恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2008年06月

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5. 「理解できたか? 淫乱ちゃん」 (後編) R18


*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。

「あぁ、もぉ……センセェ!」
「イキそう? イクの? 水瀬」

 ガクガクと体を揺さ振られながら、水瀬は何度も頷く。
 もうダメ。持たない。このまま快感に流されて、イッちゃいたい。

「センセ…!」

 堪え切れずに、水瀬は栗原の唇を奪う。クチュクチュと、上も下も繋がって。頭の中が白くなる。

「んんー…!!」

 グンッ…と大きく突き上げられて、水瀬はその強い刺激に自身を解き放つ。体の力を失った水瀬は、けれど休む間も与えられずに、栗原に腰を動かされる。

「はぁ、はぁん……センセ、や…もぉ…」

 体が持たない。
 そう思うのに、いったばかりの体は敏感すぎて。

「やぁ…センセ、もぉイッて、お願……あぁ!」

 腰を力強く抱かれて。水瀬はキュウと中の栗原を締め付ける。

「クッ…」

 ドクリと、中に熱い精液が流れ込んでくる。

「あ…あぁ…」

 恍惚とした表情で、栗原の胸に体を預ける水瀬。下はまだ、繋がったままで。

「センセ…」
「ふふ…かわいいなぁ、お前」

 汗で額に張り付いた前髪を掻き上げてやって、キス。

「センセ、激し過ぎ…」

 腰が重い。明日、立てるかな?
 それにしても。

「こんな補習だなんて、聞いてない…」
「でも好きだろ? こういうの」
「英語よりはね」
「ホント、減らず口ばっか」

 さっきまであんなにかわいいことを言ってたくせに。

「ねぇ、センセって、いっつもこんな補習してんだ? エッチー」
「"特別に"って、最初お前に言わなかったか?」
「嘘ばっか。みんなにしてんでしょ? 校長センセーに言いつけてやる」
「信用ないな、俺」
「だって、すごい上手だったし」
「そりゃどうも」

 一応、褒め言葉として受け止めておくけれど。でも、水瀬だって十分乗り気だったし、栗原のほうこそ、取り込まれそうになったくらいだ。

「それよりも、」
「え? や、ちょ…」

 栗原に腰を動かされて、水瀬は少し慌てる。逃げようにも、まだ、栗原を受け入れたままで。

「今日の補習は、ちゃんと理解できたか? 淫乱ちゃん」
「あぁ…」

 残り火がまた燃え上がるような。
 水瀬の瞳が蕩けていく。

「…………ダメ、まだ足んない…。もっとしてくんなきゃ」

 水瀬は、肌蹴た栗原のシャツを脱がすと、その首筋にキスを落とした。




*END*





 まぁ…単にエロが書きたかっただけなんですけどね。
 続きまして生徒ver.です。またエロです。
 ……違う話、挟んだほうがいいかしら。
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old days ~真琴、初恋編~


*マコちゃん、中2設定です。

「お兄ちゃーん、お兄ちゃん、お兄ちゃーん」
「んー? どうした、マコ」
「何か胸が苦しい…」
「え!? な、具合悪いの?」
「んー…何かね、ドキドキする」
「ドキドキ? 動悸がするってこと?」
「ギューってなる」
「え、」
「食欲もないし、」
「…うん (さっき、デザートにプリン食べてたじゃん…)」
「あの人のこと思うと、夜もあんま眠れない」
「…………………………。あの人~~~~!?」
「はぁ~…俺、病気になった?」
「マママママコ!!!」
「……何?」
「それはもしかして、"恋の病"というヤツじゃ…」
「………………恋?」
「胸がドキドキしたり、ギューッとしたりするのは、その人のこと考えてるときなんだろ?」
「うん」
「その人のことを思うと、ご飯がのどを通らなかったり、眠れなかったり」
「うん」
「……………………」
「恋かぁ…」
「同じクラスの子?」
「んーん、先輩」
「先輩かぁ… (まぁマコ、甘えたがりだし、年上を好きになるのも分かる気がする…)」
「野球部の、」
「マネージャー?」
「ピッチャー」
「ブッ!」
「???」
「え、えっと…マコの学校って… (女子の野球部なんかなかったよな…?)」
「その人ね、すごいカッコよくてね、はぁ~…」
「…………………………」
「お兄ちゃん?」
「マコマコマコ!」
「何?」
「今の話、お父さんとお母さんには内緒だぞ!」
「んん?」



***

弟「ただいまぁ~……て、マコ、兄ちゃん放心してっけど、どうした?」
マ「分かんない」





 カミングアウトまでは、もうしばらく時間が掛かる感じです。

 マコちゃん、お兄ちゃん2人には存分に甘やかされ、弟からも「マコはボーっとしてるから、俺がしっかりしないと」て思われてんですよね。


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1. 「教えてよセンセー」 (前編)


*続きまして、生徒ver.です。

「あ゛ー……日曜日、補習だー…」

 ホームルームが終わって、みんながガヤガヤと帰り支度をしている中、鬱々とした表情で机に突っ伏したのは、クラスメイトの水瀬だ。
 成績優秀なくせに、なぜか英語だけはどうにもならない成績の水瀬には、週末の補習が待っているのだ。

「篠崎ー…」

 チラリと隣の席の篠崎を窺う。

「ん? どうした? 暗い顔してるね」
「だって、えーごのほしゅーがぁ…」
「あぁ、中間の結果、ひどかったもんね」

 水瀬ほど成績はよろしくないものの、どの教科も満遍なく平均点以上を採っている篠崎は、楽しい週末だ。

「はぁ…」
「不思議だねぇ、他の教科はあんなにいい成績なのに」
「きっと栗原の教え方が下手なんだ」
「そう…かな?」

 篠崎は思わず苦笑いした。英語教諭の栗原の授業は、おもしろくて分かりやすいと、生徒たちの間では評判のはずなのだが。

「いいなぁ、篠崎は補習なくて。俺も土日、満喫したぁ~い」
「そう? 俺は学校来れないの、ちょっと残念だけど」
「へ?」
「あ、いや…」

 篠崎は適当にごまかした。

(だって学校が休みだと、会えなくなっちゃうし…)

 ふと篠崎は、愛しいあの人のことを思った。
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1. 「教えてよセンセー」 (後編)


「セーンセ、」

 ノックもなしにドアを開けたのは、数学準備室。篠崎は、デスクに向かっている背中を見つけ、口元を緩ませる。

「篠崎。どうした?」

 椅子を回転させて振り返ったのは、篠崎たちの数学を受け持っている教諭の片倉。

「先生に会いたくて」
「え? 何か授業で分からないことあった? 篠崎は数学の補習、なかったよね?」
「ないよ。だから今会いに来たの。聞きたいことあって」
「篠崎は真面目だね」

 補習を受けるほどの成績でもないのに、わざわざ質問に来る篠崎を勉強熱心な生徒と思ったのか、片倉は嬉しそうな表情を見せる。

「どこが分かんないの? あ、そこ座って?」

 促されるまま、篠崎は来客用のソファに腰掛けた。片倉はその向かいに腰を下ろす。

「ねぇ、先生って恋人いるの?」
「…は?」

 教科書を捲っていた片倉の手が止まった。

「何?」
「恋人。いるの? いないの? 教えてよ、センセー」
「何でそんなこと、篠崎に教えなきゃいけないの?」
「どんな人?」
「だから、何で教えなきゃいけないんだって」

 困ったような、怒ったような、片倉の表情。
 少しあどけなくて、いとおしい。

「ホラ、早く教科書広げなよ。聞きたいことあるんだろ?」
「うん。だから聞いてるじゃん」
「は?」
「恋人いないのかって」
「何言って…」
「答えてよ、片倉センセー」

 片倉の手から、教科書を奪い取った。
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2. 「そんなんじゃ分かんないよ」


 片倉は、困ったように篠崎を見ていた。

「篠崎、教科書」
「答えてくんなきゃ返さない」
「いいかげんに、」
「何で答えてくんないの? 答えたら返すって言ってんのに」
「…………。いないよ」

 はぁ、と、溜め息と共に、片倉はそう答えた。そして、教科書を返せと手を差し出す。けれど篠崎はまだ返す気がないらしく、教科書を片倉の届かない位置に持ち返る。

「ね、じゃあ、俺のこと恋人にして?」
「は? 何言ってんの? それより教科書返してよ」
「イヤ」
「篠崎!」

 片倉の声が荒くなる。

「ふざけてないよ。超本気。俺、先生のことが好きなの」
「そんなこと…」

 真剣な表情の篠崎に見つめられ、不覚にも片倉はドキリとする。落ち着きなく指を動かしながら、視線を彷徨わせる。

「そ、そんなこと言われたって…………困る」

 篠崎の視線から逃げるように、片倉は目を伏せた。

「困るって、何で? 俺のこと、嫌い?」
「そうじゃなくて! だって男だし、俺!」
「俺だって男だよ」
「だったら!」

 どうして篠崎は分かってくれないのだろう。俺の言ってること、何か変? 俺も男、篠崎も男なのに、何で好きだとか言うの?

「それに……俺、先生だし」
「知ってるよ。で、俺生徒」
「なら、恋人にはなれないでしょ?」
「何で? 何その答え。そんなんじゃ分かんないよ。じゃあ先生、」

 片倉はゆっくりと顔を上げた。

「先生、何でよく俺のこと見てんの?」
「ッ、」

 篠崎と目が合って、片倉はハッと息を飲んだ。
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3. 「俺が教えてあげよっか」 (前編)


 篠崎の真っ直ぐな視線に、片倉はどうしようもなく心拍数が上がるのを感じた。

「何で?」
「…………」

 篠崎の、言うとおりだった。
 授業中も、休み時間に廊下で見かけたときも、放課後、部活をがんばっているときも。気が付くと、つい彼を目で追っていた自分。認めたくはなかったけれど。

「俺、男だし、いっぱいいる生徒の中の1人だよ。なのに何で?」
「それは…」

 認めたくなんかないよ。
 男なのに、男が好きだなんて。そんなの絶対、認めない。

「俺が教えてあげよっか?」

 片倉の教科書をテーブルに置くと、ふと篠崎が身を乗り出してきた。反射的に片倉は身構える。

「何、しのざ…」

 そっと。触れるだけのキス。すぐに離れて。

「ッ、」

 けれど顔がまだすごく近くにあって、ハッと我に返った片倉は慌てて顔を離して、けれどソファに座ったままだったから、逃げ場なんか殆どなくて、結局深く座り直すだけに終わった。

「な、な、な、な、何すっ…!!」
「先生、どもり過ぎ」
「だ、だ、だ、だって!!」
「ふはっ…」

 あまりにも片倉が慌てるものだから、先ほどまでの重い空気は一変。篠崎は思わず吹き出してしまった。

「なっ……何笑って…!?」

 仕舞いには腹を抱えて笑い出した篠崎に、片倉は顔を真っ赤にして憤る。
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3. 「俺が教えてあげよっか」 (後編)


「だって、センセ、顔真っ赤」
「ッ、だっ…おま、ぁ、」
「別に初めてってわけじゃないんでしょ? キスくらい」
「で、で、で、でも! 男とは初めてだし!」
「え? マジ!?」

 慌てふためいている片倉の口から飛び出した、篠崎にしては予想外な言葉。

「当たり前だろ!」

 片倉は耳まで赤くして、口を押さえる。

「嘘」
「ホントだよ!」
「…………かわいい……」
「はっ!?」

 すっかり動転している片倉は、篠崎の言葉1つにも大げさに反応を返す。それが余計に篠崎の心を動かすのだけれど。

「し、しのざ、篠崎! な、な、何でこんなことしたのか、説明しなさ…」
「だからさっき言ったじゃないですか。先生のことが好きだって」
「好、き…」

 片倉は何度か瞬きをした後、はぁ…と大きく息を吐き出した。

「先生はどうなの?」
「え?」
「俺にキスされて。嫌だった?」
「嫌っていうか…………ビックリして…」

 思い出したのか、片倉はまた唇に触れて顔を赤くしている。
 いくら男にされたからといって、もう成人したいい大人なのに、何でキスだけでこんなに顔を赤くしているのだろうか。
 というか、さっきまで男同士だとか何だとか言っていたくせに、男にキスされたのが『嫌』でなくて『ビックリした』だなんて。

「ねぇ、センセ……もっかいキスしよ?」
「……しのざ…」
「しよ?」

 わずかに片倉が頷くから、篠崎はその唇を奪った。
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4. 「可愛い生徒の頼みだよ?」


「んっ…ふぁ、ッ」

 甘ったるい声が片倉の口から洩れる。
 篠崎はテーブルに膝をついて、片倉のほうへと更に身を乗り出す。逃げようとする片倉の顎を掴んで、舌を滑り込ませる。

「やぁ、も…」

 グッと、片倉は篠崎の体を押し返した。

「ん、はぁ…」

 篠崎にしたら大げさと思えるくらい、片倉は肩を上下させて呼吸を整えている。

(この人、男は初めてって言ったけど…………女のほうも、経験少ないのかな?)

 モテそうな顔してるのに。
 けれどそのほうが結構。あんまりにも慣れていたら、何となく興醒めする。

「しのざ…」

 濡れている片倉の唇を、ペロッと舐める。

「続き、していい?」

 吐息が唇に掛かるくらい近い位置に篠崎の顔が迫っていて、片倉はどうしていいか分からなくなって、目を逸らした。

「センセ、こっち見て。俺の目、見てよ」
「見、る…からっ……篠崎、顔、近いっ…!」

 少しだけ顔を離すと、篠崎はテーブルを乗り越える。

「先生、続きしたい」
「つ、づき…?」
「うん。先生とエッチしたい」
「……………………え……? えええぇ~~~!!?? んぐっ!」
「センセ、声おっきい!!」

 少しの間の後、片倉は絶叫した。さすがにこれには篠崎も驚いて、慌てて片倉の口を手で塞いだ。
 いくらこの部屋に2人きりとは言っても、ここは学校だし、それほど厚くもない壁の向こうは廊下なのだ。

「だ、だ、だって…!」

 その状況を思い出したのか、篠崎の手を離させた片倉は、声を潜めて訴える。

「え、えっちって、あの、その……」
「先生のこと、抱きたいの」

 片倉の目が不安そうに揺れる。
 けれど、何だかんだ言って、片倉は"男同士だから"ということで拒まないことは、先ほどの時点で気付いている。
 だって本当に嫌なら、こんなところで迷ったりせずに、篠崎のことを突き飛ばしてでも逃げればいいのに。

「かわいい生徒の頼みだよ?」

 片倉の顔を覗き込む。

「こんなときばっか、生徒面すんなよ…」

 片倉は拗ねたように唇を尖らせる。

「センセ…?」

 伸びてきた片倉の腕が、篠崎の背中に回った。
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5. 「センセーって意外と…」 (前編) R18


*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。

 篠崎は体勢を入れ替えて、片倉に、ソファに座った自分の腿を跨がせた。男2人で横になるには、このソファは狭すぎるから。

「あ、あの……ん…、」

 まだ何か言いたそうにしている片倉の唇を塞いで、腿から落ちないように片倉の腕を自分の首に回させ、存分にその唇を堪能する。
 顎を押さえていないほうの手を片倉の胸に滑らせ、1つ1つ丁寧にシャツのボタンを外していく。

「や、篠崎、やっぱ…」
「何? 今さらヤダなんて言わせないよ?」
「だ、って……ぁ、」

 肌蹴たシャツの前から覗く胸の突起に軽く爪を立てると、片倉の体がピクンと震えた。

「ここ、感じんの?」
「んっ、ヤ…」

 少し強くそこを弄りながら、首筋へと唇を這わせていく。

「センセ……好き…」

 耳元で囁いて、耳たぶを食む。それだけで体の力の抜けてしまった片倉を、篠崎は嬉しそうに抱き締めた。

「大丈夫、優しくするし」
「ッ…当たり前だよ……バカッ…!!」

 スルリ、シャツの背中に忍び込んできた篠崎の手に、身を硬くしながらも強がりを言う片倉。篠崎はニンマリと口の端を上げる。

「フッ…」

 篠崎の手は片倉の脇腹を撫でた後、ベルトのバックルに手を掛けると、スルスルと片倉のスラックスを脱がせる。一糸纏わぬ姿になった片倉は、恥ずかしそうに目を伏せた。

「篠崎……恥ずかしい…。あんま見ないでよ…」
「見なきゃ始まんないでしょ? 俺しか見てないなから、平気」

 チュッと音を立てて、痕が残らない程度に首筋に吸い付く。敏感に反応する片倉に気を良くしつつ、篠崎は自分のジャケットを脱ぎ、ネクタイを外してシャツを脱ぎ捨てた。
 鍛え上げられたその肉体を目にして、片倉は息を飲む。

「ん?」
「しのざき、」

 これからこの男に抱かれるのだと思うと、どうしようもなく体が熱くなる。片倉はソッ…と、篠崎の体のラインを指先で辿った。

「センセ…」

 悪戯な片倉の手を取ると、その指先に口付ける。首筋から鎖骨にかけて舌を這わせながら、片倉の後ろに指を滑らせた。

「ッ、やっ…」
「ここ、使うの。男同士でヤるとき」

 穴の周りを指でなぞると、片倉は身を竦ませた。
 篠崎が抱いたことのある男は、クラスメイトの水瀬と部活の後輩くんくらいだから、男の経験がそんなに多いわけではないけれど、片倉には優しくしてあげたいし、気持ち良くなってもらいたい。
 だから本当はすぐにでも突っ込んじゃいたいところ、出来る限り丁寧に、ゆっくりとことを進めていく。

「そんな…」

 いくら男の経験がないとはいえ、篠崎にそう言われて、「使うって、何が?」と思うほど、片倉だって子供ではない。何をどうするかが分かるからこそ、不安が増す。

「大丈夫、よく慣らせば入るから」
「無理だよぉ…」
「大丈夫」
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5. 「センセーって意外と…」 (中編) 1 R18


*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。

 篠崎は丹念に濡らした自分の指を、再び片倉の秘部へと持っていく。逃げ出そうとする片倉の腰を片手で押さえ、指先を中に押し込んだ。

「ッ…! い、た…」
「力抜いて、先生。そしたら大丈夫だから」
「はぁっ…ん、や、痛いっ…!」

 ググッと指を中ほどまで押し込んで、けれど片倉の中はその侵入してくる異物を押し出そうとして。

「センセ…」

 片倉の耳を舌で愛撫しながら、腰を押さえていた手をその薄い胸に這わせる。プツリと立ち上がった小さな突起を弄ると、片倉の体がもどかしそうに揺れる。
 痛みと快感。その狭間で、じわじわと追い詰められるような、そんな感覚。

「ヒッ…、あ、ん」

 無理やり押し進んでくる篠崎の指に耐え切れなくなって、片倉はギュウと篠崎に抱き付く。おかしな話だと、ぼやけた頭でも思う。この痛みと違和を与える張本人の篠崎に抱き付くなんて。

「ああっ!」

 篠崎の指が、その中の一点を突くと、片倉の体がおもしろいくらい大きく跳ね上がった。

「ここ…?」
「あ、ぁ、やぁ…くぅ…」

 篠崎が、見つけたその場所を執拗に攻め立てると、片倉は涙を零しながらかぶりを振る。

「ふぁ……あぁ、そこ、やっ…」
「嘘、嫌じゃないでしょ? 先生の中、すごいヒクヒクしてる……ね、もう1本入れるよ?」
「そんな、無理…!」

 けれど片倉の言葉なんて無視して、篠崎は1度引き抜いた指を、今度は2本にしてまた差し入れる。

「ひぁっ…!! くっ…あぁ」

 2本の指を抜き差ししながら、反対の手で片倉の感じる部分をなぞって。片倉の顎を伝い落ちた唾液を舐め取る。

「センセ、すごいかわいい……も、1つになっちゃいたいな…」
「ッ…」

 篠崎の言葉に片倉は身を硬くする。1つになる、とは、つまりそういうことだろう。

「先生、いい?」

 ゆっくりと片倉の中から指を出して、細いその体を自分の上から下ろすと、テーブルに突っ伏すように押し付けた。

「篠崎っ…!!」

 急に体温が離れて怖くなったのか、片倉は目にいっぱい涙を溜めて篠崎を振り返った。

「怖がんないで……初めてだし、後ろからじゃないときっと無理だから」

 滑らかな背中にキスを散らして、篠崎は制服のスラックスの前を寛げた。
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5. 「センセーって意外と…」 (中編) 2 R18


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「センセ……行くよ?」

 熱く滾った自身を片倉のそこに宛がうと、一気に片倉を貫いた。

「んんんっ~~~!!」

 痛みと苦しさから片倉が大きな声を出すことは想像がついていたので、その口を手で押さえておいて正解だった。
篠崎は歯を立てられた右手の痛みに耐えながら、熱くてキツイ片倉の中を味わう。

「んっ…んぁ…!」

 片倉が痛みとその質量に慣れるのを待ってから、篠崎はゆっくりと腰を動かした。

「はぁ……ん、」

 息が苦しいのか、片倉が首を振って篠崎の手を振り解こうとするので、「声、我慢してね?」と耳元で囁いてから、篠崎はその手を離してやった。

「しのざ…」
「痛い?」
「ちが……あ、」

 篠崎自身がいわゆる"イイ"部分を突くたび、強張らせていた片倉の体から力が抜けていく。

「ここでしょ? 先生の好きな場所」
「んんっ! あぁ、あ……はぁっ…!」

 ガリガリと、片倉のキレイな指先がテーブルを引っ掻く。篠崎は片手をその手に重ね、もう片方の手を、ほったらかしになっていた片倉自身に絡ませる。

「やぁっ、やめ…やめて!」
「何で? いいんでしょ? ねぇっ…?」
「いい……気持ちい、から…! あぁ、もっと…」

 パンパンと肉のぶつかる音がして、汗が飛び散る。

「あぁっ…!!」

 覆い被さる篠崎のセクシャルな香りに、片倉はもう、どうにかなってしまいそうだった。
 男同士だからと何とか、言ってたくせに。
 同じ男に、突っ込まれちゃってるのに。

「うううんっ! や、あぁ、イク! イッちゃ…」

 そんなのもう、どうでもいいよ。

「いいよ、センセ……俺もも…イキそ…!」
「や、あぁ…しのざきぃ…!!」

 甘い、甘い声で篠崎のことを呼びながら、片倉は上り詰める。
 イッた後のキツイ締め付けに、篠崎は何度か突き上げて、そして片倉の中を濡らした。

「あぁっ…」

 ドロドロと流れ込んでくる熱い精液に、片倉は身を震わせた。
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5. 「センセーって意外と…」 (後編)


「先生…」

 片倉から自身を抜いて、力の抜けたその体を抱き起こす。

「ん…」

 唇を合わせると、男の匂いのするキスに、何となく2人で吹き出してしまった。

「センセ……平気?」
「……何とか」

 最中は、まぁ痛みはともかくとして、快感だけを追っていればいいけど。終わってみれば、汗と精液で体はベタベタ。しかもここは学校なわけで。

「どうしよう……学校で、しかも教え子に…」
「今さらでしょ?」

 とりあえず下穿きだけ整えてから、カバンから引っ張り出したタオルで片倉の体を拭ってやる。

「え、いいよ、お前のタオル…」
「タオルくらい。先生こそ、体平気?」
「……何か、腰が重い…」
「ゴメン」

 そこは素直に謝って、篠崎は甲斐甲斐しく片倉に服を着させてやる。

「別に…………気持ち良かったからいいけど……」
「………………。―――――マジで!?」
「うるさい。声がデカイよ」

 抱き付いてこようとする篠崎の体を押して、片倉は痛む腰を押さえながら立ち上がると、素っ気なく自分のデスクに向かった。けれど篠崎は、その頬に赤みが差したのを見逃さず、ニヤッと笑った。

「それにしてもさぁ」

 放り投げたままの制服のシャツを手に取って、片倉の側に寄る。

「早くシャツ着ろよ」

 いつまでも、その裸体を曝け出しておかないでほしい。
 だってまた、変な気分になりそう…。

「センセーって意外と…」
「何だよ」

 シャツを羽織っただけの篠崎が、デスクに片手を突く。

「イ・ン・ラ・ン」

 わざと耳元に唇を押し付けて、とっておきのエロい声でそう囁いたら、片倉は一瞬にして顔を真っ赤にして、ガタンッ!! うるさく椅子を蹴散らして立ち上がる。

「し…篠崎~~~!!」
「ふはは、センセー、愛してるよv」
「もう知らない!!」






*END*





 まぁ…エロが書きたかったんで…。初夏だしね(!?)
 ここまでお付き合い、有り難うございました。
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BELOVED (前編)


 久々に2人きりで過ごせる夜。
 なのに拓海ときたら、パソコンに向かって黙々とレポート作りを進めていて、まるで悠也のことを構おうとしない。

 ……というのも、悠也が先に寝たふりをしてしまったのが原因なのだが。

(気付けよ、そんくらいっ)

 拓海が夕食を作っている間、寝てしまったのがまずかった。
 食事中もあくびをしたりして、少し眠そうにしていたものだから、片付けを終えた拓海が、ソファで丸くなって目を閉じている悠也を、眠っていると思っても仕方がなかった。

 しかも、「悠ちゃん、寝たの?」と聞かれたときに返事をすれば良かったものを、つい無言でやり過ごしてしまったから、すっかり拓海は悠也が寝たものだと思い込んだらしい。
 そして拓海が、音楽も掛けずにレポートを始めたのは、うるさくして悠也を起こさないようにとの気づかいからだろう。

 キーボードを打つ音が聞こえてくる以外、室内は静まり返っていて、悠也はこのまま本当に眠ってしまいそうだった。

(ヤバ…、マジ寝ちゃうよ、このままじゃ)

 悠也が妙な焦りを感じていると、不意にキーボードの音がやみ、拓海の立ち上がる気配がした。
 とりあえず拓海がそばを離れると、悠也はフーッと大きく息をついて体を起こすと、首を回して、背中を伸ばした。寝たふりをするのも楽じゃない。

「もぉー…拓海のバカ…」

 いくら寝ていると思ったとしても、久しぶりに一緒に過ごせる夜なんだから、もっと一生懸命起こしてくれてもいいのに。
 普段の自分の寝起きの悪さを思い切り棚に上げて、悠也は勝手なことを思う。

「あーあ、俺、拓海のこと、こんなに好きなのになぁ…」

 独りごちた言葉は、そのままむなしく消えていく……かと思ったのに。

「俺だって悠ちゃんのこと、すげぇ愛してんだけどなぁ」
「―――ッ!?」

 まったく気配を感じなかった。
 突然掛けられた声に、悠也の体はビクリと跳ね上がって、そのままソファから落っこちた。
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カテゴリー:拓海×悠也
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BELOVED (後編)


「何やってんだよ」

 苦笑しながら戻ってくる拓海の手には、缶ビール。それを取りに行っただけなら、きっとすぐに戻ってきてたはずだから、きっちり独り言を聞かれたはずだ。
 恥ずかしくなって、悠也は何も言わずに再びソファに丸くなった。

「おっとっと、もう寝たふりは終わりでしょ?」

 クシャリと髪をかき混ぜられる。

「……ずっと気付いてたのかよ…」
「気付かないふりすんのも大変だったんだけど」
「悪趣味!」

 悠也はバッと体を起こした。

「ねぇ、さっきの、もっかい言ってよ?」
「さっきのって…―――ッ…!」

 先ほどの独り言を思い出し、悠也はカッと頬が熱くなるのが分かった。拓海がいないと思って、思わず洩らしてしまった本音。

「悠ちゃん、普段あんま好きとか言わねぇじゃん。ねぇ、さっきの、マジだよね?」
「知らねぇよ!」

 悠也はますます身を縮こまらせて、きっと赤くなっているであろう耳を両手で隠した。

「フッ、悠ちゃんてホント…」

 ひょい。

「おわっ!?」

 軽々とその体を抱き抱えられて。

「かわい」
「バッカじゃねぇの!」

 もうホントに、1発殴ってやる!! て思ったのに。

 チュッとキスされて。
 恥ずかしくって、でも嬉しくって。

「もっかい言ってよ」
「………………好き、だってば…」

 悠也は拓海の胸に顔をうずめた。




*END*
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他の人のコトなんて考えちゃダメ。


「…相川さん」
「んー?」
「メール、楽しいですか?」
「うーん…」
「春原さん、ですよね。相手」
「そー」
「………………」

 ガタッ、
 ドタンッ!

「わっ、ちょっ、慶太!? な、何!?」
「……………… (ニッコリ)」
「な、な、何でしょう… (笑顔が怖い…)」

 チュッ。

「けい、た…」
「他の人のことなんて、考えちゃダメ」





 えっと、慶タンが二十歳にしてはあんまりなんで(…)、ちょっと積極的にしてみました。

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old days ~真琴、カミングアウト編~


*マコちゃん、高1設定です。

 赤ちゃんを連れて遊びに来ていた1番上のお兄ちゃんが帰っていきました。

「赤ちゃん、かわいかったね」
「そうね」
「お母さん、孫の顔が見れて、嬉しいの?」
「そりゃ嬉しいわよ」
「…………。お母さん、俺の赤ちゃんも見たい?」
「マコはまだダメでしょ? 結婚できる年でもないんだから」
「結婚できる年になったら、見たい?」
「? マコ、今お付き合いしてる人がいるの?」
「いる」
「そうねぇ、マコが将来自立して、その人と結婚したら、孫の顔を見せてね」
「………………。でも、お兄ちゃんとこ赤ちゃん産まれて、孫の顔見れたから、俺の赤ちゃんは見なくてもいい?」
「えぇ? どうしたの、マコ。さっきから変なことばっかり言うのね」
「だって俺、男の子だから、赤ちゃん産めないし…」
「?」
「結婚も無理だって」
「??」
「でも籍を入れるなら、養子縁組をすれば出来る、て言ってたけど」
「…???」
「あ、俺、男の人とお付き合いしてるんだー」
「…」
「エヘ」
「―――――…………………… (クラッ)」

 ドタン! (卒倒)



 この夜、藤崎家、緊急家族会議。






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アスファルトで溺死。 INDEX


↑OLD ↓NEW

01. 一体全体何が起こったっていうんだ! (月も青いっていうのに。)
02. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (前編) (後編)
03. エスケープ (前編) (後編)
04. お前の夜は何処にある (前編) (後編)
05. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (前編) (中編) 1 2 (後編)
06. 君は別腹 (前編) (後編)
07. 空気と言うには濃いけれど、 (前編) (中編) (後編)
08. 結局、ただの、(あるものねだりだ。) (前編) (中編) (後編)
09. 込み入った事情 (前編) (中編) (後編)
10. 33%の憂鬱 (前編) (後編)
11. 知らないでくれ (前編) (後編)
12. 過ぎた事はなくならないのに。 (前編) (後編)
13. 絶望する資格など持ちあわせていない (前編) (後編)
14. そして見上げた空の色は、 (前編) (中編) (後編)
15. たったそれだけの重さ (押しつぶされてしまう) (前編) (中編) (後編)
16. チェリー。僕が赤い三輪車で迎えに行くよ。 (前編) (後編)
17. 続きからもう一度やり直し (前編) (中編) 1 (中編) 2 (後編)
18. 典型的な、例の病ではございませんか (前編) (中編) (後編)
19. 特別に、あなただけに、こんな気持ちになるんだよ (前編) (後編)
20. 何が最善策なんて世界中の誰にもわかるまい (前編) (中編) (後編)
21. 虹色の空のなかに、泣きたくなるほどの希望を見た気がして、
   (前編) (中編) (後編)
22. 塗り潰してしまって。 (前編) (中編) (後編)
23. ねぇ。ちゃんと聞いて! 俺の話を! (Please hear me!) (前編) (後編)
24. No hug No kiss No loving
25. 灰色の空。君のいない世界。
26. ひとさじの愛をください (前編) (後編)
27. 不器用でやさしい人だからきっと (前編) (中編) (後編)
28. ベクトルの先。 (前編) (中編) (後編)
29. 星が降る限り月が輝く限りそれは変わらないもの
30. 曲がり角で明け星ひとつ (前編) (中編) (後編)
31. ミルクティーは薔薇色の夢 (前編) (後編)

*extra chapte*
(無題) *会話SS



tittle:少年の唄。さま(tittle,01,02,03,07,08,10,12,14,16,21,22,23,25,28,31), alkalismさま(04,26), ララドールさま(05), 1204さま(06,20,24,29 as far as I knowさま(09,11,13,17,18,19,27), lisさま(15), 夜風にまたがるニルバーナさま (30)
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1. 一体全体何が起こったっていうんだ! (月も青いっていうのに。)


 性懲りもなく新連載です。しかもめっちゃ長いんで、休み休み行きたいと思います。よろしくお付き合いくださいませ。

 ……何でだ。
 何の仕打ちなんだ。

 というか、誰だ、コイツ。



*****

 人が疲れて仕事から帰ってくれば、なぜか人んちの玄関先に転がってる金髪。女みたいなカッコしてるけど、よく見たら男(顔は結構女顔だけど)。
 おいおい生き倒れか? だったらよそでやってくれよ、って思って覗き込めば、…………酒臭い。
 酔っ払いか。てか、何でウチの前なんだよ。ドア、開けられねーじゃん。

「なぁ、おい」

 肩を揺すれば、「ん゛ー…」とか、変な声を上げて、鬱陶しそうに俺の手を払おうとする。
 鬱陶しいのは、こっちだっつーの。

「おい、起きろよ。おいって」

 もしタチの悪い酔っ払いで、へたに絡まれたら嫌だから、むやみに足蹴には出来ないけど…。

「なぁ、頼むから、起きて? ドア開けられねぇじゃん、なぁ」
「んんー……あ゛ー帰って来たぁ」

 何度か肩を揺さぶってると、そいつは子供みたいに目をゴシゴシ擦りながら、やっと目を開けた。

「なぁ、何でぇ?」
「は? え?」

 何が『何で?』
 というか、それって、完璧俺のセリフだよな?
 『何で』こんな酔っ払って寝てるの?
 『何で』こんなとこにいるの?
 『何で』俺のこと待ってたみたいな言い方すんの?

「あ…あの…」
「何でぇ? 何で急に出てけなんて言うの?」
「はっ!? 出てけって?」

 いやいやいや、そんなの言ったことないし!
 というか、初対面ですよね!? ボクたち!

「そんなん急すぎるじゃん、俺の何が悪かったの…?」
「いや、あのな、俺は……」

 完全に誰かに間違われてる…!!

「ちょっ…すいません、あの、誰かと間違え……」
「お願い、捨てないでよぉ…」
「え? わっ!? ちょっ」

 急に泣き声になった酔っ払いは、俺を誰と勘違いしてるのか、いきなり俺にキュウッと抱き付いてきた。
 ちょっ…何なんだ、この展開!
 瀬戸貴久、人生最大のピンチ到来!!

「なぁ、ちょっ…頼むから、ホント……って、寝てるし!!」

 …………何が悲しくて、疲れて帰って来て、ノリ突っ込みしなきゃなんないんだ…。
 それにしてもこの酔っ払い、どうしてくれよう…。鍛えてるのか、意外と力が強くて、腕を離そうにも離せない。

「………………」

 仕方なく俺は、酔っ払いにしがみ付かれたまま、何とか玄関を開けて中に入る。
 こんな酔っ払いを家に入れたくはないけど、このまま外で騒がれたんじゃ、近所迷惑も甚だしい。
 後で隣の怖いおばちゃんに、何言われるか分からないからな。


 久々にゆっくり出来るはずだった週末。
 一体全体、何だってこんなことになったんだ!?
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2. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (前編)


 朝起きたら、結局全部が夢だった。

 ――――なんてこと、やっぱりマンガの中のことしかなくて。



 …………いた。
 しっかりいた。
 ベッドの中で、俺の隣で、気持ち良さそうにスヤスヤしてた。…………腕はもう解けてたけど。

「はぁ…」

 もういい加減、起きるかな?

「なぁ、おい、起きろよ」
「ぅんー…」

 ユサユサ体を揺さぶると、鈍いながらも反応が返って来る。しつこく繰り返してたら、思いっ切り眉間にしわを寄せて、俺に背を向けるようにして身を丸くした。
 起こすなってことですかい。
 あーもう、めんどくさっ!

 起きないなら、起きるまで待つしかない。
 しょうがないから先にベッドを抜け出し、昨日コイツにしがみ付かれてて入れなかった風呂に入ることにする。飯も食いたいし。

 素性の分かんないヤツを家にあげてるわりに、冷静だな、俺。それとも、腹減りすぎててて、まともにものが考えられないようになってんのかな。
 まぁいい。さっさと風呂を済ませる。

 あー腹減った。アイツのせいで、昨日の夜、まともにメシ食えてないし。さっさとアイツ起こして出てってもらわないと、ゆっくり飯も食えない。

「なぁ、いい加減、起き……あ、」

 起きてる。
 むくってベッドの上に起き上がって、ぼーっとしてる。

「やっと起きたか」
「っ!?」

 声を掛けたら、大げさなくらいビクッと肩を跳ね上げて、そいつは、バッと俺のほうを振り返った。何か動きが、敵に見つかった小動物のそれに似てる…。

「え? あ、え?? えっと、あれ? 誰? え? どこ、ここ」

 見たことのない部屋で、見覚えのないヤツに声掛けられて、そいつはますます困惑した顔になる。この状況が、全然理解できないって顔。
 ゆうべ、ベロベロに酔っ払ってたことも、俺にしがみ付いて離さなかったことも覚えてないんだろうな、どうせ。
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2. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (後編)


「てか、何でアンタ、こんなとこにいるの?」

 ジトッと、嫌な目つきで、不審そうに俺のことを見る。
 でも言っとくけど、不審者は、お前のほうだからな。

「ここは俺んちだ」
「嘘だ!」
「嘘じゃねぇよ。昨日、俺んちの前で寝てただろ、お前。すっげぇ酔っ払ってて俺のこと離さなかったから、家にあげたの」
「はぁ!? 何で? 何で俺がアンタんちの前で寝てなきゃなんないの!?」
「そんなのこっちのセリフだ!」

 ダメだ……コイツ、昨日のこと、きれいさっぱり忘れてやがる…。

「お前、どっかと部屋間違えてんじゃね?」
「間違え…」
「だってお前、昨日、何で出てけって言うんだー、とか、捨てないでー、とか言ってたぜ、俺に向かって。誰かと勘違いしてんだよ」
「ッ…!?」

 俺が言うと、信じられない! って顔で、目を見開いた。

「え……じゃあ……だって、えっと……ここは、え? えっと、405……」
「305だけど」
「…………………………」

 やっぱり間違えていた部屋番号、ヤツの言葉を遮るようにして俺が自分の部屋番号を言ったら、案の定、ヤツは口をあんぐりと開けたまま固まった。

「さんまる……ご」
「そう。階を1つ間違えてんじゃね?」
「あ…う゛……あぁ…」

 見る見る間にそいつの顔が真っ赤になってく。
 そりゃそうだよなぁ。酔っ払って別人の部屋の前で寝てた挙げ句に、『捨てないで』とかって女々しいこと、赤の他人に言ってんだし。
 しかも男に抱き付いて離さなかったんだぜ?

 あ、てことはコイツ、女に振られたのか。
 出てけって言われたみたいだから、同棲してた彼女に追い出されたってこと? おいおい、女相手にあんなセリフ言うのか。情けな!

「で、どうする?」
「……へ…?」
「俺、これからメシ食うけど、一緒に食ってく?」

 それともこの階上に住んでるらしい彼女んとこ行って、もっかいヨリ戻してくれって、頼みに行く? 素面で。

「え!? あ、ぅ……か、帰りま……ホントすいませ……」
「あ、」
「うわっ!?」

 ドッターン!!

 謝りながら慌ててベッドを下りようとしたそいつは、掛けてたシーツに足を絡ませて、そのままベッドの下に転がり落ちた。
 顔面、ぶつけたんじゃね?

「イッター!!」

 両手で顔を押さえながら、今どきのギャルみたいな、甲高い声を上げた。
 やっぱ顔ぶつけたんだ。アホだな、コイツ。

「おい、だいじょぶか? ちょっと、落ち着いて…」
「ホントっ……ホントすいません! すいませんっ!!」

 足に纏わり付いてるシーツを何とか解いて、立ち上がったそいつは、アホみたいに何度も頭を下げてから、ダッシュで玄関に向かっていった。

 その行動に唖然としてた俺は、その後ろ姿を追い掛けることも出来ず、バタンとうるさく閉まるドアの音を聞いていた(その直前に、バンッって音がして、「イター!!」ってアイツの声がしたから、きっとドアにぶつかったんだろうことは、想像が付いたけれど)。



 いつもと変わらない退屈な日常を、ほんの少しだけ賑やかにした男は、まるで嵐のように通り抜けていった。
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3. エスケープ (前編)


 あの、マンガのような、陳腐な映画のような出来事から1週間。
 あの金髪男に出くわすこともなく、階上に住んでいるらしいそいつの彼女を知る由もなく、穏やかに日々は過ぎていって。

 まぁ、すべてが夢だったとは言わないけれど、徐々に記憶の中から薄れかけていった、その出会い。


 ―――――なのに。



*****

 メシも食い終わって、天気もいいしどっか出掛けようか、あ、溜まってた洗濯モンも片付けないとなぁ、なんて思ってたら、インターフォンの鳴る音。

 こんな時間に誰だよとか思いながら来客を確認したら、見覚えのある……というか、忘れていてもすぐに思い出してしまう、金髪頭。
 あのときの男だ。

 留守かなぁ……みたいな感じで、キョロキョロとドア越しに様子を窺ってる。
 こないだと違って、酔っ払ってはいないみたいだけど、何かいっぱい荷物を抱えてる。

 少しだけ迷ったけど、ドアを開けてやった(居留守を使っても、またやって来そうな気がしたし)。

「あ、おはようございまーす」

 ドアが開くと、そいつはペコリと、お行儀よく90度に頭を下げた。

「…………ここ、3階だけど、分かってる?」
「あはは、分かってますって、瀬戸さん!」
「え、」
「あれ? 瀬戸さん、じゃないの? 表札にそう出てたから」
「…あぁ」

 少しキョトンとしたら、そいつは慌ててそう付け加えた。

「ボク、倉橋哲也っていいます。よろしく」
「え? あ、はぁ、よろしく…??」

 はぁ…倉橋くんて言うのね。
 よく見たら、俺と年近いかな?
 酒飲んで酔っ払ってたってことは、もう20歳は過ぎてるだろうに、そんな金髪頭で仕事に差し支えないのかな? 格好も奇抜なほうだし…。

 ってか、何でよろしくされないといけないんだろ。普通、あんな後だったら、恥ずかしくて、絶対にもう2度と顔も会わせたくないって思うだろうに。
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3. エスケープ (後編)


「あの、これ」

 倉橋くんは、両肩に抱えてたギュウギュウ詰めの紙袋をいったん床に下ろすと、キレイに包装紙に包まれた箱を俺のほうに差し出した。

「は? 何?」
「この間のお詫びです。いっぱいメーワクかけちゃったから」
「あー……あ、そう?」

 そりゃまたご丁寧に。
 というか、その包み紙を見るところ、中身は和菓子系だよね。でも大きさからすると、結構な量が入ってると見たけど。
 どうぞ、と差し出してくるから、受け取るけど…………重たい。

「えっと、これ…」
「水ようかん……」
「いや、それは、」

 包みを引っ繰り返せば、端っこに、確かに"水ようかん"ってラベルが貼ってある。ついでに、"30個"とも書いてある。
 30個て……1日1個ずつ食っても、1か月は水ようかん三昧なんですが。

「あ、え? 水ようかん、嫌いですか?」
「えっと……いや、あのさ、」

 いやいやいや、確かに水ようかんは嫌いじゃないよ? 俺、わりと何でもおいしく食べられるほうだし。
 でも、独り暮らしの男のところに、迷惑かけたお詫びの品やって持ってくる手みやげとして、30個入りの水ようかんて、"あり"なのかな?
 でもまぁ、この子の場合、そんなこと突っ込んでも、『そうですかぁ? あ、そうかも』とか言いそうだし…。

「あー……えっと、とりあえず、上がります?」

 何でそんなこと口走ったのか、自分でもよく分かんないけど。
 こんなとこで立ち話もなんだし。30個入りの水ようかんも、どうしていいのか分かんないし。

「あ、いや、時間があるなら。俺も1人で水ようかん、こんなに食い切れないし」
「あ、あー……」

 予想どおり、倉橋くんは、やっと水ようかんの個数が多すぎるってことに気が付いたみたいで、恥ずかしそうに苦笑した。

「じゃあ、ちょっとだけ、お邪魔します…」



 もしかしたら俺は、この代わり映えしない日常から逃げ出したかったのかもしれない。
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4. お前の夜は何処にある (前編)


 倉橋くんは、抱えてた大荷物を玄関先に置いて、俺の後をペタペタ付いてきた。

「あの荷物、どうしたの?」
「え? あー……あれは、」

 気まずそうに、倉橋くんが玄関のほうを振り返った。
 あれ? 何か聞いちゃいけないことだった?

「その……早く持ってけって、言われて…」
「あ、」

 それで思い出した。
 先週の、酔っ払った倉橋くんの言葉。
 同棲してた彼女に、部屋追い出されたんだったっけ?
 で、今日はその荷物を取りに来たってわけか。

 倉橋くんを部屋に通して、俺は受け取った水ようかんの包みを開ける。…………うん、30個。ちゃんと入ってるわ。

「はい」

 こういうのって、冷やして食ったほうがうまいのかな? まぁいいや。1個を倉橋くんに渡す。

「いただきまーす」

 律儀に両手を合わせてから、倉橋くんは缶に付いていた小さいプラスチックのスプーンで、温い水ようかんを掬った。
 あぁ、うまそうに食べる子だな。そういうの、嫌いじゃない。

「倉橋くんは、学生さん?」
「ふぇ? いや、違いますけど」

 何で? って顔で、目線を上げるから。

「いや、そんな金髪で、社会人てなかなかいないから」
「んー……、えっと」

 倉橋くんはゴソゴソのポケットを探って財布を取り出すと、中から名刺を1枚取り出した。
 中央に何やらショップの名前が書いてあって(聞いたことないけど)、その下にボールペンで"倉橋哲也"って書いてある。

「何の店?」
「洋服。俺、デザインとかしてんの」
「デザイナーなんだ」
「まだ卵ちゃんだけど」

 デザイナーか。どおりでこんなカッコしてると思った。
 爪、マニキュア塗ってんじゃん。

「良かったら遊びに来てね? 瀬戸さんの趣味に合うのがあるかどうか分からないけど」
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4. お前の夜は何処にある (後編)


「ねぇ、それから俺のこと、哲也って呼んで?」

 ニコニコと、倉橋くんがそう提案してきた。

「へ?」
「哲也って。俺、下の名前で呼ばれるほうが好きだから」
「あぁ……そう? 俺も別にさん付けしなくていいよ? どうせ年近いだろ?」

 そう言うと、倉橋くん……じゃない、哲也は嬉しそうに「うんっ!」と頷いた。犬みたいだなぁ。

「瀬戸って呼んでいいの? 貴久?」
「…………どっちでもいいけど」
「なら、貴久って呼ぶ!」

 …あ、そう。
 小学生?
 小学生女子?

「あ、」

 ポケットの中のケータイが震えたのか、哲也はちょっと俺に頭を下げて電話に出た。
 意外にも着信音はバイブなんだ。何かもっとギャルっぽい曲を想像してたのに。

「もしもし? あ、どう? 今晩いい? ホント!? 助かるわぁ。ありがとう。じゃあねー」

 妙にキャピキャピ弾んだ声で、哲也が電話を切った。

「へへー。今夜の宿、確保!」
「宿?」
「俺、行く当てないの。ホラ、追ん出されたから」
「あぁ……何、アパートとか借りないの?」
「予算の都合上。今んとこは何とか友達んとこ渡り歩いてるけど……早く何とかしないとなぁ」

 哲也は眉を寄せて、肩を竦めた。
 コイツ、こういう仕草が何か女っぽいよなぁ。

「ごちそうさまでした」

 給食を食べ終わった子供みたいに、しっかりと合掌して、哲也はスプーンと空になった缶を置いた。

「じゃあ、ボク、これでお邪魔しますー」
「え? あぁ、うん。てか、あの大荷物抱えて友達んち、上がり込むんだ…」

 玄関まで見送りに来て、そこに置きっ放しになってた、ぎゅうぎゅう詰めのショップバッグを見て、俺は苦笑した。
 引っ越しするには少なすぎる荷物やけど、行く当てなしでこれから友達んちに上がり込むには、いくら何でも荷物が多すぎる。狭いアパートだったら、哲也の荷物だけでいっぱいになりそうだ。

「んー……まぁ、少し店に置いてこうかな…」

 やっぱり哲也も、荷物が多いことは気にしてるみたいで、少し困ったように笑った。

「じゃあ、お邪魔しました。機会があったら、また今度ー」

 小さい体にいっぱいの荷物を抱えて哲也が去っていくのを、俺はなぜかその背中がエレヴェータの中に消えるまで見届けていた。
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5. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (前編)


 お詫びの水ようかんを持って哲也がウチに来た日から5日。
 貰った名刺の場所には行ってない。

 そして相変わらず、冷蔵庫の中には、ギッシリの水ようかん…。

 いくら嫌いじゃないて言っても、毎日毎日水ようかんなんて食ってらんない。飽きるし、体にだっていいとは思えない。
 でもこのまま無駄にするのももったいないし…。

「あ」

 そう思ってたら、目の前にいいカモが。いやいや、啓ちゃんが。
 啓ちゃんは、同じ職場で働いてる、いわゆる同僚の人。

「なぁなぁ啓ちゃん」
「あぁ?」
「今日ウチに水ようかん食いにこない?」
「はぁ?」

 あれ? 俺、そんなに変なこと言ったかな?
 啓ちゃんの眉間に、ググッとしわが刻まれた。

「水ようかんが何だって?」
「今さ、ウチにいっぱい水ようかんがあんの。コツコツ食べてるけど、なかなかなくならないから、啓ちゃんにも分けてあげようと思って」
「いっぱいって、いくつくらいあんの?」
「んー、そうだなぁ、あと20個くらい?」

 だって、もともとは30個あったんだよ?
 哲也は1個しか食っていかなかったし。あぁ、あんとき哲也にもいくつか持たせたれば良かった。

「20個って……何で? おかしいだろ! 男1人で水ようかん20個って!」

 そんな、腹抱えて笑わなくても…。

「1箱貰ったの! あ、啓ちゃん、実家暮らしじゃん。家族の分と合わせて、持ってって? な?」
「はぁ? まぁただでくれるって言うんだったら、いいけど」

 それにしても、貰ったって…! と、やっぱり啓ちゃんも、男の一人暮らしに30個入りの水ようかん1箱持ってくるって状況がおかしいらしく、笑いが止まらなくなってる。

「そんなに食い切れないなら、会社に持ってきたら?」
「うー……でも、一応人から貰ったもんだし、そんなにみんなにバラまくんも悪いかな、思って」
「どんなとこで義理立てしてんだよ。まぁいいけど。それよか、なぁ、その名刺…」
「え?」

 貰ったきり財布の中にしまいっ放しだった、哲也の名刺(だってそんな、捨てるなんて悪いし…)。
 啓ちゃんがそれに反応して、勝手に俺の財布から抜き取ってしまった。
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5. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (中編) 1


「何?」
「お前、こんなとこで服買うの? 珍しー」

 哲也から貰って名刺を見ながら、啓ちゃんが本当に珍しそうに言う。
 俺、店にってないから分かんないけど、そんなに俺が行くような雰囲気じゃない店なのかな。

「啓ちゃん、この店、知ってんの? てか、"こんなとこ"て…」
「だって、お前の普段の服の趣味と違うだろ? テツの服って」
「テツ、」

 テツ…や、てつや、くらはしてつや。

「倉橋哲也」
「ぅん?」
「知り合い?」
「高校んときの同級生だし」
「はい?」

 高校の同級生? 啓ちゃんの?
 ってことは、えっと、啓ちゃん、俺より1つ上なんだから、哲也って俺より1つ上ってこと? うっわー、絶対年下だと思ってた!
 ……って、そうじゃなくて!

「せまっ!」
「は?」

 あ、思わず声に出してしまってた。
 だってそうじゃん。世界、狭すぎるだろ、こんなの!
 何て言うの? こういうのって、マンガとか、ドラマの中の話じゃないの?

「何だよ、お前こそ知り合いかよ」
「あー………………うん」

 俺に30個入りの水ようかんくれたのが、あなたの高校の同級生、倉橋哲也くんですよー…………とは、まぁ、言わないけど。

「そんなら、お前も来る? 今日一緒にメシ食いに行くんだけど」
「へ?」
「そうしよ、な?」

 俺が、「いい」とも「いや」とも言わないうちに、啓ちゃんは勝手にそう決めてしまった。
 まぁ、1人で食うより大勢のほうがいいから、いいけど。
 あぁでもこうなるんだったら、その前に1回でも哲也のいるって店に行っとけばよかったかな。
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5. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (中編) 2


 もうすぐ哲也の仕事が終わるから、迎えに行って、それからメシ食うんだって。

 啓ちゃんに連れられて哲也が働いてるって店に行ってみれば、確かに俺が普段着てるのとはだいぶ違う雰囲気の服が、いっぱい飾ってあった。
 まだデザイナーの卵やって言ってたから、ここに置いてある服みんなをデザインしてるわけじゃないだろうけど、雰囲気が哲也によく似てる。
 時々街でこんなカッコしてる人を見かけるけど、俺の知らない世界だなぁって思ってた。

「いらっしゃいま―――――あ、啓! もうすぐ上がるから、待ってて」
「おう」

 久々に聞く、ちょっと甲高いような哲也の声。
 どうやら哲也の位置からは俺が見えないらしく、俺はその存在を気付かれてないみたいで。
 そっと覗いてみれば、相変わらずの金髪頭が、ちょこまかと動いていた。

「じゃあ、お先に失礼しまーす」

 片付けと身支度を終えたのか、哲也は別の店員に頭を下げて、啓ちゃんとこにやって来た。

「ん? あれ? 貴久? え? 2人、一緒に来たの?」

 俺が、哲也と啓ちゃんが知り合いなのを知らなかったみたいに、哲也も俺と啓ちゃんの関係を知らなかったみたいで、驚いた顔してる。

「コイツ、同じ会社なんだよ。お前のことも知ってるみたいだったから、メシ誘った」
「ふぅん? 久し振りー」

 女の子みたく爪の色を赤くした(しかもその上から、白ので何か模様描いてる)手を、これまた女の子みたいな仕草で手を振った。

 …………えっと、この子、そういう気の子なんかな? ―――――まぁ言わないけど。


 それから3人で、何食う? って話になったけど、哲也は2人の食いたいもんでいいって言うし、俺はうまければ何でもいいしで譲り合ってたら、なかなか決まらなくて、優柔不断なことが嫌いな啓ちゃんが、「だったらラーメンでいい! ラーメンにしよ!」って、ビシッて決めてくれた。

 でもそしたら、じゃあどこにする? ってことになるわけで。
 やっぱり俺ら2人ではなかなか決められなくて、「もうここでいい!」って、啓ちゃんが近くのラーメン屋さんに入っていったから、俺ら2人で慌てて後を追い掛けた。

「啓は相変わらずせっかちだなぁ」
「違う。時間を無駄にしたくないだけ」

 対照的にのんびりした調子でそう言う哲也に、啓ちゃんはビシッと言い切った。

「早くメニュー決めないと、ド突く」

 席に着いた途端、そんな物騒なことを吐く啓ちゃんに、俺と哲也は慌ててメニューを覗き込む。啓ちゃんのことだから、ホントにやりかねないし。
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5. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (後編)


 啓ちゃんとの食事って、何となく体育会系のノリがあるんだよね。
 早く食って、早く帰ろ、みたいな。

 出てくる順番もあれだったけど、啓ちゃんが食い終わりそうなのに、もともとのんびり体質なのか、食うのが遅いのか、哲也はまだ食べ終わる気配なし。

 啓ちゃんも高校のころからの付き合いだから、哲也のそういうのを知ってるのか、イライラもせずに待ってるけど。

 あー……それにしても、哲也の食ってるヤツも、うまそうだなぁ……。

「なぁ、俺、もう1杯食ってもいい?」
「ッッッ!!!???」

 啓ちゃんは慣れてるのか「替え玉頼めばいいじゃん」って言ってくれたけど、哲也はものすごいビックリした顔で俺のほうを見た。
 きっとラーメン啜ってる最中じゃなかったら、あの甲高い声を上げてたんじゃないかな?

「替え玉じゃなくて、別の味なのが食いたいんだよね」
「ええぇぇーーー!!! ったぁ…」

 今度こそ哲也は大きな声を張り上げた。直後、啓ちゃんにド突かれたけど。

「普通にもう1杯お代わりするってこと?」
「うん」

 啓ちゃんは勝手にしろって感じで俺のほうにメニューを寄越したけど、哲也はまだ口をポカンと開けて俺のことを見てる。
 どうせ哲也はまだ食い終わりそうもないし、啓ちゃんからのお許しも出たから、俺は遠慮なく2杯目のラーメンを頼んだ。



*****

「なぁ」

 俺が2杯目のラーメンに箸を付けたところで、啓ちゃんが携帯電話から顔を上げた。

「何か、友達からテレビの配線してくれってメール来てんだけど、俺食い終わったし、そっち行ってもいい?」

 そう聞きながらも、すでに帰り支度をしてる啓ちゃんに、ダメなんて言えなくて、哲也と2人で啓ちゃんを見送った。

「啓ちゃん、相変わらずだなぁ」

 別に他人に冷たいわけじゃないけど(むしろ友情に厚いほうなのに)、待ってるとか、そういう時間の無駄には厳しくて。
 でも俺が2杯目のラーメン頼む前からケータイ気にしてたし、もしかしてそれでも待っててくれたのかな?
 なのに哲也は食い終わらないし、俺は2杯目頼むし、待ち切れなかったのか。

「なぁなぁ、貴久」
「んー?」
「ホントに2杯も食えんの?」

 2杯もラーメン食うのがそんなに珍しいのか、やっと自分の分を食い終わった哲也が、俺のどんぶりを覗き込んでる。

「ホント豪気なヤツだなぁー」

 そこ、感心するとこかぁ? と思いつつ、俺はラーメンを啜った。
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カテゴリー:アスファルトで溺死。
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

6. 君は別腹 (前編)


 さすがに2杯食べる俺よりは先に食べ終わった哲也が、なぜか俺のほうをじっと見てる。

「何? 食う?」
「食わないよ! そんなに食えるか」
「いや、ジッと見てるから、食いたいのかと思って」
「食いっぷりいいなぁって思ってたの!」

 ムキになって言い返してくる哲也に少し笑ってから、残りのラーメンを平らげた。

「そう言えば、家、見つかったの?」

 この前のときは、何か友達の家を渡り歩いてるとか言ってたけど、そう言えば、その後の話がない。
 何とはなしに尋ねてみれば、哲也は渋い顔をしてる。

「……まだ、なんだ?」

 聞き返せば、コクリと頷いた。

「1日だけとかなら、みんな、いいって言ってくれんの。でもこれからずっとって言うと…………なぁ?」

 確かに。
 彼女と同棲するならまだしも、男の2人暮らして。

「安いアパート捜したほうが早いんじゃね?」
「うぅー…」
「なら実家帰ったら?」
「実家はダメだ」
「遠いの?」
「そうじゃないけど…………実家はダメ」

 断固として言い張る哲也に、それ以上何も言えなくなる。
 まぁ親はいろいろうるさいかもしれないけど、何でそこまで拒否るんだろ。
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6. 君は別腹 (後編)


「で、今日の宿はあんの?」
「…………なくなった」
「なくなった?」
「ホントは啓んち泊めてもらおうかな思ってたんだけど…」

 グズグズしてる間に帰られたわけね。
 それに啓ちゃん、実家暮らしだしなぁ。それこそ1日は良くても、ずっと毎日ってわけにはいかないだろうなぁ。

「しゃあないから、これ食ったら店戻るわ」
「ん?」
「どうせ明日もまた仕事だし。店長に言って、また寝さしてもらう」

 "また"ってことは、そうか、毎回友達んとこに泊めさせてもらえてるわけじゃないのか。
 実家に戻られない理由は知らないけど、意外と苦労してるんだなぁ。

「そんなら、今日、ウチ来る?」
「えっ!?」

 ほんの、軽い気持ちやった。
 啓ちゃんの知り合いで、見ず知らずの不審者じゃないって分かったし、まぁいいかなって。
 もうメシ食ったし、どうせ後は風呂入って寝るだけだし。

 何て言うか……コイツと一緒にいるの、そんなに嫌じゃない。
 俺にしたら突拍子もない行動を、まるで当たり前みたいにしてやってるヤツ、今までに会ったことないし。
 おもしろい。
 まだ今日で3回しか会ってないけど、全然飽きない。

「お店に泊まるのは、いざってときのために取っておいたら?」
「は? え? いいの…?」
「いいよ、別に。あ、でも暑苦しいからソファで寝ろよ?」

 グラスの中の、温くなった水を飲み干して顔を上げれば、哲也はまだ、信じられない…!! って顔で、俺のこと見てる。
 あれ?
 初対面の酔っ払ったお前の介抱までしてやった俺のこと、そんなに薄情なヤツだと思ってた? (あ、介抱まではしてなかった)

「ホントにいいの?」
「いいって。いや、店に泊まるほうがいいんだったら、別にそれでもいいけど」

 そう言えば、哲也はブンブンと、頭がもげそうな勢いで首を横に振った。

「そんなん! すっげぇ助かる! ありがとう! ホントに助かる!」

 たかが家に泊めるくらいでここまで喜ばれると、何かすごいいいことした気になる。

 哲也のちょっと汗ばんだ手が、ギュッと握手するみたいに俺の手を掴んだ。
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