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ささやかな独占欲
2009.07.21 Tue
「―――……ッ…」
頭からシャワーを被っていた拓海は、ピリッとした肩口の痛みに、一瞬だけ眉を寄せた。
(……コレ、)
湯気で曇った鏡にお湯を掛けて自分の背中を映すと、そこには予想どおりの赤い傷跡。
少しだけ口の端を上げ、拓海は手早くシャワーを済ませた。
寝室からテレビの音が漏れてくるので、てっきり悠也が起きているのかと思ったら、リモコンを手にしたまま枕に顔をうずめて熟睡していた。
(息、苦しくないのかな…?)
そういえば悠也は、うつ伏せになって、枕に顔を押し付けて寝ていることが多い。
少しだけ長くなった襟足の毛に指を絡ませながら、拓海は悠也の手からリモコンを取ってボリュームを下げた。
ベッドの端に腰を下ろすとスプリングがかすかに軋んだが、悠也に起きる気配はない。
ふと、視界に入った、悠也の指先。その爪は、確かに短く切ってあるとは言い難い長さ。
「…ふっ」
バスルームで見つけた小さな傷跡を思い出し、拓海はわずかに口元に笑みを乗せた。
普段、愛だの恋だの口にしない彼の、ささやかな独占欲を垣間見たようで、何だか心地よくてくすぐったい。
1人でぼんやりそんなことを考えていると、
「何1人で笑ってんの、気持ち悪ぃ~」
「―――ッッッ!!」
テレビの中からではないその声に、ビクリと拓海の肩が震えた。ゆっくりとその声のほうを見てみれば、ぐっすりと眠っていたはずの悠也が、しっかりとこちらを見ていた。
「……起きてたの?」
「思い出し笑い? やらしいなぁ~、お前」
枕を抱いて体をコロリと返した悠也は、ニヤニヤ笑いながら足先で拓海の背中を突付いた。
「そんなんじゃないから」
「じゃあ何だよー」
「別にいいじゃん、もう」
本当のことを言ってしまうのは、思い出し笑いをしていたと思われるよりも、もっと恥ずかしい気がして、拓海は適当にごまかした。
悠也は拓海をからかうのがおもしろくて仕方がないのか、「うひゃひゃひゃ」と笑い声を響かせながら、足の裏を上半身裸の拓海の背中にペタリと貼り付けた。
「何してんの」
振り返りざま、拓海は悠也のその細い足首を掴んだ。
「ひゃっひゃっ」
何がツボにはまったのか知らないが、悠也の笑いは止まらない。何を1人で笑っているのかとは、まさしくこちらのセリフだ。
「悠ちゃん、何が…」
「なぁ、それ、痛くねぇの?」
「え?」
掴まれているほうの足先で、悠也が何かを指した。拓海が意味を図り損ねていると、悠也は足を自ら自由にして体を起こした。
「コレ、」
「ッ…」
悠也が体を近づけてきたと思った次の瞬間、拓海は肩に走った小さな痛みにわずかに声を洩らした。
「俺だろ、コレ」
見ると、悠也の赤い舌先が、拓海の肩の小さな傷を辿っていた。
「傷になってる」
「平気だよ、こんなの」
「爪、ちょっと伸びてるもんな」
「だから平気だって」
っていうか、もっと付けてくれてもいいくらい。
こんな傷の1つや2つで、心も体もぜんぶ悠也のものになるとは思わないけれど、でも、もっと見せ付けてほしい、その独占欲。
「……好きだよ、悠ちゃん」
「何だよ、急に。変なヤツだなぁ、お前。1人で笑ってたかと思うと、これだし」
「言いたかったんだもん」
「あっそ」
素っ気なくそう言って、悠也は再びベッドに転がった。
「愛してる、愛してる、愛してる」
「何だよ、お前は!」
甘い囁きというよりは、まるで呪文のように3回繰り返した拓海の背中を、悠也は突っ込みとともに蹴っ飛ばした。
「いいんだよ」
「だから何がだよ!」
「いいの」
「わけ分かんねぇ!」
自分には理解不能な思考回路を持った恋人の背中に足を押し付けながら、悠也は渋い表情をする。
「悠ちゃんの爪と一緒」
「はぁ!?」
どうしてそこに爪の話が出てくるのかと、しかしそれでも悠也は自分の手の爪を見遣るが、少し伸びかけているだけで、それは普段と何も変わらない。
「やっぱわけ分かんねぇ!」
「いいの」
悠也の残した爪あとと同じ、ほんのささやかな拓海の独占欲。
一生このまま縛り付けておけるほどの力もなくて。この背中の傷が消えてしまうように、きっと消えてなくなってしまうだろうけど。
「悠ちゃん、愛してる」
「うるせぇ、知ってるよ」
腕を回してきた悠也の爪の先が、そっと傷跡をなぞった。
お久しぶりでした。みなさん、悠ちゃんたちのこと、覚えててくれました?
頭からシャワーを被っていた拓海は、ピリッとした肩口の痛みに、一瞬だけ眉を寄せた。
(……コレ、)
湯気で曇った鏡にお湯を掛けて自分の背中を映すと、そこには予想どおりの赤い傷跡。
少しだけ口の端を上げ、拓海は手早くシャワーを済ませた。
寝室からテレビの音が漏れてくるので、てっきり悠也が起きているのかと思ったら、リモコンを手にしたまま枕に顔をうずめて熟睡していた。
(息、苦しくないのかな…?)
そういえば悠也は、うつ伏せになって、枕に顔を押し付けて寝ていることが多い。
少しだけ長くなった襟足の毛に指を絡ませながら、拓海は悠也の手からリモコンを取ってボリュームを下げた。
ベッドの端に腰を下ろすとスプリングがかすかに軋んだが、悠也に起きる気配はない。
ふと、視界に入った、悠也の指先。その爪は、確かに短く切ってあるとは言い難い長さ。
「…ふっ」
バスルームで見つけた小さな傷跡を思い出し、拓海はわずかに口元に笑みを乗せた。
普段、愛だの恋だの口にしない彼の、ささやかな独占欲を垣間見たようで、何だか心地よくてくすぐったい。
1人でぼんやりそんなことを考えていると、
「何1人で笑ってんの、気持ち悪ぃ~」
「―――ッッッ!!」
テレビの中からではないその声に、ビクリと拓海の肩が震えた。ゆっくりとその声のほうを見てみれば、ぐっすりと眠っていたはずの悠也が、しっかりとこちらを見ていた。
「……起きてたの?」
「思い出し笑い? やらしいなぁ~、お前」
枕を抱いて体をコロリと返した悠也は、ニヤニヤ笑いながら足先で拓海の背中を突付いた。
「そんなんじゃないから」
「じゃあ何だよー」
「別にいいじゃん、もう」
本当のことを言ってしまうのは、思い出し笑いをしていたと思われるよりも、もっと恥ずかしい気がして、拓海は適当にごまかした。
悠也は拓海をからかうのがおもしろくて仕方がないのか、「うひゃひゃひゃ」と笑い声を響かせながら、足の裏を上半身裸の拓海の背中にペタリと貼り付けた。
「何してんの」
振り返りざま、拓海は悠也のその細い足首を掴んだ。
「ひゃっひゃっ」
何がツボにはまったのか知らないが、悠也の笑いは止まらない。何を1人で笑っているのかとは、まさしくこちらのセリフだ。
「悠ちゃん、何が…」
「なぁ、それ、痛くねぇの?」
「え?」
掴まれているほうの足先で、悠也が何かを指した。拓海が意味を図り損ねていると、悠也は足を自ら自由にして体を起こした。
「コレ、」
「ッ…」
悠也が体を近づけてきたと思った次の瞬間、拓海は肩に走った小さな痛みにわずかに声を洩らした。
「俺だろ、コレ」
見ると、悠也の赤い舌先が、拓海の肩の小さな傷を辿っていた。
「傷になってる」
「平気だよ、こんなの」
「爪、ちょっと伸びてるもんな」
「だから平気だって」
っていうか、もっと付けてくれてもいいくらい。
こんな傷の1つや2つで、心も体もぜんぶ悠也のものになるとは思わないけれど、でも、もっと見せ付けてほしい、その独占欲。
「……好きだよ、悠ちゃん」
「何だよ、急に。変なヤツだなぁ、お前。1人で笑ってたかと思うと、これだし」
「言いたかったんだもん」
「あっそ」
素っ気なくそう言って、悠也は再びベッドに転がった。
「愛してる、愛してる、愛してる」
「何だよ、お前は!」
甘い囁きというよりは、まるで呪文のように3回繰り返した拓海の背中を、悠也は突っ込みとともに蹴っ飛ばした。
「いいんだよ」
「だから何がだよ!」
「いいの」
「わけ分かんねぇ!」
自分には理解不能な思考回路を持った恋人の背中に足を押し付けながら、悠也は渋い表情をする。
「悠ちゃんの爪と一緒」
「はぁ!?」
どうしてそこに爪の話が出てくるのかと、しかしそれでも悠也は自分の手の爪を見遣るが、少し伸びかけているだけで、それは普段と何も変わらない。
「やっぱわけ分かんねぇ!」
「いいの」
悠也の残した爪あとと同じ、ほんのささやかな拓海の独占欲。
一生このまま縛り付けておけるほどの力もなくて。この背中の傷が消えてしまうように、きっと消えてなくなってしまうだろうけど。
「悠ちゃん、愛してる」
「うるせぇ、知ってるよ」
腕を回してきた悠也の爪の先が、そっと傷跡をなぞった。
お久しぶりでした。みなさん、悠ちゃんたちのこと、覚えててくれました?
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒ うわー
久々の拓海くん( ´艸`)ムププ♪
独占欲かあ…そうね、そうよねぇ…拘束力なんて、恋愛にあるはずもないもので。
だからこそ欲しくなる、目に見える証。
少しでも長く、永遠という名の一瞬を共に過ごしたいという想い。
らぶらぶな雰囲気なのに、ちょっと切ない…うん、如月さんワールド炸裂!って感じですね。
はぁ~~久々の拓海くん、カコイ~かったです(*´∀`*)
独占欲かあ…そうね、そうよねぇ…拘束力なんて、恋愛にあるはずもないもので。
だからこそ欲しくなる、目に見える証。
少しでも長く、永遠という名の一瞬を共に過ごしたいという想い。
らぶらぶな雰囲気なのに、ちょっと切ない…うん、如月さんワールド炸裂!って感じですね。
はぁ~~久々の拓海くん、カコイ~かったです(*´∀`*)
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
久々のメインカプは拓海くん&悠ちゃんでした。
慶タンでなくてごめんなさいです(^_^;)
> 独占欲かあ…そうね、そうよねぇ…拘束力なんて、恋愛にあるはずもないもので。
> だからこそ欲しくなる、目に見える証。
> 少しでも長く、永遠という名の一瞬を共に過ごしたいという想い。
つい、目に見える形を欲しくなっちゃうのも恋愛ですよね。
先のことは分からないけれど、少しでも長くいたいですしね。
> らぶらぶな雰囲気なのに、ちょっと切ない…うん、如月さんワールド炸裂!って感じですね。
ちゃんと切なさが表現できてましたでしょうか!?
いつも幸せだけど、ときどき感じてしまう切なさ……うまく伝わればいいですが(^_^;)
> はぁ~~久々の拓海くん、カコイ~かったです(*´∀`*)
ありがとうございました!
覚えていてくださっただけで、感謝感謝です。
コメントありがとうございました!
慶タンでなくてごめんなさいです(^_^;)
> 独占欲かあ…そうね、そうよねぇ…拘束力なんて、恋愛にあるはずもないもので。
> だからこそ欲しくなる、目に見える証。
> 少しでも長く、永遠という名の一瞬を共に過ごしたいという想い。
つい、目に見える形を欲しくなっちゃうのも恋愛ですよね。
先のことは分からないけれど、少しでも長くいたいですしね。
> らぶらぶな雰囲気なのに、ちょっと切ない…うん、如月さんワールド炸裂!って感じですね。
ちゃんと切なさが表現できてましたでしょうか!?
いつも幸せだけど、ときどき感じてしまう切なさ……うまく伝わればいいですが(^_^;)
> はぁ~~久々の拓海くん、カコイ~かったです(*´∀`*)
ありがとうございました!
覚えていてくださっただけで、感謝感謝です。
コメントありがとうございました!
粟津原栗子 ⇒ あーww
わたし、如月さんのカプの中ではこのふたりが一番すきなんです(告白
久々に読み直しましたが、このお話がとてもすき。「独占欲」ってそそられますねぇwww
「うるせぇ、知ってるよ」←ゆうちゃんったら♪
とっても欲に素直なたくみくんと、素直になれないゆうちゃんの組み合わせ。
これこそ如月さん、もうだいすきw
久々に読み直しましたが、このお話がとてもすき。「独占欲」ってそそられますねぇwww
「うるせぇ、知ってるよ」←ゆうちゃんったら♪
とっても欲に素直なたくみくんと、素直になれないゆうちゃんの組み合わせ。
これこそ如月さん、もうだいすきw
如月久美子 ⇒ >粟津原さん
> わたし、如月さんのカプの中ではこのふたりが一番すきなんです(告白
> 久々に読み直しましたが、このお話がとてもすき。「独占欲」ってそそられますねぇwww
ありがとうございます~!
メインカプの中では、相川さんたちの人気があるようだったんですが、拓海くん&悠ちゃんへの告白、嬉しいです~(*^_^*)
しかも私にまで…▼*゚v゚*▼ 照れ照れ
悠ちゃんは、ツンデレキングですからね~。
確かに拓海くんは、いろいろと素直すぎるかも(^_^;)
でもそれがいい組み合わせなのかも。
コメントありがとうございました!
> 久々に読み直しましたが、このお話がとてもすき。「独占欲」ってそそられますねぇwww
ありがとうございます~!
メインカプの中では、相川さんたちの人気があるようだったんですが、拓海くん&悠ちゃんへの告白、嬉しいです~(*^_^*)
しかも私にまで…▼*゚v゚*▼ 照れ照れ
悠ちゃんは、ツンデレキングですからね~。
確かに拓海くんは、いろいろと素直すぎるかも(^_^;)
でもそれがいい組み合わせなのかも。
コメントありがとうございました!