恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2008年07月

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7. 空気と言うには濃いけれど、 (中編)


「どうした?」

 情けない顔で風呂場から戻って来た哲也に声を掛ける。

「ダメだ……パンツ忘れて来た…」
「はぁ?」

 パンツ?
 パンツって……下着のほうの?

「ちょっ…取り行ってくるね?」
「はっ!? 取りにって……どこまで行く気!?」
「店! 荷物ん中にしまったままだった!」
「店て…」

 ここから結構距離あるだろ?
 パンツ1枚のために、そこまで戻るんかい。
 ホントおもしろいヤツ…。

「……何笑ってんの? 俺、すっげぇ困ってんのに…」
「いや……パンツくらい、貸すよ? 新品のあるし」
「え……でも…」
「あ、何? パンツにそんなこだわりあんの? 俺の、普通のだけど、ダメ?」
「いや、こだわりはないけど! ホントにいいの? あぁー……俺、もうホント、何から何までお世話になってる……ホントにゴメンな…」

 哲也は、まさに"シュン…"って言葉がピッタリくるぐらい、しょんぼりと項垂れてしまった。

「別にパンツくらいいいって。てか、極端なヤツだなぁ」
「何が?」
「今からそこのコンビニ行って買ってくるって言うならまだしも、店までパンツ取り行ってくるって……どんだけパンツに思い入れあるんだ! って思うじゃん」
「思い入れはないけど! だってノーパンってわけにいかないじゃんか!」
「そりゃそうだ」

 いくら男同士だって言っても、すっぽんぽんで家ん中ウロウロされても困るしな。
 ホント、風呂入るだけなのに、何でこんな爆笑しなきゃなんないんだろ。

 タンスから新しいパンツと、ついでにタオルも出して哲也に放る。

「ありがとう。後で洗って返すね!」
「返さなくていいわ、そんなもん!」

 何で人が1回穿いたパンツ、洗って返されないといけないんだよ。
 ダメだ、おもろすぎる。アイツの思考回路、どうなってんだ…。
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カテゴリー:アスファルトで溺死。
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

7. 空気と言うには濃いけれど、 (後編)


 哲也と交代で風呂に入って、上がってみれば、最初の約束どおりベッドで寝たらダメだと思ったのか、哲也はソファのところで丸くなっていた。

 勝手にテレビを付けるのを悪いと思っているのか、それとも普段からあんまり見ないほうなのか、映ってもいないテレビをぼんやり眺めてる。

「テレビ、点けたらいいじゃん」
「んー……」
「眠いの?」
「眠くは…………ない」

 ……眠いんだ…。
 あまりに分かりやすすぎる哲也に、思わず苦笑いする。

 それにしても、ホントにソファで寝る気なのかな? (最初にそう言ったのは俺だけど)いくら哲也が小さい言っても、やっぱソファで寝るって、ちょっとキツイ気がする。

 でもなぁ…、いくら俺のベッド、セミダブルだ言っても、男2人で寝るには、ちょっと…。
 前に2人で寝たんは、哲也が酔っ払って俺んこと離さなかったから、無理からだし。

「哲也、狭くない? ソファで寝れる?」
「んー……寝れ、る……ねむ…」

 やっぱ眠いんだ。
 ってか、もう寝てるんじゃねぇの? 寝言か、今の。
 まぁ、本人が寝れる言うんだから、ソファでもいいか。一応、ふとんは掛けといてやるけど。


 あ、明日啓ちゃんに持ってく水ようかん、用意しとかないと。
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8. 結局、ただの、(あるものねだりだ。) (前編)


*****

「うぉっ!?」

 自分で泊めておいて哲也のことすっかり忘れてて、メシ食おうと思ったら、ソファの下に、タオルケットに絡まった哲也がいて、すげぇビビった。

 ……コイツ、昨日の夜、ソファの上で寝てなかったか?
 窮屈だって、途中で降りたのかな? それとも落ちたのか? それでよく寝てられるな。

「哲也、哲也、起きろよ」
「……ぅ…んー……」

 声を掛ければ、タオルケットにグシュグシュやりながら、必死に目をこじ開けようとしてる。
 まぁいいか、そのうち起きるだろ。
 コイツ、朝、何か食うかな? ご飯はあるし……まぁ、適当でいいか。

「…………たか…ひさ…?」
「ん? あ? 起きた?」
「…………ん゛ー……起き…たぁ…」

 あー……起きてないな、これは。

「メシ食うか?」
「…………食う……」
「何でもいいの?」
「……ん、」

 一応、返事はすんだよな。起き上がってもいるし。寝起き悪いのに、必死で起きようとしてんのか。
 とりあえずそんな哲也は無視して、台所に立つ。

 適当に卵焼いたり、みそ汁作ったりしてたら、「たかひさぁ…」って、哲也の情けない声がして、振り返ってみれば、顔濡れたまんまの哲也が、これまた情けない顔で立ってた。

「何してんだよ」
「……タオル、貸して」

 あーあぁー、ポタポタ、ポタポタ水垂れてるし!
 何してんだ、子供か!

「タオル…」
「洗面所にあっただろ!」
「だって勝手に使ったら悪いと思って…」
「………………」

 ここまで水垂らしながら来るほうが、どうかと思うけど…。

「いいから、早く拭いてこい!」

 そう言って、哲也を台所から追い出した。
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8. 結局、ただの、(あるものねだりだ。) (中編)


 それから、適当にメシ作ってテーブルに並べたところで、肩にタオルを掛けた哲也が戻ってきた。

「貴久、ちゃんと自炊すんだ、すごいなぁ」
「しょうがないじゃん、お前と違って、他に作ってくれる人いないし」
「俺だって、ちゃんと料理とかしたよ!」

 家事は俺の仕事だったんだって言い張るのはいいんだけど、まぁ別に信じますけど、えっと、それって、この間別れた(いや、捨てられた)元カノとの話だよな?

 彼女のために、家事とかみんなやってやってたんだ。
 こんな尽くしてくれる彼氏、何で捨ての、もったいな!
  逆に、私がやってあげたいのに、何で全部やっちゃうの!? とか思われたとか?

「あーーーー!!」

 勝手に哲也と元カノの想像をしてたら、哲也が素っ頓狂な声を張り上げた。

「何だよ!」
「納豆! 納豆があるー!!」
「そりゃあるよ。何?」
「俺、納豆嫌い! 大っ嫌い!!」

 力いっぱい力説する哲也。
 ホント、子供か。

「お前さっき何でもいいって言ったじゃん」
「何でもいいけど、納豆はダメなの! そんなん人間の食いもんじゃない!」
「俺は好物だ」

 答えれば、哲也は、『信じられない!』って顔で固まった。

「だったら納豆以外を食えよ。俺、腹減ってんだよ。早く、メシにしよ」
「絶対に納豆は食わん!」

 そう言い張って、哲也はテーブルに着いた。





「いただきま~す」

 なんて、手を合わせて箸を取ったかと思うと、哲也はいきなり「あ!」とか言って、携帯電話を取り出した。

「メシ食ってる最中に何してんだよ」
「だって、今からいろいろ連絡しとかないと、間に合わないもん」
「何が?」
「今日泊まるとこ。ホントは昨日の家にメールしよーと思ってたのに、忘れてたの」

 …あぁ、コイツ、ホントは宿なしなんだもんな。
 どんな文面なら相手が泊めてくれるのかと、必死に頭を悩ませているのか、眉間にぐっとシワが寄ってる。

「なぁ、哲也」
「なーに?」
「とりあえず、ケータイ置けよ」
「うー?」
「まずメシ食え」

 落ち着いてメシが食われへんのは、何か嫌だ。
 ただ、それだけのこと………………だと思う。

「今日泊まるとこ見つからなかったら、また俺んち来たらいいじゃん」
「うぇ!?」
「何? 嫌か?」

 そりゃそうか。
 ソファで寝かせて、しかも朝になったら、固い床の上に転がってんだもんな。

「嫌とかじゃないけど…」
「じゃあ、何?」
「貴久、迷惑じゃないの?」
「お前、自分の友達には、迷惑省みずこんな時間からメール送ろうとしとんのに、何で俺にはそんなに遠慮してんの?」
「貴久こそ、何で俺にそんなに良くしてくれるの?」
「何が?」

 俺、哲也に何かしてやったっけ?
 人がメシ食ってるときに、目の前でかちゃかちゃメール弄ってんのが、鬱陶しかっただけなんだけど。
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カテゴリー:アスファルトで溺死。
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note index


murmur まとめ
 サイドメニューのmurmurの過去ログ。量が多くなったんで、こちらに。捨ててもよかったんですが、何かもったいなくて…。

本棚バトン、行きま~す!
 メンタルメンテ」のイチゴさんからいただいた素敵バトン。

腐女子バトン
 私の萌えとか。

物書きさんに突撃してみるバトン ~私流小説の書き方~
 恋三昧1周年記念バトン。今さらながら、書き方とか公開してみるぜ。

【お話の更新ではありません】 緊急のお知らせ
 当ブログのGENOウィルスへの対応報告。

性格バトン
 BL風味のさくらんぼ」の柚子季さんからいただいた素敵バトン。答えるのは少し難しい…?

Midnight Butterfly 出張中
 読み切り短編「Midnight Butterfly」が出張してます、のお知らせ。

10万Hitしてました。ありがとうございます。
 10万Hitありがとうの記事。

オフ会に参加してまいりました
 柚子季さん主催のオフ会に参加してきちゃいましたレポ。

■創作者バトン (前編) (後編)
 生意気にも、創作者とかいって、答えてみたバトン。長いです。

B型に100の質問
 恋三昧2周年とは、あんま関係ないけど、せっかくなんで。

サプライズ三昧
 柚子季さんからのありがたいサプライズイラスト。感謝感謝です。

小説書きに100の質問
 恋三昧3周年記念バトン。一応小説書きだからね。

20万hitしてました。ありがとうございます。 +制作裏話
 20万hitありがとうの記事。+制作裏話など。

BL小説書きさんへのマジ・エロな100の質問
 恋三昧4周年記念バトン。4周年目にして、ついに来たエロ質問!

投票結果を発表しちゃったり、攻めっ子とか受けっ子にいろいろ質問しちゃったりするぞ企画
 攻めっ子に20の質問受けっ子に20の質問
 好きカプアンケに投票ありがとう企画

もしこんな状況になったどうする? バトン
 2012年末年始企画年末編

ってかどうでもよくね?
 2012年末年始企画年始編の恋三昧5周年記念バトン。毎年「ていうかどうでもよくね?」て感じで、誰も知りたくないであろう、私のことを答えてるんで、今年は思い切って、こんなバトン。

30万hitしてました。ありがとうございます。&おまけのアリス
 30万hitありがとうの記事とおまけ。

更新休止のお知らせ + もう1個お知らせ
 更新休止のお知らせと、お題配布サイト始めましたのお知らせ。

明日から更新再開します!
 更新再開のお知らせです。

♂×♂好きさんに100の質問
 恋三昧6周年記念バトン。今年は原点に返って。

萌えに関する100の質問
 年末年始企画、年始編第2弾。

大なり小なり150のBL質問
 恋三昧7周年記念バトン。今年も原点に返ってみたよ!

40万hitありがとうございます。& 神がむっちゃんとカズちゃんを作ったよ
 40万hitありがとう記事とおまけの創造神。

■年末年始だよ、全員集合! 各作品のキャラに話を聞いちゃおうよ企画!!
 (1) (2) (3) (4) (5) (6)
 2015-2016 年越し年末年始企画。

一次創作の物書きさんに100の質問
 恋三昧8周年記念バトン。今年は自給自足でやっております。

本好きへの100の質問
 恋三昧9周年記念バトン。本が好きなので。
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カテゴリー:notes

8. 結局、ただの、(あるものねだりだ。) (後編)


「…………」

 哲也がポカンと、でもどっちかって言うと、呆れたような顔で俺のことを見てる。
 何て言うかな……俺、一緒にいるヤツが何かしてても、あんまりそういうの気にならないんだよね。
 たとえば寝ようとしてんのに、テレビ点けっ放しにされてても、平気で寝れるし。
 あ、でもメシ食うの邪魔されると、嫌かも。

「貴久って、めっちゃマイペースなんだね」
「そうか?」
「自覚ないの?」

 哲也はますます呆れ顔になる。

「目の前で今まさにホームレスになろうかとしてるヤツ、ほっとけるほど薄情なヤツじゃないけど、俺」
「ホームッ……ホームレスじゃないよ!」
「じゃないことないだろ、宿なしなんだから」
「ッ…!」

 その先の言葉が思い付かないのか、哲也は金魚みたいに口をパクパクさせてる。

「まぁいいや。好きにしろよ」

 そんな哲也を放って、俺はメシの続き。
 だって早くしないと、仕事に遅れる。

「貴久…………ホントにいいの…?」
「あ?」
「今日も……泊まっていいの?」
「ちゃんと自分のパンツ持って来いよ?」
「持って来るわ!」
「てか、めんどいから、荷物みんな持って来いよ」
「え?」
「もうめんどいんだよ。次の宿が見っかるまで、ここにいたらいいじゃん」

 面倒臭いのは嫌い。
 物事を深く考えるのも。
 それでも今まで無事に生きて来れたんだから、俺の直感も、行動も捨てたもんじゃない。

 …………たぶんきっと。
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9. 込み入った事情 (前編)


 哲也と一緒に暮らし始めて、半月。
 その生活は、まぁそんなに悪くはない。

 相変わらずアイツの言動・行動はツボだし、哲也のファッションセンスにはついていけないけど、生活のリズムは合わなくもない(腹の減るタイミングは全然だけど)。

 啓ちゃんには時々、「どんな感じ?」って聞かれるけど、いたって普通だから、そう答えてる。
 啓ちゃんは啓ちゃんで哲也と遊びに行くときあるし、3人でメシ行ったりもするから、知ってるとは思うんだけど。



*****

 哲也の勤めてる店は、開店時間が11時だけど、開店の準備とかがあるから、いつも俺とおんなし時間に家を出る。
 今朝は2人してちょっと寝坊したのに、哲也がいつもみたくのんびり身支度してたから、急いで行かないと間に合わないような時間になってた。

「哲也、早く!」
「まっ待って、貴久!!」

 いつもは階段で下まで行くんだけど、今日は急いでるし、いいタイミングでエレヴェータが下りてきてるのが分かったから、エレヴェータのボタンを押した。

 哲也が慌ててやって来たところで、チンッ…って言う安っぽい音と共にエレヴェータの扉が開く。
 中には男の人が1人乗ってたけど、別に俺ら2人が乗れないような狭さじゃないから、急いで乗り込もうとしたのに、隣の哲也が動こうとしない。

「おい、」

 急いでるし、俺ら以外にもエレヴェータに人乗ってるしって思って、早くするように促すのに、哲也は目を見開いたまま、その場に突っ立って、微動だにしない。

「てつ…」
「哲也?」

 俺の声に被せるように哲也の名前を呼んだのは、先にエレヴェータに乗ってた男。え!? って思って振り返れば、その人もまた、呆然と哲也のことを見てる。
 俺は哲也とその男を交互に見た。
 何? 知り合い?
 別にどっちでもいいけど、早く乗って! って思ってたら、突然哲也は踵を返して、階段のほうへ走っていった。

「ちょっ…えっ!?」

 追い掛けたほうがいいのか!?
 それよりこのままエレヴェータで下まで行ったほうが早いか?

 何が何だか分からなくて、もっかい振り返ると、その男と目が合った。気まずいけど時間も気になるし、別にその人、この階でエレヴェータ降りるつもりもないみたいだから、俺は『開』のボタンから指を離した。
 変な沈黙の中、エレヴェータは1階に到着して、俺は先にその箱から脱出する。
 そこに哲也の姿はなかった。

「………………」

 どうせアパートを出た瞬間から別々のほうへ出勤するし、小学生ってわけでもないからそこまでは心配しないけど、やっぱりあの態度は気になる。
 あの男も気になる。

 でもとりあえず、今は会社に急がないといけないから、ダッシュで会社に向かった。
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9. 込み入った事情 (中編)


 昼休み。
 哲也が今休憩時間か分かんないけど、メールを送ってみた。
 そしたら、1分もしないうちに返事が返って来て、とりあえずちゃんと仕事場には行ったことが分かった。

 エレヴェータで鉢合わせした朝の男のことは気になったけど、メールでそこまで聞くのもなんだし、大丈夫ならいいんだって返して、メールを打ち切った。



*****

 家に帰ってメシ食って寛いでたら、もうすぐ日付が変わる時間になってた。

「アイツ、遅いな…」

 まだ、哲也が帰ってこない。
 だからそれこそ子供じゃないし、お母さんじゃないんだから、別にそこまで心配しなくてもいいんだけど、今まで連絡もしないでこんな時間になったことがないし、今朝のこともあるから、ちょっと心配。

 そんなこと思ってたら、投げっ放しにしてた携帯電話が震えた。

「あ、哲也…」

 慌てて受信したメールを開くと、『今日は帰らない』と、あっさりした文面。
 誰かんち泊まるのかな?
 哲也の友達なんて、啓ちゃんと、店の店長さん(友達とは言わないけど)くらいしか知らんから、誰? とか聞いてもしょうがないし、他に行くとこがあるなら、それはそれで構わないから、『分かった』って返して、俺はふとんに入った。

 でもその後で、アイツ、荷物みんなここにあるじゃん! って気が付いたけど、パンツ届けんのも何だし、そのままほっとくことにした。



*****

 でも。
 翌日も夕方になって、哲也から、『今日も帰らないから』って、メールが来る。
 またか…。

「貴久ぁ、今日メシ食って帰らね?」

 昨日が給料日だったから、ちょっと財布の中がリッチな啓ちゃんが、そう言ってきた。
 俺まだ下ろしてないから、そんなに金ないんだけど、どうせ哲也も帰って来ないからまぁいいやって、OKした。
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9. 込み入った事情 (後編)


「そんで、テツとはうまくやってんの?」
「んー?」

 お好み焼きを器用に引っ繰り返しながら、啓ちゃんがそう尋ねてきた。

「一緒に暮らしてんだろ?」
「うん。でも今日は帰ってこない」
「そうなの?」
「昨日も帰って来なかったけど……てっ」

 待ち切れなくてお好みに手を伸ばせば、啓ちゃんにペチンて手を叩かれた。

「ケンカ?」
「別にー。アイツだって他に友達いるだろうし、そっちに泊まることもあるじゃん?」
「……気になんないの? テツが他の誰かんちに2晩も泊まっても」
「どういうこと?」

 もともと哲也は元カノのとこ追い出されてから、友達んとこ転々としてたみたいだし、別に一緒に住んでる言っても、俺はアイツの恋人じゃないんだから、2晩だろうが3晩だろうが、人んちに泊まったって、気にすることなんかないんじゃない?

「いや……えっと、あれ?」

 啓ちゃんは、お好みを弄る手を止めて、困ったように顔を上げた。

「何? 焼けた?」
「あ…うん、いや、あの、貴久」
「だから、何?」

 口籠りながらも、俺が皿を差し出したら、啓ちゃんはヘラでお好み焼き切り分けて、取り分けてくれた。

「えっと……お前、テツと…………え?」
「にゃに?」

 口の中モゴモゴさせながら聞き返せば、啓ちゃんはまだ困惑した顔で。

「いや、あの、お前、テツが今どこ泊まってるか、知ってんの?」
「知らないよ、そんなの。友達んトコじゃないの? 別に恋人でもないんだし、そんなの追及しないよ」
「…………………………」

 ???
 俺、そんな変なこと言った?
 啓ちゃんが、唖然とした顔で固まってる。

「何、はっきり言ってよ」
「あー……えっと、いや、もういいわ」
「何、そんなのこっちが気になる! 啓ちゃん、何?」
「何でもない! そうだ、別にお前ら、恋人同士じゃないもんな!」
「そうだよ」

 第一、俺ら男同士だけど?
 別に同性愛を差別するつもりはないけど、俺、男より女の子のほうが好きだし。



 結局、このときの啓ちゃんの真意はいいようにはぐらかされて。
 そして哲也は、何だかんだで5日間、俺んちには帰って来なかった。
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10. 33%の憂鬱 (前編)


 さすがに5日もここに戻って来なくなると、ぼんやりしてる俺でも、何かあったのかなって思う。
 新しい宿を見付けたのなら、アイツのことだから電話かメールで言ってきそうなんだけど。

 別に哲也の事情を詮索するつもりはないけど、アイツ、荷物全部ここに置いてってるから、何かと不便なんじゃないかな。
 合鍵渡してあるのに、取りに来てる様子もないし。

 だから、今日哲也からメールが来たら、そのこと言おうと思ってたのに、思いがけず哲也が帰って来た。

「おう、お帰り」

 まだ俺が帰ってきてないとでも思っていたのか、声を掛けたら、哲也はひどく驚いた顔をした。

「あ……貴久…」
「どうした? 早く入れよ」
「……うん、ゴメン、5日も…」
「別にいいけど。荷物みんなここに置いてって、大変じゃなかった?」
「あ……うん」

 部屋に上がっても、哲也は何だか元気のない様子で。
 何も食ってないって言うから、とりあえずメシを食わせてやっても、全然復活しない。

「……貴久ぁ」
「何?」
「俺………………ここ出ようかと思って…」

 メシ食い終わって、食器を片した後、徐に哲也がそう言った。

「ぅん? あぁ、住むトコ見つかった? おめでとう」

 そのわりに、あんまり元気がないのは何で?
 俺はテレビを消して、哲也の向かいに座った。

「哲也?」
「……いや、そうじゃないけど…」
「?? どうした?」

 けれど哲也は答えずに、そのまま俯いてしまった。

「哲也?」
「もう……ここにはいられない…」
「は?」
「別に貴久のこと嫌いになったとか、そういうことじゃなくて、貴久にはすっごい感謝してるし、その…」

 要領を得ない哲也の説明を、けれど俺は何も突っ込まずに、次の言葉を待った。

「も…ダメなの、俺……ヒック…」

 そう言った後、哲也が大きくしゃくり上げて。
 俯いてるけど、穿いてるジーンズのももに、ポタポタ涙が落ちていく。

「哲也? 何? 何がダメなの?」
「も……いやだぁ…、わぁーーーーんっ!!」
「ちょっ…おい!?」

 子供みたいに泣きじゃくる哲也の側に行って、その背中をさすってやる。それでも泣き止まない哲也を、何でか、思わず胸に抱いてしまって。

 別に女の子を慰めるような、そんなつもりじゃない。
 どっちかって言うと、子供をあやす、それ。

 哲也が泣き疲れて眠るまで、訳も聞けないまま、ずっとそうしてた。
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10. 33%の憂鬱 (後編)


 今日が会社休みで、ホントに良かった…。

 哲也は仕事なのかな?
 人一倍、自分の仕事に誇りと情熱を持ってる哲也に、無断欠勤させるのもかわいそうだから、前に哲也から貰った名刺に書いてあるお店の番号に電話して確認したら、幸いにも哲也も休みだった。

 ここに来てなかった間、よっぽど気ぃ張ってたのか、昨日寝入ってから、まるで意識を失ったみたいに、まるで起きようとしない。
 とりあえずベッドに哲也を寝かせたまま、俺は寝室を出る。

 洋服のままじゃ寝苦しいだろうからって、サイズの合わない俺のスウェットに着替えさせて。
 俺は昨日哲也が着てた服を洗濯機に放り込んで…………すぐに取り出した。
 アイツの服の洗濯は、なかなか厄介なんだよね。
 よく分かんない服着てることが多いから。
 下手に洗って、色が落ちただの、縮んだの言われたらめんどいから、表示のタグを確認しないといけないわけ。
 何か知らんけど、いつの間にか、洗濯上手だ。

 でもこの服、どっかで見たことあるよな。
 えーっと、

「………………啓ちゃん?」

 そういえば、この間、休みの日に会ったとき、こんな服着てた。
 いや、啓ちゃん以外だって同じ服持ってる人はいるだろうし、哲也だって持ってるかもしれないけど、どうも今まで着てたアイツの服の趣味とは違う気がするし。

 もしかして哲也、啓ちゃんとこ泊まってた?
 実家暮らしだって言っても、2,3日友達が泊まりに来ることぐらい別に構わないだろうし、実際、俺だって啓ちゃんちに泊まりに行ったことある。

 こないだのお好みの日以来、啓ちゃんとの間で哲也の話は出てないけど、哲也が帰って来てないこと話してんだから、啓ちゃんちいるなら、一言ぐらい言ってくれたっていいのに。

 …………そう言えば、あのお好み焼きの日、啓ちゃん、何か言いたそうだったな。何だったんだ。いつの間にかはぐらかされてもうてたし。

 別に気にはしてなかったけど、哲也がこんなになって帰ってきたら、やっぱり気になる。
 まぁ、疲れて寝てんの、叩き起こして聞くわけにはいけないけど…。

「あの、男……関係あるのかな?」

 あの日、エレヴェータで鉢合わせた男。
 哲也は逃げ出して。
 5日も帰って来なくて。
 行く当てないくせに、出て行くって言い出して。

「何だよ…」
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11. 知らないでくれ (前編)


 とくに用事もなかったし、あんな状態の哲也を残して出かけるわけにもいかないから、部屋掃除したり、洗濯もん干したりしてたら、昼ごろになって哲也が起きてきた。

「おはよぉ」
「あ……うん、」

 持て余してるスウェットの袖をプラプラさせながら、哲也は所在なさげに立ってる。

「もぉ起きて平気? 疲れてんなら、まだ休んでろよ。今日、仕事休みだろ?」
「え…あ、うん……何で知って…?」
「あぁ、ゴメン、店に電話したんだよ。もし仕事だったら、お前起こすか、休む連絡しないといけないだろ?」
「……ありがと…」

 もそもそとそう言って、でも哲也は寝室に戻っていいものか、こっちに来たらいいものか迷ってるみたいだったから、とりあえず突っ立ってないで、こっち来て座れって促した。

「哲也、何か食うか?」
「…フ、」
「何笑ってんだよ」

 いや、泣かれたり落ち込まれたりしてるよりは笑ってるほうがいいけど、別に今、何も笑うとこなかっただろ!?

「貴久っていっつも、何か食うかって聞いてくる」
「しょうがないじゃん、もう昼メシの時間だろ?」

 そう言っても哲也は、まだクスクス笑ってる。
 とりあえず、俺は残りの洗濯モンを干すことにして。ちょうどカゴの中から手に取ったのは、啓ちゃんのかな、と思われるシャツ。
 そしたら、「あ…」って哲也の声がした。

「ん? これ?」

 半乾きのシャツを見せれば、哲也がコクンと頷いた。

「啓ちゃんの?」
「あ……うん、」
「いや、この前啓ちゃんがこんなの着てたから、そうなのかなって思っただけで。そんなら、乾かした後、別にしてたほうがいい?」
「……ん。あの…」
「ぅん?」

 哲也が何か言いたそうにしてるんで、とりあえず手に持ってるそれだけ干して、哲也のところに行く。

「貴久…………何も聞かないの?」

 俯き加減に、哲也が口を開いた。
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11. 知らないでくれ (後編)


「貴久…………何も聞かないの?」

 俯き加減に、哲也が口を開いた。

「何が? 昨日のこと? それともずっと帰って来なかったこと?」
「……どっちも」
「んー……まぁ、急に出てくって言われたら、俺、何かしたかな? とか思うし、気になるけど、」
「違うの! 別に貴久のせいじゃないの! 貴久が何かしたとかじゃなくて、」

 そして哲也は、目を潤ませて、グズッと鼻を啜った。
 これじゃ、昨日の夜とおんなじだ。
 俺のせいじゃないし、俺は何もしてないって言うけど、ここにはもういれないって言う哲也。
 何か別の理由があるんだろうけど、そのことを思うと泣き出してしまって。

「俺に話してお前が楽になれるんだったら、話聞くけど」
「でも俺、貴久に嫌われたくないし、」
「嫌いになるなんて、別に言ってないじゃん。どういうこと?」
「……………………言えない……。ゴメン、やっぱ貴久とずっと友達でいたいから………………知られたくない、こんな……」

 そこで言葉を切って、哲也は俯いた。続きを促していいものなのか分かりかねて、俺も押し黙ってしまう。
 決して心地よいとは言えない沈黙が流れて。

「…………やっぱ出てく、俺」

 顔を上げた哲也は、キュッと唇を噛んで、涙を堪えているような、そんな表情だった。

「別にいいけど……どうすんの? これから。啓ちゃんちにずっと泊まれんの?」
「………………」

 哲也は黙ったまま、首を横に振った。

「ど…しよ、俺……」

 ようやく上げた顔を再び項垂れた哲也は、かすかに肩を震わせている。

「哲也……なぁ、話せよ? 2人で考えたら、何かいい方法が浮かぶかもしれないじゃん。俺が嫌だったら、啓ちゃんに……」
「……ゴメ…」

 哲也は頭を抱えてしまって。
 きっと、俺に話していいものかどうか思案してるんだろう。

 俺にしてみたって、何だかよく分かんない。
 友達って言ったって、啓ちゃんの友達って素性が分かったのなんてごく最近だし。
 出会ってからだってまだ日は浅いし、一緒にいていやすいから同居してはいるけど、別に親友って言うほど深い仲でもない。

 なのに、何でこんなに親身になってんの?
 本人が出て行きたいって言ってるなら、好きにさせればいいのに。

「…………あのさ、」

 ため息ともつかない大きな息を吐き出して、哲也は重い口を開いた。

「貴久、マジで引くかもしれないけど、聞いて」
「うん」
「俺………………」

 ジッと俺を見据える哲也の瞳が、揺れた。
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12. 過ぎた事はなくならないのに。 (前編)



「俺………………ゲイなんだよね」






「……………………え?」






 哲也の声が聞こえなかったわけじゃない。
 その言葉の意味が分からなかったわけでもない。
 ただ、それが脳に伝わって、それから理解に至るのに時間が掛かっただけで。

「え…………ゲイ?」

 念のために問い返したら、哲也はコクリと頷いた。

「そう。女の子よりも、いや女の子はかわいいと思うけど、男のほうが好きなの。引くでしょ?」
「…………あ……いや、引きはしないけど…………正直、ビビった、かな…」
「ハハ、ホントいい奴だね、貴久」

 そう言って哲也は自嘲気味に笑ったけど、別に俺だって、哲也に気ぃ遣ってそんなふうに言ったわけじゃないし。
 ゲイとかそういうの、別にキモイとは思わないけど、周りにいないから、ビックリしただけで。

 こういうのを、カミングアウトって言うのかな?
 結構重大な告白をされたのに、意外と冷静でいられるのは、脳がちゃんと理解してないせいなんだろうか。

 何から聞いたらいいんだろ。
 きっと哲也が、ここを出てくとか出てかないとか、そう言ってたのも、このことに起因するんだろうけど、いったい何をどう聞いたらいいか、分かんない。

 そのことを啓ちゃんは知ってんの?
 友達のトコ、転々としないといけないのは、やっぱりそのせい?
 最初に出てけって言った、この上の階に住んでる元カノって、もしかして彼氏ってこと?
 ここ出て行くって言ったんは、ゲイやと俺が気持ち悪がると思ったから?

「聞きたいことあるなら、別に何でも聞いていいよ。他に隠すことも何もないし。それとももう話すのも嫌だって言うなら、すぐに出てくけど」
「いや……ってかお前、自分のこと卑下しすぎだよ。別に引いてない言ってんだろ」
「だって貴久、ノン気だろ? 普通は気持ち悪がるもん。でもまぁ、怒って『出てけー!!』とか怒鳴られなくて良かった」
「怒鳴られたことあんの?」
「あるよ。だって男を恋愛対象として見てんだよ? 別にその人のこと、そういうふうに思ってなくたって、…………なぁ?」

 なぁ? って言われて、どう返事をしたらいいのか分からなくて、俺は曖昧に笑って答えた。

「啓ちゃんは知ってんの?」
「うん。でも泊めてくれてる友達とか、知らないヤツもいるから、内緒にしてね? いざってとき、泊まれなかったら困るから」
「そんなの言わねぇよ。第一、お前の他の友達なんか知らねぇし」

 でもそっか、啓ちゃんは知ってんだ…………って、あれ? そういえば、あのお好み焼きの日、啓ちゃん、何か言いたそうだったよな。

 啓ちゃんは、哲也がゲイやって知ってるわけだろ?
 で、俺が哲也を家にずっと住まわしてるって…………もしかして、俺が哲也の性癖を知ったうえで、恋人同士になったとか思ったんじゃないだろうな。

 ちょっと待ってよ!
 そんなん、別に恋仲でも何でもない女と、勝手に恋人だって思われるのと一緒じゃん! 違う違う! 違いますよっ!!

「貴久?」
「へ!? あー…いや…、何でもない…」

 ……こともないけど…。
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12. 過ぎた事はなくならないのに。 (後編)


「…で、ここ出てくって言うのは、そのせい?」

 でも、そんなカミングアウトしなかったら、別に気付かれないままここにいれたのに。
 何でわざわざそんなこと告白したわけ?
 隠し通すのが、難しいと思ったから? 秘密を作るのが、悪いとでも思った?

「…ん、あの、この間、エレヴェータ…」

 数少ない哲也の単語の中からでも、何とか意味を探そうとする。
 エレヴェータというキーワード。
 思い当たるのは、あの男。

「あの、」
「……ん、"あの"」
 "あの"男。

「元カレ」
「………………。元、カレ…」

 エレヴェータに乗る乗らないの、ギリギリのラインでかわわしたあの男。
 哲也の、元カレ。
 そうか、そうだな。そうなんだ。確かに元カノじゃないわな。

「何か…変な話、気付かなかったっていうか、」
「え?」
「おんなしアパートに住んでんだから、別んトコ住んでるよりずっと会う確率高いのに、何でだろ、会うわけがないって、勝手に思い込んでた」
「………………」
「こないだみたいにエレヴェータとかで鉢合わせしたら…。あんときな、エレヴェータのドア開いたら、中にあの人が乗ってて、もう頭ん中、真っ白になって…」

 あのときの、取り乱した哲也の姿を思い出す。

「もしかしたらまた会うかもしれないって思ったら、…………貴久がいいって言ってくれても、怖くてここにはいれない…」
「で、どうすんの? これから」
「…………分かんない。何とかお金貯めて、アパートとか借りれたらいいけど…」
「実家帰ったらいいじゃん」

 前に実家はダメだって聞いてたけど、行く当てないんだったら、最終的に頼るのって、家族じゃないのかな?

「……俺、勘当されての、お父さんに」
「………………………………は?」
「溜めすぎ、貴久。しかもそんだけ溜めて、『は?』って」
「いや、は? 何? 勘当? 江戸時代!?」

 何それ!?
 勘当って、つまりだから、親子の縁切られたってことだろ!?
 そんなの今どきあんの!?

「親にゲイだってこと打ち明けたら、すごい剣幕で怒られて、お父さんに『勘当だぁ~~~!!』って」
「極端すぎる!」

 そりゃ親としては、息子にゲイやってカミングアウトされるよりは、普通に女の子を好きでいてくれたほうが嬉しいかもしれないけど、何も勘当て…。

「そんでしょうがないから、家出たんだけど……前もちょっと行くトコなくなってどうにもならなくなったとき、実家に帰ったんだよ。どうにかなるかなって思って。そしたらやっぱダメで」
「許してくれないの?」
「おもっきり平手」
「マジでか!?」

 怖っ!
 何そのオヤジ!

「もともと、ホラ、俺、こんなカッコしてんじゃんか。こういうチャラチャラしたカッコしてんのも嫌みたいで…」
「それで帰れないんだ?」
「帰るたんびにビンタされてたら、堪んないもん」

 そう言って哲也は苦笑した。
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13. 絶望する資格など持ちあわせていない (前編)


 哲也がこれからどこに行って、どうするのかは気になったけれど、これ以上俺が哲也を引き止める理由はなくて。
 ましてや俺は引っ越してまで、哲也と一緒に生活する必要なんてどこにもないわけで。

 初めにここに来たときと同じ、大荷物を抱えて去っていく哲也の背中を見送った。





*****

「はい」

 ちょうどいい袋がなくて、半透明の買い物袋に入れたそれを啓ちゃんに差し出すと、啓ちゃんはこれでもかってくらい怪訝そうな顔をした。

「啓ちゃんのでしょ?」

 "それ"とは、哲也が着てきた、黒のシャツ。
 啓ちゃんのだって聞いてたから。
 哲也が帰るときにはまだ乾いてなかったし、どうせ仕事で会うからって、俺がそのまま預かった。

「テツに貸したヤツ?」
「うん。洗濯したんだけど、哲也が帰るとき、まだ乾いてなかったから」
「やっぱお前んち、出てったんだ、アイツ」
「うん。帰って来て一晩泊まってったけど、やっぱ出てくって。ていうか、それまで啓ちゃんち泊まってたんでしょ? 言ってくれたら良かったのに」
「そんなの追及しないって言ったの、お前だぞ?」
「そうだけど!」

 啓ちゃんが妙に突っ掛かって来て、気になる。
 もしかして俺が哲也のこと引き止めなかったこと、怒ってんのかな?

「しょうがないじゃん、本人が出てくって言うの、俺がそこまで引き止める理由がないもん」
「まぁ、そうだけど………………その、聞いたんだろ? テツから」
「んんー? あぁ、………………うん」

 何を、とは言わないけど、啓ちゃんが言わんとすることは、まぁ分かるから。

「別にそれで追い出したわけじゃないよ? 本人が…」
「分かってる」

 そう言いながらも、啓ちゃんはむぅ~~っとした顔で、眉間に渓谷のようなシワを刻んでる。
 あの日、俺んちに泊まらないで帰ったんだから、昨日の夜も含めて2晩、アイツはどこかに泊まっただろうと思われるけど。ホントに屋根のあるトコに泊まれたんだろな。

「…………今日、メシでも誘ってみるか?」
「……うん」
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13. 絶望する資格など持ちあわせていない (後編)


 啓ちゃんが哲也にメールしたけど返事がなくて、きっと仕事中だからケータイ見てられないんだろうって、仕事終わったら2人で哲也の店に行ってみることにした。

 哲也は自分から出て行きたいって言ったわけだし、別に啓ちゃんだってそのことを責めたりはしないけど、何となく…………罪悪感。
 何でだろ。
 やっぱ無理にでも引き止めるべきやったんだろうか。宿なしになるかもしれないんだからなぁ。でも、哲也が俺んちにはいたくないって言ったんだから…。

「あんま深刻に考えんなって。今日また話聞いたらいいじゃん」

 相当深刻そうな顔してたのかな。
 啓ちゃんにそう言われて、俺は曖昧に笑って返した。





 テツの勤めてる店に行くのは、これが2回目。
 店に入れば、この前チラッとだけ挨拶した店長さんが伝票の確認をしてて、啓ちゃんが声を掛けたら、「よぉ」って顔を上げた。
 俺と違って啓ちゃんは何度か来てるみたいで、店長さんとも顔見知りみたい。

「テツ、います?」

 そう尋ねれば、店長さんはキュッと眉を潜めた。

「?? 今日、休みですか?」
「啓、お前何も聞いてないの?」
「何がです?」
「アイツ、辞めたんだよ、ここ」
「えっ!?」

 哲也が店辞めた?
 もちろん俺だって初耳だけど、啓ちゃんもそれは知らなかったみたいで、すごいビビってる。

「いつですか?」
「…………1週間くらい前にそんな話してきて……3日前が最後の仕事」
「3日前!?」

 …………3日前、てことは……5日も帰らないで、ようやく哲也がウチに帰って来た日だ。そんときにはもう、この店辞めてきてたってこと?
 俺んち来てなかった間、ずっと啓ちゃんちにいたのに、啓ちゃんに何の相談もしないで?
 金溜めて、アパート借りるとか言ってたのに、店辞めてどうする気?

「何で、とか言ってました? アイツ」
「いや…特には。俺も引き止めたんだけど、無理だって言われて。アイツのデザインする服、人気あったから……これからだって思ってたんだけど…………なぁ啓、もしテツに会ったら、もっぺん戻る気ないかって言ってくれない?」
「…………はい」

 それから俺らは店長さんに挨拶して、店を出て。
 どこに向かっていいか分からずに、2人してただ立ち尽くした。
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14. そして見上げた空の色は、 (前編)



 雨、だ。





*****

 俺も啓ちゃんも、何度か哲也のケータイに連絡をしてみたけど、3日経っても、電話もメールも音信不通。
 さすがに心配になって、啓ちゃんが哲也の実家に電話をしてみたけれど、帰って来ていないとのこと。
 電話越しにわずかに聞こえてきたのは女性の声で、どうやら哲也のお母さんらしい。

 話していると、啓ちゃんの顔がみるみる険しくなってって、「……分かりました、失礼します」って、一応礼儀正しく電話切ったけど、その声は怒りを含んでいるように思えた。

 ふと、思い出した。

「哲也が家、勘当されてるって、ホント?」

 電話を切った啓ちゃんに尋ねると、啓ちゃんは黙ったまま頷いた。

「テツんち、めっちゃ厳格で、兄ちゃん医者だし、両親としてはやっぱアイツにもそうなってほしかったんじゃないかな?」
「………………」
「テツが大学に進学しないって言ったとき、すっげぇ怒られて、引っ叩かれて、泣きながら俺んち来たことあるし」
「マジで!?」

 大学に進学しないだけで、ビンタ!?
 …………そりゃ、ゲイだってカミングアウトしたら、勘当もされるわな…。

「他に哲也の行きそうなトコとか、心当たりないの?」
「思いつくトコは連絡してみたけど、みんな知らないって」

 俺も、哲也の友達なんて、啓ちゃん以外知らんし。
 それと、あの店長さんと、上の階に住んでる………………哲也の元カレ。でもあれだけ、もう会いたくないって言ってたんだから、まさかその元カレのトコには行かないだろうけど…。

「どこ行ったんだよ…」
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14. そして見上げた空の色は、 (中編)


 哲也と連絡が取れなくなって10日。
 もし見かけたら連絡してくれって啓ちゃんが頼んでた哲也の友達からも、何の音沙汰もなし。
 ホントに会ってないのか、一緒にいるけど連絡しないように哲也が頼んでんのか知らないけど、哲也が俺らに会わないようにしてるのは確かで。
 哲也が使ってたふとんも、そのまま、部屋には残ってんのに。

「そうは言ったって、アイツだってそんなに金があるわけじゃないし、今までだって苦労してその日の宿決めてたわけだから、行く当てなんてそんなにないと思うんだけど」
「……うん」

 仕事が終わって、2人で会社を出れば、アスファルトが濡れ始めてる。
 小雨って言っても、傘を差して帰りたいくらいの降り方。

「うわー、降り出してきてんじゃん。今日の天気、雨だったっけ?」
「知らん。天気予報なんか見ないし」

 啓ちゃんは、鬱陶しそうに空を見上げた。
 天気予報見ないって、凄いなぁ。俺、今日たまたま見忘れただけだけど、普段から見ないって…………今日みたいなときって、どうしてんだろ。

「雨足強くなんないうちに帰るか」
「傘ないじゃん」
「そんなのいらん」
「はぁ!? 濡れて帰んの!? コンビニで傘…」
「こんくらいだったら、平気」
「ちょっ…啓ちゃん!」

 うわっ、ホントに走り始めたよ、この人! マジでか!?
 でもここで、俺だけ戻って傘とか捜してたら、後で絶対キレられる!!
 しょうがないから、俺も啓ちゃんの後に続いて、小雨の中、走り出した。

 幸いにも雨足が強くならないことだけが救いだけど、長く雨に当たってれば、結構シャツも髪も濡れてくる。
 うー……早く帰りたいっ…!
 そう思ってんのに、先を走ってた啓ちゃんが、軒下とかじゃなくて、普通に歩道の真ん中に突っ立ってる。

「啓ちゃん!」

 何してんだ、て、追い付いた俺は、急かすように啓ちゃんの背中を叩いた。

「あれ…」

 呆然と啓ちゃんが指さしたのは、横断歩道の向こう側。路地の入り口んとこで、何人かの男がたむろってる。

「何? 知り合い?」
「テツ…」
「え?」

 テツ? え? 哲也?

 啓ちゃんが指さすほうを、じっと目を凝らしてみれば、2,3人の男に取り囲まれるように立ってる小さな金髪は、確かに哲也に似ている。
 でも、何て言うか……友達と仲良くしてるって感じじゃなくて…………絡まれてる?
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14. そして見上げた空の色は、 (後編)


「あ、啓ちゃ…」

 信号が青に変わったかと思った瞬間、啓ちゃんはいきなり駆け出した。慌てて後を追えば、やっぱりさっき啓ちゃんが見つけた中にいたのは、哲也だった。
 マンガとかドラマで聞くセリフそのままに、強引なナンパという感じで絡まれてて。

「…………何してんすか」

 地を這うような、啓ちゃんの低い声。
 知ってる俺でも、十分怖い。

 そこにいたのは、哲也の他に3人の男。いかにも、って感じのチャラついた男たち。そのうちの1人が哲也の右手をギュッと掴んでいた。
 哲也は俺らの存在に気付くと、ハッとして俯いた。

「何だよ。俺らは彼に用事があんの。ねぇ~?」

 わざとらしい問い掛けに、俯いたままの哲也がコクリと頷いた。

「テツ!」
「うるせぇなぁ、こっちにはこっちの用事があるつってんだろ? 関係ねぇのは引っ込んでろよ」

 ドンッと、1人の男が啓ちゃんの肩を押した。
 あ……ヤバイ。

「やかましわっ、ごるぁ!」

 …………キレた。
 男らも3人いるっていう虚勢が殆どだったのか、いきなりブチ切れた啓ちゃんに、思わず怯んでる。
 俺は哲也の手首を掴んでる男の手を剥がす。こう見えて力は結構あるほうだから、ちょっとくらい暴れられたって、どうってことない。

 その後、ちょっとゴチャゴチャ揉めたけど、結局はキレた啓ちゃんに敵う人間なんていなくて、男たちは退散してった。

「テツ、大丈夫か?」

 真っ青な顔して突っ立てる哲也に声を掛けると、ビクッと肩を震わせた。

「ゴメ…」

 一先ずのところ、どうして連絡をしなかったのかを責めることはしないで、雨に濡れた3人、俺の家に向かった。
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15. たったそれだけの重さ (押しつぶされてしまう) (前編)


 俺のアパートに着いたとき、哲也は若干躊躇ったけれど、諦めたように俺の後を付いてきた。

「とにかく着替えよ。みんな風邪引いちゃう」

 何だかんだで、雨の中ずっと外にいたから、3人ともずぶ濡れ状態。俺は啓ちゃんと哲也にタオルを放った。

「なぁ貴久、お前んちのことだから別に何も言いたくないけど、お前、靴下脱いでからウロウロしたほうがいいんじゃね?」

 啓ちゃんに言われてふと足元を見れば、玄関とタンスとを行き来した俺の靴下の跡が、転々と…。

「あ、」

 もう、先に言ってよ。
 今更遅い気もしたけど、これ以上被害を拡大させないためにも、俺は靴下を脱いで足を拭いた。あーあ、結局靴までビショビショだ。

「哲也、早く拭いて上がって。今、着替え出すし」

 けれど哲也は下を向いたまま、フルフルと首を横に振った。

「そのままだったら風邪引くだろ? いいから上がれって」

 タオルを頭に掛けたまま、哲也はただ首を振っていて。啓ちゃんが、自分の使ってたタオルで、哲也の体とか拭いてあげてる。

「テツ、今は貴久の言うこと聞いとけって。風邪引いたら困るだろ?」
「も……俺のこと、ほっといて…」

 かすかに震えた声。
 啓ちゃんの手が止まった。

「お前、そんなこと言うなよ、心配したんだぞ?」
「心配って、何が? もう俺のことなんか構わないでよ…」
「おいっ!」

 啓ちゃんが大きな声を出したけれど、哲也はそれに怯まず、勢いよく啓ちゃんの手を振り払った。

「うるさいよ、もう! 迷惑なんだよ! ほっといてよ!」
「テツ!」

 哲也は泣きながら、キツク啓ちゃんを睨んだ。啓ちゃんは啓ちゃんで、哲也の態度に頭に来たのか、声を張り上げるし。

「ちょっ……もぉ、ケンカしないでよ!」

 せっかく会えたのに。
 何でこんなことでケンカなんてしないといけないわけ?

「今はケンカとかしてる場合じゃないじゃん。早く着替えよ? みんなで風邪引いたら、シャレになんな…」
「……いい、俺もう帰るし」
「テツ!」
「哲也!」

 俺らに背を向ける哲也に、俺は慌てて裸足のまま玄関ポーチに下りて、ドアノブを掴んだ。

「貴久、そこどいて」
「嫌だ」

 じっと視線を絡み合わせて。
 堪え切れず、先に目を逸らしたのは哲也だった。
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15. たったそれだけの重さ (押しつぶされてしまう) (中編)


「分かったから。帰りたかったら帰っていいから。でもそんなカッコのまま帰せるわけないだろ? 着替えくらいしてけって。傘も貸すし」
「………………」
「啓ちゃんも、そんな怒んないで。上がって?」

 とにかくこのままだとみんなして風邪引くってオチが待ってるのは確実だから、まだ苛立ってる2人を部屋に上げる。
 着替えとか……うん、2人とも俺と体格違うけど、まぁいいか。適当にTシャツとパンツを出して放る。

「下着も貸そっか?」
「いらん。テツは?」

 啓ちゃんに問われても、哲也は濡れたシャツを羽織ったまま、動こうとしない。

「哲也、嫌なら別の貸すけど、んー……お前の趣味に合うような服、あったかな?」
「……着替えは…………いいよ。いらないから」
「着替えたほうがいいて。お前、ずぶ濡れじゃん」

 そう言っても哲也は、一向に首を縦に振ろうとしない。

「俺、これでいいから…」
「この服嫌かぁ? そんなら…」
「貴久! ホントにいいから! ゴメン、ありがと。俺、このままで…」
「何言ってんだよ、そんな濡れてんのに。その服がいいなら乾かしてやるから、とりあえず脱げって。なぁ、啓ちゃんも何か言ってよ」

 啓ちゃんにそう言うと、なぜか啓ちゃんはますます眉間のシワを深くする。
 俺、何か悪いこと言った?

「テツ、貴久の言うとおりだ。早く脱げ」
「いいって……ちょっ…」

 頑なに拒む哲也をよそに、啓ちゃんが無理やり哲也のシャツを脱がそうとしてる。
 いや、そんなに嫌なの、無理しなくても…。

「啓、やめ…」

 啓ちゃんを止めようとしたとき、啓ちゃん手のほうが一瞬早く、哲也のシャツの前を肌蹴させてしまった。
 哲也は慌てて啓ちゃんの手を払って、両手でシャツの前を合わせたけど。

「え…?」

 今、確かに見えたもの。
 哲也の胸に無数に散らばっていた赤い痣。いや、それは……。
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15. たったそれだけの重さ (押しつぶされてしまう) (後編)


「テツ、お前、何してんだよ! それ、誰にやられた?」
「啓には関係ない」
「関係ないことあるか! また、誰かも知らないヤツなんだろ!? そういうのはもうしないって約束したのにお前、俺らが必死んなって捜してたとき、どこの誰とも知らん男と乳繰り合ってたのか!?」
「捜してくれなんて頼んでないし! 俺が何しようと啓になんか関係ないじゃん! もうほっといてよ! そのおせっかいが迷惑なんだよ!」
「…ッ、………………分かった、もぉいいわ。勝手にしろよ!」

 グッと奥歯を噛んで、きっとまだ何か言いたいことがあったはず、けれど啓ちゃんは俺らに背を向けると、玄関のほうに向かってしまう。

「啓ちゃん!」

 一応後を追うけど、啓ちゃんは俺の手を振り払って、部屋を出て行ってしまった。
 このまま啓ちゃんを追い掛けて行こうか、けれど哲也を1人ここに残してはいけないし、それに啓ちゃんとなら仕事でまた会えるはずだから(もしここで啓ちゃんを連れ戻しても、また哲也とケンカになってしまうだろうし)、ひとまず俺は哲也のほうに戻った。

「……ゴメンな、貴久。色々良くしてくれたのに」
「俺は別にいいけど……啓ちゃんにあんなこと言って良かったの? すっげぇ心配してたのに」
「…………もぉいい。俺は啓やお前に心配してもらえるような人間じゃない…」
「何それ。心配するだろ? 友達なんだから」
「友達……ねぇ…。そうだな、友達だな」

 哲也は納得したように言いながらも、深い溜め息をついた。

「貴久……これでも俺のこと、友達って言う?」

 俺のほうを向いた哲也は、ギュッと掴んでいたシャツの前を離した。
 ハラリと肌蹴たシャツの前から覗く哲也の胸には、やはり見間違いではない…………キスマーク。
 啓ちゃんの言葉が間違っていなければ、それは、誰かも知らぬ男の付けたもので。

「俺な、こういうヤツなわけ。知らない男に平気で抱かれて、お金とか貰ってんの。それでも友達って言う?」
「……………………」
「だからもう…………ほっといて」
「ほっとけないって!」
「…………貴久、」
「え、」

 グイッ。

「ちょっ…」

 シャツの襟を掴まれて、引っ張られる。
 バランスは崩さんかったけど、真正面に哲也の顔。
 グッと近づいてきて。

「哲……んっ…!?」

 唇が、
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16. チェリー。僕が赤い三輪車で迎えに行くよ。 (前編)


 気が付けば、哲也の唇が重なっていて。


 あまりにも唐突なその行動に、嫌悪よりも驚きのほうが大きくて、俺は哲也を突き放すどころか、動くことも出来なくて。



「…………これでも、友達って言うの? 貴久」



 まだ唇に吐息が掛かるほどの距離で、哲也に尋ねられて。
 我に返って哲也から離れようとしたけど、シャツを掴まれてて動けない。いや、きっと、絶対俺のほうが力あるから、逃げられるはずなのに。
 逃げる?
 いや、そうじゃなくて。

「…………貴久、抵抗しないの? 続き、する?」
「…ッ、」

 続き? 何それ?
 焦る頭で考えようとしたら、答えに辿り着く前に、哲也がシャツの上から俺の胸を撫でた。

「ちょっ……やめっ…!」
「うわっ!?」

 反射的に哲也の手を払おうとして身を捩ったら、弾みで哲也を突き飛ばしてしまった。

「哲也、ゴメ……だいじょう…」

 大丈夫かって、哲也のこと起こそうと手を伸ばしたら、パシッてその手を払われてしまった。

「ちがっ…哲也、今のは…」

 別に気持ち悪いからとか、そんなんじゃなくて。
 でも哲也は、諦めたような顔で、溜息を1つついて。

「…………もぉ、俺に構わないで」

 起き上がった哲也は、ノロノロと玄関に向かっていく。
 追い掛けようと、引き止めようとしたけれど、役立たずな足が動かない。
 ドアの閉まる音。

「……………………」

 ホントに追い掛けなくていいのか?
 でも哲也はもう構うな言ってんだぞ? またこれで追い掛けてったら、ホントに迷惑かもしれないし。
 それに俺も啓ちゃんもこんなに心配して言ってんのに、全然分かってくれないし。
 もういいじゃん。
 好きにさせたらいいんだよ。
 俺には関係ない。

「…………関係ない」
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16. チェリー。僕が赤い三輪車で迎えに行くよ。 (後編)


 関係ないよ、あんなヤツ。
 だって、たまたま俺んちの前で寝てたってだけ。それがたまたま啓ちゃんの知り合いだったってだけだし。
 所詮は他人じゃんか。
 ほっといたらいいんだよ。
 ほっといたら……。

「………………あー!! もうっ!!」

 そんなの出来たら、最初っから家に上げたりしないし!!

 ガシガシ頭を掻いて、俺は急いで玄関に向かった。

 さっき哲也が出てってから、どのくらい経った?
 アイツ、足速いのかな? 今から追い掛けてって、間に合う? 追い付ける?

 とにかく急ぐしかなくて、玄関に投げ出してあったサンダルを適当に引っ掛けて、勢いよくドアを開けた―――――ら。

 ――――ガコンッ!!

「あ、鍵!! って、え!?」

 ドア開けたのと、鍵持って来てないって気が付いたのと、勢いよく開けたドアに何かぶつかる感じがしたのはほぼ同時で。
 慌てすぎて何をどうしていいか分からなくなって。
 でも目の前には、地面に突っ伏した状態の、小さな背中。

「…………へ……哲也…??」

 そこにいるのは、さっき俺んちを出て行ったはずの哲也。その体勢からして、俺が開けたドアにぶつかって弾き飛ばされたに違いない。

「お前、何してんの?」
「バッ……そんなに勢いよくドア開けるヤツいるか!!」

 立ち上がって振り返った哲也に、ものすごい勢いで突っ込まれる。

「しょうがないじゃん、お前がこんなとこ寄り掛かってるなんて思わなかったんだもん!」
「…ッ、」
「何でこんなトコいんだよ」
「…………べ…つに、いいじゃん、どこにいたって。貴久こそ、何でそんなに慌てて出てきてんの?」
「え? いや、だって、早くお前のこと、追い掛けないとって思って」
「……………………」

 そんなに変なこと言ったつもりないのに、哲也がポカンとして、呆れた顔をする。

「おま……アハハ」
「何だよ」
「貴久、お前、どこまでお人好しなの…」

 そう言って、哲也はグズッと鼻を啜った。目が潤んでる。

「お前こそ、どんだけ泣けば気が済むんだよ」
「泣いてない」
「泣いてんじゃん」
「泣いてないもん」

 手の甲でぐしぐし涙を拭って、明らかに泣き顔なのに、それでも泣いてないって言い張る哲也がおかしくて、こんな状況なのに、思わず吹き出してしまう。

「何笑ってんだよ!」

 そしたら、やっぱりすかさず突っ込まれて。

「もういいから、入れ」

 グズッともう1回鼻を啜って、哲也はコクリ、頷いた。

「…………俺、アホだな」

 俺の脱ぎ散らかしたサンダルまで丁寧に揃えてくれながら、哲也がポツリと呟いた。

「ん? 何が?」
「…………ううん、何でも。ゴメンな、貴久」
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17. 続きからもう一度やり直し (前編)


 とりあえず、哲也をもう1度部屋に上げてはみたけれど。
 哲也は申し訳なさそうに、ソファのとこでちっちゃくなってるけど。

 俺、物の何分か前に、哲也にキスされたんですが…!!

 いやいやいやいや、あれは、冗談だな。
 冗談って言うか、俺をビビらすための…………うん。

「貴久、」

 本気じゃない。本気のキスじゃない。当たり前じゃないですか、そんなん。だってボクら、友達ですし………………なぁ?

「たーかひーさ、なぁ!」

 でも哲也はゲイなわけで、いや、別にそれはいいんだけど、そういうつもりでキスしたわけじゃないよな?
 いやいや、俺だって別にキスくらい大したことないけど、でも、

「貴久ってば!!」
「うわぁ!?」

 いきなり目の前に哲也が現れて、俺は自分でもはぁ? って思うくらい素っ頓狂な声を上げて、その場から飛び退いた。

「何だよ、ずっと呼んでたのに。そんなビビんな」
「あ、いや…」
「ケータイ鳴ってる」

 哲也に指差されてソファを見れば、放り投げたままの携帯電話が音を立てていて―――――切れた。

「あ、切れた」
「貴久がボーっとしてるからだよ」
「啓ちゃんからだ」

 不在着信を見れば、ついさっき、怒って飛び出してった啓ちゃんの名前。
 何だかんだ言ったって、気になってんだよね。俺だけじゃなくて、啓ちゃんだって、相当のお人好しだよ。

 哲也をチラッと見て、掛け直すよ? って合図してから、その着信履歴に折り返し電話してみると、1コールもしないうちに電話が繋がった。

「もしもし、啓ちゃん? ゴメン、今電話出れなくて」
『いや、いいけど…………あの……テツは? どうなった?』
「いるよ、ここに」
『そっか……ゴメン、俺…』
「そんなの、俺に謝ってどうすんの? 直接言いなよ」
『…………そうだな、うん、あの……』
「仲直り、してな?」
『分かってる』

 グズッと鼻を啜った音。
 雨に濡れて体が冷えたせい? それとも。

「替わろっか? 電話」
『…………いや……後で直接掛ける』
「そっか。風邪引かないでよ?」
『ありがと。じゃあな』
「……うん」
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カテゴリー:アスファルトで溺死。
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

この夜を抱きしめて (1)


「……何でだよ…」

 ただでさえ暑い、7月末の夜。
 拓海の家にやって来た悠也は、どういうわけか、今はベッドの中。というか、拓海の腕の中だ。

「ケーキだって買ってきたのに…」
「それは後で食べるから、マジで」

 誕生日だからと、わざわざ人気のスイーツ店で、ちょっと高めのホールケーキを買ってきたのに。
 なのに、それは冷蔵庫の中に収められ、悠也はベッドで拓海に抱き締められていて。

「バカぁ…」
「ゴメン、ゴメンてば、悠ちゃん」

 拓海はとにかく平謝りだ。
 7月28日、拓海の誕生日。祝うつもりでやって来た悠也は、おめでとうの言葉を言うよりも先に、ベッドに連れて行かれ、そして……である。

「ドーブツ」
「だって……悠ちゃんに会ったの、久々だったし…」

 悠也の背中に回した腕に少しだけ力を込めると、悠也は嫌そうに身を捩った。

「悠ちゃ…」
「暑いの、触んないで。汗でベタベタだし」
「…………」
「…んだよ」
「じゃあベタベタついでに…」
「え?」

 腕の中から逃げ出そうとした悠也を捕まえ、拓海はその細い体を組み敷いた。

「ちょっ、何、拓海、待っ…」
「もう1ラウンド」
「はぁっ!?」
「誕生日プレゼントってことで」

 いわゆる"誕生日プレゼントは私"的なベタなことを言いながら、拓海は悠也の首筋に舌を這わせていく。

「悠ちゃん、好きだよ…」
「……もぉ…、それさえ言えばいいと思ってるでしょ?」

 けれど耳たぶを食まれ、段々とその気になって来たのか、悠也は拓海の首に腕を回して来た。

 唇を重ねると、悠也は少し口を開いたが、拓海はあえて舌を入れてやらない。それに焦れたのか、悠也は誘うように拓海の唇を舐める。

「ぅん…、拓海…」

 舌先で悠也の舌を突付くと、悠也は逃げていくそれを追い駆けて、拓海の口内に舌を差し込む。
 狭いその中で、悠也は夢中で舌を絡ませた。
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カテゴリー:拓海×悠也
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

この夜を抱きしめて (2) R18


*R18です。18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

 さっきまであんなにグダグダ言ってたのに…。
 1度火を点けてしまえば、快感に弱い悠也の体はすぐに落ちてしまうことを、拓海はよく知っている。

 悠也の体を横向きにずらして、唇を合わせたまま、ツーッと指先で背筋をなぞった。

「はぅ……ッ、」

 先ほど拓海自身を1度受け入れた蕾に指をあてがうと、まだ熱いそこは指先を容易く受け入れた。
 中には欲望の残滓。一気に2本差し込んで、それを掻き出すように抜き差しする。

「ぅ、ん……やぁ…、ァ……」
「すっげ、グチュグチュ言ってる……俺がさっき出したヤツ、中から溢れてる…」
「やだぁ……拓海、恥ずかし……」
「でも、中でいっぱい出されるの、好きでしょ? すごく感じるんでしょ?」

 言葉で、追い詰める。
 それだけで、悠也は理性が吹っ飛んでしまうほど感じていて。
 もしかしたら、言葉のやり取りだけでイッてしまうんじゃないかとも思う。今度、試してみようかなぁ…。

「拓海……意地悪しないで、も…入れてよぉ……」

 淫らに腰を動かしながら、悠也は目を潤ませてねだってくる。

「もぉ、悠ちゃんはホント、堪え性がないんだから…」

 ちょっとだけ、呆れたように言う。でも別に、そんなの全然嫌じゃない。というか、むしろOKって感じだけど。

「あ、そうだ」

 悠也の中から指を抜いた拓海は、悠也の足を抱えようとしたところで、ふと何か思い付いたように手を止めた。
 すぐにでも挿入されると思っていた悠也は、不思議そうに彼の顔を見た。

「な、に…?」

 キョトンとする悠也に、拓海はニッコリと微笑みかけてキスすると、悠也の上から体を退けた。

「ね、今日は悠ちゃんが上になって?」
「……え? …………え、えぇー!? や、やだっ!!」

 拓海の言わんとすることを理解した瞬間、悠也は激しく拒絶した。
 悠也のほうが上になるということは、つまり、そういうことなわけで。
 別に今まで騎乗位でやったことがないわけではないけれど、でもやっぱり、恥ずかしい。
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カテゴリー:拓海×悠也
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

この夜を抱きしめて (3) R18


*R18です。18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「いいじゃん、ね?」
「ヤダ! ヤダヤダヤダ!!」

 騎乗位をねだる拓海に、悠也はブンブンと首を振って、それを拒否する。

「何でー? 俺、今日、誕生日だよ? 誕生日プレゼント、誕生日プレゼント」
「プレゼントなら……ケーキ買ってきたじゃん!」

 飽く迄も勘弁してもらいたい悠也は必死に言い訳を考えるが、拓海のほうが優位にいるのは違いなかった。

「…………。…それもそうだね」
「でしょ?」

 拓海が説得されたのだと思った悠也はホッとしたが、この拓海という男、そう甘くはなかった。

「じゃあ、ケーキ食べよっか、これから」
「……え?」
「ケーキ、食べよう?」

 ふんわりと笑うその顔はまるで王子のようなそれだが、今の悠也にしてみたら悪魔の微笑にしか見えない。
 今、これからケーキを食べるってことは…………この快感を持て余した体は、一体どうすればいいのだ。

「拓海…」
「ん? どうしたの?」

 悠也に選択肢は2つしかないらしい。
 上になって行為を続けるか、今までの前戯をなかったことにして、ケーキを食べに行くか。

 そんなの答えは決まっている。

 悠也は体を起こし掛けた拓海に抱き付き、その体をシーツに押し倒した。

「おぉ、大胆」
「…」

 わざと大げさに驚いて見せるが、悠也にはそれを咎めるだけの余裕がないのか、突っ込むこともせず、拓海の腹を跨いだ。
 悠也はチラリと拓海を見てから、自分の蕾に拓海自身をあてがう。

「ふぅ……ぁ…」
「いいよ、ゆっくりで…………そのまま腰、落として…」
「あ、あぁ……ひっ…」
「ダメだよ……力抜かなきゃ、入んない」

 拓海の腹部に手を付いて、悠也はおずおずと腰を進めてくるが、慣れない体勢に、どうしても体に力が入ってしまうのか、思うように中に入らない。

「やっ…拓海…」
「大丈夫、このまま腰落として…」
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カテゴリー:拓海×悠也
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この夜を抱きしめて (4) R18


*R18です。18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「入っ……た?」
「まだ半分だよ」
「ウソ……や、もぉ…無理ぃ…」

 じれったい感覚と羞恥心で、悠也はとうとう啜り泣き出してしまった。

「大丈夫だよ、力抜いてごらん…」

 支えるように悠也の腰に回していた手をずらして、臀部の膨らみを撫で上げた。

「ひゃあっ!」

 突然の愛撫に驚き悠也が体の力を抜いた瞬間を突いて、拓海は一気に悠也の中に差し込んだ。

「あ、あ……あぁ、」
「ホラ、全部入ったよ」

 悠也は俯いたまま、ビクビクと体を震わせている。いつもより深い位置に拓海を感じているせいだ。

「ん、ッ……深い…」
「奥まで入ってるの、分かる?」
「はぁっ……すご…奥に……」
「ね、動いて?」
「……ん、」

 コクリと、小さく頭が動く。拓海の胸に手を突いた悠也は、ゆっくりと腰を上下させる。恥ずかしいのか、キュッと目を閉じて。

「……ッ…ぅん、……」

 薄く開いた唇からは、艶めいた吐息が零れ落ちる。ゾクッとするほどの色香を放つそのビジュアルに、拓海は乾いた自分の唇を舐めた。

「かわいい……悠ちゃん…」

 上気した悠也の頬をそっと撫でた後、拓海は自分の腹の上で閉じられている悠也の膝をグッと開こうとした。

「え…や、やだぁっ…」
「何で? 見せてよ、繋がってるトコ」

 イヤイヤするように首を振って、悠也は足を閉じようとしたけれど、この状態で、力では拓海に敵わない。

「あ、あぁんっ」

 下から突き上げられて、その急な刺激に前へ倒れ込んでしまった悠也は、何とか腕に力を入れて体を起こしたが、そのときにはもう拓海によって膝を開かれて、すべてを晒すような格好になっていた。

「いや…拓海、はぅ…」

 足を開かされたまま激しく揺さ振られて、悠也は細い吐息を洩らしながら、自らも腰を動かす。
 拓海は悠也の熱くなった中心に手を掛け、軽く握り込んだ。
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