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28. ベクトルの先。 (後編)
2008.09.08 Mon
「貴久っ!!」
止めたくなかったけれど、名前を呼ばれて、足が止まった。
別に何かを期待してるわけじゃない。
もう戻れないし、もう遅すぎる。
「貴久、俺…、…………俺ら、もうダメのかな?」
「…………ダメって、何が?」
振り返りもせずに。
あぁ、今君はどんな顔をしてるの?
また泣きそうな顔、してるのかな。
「たか…ひさ…」
「泣くなよ」
「泣いてないっ…」
どこが。
めっちゃ泣き声じゃん。
そんな多くないけど、周りに人いるのに。
「何で泣くんだよ」
「泣いてない言ってんだろ!」
振り返れば、…………やっぱり目を潤ませてる、哲也。
「泣いてんじゃん。いい年して何泣いてんだよ、こんなトコで」
「…るさい!」
とりあえずここじゃ、人目に付き過ぎる。
哲也を引っ張って、歩道の端っこに。もうシャッターの下りてる店の前。
「何で泣くんだよ」
「……泣いてな…」
「どこが。なぁ、何で泣いてんの、哲也」
「知らん…!」
そう言って哲也は俯いてしまって。
俺はただ、その金髪のつむじを見つめる。
「…………哲也、」
「俺、な……ホント、幸せだよ?」
「え?」
「仕事もうまく行ってるし、俺の服いいって言ってくれる人もいるし、帰るトコ……あるし、…………『好き』って、言ってくれる、し…」
それは、最後まで俺の言わなかった言葉。
俺と哲也の関係を壊したくないと思って、言えなかった、けれど結局は俺たちを別つことになった、一言。
それを今、哲也に言ってやれるのは、もう俺じゃなくて。
「だから俺、今幸せなの。幸せなはずなの、そうでしょ?」
「そうだと、思うよ?」
「でもさ、ダメなんだ、俺…」
「何が?」
「………………」
けれど哲也は、項垂れた頭を左右に振るだけ。
「ダメなの」
「何が。何がダメなの、哲也」
「ダメなんだ、ここが…」
そう言って、顔を上げた哲也は、握った拳で自分の胸を叩いた。
「ここが……何か、ポッカリ空いてんの。こんなに幸せなのに、でも満たされてないなんて…………ダメだよね」
「ダメかも、な」
「はっきり言うなよ、アホぉ…」
「自分で言ったんだろ。アホはお前だ」
「貴久、意地悪だ…」
だって。
そんな、今さら優しくだなんて、そんなの。
「…………優しくしたら、ツラくなるだろ?」
お前も、俺も。
「今だって、ツライよ」
「そんなの……言うなよ」
「……ゴメン。だって…」
きっとお互い、待っているのは…………待ち望んでいるのは、きっかけ。
この閉塞的な空間を、時間を打破するような。
きっと、お互いが掛けたい言葉は、同じはずだけれど。
止めたくなかったけれど、名前を呼ばれて、足が止まった。
別に何かを期待してるわけじゃない。
もう戻れないし、もう遅すぎる。
「貴久、俺…、…………俺ら、もうダメのかな?」
「…………ダメって、何が?」
振り返りもせずに。
あぁ、今君はどんな顔をしてるの?
また泣きそうな顔、してるのかな。
「たか…ひさ…」
「泣くなよ」
「泣いてないっ…」
どこが。
めっちゃ泣き声じゃん。
そんな多くないけど、周りに人いるのに。
「何で泣くんだよ」
「泣いてない言ってんだろ!」
振り返れば、…………やっぱり目を潤ませてる、哲也。
「泣いてんじゃん。いい年して何泣いてんだよ、こんなトコで」
「…るさい!」
とりあえずここじゃ、人目に付き過ぎる。
哲也を引っ張って、歩道の端っこに。もうシャッターの下りてる店の前。
「何で泣くんだよ」
「……泣いてな…」
「どこが。なぁ、何で泣いてんの、哲也」
「知らん…!」
そう言って哲也は俯いてしまって。
俺はただ、その金髪のつむじを見つめる。
「…………哲也、」
「俺、な……ホント、幸せだよ?」
「え?」
「仕事もうまく行ってるし、俺の服いいって言ってくれる人もいるし、帰るトコ……あるし、…………『好き』って、言ってくれる、し…」
それは、最後まで俺の言わなかった言葉。
俺と哲也の関係を壊したくないと思って、言えなかった、けれど結局は俺たちを別つことになった、一言。
それを今、哲也に言ってやれるのは、もう俺じゃなくて。
「だから俺、今幸せなの。幸せなはずなの、そうでしょ?」
「そうだと、思うよ?」
「でもさ、ダメなんだ、俺…」
「何が?」
「………………」
けれど哲也は、項垂れた頭を左右に振るだけ。
「ダメなの」
「何が。何がダメなの、哲也」
「ダメなんだ、ここが…」
そう言って、顔を上げた哲也は、握った拳で自分の胸を叩いた。
「ここが……何か、ポッカリ空いてんの。こんなに幸せなのに、でも満たされてないなんて…………ダメだよね」
「ダメかも、な」
「はっきり言うなよ、アホぉ…」
「自分で言ったんだろ。アホはお前だ」
「貴久、意地悪だ…」
だって。
そんな、今さら優しくだなんて、そんなの。
「…………優しくしたら、ツラくなるだろ?」
お前も、俺も。
「今だって、ツライよ」
「そんなの……言うなよ」
「……ゴメン。だって…」
きっとお互い、待っているのは…………待ち望んでいるのは、きっかけ。
この閉塞的な空間を、時間を打破するような。
きっと、お互いが掛けたい言葉は、同じはずだけれど。
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カテゴリー:アスファルトで溺死。
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COMMENT-FORM
柚子季@携帯 ⇒
はわわぁ~(;´Д`)
毎朝の悶えタイム、本日も堪能させて頂きました~~!
んもぅ、哲ちゃんも貴久も、素直になっチャイナ(≧ω≦)
あぁ~ドキドキする~~♪
あ、携帯からでも読みやすいですよ?
長さも丁度です(´∀`)
何ならもっと長くても嬉しいだけですが(え?
明日も楽しみにしてます♪
毎朝の悶えタイム、本日も堪能させて頂きました~~!
んもぅ、哲ちゃんも貴久も、素直になっチャイナ(≧ω≦)
あぁ~ドキドキする~~♪
あ、携帯からでも読みやすいですよ?
長さも丁度です(´∀`)
何ならもっと長くても嬉しいだけですが(え?
明日も楽しみにしてます♪
りり ⇒ もどかしくて悶えます
貴久くん、言うのよ!今こそ…!!
あぁあぁもどかしい…でもこのもどかしさに悶える感じがたまらない…。
ホントに好きだといろいろ怖くて、言えなくなっちゃうんでしょうね。ましてや男の子同士だし。
うまくいってほしいけど、終わって欲しくない。
読者の心理はわがままですね。
あぁあぁもどかしい…でもこのもどかしさに悶える感じがたまらない…。
ホントに好きだといろいろ怖くて、言えなくなっちゃうんでしょうね。ましてや男の子同士だし。
うまくいってほしいけど、終わって欲しくない。
読者の心理はわがままですね。
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
萌えタイム…。
確かに、私も大好きサイト様を回ってる瞬間がは、萌えタイムですvvv
携帯からでも読みやすいですか?
私、普段携帯でサイトとか見ない人なんで、分量の加減がまったく分からなくて。。。
毎日コメント、ありがとうございます!!
確かに、私も大好きサイト様を回ってる瞬間がは、萌えタイムですvvv
携帯からでも読みやすいですか?
私、普段携帯でサイトとか見ない人なんで、分量の加減がまったく分からなくて。。。
毎日コメント、ありがとうございます!!
如月久美子 ⇒ >りりさん
その、もどかしくて悶える感じ、分かります~!
人様のお話を読んでて、いつもそう思ってはいたものの、まさか自分の書いてるのもそんなだとは、まったく思ってもみなかったのですが。
>うまくいってほしいけど、終わって欲しくない。
↑ この気持ち、分かりますよ~。
でももうすぐ終わっちゃいますが、よろしくお願いしますです。
コメントありがとうございます!
人様のお話を読んでて、いつもそう思ってはいたものの、まさか自分の書いてるのもそんなだとは、まったく思ってもみなかったのですが。
>うまくいってほしいけど、終わって欲しくない。
↑ この気持ち、分かりますよ~。
でももうすぐ終わっちゃいますが、よろしくお願いしますです。
コメントありがとうございます!