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九月 じりじりと焦がれる初秋 (7)
2009.01.06 Tue
授業に行く祐介を見送った後、睦月は部屋にみんなを集めた。
そして、バイトを辞めると言い出した睦月に、事情を知らない亮と翔真は驚きを隠せなかった。和衣も、複雑な表情をしている。
「――――……いや、辞めるっつーんならそれでもいいけど、具合悪いなら、ちょっと休ませてもらうだけでもいいんじゃね?」
亮のもっともな意見に、翔真も頷いている。
「そうなんだけど……うん、何か…」
みんなの視線を浴びて、睦月は居心地悪そうに俯いた。
「ちょっと聞いてほしい話、あって…。あの、その…、……結構シリアスな感じの話だからさ、ビックリしないで聞いてほしいんだけど…」
そう言って睦月は、バイトの帰りに強引なナンパに遭って、過呼吸を起こして倒れたことから口火を切り、そしてそうなるに至った、過去の出来事を話し始めた。
それはまだ、睦月が中学生のころだった。
当時バスケ部に所属していて、練習を終えて学校を出るのは6時を過ぎてからがざらだったが、夏はまだ明るいし、途中まで一緒に帰る友人もいたから、家族もそんなに心配はしていなかった。
秋になって間もなく、日が短くなったと感じるころだった。
その日は天気も悪くて、いつもより帰り道が暗いとは思ったけれど、さして気にも留めず、睦月は途中で友人と別れ、1人で家に向かっていた。
強い風に、傘を飛ばされそうだと思った、次の瞬間だった。
背後から腕を引かれ、驚いて振り返れば、知らない顔の男が睦月の腕を掴んでいた。
当時はずいぶん大人の男のような気がしたけれど、今思えば、20歳代半ばほどだったのかもしれない。
分からず睦月が男のことを見上げていると、「今日は天気が悪いね」とか何とか、たあいのないことを話し掛けてきた。睦月はそれに返事をしたけれど、気味が悪くて、早く手を離してほしかった。
しかし男は振り解こうとしてもその手を離してはくれず、逆に反対の腕も掴んできた。
さすがにこれが異常事態なのだということは分かっていたけれど、力の差で逃げ出すことが出来なかった。
男はもがく睦月を路地に連れ込み、押し倒した。睦月は、上に伸し掛かる男の顔の向こう、曇天に舞った自分の傘を見た。
驚いて声も出せずにいるうち、シャツの前が肌蹴られ、冷たい男の手が肌の上を滑っていった。
雨が、2人の上に降り注いでいた。
『むつ、き…?』
驚いたような、呆然としたようなその声は、幼馴染みの祐介のものだった。
祐介とは部活が違って、一緒には帰っていなかった。
その日は睦月よりも帰る時間が遅く、雨脚が強まる前にと急いで帰る途中、道路に転がっていた睦月の傘を不審に思って、路地を覗いたらしい。
そこには、知らない男に組み敷かれる、幼馴染みの姿。
一瞬、その場の3人の時間は止まった。
真っ先に動いたのは祐介で、夢中でその男を突き飛ばした。道路に転がった男は、祐介のほうへ向かっては来ず、そのまま路地の向こうへ逃げていった。
シャツもズボンも脱がされていた睦月は、もう起き上がることも出来なくて、祐介に何とか服を着せてもらって、家まで連れて帰ってもらった。
雨に濡れたせいもあったが、それから5日間、睦月は熱を出して寝込んだ。
その間に睦月の両親には祐介が話をし、警察への通報で、事件から3日で犯人の男は捕まった。
それからしばらくの間、睦月は、大人の男は父親ですら怖いと思っていたが、祐介が支えてくれたおかげで、高校にも入学できたし、普通に話も出来るようになった。
ただ、怖いのは風の強い夜だ。
昼間に睦月を女と勘違いしてナンパしてくるバカな男なら、どうとでもあしらえるのに、あの日と同じように天気の悪い、風の強い夜は、心の中がザワザワして落ち着かなくなる。
大丈夫だと言い聞かせるけれど、過呼吸になって倒れたことも、何度かあった。
そして今回の、ナンパ事件。
くしくも、あの日と同じシチュエーション。
あのときほどヒドイ思いはしなかったけれど、つらい記憶を蘇らせるには、十分だった。
「……だからさ、ゆっちが過保護になるの、分かるんだよね。バイト反対したのも、こんなことになるんじゃないか、て分かってんだろうね、きっと」
膝を抱えて小さくなる睦月は、視線を上げずにそう言った。
「でも、睦月はそれでもバイトしたかったんでしょ?」
「…ん。ゆっちにさ、もう俺大丈夫なんだよ、て見せたかったんだよね。もう平気だよ、てさ」
「なのにバイト、ホントに辞めんの?」
「続けたいけど……バイト中に倒れちゃったら、みんなに迷惑掛かるし…」
それに、またこんな目に遭うのではないかという不安。
続けたいという思いとの間で、睦月の心は揺れていた。
そして、バイトを辞めると言い出した睦月に、事情を知らない亮と翔真は驚きを隠せなかった。和衣も、複雑な表情をしている。
「――――……いや、辞めるっつーんならそれでもいいけど、具合悪いなら、ちょっと休ませてもらうだけでもいいんじゃね?」
亮のもっともな意見に、翔真も頷いている。
「そうなんだけど……うん、何か…」
みんなの視線を浴びて、睦月は居心地悪そうに俯いた。
「ちょっと聞いてほしい話、あって…。あの、その…、……結構シリアスな感じの話だからさ、ビックリしないで聞いてほしいんだけど…」
そう言って睦月は、バイトの帰りに強引なナンパに遭って、過呼吸を起こして倒れたことから口火を切り、そしてそうなるに至った、過去の出来事を話し始めた。
それはまだ、睦月が中学生のころだった。
当時バスケ部に所属していて、練習を終えて学校を出るのは6時を過ぎてからがざらだったが、夏はまだ明るいし、途中まで一緒に帰る友人もいたから、家族もそんなに心配はしていなかった。
秋になって間もなく、日が短くなったと感じるころだった。
その日は天気も悪くて、いつもより帰り道が暗いとは思ったけれど、さして気にも留めず、睦月は途中で友人と別れ、1人で家に向かっていた。
強い風に、傘を飛ばされそうだと思った、次の瞬間だった。
背後から腕を引かれ、驚いて振り返れば、知らない顔の男が睦月の腕を掴んでいた。
当時はずいぶん大人の男のような気がしたけれど、今思えば、20歳代半ばほどだったのかもしれない。
分からず睦月が男のことを見上げていると、「今日は天気が悪いね」とか何とか、たあいのないことを話し掛けてきた。睦月はそれに返事をしたけれど、気味が悪くて、早く手を離してほしかった。
しかし男は振り解こうとしてもその手を離してはくれず、逆に反対の腕も掴んできた。
さすがにこれが異常事態なのだということは分かっていたけれど、力の差で逃げ出すことが出来なかった。
男はもがく睦月を路地に連れ込み、押し倒した。睦月は、上に伸し掛かる男の顔の向こう、曇天に舞った自分の傘を見た。
驚いて声も出せずにいるうち、シャツの前が肌蹴られ、冷たい男の手が肌の上を滑っていった。
雨が、2人の上に降り注いでいた。
『むつ、き…?』
驚いたような、呆然としたようなその声は、幼馴染みの祐介のものだった。
祐介とは部活が違って、一緒には帰っていなかった。
その日は睦月よりも帰る時間が遅く、雨脚が強まる前にと急いで帰る途中、道路に転がっていた睦月の傘を不審に思って、路地を覗いたらしい。
そこには、知らない男に組み敷かれる、幼馴染みの姿。
一瞬、その場の3人の時間は止まった。
真っ先に動いたのは祐介で、夢中でその男を突き飛ばした。道路に転がった男は、祐介のほうへ向かっては来ず、そのまま路地の向こうへ逃げていった。
シャツもズボンも脱がされていた睦月は、もう起き上がることも出来なくて、祐介に何とか服を着せてもらって、家まで連れて帰ってもらった。
雨に濡れたせいもあったが、それから5日間、睦月は熱を出して寝込んだ。
その間に睦月の両親には祐介が話をし、警察への通報で、事件から3日で犯人の男は捕まった。
それからしばらくの間、睦月は、大人の男は父親ですら怖いと思っていたが、祐介が支えてくれたおかげで、高校にも入学できたし、普通に話も出来るようになった。
ただ、怖いのは風の強い夜だ。
昼間に睦月を女と勘違いしてナンパしてくるバカな男なら、どうとでもあしらえるのに、あの日と同じように天気の悪い、風の強い夜は、心の中がザワザワして落ち着かなくなる。
大丈夫だと言い聞かせるけれど、過呼吸になって倒れたことも、何度かあった。
そして今回の、ナンパ事件。
くしくも、あの日と同じシチュエーション。
あのときほどヒドイ思いはしなかったけれど、つらい記憶を蘇らせるには、十分だった。
「……だからさ、ゆっちが過保護になるの、分かるんだよね。バイト反対したのも、こんなことになるんじゃないか、て分かってんだろうね、きっと」
膝を抱えて小さくなる睦月は、視線を上げずにそう言った。
「でも、睦月はそれでもバイトしたかったんでしょ?」
「…ん。ゆっちにさ、もう俺大丈夫なんだよ、て見せたかったんだよね。もう平気だよ、てさ」
「なのにバイト、ホントに辞めんの?」
「続けたいけど……バイト中に倒れちゃったら、みんなに迷惑掛かるし…」
それに、またこんな目に遭うのではないかという不安。
続けたいという思いとの間で、睦月の心は揺れていた。
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒ ダーーーーッ(泣)
むっちゃん~~~!!
辛い思いしてきたのねぇ(T-T)
よく3人に話そうと決意したなぁ・・・むっちゃんの中ではかなりの決心だっただろうな。
それに、あのいつもホワン♪とした雰囲気のゆっちがねぇ~。
何だかメチャンコ男前ですな♪
格好いいなぁ・・・(惚)
どうするのかな?本当に辞めちゃうのかな?
ここで辞めちゃったらトラウマ克服、一生出来なくなる気がする~。
あぁ~ん、ドキドキします如月さぁ~ん!!
辛い思いしてきたのねぇ(T-T)
よく3人に話そうと決意したなぁ・・・むっちゃんの中ではかなりの決心だっただろうな。
それに、あのいつもホワン♪とした雰囲気のゆっちがねぇ~。
何だかメチャンコ男前ですな♪
格好いいなぁ・・・(惚)
どうするのかな?本当に辞めちゃうのかな?
ここで辞めちゃったらトラウマ克服、一生出来なくなる気がする~。
あぁ~ん、ドキドキします如月さぁ~ん!!
りり ⇒ むっちゃん!!
何とかしてバイト続けられないかな?
克服しようと一歩踏み出して追い打ちをかけられたんじゃ
嫌な思い出で終わっちゃう。
でもむっちゃんにはやっぱり守って上げる人が近くにいる
職場で働いて欲しい(複雑
可哀想に。
嫌な思いして。怖かったでしょうね。
どうにかしてあげてください…!!
克服しようと一歩踏み出して追い打ちをかけられたんじゃ
嫌な思い出で終わっちゃう。
でもむっちゃんにはやっぱり守って上げる人が近くにいる
職場で働いて欲しい(複雑
可哀想に。
嫌な思いして。怖かったでしょうね。
どうにかしてあげてください…!!
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
実はゆっち、やるときはやる男です!
中学生のくせに男前。でもたぶん無意識というか、それをかっこいいだとか、そういうことには気付いてない(そこは鈍い)。
むっちゃんの過去が出てきたところで、ようやく初秋。
先の長い話ですが…(汗)
むっちゃんへの応援、お願いします~。
コメントありがとうございました!
中学生のくせに男前。でもたぶん無意識というか、それをかっこいいだとか、そういうことには気付いてない(そこは鈍い)。
むっちゃんの過去が出てきたところで、ようやく初秋。
先の長い話ですが…(汗)
むっちゃんへの応援、お願いします~。
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >りりさん
りりさんのコメを読んでて、ホント、冷やしラーメン男が憎くなってきました(爆)
自分で書いといて…。
むっちゃんを自立させたいけど、誰かに守られるお姫のままでもいさせたい……私もそんな心境です。
> どうにかしてあげてください…!!
うひゃー、がんばります!!
むっちゃんへの応援、お願いします~。
コメントありがとうございました!
自分で書いといて…。
むっちゃんを自立させたいけど、誰かに守られるお姫のままでもいさせたい……私もそんな心境です。
> どうにかしてあげてください…!!
うひゃー、がんばります!!
むっちゃんへの応援、お願いします~。
コメントありがとうございました!