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十一月 蹲る身体を貫き去る風 (1)
2009.01.14 Wed
「今日ね、カズちゃんとゆっち、デートなの」
「そうね。デートて言うかどうかは知らないけど」
昨日の夜、和衣の洋服選びに散々付き合わされて、疲れた睦月はまだ眠そうで、朝食の後も、まだウダウダとベッドに転がっていた。
普段から祐介とは一緒にいるし、今さら服装も何もないとは思ったのだが、「ダメ! 初めてのお出掛けなんだから!」と、乙女全開の和衣に押し切られ、同室者がバイトから帰ってくるまでとの約束で、睦月は服選びを手伝ったのだ。
「デートでしょ? カズちゃん、あんなに気合い入れて服選んだんだし」
「服ったって、毎日会ってんのに、今さらじゃね?」
「でもやっぱ、勝負服、着なきゃ」
「…勝負服とか、そんなの持ってんの? アイツ。つーか、たかが映画でそんなに決め決めにされても、祐介、引かないか?」
そうは言っても、2人はまだ、清い関係のお友だちだ。
和衣はデート気分でも、祐介にしたら、普段一緒につるんでいる友だちと映画を見に行くだけのこと。
なのにそんなにいつもと違う雰囲気で来られたら、何か妙に思うのではないだろうか。
「俺もそう言ったけど、何かそれもカズちゃんなりの作戦らしいよ。何かいつもと違うね、てことに、気付いてもらいたいんだって」
「…………。……へぇ…」
作戦も何も、気付いてもらえたら単に和衣が嬉しいだけのことのような気もするが、恋する乙女と化した和衣にとっては、大作戦なのかもしれない。
意外と健気で一途な親友に、亮は呆れつつも、少し感心していた。
「あー、でもさぁ、カズちゃんとゆっちはデートでしょ? ショウちゃんも新しい彼女とデートでしょ? 何かウチらだけ部屋に閉じ籠ってて、寂しいね」
「え、じゃあ俺らもデートする?」
「何で俺と亮がデートなの? 亮がデートするのは、好きな子とでしょ?」
だから、その"好きな子"はお前のことだって!
全然気付いてないかもしれませんけど!!
「どうしたの? その子とうまく行ってないの?」
人の気持ちを知る由もない睦月は、心配そうな顔をしてそんなことを言ってくるから、返事に困る。
答えられずに亮が机に突っ伏せば、本当に心配になったのか、睦月はベッドを降りてそばにやって来た。
「亮?」
「睦月さぁ…ホントに好きな子とか、いないんだ?」
「? うん、いないよ」
何の躊躇いもないその返事は、本当に本心なのだろう。
他に好きな人がいないのなら、睦月の彼氏というポジションを狙うチャンスはまだあるということだけれど、しかしこれだけ気付いていない子を相手に、どうしたら良いものかと、亮は本気で頭を抱えたくなる。
しかも睦月の場合、自分がそれほどまでに鈍感だということに、まったく気付いていないから、なお悪い。
「亮、大丈夫?」
「大丈夫……じゃないかも」
「え、え、どして? 嘘、どうしたの? 好きな子とうまく行かなくて、ツライの?」
「睦月に言っても…」
「何で? 話、聞くよ?」
「いいって」
「何で? 俺じゃダメ?」
顔を上げれば、本当に心配そうな睦月の表情。
まさかその原因が、自分自身にあるとは、夢にも思っていないだろうけど。
ねぇ、本当に話してもいいっていうの?
まさか。
もうその瞳から逃げ出したくて、亮は椅子から立ち上がった。
部屋から出たい。
睦月の前から消えたい。
「ねぇ、亮」
「――――好き、なんだ」
「え? 何が?」
ほら、やっぱり分かってない。
「亮」
引き止めようと、シャツの裾を掴む、睦月の手。
亮は振り返った。
「睦月のことが」
「え?」
「睦月のことが好きなの」
「え? え? 何言って…」
睦月の顔に、見る見る広がる戸惑いの色。
分かっていたことだけれど、胸が痛い。
「…………――――なんてな。嘘だよ、冗談」
「え…」
だから、笑ってそうごまかすしかないじゃないか。
――――ちゃんと笑えてる?
「…ワリ、ちょっと出掛けてくる」
まだ何か言いたそうな睦月の手を離して、今度こそ亮は部屋を出て行った。
1人取り残された部屋。
睦月はただ呆然と、解かれた手を見つめていた。
「そうね。デートて言うかどうかは知らないけど」
昨日の夜、和衣の洋服選びに散々付き合わされて、疲れた睦月はまだ眠そうで、朝食の後も、まだウダウダとベッドに転がっていた。
普段から祐介とは一緒にいるし、今さら服装も何もないとは思ったのだが、「ダメ! 初めてのお出掛けなんだから!」と、乙女全開の和衣に押し切られ、同室者がバイトから帰ってくるまでとの約束で、睦月は服選びを手伝ったのだ。
「デートでしょ? カズちゃん、あんなに気合い入れて服選んだんだし」
「服ったって、毎日会ってんのに、今さらじゃね?」
「でもやっぱ、勝負服、着なきゃ」
「…勝負服とか、そんなの持ってんの? アイツ。つーか、たかが映画でそんなに決め決めにされても、祐介、引かないか?」
そうは言っても、2人はまだ、清い関係のお友だちだ。
和衣はデート気分でも、祐介にしたら、普段一緒につるんでいる友だちと映画を見に行くだけのこと。
なのにそんなにいつもと違う雰囲気で来られたら、何か妙に思うのではないだろうか。
「俺もそう言ったけど、何かそれもカズちゃんなりの作戦らしいよ。何かいつもと違うね、てことに、気付いてもらいたいんだって」
「…………。……へぇ…」
作戦も何も、気付いてもらえたら単に和衣が嬉しいだけのことのような気もするが、恋する乙女と化した和衣にとっては、大作戦なのかもしれない。
意外と健気で一途な親友に、亮は呆れつつも、少し感心していた。
「あー、でもさぁ、カズちゃんとゆっちはデートでしょ? ショウちゃんも新しい彼女とデートでしょ? 何かウチらだけ部屋に閉じ籠ってて、寂しいね」
「え、じゃあ俺らもデートする?」
「何で俺と亮がデートなの? 亮がデートするのは、好きな子とでしょ?」
だから、その"好きな子"はお前のことだって!
全然気付いてないかもしれませんけど!!
「どうしたの? その子とうまく行ってないの?」
人の気持ちを知る由もない睦月は、心配そうな顔をしてそんなことを言ってくるから、返事に困る。
答えられずに亮が机に突っ伏せば、本当に心配になったのか、睦月はベッドを降りてそばにやって来た。
「亮?」
「睦月さぁ…ホントに好きな子とか、いないんだ?」
「? うん、いないよ」
何の躊躇いもないその返事は、本当に本心なのだろう。
他に好きな人がいないのなら、睦月の彼氏というポジションを狙うチャンスはまだあるということだけれど、しかしこれだけ気付いていない子を相手に、どうしたら良いものかと、亮は本気で頭を抱えたくなる。
しかも睦月の場合、自分がそれほどまでに鈍感だということに、まったく気付いていないから、なお悪い。
「亮、大丈夫?」
「大丈夫……じゃないかも」
「え、え、どして? 嘘、どうしたの? 好きな子とうまく行かなくて、ツライの?」
「睦月に言っても…」
「何で? 話、聞くよ?」
「いいって」
「何で? 俺じゃダメ?」
顔を上げれば、本当に心配そうな睦月の表情。
まさかその原因が、自分自身にあるとは、夢にも思っていないだろうけど。
ねぇ、本当に話してもいいっていうの?
まさか。
もうその瞳から逃げ出したくて、亮は椅子から立ち上がった。
部屋から出たい。
睦月の前から消えたい。
「ねぇ、亮」
「――――好き、なんだ」
「え? 何が?」
ほら、やっぱり分かってない。
「亮」
引き止めようと、シャツの裾を掴む、睦月の手。
亮は振り返った。
「睦月のことが」
「え?」
「睦月のことが好きなの」
「え? え? 何言って…」
睦月の顔に、見る見る広がる戸惑いの色。
分かっていたことだけれど、胸が痛い。
「…………――――なんてな。嘘だよ、冗談」
「え…」
だから、笑ってそうごまかすしかないじゃないか。
――――ちゃんと笑えてる?
「…ワリ、ちょっと出掛けてくる」
まだ何か言いたそうな睦月の手を離して、今度こそ亮は部屋を出て行った。
1人取り残された部屋。
睦月はただ呆然と、解かれた手を見つめていた。
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒ リョ、亮ちゃん!!
言った!言っちゃったよ!!
流石に鈍感むっちゃんも思うところありでしょか?
オロオロ\(゜ロ\)(/ロ゜)/オロオロ
亮ちゃんの笑顔が泣き笑いの顔になっていそうで切ない・・・。
あぁ~何でしょう、この心臓をギュッと掴まれたような悶え感!!
カズちゃんとゆっちのデートも気になるけど・・・こっちのが緊急大問題だ(汗
同室だし・・・冬休みまでまだひと月以上あるし・・・・・あぁん、どうなるのー?
流石に鈍感むっちゃんも思うところありでしょか?
オロオロ\(゜ロ\)(/ロ゜)/オロオロ
亮ちゃんの笑顔が泣き笑いの顔になっていそうで切ない・・・。
あぁ~何でしょう、この心臓をギュッと掴まれたような悶え感!!
カズちゃんとゆっちのデートも気になるけど・・・こっちのが緊急大問題だ(汗
同室だし・・・冬休みまでまだひと月以上あるし・・・・・あぁん、どうなるのー?
りり ⇒ きゃ~~~~亮たんが!!
うわ~~~~~告っちゃったよ?!
むっちゃんさすがに冗談じゃないって気付くかな?
てか気付いてーー(>_<)
ど、どうしよう…オロオロ
おんなじ部屋だし。
気まずくなったら困るし。
でも。ああもう!悶える!!
むっちゃんさすがに冗談じゃないって気付くかな?
てか気付いてーー(>_<)
ど、どうしよう…オロオロ
おんなじ部屋だし。
気まずくなったら困るし。
でも。ああもう!悶える!!
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
言っちゃった!! ……けど、言い逃げです!!
しかもむっちゃん、自分の名前を出されるまで、ホントに気付いてなかったですし…。
> 亮ちゃんの笑顔が泣き笑いの顔になっていそうで切ない・・・。
あぁ~、そこまで読み取っていただけたら、書き手として悔いはないって感じですっ…!!
そんなつもりで書いたんですが、伝わってるかしら? と実は不安でした。
まだまだ波乱は続きますが、どうぞお付き合いください。
コメントありがとうございました!
しかもむっちゃん、自分の名前を出されるまで、ホントに気付いてなかったですし…。
> 亮ちゃんの笑顔が泣き笑いの顔になっていそうで切ない・・・。
あぁ~、そこまで読み取っていただけたら、書き手として悔いはないって感じですっ…!!
そんなつもりで書いたんですが、伝わってるかしら? と実は不安でした。
まだまだ波乱は続きますが、どうぞお付き合いください。
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >りりさん
自分の名前を出されるまで、本気で気付いてないむっちゃん。
どこまで気付いているやら…。
そして言い逃げの亮タン。
まさにオロオロ \(゜ロ\)(/ロ゜)/
こういうとき、同じ部屋て言うのがつらいトコですよね。
しばらく波乱編が続きますが、よろしくお願いします(爆)
コメントありがとうございました!
どこまで気付いているやら…。
そして言い逃げの亮タン。
まさにオロオロ \(゜ロ\)(/ロ゜)/
こういうとき、同じ部屋て言うのがつらいトコですよね。
しばらく波乱編が続きますが、よろしくお願いします(爆)
コメントありがとうございました!