アスファルトで溺死。
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- 2008.06.17(火)
- アスファルトで溺死。 INDEX
- 2008.06.17(火)
- 1. 一体全体何が起こったっていうんだ! (月も青いっていうのに。)
- 2008.06.18(水)
- 2. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (前編)
- 2008.06.19(木)
- 2. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (後編)
- 2008.06.20(金)
- 3. エスケープ (前編)
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アスファルトで溺死。 INDEX
2008.06.17 Tue
↑OLD ↓NEW
01. 一体全体何が起こったっていうんだ! (月も青いっていうのに。)
02. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (前編) (後編)
03. エスケープ (前編) (後編)
04. お前の夜は何処にある (前編) (後編)
05. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (前編) (中編) 1 2 (後編)
06. 君は別腹 (前編) (後編)
07. 空気と言うには濃いけれど、 (前編) (中編) (後編)
08. 結局、ただの、(あるものねだりだ。) (前編) (中編) (後編)
09. 込み入った事情 (前編) (中編) (後編)
10. 33%の憂鬱 (前編) (後編)
11. 知らないでくれ (前編) (後編)
12. 過ぎた事はなくならないのに。 (前編) (後編)
13. 絶望する資格など持ちあわせていない (前編) (後編)
14. そして見上げた空の色は、 (前編) (中編) (後編)
15. たったそれだけの重さ (押しつぶされてしまう) (前編) (中編) (後編)
16. チェリー。僕が赤い三輪車で迎えに行くよ。 (前編) (後編)
17. 続きからもう一度やり直し (前編) (中編) 1 (中編) 2 (後編)
18. 典型的な、例の病ではございませんか (前編) (中編) (後編)
19. 特別に、あなただけに、こんな気持ちになるんだよ (前編) (後編)
20. 何が最善策なんて世界中の誰にもわかるまい (前編) (中編) (後編)
21. 虹色の空のなかに、泣きたくなるほどの希望を見た気がして、
(前編) (中編) (後編)
22. 塗り潰してしまって。 (前編) (中編) (後編)
23. ねぇ。ちゃんと聞いて! 俺の話を! (Please hear me!) (前編) (後編)
24. No hug No kiss No loving
25. 灰色の空。君のいない世界。
26. ひとさじの愛をください (前編) (後編)
27. 不器用でやさしい人だからきっと (前編) (中編) (後編)
28. ベクトルの先。 (前編) (中編) (後編)
29. 星が降る限り月が輝く限りそれは変わらないもの
30. 曲がり角で明け星ひとつ (前編) (中編) (後編)
31. ミルクティーは薔薇色の夢 (前編) (後編)
*extra chapte*
■(無題) *会話SS
tittle:少年の唄。さま(tittle,01,02,03,07,08,10,12,14,16,21,22,23,25,28,31), alkalismさま(04,26), ララドールさま(05), 1204さま(06,20,24,29 as far as I knowさま(09,11,13,17,18,19,27), lisさま(15), 夜風にまたがるニルバーナさま (30)
01. 一体全体何が起こったっていうんだ! (月も青いっていうのに。)
02. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (前編) (後編)
03. エスケープ (前編) (後編)
04. お前の夜は何処にある (前編) (後編)
05. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (前編) (中編) 1 2 (後編)
06. 君は別腹 (前編) (後編)
07. 空気と言うには濃いけれど、 (前編) (中編) (後編)
08. 結局、ただの、(あるものねだりだ。) (前編) (中編) (後編)
09. 込み入った事情 (前編) (中編) (後編)
10. 33%の憂鬱 (前編) (後編)
11. 知らないでくれ (前編) (後編)
12. 過ぎた事はなくならないのに。 (前編) (後編)
13. 絶望する資格など持ちあわせていない (前編) (後編)
14. そして見上げた空の色は、 (前編) (中編) (後編)
15. たったそれだけの重さ (押しつぶされてしまう) (前編) (中編) (後編)
16. チェリー。僕が赤い三輪車で迎えに行くよ。 (前編) (後編)
17. 続きからもう一度やり直し (前編) (中編) 1 (中編) 2 (後編)
18. 典型的な、例の病ではございませんか (前編) (中編) (後編)
19. 特別に、あなただけに、こんな気持ちになるんだよ (前編) (後編)
20. 何が最善策なんて世界中の誰にもわかるまい (前編) (中編) (後編)
21. 虹色の空のなかに、泣きたくなるほどの希望を見た気がして、
(前編) (中編) (後編)
22. 塗り潰してしまって。 (前編) (中編) (後編)
23. ねぇ。ちゃんと聞いて! 俺の話を! (Please hear me!) (前編) (後編)
24. No hug No kiss No loving
25. 灰色の空。君のいない世界。
26. ひとさじの愛をください (前編) (後編)
27. 不器用でやさしい人だからきっと (前編) (中編) (後編)
28. ベクトルの先。 (前編) (中編) (後編)
29. 星が降る限り月が輝く限りそれは変わらないもの
30. 曲がり角で明け星ひとつ (前編) (中編) (後編)
31. ミルクティーは薔薇色の夢 (前編) (後編)
*extra chapte*
■(無題) *会話SS
tittle:少年の唄。さま(tittle,01,02,03,07,08,10,12,14,16,21,22,23,25,28,31), alkalismさま(04,26), ララドールさま(05), 1204さま(06,20,24,29 as far as I knowさま(09,11,13,17,18,19,27), lisさま(15), 夜風にまたがるニルバーナさま (30)
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カテゴリー:アスファルトで溺死。
1. 一体全体何が起こったっていうんだ! (月も青いっていうのに。)
2008.06.17 Tue
性懲りもなく新連載です。しかもめっちゃ長いんで、休み休み行きたいと思います。よろしくお付き合いくださいませ。
……何でだ。
何の仕打ちなんだ。
というか、誰だ、コイツ。
*****
人が疲れて仕事から帰ってくれば、なぜか人んちの玄関先に転がってる金髪。女みたいなカッコしてるけど、よく見たら男(顔は結構女顔だけど)。
おいおい生き倒れか? だったらよそでやってくれよ、って思って覗き込めば、…………酒臭い。
酔っ払いか。てか、何でウチの前なんだよ。ドア、開けられねーじゃん。
「なぁ、おい」
肩を揺すれば、「ん゛ー…」とか、変な声を上げて、鬱陶しそうに俺の手を払おうとする。
鬱陶しいのは、こっちだっつーの。
「おい、起きろよ。おいって」
もしタチの悪い酔っ払いで、へたに絡まれたら嫌だから、むやみに足蹴には出来ないけど…。
「なぁ、頼むから、起きて? ドア開けられねぇじゃん、なぁ」
「んんー……あ゛ー帰って来たぁ」
何度か肩を揺さぶってると、そいつは子供みたいに目をゴシゴシ擦りながら、やっと目を開けた。
「なぁ、何でぇ?」
「は? え?」
何が『何で?』
というか、それって、完璧俺のセリフだよな?
『何で』こんな酔っ払って寝てるの?
『何で』こんなとこにいるの?
『何で』俺のこと待ってたみたいな言い方すんの?
「あ…あの…」
「何でぇ? 何で急に出てけなんて言うの?」
「はっ!? 出てけって?」
いやいやいや、そんなの言ったことないし!
というか、初対面ですよね!? ボクたち!
「そんなん急すぎるじゃん、俺の何が悪かったの…?」
「いや、あのな、俺は……」
完全に誰かに間違われてる…!!
「ちょっ…すいません、あの、誰かと間違え……」
「お願い、捨てないでよぉ…」
「え? わっ!? ちょっ」
急に泣き声になった酔っ払いは、俺を誰と勘違いしてるのか、いきなり俺にキュウッと抱き付いてきた。
ちょっ…何なんだ、この展開!
瀬戸貴久、人生最大のピンチ到来!!
「なぁ、ちょっ…頼むから、ホント……って、寝てるし!!」
…………何が悲しくて、疲れて帰って来て、ノリ突っ込みしなきゃなんないんだ…。
それにしてもこの酔っ払い、どうしてくれよう…。鍛えてるのか、意外と力が強くて、腕を離そうにも離せない。
「………………」
仕方なく俺は、酔っ払いにしがみ付かれたまま、何とか玄関を開けて中に入る。
こんな酔っ払いを家に入れたくはないけど、このまま外で騒がれたんじゃ、近所迷惑も甚だしい。
後で隣の怖いおばちゃんに、何言われるか分からないからな。
久々にゆっくり出来るはずだった週末。
一体全体、何だってこんなことになったんだ!?
……何でだ。
何の仕打ちなんだ。
というか、誰だ、コイツ。
*****
人が疲れて仕事から帰ってくれば、なぜか人んちの玄関先に転がってる金髪。女みたいなカッコしてるけど、よく見たら男(顔は結構女顔だけど)。
おいおい生き倒れか? だったらよそでやってくれよ、って思って覗き込めば、…………酒臭い。
酔っ払いか。てか、何でウチの前なんだよ。ドア、開けられねーじゃん。
「なぁ、おい」
肩を揺すれば、「ん゛ー…」とか、変な声を上げて、鬱陶しそうに俺の手を払おうとする。
鬱陶しいのは、こっちだっつーの。
「おい、起きろよ。おいって」
もしタチの悪い酔っ払いで、へたに絡まれたら嫌だから、むやみに足蹴には出来ないけど…。
「なぁ、頼むから、起きて? ドア開けられねぇじゃん、なぁ」
「んんー……あ゛ー帰って来たぁ」
何度か肩を揺さぶってると、そいつは子供みたいに目をゴシゴシ擦りながら、やっと目を開けた。
「なぁ、何でぇ?」
「は? え?」
何が『何で?』
というか、それって、完璧俺のセリフだよな?
『何で』こんな酔っ払って寝てるの?
『何で』こんなとこにいるの?
『何で』俺のこと待ってたみたいな言い方すんの?
「あ…あの…」
「何でぇ? 何で急に出てけなんて言うの?」
「はっ!? 出てけって?」
いやいやいや、そんなの言ったことないし!
というか、初対面ですよね!? ボクたち!
「そんなん急すぎるじゃん、俺の何が悪かったの…?」
「いや、あのな、俺は……」
完全に誰かに間違われてる…!!
「ちょっ…すいません、あの、誰かと間違え……」
「お願い、捨てないでよぉ…」
「え? わっ!? ちょっ」
急に泣き声になった酔っ払いは、俺を誰と勘違いしてるのか、いきなり俺にキュウッと抱き付いてきた。
ちょっ…何なんだ、この展開!
瀬戸貴久、人生最大のピンチ到来!!
「なぁ、ちょっ…頼むから、ホント……って、寝てるし!!」
…………何が悲しくて、疲れて帰って来て、ノリ突っ込みしなきゃなんないんだ…。
それにしてもこの酔っ払い、どうしてくれよう…。鍛えてるのか、意外と力が強くて、腕を離そうにも離せない。
「………………」
仕方なく俺は、酔っ払いにしがみ付かれたまま、何とか玄関を開けて中に入る。
こんな酔っ払いを家に入れたくはないけど、このまま外で騒がれたんじゃ、近所迷惑も甚だしい。
後で隣の怖いおばちゃんに、何言われるか分からないからな。
久々にゆっくり出来るはずだった週末。
一体全体、何だってこんなことになったんだ!?
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カテゴリー:アスファルトで溺死。
テーマ:自作BL小説 ジャンル:小説・文学
2. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (前編)
2008.06.18 Wed
朝起きたら、結局全部が夢だった。
――――なんてこと、やっぱりマンガの中のことしかなくて。
…………いた。
しっかりいた。
ベッドの中で、俺の隣で、気持ち良さそうにスヤスヤしてた。…………腕はもう解けてたけど。
「はぁ…」
もういい加減、起きるかな?
「なぁ、おい、起きろよ」
「ぅんー…」
ユサユサ体を揺さぶると、鈍いながらも反応が返って来る。しつこく繰り返してたら、思いっ切り眉間にしわを寄せて、俺に背を向けるようにして身を丸くした。
起こすなってことですかい。
あーもう、めんどくさっ!
起きないなら、起きるまで待つしかない。
しょうがないから先にベッドを抜け出し、昨日コイツにしがみ付かれてて入れなかった風呂に入ることにする。飯も食いたいし。
素性の分かんないヤツを家にあげてるわりに、冷静だな、俺。それとも、腹減りすぎててて、まともにものが考えられないようになってんのかな。
まぁいい。さっさと風呂を済ませる。
あー腹減った。アイツのせいで、昨日の夜、まともにメシ食えてないし。さっさとアイツ起こして出てってもらわないと、ゆっくり飯も食えない。
「なぁ、いい加減、起き……あ、」
起きてる。
むくってベッドの上に起き上がって、ぼーっとしてる。
「やっと起きたか」
「っ!?」
声を掛けたら、大げさなくらいビクッと肩を跳ね上げて、そいつは、バッと俺のほうを振り返った。何か動きが、敵に見つかった小動物のそれに似てる…。
「え? あ、え?? えっと、あれ? 誰? え? どこ、ここ」
見たことのない部屋で、見覚えのないヤツに声掛けられて、そいつはますます困惑した顔になる。この状況が、全然理解できないって顔。
ゆうべ、ベロベロに酔っ払ってたことも、俺にしがみ付いて離さなかったことも覚えてないんだろうな、どうせ。
――――なんてこと、やっぱりマンガの中のことしかなくて。
…………いた。
しっかりいた。
ベッドの中で、俺の隣で、気持ち良さそうにスヤスヤしてた。…………腕はもう解けてたけど。
「はぁ…」
もういい加減、起きるかな?
「なぁ、おい、起きろよ」
「ぅんー…」
ユサユサ体を揺さぶると、鈍いながらも反応が返って来る。しつこく繰り返してたら、思いっ切り眉間にしわを寄せて、俺に背を向けるようにして身を丸くした。
起こすなってことですかい。
あーもう、めんどくさっ!
起きないなら、起きるまで待つしかない。
しょうがないから先にベッドを抜け出し、昨日コイツにしがみ付かれてて入れなかった風呂に入ることにする。飯も食いたいし。
素性の分かんないヤツを家にあげてるわりに、冷静だな、俺。それとも、腹減りすぎててて、まともにものが考えられないようになってんのかな。
まぁいい。さっさと風呂を済ませる。
あー腹減った。アイツのせいで、昨日の夜、まともにメシ食えてないし。さっさとアイツ起こして出てってもらわないと、ゆっくり飯も食えない。
「なぁ、いい加減、起き……あ、」
起きてる。
むくってベッドの上に起き上がって、ぼーっとしてる。
「やっと起きたか」
「っ!?」
声を掛けたら、大げさなくらいビクッと肩を跳ね上げて、そいつは、バッと俺のほうを振り返った。何か動きが、敵に見つかった小動物のそれに似てる…。
「え? あ、え?? えっと、あれ? 誰? え? どこ、ここ」
見たことのない部屋で、見覚えのないヤツに声掛けられて、そいつはますます困惑した顔になる。この状況が、全然理解できないって顔。
ゆうべ、ベロベロに酔っ払ってたことも、俺にしがみ付いて離さなかったことも覚えてないんだろうな、どうせ。
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2. 動かない日々が安らぎだと思っていた。 (後編)
2008.06.19 Thu
「てか、何でアンタ、こんなとこにいるの?」
ジトッと、嫌な目つきで、不審そうに俺のことを見る。
でも言っとくけど、不審者は、お前のほうだからな。
「ここは俺んちだ」
「嘘だ!」
「嘘じゃねぇよ。昨日、俺んちの前で寝てただろ、お前。すっげぇ酔っ払ってて俺のこと離さなかったから、家にあげたの」
「はぁ!? 何で? 何で俺がアンタんちの前で寝てなきゃなんないの!?」
「そんなのこっちのセリフだ!」
ダメだ……コイツ、昨日のこと、きれいさっぱり忘れてやがる…。
「お前、どっかと部屋間違えてんじゃね?」
「間違え…」
「だってお前、昨日、何で出てけって言うんだー、とか、捨てないでー、とか言ってたぜ、俺に向かって。誰かと勘違いしてんだよ」
「ッ…!?」
俺が言うと、信じられない! って顔で、目を見開いた。
「え……じゃあ……だって、えっと……ここは、え? えっと、405……」
「305だけど」
「…………………………」
やっぱり間違えていた部屋番号、ヤツの言葉を遮るようにして俺が自分の部屋番号を言ったら、案の定、ヤツは口をあんぐりと開けたまま固まった。
「さんまる……ご」
「そう。階を1つ間違えてんじゃね?」
「あ…う゛……あぁ…」
見る見る間にそいつの顔が真っ赤になってく。
そりゃそうだよなぁ。酔っ払って別人の部屋の前で寝てた挙げ句に、『捨てないで』とかって女々しいこと、赤の他人に言ってんだし。
しかも男に抱き付いて離さなかったんだぜ?
あ、てことはコイツ、女に振られたのか。
出てけって言われたみたいだから、同棲してた彼女に追い出されたってこと? おいおい、女相手にあんなセリフ言うのか。情けな!
「で、どうする?」
「……へ…?」
「俺、これからメシ食うけど、一緒に食ってく?」
それともこの階上に住んでるらしい彼女んとこ行って、もっかいヨリ戻してくれって、頼みに行く? 素面で。
「え!? あ、ぅ……か、帰りま……ホントすいませ……」
「あ、」
「うわっ!?」
ドッターン!!
謝りながら慌ててベッドを下りようとしたそいつは、掛けてたシーツに足を絡ませて、そのままベッドの下に転がり落ちた。
顔面、ぶつけたんじゃね?
「イッター!!」
両手で顔を押さえながら、今どきのギャルみたいな、甲高い声を上げた。
やっぱ顔ぶつけたんだ。アホだな、コイツ。
「おい、だいじょぶか? ちょっと、落ち着いて…」
「ホントっ……ホントすいません! すいませんっ!!」
足に纏わり付いてるシーツを何とか解いて、立ち上がったそいつは、アホみたいに何度も頭を下げてから、ダッシュで玄関に向かっていった。
その行動に唖然としてた俺は、その後ろ姿を追い掛けることも出来ず、バタンとうるさく閉まるドアの音を聞いていた(その直前に、バンッって音がして、「イター!!」ってアイツの声がしたから、きっとドアにぶつかったんだろうことは、想像が付いたけれど)。
いつもと変わらない退屈な日常を、ほんの少しだけ賑やかにした男は、まるで嵐のように通り抜けていった。
ジトッと、嫌な目つきで、不審そうに俺のことを見る。
でも言っとくけど、不審者は、お前のほうだからな。
「ここは俺んちだ」
「嘘だ!」
「嘘じゃねぇよ。昨日、俺んちの前で寝てただろ、お前。すっげぇ酔っ払ってて俺のこと離さなかったから、家にあげたの」
「はぁ!? 何で? 何で俺がアンタんちの前で寝てなきゃなんないの!?」
「そんなのこっちのセリフだ!」
ダメだ……コイツ、昨日のこと、きれいさっぱり忘れてやがる…。
「お前、どっかと部屋間違えてんじゃね?」
「間違え…」
「だってお前、昨日、何で出てけって言うんだー、とか、捨てないでー、とか言ってたぜ、俺に向かって。誰かと勘違いしてんだよ」
「ッ…!?」
俺が言うと、信じられない! って顔で、目を見開いた。
「え……じゃあ……だって、えっと……ここは、え? えっと、405……」
「305だけど」
「…………………………」
やっぱり間違えていた部屋番号、ヤツの言葉を遮るようにして俺が自分の部屋番号を言ったら、案の定、ヤツは口をあんぐりと開けたまま固まった。
「さんまる……ご」
「そう。階を1つ間違えてんじゃね?」
「あ…う゛……あぁ…」
見る見る間にそいつの顔が真っ赤になってく。
そりゃそうだよなぁ。酔っ払って別人の部屋の前で寝てた挙げ句に、『捨てないで』とかって女々しいこと、赤の他人に言ってんだし。
しかも男に抱き付いて離さなかったんだぜ?
あ、てことはコイツ、女に振られたのか。
出てけって言われたみたいだから、同棲してた彼女に追い出されたってこと? おいおい、女相手にあんなセリフ言うのか。情けな!
「で、どうする?」
「……へ…?」
「俺、これからメシ食うけど、一緒に食ってく?」
それともこの階上に住んでるらしい彼女んとこ行って、もっかいヨリ戻してくれって、頼みに行く? 素面で。
「え!? あ、ぅ……か、帰りま……ホントすいませ……」
「あ、」
「うわっ!?」
ドッターン!!
謝りながら慌ててベッドを下りようとしたそいつは、掛けてたシーツに足を絡ませて、そのままベッドの下に転がり落ちた。
顔面、ぶつけたんじゃね?
「イッター!!」
両手で顔を押さえながら、今どきのギャルみたいな、甲高い声を上げた。
やっぱ顔ぶつけたんだ。アホだな、コイツ。
「おい、だいじょぶか? ちょっと、落ち着いて…」
「ホントっ……ホントすいません! すいませんっ!!」
足に纏わり付いてるシーツを何とか解いて、立ち上がったそいつは、アホみたいに何度も頭を下げてから、ダッシュで玄関に向かっていった。
その行動に唖然としてた俺は、その後ろ姿を追い掛けることも出来ず、バタンとうるさく閉まるドアの音を聞いていた(その直前に、バンッって音がして、「イター!!」ってアイツの声がしたから、きっとドアにぶつかったんだろうことは、想像が付いたけれど)。
いつもと変わらない退屈な日常を、ほんの少しだけ賑やかにした男は、まるで嵐のように通り抜けていった。
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3. エスケープ (前編)
2008.06.20 Fri
あの、マンガのような、陳腐な映画のような出来事から1週間。
あの金髪男に出くわすこともなく、階上に住んでいるらしいそいつの彼女を知る由もなく、穏やかに日々は過ぎていって。
まぁ、すべてが夢だったとは言わないけれど、徐々に記憶の中から薄れかけていった、その出会い。
―――――なのに。
*****
メシも食い終わって、天気もいいしどっか出掛けようか、あ、溜まってた洗濯モンも片付けないとなぁ、なんて思ってたら、インターフォンの鳴る音。
こんな時間に誰だよとか思いながら来客を確認したら、見覚えのある……というか、忘れていてもすぐに思い出してしまう、金髪頭。
あのときの男だ。
留守かなぁ……みたいな感じで、キョロキョロとドア越しに様子を窺ってる。
こないだと違って、酔っ払ってはいないみたいだけど、何かいっぱい荷物を抱えてる。
少しだけ迷ったけど、ドアを開けてやった(居留守を使っても、またやって来そうな気がしたし)。
「あ、おはようございまーす」
ドアが開くと、そいつはペコリと、お行儀よく90度に頭を下げた。
「…………ここ、3階だけど、分かってる?」
「あはは、分かってますって、瀬戸さん!」
「え、」
「あれ? 瀬戸さん、じゃないの? 表札にそう出てたから」
「…あぁ」
少しキョトンとしたら、そいつは慌ててそう付け加えた。
「ボク、倉橋哲也っていいます。よろしく」
「え? あ、はぁ、よろしく…??」
はぁ…倉橋くんて言うのね。
よく見たら、俺と年近いかな?
酒飲んで酔っ払ってたってことは、もう20歳は過ぎてるだろうに、そんな金髪頭で仕事に差し支えないのかな? 格好も奇抜なほうだし…。
ってか、何でよろしくされないといけないんだろ。普通、あんな後だったら、恥ずかしくて、絶対にもう2度と顔も会わせたくないって思うだろうに。
あの金髪男に出くわすこともなく、階上に住んでいるらしいそいつの彼女を知る由もなく、穏やかに日々は過ぎていって。
まぁ、すべてが夢だったとは言わないけれど、徐々に記憶の中から薄れかけていった、その出会い。
―――――なのに。
*****
メシも食い終わって、天気もいいしどっか出掛けようか、あ、溜まってた洗濯モンも片付けないとなぁ、なんて思ってたら、インターフォンの鳴る音。
こんな時間に誰だよとか思いながら来客を確認したら、見覚えのある……というか、忘れていてもすぐに思い出してしまう、金髪頭。
あのときの男だ。
留守かなぁ……みたいな感じで、キョロキョロとドア越しに様子を窺ってる。
こないだと違って、酔っ払ってはいないみたいだけど、何かいっぱい荷物を抱えてる。
少しだけ迷ったけど、ドアを開けてやった(居留守を使っても、またやって来そうな気がしたし)。
「あ、おはようございまーす」
ドアが開くと、そいつはペコリと、お行儀よく90度に頭を下げた。
「…………ここ、3階だけど、分かってる?」
「あはは、分かってますって、瀬戸さん!」
「え、」
「あれ? 瀬戸さん、じゃないの? 表札にそう出てたから」
「…あぁ」
少しキョトンとしたら、そいつは慌ててそう付け加えた。
「ボク、倉橋哲也っていいます。よろしく」
「え? あ、はぁ、よろしく…??」
はぁ…倉橋くんて言うのね。
よく見たら、俺と年近いかな?
酒飲んで酔っ払ってたってことは、もう20歳は過ぎてるだろうに、そんな金髪頭で仕事に差し支えないのかな? 格好も奇抜なほうだし…。
ってか、何でよろしくされないといけないんだろ。普通、あんな後だったら、恥ずかしくて、絶対にもう2度と顔も会わせたくないって思うだろうに。
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