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恋は七転び八起き (104)
2015.12.21 Mon
「でも事実なんだろ?」
「まぁ…………」
違う言い方を望んだ槇村だったが、板屋越に念を押されて、嘘もつけずに頷いた――――仕方なく。事実は事実だが、それには止むに止まれぬ事情があったのだから、素直には頷けない。
だが、その事情を説明するとなると、央が痴漢に遭ったことを話す必要があるため、勝手に話すのも躊躇われた。槇村は関係者ではあるが、当事者ではないから。
とはいえ、板屋越は央の通う高校の教師だし、これ以上の被害を出さないためにも、そういう情報は伝えておいたほうがいいのだろうか。ふざけていても、口が軽くないことは保証できるし。
「…ホントは俺が勝手に言ったらダメだと思うけど、なつめは央の学校の先生やから、こういう情報も知っといたほうがいいと思って言うけど」
そう前置きする槇村に、自分も話を聞いていいものかと逢坂は神妙な顔になり、先ほどまでは槇村の反応をおもしろがってした板屋越も、空気を感じ取ったのか、黙って槇村を見た。
「実は…………央が電車で痴漢に遭ってて」
賑やかな店内は、よほど大きな声を出すか、よほど聞き耳を立てられでもしていない限り、隣のテーブルに会話など聞こえないだろうが、それでも槇村は声を潜めて打ち明けた。
混雑した電車の中、央に声を掛けようと近付いた槇村は、彼が痴漢に遭っているのに気が付いて驚愕した。央には嫌いだと言ったきり、謝ってもいなければ、関係もまったく修復していない状態だったが、何とかしなければと咄嗟に思った。
ちょうど自分の降りる駅に到着するところだったから、男を捕まえて駅員に突き出そうと思ったが、央にしがみ付かれて、それは出来なかった。痴漢されていたのを周囲に知られたくなかったのか、単に怖くてそうしたのかは分からないけれど、そんな状態の央を電車に残しておくことも出来ず、央を連れて降りたのだ。
電車での痴漢というと、胸や尻を触られるというのがすぐに思い付く手口だが、実際に央はそれだけでなく、制服のズボンに精液を掛けられるという、何ともおぞましい行為だった。
駅のトイレでそれはキレイにしてあげたけれど、央はショックで電車に乗ることが出来なくて、ひとまず槇村は央を連れて改札を出たのだ。タクシーで帰すことも考えたが、央は1人でタクシーに乗ったことがないと言うし、金の持ち合わせもないと言うから、結局一緒に槇村の家に行くこととなったのである。
…しかし、そのときは、央はもちろん激しく動揺していただろうけど、槇村もあまりのことに冷静さを欠いていたと、今になってみれば思う。『連れ込んだ』という表現も、槇村は言い方が悪いと言ったが、間違ってはいない。
央は顔見知りだけれど、だからといってそれは、誘拐犯ではないと言える絶対的な証拠ではない。央が嫌がらずに付いて来たとしても。
「…そんで央のこと、家に連れて行ったんだけど…………そうだな、警察に行けばよかったんだな。『連れ込んだ』て言われるなんて、まだいいほうだな。下手したら誘拐だし」
「いや、それよりも痴漢! 痴漢て! そんなのもう痴漢の域、超えてるだろ! 変質者っ」
自らの行動を省みて溜め息を零す槇村に対し、板屋越は眉を寄せたまま何も言わなかったが、逢坂はそれよりも痴漢への憤慨の気持ちが強いのか、ガンガンとこぶしでテーブルを叩いている。
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「まぁ…………」
違う言い方を望んだ槇村だったが、板屋越に念を押されて、嘘もつけずに頷いた――――仕方なく。事実は事実だが、それには止むに止まれぬ事情があったのだから、素直には頷けない。
だが、その事情を説明するとなると、央が痴漢に遭ったことを話す必要があるため、勝手に話すのも躊躇われた。槇村は関係者ではあるが、当事者ではないから。
とはいえ、板屋越は央の通う高校の教師だし、これ以上の被害を出さないためにも、そういう情報は伝えておいたほうがいいのだろうか。ふざけていても、口が軽くないことは保証できるし。
「…ホントは俺が勝手に言ったらダメだと思うけど、なつめは央の学校の先生やから、こういう情報も知っといたほうがいいと思って言うけど」
そう前置きする槇村に、自分も話を聞いていいものかと逢坂は神妙な顔になり、先ほどまでは槇村の反応をおもしろがってした板屋越も、空気を感じ取ったのか、黙って槇村を見た。
「実は…………央が電車で痴漢に遭ってて」
賑やかな店内は、よほど大きな声を出すか、よほど聞き耳を立てられでもしていない限り、隣のテーブルに会話など聞こえないだろうが、それでも槇村は声を潜めて打ち明けた。
混雑した電車の中、央に声を掛けようと近付いた槇村は、彼が痴漢に遭っているのに気が付いて驚愕した。央には嫌いだと言ったきり、謝ってもいなければ、関係もまったく修復していない状態だったが、何とかしなければと咄嗟に思った。
ちょうど自分の降りる駅に到着するところだったから、男を捕まえて駅員に突き出そうと思ったが、央にしがみ付かれて、それは出来なかった。痴漢されていたのを周囲に知られたくなかったのか、単に怖くてそうしたのかは分からないけれど、そんな状態の央を電車に残しておくことも出来ず、央を連れて降りたのだ。
電車での痴漢というと、胸や尻を触られるというのがすぐに思い付く手口だが、実際に央はそれだけでなく、制服のズボンに精液を掛けられるという、何ともおぞましい行為だった。
駅のトイレでそれはキレイにしてあげたけれど、央はショックで電車に乗ることが出来なくて、ひとまず槇村は央を連れて改札を出たのだ。タクシーで帰すことも考えたが、央は1人でタクシーに乗ったことがないと言うし、金の持ち合わせもないと言うから、結局一緒に槇村の家に行くこととなったのである。
…しかし、そのときは、央はもちろん激しく動揺していただろうけど、槇村もあまりのことに冷静さを欠いていたと、今になってみれば思う。『連れ込んだ』という表現も、槇村は言い方が悪いと言ったが、間違ってはいない。
央は顔見知りだけれど、だからといってそれは、誘拐犯ではないと言える絶対的な証拠ではない。央が嫌がらずに付いて来たとしても。
「…そんで央のこと、家に連れて行ったんだけど…………そうだな、警察に行けばよかったんだな。『連れ込んだ』て言われるなんて、まだいいほうだな。下手したら誘拐だし」
「いや、それよりも痴漢! 痴漢て! そんなのもう痴漢の域、超えてるだろ! 変質者っ」
自らの行動を省みて溜め息を零す槇村に対し、板屋越は眉を寄せたまま何も言わなかったが、逢坂はそれよりも痴漢への憤慨の気持ちが強いのか、ガンガンとこぶしでテーブルを叩いている。
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けいったん ⇒ No title
学校での 浮かれた央を見れば、板屋越先生には モロバレですよね!
逢坂だって 純平の槇村への態度で バレバレだったし・・・
あ~なんて 感情に素直な兄弟なんでしょう!!(笑)
そんな素直な子に育てた両親も きっと同じような性格でしょうね♪
槇村の絶縁宣言から 急転直下の展開は、板屋越にも 逢坂にも 不思議で仕方がないくて その切欠を聞きたくなるのは 当然!!
それが 央が痴漢に遭ったとは、吃驚クリクリな話しだったでしょう
でも どう話そうかと悩んでいた槇村が、2人に話せて良かったねー
年末を迎え 何かと気忙しい時期、毎日 更新をして下さって ありがとう♪
くれぐれも 仕事+体調を無理しないでね♡
{{(T-T)}}ブルブル・・・さむっっ ...byebye☆
逢坂だって 純平の槇村への態度で バレバレだったし・・・
あ~なんて 感情に素直な兄弟なんでしょう!!(笑)
そんな素直な子に育てた両親も きっと同じような性格でしょうね♪
槇村の絶縁宣言から 急転直下の展開は、板屋越にも 逢坂にも 不思議で仕方がないくて その切欠を聞きたくなるのは 当然!!
それが 央が痴漢に遭ったとは、吃驚クリクリな話しだったでしょう
でも どう話そうかと悩んでいた槇村が、2人に話せて良かったねー
年末を迎え 何かと気忙しい時期、毎日 更新をして下さって ありがとう♪
くれぐれも 仕事+体調を無理しないでね♡
{{(T-T)}}ブルブル・・・さむっっ ...byebye☆
- |2015.12.21
- |Mon
- |09:05
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >けいったんさん
良くも悪くも央ちゃんは素直なんですよ。
隠し事は絶対に無理な性格です。
> 槇村の絶縁宣言から 急転直下の展開は、板屋越にも 逢坂にも 不思議で仕方がないくて その切欠を聞きたくなるのは 当然!!
おかげで、いい年下おっさん3人が、恋バナに花を咲かせております(笑)
でも、これは聞かずにはいられないですよね。
槇村さんも、1つ悩みが晴れてよかったです。
> 年末を迎え 何かと気忙しい時期、毎日 更新をして下さって ありがとう♪
> くれぐれも 仕事+体調を無理しないでね♡
優しいお言葉、ありがとうございます。
私の住んでいる地域は豪雪地帯なのですが、今年はまだ殆ど雪が降っていなくて、本当に助かっています。
けいったんさんも、体調に気を付けてくださいね(*^_^*)
コメントありがとうございました!
隠し事は絶対に無理な性格です。
> 槇村の絶縁宣言から 急転直下の展開は、板屋越にも 逢坂にも 不思議で仕方がないくて その切欠を聞きたくなるのは 当然!!
おかげで、いい年下おっさん3人が、恋バナに花を咲かせております(笑)
でも、これは聞かずにはいられないですよね。
槇村さんも、1つ悩みが晴れてよかったです。
> 年末を迎え 何かと気忙しい時期、毎日 更新をして下さって ありがとう♪
> くれぐれも 仕事+体調を無理しないでね♡
優しいお言葉、ありがとうございます。
私の住んでいる地域は豪雪地帯なのですが、今年はまだ殆ど雪が降っていなくて、本当に助かっています。
けいったんさんも、体調に気を付けてくださいね(*^_^*)
コメントありがとうございました!
- |2015.12.21
- |Mon
- |23:08
- |URL
- |EDIT|