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六月 隣の君は肩を濡らして (7)
2008.12.17 Wed
睦月が支度を終えて和衣と店を出ると、先ほどの約束どおり、祐介は軒下で雨をよけながら2人を待っていた。
「あれ、カズちゃん、傘は?」
先に気が付いたのは、睦月だった。
財布と携帯電話をポケットに突っ込んだ和衣は、それ以外、まったくの手ぶらだ。
「忘れたの?」
「……出るとき晴れてたから…」
「…」
今日の降水確率、90%
そうでなくてもこの梅雨時期、用心のために傘を持って出掛けるだろうに。
「ちょっ…傘買ってくるから、ちょっと待ってて!」
と、和衣は、出て来たばかりの店に戻ろうとするから、睦月が慌てて引き止めた。
つい先日も和衣は、傘を忘れたと言って、ビニル傘を買って帰ったばかりなのだ。
「入っていきなよ。どうせ帰れば傘あるんでしょ?」
「だって…」
入っていけと言う睦月の持っているのも、コンビニのビニル傘。いくら2人が細いとはいえ、一緒に入るには傘が小さすぎる。
「あ、じゃあ、ゆっちのに入ってけばいいじゃん」
「え、」
人の傘なのに、勝手にそう提案した睦月に驚いたのは、祐介ではなく、むしろ和衣のほうだった。
確かに祐介の傘は、安物のビニル傘ではなくて、大きめの紳士用だから、2人で1つの傘に入るならこちらのほうがいいだろう。
「そうしなよ、和衣。何本も買うよりさ」
「…ん」
コクリ頷いた和衣は、大人しく祐介の傘に入った。
祐介を真ん中にして3人並んで歩けば、話しているのは睦月と祐介だけで、和衣はずっと黙ったまま祐介の傘の中に、静かに納まっている。
今日も2人は飽きもせず、睦月がこのままバイトを続けられるかだとか、いやちゃんと出来るだとか、祐介の過保護っぷりを全開にした会話をしていて。
同じ傘には入っているけど、会話には入っていけない…和衣はそんなふうに思って、小さくため息をついた。
その次の瞬間だった。
「和衣、」
「わっ」
グイ、と、思いも掛けない力が、和衣の体を右に引いた。
和衣の右にいるのは、祐介だ。
「ちゃんと傘入れよ。濡れてんじゃん」
祐介が、和衣を自分のほうに引き寄せたのだ。
「う、うん」
何だかドキドキして、ちょっと返事に詰まってしまった。
慌てた声を悟られたくない。
時々肩が触れる。
もう、睦月と祐介の会話は、少しも耳に入って来なかった。
*****
寮に帰り、部屋に戻る途中、睦月と祐介の後ろを歩いていた和衣は、ふと気が付いた。
祐介の着ているシャツの、右肩が濡れている。
自分は、祐介の左側にいた。
そして、濡れないようにと、引き寄せてくれて。
(俺が濡れないように、傘をこっちにいっぱい分けてくれた…?)
祐介は優しい男だから、別に傘に一緒に入ったのが和衣でなくたって、きっとそうしてくれる。
自分だけが特別なわけじゃない。
勘違いしそうになる自分が、嫌だよ。
でも…。
「カズちゃん、お風呂行こー?」
「あ…うん」
でも。だって。
(どうしよう…)
この気持ちは、
「あれ、カズちゃん、傘は?」
先に気が付いたのは、睦月だった。
財布と携帯電話をポケットに突っ込んだ和衣は、それ以外、まったくの手ぶらだ。
「忘れたの?」
「……出るとき晴れてたから…」
「…」
今日の降水確率、90%
そうでなくてもこの梅雨時期、用心のために傘を持って出掛けるだろうに。
「ちょっ…傘買ってくるから、ちょっと待ってて!」
と、和衣は、出て来たばかりの店に戻ろうとするから、睦月が慌てて引き止めた。
つい先日も和衣は、傘を忘れたと言って、ビニル傘を買って帰ったばかりなのだ。
「入っていきなよ。どうせ帰れば傘あるんでしょ?」
「だって…」
入っていけと言う睦月の持っているのも、コンビニのビニル傘。いくら2人が細いとはいえ、一緒に入るには傘が小さすぎる。
「あ、じゃあ、ゆっちのに入ってけばいいじゃん」
「え、」
人の傘なのに、勝手にそう提案した睦月に驚いたのは、祐介ではなく、むしろ和衣のほうだった。
確かに祐介の傘は、安物のビニル傘ではなくて、大きめの紳士用だから、2人で1つの傘に入るならこちらのほうがいいだろう。
「そうしなよ、和衣。何本も買うよりさ」
「…ん」
コクリ頷いた和衣は、大人しく祐介の傘に入った。
祐介を真ん中にして3人並んで歩けば、話しているのは睦月と祐介だけで、和衣はずっと黙ったまま祐介の傘の中に、静かに納まっている。
今日も2人は飽きもせず、睦月がこのままバイトを続けられるかだとか、いやちゃんと出来るだとか、祐介の過保護っぷりを全開にした会話をしていて。
同じ傘には入っているけど、会話には入っていけない…和衣はそんなふうに思って、小さくため息をついた。
その次の瞬間だった。
「和衣、」
「わっ」
グイ、と、思いも掛けない力が、和衣の体を右に引いた。
和衣の右にいるのは、祐介だ。
「ちゃんと傘入れよ。濡れてんじゃん」
祐介が、和衣を自分のほうに引き寄せたのだ。
「う、うん」
何だかドキドキして、ちょっと返事に詰まってしまった。
慌てた声を悟られたくない。
時々肩が触れる。
もう、睦月と祐介の会話は、少しも耳に入って来なかった。
*****
寮に帰り、部屋に戻る途中、睦月と祐介の後ろを歩いていた和衣は、ふと気が付いた。
祐介の着ているシャツの、右肩が濡れている。
自分は、祐介の左側にいた。
そして、濡れないようにと、引き寄せてくれて。
(俺が濡れないように、傘をこっちにいっぱい分けてくれた…?)
祐介は優しい男だから、別に傘に一緒に入ったのが和衣でなくたって、きっとそうしてくれる。
自分だけが特別なわけじゃない。
勘違いしそうになる自分が、嫌だよ。
でも…。
「カズちゃん、お風呂行こー?」
「あ…うん」
でも。だって。
(どうしよう…)
この気持ちは、
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COMMENT-FORM
柚子季 杏 ⇒ ふわ~~~
カズ・・・・・カワイーー゜+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
そんなんされたら惚れるって!!
ゆっちったら~罪作り♪
うわー本当、この先色々起こりそうですね!
幸せCP、何組誕生するんだろ?
ドキドキするけど楽しみだな~(*´∀`*)
そんなんされたら惚れるって!!
ゆっちったら~罪作り♪
うわー本当、この先色々起こりそうですね!
幸せCP、何組誕生するんだろ?
ドキドキするけど楽しみだな~(*´∀`*)
りり ⇒ やっぱりパラダイスだぁ~。
カズかわいいっ!
ゆっち良い奴だもんねぇ~。
ゆっちも手の掛かる姫は亮くんにバトンタッチして、
自分の幸せを…。
むあ~~~~。
いいなぁ~。
ゆっち良い奴だもんねぇ~。
ゆっちも手の掛かる姫は亮くんにバトンタッチして、
自分の幸せを…。
むあ~~~~。
いいなぁ~。
- |2008.12.17
- |Wed
- |08:23
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
カズちゃん、完全に乙女になってしまいました(笑)
もうずっとヤキモキしてたんでしょうね。
むっちゃんに劣らず、罪作りな男、ゆっち。
そんなん惚れちゃいますよね!
でもまだ6月。
先々長いんで、色々起こしちゃいます(爆)
コメントありがとうございました!
もうずっとヤキモキしてたんでしょうね。
むっちゃんに劣らず、罪作りな男、ゆっち。
そんなん惚れちゃいますよね!
でもまだ6月。
先々長いんで、色々起こしちゃいます(爆)
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >りりさん
かわいい男はむっちゃんだけかと思いきや、ここにもいました。カズちゃん…。
ゆっちはホントいいヤツなんで、惚れられちゃうのも無理ないですよ。
てか、今までいろんな人に惚れられても、むっちゃんの方の心配ばっかして、相手の気持ちに気付かなかったパターン、多そうです(苦笑)
カズちゃんの気持ちに応えるか、お姫の子守りをするか、ゆっちの幸せは…
コメントありがとうございました!
ゆっちはホントいいヤツなんで、惚れられちゃうのも無理ないですよ。
てか、今までいろんな人に惚れられても、むっちゃんの方の心配ばっかして、相手の気持ちに気付かなかったパターン、多そうです(苦笑)
カズちゃんの気持ちに応えるか、お姫の子守りをするか、ゆっちの幸せは…
コメントありがとうございました!