スポンサーサイト
--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。
カテゴリー:スポンサー広告
恋は七転び八起き (105)
2015.12.22 Tue
「…また、誰が被害に遭うか分からないし、学校に言っとくわ」
興奮冷めやらぬ逢坂の手を制して、板屋越が静かにそう告げた。別に、逢坂のように腹を立てていないわけではない。怒りの度が過ぎただけだ。逢坂と違って、それが外に出なくなるのが板屋越の特徴だ。
「そんで、央は大丈夫なのか? 電車乗んの、怖がってんだろ? 学校行くの…」
「朝、純平が一緒に来たって」
「あぁ、そんでアイツ、朝早かったのか」
痴漢に遭った後、央が電車に乗るのを怖がったため、その日は槇村の家に泊まることになったのだ。そうしたトラウマは、時間とともに和らぐこともあるが、金曜の夜にそんな恐ろしい目に遭って、いくらその後、好きな人と想いを1つに出来たとはいえ、月曜の朝には普通に学校に行けるものかと、逢坂は思ったようだが、そこには兄である純平のサポートがあったようだ。
「今日、学校で見た限りだと、痴漢に遭ったショックより、お前と付き合えることになった喜びのほうが、完全にデカかったからなぁ。お前にそんな話されなかったら、絶対気付かないな」
央の学校での様子を思い出し、板屋越が言った。
槇村の家から帰るときも、電車に乗るのに怖がる様子も見せなかったし、昨日掛かってきた電話でも元気そうだったから、痴漢のことはさほど引き擦っていないのだろうと思う反面、心配を掛けまいと、わざとそんなふうに振る舞っているのではないかとも思っていたのだが、板屋越の話を聞けば、元気なのは間違いなさそうだ。
「で、結局何で央と付き合うことになったんだよ。央が槇村んちに行ったのは分かったけど、そんな状況で、何で? 告白する雰囲気になるか?」
「え…」
長い話を終えて、槇村はすっかり話し尽くしたとばかり思っていたら、逢坂にそう言われて、はたと手を止めた。言われてみればそうだった。
いや、だが、その部分の話をするのは、非常に恥ずかしい。相手が央でなかったとしても、自分が誰かに告白したという事実を話すのだって恥ずかしいのに、どんな状況だったかを詳しく話すなんて。
「なぁなぁ、どうだったんだよ?」
「べっ別にいいだろ、そんなのどうだって」
「何でよ、その話聞くために来たのに、そこを省くなよぉ」
いやいや、槇村が央と付き合うようになったことを話すために集まっただけで、どのようにかを詳しく言うためではない。そもそも、もう30も半ばになろうかという男の告白時の状況を、同年代の男が聞いて何が楽しいというのだ。普通に気持ち悪いだけだろう。
「逢坂、そんくらいにしとけ」
いつもだったら逢坂に乗っかって、もしくは逢坂以上に食い付いてくる板屋越が、意外にも逢坂を止めてくれて、槇村は心底ホッとした――――のも束の間。
back next
興奮冷めやらぬ逢坂の手を制して、板屋越が静かにそう告げた。別に、逢坂のように腹を立てていないわけではない。怒りの度が過ぎただけだ。逢坂と違って、それが外に出なくなるのが板屋越の特徴だ。
「そんで、央は大丈夫なのか? 電車乗んの、怖がってんだろ? 学校行くの…」
「朝、純平が一緒に来たって」
「あぁ、そんでアイツ、朝早かったのか」
痴漢に遭った後、央が電車に乗るのを怖がったため、その日は槇村の家に泊まることになったのだ。そうしたトラウマは、時間とともに和らぐこともあるが、金曜の夜にそんな恐ろしい目に遭って、いくらその後、好きな人と想いを1つに出来たとはいえ、月曜の朝には普通に学校に行けるものかと、逢坂は思ったようだが、そこには兄である純平のサポートがあったようだ。
「今日、学校で見た限りだと、痴漢に遭ったショックより、お前と付き合えることになった喜びのほうが、完全にデカかったからなぁ。お前にそんな話されなかったら、絶対気付かないな」
央の学校での様子を思い出し、板屋越が言った。
槇村の家から帰るときも、電車に乗るのに怖がる様子も見せなかったし、昨日掛かってきた電話でも元気そうだったから、痴漢のことはさほど引き擦っていないのだろうと思う反面、心配を掛けまいと、わざとそんなふうに振る舞っているのではないかとも思っていたのだが、板屋越の話を聞けば、元気なのは間違いなさそうだ。
「で、結局何で央と付き合うことになったんだよ。央が槇村んちに行ったのは分かったけど、そんな状況で、何で? 告白する雰囲気になるか?」
「え…」
長い話を終えて、槇村はすっかり話し尽くしたとばかり思っていたら、逢坂にそう言われて、はたと手を止めた。言われてみればそうだった。
いや、だが、その部分の話をするのは、非常に恥ずかしい。相手が央でなかったとしても、自分が誰かに告白したという事実を話すのだって恥ずかしいのに、どんな状況だったかを詳しく話すなんて。
「なぁなぁ、どうだったんだよ?」
「べっ別にいいだろ、そんなのどうだって」
「何でよ、その話聞くために来たのに、そこを省くなよぉ」
いやいや、槇村が央と付き合うようになったことを話すために集まっただけで、どのようにかを詳しく言うためではない。そもそも、もう30も半ばになろうかという男の告白時の状況を、同年代の男が聞いて何が楽しいというのだ。普通に気持ち悪いだけだろう。
「逢坂、そんくらいにしとけ」
いつもだったら逢坂に乗っかって、もしくは逢坂以上に食い付いてくる板屋越が、意外にも逢坂を止めてくれて、槇村は心底ホッとした――――のも束の間。
back next
- 関連記事
-
- 恋は七転び八起き (106) (2015/12/24)
- 恋は七転び八起き (105) (2015/12/22)
- 恋は七転び八起き (104) (2015/12/21)
- BL小説ランキング参加中です。クリックいただけたら嬉しいです。
- コメントや拍手、ありがとうございます。拍手の公開コメントへのお返事はこちらから。それ以外は、コメントをいただいた記事に返信いたします。
- お題配布サイト「明日」はひっそりまったり更新中です。毎日更新しない日誌「遊び心がない」もよろしくね。
カテゴリー:恋は七転び八起き