、離してください」
「ヤダ!」
「ヤダじゃねぇよ、離せっ!」

 しがみ付いてくる先生を引き剥がそうとするけど、先生はますます腕に力を込めてくる。

「森下! ボケッと突っ立ってないで、何とかしろっ!」
「森下さんっ! この人、何とかしてくださいっ!」

 今のところどっちの味方でもない森下さんが、先生のほうに付いちゃうと、俺の分が悪くなっちゃうから、俺も負けじと森下さんに助けを求める。
 森下さんがどれだけ役に立つかは分かんないけど、とりあえず2対1のほうが有利だと思う。

「森下!」
「森下さんっ!」

 2人して、森下さんのことを呼ぶ。
 でも、さすがこんな変な先生と同居してるだけあって、森下さんも普通の人じゃなかった。

「え、えー? 何もう2人してー。そんなに俺のこと好きなの~?」
「「アホかっ!!」」

 思わず森下さんに突っ込んだら、先生もまったく同じタイミングで、同じセリフを吐いたもんだから、思い切りハモった。
 何かムカつくけど、今ばかりは息が合うのも仕方がない。

「バカか、ホント。死ねよ森下」
「もうミキくんてばぁ」

 先生の辛辣な言葉にも、森下さんはヘラヘラ笑ってる。
 俺は何も言わなかったけど、心の中は、先生の言葉と同じ気持ちだ。先生もかなり疲れるけど、この森下さんも、相当面倒くさい…。

「先生、」
「マナくん、帰っちゃヤダ」
「…………」

 離して、と続けようとした俺の言葉は、先生の言葉に遮られる。きっと俺が、ここでご飯を食べてく、て言わない限り、ずっとこの繰り返しなんだろう。
 …結局は俺が諦めないといけないんだ。先生の言いなりにはなりたくないのに、言うことを聞かないと、帰るにも帰れなくて。

「…分かりました。ご飯、食べてけばいいんでしょ?」
「ヤッター! マナくん大好きっ!」
「抱き付くなっ!」

 あぁもう。結局こうなった。
 …先生のしつこさに勝てないのが、究極の敗因だ。




愚かだということは分かっている


(…森下さんのご飯、俺が作るのより、よっぽどうまいんですけど…)



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (1)


(point of view : morishita)



 何て言うか…。

「だーかーらー! もう帰る、つってんだろ!」
「何で! これ着てよぉ!」
「着るか、バカっ!」

 おもしろい人たちだなぁ…、この2人。

「森下! 何とかしろっ!」
「森下さんっ!」

 助けを求めて俺を呼ぶのは、ミキくんとマナくん。
 来た瞬間から帰りたがってるマナくんを、何とかご飯食べてくところまでは引き留めたんだけど、食べ終わった途端、マナくんが『もう帰る』と言い出したから、この騒ぎ。
 そりゃ、コスプレが趣味でもない大学生男子が、セーラー服着てくれ、て男から迫られたら、この反応するよな。

 俺としては、どっちの味方にもなる気はないから、とりあえず黙って見守ってるんだけど。
 でも、これでマナくんがこのまま帰っちゃったら、ミキくんが大変機嫌を損ねて、俺まで被害を受けそうだから、ミキくんを応援したほうがいいんだろうか。
 だけど、今どきの若者に恨みを買うのも、何か怖そうだしなぁ…。

 ちなみにマナくんは、ミキくんが講師してる大学の学生で、なぜかミキくんに目を付けられちゃった、かわいそうな子。
 この間、俺が出張でいないときに、メイドさんの格好をさせられ、オムライスを作らされる羽目になったらしい。しかもその姿を、スマホにバッチリと収められてる、ていうね…。
 その写真は他の人に見せない約束になってるらしく、ミキくんもその約束を一応は守ってるみたいなんだけど、俺の口車に乗せられちゃったせいで、俺には見せてるんだよね。

 今はマナくんの手前、俺はそのときの事情を何も知らないという体で、今日ここに呼ばれたマナくんが、初めてコスプレというものをさせられそうになり、それがセーラー服ときたものだから、ひどく嫌がっているのだ、と思っていることにしている。
 もちろんコスプレは嫌なんだろうけど、それ以上に、ミキくんの性格とか性癖とかがいろいろ嫌なんだろうことは、分かるけど。

「マナくぅん、これ着てよぉ~」
「何で! 先生さっき、着なくていい、つったじゃないですか!」
「言ってないもん、そんなこと!」

 いい年して『もん』とか、ミキくん…。そんなんで大学講師とか、勤まるの?
 でもまぁ確かに、さっきミキくんは、『セーラー服はともかく』て言っただけで、『セーラー服は着なくていい』とは言ってないよね。うーん、言葉って難しいなぁ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (2)


「大体、俺にそんなの着せて、どうする気ですか!」
「先生と生徒ごっこする気」
「しねぇよ!」

 至極まっとうなマナくんからの質問に、真顔で変態なことを答えてるミキくん。
 つか、『先生と生徒ごっこ』て何だよ。
 何かエロい方面のこと思い浮かべがちだけど、前にメイドさんのコスプレさせたとき、ご飯を作ってもらっただけのことを考えると、そういうことじゃないんだろうなぁ。

「ねぇねぇミキくん」

 ずっと傍観者でいるのにも飽きたんで、とりあえず声を掛けてみれば、「あぁんっ?」と、すっげー柄悪くミキくんが振り返った。
 何この、俺の嫌われっぷり。

「ミキくんてさ、マナくんにそのセーラー服着せたいの? それとも、先生と生徒ごっこやりたいの? どっち?」
「はぁ? 何言ってんの、お前」

 尋ねたら、ミキくんが呆れたように言って来た。
 いや、でも俺にしたら、ずっと疑問に思ってたことなんだけど。

「だって、先生と生徒ごっこやりたいだけなら、こんなに嫌がってるマナくんにセーラー服着せなくたって、ミキくんがセーラー服着て、生徒になればいいじゃない」
「違ぇよ、バカ森下。マナくんが生徒役やんなくちゃ意味ないの!」
「…そうなの?」

 いや…、マナくんが生徒役やるんだとしても、その先生と生徒ごっこに何か意味があるとは思えないけど…。

「じゃあ、何でセーラー服なの?」
「かわいいから」

 そもそもマナくんは男で、制服にだって男物と女物の2種類がある中で、何でわざわざセーラー服なんだろう、て思って尋ねれば、ミキくんは至極真面目な顔でそう答えた。
 見たところ、マナくんもミキくんも化粧道具を持ってないみたいだから、マナくんはまたすっぴんでそのセーラー服を着ることになるんだろうけど…………かわいいか?

「俺は、セーラー服を着たマナくんと、先生と生徒ごっこがしたい」
「…………あ、そう…」

 相変わらず変態だなぁ、ミキくん。
 前にもメイドさんの格好をさせられてるから、マナくんだってミキくんが変態なことは分かってると思うけど、改めてそれを確信したのか、今の発言にドン引きしてる。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (3)


「うぅ~…森下さんっ、助けてっ!」
「あー……」

 とうとう目を潤ませちゃったマナくんが、必死に俺に助けを求めてくる。
 でもそれはヤバいよ、マナくん。ミキくん、そういう顔大好きだからね。ますます君のこと気に入っちゃうよ――――て、あ、もうミキくんの顔付きが違う。

「ッッッ、、、マナくん、かわいいっ!!」
「ギャ~~~~~!!!」

 …ホラね。
 嫌がるマナくんを無視して、ミキくんがむぎゅ~~とマナくんに抱き付いてる。

「離せぇ~~~~!!!」
「ヤダかわいいぃ~~~!!」

 案の定、マナくんはミキくんを引き剥がそうと必死だけど、そんな邪険に扱われてるのに、ミキくんはすっごい笑顔。
 何かもう…今のままでも十分楽しそうだけど…………それでもミキくん、先生と生徒ごっこやりたいの?
 大体、元からミキくんは大学の先生で、マナくんはその大学の学生なんだから、わざわざ『ごっこ』をしなくたって、すでにその関係性は出来上がってんじゃん。

「あのさぁー」

 別にどっちかだけを助けるつもりはないし、2人のやり取りを見てるのもおもしろいんだけど。
 でも、そろそろ間に入ったほうがいいかな、て思って声を掛けてみたら、ミキくんはすごく嫌そうな顔で、マナくんは縋るような目で、俺のほうを見た。
 とりあえず、マナくんのほうから助けてみるか。

「ミキくん、それ以上やってると、本気でマナくんに嫌われちゃうよ?」
「えっ…」

 もうすでに、十分嫌われてるかもしんないけど、いきなりそこまで言うのはかわいそうかなぁ…て思って、ちょっと手前の加減で言ってあげる。
 それでもミキくんには効果絶大だったみたいで、口をあんぐり開けて固まってしまった。まさか、これだけやってて、嫌われないとでも思ってたんだろうか。

「俺、マナくんに嫌われたくない…」

 俺の言葉を納得したらしいミキくんが、おずおずとマナくんから手を離せば、マナくんはあからさまにホッとした様子で俺を見た。
 でもね、俺は君だけを助けるつもりはないんだよ? だって、ミキくんの機嫌損ねると、俺も被害受けちゃうからね。

「てことで、マナくん。ミキくんのこと、嫌いになんないでくれるよね?」
「えっ!?」

 ニッコリ。笑顔でマナくんに問い掛ける。
 一応、質問するみたいな言い方はしてるけど、『はい』以外の返事は認めない、そんな口調で。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (4)


「えっと…、え…、森下さん、何言って…」
「ぅん? ミキくん、マナくんのこと、すごい気に入ってるみたいだし、嫌われたくないみたいだから。今日、もういい加減にしてあげたら、嫌いにならないでくれるかな、て思って。いいよね?」
「それは…」

 味方だと思っていた俺が、ミキくんをフォローするようなことを言い出したせいか、今度はマナくんが固まっちゃった。ヤダな。俺、さっきも中立の立場だったじゃない。
 だって、このくらいのことを言っておかないと、後でミキくんに、『お前のせいでマナくんが帰った』とか『お前のせいでマナくんに嫌われた』とか、言われかねないからさ。

「いいよね? お願い」

 そこで、ダメ押しの笑顔でお願い。
 嫌々ながらも、メイドさんの格好したり、今日またここに来たりするマナくんは、押しに弱い性格なんだろう。ミキくんだけじゃなくて、俺からもそんなこと言われたら、断り切れないはずだ。

「マナくん」
「…分かりました」

 もうちょっと抵抗するかと思ったのに、笑顔で名前を呼んだら、マナくんはあっさりと承諾してくれた。
 初対面の俺には、ミキくんに言うように、噛み付くことが出来なかったのかな。それとも、俺にこんなこと言われると思わなかったから、言い出せなかったの?
 まぁどっちでもいい。本題はこれからだ。

「あ、それと俺、来週また出張でいないんだよね」

 形勢がこちらに有利なうちに、サラッと切り出す。
 困惑してるマナくんに、追い打ちをかけるみたいだけど、しょうがない。

「来週…?」
「そう。だから、ご飯作りに来てあげてくれない? ミキくんのこと嫌いじゃないなら、いいよね?」
「えっ…」

 俺の言葉に、マナくんはすっかり動揺してるみたいだ。
 たった今、ミキくんのことを嫌いにならないで、ていうお願いに、わけも分からぬまま返事をしてしまったばかりなのに、もう来週のことにまで話が進んじゃってるもんね。そりゃ動揺するわ。

「マナくん、来週来てくれるの!?」
「いや、ちょっ」

 まだマナくんは何の返事もしてないのに、ミキくんはもうその気になっちゃったみたいで、嬉しそうな顔になってる。
 こうなるとミキくんがしつこいのは、きっとマナくんも分かっているに違いない。下手したら、来週も来るて約束をしない限り、今日は帰してもらえないかもしれないことも。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (5)


「マナくん、何か用事あるの? 都合悪い?」
「そうじゃないですけどっ、でも俺が来なくたって、どうにでもなるでしょっ…?」

 もう俺は頼れないと思ったのか、マナくんは俺じゃなくて、直接ミキくんと対決しようとしてる。
 でも別に、用事はないとか、そんなの正直に言わなくたって、適当に言って断っちゃえばいいのに。そう出来ない性格なのかな。なのに俺、こんなこと言っちゃって…………悪い大人だなぁ。

「でもマナくんに来てほしい~。俺、マナくんのご飯食べたいの」
「それはっ…」

 焦ってるマナくんの腕に纏わり付ながら、ミキくんは、下からその顔を覗き込んでる。
 あ、ミキくんのその仕草、完全に計算だな。うーん…、いい大人がかわい子ぶってもなぁ…。

「お願ぁ~い」
「ど…どうしても、来ないとダメ、ですか…?」

 あらら。かわい子ぶってるミキくん、俺的にはかなりの萎えポイントだったんだけど、マナくんには効果あったのかな。何か流され掛けてる。
 押しに弱いというか……絆されやすいのかな。子犬とか捨てられてたら、絶対に放っておけないタイプだな。

「ね、マナくん、いいでしょ~?」
「でも…」

 ピンクのセーラー服を手にしたミキくんが、懸命に『お願いビーム』を放出してる。何か…すっごい分かりやすい、ぶりっこキャラのアイドルみたいで、ちょっとキモい。
 でも、マナくん、心は揺れ動いてるみたいだけど、なかなかすんなり『うん』とは言ってくれない。俺にはその原因、分かってるけど、果たしてミキくんは気付くんだろうか。

「ねぇねぇ、ミキくん」
「あぁん?」

 ミキくんじゃ、きっと一生掛かっても分からないだろうな、て思って声を掛けたら、思い切り睨まれた(だから、俺に対する態度…!)。
 でも俺は優しいから、教えてあげるよ。

「あのさぁミキくん。多分マナくんは、来週来たら、またそのセーラー服を着させられそうになるんじゃないかと思って、答えを渋ってるんだと思うよ?」
「え、」

 まぁ、マナくんが嫌がってる理由はそれだけじゃないだろうけど、とりあえず来週来ることを渋る原因の1つではある。
 一応今は、もういい加減にする、てことにはなって、そのセーラー服を着るよう迫らせることはなくなったけど、それが来週まで有効とは限らないからね。
 しかも来週は、ミキくんと2人きりなわけだし。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (6)


 そんな、今さら過ぎるくらい今さらなことを俺が告げると、ミキくんはとっても驚いた顔で、自分が持ってるセーラー服と、マナくんの顔を見比べた。
 やっぱり気付いてなかったの? そんなの持ったまま、ご飯作るだけでいいから来て、て言われたって、絶対信用ならないでしょ。100%それ着せられる、て思うってば。

「マナくん、セーラー服、ヤなの…?」
「ずっとそう言ってるよっ」

 ミキくんが本気で分かってなかったことを知って、マナくんがキレてる。
 今まであれだけのやり取りしてて、今さらこんなこと言われたんじゃ、そりゃキレたくもなる。でもミキくんの場合、とぼけてるんじゃなくて、相手が嫌がってるなんて、本気で気付いてないこと多いからね。
 俺、この後に続くミキくんの言葉、何となく想像できる。

「じゃあ、セーラー服じゃなかったら、何がいい? 俺、来週までに用意しとく!」

 …やっぱりね。
 ここで、マナくんがコスプレ自体を嫌がってることが分かんないトコが、ミキくんなんだよね。自分がやらせようとしてることを、人が嫌がるなんて、ゆめゆめ思ってないんだろうな。
 うーん、そういう図太い思考て、生きていくには楽かもね。真似はしたくないけど。

「ねぇマナくん、何着たい?」
「何も着ねぇよっ!」
「え、裸っ!?」
「バカかっ!」

 ミキくんの突拍子もない発想に、マナくんは地団太を踏んでる。
 ここまで物分かりの悪い人て、そういないもんね。そりゃ地団駄も踏みたくなるよね。

「コスプレをしたくねぇんだよっ!」
「そうなの? だってマナくん、メイドさ…ングッ!」
「余計なこと言うんじゃねぇよ!」

 ミキくんが言い掛けたところで、マナくんがミキくんの口を両手で塞いだ。…まぁ、聞こえたけどね。
 こないだメイドさんの格好でご飯作らされたことは、ミキくんからは聞いてるけど、一応俺は知らないことになってるから、今も聞こえなかったことにしておこう。

「マナくんてさぁ、やっぱ怒ると口が悪くなるよね。ギャップ萌え?」
「ッッッ~~~~~!!!」

 口から手が外されると、ミキくんはまた火に油を注ぐようなことを言い出す。
 マナくんがこれだけ怒ってるのに、よくもまぁ、そんな全然見当違いなこと言えるなぁ、ミキくん。俺も大概空気読めないとか言われるけど、今のミキくんには敵わないよ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (7)


 つか、せっかく俺が、いいところまで話を持ってってあげたのに、どうしてミキくんて、それをふいにしちゃうんだろ。さっきからこの繰り返しじゃん。
 もうここには来たくないマナくんを、俺が何とか説得するたびに、肝心のミキくんがマナくんの気持ちを逆撫でする、ていう。
 もしかしてミキくんて、もちろんマナくんにまたここに来てほしがってはいるけど、それよりも、今みたいなこのやり取りを楽しんでんじゃないだろうか。
 そうじゃなきゃ、ここまでの行動て、なかなか取れないと思う。

 でも、いよいよミキくんとじゃ会話が成り立たなくなってきてるから、しょうがない、また口を挟んでみるか。

「ーじゃあさ、とりあえずマナくんは、コスプレさえしなくていいなら、また来てくれる、てことだよね? 結論からすると」
「えっ…」

 マナくんの結論的には、『コスプレに関係なく、もうここには来たくない』なんだろうけど。
 分かっててわざと都合のいいふうに解釈してみれば、マナくんは当然ながら困惑した表情になったけど、意外にもすぐに拒絶の言葉は出て来なかった。
 あぁ、ただ『嫌だ』て言うだけじゃ、ミキくんがしつこく食い下がってくるのが分かってるから、言葉に詰まっちゃったの?
 でも、弱みに付け込むみたいで悪いけど、何も言わないなら、俺は一気に畳み掛けちゃうよ?

「来週来てくれる、てことでいいんだよね? ありがとう」
「…………、はい…」

 念を押すようにもう1度繰り返すと、マナくんは呆然としながらも頷いた。
 …つか、オッケーしてくれたのは有り難いし、そのつもりで言ったんだけど、何で俺にはこんなに素直なのよ、マナくん。逆に怖いよ。
 ミキくんが変態で嫌だから、抵抗したくなるのは分かるけど、今俺に返事した内容は、そのミキくんのところに、来週また来る、て内容だよ? ホントにいいの?

「ヤッター! マナくん大好きっ!」
「抱き付くなぁ~~~!!」

 言った俺ですら、マナくんの素直さにちょっと驚いてるくらいなのに、俺の苦労も、マナくんの葛藤もまったく分かっていないミキくんは、子どもみたいに無邪気に喜んでる。
 で、どさくさに紛れてマナくんに抱き付いて、すっごい嫌がられてるし。

「つかっ! 来週来ることは来ますけど、もし、ちょっとでもコスプレさせようとしたら、すぐ帰りますからねっ!」
「メイドさんも?」
「当たり前だっ!」

 嫌々ながらも、来週の約束を取り付けてしまったマナくんが、きっぱりとミキくんにそう宣言する。もちろんミキくんは多少食い下がってみるけど、今度こそマナくんは折れない。
 俺としても、コスプレしないなら来てくれるよね? てことでマナくんにオッケーさせた手前、これ以上は何も言えないなぁ、て思って、黙ってる。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

世界の危機を救うヒーローにはなれない (8)


 つか、次に声を掛けるとしたら、ミキくんがまた暴走しないように、適当なところで止めるときだ。
 だって、押しに弱いマナくんは、今のところ最終的には絆されちゃってるけど、ミキくんがいつもこんな調子じゃ、いつかミキくんのことを見限るか、キレるか……どうにかはなる。
 そうなったら、もうここには本当に来てくれなくなるでしょ?

 別に俺は、そこまでマナくん自身には興味ないけど、マナくんが本当にミキくんのこと見捨てちゃったら、絶対に俺までとばっちり食うからさ。それだけは避けたいわけ。
 それに、こうやってミキくんとマナくんのやり取りを見てる分には、おもしろいし飽きないとは思うからね(マナくんには悪いけど)。

「でもマナくん、俺のためにご飯は作ってくれるんだよね?」
「…はい」
「今日も」
「今日?」

 約束は約束だから、まっとうするつもりらしく、マナくんはミキくんの再度の念押しにも頷いたが(真面目…)、その後に付け加えられた言葉には、眉を寄せた。

「今日が何ですか?」
「ご飯」
「さっき食ったじゃないですか」
「夜ご飯」
「……」

 さっき昼飯食ったばっかなのに、もう夕食の話を始めるミキくんに、マナくんはもちろん、さすがの俺も閉口した。
 まぁ…、要はまだマナくんに帰ってほしくない、てわけね。

「冗談じゃないっ、もう帰るに決まってんだろっ!」
「何で? 一緒に遊ぼうよぉ。先生と生徒ごっこじゃなくてもいいから。そんで夜ご飯一緒に食べよ?」

 そういえばマナくんが来てから、昼飯を食う以外は、セーラー服を着るだの着ないだの、そんな言い合いをしてただけで、他には何もしてなかったっけ。
 俺もそれに付き合ってたんだから、どうこう言える立場じゃないけど、よくもまぁこんな無為なことに時間を費やせるなぁ。

「まぁまぁミキくん。マナくんとのご飯は、来週のお楽しみ、てことにしておきなよ」
「お楽しみ…。じゃあ、もんのすごい楽しみにしてていい?」

 どっちの味方もしないつもりが、結果的にミキくんの肩を持つ感じになっちゃったから、ちょっとはマナくんも庇ってあげないと…て思って言ってみたんだけど、かえってミキくんの変態心を燃え上がらせちゃった?
 でもしょうがないよ、ミキくんてこういう人だもん。

「楽しみに、て……ご飯作るだけ…」
「マナくん、俺、来週すっごい楽しみにしてるねっ」
「…………」

 マナくんが蒼褪めながら念を押そうとしたけれど、ミキくんはまるで聞こえていない様子で、すっごい目をキラキラさせながら笑顔を向けるから、マナくんは言葉を失ってしまったようだ。
 あー、これは来週、コスプレから逃れられたけど、ただ食事を作るだけじゃ済まないことは確定しちゃったぽいな。

 ご愁傷様。




世界の危機を救うヒーローにはなれない


「んふふ、マナくんに何してもらおっかなー」
「…マナくん、やっぱり早めにミキくんのこと見限ったほうが…」



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (1)


(point of view : mikimoto)



 仕事終わって帰ろうと思ったら、今日から森下が出張でいないんだってこと、思い出した。
 森下がいなくても、メシは食って帰ればいいけど、セックスしてぇなぁ、て思ってたから、なーんか当てが外れた、て感じ。

「しょうがねぇなぁ…」

 とりあえずスマホを出して、アドレス帳を確認。
 誰でもいいんだけど、有沢の名前が一番上にあったから、有沢に電話してみる。

 有沢は、2年くらい前にクラブで出会った男。
 出会った…てか、ナンパされたんだけど。イケメンだし、まぁいっかーて思ってホテル行ったら、セックスもうまくて、そっから何か続いてんだよね。あ、体の関係が。
 森下よりノリが軽いのが楽でいいけど、森下ほど従順じゃないのが面倒くさい。

『もしもーし。ミキちゃん、どうしたの~?』

 2コールで電話は繋がり、有沢の能天気そうな声がする。
 つか、ミキちゃん言うな。キモイ。

「メシ食ってセックスしたい」
『相変わらず直球だね。メシとセックス、どっち先がいいの?』
「セックス」

 俺は車に乗り込んで、今1人だけど、電話の向こうは何かざわざわしてるから、有沢はきっと外にいるんだろう。
 なのに、そんなこと普通に聞いてくる有沢は、きっと俺と同じくらい変態なんだと思う。

『オッケ。俺、今家に向かってるトコだから、俺んちおいで?』

 何も聞かずに俺の都合を優先してくれる有沢は、いいヤツだ。
 思いどおりになった俺は、満足してエンジンを掛けると、車を走らせた。



*****

 有沢のマンションの近くにある駐車場に車を停めて歩き出したら、サングラス掛けてカッコつけてんのに、スーパーだかコンビニの買い物袋下げてる有沢を発見した。
 つかお前、仕事帰りじゃねぇの? 何でサングラスなんかしてんだよ。しかも、その格好で仕事行ってるとは思えないくらい、私服感が満載の服着てるし。
 でも俺、有沢と出会ってから2年も経つのに、コイツが何してるヤツなのか知らない。まぁ、これからご出勤じゃないてことは、夜のお仕事ではなさそうだけど。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (2)


「有沢ー」
「あ、ミキちゃん、いらっしゃーい」

 背後から有沢に声を掛けたら、まだ部屋まで行ってないのに、『いらっしゃい』とか言われた。
 変なヤツ。

「ワイシャツ姿のミキちゃんて、何かストイックな感じで、逆にエロいね」
「何それ。変態」
「ミキちゃんに言われたくないんですけど」

 今日は学校出て、そのまま有沢んちに来たから、白衣を脱いだだけでの格好だ。
 でも別にスーツの下に着るようなワイシャツじゃなくって、わりとカジュアル目だし、ネクタイしてるわけでもないし…………ストイックか?

「お前は、仕事帰りとは思えない格好だけどな。ゲーノージンか、つの」
「何~? 俺、そんなに格好いい~?」
「死ね」

 調子に乗ってる有沢を睨み付けて、エレヴェータに乗り込む。
 有沢が乗る前にドアを閉めてやろうとボタンを押したけど、間に合わなくて、有沢が閉まりかけのドアに挟まった。だっせ。

「何でそんな意地悪すんの、ミキちゃん…」
「何が?」

 知らないふりですっとぼけると、有沢の溜め息が聞こえる。
 チラッと横目で見たら、何か唇尖らせてて…………拗ねてんのかな? かわいいヤツ。俺は有沢の手を取って、指を絡ませた。

「ちょっ、ミキちゃん!?」
「なぁに?」

 有沢の焦った声に、俺はニヤリと笑って見せる。
 サングラスの向こうの有沢の目が泳いでる。エレヴェータの中、確かに防犯カメラくらい付いてるだろうけど、とりあえず2人きりだし、手繋いでるだけだし、そんなに焦んなくてもな。

「グフ」
「…ッ、」

 有沢は何か言いたそうにしてたけど、結局何も言わないうちに、エレヴェータが到着した。
 俺は有沢から手を離して、さっさとエレヴェータを降りる――――と、後ろからガシッと手を掴まれて、何かと思ったらそれは有沢で、そのまま俺を追い越して歩いてくから、俺は有沢に引っ張られるように連れて行かれる。

「ちょっ…何だよ、痛ぇよ、有沢!」

 振り解こうとしたら、逆に有沢の手に力が籠って、手が痛くなったから、やめた。
 何だよ、ちょっとからかっただけじゃん。そんなに怒ることねぇのに。バカ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (3)


「ぅん…!」

 そのまま有沢の部屋に連れ込まれ、ドアが閉まったかと思うと、電気も点けない、靴も脱がないその場所で、ドアに背中を押し付けられて、キスされた。
 ガサリと何かが落ちる音がして、視線を向ければ、有沢が持ってた買い物袋が床に落ちてる。
 何だよ、エレヴェータの中で手繋いだだけなのに、そんだけで余裕なくすなよ。思春期か!

「ちょっ…」

 有沢の片手は俺の手首を掴んだまま、もう一方の手は俺のベルトのバックルに掛かった。
 え、ここでやる気?
 別に、絶対にベッドじゃなきゃヤダとかはねぇけど、フローリングは腰とか膝とか痛いからヤなんだよなぁ。それに玄関だと、最悪コンクリの上てこともあるし。
 コイツ、それ知ってんのに、何でこんなトコで盛ってんだよ。あ、立ったままヤる、てこと? それならまぁ、いいっちゃーいいけど……疲れそうだなぁ。
 大体さぁ、玄関でヤったら、外に声聞こえね?

「ミキちゃん、何考えてんの…?」
「は? それはこっちのセリフなんですけど。有沢くんこそ、何考えてんですか?」
「いや…そういう意味じゃなくて、今何考えてたの? キスしてるとき。全然集中してない」

 こんなトコで、お前のほうから仕掛けて来たくせに、『何考えてんの』とか、何で逆ギレしてんだよ、て思ったら、そういうことじゃなくて、言葉どおりの質問だったらしい。
 まぁ確かに、キスには集中してなかった。ゴメン。

「ねぇ…」
「えー、このまま玄関ですんのかなぁ、とか考えてた」
「…ヤダ?」
「ヤダ――――て、おい!」

 ヤダつってんのに、有沢は首筋に舌を這わせながら、俺のシャツをズボンから引き抜こうとしてる。
 てめぇ、俺の言うこと聞けよっ。

「いいじゃん。ミキちゃんだって、すぐシタいでしょ?」
「ざけんなっ…」

 俺が何言っても、このままヤる気なんだったら、『ヤダ?』とか聞くんじゃねぇよ。ったく、ちょっとリードされると、すぐムキになんだから。ガキだな、ホント。
 つか、最終的に玄関でヤることになったらなったでいいけど、俺の意見が無視されんのがおもしろくない。
 ムカついて有沢を睨んだけど、その直後にいいことを思い付いて、俺はキスに応えつつ、有沢のサングラスを外して床へ投げると、ズボンの上から有沢のチンコに触った。
 俺がノッて来たと思ったのか、有沢は満足そうな顔で俺を見たけど、調子に乗ってられんのも今のうち。お前の思いどおりになんかさせねぇんだよ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (4)


「なぁ有沢…。外の音、聞こえね…?」

 ホントは何も聞こえなかったけど、少しだけ唇を離して、心配そうな表情を作って有沢に言った。
 いくらいいマンションとはいえ、本格的な防音マンションじゃないから、今みたいに玄関のドアに引っ付いてる状態なら、外の物音くらい聞こえてくるはず。
 逆に言うと、玄関先で声上げたら、外に丸聞こえ、てこと。

「あぁ、だからミキちゃん、ここでヤんのヤダったの? 外に声聞こえちゃうから?」

 俺が玄関でヤるのを嫌がる理由を、外に声が聞こえるからだと思い込んらしい有沢が、ニヤリと笑ってみせた。あっさり引っ掛かりやがって。ホント単純だな。
 これで俺より優位に立てたとでも思ってんのか? 恥ずかしいからやめてくれ、て俺が泣いて縋るとでも?

「フフン」
「え?」

 俺は鼻で笑って、有沢のズボンの前を寛げると、そこに手を突っ込んだ。
 俺の行動が予想とは違っていたからだろう、有沢はギョッとした顔で俺を見た。

「有沢、お前さぁ、ここがどこだか分かってんの?」
「は?」
「別にここ、俺んちじゃねぇし。隣近所に声聞かれたところで、俺、ぜーんぜん恥ずかしくなんかねぇよ? 何なら、めっちゃ喘いで、隣の部屋の人とかに聞かせちゃおっか?」
「ッ…」

 ――――そう。玄関先でセックスして、隣の部屋の人とか、外の廊下を通る人とかに声聞かれちゃったところで、この部屋の住人じゃない俺には、何も関係ない。
 そもそも隣人の顔も知らねぇし、出くわしたところで、その場限りだ。
 でも、ここで生活してる有沢にしたら、そういうわけにはいかねぇよな? 何でもない振りだって出来るだろうけど、出来れば知られたくない部分だろうし。

「有沢、早くヤろうぜ?」
「ちょっ…いや、ゴメン、ミキちゃん、ベッド行こっ?」

 形勢逆転。さっきまでの強気な態度はどこへやら、有沢は焦ったような顔で俺の手を退かすと、俺の機嫌を取るような仕草で、シャツの裾を整えてくれる。
 バーカ、俺様に勝とうなんて、2億5000万光年くらい早ぇんだよ。

「はい」
「え?」

 有沢の体が離れると、俺は有沢に向かって両手を差し出したけど、有沢はよく分かってないみたいで、キョトンとしてる。
 もーホント、バカだな。

「連れてけよ、ベッドまで」

 俺がわざと挑発するように言ったら、有沢は一瞬目を見開いたけど、すぐに笑って抱き上げてくれた。
 よしよし。それでいーんだよ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (5)


 靴は、有沢に抱えられたまま、玄関にポイして来た。
 有沢が持ってた買い物袋も、してたサングラスもそのまま玄関。
 ベッドの上に下ろされた後、覆い被さって来ようとした有沢をよけて、俺は有沢のズボンをパンツと一緒にずり下ろすと、そのまま有沢のチンコを銜えた。

「ン、ちゅ…」
「ミキちゃんさぁ、いっつもフェラしてくれんね…」

 さっきの玄関先でのことのせいか、有沢のチンコはちょっと硬くなってて、それに気をよくした俺は、陰嚢を揉み込みながら、有沢のを喉の奥のほうまで入れる。
 先っちょ、喉の奥で擦られると、超気持ちいいじゃん? だからさ、俺がんばってんの。
 コイツのチンコ、アホみたいにデカいから、銜えてるだけで顎怠くなんのに、それでもやってあげちゃう俺って、超優しいと思う。

「フェラ好きなの? それとも、俺のチンコが好きっ…?」
「ん、ん、」

 デカいチンコがさらに大きさを増してるし、カウパーめっちゃ出てるし、堪えてるつもりだろうけど息だって上がってんのに、有沢は何でもないふりで喋ってるから、何かおかしい。
 お前、フェラされてるとき、いつもより饒舌になんの、気付いてねぇの?

「ミキちゃん、」
「おあえあれちゅりんすぃう…」
「うわっ、ちょっ、銜えたまま喋んなよっ!」
「…………」

 …お前が聞いてきたから、答えようとしたんだろ。
 でも、いちいちチンコ口から出して会話してたんじゃ、萎えること間違いないから、お喋りはやめて、フェラに集中する。

 ちなみに、フェラはもちろん好きだけど、お前に最初にフェラしてやんのは、お前が絶倫すぎるからな。
 森下も相当だけど、有沢てそれよりもだからさ、先に1回は抜いとかないと、こっちが持たねぇの。足腰立たなくなる。

「そういえばさ、ミキちゃん、何で今日メガネしてないのっ…?」
「あぁっ?」

 …銜えたまま喋んなっつーなら、フェラしてる最中に話し掛けんじゃねぇよ。
 イラッとしながらも、俺は口から有沢のチンコを出して、有沢を睨んだ。ちょっと顎も怠くなってきたとこだったから、まぁいいけど。

「メガネ? らって目悪くねぇもん」
「たまにしてんじゃん…。何で」

 ベッチャベチャになってる口の周りを、有沢が拭ってくれる。
 てか、フェラ途中で中断されて、萎えねぇの?



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (6)


「若干メガネ男子を目指してた」
「やめたの?」
「飽きた」

 ブームぽかったのもあって、メガネしてるほうが、いつもよりちょっとモテたけど、まぁもういいかな、て。
 だって、メガネ、なかなか面倒くさいし。

「ミキちゃん、今日メガネは?」
「あぁ? カバン中入ってんじゃね? …んだよ、続けんぞ?」
「メガネ掛けてやってよ」
「はぁ?」

 有沢が意味不明なことを言い出すから、再び有沢のチンコを銜えようとしてた俺は、眉を寄せて顔を上げた。
 でも、ちょっと考えたら、有沢が何させたがってんのかが分かって、アホか、て言ってやりたくなった。

「…お前、ホント変態だな」
「まだ『メガネ掛けてやって』しか言ってねぇじゃん。つか、変態とか、ミキちゃんに言われたくないねっ」
「俺よりお前のほうが変態だよ。お前、あれだろ? メガネ顔射とかしてぇんだろ?」
「何で分かったの? させてよ」
「……」

 全然否定もしないし、隠しもしないとこが、逆にスゲェな。蔑むつもりが、言葉が出て来なかったわ。
 でも、メガネ掛けてフェラすんのはいいとして、その後に待ってるのが顔射だぞ? 精液、顔にぶっ掛けられんだぞ? AVかっつの。

「じゃあ、メガネはいいから、顔射させて」
「…死ねばいいのに」

 もー、何で俺、こんなヤツとセックスしようとしてんだろ。メガネがヤなんじゃなくて、顔射がヤなんだよ、バカ。
 でも今さら他のヤツ探すのもメンドイし、有沢は変態だけどセックスはうまいから、最終的には満足させてくれるだろうし……そう思えばこのまま続けるしかない。

「あっ、ちょっ…」

 俺は諦めにも似た気持ちで、有沢のチンコを銜え直した。
 咎めるような有沢の声が聞こえたけど、無視。

「ッ、ぁ、ヤバい、てっ…」

 ムカつくから、一気にイカセに掛かる。さっさとイカせて、ハメさせれば、もう顔射とか言ってる場合じゃねぇだろ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (7)


 頭を前後に動かしながら、唇で扱くようにして愛撫したり、唾液をたっぷり絡めて先っちょのトコを舐め回したりしてると、有沢の声がだんだん上擦ってく。
 フン、俺様のフェラテクを舐めんじゃねぇぞ。

「はっ、ぁ…ッ、ミキちゃ…」

 根元のほうを手で強めに擦り上げながら、もう片方の手で陰嚢を揉んでやる。
 有沢がめっちゃ感じてる声出すから、どんな顔してんだろ、て思って視線を上げたら、有沢とバッチリ目が合って、その直後に有沢のがさらにデカくなるから、ウェッてなった。
 お前な、目が合ってチンコデカくなるとか、純情派か。

「あーもう、ちょっ、マジッ…」

 有沢の焦った声。
 俺は構わず、尿道口に舌先を差し込んで、射精を促す。顔射されるくらいなら、口に出されるほうがマシだ。…いや、マシか? 口の中に出されんのも、かなりだぞ?
 うーん、結局のところ、どっちがマシなんだろ。

「ミキちゃっ…」

 あーでも、顔なら洗えば済むもんな。
 人のチンコ銜えた上に、口の中に精液出されるとか、そのほうが…

「…は?」

 何か頭押さえられてんなぁ…て思って、ふと見たら、目の前に有沢のチンコ。銜えてたはずなのに。
 しかも、何か顔がヌルヌルする…

「――――て、有沢、てめぇっ!」

 結局、顔射しやがったのかよっ!
 フェラしながら、何か気持ちが全然違うほうに行ってたから、有沢がイッたことに気が付かなかったの。その直前に、口からチンコ引き抜かれてたことにも。

「ゴメン、ゴメン、つい」
「……」

 全然悪いとか思ってない感じの口調で謝られて、イライラが増す。
 でもそれよりも、精液が顔を伝ってく感触が気持ち悪い。

「ぅ~~~…」

 相手の精液を自分の体のどこかで受け止める、て意味では、口に出されんのも、顔に掛けられんのも、そう変わんない気がするから、別にいいかな、て思えなくもないけど、顔に掛けられたときのこのヌルヌル感が気色悪い…。
 とにかく早く顔拭かないと…て、手探りで拭くものを取って、即行で顔に掛かった精液を拭った。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (8)


「ちょっ、ミキちゃんっ! それ俺の服ー!」
「知るかバカー! お前が顔に掛けっからだろーっ!!」

 何を掴んだのかも分からずに顔を拭いてたんだけど、どうやらそれは、さっきまで有沢が着てた服のようだった。
 でも俺は、即行で顔を拭きたかったんだ。お前が顔射とかするから。だから、お前の服で顔を拭いたところで、俺が文句を言われる筋合いなんかない。

「はーっ、ホントお前、最悪だな」
「だってしょうがねぇじゃん、ミキちゃんがかわいかったんだもん」
「死ね」

 気持ち悪さがないくらいまでしっかりと顔を拭いた後、その有沢の服をポイと床に投げた。

「でもさ、されるほうはアレかもだけど、するのはめっちゃいいわ、顔射」
「…………」

 精液でベタベタになった服に、もう諦めてしまったのか、有沢は服についてはもう何も言って来なかったけれど、代わりにまたぶっ飛ばしたくなるようなことをほざきやがった。

「……あーそうかよ。じゃあ今からお前の顔にぶっ掛けてやっから、ツラ貸せ、このヤロウっ!」
「わーっ、ゴメンなさいっ!! ミキちゃん、早まらないでっ!」

 有沢をベッドに突き飛ばして、その顔目掛けて射精してやろうかと思ったら、有沢に無理やり取り押さえられた。

「ミキちゃん、ゴメンて」
「ぅン…!」

 押し倒されてキスされて、ねじ込まれた舌で口の中を蹂躙されたら、もうダメ。
 後は有沢の好きなようにさせるしかない。

「ッ、はっ…」
「ミキちゃんも勃ってる…。フェラすると感じんの? それとも顔射?」
「んぁっ!」

 少しだけ唇を離されて、何を言うのかと思えば、またアホなこと言い出すから、殴り飛ばしてやろうとしたのに、有沢にチンコの先を握られ、快感が走って何も出来なくなった。

「あっ、ん…、んっ」
「ミキちゃん、かーいい」

 見えないけど、チンコからすげぇカウパー出てんのが分かる。だって、すげぇグチャグチャ言ってんのが聞こえる。
 あー…後ろも弄ってほしい…。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (9)


「めっちゃ腰動いてんね、ミキちゃん。そんなに気持ちいい?」
「ンッ、ぅん、すっげぇいい…。あ、あっ…もっと…」
「もっとしてほしい? チンコ弄ってほしいの? こっちじゃなくて?」
「ひゃうっ!」

 前だけじゃなくて、後ろも弄ってほしいとは思ってたけど、快感に翻弄されて油断してたから、急に後ろに指を這わされて、ビクッてなった。

「あー…はぁ、はぁっ…ん、指入れて、もっと…」
「ちょっと待って、ローション…」

 サイドテーブルに手を伸ばした有沢が、ローションのボトルを掴む。
 手っとり早くていいけどさ、少しは隠しとけよ、そういうモンは。

「んぁっ…! バッ…冷てっ…」
「ゴメン、ゴメン。はい、指入れますよー」
「んんんっ、あっ…、あぁっ!」

 ズブズブと有沢の指が、遠慮なく中へと進んでいく。
 中を擦られんのが、堪んなく気持ちいい。

「あーっ、あっ、ンッ、気持ちいっ…、あぅ、んっ」
「すっごいね、ミキちゃん。指3本入ってんだよ? 分かる?」
「あ、あ、あ、やっ、有沢、そこヤッ…」
「何で? ここ、ミキちゃんの気持ちいいトコでしょ?」

 後ろと前の両方をいっぺんに刺激され、ただでさえ堪んなくなってんのに、前立腺をグリグリ押されて、一気に射精感が高まる。

「あぅっ、らめ、あっあっ、ぅんっ…!」

 もう無理! て逃げ出しそうになった体を押さえられ、キスで唇を塞がれる。
 頭の中がジンッ…と痺れてきて、もう何も考えらんない。

「んんっ…あああっ…!」

 我慢するのはやめて、有沢にされるがまま快感に身を任せ、俺は一気に上り詰めた。

「――――…………はっ…ん、ん…」

 …あーあ、有沢の入れる前にイッちゃった…。
 これじゃ、何のために最初に有沢の抜いてやったんだか分かんねぇし…。

「すっげ出た。ミキちゃん、最近シテねぇの?」
「…シテるし」

 有沢とのセックスに、ムードとか何も求めてねぇからいいけど、お前さ、イッた直後の相手に向かって、手で受け止めた精液とか見せ付けてくんなよ。
 俺、別にそういうプレイとか好きなわけじゃねぇから。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (10)


「森下?」
「何が?」
「相手」
「そーだけど。他に誰がいんだよ」

 セフレはまぁ他にもいるけど、家に帰れば手軽な相手がいるんだから、わざわざ日々探し歩いたりはしない。
 今日は、セックスしてぇなぁ、て思ったのに、森下が出張でいないから有沢に電話したけど、自分の右手で事足りることだってある。

「何か森下のセックスて、ねちっこそう」
「でも、お前ほどしつこくはない」

 有沢と森下は互いに面識あるけど、相手がどんなセックスするかまでは知らないだろうに、有沢は何か勝手なこと言ってる。
 それは、あながち間違っちゃいないけど、お前もなかなかだぞ?

「ねぇねぇ、どっちがうまい? 俺と森下」
「はぁ? それ聞く?」
「だって何か森下ごときに負けたくねぇじゃん」
「はいはい、有沢くんのほうがうまいですよ」

 確かに有沢はセックスがうまいけど、こういうこと聞いてくるトコが、森下よりガキだよな。

「じゃ今日も、いーっぱいミキちゃんのこと気持ちよくさせてあげられるように、がんばるね」
「いいよ、普通で――――て、ぅん…!」

 この絶倫有沢にいっぱいがんばられたら、絶対に身が持たない…! て思って、さりげなくそれを拒もうとしたのに、その前に笑顔の有沢が体をまさぐって来やがった。
 まだ体が敏感になってるまんまだから、触られると、すっげゾワゾワする。
 でも有沢は手を止めてくんなくて、また俺ん中に指入れて掻き回しながら、乳首をキュウて抓んでくる。

「あぁぅんっ! ちょっ待っ…」
「何でー? 気持ちいいっしょ? ミキちゃん、乳首弄られんの好きじゃん?」
「バッ…死ねっ! あっ、ン!」

 逃げようとジタバタ暴れても、有沢に伸し掛かられてて、身動きが取れない。重いんだよ、このデブ! いや、太っちゃいねぇけど、じゃなくて、ううぅんっ!
 確かに乳首は感じる。弄られんのも好きだ。今だって、有沢に弄繰り回されて、中に入ってる指をキュウキュウ締め付けてんのが分かる。
 でもこのままじゃ、有沢のチンコ入れられる前に、またイッちまいそう…。

「もっ…、有沢、しつけぇっ…!」
「ぁにが?」

 分かってるくせに、有沢は俺の乳首に吸い付いて、唇と舌で嬲ってくる。
 ダメダメ! 俺、後ろだけでもイケちゃう人なの。このままじゃ、ホントにイク。マジでダメ。お願い、もうやめて。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (11)


「有沢っ…!」
「んー?」
「クッ…」

 俺がこんなに切羽詰ってるってのに、有沢がのん気な声で返事をするから、本気で殺意を覚える。
 あーでも、今有沢に死なれたら、俺のこの昂った体をどうしたらいいか分かんなくなるから、やっぱり死んでもらっちゃ困る。

「なぁに、ミキちゃん」
「っ、んぅぁぁ…ん、ンっ…」

 耳たぶを食まれて、ますます泣きたくなる。
 耳と乳首とお尻。その三点責めに堪え切れる自信なんて、まったくもって更々ない!

「はぁんっ、もぉっ…、あ、あっ」
「ミキちゃん、腰めっちゃ動いてる…」
「やぁっ…、も、マジでっ…」

 ここまで来て、焦らしプレイとか、マジでやめてくれ。
 俺、焦らされんの、マジ嫌なの。ダメなの。早く入れて、ガンガン突いて。

「早くっ! 有沢、早く入れてよぉっ…!」
「指じゃダメなの? ミキちゃんの中、俺の指、めっちゃ締め付けてっけど。気持ちいいんでしょ?」
「ヤダヤダぁ! 有沢のっ…、有沢のがいいっ…!」

 テメェだって入れてぇだろうが! 何、余裕ぶっこいてんだよ、このヤロウ!
 俺は、涙と涎で顔をグチャグチャにしながらも、有沢のチンコに手を伸ばす。何だよ、もうっ。やっぱお前だって、バッキバキに硬くなってんじゃんか!

「ミキちゃん、超エッチ…。これ、欲しいの?」
「あ…」

 有沢は俺の手を外させると、中からズルリと指を引き抜いて、俺の両足を抱え上げた。
 まんぐり返しに恥ずかしいとか思う前に、有沢のチンコが後ろに宛がわれで、俺はようやく入れてもらえる…て期待に、有沢を見つめたけど、有沢はすぐには入れてくれない。
 しかも、何かニヤッて笑った気がする…。

「入れてほしい?」

 有沢の笑顔に、何となく嫌な予感を覚えていたら、案の定、有沢はまだ俺のことを焦らすつもりなのか、この期に及んで、そんなことを聞いてくる。
 ここまで来て、入れられたくないわけないだろ! バカか!



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (12)


「ほしい…」
「じゃあさ、かわいくおねだりして?」
「ッ、殺すっ…!」
「かわいく、て言ったのに…」

 キッと睨み付けたら、有沢はオーバーなリアクションで肩を竦めた。
 けど、穴の入り口んトコを有沢のでヌルヌルされてると、めっちゃ腰動く…。このまま我慢比べ、なんてことになったら、どう考えても、俺のほうが分が悪い。

「有沢…」
「ぅん?」

 俺は観念して、有沢に声を掛けた。

「有沢のチンコ、入れて…」
「どこに?」
「、、、、、ッ…、俺の、お尻っ…! ――――あああぁっ…!」

 恥ずかしいとかじゃなくて、悔しさのあまり、声が大きくなる。それでも有沢は十分に満足したみたいで、「…オッケ」て言って、ずぶずぶぅ~て一気に腰を進めてきた。
 急にお腹の中が重たくなる。散々慣らされ、焦らされてたから、痛いとかはないけど、有沢のチンコはデカいから、衝撃が半端ない。目の前が白くなる。

「………………ちゃん、ミキちゃん!」
「―え…?」
「大丈夫?」

 なぜか有沢に必死に名前呼ばれてて、何のことかと思って目を開ければ、有沢が何だか神妙な顔をしてた。

「ミキちゃん、今ちょっと意識飛ばしたでしょ。大丈夫?」
「そう…? 分かんない…」

 あースッゲェいい! て思った後はもう、有沢に名前呼ばれてたし。
 突っ込まれて、気持ちよくて、意識飛ばしちゃったの。俺、今日もうダメかも…。

「しかも、イッちゃってるし。まだ入れただけなのに」
「ウソ…。マジかぁ~」

 トコロテンとか、ないわー。いや、気持ちいいから、トコロテン自体はいいんだけど、俺だけイキまくってんのが…。
 だって、有沢がまだイッてないのは、中に入ってるヤツのチンコの硬さで分かる。これでメチャクチャに突かれたら、俺、またイッちゃうんだろうな……て思ってたら。

「つかっ…、ね、ミキちゃん、ちょっお願い…」
「は…?」
「もうちょい緩めて…。締め過ぎ…!」
「バカか」

 さっきまで人の心配してたくせに、何なんだよ、お前。実は余裕ねぇのかよ。
 …かわいいヤツ。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (13)


「だって、もうイキそうなんだもん…」
「イケよ」
「あっ、ちょっ、ミキちゃん!」

 ちょっとシュンとなってる有沢をかわいく思いつつも、中に入ってるチンコをギュッと締め付けたら、有沢が焦り出すから、何か笑える。
 俺は、有沢の髪をクシャッと撫でた。

「イケって、有沢。出してぇんだろ、精子。俺ん中に突っ込んで、締め付けられて、イキそうなんだろっ…?」
「ッ…、ミキちゃんっ…」
「ああぁっ! あっ、あっ、っ、あぁ…!」

 俺が煽ったせいか、有沢は俺の足を掴み直すと、ガンガン突いてくる。
 有沢のが出たり入ったりして、中を擦られて、半端なく気持ちいい。

「ひっ、ひぅっ、ン、すごっ…、ぁっ」
「はぁっ…、んっ、気持ちいぃっ…? ミキちゃんっ…」
「んっ、ぅん、んぁっ、あ、ッ気持ちいぃぃ…っ!」
「…ん、俺も」

 そう言ったかと思うと、有沢は角度を変えて突き上げて来て、俺は堪えらんなくなって、側にあった枕にしがみ付いた。
 んなもんに掴まったところで、どうしようもないけど、俺の足を掴んでる有沢には手が届かないから、こうでもしてないと、どうにもならなくなる。

 …つか、イキそうだ、て言ったくせに、有沢はまだ全然元気で、俺のほうが先にイキそうなんですけど!
 でも、早くイケよ…て思う反面、気持ちよすぎて、まだまだこのままでいたいとも思ってしまう。だって、すっげぇ奥のほうまで入ってる。マジでダメ、そこは、

「あぁーっ! 有沢、有沢ぃー!」
「ん、んっ、分かったってっ…」
「あぅっ」

 ズルッと有沢のが抜けて、え? と思う間もなく、俺の体は引っ繰り返され、今度はバックから突かれる。
 有沢の手が支えててくれるからどうにかなってるけど、もう腰なんて全然立たなくなってて、俺は枕に顔を突っ伏した。

「やっ、も、すごっ、当たっ…」
「当たってる…っ…? どこっ?」
「分かんな、あっ、あっ…!」
「ミキちゃんの、気持ちいいトコ、でしょっ?」

 気持ちいいトコつったって、もう体中、どっこも全部気持ちよくなっちゃってるもん。
 背中に覆い被さってる有沢の荒い息遣いが耳元を掠めるだけで、全身に快感が駆け巡ってくの。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (14)


「っ、ヤベ、イクっ…」

 有沢の腰遣いが、さらに激しくなる。
 ドスドスと奥を突かれて、俺も狂ったように腰を振った。

「――――……ッ、んぁあ…っっ…」

 堪んないくらいの快感に犯された俺は、ギュッと枕を握り締め、固く目を閉じる。
 その瞬間、有沢がトドメとばかりに最奥を突き上げて来て、俺は呆気なく陥落。思っきし精液を吐き出してた。

「うぅん…ん…」

 どっちが先にイッたのかはよく分かんないけど、気付いたら有沢の腰は止まってた。
 バックでやってたときの体勢のまんま、有沢は後ろから俺を抱き締め、首筋とかに唇を這わせてくるから、何か気持ちよくて、ウットリしてきちゃう。
 でも、四つん這いが崩れたみたいな格好は、今の俺には股関節が怠くてキツいから、起き上がりたい…て思うけど、そのためには有沢がチンコ抜いてくんないとなんだけど。

「有沢、ちょっ…この体勢、ヤ…」
「何で? バックですんの、ヤダった?」
「いいけどっ…、これ以上は無理…。足腰立たなくなる…」

 バックは恥ずかしいから嫌…とかじゃなくて(ホントに嫌なら、さっき体勢引っ繰り返された時点で、どうにかしてるし)、今、体勢的に苦しいから、何とかしてほしいだけ。
 有沢も気ィ遣って、あんま俺に体重掛けないようにしてくれてるけど、チンコ突っ込まれたまま、腰を押さえられてる状態は、ヤッてる最中はいいけど、今となってはキツいだけだ。

「立たなくなってもいいじゃん。ミキちゃん、今日泊まってくっしょ?」
「泊まってくけどっ! 明日まで響くの! 俺、お前ほど若くねぇし、絶倫じゃねぇの!」
「若く、て……1個しか違わねぇじゃん」

 今だけツライなら、ヤダけど、まぁ堪えられないこともない。
 でも、明日に影響するのは困る。だって明日は、マナくんがご飯作りに来てくれる日だ。なのに、足腰立たないとか、絶対ヤダ…。

「じゃあ、明日もウチにいなよ。どうせ森下いないんだろ?」
「ダメ! 明日帰るの! すぐ帰る!」
「何で。すぐ、て」

 有沢のセックスはすげぇ気持ちいいし、ずっとしてたい…て思うけど、それも、マナくんのかわいさには敵わない。マナくんのかわいさには敵わない!



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (15)


「ねぇミキちゃん、何で?」
「うっせぇな、言わねぇよっ……っあ!」
「えー知りたいなぁ」
「ちょっ有沢っ!」

 何で? 何で? て子どもみたいに聞いてくる有沢の手は、その口調とは違って全然子どもみたいでなく、俺の胸をまさぐってくる。
 逃げようとしたって、後ろからチンコ突っ込まれたままの状態じゃ、何をどうすることも出来ないのに。

「あ、ちょっ、バカっ…」

 有沢の手付きが、本気で俺を追い上げようとしてるときと同じだ。
 しかも、俺の中、有沢のチンコが硬さを増してる。

 マ ジ で す か !

 俺がマナくんのこと隠してるから、それにムカついて、こんな形で口を割らそうとしてんの? ガキか!
 いや、でも今はそれどころじゃない。もっかいやるにしたって、ちょ…ちょっと休憩…!

「バッ…硬くすんなぁ…!」
「だって、ミキちゃんの中、気持ちいーんだもん…」
「さっさと抜けっ! そしたら収まっからっ…!」

 このままじゃヤバイて思って、俺は必死に抵抗するものの、ガッチリと有沢に押さえられて逃げられない。
 ウソ…、ヤダヤダ、無理!
 だって俺、もう3回もイッてる。絶倫の有沢とは違うんだから、これ以上は無理だってば…!

「やっ、有沢っ…――――あああぁっっ…!!」
「ッ…」

 急に視界がグンッ…と動いて、何事!? と思う間もなく、俺は下からの強い衝撃に仰け反った。
 頭ン中が痺れるみたいになって、何も考えらんなくなる。

「あっ…あ……ぁ…」

 また、意識を飛ばしちゃったんだろうか、よく分かんない。
 痙攣するみたいにビクビク震える俺の足が視界に入ったところで、俺はようやく、有沢が俺に突っ込んだまま、俺の体ごと起き上がったんだってことに気が付いた。
 バックから、背面座位の格好。
 そりゃ、下から思いっ切り衝撃来るわけだわ――――て、おいっ!



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (16)


「ミキちゃん、大丈夫?」
「なわけねぇだろっ! バカかっ」
「もう精液、薄いのしか出ないね」
「んぁっ」

 俺が怒鳴っても、有沢のバカには全然通じてないみたいで、チンコの先を揉み込むように弄ってくる。
 体勢が変わって下から突き上げられたとき、俺は意識を飛ばしただけでなく、またイッちゃってたみたいだけど、薄いのしか出ない…て、当たり前だ。何回イッたと思ってやがる。

「や…やめ…、俺、何回イッたと思って…」
「大丈夫、俺も今イッちゃった」

 いやいやいや、意味分かんねぇ。
 何が大丈夫なんだ。イッちゃったんなら、何でチンコ硬いままなんだ。何でそんなに元気なんだ。お前の精子のタンクに、空という言葉はないのかっ!?
 …でも、俺がどんなに思っても、そんなの有沢には何も伝わんないみたいで、少しも離してくれない。

「ミキちゃんも勃ってる…」
「やっ…、ヤダヤダ、無理っ……あぅんっ!」

 俺は有沢から逃げ出そうとするけど、後ろから腕をお腹に回されて引き寄せられて、また深く有沢のを銜え込んでしまう。
 勃ってるったって、そりゃ勃ちはするけどさ、もう出すモンねぇから、イケねぇって。

「大丈夫、明日お家まで送ったげるから」
「そーゆう問題じゃ…!」

 ここには車で来たけど、明日、運転できないくらい足腰痛かったら、当然家まで送らせるつもりだ。でも、今俺が無理て言ってるのはそういうことじゃない。
 あーもうっ! コイツ、どこまでバカなんだ!

 でも、お腹のトコ押さえるのとは反対の手が、乳首をギューて抓んで来ると、もう出すモンもないのに、俺のチンコてば、素直に硬くなっちゃってるし…。

「ふっ、く、んっ…んぁっ!」

 下から突き上げられて、どこにも掴まるところがないから、浮き上がった俺の体は、その衝撃を弱めることも出来ずに有沢の上に落ちて、またチンコがぶっ刺さる。
 俺は有沢の胸に寄り掛かったまま、どうすることも出来ずに、ガクガクと揺さぶられるだけだ。

「あ…あっ…有沢っ…、イヤっ、やっ…」
「何がヤ? 気持ちいいのにヤなのっ?」
「はっ…激しっ…、お尻、壊れちゃっ、」

 もう無理だっつってんのに、有沢は全然動きを止めてくれない。
 じゅぶじゅぶ、すっげぇ音がする。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

あなたの思うがまま (17)


「あー…すっげ気持ちいい…」
「あ、あぅっ…んっ…」

 首筋から耳の裏っ側のトコまで舌と唇で嬲られながら、最後に耳元にそんな甘ったるい声を注ぎ込まれちゃったら、もう堪んなくなっちまうだろっ…!
 もうダメだ。なけなしの理性が、デロデロになってく。
 しかも、そんな俺を見透かしたみたいに、有沢の腰の動きはますます激しくなってくし。

「…っ、ん、ミキちゃんっ…、イキそっ…」
「はぁっ…ぅ、んっ…、ダメっ…」
「ダメ? イッたらダメっ…? まだっ、こうしててほしぃっ…?」
「んっ、ぅんっ…」

 さっきまで、もう無理だって思ってたくせに、今は、この激しい突き上げを、やめないでほしいとか思ってる。もっとグチャグチャになるまで、どうにかしてほしい。
 誰だよ、もう出すモンねぇから、イケねぇとか言ってたヤツは。あ、俺だ。

「あ、はっ…、有沢…」
「んっ、んっ…? 何…?」
「ぅん…」

 体を少し捩って後ろへと手を伸ばして、有沢の頭を引き寄せる。
 何? なんてアホなことを聞き返してくる有沢の唇をキスで塞げば、すぐに舌が入り込んできた。あーホント堪んない。

「んっ…ん……」

 酸素足んなくなるくらい深くキスして。有沢にガツガツ突き上げられて。
 俺はギュウギュウと有沢のを締め付ける。

「ぁ、ッ…ダメ、ホントっ…」
「ひッ、あぁああっ…!」

 唇が離れて、有沢の本当に切羽詰った声が聞こえた次の瞬間には、スッゲェ深いとこまで突っ込まれて、背中をとんでもない快感が駆け上がっていく。
 頭ン中、スパーク。
 久々にドライでイッたわ…。

「っ、はっ…、ミキちゃん…」

 あんなに激しかった腰の動きは止まって、有沢は突っ込んだまま、俺の背中にピットリとくっ付いてきた。
 重ぇよ…。しかも暑いし。
 でも、さすがに俺ももう全然動けなくて、そのままにさせておく。あーもうマジ、指1本動かせねぇ…。



back    next
関連記事

カテゴリー:HA-HA! 僕らマッチ箱みたいな世界で生きてる

recent entry

recent comments

thank you for coming

category

monthly archive

2037年 01月 【1件】
2017年 01月 【1件】
2016年 11月 【13件】
2016年 10月 【15件】
2016年 09月 【1件】
2016年 08月 【3件】
2016年 07月 【17件】
2016年 06月 【12件】
2016年 05月 【13件】
2016年 04月 【14件】
2016年 03月 【12件】
2016年 02月 【18件】
2016年 01月 【28件】
2015年 12月 【30件】
2015年 11月 【28件】
2015年 10月 【31件】
2015年 09月 【27件】
2015年 08月 【2件】
2015年 07月 【1件】
2015年 06月 【24件】
2015年 05月 【31件】
2015年 04月 【31件】
2015年 03月 【31件】
2015年 02月 【22件】
2015年 01月 【31件】
2014年 12月 【30件】
2014年 11月 【30件】
2014年 10月 【29件】
2014年 09月 【22件】
2014年 08月 【31件】
2014年 07月 【31件】
2014年 06月 【30件】
2014年 05月 【31件】
2014年 04月 【30件】
2014年 03月 【31件】
2014年 02月 【28件】
2014年 01月 【30件】
2013年 12月 【14件】
2013年 11月 【30件】
2013年 10月 【31件】
2013年 09月 【30件】
2013年 08月 【31件】
2013年 07月 【31件】
2013年 06月 【30件】
2013年 05月 【31件】
2013年 04月 【31件】
2013年 03月 【32件】
2013年 02月 【28件】
2013年 01月 【31件】
2012年 12月 【31件】
2012年 11月 【30件】
2012年 10月 【31件】
2012年 09月 【30件】
2012年 08月 【31件】
2012年 07月 【31件】
2012年 06月 【30件】
2012年 05月 【32件】
2012年 04月 【30件】
2012年 03月 【29件】
2012年 02月 【29件】
2012年 01月 【33件】
2011年 12月 【35件】
2011年 11月 【30件】
2011年 10月 【31件】
2011年 09月 【31件】
2011年 08月 【31件】
2011年 07月 【31件】
2011年 06月 【31件】
2011年 05月 【34件】
2011年 04月 【30件】
2011年 03月 【31件】
2011年 02月 【28件】
2011年 01月 【31件】
2010年 12月 【31件】
2010年 11月 【30件】
2010年 10月 【31件】
2010年 09月 【30件】
2010年 08月 【32件】
2010年 07月 【31件】
2010年 06月 【31件】
2010年 05月 【32件】
2010年 04月 【30件】
2010年 03月 【31件】
2010年 02月 【28件】
2010年 01月 【32件】
2009年 12月 【32件】
2009年 11月 【31件】
2009年 10月 【34件】
2009年 09月 【32件】
2009年 08月 【31件】
2009年 07月 【34件】
2009年 06月 【30件】
2009年 05月 【32件】
2009年 04月 【31件】
2009年 03月 【32件】
2009年 02月 【28件】
2009年 01月 【32件】
2008年 12月 【40件】
2008年 11月 【38件】
2008年 10月 【37件】
2008年 09月 【32件】
2008年 08月 【33件】
2008年 07月 【32件】
2008年 06月 【31件】
2008年 05月 【33件】
2008年 04月 【31件】
2008年 03月 【32件】
2008年 02月 【29件】
2008年 01月 【35件】

ranking

sister companies

明日 お題配布
さよならドロシー 1000のだいすき。
東京の坂道 東京の坂道ほか
無垢で無知 言葉の倉庫

music & books