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恋は七転び八起き (90)
2015.12.06 Sun
「どう、て……俺、痴漢されてて、どうしようて思ってたら、槇村くんが声掛けてくれた」
「同じ電車に乗ってたんだ?」
「俺、全然気付かなかったけど、でも途中に槇村くんが乗る駅あるじゃんか、会社の近くの。そこで乗ったんじゃないかな?」
「それで、槇村さんちに行くことになったの? 央が痴漢に遭って、心配だから、家来る? て言ったってこと?」
痴漢に遭っている央に槇村が声を掛けて、その場はそれで収まったとしても、槇村の下車駅は央より先なので、痴漢がそれより先に電車を降りるか、駅員にでも突き出されるかしない限り、再び央が狙われる可能性はある。
槇村は央に顔も見たくないと言い放ったけれど、それでも、顔見知りの高校生が痴漢に遭っているのを放っておけずに声を掛けたのは、倫理観と併せて考えてもあり得ない話ではないが、そこから、槇村の家に行くという展開があまりに飛躍しすぎていて、よく分からない。行くべきところは、駅長室なのでは?
「多分、槇村くんは痴漢を捕まえようとしたんだと思うけど、それどころじゃなくて…」
「どういうこと?」
「…んとな、」
金曜日、帰りの電車で央は、男なのに痴漢に遭っていることや、それに対して何も出来ない情けなさや、周りに知られたら恥ずかしいという思いやらで、気持ちはグチャグチャになっていた。気付かなければ助けようもないが、誰も助けてくれないこともショックだった。
降りるべき駅はまだ先だったが、痴漢から逃げるため、一旦電車から降りようかとも考えたものの、付いて来られても怖いし、どうしていいか分からずにいたら、槇村が声を掛けてくれたのだ。それにより、痴漢男も行為がばれて離れていくと思ったのに、男は最後まで央から離れなかった――――最後まで。
槇村は痴漢を捕まえるつもりだったのかもしれないが、電車の中でズボンに精液を掛けられた恐怖に、央が思わず槇村にしがみ付いてしまったものだから、結局央を連れて電車を降りるだけに留まった。
槇村は、上着で央のズボンの汚れを隠してトイレまで連れて行き、自分のハンカチでそれを落としてくれたし、槇村の上着まで汚れたことも、気にするなと言ってくれた。顔も見たくないほど嫌いだと言ったくせに、泣きじゃくる央を慰めてくれたし、心配するなと言っても、心配するのをやめなかった。
その後、央は電車で帰ろうとしたけれど、恐怖に足が竦んで動けなくなって。そんな央を連れて改札を抜けた槇村は、タクシーという選択肢もくれたのだが、央はタクシー代など持ち合わせていなかったから、最終的に槇村の家に行くことになったというわけだ。
「ちっ…痴漢て……そんなん変態じゃん! 痴漢どころの騒ぎじゃないしっ!!」
「うん、だから圭ちゃんも気を付けてね?」
「気を付けるけど! 気を付けるけれどもっ! 他人事みたいに言わないでよ!」
ここまでの話を聞き終えた圭人が、堪りかねて声を荒げた。槇村の家に行くまでの経緯は分かったが、それまでに、そんな大変な出来事があったなんて知らなかった。
央が今もそのときの恐怖で怯えているのでないなら、それに越したことはないが、それにしたって平然としすぎだ。
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「同じ電車に乗ってたんだ?」
「俺、全然気付かなかったけど、でも途中に槇村くんが乗る駅あるじゃんか、会社の近くの。そこで乗ったんじゃないかな?」
「それで、槇村さんちに行くことになったの? 央が痴漢に遭って、心配だから、家来る? て言ったってこと?」
痴漢に遭っている央に槇村が声を掛けて、その場はそれで収まったとしても、槇村の下車駅は央より先なので、痴漢がそれより先に電車を降りるか、駅員にでも突き出されるかしない限り、再び央が狙われる可能性はある。
槇村は央に顔も見たくないと言い放ったけれど、それでも、顔見知りの高校生が痴漢に遭っているのを放っておけずに声を掛けたのは、倫理観と併せて考えてもあり得ない話ではないが、そこから、槇村の家に行くという展開があまりに飛躍しすぎていて、よく分からない。行くべきところは、駅長室なのでは?
「多分、槇村くんは痴漢を捕まえようとしたんだと思うけど、それどころじゃなくて…」
「どういうこと?」
「…んとな、」
金曜日、帰りの電車で央は、男なのに痴漢に遭っていることや、それに対して何も出来ない情けなさや、周りに知られたら恥ずかしいという思いやらで、気持ちはグチャグチャになっていた。気付かなければ助けようもないが、誰も助けてくれないこともショックだった。
降りるべき駅はまだ先だったが、痴漢から逃げるため、一旦電車から降りようかとも考えたものの、付いて来られても怖いし、どうしていいか分からずにいたら、槇村が声を掛けてくれたのだ。それにより、痴漢男も行為がばれて離れていくと思ったのに、男は最後まで央から離れなかった――――最後まで。
槇村は痴漢を捕まえるつもりだったのかもしれないが、電車の中でズボンに精液を掛けられた恐怖に、央が思わず槇村にしがみ付いてしまったものだから、結局央を連れて電車を降りるだけに留まった。
槇村は、上着で央のズボンの汚れを隠してトイレまで連れて行き、自分のハンカチでそれを落としてくれたし、槇村の上着まで汚れたことも、気にするなと言ってくれた。顔も見たくないほど嫌いだと言ったくせに、泣きじゃくる央を慰めてくれたし、心配するなと言っても、心配するのをやめなかった。
その後、央は電車で帰ろうとしたけれど、恐怖に足が竦んで動けなくなって。そんな央を連れて改札を抜けた槇村は、タクシーという選択肢もくれたのだが、央はタクシー代など持ち合わせていなかったから、最終的に槇村の家に行くことになったというわけだ。
「ちっ…痴漢て……そんなん変態じゃん! 痴漢どころの騒ぎじゃないしっ!!」
「うん、だから圭ちゃんも気を付けてね?」
「気を付けるけど! 気を付けるけれどもっ! 他人事みたいに言わないでよ!」
ここまでの話を聞き終えた圭人が、堪りかねて声を荒げた。槇村の家に行くまでの経緯は分かったが、それまでに、そんな大変な出来事があったなんて知らなかった。
央が今もそのときの恐怖で怯えているのでないなら、それに越したことはないが、それにしたって平然としすぎだ。
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