恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2013年01月

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「ってかどうでもよくね?」ていうバトン


 本日1月1日をもちまして、「恋三昧」は5周年を迎えました。
 毎年元旦にはこのような挨拶をし、すでに5年目。ちょっとした区切りという感じで、嬉しい気持ちです。
 これも、ご訪問してくださるみなさまをはじめ、拍手・コメント・ランキングクリックしてくださるみなさまのおかげです。
 本当にありがとうございます。
 昨年は自分の都合でちょこっとお休みしたり、インフルでダウンしたり、ちょっと散々な1年でしたが、今年はそんなことのないよう、元気にがんばっていきますので、よろしくお願いいたします。

 さて、今日の更新は、毎年恒例、別に誰も知りたくないだろうけど答えちゃう、私のことバトンです。今年のバトンはこれ!
「ってかどうでもよくね?」
 何かこのバトンの名前、「ってかどうでもよくね? バトン」だったらいいのに、て思う。

----------------------------------------------------------------------------------------
いらっしゃいませ~

長い上にどうでもいいことばっかきくので、マジでガチで暇な人におすすめするよ!
準備はいいかい?


1. あなたの名前は?
 如月久美子

2. 自分で自分に名前をつけるなら?
 如月久美子

3. カッコいいと思う苗字は?
 伊集院

4. 好きな戦国武将 or 三国武将は?
 劉備玄徳

5. おじさまはお好き?
 興味ない。

6. ダンディーとセクシーならどっち好き?
 セクシー。
 ダンディーてどういうのか、ちょっと分かんない。私の想像では、鼻の下にひげ(バカボンのパパみたいのじゃなくて)。

7. あなたの髪はショート? ロング?
 ロング。
 自分の中ではミディアムと思うんだけど、サイドの髪がわりと短めだから、正面から見るとそう思えるだけで、後ろは結構長いみたい。
 でももっと伸ばしたい。

8. 一度してみたい髪型は?
 スーパーロング。
 今がんばってる。

9. 勇気あるなぁと思う髪型は?
 モヒカン。

10. 伊達眼鏡は邪道?
 全然! メガネ萌え!! むしろ伊達メガネが萌え!!
 でも、レンズの入ってないヤツはちょっと…。

11. 韓流好き?
 興味ない。

12. スカートかパンツかと言われると?
 自分で穿くならパンツ。でも最近、ワンピースの楽さ加減に気が付いた。
 人が穿いてるなら、やっぱスカートのほうがかわいいな、て思う。

13. 異性に着てほしい服は?
 別にない。
 萌えるのとしては、七分袖か、長袖シャツの腕まくり。

14. 同性の服でこれはないでしょってやつは?
 これはないでしょ、まではいかないけど、サロペットの上に上着着てるの見ると、トイレ面倒くさそうて思う。

15. 異性の(略)
 いい大人の半ズボン。
 スポーツで、そういうユニフォームとか、練習用にハーフパンツとか穿いてるなら別にいいけど、30過ぎて、膝が出るほどの半ズボン穿いてられると、ちょっと、て思う…。前にテレビで見た人で、何か男のおしゃれリーダーみたいな感じで登場してたけど、あれはないわぁ。

16. ピアスあけてる?
 開けてない。

17. ロリータかわいいと思う?
 思う。

18. 自分でやってみたい?
 何を?

19. パンクカッコいいと思う?
 パンクて聴かないなぁ。
 イメージも何となくしか知らないから、カッコいいのか悪いのか分かんない。

20. 自分で(略)
 この質問文、『自分で』の後ろに何が略されてんの?

21. 日焼け止め何使ってる?
 近江兄弟社の、「ソラノベール ウォータリージェル 日やけ止め乳液(SPF50+)」

22. 頭のてっぺん日焼けで皮がむけた思い出ある?
 ない。

23. シャンプーは何使ってる?
 LUX

24. ボディーソープは?
 おみやげで貰った、有馬温泉の何とかていう固形石鹸を使ってる。
 それ貰うまではDove使ってた。

25. 夏はシャワー or お風呂?
 シャワー。
 ホントはお風呂がいいけど、暑がりなんで、上がった後、汗が止まんなくなる。

26. 洗顔は何使ってる?
 Culubellのホワイトシリーズ。
 今行ってるエステで売ってる商品。

27. ポカリ派? アクエリ派?
 清涼飲料水自体が嫌い。飲んだ後、気持ち悪くなるから。

28. 高校野球観戦で燃える?
 別に。

29. 超次元サッカーってわかる?
 分かんない。

30. ゲームとかやる方?
 携帯電話のゲームはよくやる。
 あとオンラインの脱出ゲーム。

31. テレビはみる方?
 見ないほう。
 一番見る局はEテレ。

32. 好きな番組のジャンルは?
 Eテレでやってるようなヤツ。
 あと、ブラタモリとか、そういうの。

33. ネットの住民?
 『ネットの住民』がどういうことを指すのか、よく分かんない。
 よくネットをしてる人のことを言うの? だとしたらそうかも。

34. 2ちゃんとか覗いてる?
 覗いてない。

35. 頭痛が熱中症の症状だって知ってた?
 熱中症の症状に、頭痛もあるてことでしょうか。
 知らなかったかも。

36. エアコンの設定温度は大体? (夏・冬)
 夏は26~28℃、冬は24~26℃。
 でも去年初めてエアコン購入したから、この温度設定がちょうどいいのかどうかがよく分かんない。
 今までは、夏は扇風機、冬は電気ストーブで、温度設定できないヤツだった。

37. 部屋着ってどんな感じ?
 夏はTシャツと七分丈のズボン、冬はババシャツと長袖Tシャツとフリースを着て、下はちょっと厚めの長ズボン。
 これがそのままパジャマになる。

38. 家の中でもオシャレしてたい?
 していたくない。

39. 地元の祭り好き?
 興味はないが、仕事上、参加せざるを得ない。

40. 地元の特産品は?
 米、野菜。

41. 行ってみたい都道府県は?
 東京。
 結構しょっちゅう行ってるけど、何回行っても飽きない。

42. 行ってみたい南北アメリカ大陸の国は?
 アメリカ。

43. 行ってみたいヨーロッパの国は?
 スペイン。
 サグラダファミリアが見たい。

44. 行ってみたいアフリカ大陸の国は?
 特にない。

45. その他で行ってみたい国は?
 何で南北アメリカ・ヨーロッパ・アフリカだけ特化して聞いて、後はその他にまとめたんだろ…。
 今行きたいのはタイ。アジアの国が好き。ベトナムにはまた行きたい。

46. 英語以外で修得したい言語は?
 特にない。
 大学のころ、中国語やってたから、またやりたいとは思うけど、別に習得するとかいうレベルまで行かなくてもいい。

47. 国際結婚に憧れる?
 憧れない。

48. 素晴らしいと思う日本の文化は?
 公共交通機関が時間どおりに運行する。

49. 素晴らしいと思う外国の文化は?
 どの国にもすばらしい文化はあると思うけど、そんなによく知らないから答えられない。

50. 味噌汁に欠かせない具は? (複数解答可)
 別にない。
 てか、そこまで味噌汁大好きじゃない。

51. 冷蔵庫に絶対入ってるものは?
 分かんない。いろいろ入ってると思う。一人暮らしじゃないから。

52. お酒強い?
 そこそこ。
 弱くはないけど、飲める種類が少ない。

53. アルコールパッチやったことある?
 15年くらい前に。

54. 好きなフルーツは?
 果物自体、そんなに好きじゃない。

55. 必ず最後に愛は勝つ?
 何で急にKAN?

56. バンド組んでる or 組んでみたい?
 組んでないし、組みたくない。

57. 楽器は何?
 何の?

58. 邦楽聴く?
 聴く。

59. バラード好き? ロック好き?
 バラード好き。ロック好き。

60. 好きな色は?
 ピンク。
 ダルカラー。

61. 嫌いな色は?
 パステルカラー。
 あのぼやっとした感じが嫌だ。

62. 好きな懐メロは?
 懐メロてどの範囲?
 こないだ職場の若い子が、TRFのこと懐メロて言ってたよ!

63. 出会った中で一番好きな歌詞は?
 いろいろ。
 こういうの、すぐに思い浮かべられない。

64. 自分のテーマソングは?
 別にない。

65. 好きな動物は?
 猫。
 触れないけど。
 基本的に動物苦手。

65. 自分を動物に例えると?
 人間。

66. 一番好きなキノコは?
 しめじ。

64. 友達にキノコってあだ名の子いる?
 いない。
 アラレちゃんに、皿田キノコているよね。

65. 自分の足のサイズ好き?
 普通。

66. 麦茶? ウーロン茶? 緑茶?
 ウーロン茶か緑茶。
 麦茶て意外とおいしくないよね。

67. コラーゲン好き?
 好き。
 でもコラーゲンて組織が大きいから、飲んでも塗っても効果ないんですってね。

68. ツナギってカッコいいと思う?
 考えたことなかった。
 サロペットみたいなのはちょっとアレだけど、作業着のツナギなら格好いいと思う。

69. カラオケ好き?
 嫌い。
 人前で歌なんか歌いたくない。

70. カラオケで絶対歌う曲は?
 ない。

71. ピタゴラスイッチ好き?
 好き。

72. バナナとブドウなら?
 『バナナとブドウなら』……何? 好きか嫌いかてこと?
 同じくらいのレベルかな。

73. みかんといったら和歌山? 愛媛?
 みかんといったら有田みかんて感じがするけど、それが和歌山なのか愛媛なのかが分かんない。

74. 芸術は爆発? 戦うことが芸術?
 戦うことが芸術、て何? 聞いたことない。
 どっちも別にて感じ。

75. ボクシング観戦とプロレス観戦どっちが楽しい?
 ボクシング。

76. 相撲取りの名前何人か覚えてる?
 何人でも覚えてる。
 相撲大好き。

77. 競馬の馬の名前何頭かわかる?
 1頭も分かんない。
 興味ない。

78. 宝くじ当たったことある?
 最高3万円。

79. 就いてみたい職業は?
 今の仕事でいい。
 絵が下手くそだから無理だけど、イラストの仕事してる人は格好いいなぁと思う。

80. 就きたくはない職業は?
 医療職。

81. お化け屋敷平気?
 平気じゃない。

82. 肝試し平気?
 子どものころやったことあるけど、平気だったかどうか忘れた。
 今さらやりたくはない。

83. 何鍋が好き?
 豆乳鍋。

84. かき氷は何味が好き?
 青いヤツ。
 ブルーハワイだっけ?

85. かき氷にカルピスの原液かけたことある?
 ない。

86. かき氷に麦茶かけたことある?
 ないし、何でそんなことしなきゃいけないのかと思う。

87. 嘘を吐くくらいなら何も話してくれなくていい?
 何についてかによるんじゃないかと思いますが。
 それによって、犯罪とかに巻き込まれたくないし。

88. スーパーの袋は取っておく派?
 取っておく派。

89. いつか役に立つかなってなかなか捨てられないものは?
 空き箱。

90. 年下の男の子かわいい?
 赤ちゃんとかなら。

91. 素敵なロマンスしちゃってる?
 質問の意味が分かんない。
 何かの歌のパクリか?

92. 一番泣けるシチュエーションは? (長くておk)
 現実世界のことか、お話の中のことかにもよると思いますが。
 現実世界なら、やっぱり人の死とかじゃないでしょうか。お話の中のことなら、何か多分いろいろあると思う。

93. 兄弟と仲いい?
 兄弟いない。

94. ラーメンは塩? 味噌? 醤油? とんこつ?
 昔は断然、背脂トンコツだったけど、今は塩。

95. パンに着いてるシール集める?
 春のパン祭り?
 職場に集めてる人がいるから、上げてる。

96. 声が気に入らない歌手は?
 別にいない。
 いるかもしんないけど、すぐに思い付かない。

97. ボーカロイドって知ってる?
 知ってる。

98. 何曜日が好き?
 土曜日。

99. 雨の日と曇りと晴れと、どれが一番好き?
 晴れの日。
 雨とか雪が降ってると鬱陶しいし、晴れても曇りでも紫外線は降り注ぐけど、晴れてるほうが堂々と日傘を差せるから。

100. アニメ好き?
 普通。
 コナンは見てる。あと、Eテレでやってるようなヤツ(はなかっぱとかおじゃる丸とか)は。あとは見てない。だからって嫌いなわけじゃないけど、興味がない。

101. ギャルゲーとか乙女ゲーとかどう思う?
 やんないけど、嫌いじゃない。てかギャルゲーいいよね! エロのギャルゲー。

102. ジブリ作品で好きなのは?
 魔女の宅急便。

103. ディズニー作品で(略)
 ない。

 つか、何かこのバトンの質問て、『(略)』が多いよね。
 作った人も、手書きじゃなくPCで作ってるはずだから、問題文を最後まで打ったとしても、そんなに大変じゃないだろうに。つか、どうしても面倒くさかったんだとしたら、コピペすればいいだけなのに。何で?

104. 女の子の前髪ぱっつんどう思う?
 かわいいと思う。

105. 戦争ものの映画好き?
 好きじゃない。

106. ホラー映画好き?
 好きじゃない。

107. 霊的なもの見える?
 見えない。

108. お化けと幽霊どっちを信じる?
 どっちも信じてない。
 てか、お化けと幽霊て違うんだ? 私、幽霊をかわいく言ったのがお化けなのかと思ってた。

109. 悪魔と妖怪どっちが怖い?
 実写の見た目なら妖怪のほうが怖そう。
 何かベトベトしてそうな感じがして。

110. 童謡好き?
 興味ない。

111. 童話に憧れた?
 憧れなかった。

112. 天体観測したりする?
 しない。星に興味ない。全然。

113. バイロットってカッコいい?
 イロットになってる…。
 パイロットだとしても、格好悪いとは思わないけど、特別格好いいとか、そういうことは思ったことない。

114. 漁師のほうがカッコいい?
 何と比べて?
 特に格好いいか悪いか考えたことない。

115. むしろ農家の人のほうがカッコいい?
 むしろ?
 質問の意味が分かんない。
 格好いいとか悪いとか、どうでもいい。

116. トイレ最短何秒?
 計測したことない。

117. お風呂最長何分?
 1時間くらい?
 でもラクーアとか行ったら、もっと入ってるよね。

118. 寝逃げすることもいい?
 寝逃げて何?
 一瞬、夜逃げかと思ったら、寝逃げだった。

119. お雑煮と雑炊どっちが好き?
 雑煮。
 もち好き。

120. 物まねのレパートリーは?
 ない。
 あったらいいのに、て思う。

121. 別荘つくるなら沖縄? 北海道?
 どっちにもいらない。
 管理できないから。普段人が住んでいない建物の管理ほど難しいものはない。
 どっちも遠くてそんなにめったに行けないから、行ったら普通にホテルとかに泊まればいいと思う。そのほうが絶対に金がかからない。

122. お笑い好き?
 興味ない。

123. 柑橘類知ってるだけ挙げてみよう。
 みかん、レモン、甘夏、はっさく、ゆず、でこぽん、かぼす、晩白柚。
 でも、まだ何か有名なのがありそうな気がする。

124. 演歌歌手知ってるだけ(略)
 また略してる! 『挙げてみよう。』くらい、打って打てない量じゃないのに。
 てか、演歌歌手は、多分それなりに知ってると思うけど、何か挙げるのの面倒くさい。すごいいっぱいいそうだから。漢字とかもうろ覚えだし、いちいち調べるの…。

125. クワガタ派? カブトムシ派?
 どっちでもいい。
 虫は嫌いじゃないけど、興味はない。

126. 散歩好き?
 今住んでるところで散歩する気はない。景色に見飽きてて、つまんない。自然に興味ないし。
 東京とか、いっぱい歩きたい。坂歩きたい。

127. 住むなら大阪? 東京?
 東京。
 大阪は行ったことがないから、いいかどうかが分かんない…。

128. 探偵ナイトスクープみてる?
 たまに。

129. ツンデレは実在すると思う?
 実在するからこそ、妄想やお話に反映されるのだと思う。

130. ヤンデレ受け入れられる?
 いわゆるそういうお話とか、創作の中のキャラとしてなら、好きではないけど、受け入れられる。
 でも、『ヤンデレ』という言葉は受け入れられない。
 実際に精神的に病を抱えている人はたくさんいるのに、それを病気の理解のためにお話や漫画にしたとかならまだしも、『病む』という言葉をおもしろおかしく取り扱うことが嫌だ。
 
131. メンヘラ受け入れられる?
 前に『メンヘラ』という言葉を見掛けて、意味が分からなくて調べたら、メンタルヘルス不全の人を侮辱していると感じたので、この言葉自体が嫌だ。
 多分、使っている人はそんなつもりもないし、悪気もなく、簡単な気持ちで使っているんだろうけど、メンタルヘルス不全のことをよく理解しないまま、簡単に使うべき言葉ではないと思う。

132. ゴキブリの対処方法は?
 私、実際にゴキブリて見たことがない。
 でも、虫は別に平気なんで、普通にティシューでポイすると思う。

133. ムカデの対処方法は?
 室内に出たら、ティシューでポイ。
 外で見掛けたら、無視。

134. 今までで一番のときめきは?
 欲しかった同人誌を、イベントなりまんだらけなりで見つけたとき。

135. ドラマ必ずみる?
 見ない。
 『野田ともうします。』は見てる。

136. カレーに何入れる?
 カレーのルウ、水、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、豚肉。

137. お好み焼きは何焼きが好き?
 どういう意味か分かんない。
 お好み焼きに、『お好み』以外の焼きがあるの?

138. 少女マンガで一番のおすすめは?
 いわゆる『少女マンガ』らしい『少女マンガ』て読まないから分かんない。

139. 口笛ふける?
 音を出すだけなら。

140. どんな超能力ほしい?
 別にいらない。

141. 薔薇は何色がお好き?
 花に興味ない。

142. マヨ派? ケチャップ派?
 掛けるものにもよるのでは?
 でもマヨネーズて特別大好きじゃないから、ケチャップ派かな。

143. マリオのキャラで誰が一番好き?
 マリオ以外に誰がいるか知らない。
 あのキノコみたいの、かわいいよね。キノコみたい……てか、キノコか。

144. 寝るの大体何時?
 11時。
 でもホントはもっと早く寝たい。

145. 田舎か都会、1週間滞在するなら?
 今めっちゃ田舎に住んでるし。
 でも、今住んでるトコとは違う田舎と、都会を比べるなら、都会かな。

146. 明日が僕らを呼んだって返事もろくにしなかった?
 これも、何かの歌?
 何を答えればいいの? 歌ってる人を当てたらいいの?

147. 携帯ストラップ何つけてる?
 前付けてたヤツ、ヒモが切れちゃって、それ以来、付けてない。
 ちなみに前付けてたヤツは、B'zのライブで買ったグッズのヤツ。MAGICのときの。

148. 長生きしたい?
 親よりは。

149. 洋菓子と和菓子どっちのが好き?
 洋菓子かな。

150. おすすめの銘菓は?
 銘菓て何?

151. 今のHPいくら?
 どうでもいいけど、私、『HP』ていうと、『ホームページ』か『hospital』の略だと思っちゃう。




 ということで、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
 タイトルほど、どうでもいいことを聞かれた感はないです。
 てか、普通バトンとか質問て、最後の質問で感想を聞いたり、『お疲れ様でした』的な一言が入ってたりするのに、これにはそれがないのですね。150問でなく、151問まであるにもかかわらず。もしかして最後の問いが、そういう意味だったんだろうか。私が気付いていないだけで。
 まぁいいですけど。

 今年もこんな感じで鬱陶しくいきますけれども、よろしくお願いします!
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カテゴリー:notes

恋と呼ぶにはまだ早い (10)


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 12月24日、東京ドーム公演2日目。
 大盛況のうちにコンサートは終わり、琉と大和をはじめ、バンドのメンバーやダンサーたちも楽屋へと下がり、お客さんたちは規制退場に従って会場の外へと出ていく。

「ハルちゃん、まだ来てないっ?」

 シャワーを済ませた琉が、慌ただしく戻って来て楽屋の中を見回すが、そこにはまだ遥希の姿も千尋の姿もなかった。
 会場から楽屋までの来方は遥希に話してあるし、そのための段取りもしてあるから、何も心配することはないんだけれど、それでも琉はやっぱり心配なのだ。

「水落! そんな格好してないで、さっさと着替えろ!」

 大和に早くシャワーに行くように促した南條が、バスローブのまま携帯電話を手にウロウロしている琉に声を掛ける(どうせ遥希に、今どこにいるのか、電話かメールする気なんだろう)。

「だってハルちゃんが!」
「ちゃんとこっち向かってるから!」
「何で南條にそんなこと分かんの? ハルちゃんに聞いたの? ハルちゃんのメアドとか知ってんの!?」
「迎えに行ったスタッフから連絡来たの!」

 何で南條が!? と情けない顔をしている琉に一喝してやる。
 普段、琉や大和と行動を共にすることの多い南條は、しつこい追っ掛けのファンの子たちの間では顔が知られているので、別のスタッフを向かわせていて、その彼からもう2人と会えたと連絡があったのだ。

「琉ー、ハルちゃんて誰~? 琉のsweetie?」

 あまりに琉が必死に南條に詰め寄るものだから、楽屋にいたダンサーの1人がからかうように声を掛けて来た。
 琉は遥希のことを隠すつもりなんてないので、あっさりと「そうだよ」と答えたが、そんな琉に南條は、もちろん「ギャー!」と慌てふためいている。

「失礼しまーす」
「あっ」

 ノックとともに見知ったスタッフが顔を覗かせ、その背後に遥希の姿を見つけた琉は、パッと顔を輝かせた。
 …これだけ分かりやすかったら、聞くまでもなかった。

「ハルちゃん!」
「あ、琉…」

 スタッフの後に続いて、「失礼します…」と怖々楽屋に入って来た遥希は、琉の存在に気付いてホッとする。
 つい先ほどまではコンサートの余韻で興奮状態だったけれど、会場からここに来るまでは、知らないスタッフと一緒だったし、他のファンの子たちを差し置いてFATEの楽屋に向かうわけだから、やたらと緊張していたのだ。

「みなさん、お疲れ様です…。わざわざ楽屋まで呼んでいただいて…」
「よかったハルちゃん、ちゃんと来れた」
「ちょ、琉…」

 スタッフでも関係者でもないのに(いや、関係者でないこともないのだが、遥希は自分の立場をあまり理解していない…)、こんな場所に呼んでもらって、労いとお礼の言葉を言わねば…と、遥希は慣れない言葉を一生懸命操ろうとしているのに、遥希を見つけた琉がすぐに飛び付いてきたので、うまくいかない。



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恋と呼ぶにはまだ早い (11)


 しかも琉が、遥希の肩を抱いて頭を撫でてきて、周りに人がいっぱいいるから、どんな顔をしたらいいか分からなくなるし、初めて生で見たバスローブ姿の琉は、遥希が想像していた以上にセクシーだったから、ドキドキして、ポーッとなって、

まともに琉の顔が見れなくなる。

「会いたかった、ハルちゃん」
「…ん、俺も。琉、コンサートお疲れ様」

 けれど、たとえここが人前でも、琉にそう囁かれたらやっぱり嬉しい遥希は、頬を染めつつ、表情が緩む。
 さっきまでステージでパフォーマンスしていた琉が、今は自分だけを見つめてくれているんだもの。

 しかし。

「チッ」

 そんな2人の甘い雰囲気をぶち壊したのは、南條でも、他のスタッフでもない、隠すことのない千尋の舌打ちだった。
 遥希に唆されたおかげで、千尋もFATEのコンサートに来て、今も一緒に楽屋に来たのだが、千尋が見たいのは大和の裸であって、琉と遥希がいちゃついているシーンではないのだ。

「あっ、ちちちちちーちゃん、ゴメン!」

 不機嫌を露わにしている千尋に気が付いて、遥希は琉の胸を押してその体を引き剥がすと、慌てて千尋のほうに向き直った。
 千尋の舌打ちに現実に返って、慌てて琉から離れたというより、千尋の機嫌を損ねると何をされるか分からないことを、本能的に悟っているからだ。
 しかし、遥希の必死のご機嫌取りにも、千尋は、「フン、勝手にやってれば」と冷たい。

 つい数秒前まで遥希の肩を抱いていた琉は、突然のことにポカンとなったが、先ほど声を掛けてきたダンサーが、ニヤニヤしながらこちらを見ているのに気が付いて、舌打ちしたい気分になった。
 随分つれないかわい子ちゃんだね、とでも言いたげな表情が、癪に障る。

 けれど、マネージャーの南條をはじめ、楽屋にいる関係者は男性ばかりだが、大抵が華奢とは言い難い体格の持ち主ばかりなので、この2人が引っ付いてわちゃわちゃしている様子は、たとえ千尋がご機嫌斜めだとしても、かわいくて和むのは確かだ。

「琉、大和くんは…?」

 千尋を宥めるにはこれしかない! と、遥希は千尋から少し離れて、こっそり琉に尋ねる。
 琉に、千尋をFATEのコンサートに連れてくるための秘策として、大和の裸で釣る作戦を伝授された遥希は、素直にそうやって千尋を誘って来たので、今もそれしか思い浮かばなかったのだ。

「今シャワー中。もうすぐ来るよ」

 やっとハルちゃんが戻って来たー、と琉は嬉しそうに遥希に腕を伸ばす。
 その背後、南條の咳払いがしたが、遥希を補給中の琉には、そんなのどうだっていい。

「ち…ちーちゃん、大和くんもうすぐ来るって…!」

 琉の腕の中から、遥希はまたこっそりと千尋にそれを伝達する。
 というか、遥希的にはこっそりしているつもりだが、先ほどから遥希の声は、千尋にも琉にも筒抜けだ(本当なら、琉と千尋が直接話をすればいいのだが…)。



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恋と呼ぶにはまだ早い (12)


「…てか水落」
「アダダダダダ」

 千尋は機嫌を損ねても舌打ちされるだけで済んだが、マネージャーの南條は、そういうわけにはいかなかった。
 大体が見知ったスタッフや関係者ばかりの楽屋とはいえ、こんなところでいちゃつかれては困る! と、南條は、琉を遥希から引き剥がすべく、琉の耳を引っ張った。

「あ、あ…南條さん、ゴメンなさい…」

 耳を引っ張られたのは琉だが、南條によって、ようやく遥希も現実へと引き戻され、琉の腕の中でポーッとなっている場合ではなかったことに気が付いた。

「いやいや、小野田くんはいいから。水落、さっさと着替えろっつってんだろ!」

 基本、いい子で真面目な遥希に、南條は甘い。
 何となく不公平…と琉は思うが、今は琉が一方的に悪い子の役を担っていたのだから仕方ない。琉はペロッと舌を見せてから、「ちょっと待ってて」と着替えに向かった。
 それを見届けた南條は、他のスタッフに指示を出したり、何やら打ち合わせをしたりして、動いている。

「何か…一丁前に南條が仕事してやがる…」

 キビキビと働いている南條の姿を見た千尋は、先ほどまでの不機嫌も忘れて、純粋に感動していた。
 南條とは高校以来、ずっと付き合い続けている友人なのに、千尋は、南條がFATEのマネージャーであることを本当につい最近知ったのだが、しかしこんなにテキパキ仕事をこなしているとは、実のところ思っていなかった。
 偏見かもしれないが、芸能人なんて手の掛かる人種で、芸能界なんてドロドロした世界だから、軟弱な南條は、きっと琉や大和に手を焼いているだけでなく、押されまくっていると思っていたのに。

「何かムカつくよね」
「え、何が? 何で?」

 邪魔にならないように楽屋の隅で大人しくしていたら、隣の千尋がボソッとそんなことを言ったので、着替えをしている琉に見とれていた遥希は、何のこと? と千尋を見た。
 もしかして、大和が出て来ないから、まだご機嫌回復してない?

「ちーちゃん?」
「何でもない」

 南條のくせに、と言ってやろうかと思ったが、遥希にいちいち説明するのが面倒くさくて、それはやめた。

 バタバタと後片付けが進み、楽屋の中に人が少なくなっていく中、奥の扉が開いて誰か出て来た。
 琉を見ていた遥希は、ちょうど琉がそちらのほうに向かっていたのでそれに気が付いたが、何となく南條の仕事ぶりを拝見していた千尋は気付かなかった――――出て来たのが大和だということに。

「ちーちゃん、ちーちゃん…!」

 服の裾を引っ張られて、千尋は面倒くさそうに遥希を見たが、その向こうに大和の姿を見つけて、あっ、という顔をした。



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恋と呼ぶにはまだ早い (13)


「ハルちゃん、ちーちゃん、いらっしゃ~い」
「あ、あ、お疲れ様ですっ」

 シャワーから戻って来た大和も、バスローブ姿でセクシーだったけれど、初めて会ったときそうだったように、妙にフレンドリーで、遥希は急いで頭を下げた。
 けれど、隣の千尋の反応がなくて、どうしたのかと思ったら、何だか呆然と大和のことを見ているだけだった。

「ちーちゃん…?」

 いくらご機嫌斜めでも挨拶くらいしないと…と、遥希はまるでお母さんのようなことを思いながらハラハラするが、千尋はそんな遥希の心配をよそに、何も言わずに大和のほうに手を伸ばしていた。
 その様子を、遥希も琉も大和も不思議そうに見ていたが、3人の中では一番付き合いの長い遥希が、千尋のしようとしていることに真っ先に気が付いて、「ちーちゃん!」とその手をガシッと掴んだ。

「あ、」

 遥希に腕を掴まれた千尋は、ようやく我に返ったのか、遥希の顔を見た後、大和のほうを見てペコリと頭を下げた。
 琉も大和も気が付いていないが、千尋は、コンサートのときよりもさらに間近で見た大和の裸に興奮して、その肌に触れようと、無意識に手を伸ばしていたのだ。
 千尋が大和の裸を見たがっていたことは琉に話していたので、きっと大和も知ってはいるだろうが、会ってすぐ挨拶もなしに、バスローブから覗く裸の胸に触ったら、本当にただの変態だ。

「ちーちゃん、何して…」
「だって」

 遥希に咎められて、再び手を伸ばそうとしてた千尋は、渋々手を引っ込めた。
 自分が妙なことをしようとしていたのは気が付いたけれど、でもやっぱりその筋肉に…!

「あぁちーちゃん、俺の裸、見たかったんだよね?」
「ぅ?」

 千尋の伸ばされていた手の意味にようやく気が付いたのか、しかし大和は嫌な顔1つせず、寧ろニッコリと微笑んだ(眩しすぎる!)。

「やっぱ、琉より俺のが、いい体~? 触りたくなるくらい」
「うんっ」

 冗談で大和が尋ねれば、千尋は躊躇うことなく、目を輝かせて即行で頷いた(別に千尋に褒められたいわけではないが、出しに使われた琉は、大変おもしろくない)。
 しかし大和は非常にご機嫌だ。そういえば大和は、初めて千尋に会ったときから、彼のことを気に入っている様子だったし、この間もかわいいと言っていたんだっけ。

「そっか、そっか~。ちーちゃん、かわいっ」
「ぅぬ?」

 千尋に体を褒められたのが嬉しかったのか、そんな千尋を本気でかわいいと思ったのか、コンサートの後でテンションが妙になっていただけなのか、大和はそのまま千尋にむぎゅと抱き付いた。



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すいません、寝過ごしました…。
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恋と呼ぶにはまだ早い (14)


「に゛ゃっ!?」

 突然の大和の行動に、千尋だけでなく遥希も驚いたのだが、それより驚いたのは、一瞬にして千尋の顔がブワッと真っ赤になったことだ。
 何かと大胆不敵な千尋が、いくら相手が大和とはいえ(イケメンなことは認めるが、決してファンではないから)、抱き付かれたくらいで顔を赤くするなんて。
 そんな千尋を見るのは、遥希でさえ初めてだったが、事はもっと深刻な事態だった。

「ぬ? ちーちゃん?」

 千尋が顔を赤くして硬直したのに気が付いた大和が、どうかした? と、少し体を離して、その顔を覗き込んだ――――その次の瞬間。

「うぅ~~ん…」
「ちーちゃんっ!?」

 体の支えを失った千尋は、意識を飛ばして、そのまま後ろに引っ繰り返った。





chihiro & yamato


「…ん、ぅんー…」

 千尋は、スプリングの効いた心地よいベッドの上で寝返りを打つと、さらに奥深くふとんの中に潜り込んだ。
 千尋は寝具にはこだわっていて、マットも掛けぶとんも、ちょっといいヤツ(ちょっと…とは言うが、貧乏学生の遥希にはとても手の出せない代物)を使っているのだ。
 しかしこのベッドは、そんな自慢のベッドより、さらに寝心地がいい気がする。

「…ん?」

 まだ完全には覚醒していないけれど、どうも様子がおかしい…と、千尋は感じる。
 目を開けて確認しようか、それともやっぱり夢の世界に戻ろうかという究極の二者択一に、夢うつつながら頭を悩ませていたら、ベッドのそばを誰かが通り過ぎる気配がして、千尋はパチリと目を開けた。

 そして気付く。
 このふとんは、自分のものではない。

「うわっ、何でぇっ!?」

 そぉーっとふとんをはぐって部屋の様子を盗み見た千尋は、そこが自宅の寝室ではないことを知り、ビックリして飛び跳ねるようにして起き上がった。

「あ、ちーちゃん、起きた?」
「ギャッ!」

 驚き過ぎて呆然となってしまった千尋に、何とものん気な声が掛けられ、驚いてまた飛び上がった。
 まだ事態を把握し切れていない千尋が、それでも何とか声のほうを向いたら、窓際の瀟洒なテーブルセットのところに、ラフな格好をした大和がいた。



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恋と呼ぶにはまだ早い (15)


「………………え?」

 ここが千尋の家でなくて、大和がいるということは、彼の部屋ということか。
 でもどうして自分がこんなところに?
 以前、目を覚ましたら、遥希と一緒に琉の家にいたことはあったが、あれはクラブでの一件があった後のことで、千尋も事の次第が分かっていたが、今回ばかりは意味が分からない。

「えと…、あの、えっと…?」
「大丈夫? 引っ繰り返ったとき、ギリギリ受け止めたから、頭ぶったりとかはしてないし、大丈夫だとは思うけど」
「頭…」

 大和にそう言われて、千尋はベッドの上にペタンと座りながら、記憶を辿る。
 そういえば、遥希と一緒にFATEのコンサートに来た千尋は、コンサート終了後、楽屋に呼ばれたんだっけ。そこにはもちろん、琉だけでなく大和もいたはずで。
 でも引っ繰り返ったって…?

「え、まさかちーちゃん、何も覚えてない? 俺が誰だか分かる?」
「………………、一ノ瀬大和」
「よかったぁ、全然知らない人にホテルに連れ込まれました、とか言われたら、俺、犯罪者になっちゃう」
「……」

 大和に尋ねられるがままに答えれば、冗談ともつかない口調で大和が返してくる。
 千尋が大和を知っているのは、彼が超有名人であり、遥希がFATEのファンだからであって、別に、見知らぬ一室で2人きりになるほどの間柄ではない。
 そういう意味では、全然『よかったぁ』ではない気がするが、大和は千尋が目を覚ましたことにホッとしているようだし、千尋も何か面倒くさいから、とりあえず黙っておく。

「てか、ここ、ホテルなんですね」
「うん。3daysのときは、都内でもホテルに泊まんの。ここは俺の部屋ー」
「そうですか。で、何で俺はここに?」
「え、ちーちゃん、マジでいろいろ覚えてないの?」

 大和に目を見張られ、千尋は自分が完全には記憶を取り戻していないことに気が付いた。
 記憶喪失にでもなった気分だが、自分の名前はちゃんと言えるし、遥希のことも分かるし、お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、実家がどこにあるかもちゃんと分かる。

「俺らのコンサート見に来てくれたことは? 覚えてる?」
「覚えてる」
「じゃあ、終わった後、楽屋に来てくれたことは?」
「分かる」

 最初は敬語で話していた千尋だったが、大和がフレンドリーなうえにタメ口なので(遥希情報から、大和のほうが年下なことは知っている)、千尋も敬語をやめて答えた。

 今日彼が宿泊するために手配された部屋は、当然ながらベッドが1つしかないが、それはダブルサイズと言ってもまだ足りないくらいだから、クィーンサイズなのだろうか。
 そんなベッドの上、千尋が座っている横に、大和も腰を下ろした。

「俺に会ったの、覚えてる?」
「…ような気がする」
「ちょっ…そっからは曖昧なの~? ヒドッ」

 そう言われても。
 仕事の上で建前を話したり、本音を隠したりすることはあるけれど、基本的に千尋は自分の気持ちに素直な人なので、今も、覚えていないものは覚えていないのだから、と嘘をつくことはしなかった。



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恋と呼ぶにはまだ早い (16)


「ハルちゃんと水落がイチャついてて、何かムカついたことは覚えてる」
「うはは。でもそれは許してやって」

 千尋の正直な答えに大層ウケて、大和は手を叩きながら笑い出す。
 それは、別に大和を笑わそうと思って言ったわけではなく、本当にそう思ったからなのだが。

「それよりも! 何で俺、ここにいるの?」
「ちーちゃん、マジで覚えてないの? 気失って倒れちゃったの」
「気…?」

 何度『覚えてないの?』と言われても、分からないものは分からないのだが、その後に続いた大和の思い掛けない言葉に、千尋は眉を顰めた。だって、気を失ったって…。
 しかし、ここまで来て大和が嘘をつく理由も思い当たらないし……もしかして千尋が全然思い出さないから、からかいたいんだろうか。

「ちょっ…ちーちゃん、めっちゃ疑いの眼差しだけど、ホントだからね!? ちーちゃんが俺の裸見たがってたし、何かかわいかったからギュウしたら、そのまま倒れちゃったんだって!」
「……」

 そういえば、そんなことがあった気がする。
 大体、千尋がFATEのコンサートに来たのも、遥希に、大和の裸が生で見られると言われたからで、楽屋に行ったのも、千尋にしたらそのためだったのだ。
 で、遥希と琉に軽くムカつきつつ、南條の仕事の様子を眺めていたら、バスローブ姿の大和が現れて、その筋肉に触りたいと思っているうち、大和に抱き締められて……。

「……」

 確かに記憶はそこまでしかない。今度こそ、これ以上は何も思い出せない。
 千尋は大和に抱き締められて(そもそも、それだって意味不明…)、あの筋肉にギュウとされて、もう何も考えられないくらいに頭が沸騰して、後はもうどうなったのか分からない。

「マジか…」

 確かあそこには、大和だけでなく琉もいたし、遥希もいた。それに、南條をはじめとした、スタッフと思しき人たちも。
 そんな中で千尋は気を失って倒れたというのか。一生の不覚…!

「大丈夫だよ、ちーちゃん。みんなビックリはしてたけど、大事にはなんなかったし。つか、だからここいんだけど。だから大丈夫だって」
「…………」

 落ち込む千尋に大和がそう言ってフォローするが、これは千尋のプライドの問題であって、そんな慰め、かえって空しいだけだ。
 もちろん明日もコンサートのあるFATEやスタッフに迷惑は掛けられないので、大事にならなかったのはありがたいが、琉の前でそんな醜態を晒したのが、何よりも屈辱だ。

「つか、でもだから何で俺、ここにいんの?」
「ん? 俺が連れて来たから」
「は?」

 FATEの楽屋で倒れたら、その後どうして大和の部屋で目を覚ますことになるのか、それが分からなくて聞いたら、当たり前のように大和に言われて、ますますわけが分からなくなる。
 先ほどの大和の話では、特に千尋は頭を打つとかはなくて無事だったわけで、だからこそ目を覚ました場所が病院ではないのだろうけど、だからといって、大和の部屋にいる理由がない。
 大事に至っていなかったのなら、起こしてくれればよかったのに。そうすれば、ちゃんと自分の家に帰った。



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恋と呼ぶにはまだ早い (17)


「ちーちゃん、どしたー? 眉間のしわ、すごいよー?」
「だって意味が…。何で俺が気を失ったら、大和くん……一ノ瀬さんが」
「大和くんでいいよ。つかむしろ、大和て呼んで?」
「………………、大和くんが俺のことを部屋に連れてくるわけ?」

 普段、遥希と喋るとき、大和くんと呼んでいるから、本人を前にしてもついそう言ってしまい、千尋は慌てて訂正したが、その本人が、何抜かしてやがる、ということを、キラキラのアイドルスマイルで提案してきたので、千尋は聞こえない振りで、『大和くん』呼びを継続した。

「だって倒れたちーちゃん、楽屋に放置しておけないじゃん。俺、そんな鬼の子じゃないよ」
「鬼の子……ラムちゃん? 『だっちゃ』て言って」
「ちーちゃんのこと、放っておけないっちゃ★」

 やっぱり千尋、倒れたときに頭を打ったのかなぁ…というような、アホなお願いをしてみたら、大和は恥ずかしがることもなく、あっさりとやってくれた。
 自分からねだっておいて何だが、大和て、どこまでが本気なのか、よく分からない…。

「つか、楽屋に放っておかれても困るけど、そうじゃなくて、起こしてくれたらいいじゃん! そしたら俺、ハルちゃんと一緒に帰ったのに!」
「いやぁ、それはないんじゃない?」
「何で」

 選択肢は、楽屋に放置か、ホテルの大和の部屋来るか、の二択ではないはずだ。
 千尋はコンサートが終わったら、FATEの楽屋に行って大和の裸を見たら、遥希と一緒に帰るつもりだったのに。でもそれを、大和があっさりと否定するから、千尋は訝るように眉を上げた。

「だってハルちゃんは今、琉の部屋だっちゃ★」
「あ…」

 そうだった。
 あの2人は、恋人同士なのだ。しかも今日はクリスマスイブ。たとえ明日もコンサートがあるとはいえ、ようやく出会えた2人が、顔を見ただけでバイバイなんかするはずがない。

「でしょー? だからちーちゃんは今日、ハルちゃんと一緒にお家には帰れないの」
「で…でも、ハルちゃんが水落のトコだとしても、俺、1人で帰れるしっ…」
「でももう連れてきちゃった」
「帰るっ……うわっ!」

 悪びれた様子もなく言う大和に、怒るというよりは焦って、千尋はベッドから立ち上がろうとしたが、大和に手を引かれて、再びベッドに座り直してしまった。

「もう日付変わってるって。終電ないよ。タクシーで帰るより、今日ここ泊まってって、明日電車で帰ったほうがよくない?」
「グッ…、でもここに泊まる必要ないっ! 俺、別の部屋…」
「空いてないって。イブの夜だよ?」
「うぬぬ…」

 千尋が何を言っても、大和にあっさり切り返されてしまう。
 これが遥希や琉だったら、千尋はもっと口八丁にいろいろ言えるのに、慣れない相手と、焦る気持ちのせいで、全然うまくいかない。



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恋と呼ぶにはまだ早い (18)


「でも、この部屋でなくたっていいと思うっ。あっ、南條のトコとかっ」

 都内の公演なのに、わざわざ大和たちがホテルに泊まるのは、単に宿泊したいからでなく、マネジメントの都合からだろう。そう考えたら、FATEのマネージャーであり、千尋の友人である南條も泊まっているのは間違いない。
 千尋を1人で帰せない事情があるとしても、泊まるのは南條の部屋でいいと思う。というかむしろ、そうでないとダメだと思う。

「えー、ちーちゃん、俺より南條のほうが好きなの?」
「そういうことじゃなくて!」

 千尋だって別に好き好んで、イブの夜に南條なんかと一夜を過ごしたくはない。
 そういうことでなくて、スーパーアイドルFATEの一ノ瀬大和が、コンサートの後に千尋なんかをホテルの部屋に連れ込んじゃってることが大問題だと言いたいのだ。
 マネージャーの南條は、一体何をしているんだ! と千尋が憤慨してみても、大和は平然としていて。

「ちーちゃんが倒れたのは俺のせいだし、俺が最後まで責任持って面倒見ますーて言って、連れて来たんだよ?」
「意味分かんなすぎる…。普通、連れ込むなら女の子でしょ」

 あぁ、それのほうがよっぽど大問題だから、男である千尋が一緒の部屋にいれば、そういう事態にはならないと踏んだのかな。
 でも千尋はゲイで、そのことは南條も知っているはずなんだけど…。まぁ大和はノンケだし、その辺は千尋のことを信用してくれたんだろうか。

(まぁ…、こんないい部屋に泊めてくれるんだったら、それはそれでいいけど…)

 久々に、1人の寂しいクリスマスを過ごすはめになると思っていたところに、降って湧いたような展開。
 先ほどまでは、テンパり過ぎていて、帰ることしか考えていなかったけれど、この部屋の主である大和が帰らなくていいと言っているんだから、今から無理に帰ることもないか、と千尋は考え直す。
 遥希と琉のような、恋人同士の甘い夜にはならなそうだが、このいい部屋といいベッドを堪能するのも、ちょっとしたクリスマスプレゼントだと思えばいい。

「分かった。じゃあ今日は帰んないで、ここにお泊りする」
「やったー!」
「おっと」

 何がそんなに嬉しいのか、千尋が泊まることを伝えると、大和は両手を上げて喜んだ後、隣の千尋に抱き付いて来ようとしたので、千尋はサッとそれを躱した。

「………………」
「………………」
「…ちーちゃん、どうして今よけたの?」
「どうしてでしょう」

 もちろんそれは、同じ過ちを繰り返さないための防衛策だが、大和の問い掛けには、笑顔ではぐらかした。



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恋と呼ぶにはまだ早い (19)


 コンサートでは、ファンの女の子や遥希ほどはしゃぎはしなかったものの、会場の熱気で結局汗だくになったので、千尋は大和に着替えを借りて風呂に向かったら、想像以上に豪華なバスルームで若干焦った。
 普段シャワーだけの人なのに、せっかくだから…と、思わずバスタブに浸かってしまうくらい。

(でもこういうのは、1人で泊まるのにはいらないよね…)

 遥希みたいにお風呂大好きだったら、アメニティのバスジェルとか堪らないのかもしれないけれど、やっぱりこういうのは、カップルで泊まってこそだと思う。
 その遥希も、今日は琉と一緒に泊まっているわけで、クリスマスに、このホテルの、このバスルームで、まさか一緒に入らないはずがないから、ゆっくりと堪能してはいられないか。

(お風呂プレイ…?)

 クリスマスだもんね、やっぱお風呂プレイだよね、と勝手な想像をしつつ、結局は烏の行水程度で風呂から上がった千尋が部屋に戻ると、大和がまだ起きていた。
 今日もあんなに動いていたし、明日もあるから、もう寝ていると思ったのに。

「寝ないの?」
「んー、もうちょっと。ね、ちーちゃん、ちょっと付き合ってよ」
「何に?」

 頭を拭きながら千尋が聞き返したら、大和に笑われた(ちょっと心外)。

「ちーちゃん、シャンパン飲める?」
「飲めるけど……お酒飲むの?」

 大和は『飲める?』と尋ねて来たが、テーブルのところには、すでにシャンパンのボトルとグラスが2つ用意されている。
 別に千尋が気にすることでもないけれど、まだ寝なくてもいいのかなぁ。それに、歌うならお酒とか、ダメのような気もするし。

「ちょっとだけ。ね、乾杯しよ?」
「乾杯? 何に? 『コンサートお疲れ様でした』なら、明日でしょ?」
「じゃあ、メリークリスマス、てことで」

 一応気を遣って千尋はそう言ったのに、大和はご機嫌でシャンパンのボトルを開け始める。
 まぁ、こんな、いかにも高そうなホテルのルームサービスで提供されるシャンパンなんて、絶対に高いに決まっているから、こんな機会でもないと飲めそうもないし、せっかくだから付き合ってやるか。

「じゃ、メリークリスマス、ちーちゃん」
「…んっ、」

 スマートにシャンパンを注いだ大和にフルートグラスを渡され、さっさと口を付けてしまった千尋は、大和がグラスを掲げたのを見て、乾杯するんだったと思い出し、慌てて目の高さくらいにグラスを持ち上げた。
 たった今、乾杯しようと言われたばかりなのに。

「んふふ、おいしい?」
「…はい」

 また笑われた…。
 笑われるようなことをしているのは確かだから仕方がないけど、大和相手だと、どうも調子が狂う。



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恋と呼ぶにはまだ早い (20)


(つか、何で俺、イブにこんなヤツとシャンパン飲んでんだろ…)

 座り心地のいいソファに踏ん反り返った千尋は、ファンの子には絶対に聞かせられないようなことを改めて思いながら、目の前のイケメンに視線を向けた。
 千尋は、(悔しいけれど遥希の言うとおり)イブを一緒に過ごす相手もいないから、家に1人でいるより、いい男を眺めながら高い酒を飲んでいるほうがいいけれど、大和は、一体何がよくて千尋となんか過ごしているんだろう。
 だって千尋が大和に会うのは、今日が2回目だ。また会いたいと思ってくれたのなら嬉しいことだが、わざわざイブの夜に誘うほどの相手でもない気がする。
 もしかして、彼女いないんだろうか。

「なぁに、ちーちゃん。俺の顔、見惚れちゃうくらい格好いい?」
「死んじゃえ」
「ヒドッ」

 何となく大和という人間の人となりを考えていたら、ついじっと見つめてしまっていたらしい。
 大和がつまらない冗談を言って来たので、即行で切り捨ててやった。彼がイケメンなのは認めるけれど、千尋は遥希と違ってそんなに面食いではないし、顔よりも筋肉だから。

「違くて。何がよくて大和くん、俺と一緒に飲んでんの? て思ったの。女の子呼んだほうが、楽しくない?」
「えー、俺はちーちゃんと一緒に過ごしたかったんだよ?」
「イブを? この聖なる夜を?」
「うん…。そんな、言い直さなくたって、そうだってば」

 苦笑しながら大和はそう言うが、何度言われても、千尋はやっぱりピンと来ない。

 まぁそうは言っても実際のところは、イブなのに、女の子を連れ込むことも、遊び歩くことも出来ないから、ちょうどよくいた千尋を構いたいだけなんだろう。
 このいかにも、カップルで泊まったらすてき! と言わんばかりのホテルの部屋に、イブに1人なんて寂しすぎるし。

(だって、南條じゃ、何かつまんなそうだもんな)

 自分も散々お世話になったり手を焼かせたりしている南條について、勝手なことを思いつつ、千尋はクイッとグラスを空にした。

「ちょっ、ちーちゃんっ!」
「ぅん?」
「あー…いや、おいしい? シャンパン」
「うん」

 大和に慌てたように名前を呼ばれて、顔を上げたらまたそんなことを聞かれるから、不思議に思いながらも千尋は頷いた。
 普段、そんなにしょっちゅうシャンパンを飲むわけではないけれど、これはすごくおいしい。

「あ、そうだ。大和くん、裸は?」
「え?」
「そういえば、まだちゃんと見てない」

 新たにシャンパンを注いでくれている大和を見ていたら、そのことを思い出した。
 だって、ちょうど向かい合っている千尋のグラスに注ごうとすると、ちょっと前屈みになるから、フロントがドレープになっているTシャツの胸元から、胸の筋肉がチラッと見える…!



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恋と呼ぶにはまだ早い (21)


「ちーちゃん、ホント筋肉好きなんだね」
「好き。俺、超ムキムキになんの」
「え、ちーちゃん、自分もムキムキになりたいの?」
「うん、なる」

 驚いたような顔をする大和に、千尋はコクンと頷いた。
 なりたい、ていうか、なるつもりだし。

「そっかー…」

 でも、千尋としては、冗談とかでなくとっても真剣なのに、何となく大和が本気にしていないような雰囲気を醸し出しているので、おもしろくない。
 もしかして、千尋じゃ無理だとか思っているんだろうか。

「俺、ムキムキになるのっ!」
「わ…分かったって…」

 映画で見た大和の裸には負けるけれど、少なくとも今だって、琉よりは筋肉に自信はあるし。
 だから強く主張したら、若干無理やり感はあるが大和が納得したので、ちょっと満足して千尋はチーズをつまみながらグラスを空けた。

「ねぇちーちゃん、ペース速くない?」
「そう? おいしいからかな?」

 おいしいお酒に、いいホテル。
 何だかよく分からないけれど、目の前にはイケメンがいて目の保養も出来るし、惚れ惚れするような筋肉もじっくり鑑賞できるし、何気に最高のクリスマス?

「ちーちゃん、これお酒だからね?」
「分かってるー。だってシャンパン、乾杯したでしょ? メリークリスマス、て」
「まぁそうなんだけど、」
「はい!」

 大和に念を押されるけれど、そんなこと、千尋だってちゃんと分かっている。だから注いで? と、千尋は空になったグラスを、大和のほうに差し出した。
 でも、さっきのように、ちょっと前屈みになって注いでほしいから(そうでないと胸の筋肉のチラ見が出来ない)、千尋は少しだけ腕を引っ込めてみる。

「ちーちゃん、めっちゃ見てるねー…………胸を」
「ぐふ」

 黄金色のシャンパンを注いでもらいながらも、千尋の視線はそんなものよりも、大和の胸元に集中している。
 でも、そうは言っても、ノンケの男が、女の子にこんなふうにお酒を注いでもらっていたら、絶対に胸ばっかり見ているに違いないから、別にそれと変わらないと思う。

「だって、大和くんの筋肉すごいんだもん…。やっぱ水落とは違うね」
「でも琉も、最近結構鍛えてるよ? 今日見て、そう思わなかった?」
「水落なんか見てないもん」

 今日は最初から、大和の裸を見るためにやって来たのだ。
 コンサートの楽しみ方としてはちょっと違うかもしれないが、歌もそんなに知らない、女の子だらけのコンサート会場での、千尋の唯一の楽しみはそれだった。



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恋と呼ぶにはまだ早い (22)


「それに、あんまり水落のこと見てんのも、ハルちゃんに悪いかな、て思って」
「ハルちゃんに気、遣ってんだ?」
「だってハルちゃん、嫉妬深いうえに面倒くさいから」

 そこそこ長い付き合いの中で、千尋は遥希の性格はそれなりに熟知している。とにかく遥希は、大好きなFATE(…というか、主に琉だが)のこととなると、ほんっとうにいちいち面倒くさいのだ。
 だから今日も、『ちーちゃん、琉のこと見過ぎ!』とか言われたら鬱陶しいので、千尋は最初から、琉のことはそこそこにしか見ていなかったのである。

「でも、ファンの子はみんな琉のこと見てるよ」
「だよねー。でも文句を言われんのは俺1人なのっ」

 遥希が琉の気持ちを疑うことはないだろうけど、あの会場にいた女の子の大半が琉のことを好きなわけで、そういう意味では、遥希のライバルはいっぱいだ。
 というか、日本全国ライバルだらけになるけれど、もちろんその全員を牽制できないから、結局標的になるのは千尋だけなのだ。
 そこまでなら、千尋のことを誘わなければいいのに、そうもいかないのが遥希だから、余計に面倒くさい。

「でもハルちゃん、そこまで琉のこと好きなのに、1回フッちゃってるトコがすごいよね。そのころから琉のこと好きだったんでしょ?」
「だってあの子、超ドMだもん。水落が自分のこと好きなわけがない、とか言ってさ。どっからどう見ても、水落てハルちゃんのこと大好きじゃん!?」
「あはは、確かに」
「まぁ水落はノンケだし、無理かなぁて思う気持ちも分かるけど。でもハルちゃんの場合、水落は芸能人だから男の恋人なんかいちゃダメ、とか言って遠慮しちゃってさ、バッカみたい」

 芸能界で生き残っていくには、スキャンダラスな出来事は敬遠したいだろうけど、あのときは琉から告白してきたのだ。
 それなのに、まだ起こってもいない先のことを想像して、ぶつかりもせずに逃げてしまった遥希のことは、本当にバカだと思った。

「ハルちゃん、自分でフッといて、めっちゃ凹んでたからあんま言わなかったけど、もし俺だったら、絶対にそんなことしないのに、て思う」
「まぁハルちゃん真面目だし、そう思っちゃったんでしょ」
「そんなの。両思いなのに? もし俺だったら、相手が芸能人だからとか、そんな理由じゃ絶対諦めないっ」

 今のところ千尋は、芸能人に恋に落ちたことはないし、遥希みたいに、その相手に偶然出会ったこともないし、ましてやその人からも想われて、相思相愛になったこともないけれど。
 でももしそうなったら、不真面目だと言われようと、絶対に遥希のような真似はしない。

「ちーちゃんは、恋に落ちたら、ガンガン行くタイプなんだ?」
「そう。だってさ、誰かに取られたらヤダもん」
「じゃあ、告白も自分からすんの?」
「好きになった人には」

 何で大和と恋の話なんかしているんだろう……そう思っても、アルコールの回った頭はぽわぽわしていて、何だかよく分からない。
 一緒にお泊りした夜に恋バナなんて、女子高生?



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恋と呼ぶにはまだ早い (23)


「じゃ、ちーちゃんは今、好きな人いないの?」
「いないー。何で分かんのー?」
「だって好きな人いたら、ガンガン行くんでしょ? なのに、イブに1人だから」
「1人じゃないもん。大和くんが一緒にいんじゃん」
「俺と一緒に過ごしたいと思ってくれてたんだ?」
「別にー。キャハハ」

 イブの夜に、大和と一緒に過ごしてはいるけれど、それはただの成り行きだ。すてきなホテルに泊まって、夜景を見ながらシャンパンを飲むなんて、まるで恋人同士みたいだけれど、2人の関係はそうじゃない。
 大和に会うのは今日が2回目で、今になってようやく、『よく知らない人』から、『一緒に話をするのが楽しい、すてきな筋肉の持ち主(イケメン)』くらいにはなったけれど、それだけのこと。

「ヒドイな、ちーちゃん。俺はちーちゃんと過ごしたかったのに」
「何でー? この聖なる夜に、大和くんが俺と一緒に過ごしたかったのー?」

 本当、大和て意味が分からない。
 女の子と過ごせない代わりなのに、千尋と一緒に過ごしたかっただなんて、口がうますぎる。…まぁ、悪い気はしないけれど。

「でも俺も、大和くんと一緒なの、楽しいけどねー」

 もし遥希に、FATEのコンサートに誘われなかったら、クリスマス合コンにでも参加しようかと思っていたくらいだから、冗談でも、『一緒に過ごしたかった』なんて言ってもらえれば、気分は上がる。
 千尋は、芸能人と一夜を過ごせて、自分は他の人とは違うんだ、なんてくだらない優越感に浸るタイプではないので、ただ単に今は、この時間が楽しいだけだ。

「ちーちゃんがそう言ってくれるなら、本気で口説いちゃおっかな」
「えー、何ー?」

 大和の言っていることがよく分からなくて、とりあえず千尋はグラスのシャンパンを飲み干した。



*****

 目の前でクテンとなっているかわいい酔っ払いを、一体どうしてくれようか…。
 大和がそう思っても、千尋はソファの上でクフクフ笑いながらシャンパンを舐めていて、何の警戒心もなくいい気分に浸っているから、やっぱり手は出せないなぁ、と思う。

 モエ・エ・シャンドン・ブリュット・アンペリアル。
 世界的に有名で高級なシャンパンも、その殆どが、千尋の腹の中に収まっている。

 千尋と初めて会ったのはクラブで、そのときも千尋はお酒を飲んでいたけれど、あのときは状況がいろいろ深刻だったので、千尋に酔っ払っている素振りはなかったが、酔うとこうなるのね…。
 かわいいけど、ちょっと意外。

「口説く? 大和くんが何で俺のこと口説くの? おっかしー」
「好きな子のことは、そりゃ口説くでしょ? ちーちゃんだって、好きになった人にはガンガン行くって言ったじゃん」
「俺はそうだけどー、大和くんが好きなの? 俺のこと?」

 もともと大きな目を、さらに真ん丸に見開いて、千尋はマジマジと大和のことを見た。
 あ、その顔、かわいい。



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恋と呼ぶにはまだ早い (24)


「俺の何が好きなの? 腹筋? 上腕二頭筋?」
「いや、そんなピンポイントじゃなくて…」
「俺、ずっと腹筋はがんばってるからね、すっごいんだよ。見る?」
「ちょっ、ちーちゃん! シャツをめくらない、お腹出さない!」

 きっとボディビルダーとか、見せる筋肉を作っている人なら、千尋の質問にはいくらでも答えられるんだろうけど、悪いが大和はそこまでではない。
 なのに、自慢の腹筋を見せたいらしい千尋が、貸してやったTシャツの裾をベロッとめくるから、大和が慌ててそれを制した。
 好きな子の裸なら、そりゃいくらでも見たいけれど、その気もないのに腹を出されたって、そんなのただの生殺しだ。というか、イブの夜にホテルの一室でそんなことをして、勘違いされたって、文句は言えないと思う。

「ね、すごいでしょっ?」
「――――…………あー…うん、すごいね、ちーちゃんの腹筋。確かに琉よりすごい」
「でしょでしょー」

 しかし、これは褒めないことには埒が明かないと思って、大和が褒めたら(実際、琉よりすごいのは確かだ)、千尋はお腹丸出しのまま、ご機嫌に笑ってシャンパンを煽った。
 フルボトルのシャンパンは、もう空になろうとしているが、大和は最初に注いだ1杯しか飲んでいないのに、千尋はもう何杯目だろう(これは、大和が弱いんじゃなくて、千尋の飲むペースが速すぎるだけだ)。

「でもやっぱ、大和くんのがすごいね。胸の筋肉とかさ。俺も大和くんみたいなおっぱいになりたい」
「おっぱいて…。そう言われると、何かまた違う感じに聞こえるんですけど」

 千尋て、ちょっと天然なのかな…。
 初めて会ったときは、遥希がほわほわしてるから、千尋がすごくしっかりしているように見えたんだけれど、酔うと本性が出ると言うし、これが千尋の本来の姿なのかも。

「大和くん、またさっきみたいにおっぱい見して?」
「ちーちゃん…、その言い方、ちょっと変態くさいよ。てか、さっきみたいて、コンサートのときみたいに脱げてこと?」
「ちーがーう! もっとこう…前屈みになってシャンパン注ぐの!」
「は?」

 胸を見せるのと前屈みになるのとが、どう繋がるのか分からなくて、大和が首を傾げていたら、千尋が、とにかくこちらに身を乗り出せと言うので、言われたとおりにしてみる。
 …一体何だろう、この状況は。

「これでいいの? シャンパンは?」
「いいの。チラリズム!」
「はい? …………。あぁ、そういうこと?」

 千尋の視線が自分の胸元に注がれていて、大和はようやく、千尋が何を言いたかったのか理解した。
 要は全部脱ぐより、Tシャツの胸元から覗く胸の筋肉を見たかったということだ。

「ちーちゃんて、結構マニアック?」
「何で? 大和くんだって、女の子が胸の開いた服着てたら、チラ見すんでしょ? 俺だけじゃないやい!」
「ソーデスネ…」

 世の中のすべての男がそうだとは言わないが、まぁ確かにそれは男の性みたいなもので、千尋にしたら、それが筋肉の付いた男の胸になるということか。
 でもやっぱり、それはちょっとマニアックだと思う…。



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恋と呼ぶにはまだ早い (25)


「んふふー、大和くん、すっごい」
「…そう?」

 千尋がウットリとした表情でそういうので、大和は満更でもない気持ちになる。
 今回、映画のためにかなり体を絞って筋肉を付けたら、映画関係者や男友だちには好評だったけれど、やっぱり女の子受けはしなくて、早く今までくらいに戻って、とよく言われていたのだ。
 モテたくて体を作っているわけではないけれど、やっぱりアイドルでムキムキ過ぎるのはどうかな、と思うところもあって、体型を戻そうかと考えていたのだが、千尋がこんなに気に入ってくれるなら、もうしばらくはこれでいいかも。

「つか…この体勢、ちょっとキツいから、もう元に戻っていいですか?」
「えー、だらしないなぁ、大和くんは。しょうがないから、いいよ」

 完全に上から目線の千尋に言われて、大和は自分のソファに戻った。

「ちーちゃん、俺の筋肉、そんなに好きなの?」
「好きー」
「俺のこと好き?」
「好きー」
「なら、付き合っちゃう?」
「ぅん?」

 とても上品とは言い難い体勢で寛ぎながら生返事をしていた千尋は、大和の最後の質問には流されることなく、眉を寄せて大和のほうを見やった。

「俺と大和くんが付き合っちゃうの?」
「うん。だってちーちゃん、俺のこと好きなんでしょ? 俺もちーちゃんのこと好きだもん。これは付き合うしかないでしょ」

 モゾモゾと起き上がった千尋は、大和の言葉にさらに首を捻った。

「俺ら、付き合うしかないの? 俺、大和くんの恋人になるの??」
「イヤ?」
「大和くんに、男の恋人? アイドルなのに? ヤバイ! 週刊誌に撮られちゃうっ! そんなのダメー! キャハハ!」

 大和の言葉を全然本気にしていないのか、千尋はソファの上で、足をバタバタさせながら笑い転げている。
 琉辺りが見たら、こんななのに、千尋のどこがいいの? とか言いそうだ。

「ダメなの? ちーちゃん、さっき、相手がアイドルだからて理由じゃ断んないて言ったのに」
「だって、水落とハルちゃんが付き合ってんのに、大和くんまで俺と付き合ったらさ、大変! ストレスで南條の髪の毛がなくなっちゃうっ。それはダメだぁっ!」

 千尋の返事は本気なのか(酔っ払っているから、本気といってもどこまで本気なのかは…だが)、大和の告白をうまく躱しているだけなのか、よく分からない。
 しかし千尋は自分の言葉にウケて、ますます大笑いしている。何とも平和な酔っ払いだ。

「ちーちゃん、南條の心配してんの?」
「そーだよっ、俺、南條なんかの心配してんの! 偉いでしょー? 大和くんは、もっと南條の心配しないとダメなのー」
「………………。そうだね、ちーちゃんは友だち思いだねぇー…」
「えへへー」



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恋と呼ぶにはまだ早い (26)


 別に大和は、南條の髪の毛の心配など微塵もしていないが、とりあえず千尋に合わせておく。
 というか、千尋のほうが、よっぽど南條に心配も迷惑も掛けているだろうに、本人はその辺り、さっぱり分かっていないに違いない(しかも、『南條なんか』とか言ってるし…)。
 褒められて、千尋は満足げに笑っているが、もう手元もすっかり危うくなっていて、千尋の手からはグラスが落ちそうだったので、大和は千尋のそばに移動すると、それを受け取った。

「うぅん…」
「ん? ちょっ!」

 グラスを取られた千尋がぐずったので、絡まれるのかと思ったら、そうではなくて、千尋の体がコロリと転がって、大和の腕の中に落っこちて来た。
 ちょうど大和が受け止めたから、千尋はソファから床に転がり落ちることはなかったけれど、何ていうタイミング…。

「ちーちゃん、大丈夫?」
「ふゅ…」
「……て、寝てるし」

 コンサート後の楽屋では、大和に抱き締められた途端、顔を真っ赤にして気を失ってしまったというのに、今は何の躊躇いもなく、大和の腕の中だ。しかも寝ている。
 いくら酔っているとはいえ、イブの夜に好きだと告げた男の腕に抱かれ、よくもまぁ、こんなに気持ちよさそうに眠りこけられたものだ。…それも、大和の言葉を本気にしていないからこそなんだろうけど。

「…結構、本気なんですけどね」
「ゃ…」

 起きる気配のない千尋を抱き上げ、大和は、部屋の中央に鎮座ましましているベッドに寝かせてやる。ツンと頬をつついたら、イヤイヤするように首を振られた。

「あーあ。あと1歩て思ったけど…………うーん、2歩…、いや、3歩くらいかなぁ」
「うにゃ…」

 とりあえずベッドは1つだし…と、大和が大きなベッド、千尋の隣に潜り込めば、コロンと寝返りを打った千尋が、大和にすり寄ってきた。
 まったく、嫌がられているのか、そうでないのか。

「ますます嵌っちゃうじゃん」

 そう独りごちた大和は、クリスマスプレゼント、と勝手にキスのプレゼントを頂いて、目を閉じた。



 ちなみに翌朝、隣で眠る大和に仰天した千尋が悲鳴を上げるのは、また別のお話。



*END*



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ヨッシー先輩と宇佐美くん (1)


 クラーク博士が抱けと言ったほどの大志はなくとも、そこそこの夢と希望を持って入学した高校も、ゴールデンウィークを過ぎたころには、馴染んだクラスメイトと学校に、新入生のやる気もだらけた雰囲気へと変わり始める。
 有名進学校でも、名門のスポーツ校でもないこの学校なら、それはなおさら。

 要は、学校に行くのが楽しみで、早起きも平気! とか、満員電車も全然苦にならない! とか、そういうことはまったくなくて、何となく眠そうな顔で学校に来ては、何となく授業を受けるという輩が増えて来るのだ。

 ――――しかし。
 そんな5月も終わり掛けのダラダラした雰囲気などまったくお構いなしの男が、ここに1人。

「ヨッシーせんぱ~~~い!!!」

 昼休み。廊下の、まだだいぶ向こうから、ブンブンと元気に手を振って走って来るのは、宇佐美奏斗(ウサミ カナト)、1年。
 まだ中学生のような幼さの残るかわいい顔立ちながら、小柄で華奢な体に漲るような元気を蓄えた男。
 そんな宇佐美の行動に、廊下にいた生徒の何人かはギョッとした顔をし、また何人かはいつものことだと慣れた様子で友人との会話を再開する。
 そして宇佐美に『ヨッシー先輩』と呼ばれた男は、ギャッ見つかった! という顔で逃亡を図ろうとしたが、スタートダッシュに遅れ、宇佐美に飛び付かれた。

「ヨッシー先輩、一緒にお昼を食べましょう!」
「バカ、いきなり飛び付くな! 抱き付くな!」
「えー…、じゃあヨッシー先輩、抱き付いてもいい?」
「…」

 断りを入れればいいというものではない。
 宇佐美は、まだ、いいともダメとも返事を貰っていないのに、キュウキュウとヨッシー先輩に抱き付く(というか、最初に飛び付いたきり、離れてもいない)。

 ヨッシー先輩こと、吉沢淳太(ヨシザワ ジュンタ)。2年生。
 何の因果か、今年入学したばかりの元気いっぱいな1年生、宇佐美奏斗に懐かれてしまった哀れな男。

 いや、ただ懐かれるだけならいい。
 特に何をしたというわけでもないが、後輩に気に入ってもらえるなんて、先輩として、何だか嬉しい気がしないでもないし。

 しかし、宇佐美の場合は違っていたのだ――――その懐き具合が。

 朝、校門のところで吉沢が登校するのを待っていては抱き付き、昼休みになれば一緒にご飯を食べようと飛び付き、放課後になれば一緒に帰ろうと部活が終わるのを待っているという始末。
 しかもそれが毎日。
 一体俺が何をしたんだ! と、吉沢が神を恨んでも致し方あるまい。

 ちなみに朝、降りる駅が一緒なのに、宇佐美が駅でなく校門のところで吉沢を待つのは、駅は人が多くて、万が一にも吉沢を見過ごしてしまったら大変だからだ。
 何も、駅で抱き付けば吉沢の迷惑になるとか、そんな気の利いたことを考えたわけではない(それが分かるくらいなら、朝昼晩と吉沢のところへやっては来ない)(というか、そもそも学校で抱き付かれること自体、十分迷惑だ)。



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ヨッシー先輩と宇佐美くん (2)


「ヨッシー先輩、お昼、お昼♪」
「知らねぇよ、俺、生田たちと食うし!」

 別にそんな予定はなかったが、吉沢はクラスメイトの生田健一(イクタ ケンイチ)の名を出した。
 生田とは1年のときから同じクラスで仲がよくて、宇佐美に懐かれる前までは、昼食も一緒だったのだ。

「えぇ~、健ちゃんとぉ~?」

 生田の名前に、宇佐美はあからさまに不満そうな顔をした。
 仮にも(頼りなくて、ちょっと残念な頭はしているが)1つ年上の先輩なのに、宇佐美は出会ったその日から『健ちゃん』と呼んでいて、しかも遠慮がない。

「…健ちゃん、ヨッシー先輩とご飯食べるの?」

 吉沢と宇佐美が、離せ! イヤ! の応酬を繰り返しているところに姿を見せた生田に、宇佐美は嫌そうな顔を引っ込めようともせず尋ねる。

「食べるよなっ? なっ、生田!」

 必死な顔で、吉沢は生田に縋り付こうとするが、――――やはり生田は生田だった。

「えーでもヨッシー、宇佐美と食うんだろー? 邪魔しないよぉ~」

 なんて、ニコニコと言い出す始末。
 生田的には、気を利かせてやったつもりなんだろうが、吉沢にしたら『このバカが~~~~~!!!』と突っ込みを入れるしかない。

「ということで、ヨッシー先輩、一緒にお昼を食べましょう」

 何がどうなって、『ということ』になったのかは知らないが、ただ1つ言えることは、吉沢は今日もやっぱり宇佐美とお昼を一緒に食べなければならないということ。

「天気がいいから、外で食べましょう!」
「あーはいはい…」

 吉沢がどう足掻いても、最終的にはこうなってしまうのだ。
 ならばもう諦めて、素直に宇佐美と一緒にお昼を食べたほうが、無益に時間も浪費しないし、余計な体力も使わないし、無駄な気力も消費しないと分かっているけれど。
 でも、それでも、いつも宇佐美にいいようにされているなんて、吉沢のちっぽけなプライドが許さない。

「ヨッシー先輩、あのねっ」

 口の中に物を入れたまま喋ったらお行儀が悪い、ということはちゃんと心得ているのか、宇佐美は卵焼きを十分に咀嚼してゴックンと飲み込んでから、楽しそうに吉沢に声を掛ける。
 常に宇佐美のテンションが高いせいで、吉沢は若干お疲れモードなのだが、もちろんそんなことに気付く宇佐美ではない。
 たぶん宇佐美は、世界中の人間みんなが自分と同じテンションでいると、信じて疑っていないのだろう。



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ヨッシー先輩と宇佐美くん (3)


「つーかさ、宇佐美。その『ヨッシー先輩』ての、やめてくんない?」

 喋り出したら止まらない宇佐美に、吉沢は何とか早い段階でストップを掛け、そしてその変なあだ名を指摘する。
 『ヨッシー』というのは、吉沢の苗字に由来するあだ名で、それは他の友人たちも使っているからいいんだけれど、宇佐美はなぜか、それに『先輩』を付ける。
 吉沢のほうが1つ年上だから、というのが理由なのだろうが、それにしても『ヨッシー先輩』というのは、ちょっとどころか、だいぶ変だ。

「だって、ヨッシー先輩のほうが先輩でしょ? だから一応、気を遣ってみたんだけど」
「…」

 そんな変なところで気を遣うくらいなら、もっと他に遣うべき個所は、いくらでもある気がするのだが。

「じゃあ、俺も『ヨッシー』て呼ぶ!」
「…えぇ~」

 自分で『ヨッシー先輩』と呼ばれるのを嫌がったくせに、吉沢は宇佐美の提案に、心底嫌そうな顔をした。

「何でそんな嫌そうなの? 健ちゃんとかだって、そう呼んでんじゃん」
「生田は同級生だもん。お前、後輩だろ」
「もぉ~、すぐそうやって先輩ぶる~。だから『ヨッシー先輩』て、一応『先輩』付けて呼んであげてんのに!」

 『先輩』と呼ぶことが一応であるうえに、とっても上から目線の宇佐美に、吉沢は言い返すのも面倒くさくなって、自分の弁当に向き合った。
 宇佐美とまともにやり合っても、結局は自分が疲れるだけだということを、吉沢は彼に出会ってからの数日で学習している。

「ヨッシー先輩! はいっ」
「はい?」

 ベラベラと1人で喋っていた宇佐美に、適当に相槌を打っていたら、吉沢の前にうさぎちゃんが登場した。
 うさぎちゃんと言っても、女の子がそういう格好をして…とか、そういういかがわしい方向のものではない。リンゴで出来たうさぎちゃんだ。

「あーん」
「……」
「あーん!」

 どうやら宇佐美は、このうさぎリンゴを、『あーん』で吉沢に食べさせたいらしい。
 高校生男子が、1つ下の男子に『あーん』をしてもらう状況も異様だが、それ以前に、高校生にもなって、弁当にうさぎリンゴを入れてもらうって、どうだろう。

「ヨッシー先輩、あーん!」
「だから、いらね……ングッ!」

 いらない、と告げるつもりで口を開けた吉沢に、宇佐美はその一瞬の隙も見逃さず、うさぎリンゴを突っ込んだ。



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ヨッシー先輩と宇佐美くん (4)


「ヨッシー先輩、おいしい? おいしい?」
「(ムグムグ)」
「ねぇ、おいしい?」
「(ムグムグムグムグ…………ゴックン)」
「ヨッシー先輩!」
「…リンゴだから、普通にうめぇよ」
「違うでしょ! 俺が『あーん』してあげたから、その愛のスパイスが効いて…」

 うさぎリンゴ1個をそのまま口に入れられた直後、そんなにすぐさま味の感想を聞かれたって、答えられるわけがない。
 それでもがんばって飲み込んだ吉沢が、当たり前のことを答えれば、宇佐美にはその答えが不服だったのか、吉沢に対する自分の深い愛情について語り始めてしまった。

 ――――そう、この宇佐美奏斗という男。
 単に吉沢に懐いているわけではない。LOVEという意味で、吉沢のことを好きだと言うのだ。

 確かに毎日の宇佐美の行動は、単に後輩として先輩に懐いている、というレベルは遥かに超えている(…し、対好きな人だとしても、今のうさぎリンゴ然り、度は越えている)。
 誰に聞いても間違いなく、宇佐美は吉沢に惚れていると答えるだろう――――吉沢は断じて認めたくないが。

「ねぇねぇヨッシー先輩。あー…」
「…何?」
「……ーん」
「…………」

 間抜けな顔で口を開けている宇佐美。
 先ほどの『あーん』のお返しを要求しているのだ。

「ヨッシー先輩、ヨッシー先輩っ! あー」

 吉沢が、コイツ、ホントにアホかな…と思っていることなど気付きもしないのか、宇佐美は大きく口を開けたまま。
 この口の中に何かを入れてやらない限り、宇佐美は昼休みが終わるまで(いや、終わってもまだ)口を開け続けているだろう。

「…ホラ」
「、ンッ!」

 仕方なく吉沢は、自分の弁当の中からウィンナーを1つ、宇佐美の口に入れてやる。

「ん~~~っっ!!」
「…………宇佐美?」
「おいしいっ!!」
「……あ、そう…」

 別に、普通のウィンナーだけど…。
 大げさに喜ぶ宇佐美に悪い気はしないが、その後にキュウキュウと抱き付かれるのはいただけない。

「だーかーらー、抱き付くなっつってんだろ、宇佐美!」
「えぇ~」

 抱き付いてくる宇佐美を鬱陶しそうに押し遣れば、案の定、宇佐美は不満そうな声を上げたが、素直に吉沢から離れた。
 ようやく宇佐美の願いが聞き入れられた……と思ったのも束の間。

「じゃあ、ヨッシー先輩。抱き付いてもいい?」
「ギャッ!」

 まだ吉沢は、何も返事をしていない。
 したとしても、絶対に答えはNOなのに、宇佐美は断りを入れたらオッケーと覚えてしまったのか、再び吉沢にキュウキュウに抱き付く。

「ヨッシーせんぱ~いっ!」
「は~な~れ~ろ~~~!!」
「何でぇ~~~!?」

 だから、断りを入れればいい、というものではないのだ。



*END*



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意地っ張りなところ (1)


 あ、と思ったときには、もう遅かった。


 今日は和衣が祐介とデートで、いつも一緒にお風呂に行っている相手がいないから、「しょうがねぇから亮と一緒に行ってやるか」と、無駄な上から目線で睦月がそう言って来たので、亮がお供して風呂に向かった。
 睦月は雑な感じで服を脱ぎ捨てると、さっさと風呂に向かい、亮は、同じ寮で生活している潤と話をしながら後を付いていった――――まではよかったのだ。

「うわぁっ!」

 睦月の叫び声がして、亮が、「あ、」と思ったときにはもう、濡れたタイルに足を滑らせた睦月の体は、軽やかに宙を舞って、ドタンと尻から床に落ちたのである。

「………………」

 手にタオルを持っている以外は、身一つ。
 すっぽんぽんの睦月が、風呂場の床にペタンと座っている。

「えっと…、睦月、大丈夫…?」
「…………」

 睦月はまだ、自分の身に降り掛かった状況を把握していないのか、亮に声を掛けられても、呆然としている。
 滑って転んで尻餅をついたのだから、大丈夫なはずはないのだが、亮も掛ける言葉が見当たらず、とにかく無事なら早く立ったほうがいい、と睦月の腕を取った。

「睦月立てる? 大丈夫?」
「――――…………な……べ、別に何でもないしっ。立てるに決まってんじゃんっ!」

 ようやく我に返った睦月は、亮が心配してくれているにもかかわらず、そう言って、掴まれていた腕を振り解くと、自力で立ち上がった。

「何だよもぉっ! バーカバーカッ!」

 自分で勝手に滑って転んだわけで、誰がバカかと言えば、睦月本人以外にはいないのだが、何か言わずには気が済まなかったらしい睦月は、そう吐き捨てて、さっさと湯船のほうに進んで行った。

「ガキか、アイツは」

 事の一部始終を見ていた潤がおもしろがって、唖然としている亮の肩を叩いた。
 亮は、睦月の性格なら大体分かっている。こういうときはこれ以上、下手に話し掛けないほうがいいのだ。だから亮は、睦月の後は追わず、潤と一緒に風呂に入った。



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 お題は、as far as I knowさま「一応説明させてもらうと」からです。お久しぶりの「君といる~」亮タン&むっちゃん、お楽しみください!
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意地っ張りなところ (2)


 もとから烏の行水の睦月は、『ちゃんとあったまるまで入んないとダメ』と怒ってくれる和衣がいないのをいいことに、ザブンと浸かっただけで風呂から上がると、頭を洗いに行っている。
 これで、このまま上がって行ってしまうんだろうな。

「なー亮、前から聞きたいと思ってたんだけどさ、」
「…………ぅん?」

 湯船に浸かりながら、潤が周りを気にしつつ声を掛けて来たが、亮は睦月の様子を目で追っていたので、反応が遅れた。

「お前、アイツの何がいいわけ?」
「アイツて?」
「睦月。付き合ってんだろ?」
「ブッ! …………、はっ? 何言ってんの、潤くんっ」
「…声、引っ繰り返ったぞ。お前、意外と嘘つけねぇのな」

 亮が睦月と付き合っているのは事実だし、それは和衣や翔真、祐介といったごく一部の友人なら知っているが、誰彼無しに話していることではなく、もちろん潤にも言っていないはずだが…。

「違くて! 潤くん、何でそんなことっ…」

 和衣や翔真が話したんだろうか。
 口止めしているわけでもないから、話したって別にいいんだけれど、それならそれで、一言言ってくれたらいいのに!

「何で、て……何で知ってるか、てこと? お前らが付き合ってること?」
「…うん」
「見てれば分かるし。つか、隠してるつもりだったわけ?」
「え……誰かから聞いたとかじゃないの? カズとか、ショウとか」

 和衣は無自覚に口が軽いしなぁ…なんて、勝手に人のせいにしていたのだが、どうやらそうではなく、潤は、日ごろの亮と睦月の様子を見ていて、付き合っていると思ったらしい。
 無理に隠そうとしていたわけではないが、そんなにバレバレだっただろうか。それはそれで恥ずかしい…。

「んで、何がいいわけ? あんなのの」
「あんなの、て…!」

 言うに事欠いて、『あんなの』て…!!
 潤のあまりの言い種に、亮は思わず絶句した。
 確かに彼は、テンションの上がった睦月に雪玉をぶつけられたこともあるし、いい印象を持ちにくいのも無理はないが…。



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意地っ張りなところ (3)


「お前が、男のが好きなんだとしても、他にもっといいヤツとかいそうだけど…」
「や、違うだって。睦月がいいんだって。何で分かんないかなぁ、潤くんは」
「分かんねぇし、分かりたくねぇよ」

 そんな惚気話、聞きたくもない、とでも思ったのか、潤はつれなくそう言って、上がっていった。



 亮が部屋に戻ると、睦月はベッドの上で丸くなっていた。
 睦月は早寝の子だけれど、10時くらいまでは普通に起きていられるのに、今日はまだ9時で、いくら何でも寝るには早すぎる。昨日遅くまで起きていたわけでもないし、昼間だって、眠いとか一言も言っていなかったのに。

「睦月、さっき転んだの、大丈夫? 湿布とか貼る?」
「だから、大丈夫て言ったじゃんっ。湿布貼るて……お尻に湿布て何? バッカじゃないの?」

 コロリと亮のほうに寝返りを打った睦月は、ひどく嫌そうに返事をした。
 確かにお尻に湿布は間抜けだけれど、痛いなら貼っておいたほうがいいのに。

「…睦月、お尻痛いんでしょ?」
「痛くない」
「じゃあ何でもう寝てんの?」
「眠いから」

 睦月のベッドに腰を下ろした亮は、まだ半乾きの睦月の髪をタオルで拭いてやる。
 絶対にまだ眠くなんかないはずなのに、睦月はそう即答した。本当はお尻だって痛いはずで、要は座っていると痛いから横になっているのに、それを素直に言い出せないのだ。

「頭乾かさないで寝るの? 風邪引くよ?」
「引かないもん」

 睦月はプクッと頬を膨らませて、亮とは反対側を向いた。

(ホント、素直じゃないんだから…)

 睦月は基本的に自分の気持ちに素直だけれど、どうでもいい、すごくつまんないところで意地を張る子だから。
 こういうときは、何を言ってもダメ。でも、かといって無視しちゃうと、かえってダメなの。構ってほしいんだけれど、それをうまく言えないだけだから。



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意地っ張りなところ (4)


「じゃあ、もう知らないからね?」

 分かっていて、亮は突き放すようにそう言うと、ベッドのそばを離れる。
 すると、睦月がモゾリと動く気配がしたので、気付かれないようにそちらを窺ったら、再び寝返りを打った睦月が、ふとんの隙間から亮のほうを見ていた。
 本当に、素直じゃない。

「睦月……むっちゃん、頭乾かしてあげるから、起きてるなら、こっちおいで?」

 亮は、睦月に背を向けたまま、ドライヤーの用意をしながら声を掛ける。
 睦月は大体いつも、風呂場にある共同のドライヤーで適当に乾かすか、何もしないで部屋まで戻るかのどちらかなんだけれど、今日はさっさと部屋に来たかったのか、全然乾かしていない。
 夏ならそれでもいいけれど、今の時期は、さすがにこのままでは風邪を引いてしまう。

「むっちゃ……っと、」
「頭」
「ぅん?」

 これでダメなら、今日のところは亮も諦めるしかないかなぁ、と思っていたら、ベッドを降りた睦月が亮の背中に張り付いてきた。

「…頭、乾かす」
「はいはい」

 亮の背中にくっ付いたまま、睦月が言葉少なにそう言うので、亮は素直に言うことを聞いて、ドライヤーのスイッチを入れた。

「睦月、そっちいたんじゃ、乾かせないよ」
「…ん」

 亮が言うと、睦月は名残惜しそうにその背中から離れて、亮の前に回った。
 …まったく、甘え下手なんだか、甘え上手なんだか。

「熱くない?」
「熱くない」
「お尻は?」
「…………」

 亮の前にちょこんと座って、大人しく髪を乾かされている睦月は、すごくかわいい。
 でも、座り方なんて、いつもすごくだらしないのに、今日は正座を崩したみたいな座り方をしていて、やっぱり痛いんだろうなぁ、と思う。だって、『熱くない?』には答えたけれど、『お尻は?』には無言だし。



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意地っ張りなところ (5)


「むーっちゃん、痛くないの?」
「うっさいっ! 痛くないってば!」

 念のためもう1度声を掛けたら、振り返った睦月が、バシッと亮のももを叩いた。

「もぉ~大丈夫なんだからっ!」
「分かった分かった。むっちゃんは、転んでも泣かない強い子だねー。ホラ前向いて、乾かせない」
「むぅ~」

 亮に言われ、モゾモゾと座り方を模索しながら、睦月は仕方なく前を向いた。

(ホント、かわいいんだから)

 そんな睦月の様子に、亮は思わず口元を緩ませた。
 正面に鏡があるわけではないので、睦月が前を向いている限り、亮の表情は窺えないのだ(バレたら、ますます機嫌を損ねてしまう!)。 

「でも、睦月がケガしなくてよかった、て思ってんだよ? 俺は」
「…………」
「はい、終わりー」

 ドライヤーを止めた亮がポンと睦月の肩を叩くと、睦月は何か言いたげな表情で振り返った。

「ん? 何。お尻痛くないて信じてるよ? ぅん?」

 本当は信じていないけれど、そう言っておかないと。
 なのに睦月は、亮のその言葉こそ信じられないと思っているのか、ジッと亮のことを見ている。

「どうした?」
「………………亮、心配してくれて、ありがと。おやすみっ!」
「えっ」

 早口でそう捲し立てた睦月は、亮に驚く暇も与えず、サササーッとベッドに潜り込んだ。

「え…、睦月…?」

 呆然となりながら、亮がベッドの膨らみを見つめても、今度こそ睦月は少しも動かない。

(今、『心配してくれて、ありがと』て言ったよね…?)

 睦月なりに、意地を張り過ぎたと思うところが、あったのだろう。
 でも、今さら素直になる方法も思い浮かばなくて、こんな感じになってしまってのだろう。

(ホーント、かわいいんだから)

 何がいいわけ? なんて言った潤に、教えてやりたい。
 亮の恋人は、こんなにかわいいんだって。

 でもそれは俺だけが知ってればいいかな、と思いながら、亮は睦月に「おやすみ」と声を掛け、部屋の電気を消した。



*end*



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小さいのに大きいところ (1)


 亮は今、非常に憂鬱な気持ちに襲われていた。

 事の発端は、亮がある女の子から告白されたことに遡る。
 彼女の名前は芽衣(メイ)。バイト仲間やらその友人やらが集まった飲み会で知り合った子だ。

 知り合ったと言っても、10数人が集まった飲み会で、亮は芽衣とそんなに喋った覚えもなかったのだが、彼女のほうは亮に随分と好意を持ってくれていたらしく、数日後、男友だちの斗真にメールで呼ばれて行った先に芽衣がいて、いきなり告白されてしまった。
 あまりに突然のことに亮は面食らったが、今付き合っている人がいるから、と断った。

 そこまではよかった。
 実際に亮は睦月と付き合っていて、彼と別れてまで芽衣と付き合う気はないのだから、たとえ芽衣を傷付けてしまうとしても、断るしかなかったし、その理由なら普通は納得するものだ。

 しかし、彼女は違った。
 どうやら芽衣は人並み以上のプライドを持ち合わせている女の子だったようで、まさか自分の告白が断られるなどゆめゆめ思っていなかったのか、しつこく食い下がって来た。
 そう言われても、付き合えないものは付き合えないのだから(今付き合っている人と別れて! とまで言われた…)、亮も何度も丁寧に断って、その場はどうにか収まったのだ――――が。

 事態はそれだけでは終わらなかった。
 亮的に『ないなぁ…』と思う女の子と久々に出くわして、若干テンション下がり気味だったところに、例の男友だちである斗真から、唖然とするような内容のメールが来たのだ。

『亮、芽衣のこと捨てたんだって? 何かめっちゃ噂になってるけど』

 その文面に、亮は思わず「はぁ~~~???」と声を上げてしまったが、テレビを見ながらウトウトしていた睦月が、眠そうにしながらも、訝しむように亮を見たので、慌てて口を押さえた。
 亮が謝ると、睦月は再び夢の世界へと舞い戻って行ったので、亮はすぐに、折り返し斗真に電話をした(廊下のほうが、いろいろな人に話を聞かれる可能性が高いので)。

 斗真の聞いた話によると、亮が芽衣に告白をして付き合い始めたのに、すぐに彼女を捨ててしまった、というのだった。
 亮が、「んなわけねぇじゃんっ」と突っ込めば、斗真も、「だよなぁ」とその噂話を本気にしていない口ぶりだった。

『だって俺が、芽衣に言われて亮のこと呼んだのに、何で亮が告ったことになってんだ? て思って。でも何か、亮が芽衣のこと捨てたことになってんだけど』



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小さいのに大きいところ (2)


 亮は芽衣から告白されたが、付き合っている人がいるからと断ったのに、それがどういうわけか、亮が芽衣に告白したにもかかわらず、すぐに彼女を捨てた、という話にすり替わっているようだ。
 悪事千里を走るというが、実際にそんな悪事を働いていなくても、よからぬ噂というのは、あっという間に広まるらしい。

 もちろん噂の根源は芽衣以外にいないわけで、気持ちだけでなく、プライドまでも傷付けられてしまった腹いせに、そんな話を吹聴して回っているに違いない。
 芽衣としても、自分がフラれたなんて事実、受け入れ難いし、人に知られたくもないのだろう。

 とりあえず斗真には、その噂はデマだと説明して、亮は電話を切った。
 気分は最悪だが、どうする術もない。
 一体誰がその話を知っているのか分からないし、分かったところで、亮がその連中に電話なりメールなりしても、かえって怪しいだけだ。ましてや、芽衣には会いたくもない。
 斗真は、もしその話を聞いたら否定しておいてくれると言ったし、それで十分だ。人の噂も七十五日、しばらくの間、耐えていればいい。



*****

「…睦月、どこ行くの?」

 睦月的には、もうお風呂行って寝ようかな、という時間。しかも、この寒い時期は極力外に出たがらないというのに、なぜか睦月が外出用のコートを着始めている。
 別に睦月の行動をいちいちチェックする気はないのだが、あまりも珍しいことだったので、亮はつい尋ねてしまった。

「お風呂」
「えっ…」

 睦月に、当たり前のようにそう答えられて、亮は思わず言葉を失った。
 だってその格好…。
 けれど、コートの下に着ているのは、とてもお出掛け用とは言い難いジャージだし、手にはパンツとタオルを持っているのだから、本当にその格好で風呂に行く気なのだろう。
 そういえば以前、寒さのあまり、ブランケットを頭から被って風呂に行ったこともある子だった…。

「じゃ、行ってくんね」
「行ってらっしゃーい…」

 亮の心がどんなに凹んでいても、世界は平和だ。



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小さいのに大きいところ (3)


 それから亮は、おもしろくもないテレビを見たり、マンガを読んだりしていたが、ふと、睦月が風呂に行ってから随分時間が経っていることに気が付いた。
 もともと睦月は長風呂でなく、時々ビックリするくらい早く戻って来ることがあるくらいなのに、今日は何だか遅い。もしかして、和衣に止められたのだろうか。
 和衣は、睦月の小さなお母さんみたいで、全然湯船に浸かろうとしない睦月を引き止めては、ちゃんと温まるように言っているのだ。

「…にしたって、遅すぎね?」

 まさか、風呂で逆上せて倒れてしまったとか?
 湯船に浸かりながら睡魔に襲われ、溺れ掛けたことのある睦月なら、あり得ない話ではない。倒れないまでも、しょっちゅう逆上せ掛けているし。

「…………」

 気になって、亮は部屋を出る。
 過保護と言われようと、そのくらい手の掛かる……いや、世話を焼きたくなる子なのだ。

「あ、睦月………………え?」

 亮が部屋を出たら、ちょうどそこで睦月と出くわした。
 しかし隣にいるのは和衣ではなく翔真で、しかも、風呂からでなく集合玄関のほうから来た感じがする…。

「え、亮、どうしたの?」
「どうした、ていうか…」

 睦月が遅いから、様子を見に行こうと思ったんだよ、とは言っていいものかどうか、ちょっと悩んで亮が口籠っていたら、翔真が何やら意味ありげな視線を投げ掛けて来た。
 とりあえずこの場は、何も聞かずに睦月を受け入れろということらしい。

「じゃ、おやすみ、むっちゃん」
「…ん」

 睦月にバイバイして、翔真は自分の部屋に戻っていった。
 果たして睦月に、どこに行っていたのか尋ねていいものだろうか、そう思っている亮の横をすり抜けて、睦月は部屋に入る。

「…睦月、」
「ぅん?」
「………………、…もっかいお風呂行ってくる?」
「え?」
「冷えてんじゃん、体。あったまらないと、風邪引くよ?」
「…………」

 睦月が風呂に行ってきたのではないことは分かったけれど、最初の睦月の言葉を信じて、亮はそう声を掛ける。
 実際、触れた睦月の手も頬も冷たくなっていて、抱き締めなくたって、体も冷えているのは分かり切ったことだった。



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