恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

読み切り掌編

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No Smoking!?


 クチュ…とやらしい音を立てて、唇が離れる。唾液に濡れた唇をペロッと舐めて視線を上げると、那智がなぜか眉を顰めていた。

「何だよ」
「タバコ臭い!」
「は?」
「渉のキス、タバコ臭い!」

 那智が超が付くほどの嫌煙家だということを忘れていたわけではないが、そういえばキスする直前までタバコを吸っていたことを、今さらながら渉は思い出した。

「しょうがねぇだろ、タバコ吸ったんだから」
「吸わなきゃいいじゃん。服とか髪にもタバコの匂いって付くんだよ」

 自分の着ているシャツを鼻に近付け、そのタバコの匂いに、那智はますます渋い表情をする。

「お前も吸えば気にならなくなるだろ」
「吸わないよ、そんなの!」
「吸わないんじゃなくて、吸えないんだろ、お前は」
「吸えなくたっていいもん、タバコなんて。体に悪いだけだし」

 何を言っても減らず口を叩く那智をベッドに組み敷き、もう1度キスしようと顔を近付けたが、力ではやはり勝っている那智の腕が、渉の体を押し戻した。

「イヤ!」
「何だよ」
「渉のキスは好きだけど、タバコは嫌いなの! だから今、渉とキスしたくない気分」

 プイッと那智は体ごと渉からそらした。渉は軽く舌打ちして、那智の横にゴロリと転がると、腕を那智の体に絡める。

「何だよぉ」
「いいだろ、こんくらいさせろ」

 わざと面倒臭そうにしながら、那智は寝返りを打って渉のほうを向いた。

「あのさぁ、俺がタバコ吸えば気にならなくなる、じゃなくて、やっぱ渉がタバコやめるべきだと思う」
「何だよ、まだその話かよ」
「ね、やめなよ、タバコ」
「やめねぇ」

 大体そんなに簡単にやめられるものなら、最初から吸ったりなんかしない。

「何でやめらんないの? 口寂しいの?」
「あぁ、そうかもな」

 そんな理由なんかよく分からない。きっとニコチンとか何かそういうものが影響しているのだろうけど。

「ふ~ん」

 渉の言葉をどう受け取ったのか知らないが、那智は少し何か考えるようにしてから、伸ばしてきた手で渉の顎を掴んだ。

「何だ…」

 言い切らないうち、那智は先ほどまで散々嫌がっていたキスを、自分のほうから仕掛けてきた。
 思いがけない不意打ちのキスに、渉も一瞬固まる。

「―――な、ち…」

 深く舌を絡めようとしたところで、やはり那智のほうから唇を離された。

「おいっ!」

 何なんだよ、自分から誘っといて!
 渉はギラついた目で那智の顔を覗き込んだ。

「これで口寂しくないでしょ? ね、タバコの代わりだよ」
「…………」

 少し呆気にとられている渉に構わず、那智は満面の笑みで話を進めていく。

「渉がタバコやめて口寂しいときは、俺がキスしてあげるの。良くない? これ」
「―――……考えとく…」

 自分が今、ものすごい誘い文句を言っているとはまったく分かっていない様子の那智に、渉は溜め息とともにそう答えるのが精一杯で、甘えてくる那智を何とかあやしてやったのだった。



 そしてその後、渉は本気で禁煙を考えたとか、考えなかったとか。

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ある夏の日


「あちぃ…」

 もう今さら言われなくたって、十二分に分かりきっていることを言っている将人。
 ゴロゴロ、ゴロゴロ、ベッドの上。
 俺のベッドだけどね。

 窓を開ければ、うるさいくらいのセミの声。
 扇風機は生温い風しか運んでこなくて。

「あちぃ、あちぃ、あちぃ!!」
「分かってるよ、うるせぇな」

 あまりにうるさい将人にキレれば、シュンとしてベッドに沈んだ。





「そういえば将人、1年の子、振っちゃったんだって?」

 将人はモテる。
 やっぱ見た目かな? カッコいいもんね。
 でも、付き合ってもすぐに別れちゃうの。バカだから。

「あー、うん」
「ふーん」



「ねぇー悟ー、こっち来てぇ?」
「はぁ?」
「ここ」



 そう言って将人は、ベッドの端をポンポンする。
 だからそれは俺のベッドだって。

 てか俺、今、課題やってる途中なんですが。

「暑いからヤダ」
「ケチィ」
「何とでも」

 チェッ、とか何とか言って、大人しくなる将人。





「ねぇ、何で振っちゃったの?」
「あぁ?」
「その1年の子。何で?」
「だってタイプじゃなかったし」
「ふーん」

 ゴロリ。
 ベッドの上を転がって、転がって、将人はドタンと床に落ちる。

「何してんの?」
「悟のバカ」
「バカなのは、将人でしょ?」

 恨めしそうにこっちを見てるから、しょうがなく手を差し伸べてやる。


「悟…………キスしたい」


 伸ばした手を掴まれて。
 振り解いてしまいたい。


「何言ってんだよ、バカ」
「したいの、悟と」
「バカ将人。そういうのは女に言えよ」


 将人に掴まれた手首が熱い。




「だって、タイプじゃないんだもん」

「バーカ」




「ねぇ、悟。俺は、」





 分かったよ、もう言わないで。俺の負け。




「キス、しよっか?」










 熱くてぬるい、真夏のキス。

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チャンス (前編)


 部屋はアルコールとタバコのにおいに満たされ、テーブルの周りは空き缶が転がってる。
 決してキレイとは言い難いこの空間で、愛しい人は、かわいらしい寝息を立てて眠っていた。

「はぁ…、どうすりゃいいんだ…」

 俺は普段吸わないように心がけているタバコに火を点けた。




*****

 酔っ払ってぐでんぐでんになった海晴(ミハル)さんが俺んちに来たのは、夜中の2時を過ぎたころ。
 ガンガンとドアを叩かれ、俺は慌てて玄関に向かった。
 こんな時間に、この仕打ち。
 イタズラにしては度が過ぎる。それとももっとヤバイ輩か? なんて思いつつ、モニターを覗けば、映っていたのは、職場の先輩で、俺の想い人の海晴さん。
 俺の名前を呼ぶ声が、ドア越しに聞き取れる。
 近所迷惑もいいところで、急いでドアを開けると、なだれるようにして海晴さんが入ってきた。

「酒くさ…」

 俺に凭れるようにして何とか立っている海晴さんからは、それだけで分かるくらいアルコールのにおいが漂っている。

「ん~…アサノぉ~」
「どうしたの、海晴さん。とにかく中入って?」

 子供に言って聞かせるようにして、海晴さんを連れて中に入る。

「あ、あ、あぁ…」

 ソファに座らせてやろうとすると、海晴さんの体はズルリと滑って床に落ちた。

「水飲む?」

 とりあえず海晴さんの体をソファに凭れさせる。

「いらな…、ん~アサノら~」
「そうですよー、アサノくんですよー」

 すっかり呂律の回らなくなっている海晴さんは、俺の両手を掴んで、楽しそうに揺さ振っている。

「何か飲まないと、しんどいでしょ?」
「ビール!」
「飲めないでしょ?」
「飲むの! お前も飲め!」

 飲めないと分かってても、とりあえず言われたとおりにビールぐらいは持ってこないと、海晴さんの気は治まらないかもしれない。
 仕方なく缶ビールを持ってくると、海晴さんは吸いもしないタバコを1本灰にしていた。

「どうしたんすか? こんなに飲んで」

 確か今日海晴さんは、友だちとメシに行くとか言って、嬉しそうに職場を後にしたはず。友だちとケンカしてやけ酒? まさか。
 新しいタバコに火を点けた海晴さんは、一口吸って灰皿に置くと、ビールを受け取った。

「遊びらって…」

 力の入らない手で必死にプルタブを開けようとしている海晴さんから缶ビールを受け取り、代わりに開けてやろうとしていると、ポツリと海晴さんが呟いた。

「俺とのことは遊びなんらって…、……う゛ー…」
「それって…」

 "俺とのこと"ってことは、それには相手がいるわけで。

「今日、友だちとメシじゃなかったの?」

 気付きかけてる真実から目をそむけ、俺は遠回しにそう尋ねる。

「メシじゃねぇよ、このデコ!」

 もうフニャフニャになってるのに、しっかりと俺のデコに突っ込みを食らわせ、海晴さんはビールに口を付ける。

「ここんとこ急いで帰ってたの、そのため?」
「らって、好きらって…俺のこと…」
「いくつ年上?」
「……8…」

 ……てことは、31歳か。
 ってことは、その8つも年上のキレエなお姉さんに、いいように遊ばれたってわけね。
 海晴さんかて、そんなにマジになるほうじゃないけど……今回はかなりハマってたな、こりゃ。

「今まで散々好きらってゆってたのに……やっぱ旦那のほうがいいって…」
「っ!! 人妻かい!」

 思わず突っ込む。
 人様のもんに手ェ出したらダメでしょ、アンタも大人なんだから。

「うっせぇ、お前に何が分かるんだよ!」
「ゴメン、ゴメンて。だからもうちょっと声小さくして…」

 零しそうになってるビールの缶を手から離してやり、何とか海晴さんの気を鎮めさせる。
 夜中の2時にそんなに騒がないでよ、マジで。

「お前なんかに俺の気持ちが分かるかよー…」
「そうだね、ゴメン」
「…ん、まぁ、い…けど」
「眠いの?」
「んーん…」

 緩くかぶりを振るけど、もうまぶたは半分落ちてるし、頭は舟を漕いでる。

「もう寝る?」
「ん…」

 コテンと海晴さんの頭が、俺の肩にも垂れてくる。

「海晴さん?」

 呼びかけても返事はない。寝息だけが聞こえてきて。

「はぁ~、やっと寝た…」

 ちょっとホッとする。
 俺はソファからクッションを引っ張り下ろして海晴さんの枕にし、毛布を掛けてやった。

「年上、ねぇ…」

 海晴さんが年上好きなのは前から知ってるし、最近も何となく浮き足立ってる海晴さんに、彼女いるんだろうなぁって薄々気付いてたけど、まさかそれが人妻で、しかも遊ばれてポイなんて結末は想像してなかった。

「年上、年下、年上…」

 どんなに想っても。
 どんなに努力しても。
 決して変えられない、この年の差。

 どんなにがんばっても俺は海晴さんの年下で。
 男ってだけでもこの恋のハンデなのに、そんな余計な試練を与えなくてもいいのに。

「ホント、どうすりゃいいんだよ…」








 短編だっつってんのに、前後編になってしまいました…。すみません。続きはまた明日。

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チャンス (後編)


「う゛ー…」

 翌朝、海晴さんを起こさないように部屋を片付けていた俺は、海晴さんの奇声に手を止めた。

「海晴さん?」

 眉間にシワを寄せて、海晴さんはゴシゴシ目をこすってる。

「んー、う゛ー」
「海晴さん? 具合悪いの?」

 海晴さんの寝起きの悪さはよく知っている。
 単に覚醒してないだけかもしれないが、昨日の海晴さんの飲酒量を思うと、二日酔いで苦しいという可能性のほうが高い。

「頭痛ぇ…」

 ムクッと起き上がった海晴さんは、キョロキョロしてどうやらここが自分の家でないことに気が付いたらしい。

「え? アサノ? あれ?」
「おはよ、海晴さん」
「おはよ…って、そうじゃなくて、え、何で? ここお前んち?」
「昨日の夜中、酔っ払ってきたでしょ? 覚えてないの?」
「覚えてない…」

 ま、あれだけ酔っ払ってれば、無理ないか。

「俺、何でここ来たんだっけ…」

 ガリガリ頭を掻きながら、海晴さんはまだ床にへたり込んでる。

「言っていいの?」
「何?」
「いいの?」
「…いいけど」
「振られたからでしょ? 8つ年上の人妻に」

 俺は海晴さん前に身を屈めた。

「何で知って…」

 あ、振られたことは覚えてんだ。

「だって海晴さん、俺んち来てずっとくだ巻いてたじゃん」
「マジー? 最悪」

 海晴さんは心底嫌そうな顔をする。年下の俺に、みっともないトコを見せたから。
 年下。

「ゴメンなー」
「別にいいけど…よくここ分かったね。前、1回来ただけなのに」
「何となくな」

 それもだいぶ前、引越ししたばっかりのころで、俺も道順怪しくて、結構遠回りした気がするのに。

「何か食う?」
「いらね」
「水は?」
「飲む」

 俺はゴミ袋を部屋の隅に放ると、冷蔵庫のよく冷えたミネラルウォーターをグラスに注いだ。

「サンキュ」

 海晴さんは受け取った水を一気に飲み干す。俺はその様子を見ているだけ。

「ねぇ海晴さん」
「ん?」
「そんなに年上、好きなん?」
「何だよ、急に」

 夕べの出来事が蘇ったのか、海晴さんは顔を顰めた。

「好き? 年上の人」
「別にー、大人だし、楽だから。…ふん、ガキンチョのお前には分かんねぇよ」

 苛々させる原因に、海晴さんは容赦なかった。
 海晴さんは、今一番俺の嫌がる言葉をサラッと吐いて、「もう1杯」と空のグラスを俺のほうに差し出してる。

「ガキンチョって…」

 俺はグラスじゃなくて、海晴さんの手首を掴んだ。

「何だよ」
「俺だって、もう子どもじゃないんだけど」

 グイッと海晴さんの腕を引いて、2人の距離を詰める。

「アサっ…」

 慌てる海晴さんを無視して、俺はその距離をゼロにした。
 合わせた唇は冷たくて、アルコールの味がした。

「んっ…やめ…、何すんだよ、バカッ!」
「ゲホッ…ってー…」

 もがいていた海晴さんに思いっ切り腹を蹴っ飛ばされ、俺は咳き込みながら海晴さんから手を離した。

「何すんの…」
「そりゃこっちのセリフだよ! お前何しやがんだ!」

 口元を押さえて、海晴さんは耳まで真っ赤にしてる。いくら相手が男だからって、キスくらいでそこまでの反応しなくたっていいのに。

「今さらキスくらいで、腹蹴っ飛ばされるなんて思わなかった」
「何開き直ってんだよ! いきなりキスしといて!」

 反省の色なんか全然ない俺に、海晴さんは文句を捲くし立てる。

「だってしたかったんだもん」
「したかったって…お前なぁ」

 何を言ってもきかないと諦めたのか、海晴さんは溜め息をつけてソファに背中を預けた。

「したかったの、海晴さんとキス」
「うるせぇ、クソガキ」

 伸ばした手をパシッと叩き、海晴さんは「ドーブツ!」とか「ケダモノ!」とか喚いてる。
 やっぱり海晴さんにとって、俺はまだまだガキでしかないのかな。
 そりゃ、"したいからしました"でキスするような男は、ただのガキか動物でしかないかもしれないけど…。

「お前、俺にキスしたからには、ちゃんと責任取れよ?」
「え?」
「ちゃーんと責任取れっつってんの」

 体を起こして、海晴さんはグッと俺のほうに詰め寄った。

「せきに―――んっ…!?」

 わけが分からない…って思ってたら、急に海晴さんに唇を塞がれて。さっき俺がしたのよりも、ずっとずっと深いキス。舌を絡められて。

「ん…」

 唇が離れると、海晴さんはニヤリと笑って見せた。

「本気になってガキじゃねぇって証拠、見せてみな?」
「言ったなー。後悔しても知らないよ?」
「お前こそ、うかうかしてると、俺、逃げてっちゃうよ?」
「絶対逃がさない」

 このチャンスだけは、絶対に逃せない。

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甘いのは、唇


「あー、弘夢(ヒロム)、いいなー、俺にも一口ちょうだい!」

 仕事の休憩時間、自販機が並んだとこでベンチに座ってたら、後ろから声を掛けられる。振り返れば、そこにいたのは彰久(アキヒサ)で、その視線の先には、俺の飲んでるいちごミルクのパック飲料。
 早速目を付けてきたか…。

「ねぇー」

 …この人、確か俺より3つも年上だよね? それが何でこんな甘えたなわけ?
 まぁ、俺と2人きりだからだろうけど。

「はい」

 しょうがないから、俺は飲み掛けのパックを彰久に差し出した。

「わっ、サンキュー」

 本当に嬉しそうに笑って、彰久は俺の横に腰を下ろした。
 律儀に彰久は「いただきま~す」とか言って、ストローを銜える。

(………………やべぇ…………)

 ゴクリと動いた彰久の喉に、思わず俺の喉まで鳴ってしまった。
 つーか、俺が飲んでたストローそのまま使うって、あのっ……それって、か…間接キスっ…!!
 いやいやいや、俺たちもう、キス以上のことしてるし!! 昨日だって、いっぱい彰久に愛されたし! って、そうじゃなくて!

「弘夢?」
「はいっ!?」

 声、引っ繰り返っちゃった。何俺。超だせぇ。

「どうした? あ、ゴメン。一口っつったのに、いっぱい飲んじゃった!」

 俺があんまりにも彰久のほうをジロジロ見てたから、変に思ったらしい。慌てて俺のほうにパックを返してきた。

「え、あ…」

 何気なくそれを受け取って、まだ少し中身が残ってる……けどっ!!

(飲めねぇ~!! 無理! ぜぇーったい無理です!!)

 つーかそんなこと意識してる俺って、何か変態っぽくね?

「弘夢?」
「い…いいよ、全部飲んで…」

 俺はもう1回、パックを彰久に押しやった。
 無理です! 間接キスとか意識し始めたら、マジ飲めないっす!

「いいの? ありがとー、弘夢優しー」
「あ…うん…」

 その笑顔にまたドキリとして、何気なく視線を逸らした。
 間接……じゃなくて、ホントにキスしたい。彰久の唇に。彰久の唇って、気持ちいいんだよね。キスだけでさ、どうにかなっちゃいそうになるの。
 昨日も……

 …って、まずいまずい。こんなとこで、何思い出そうとしてんだ、俺!!
 落ち着け、落ち着け、俺。

 ………………ふぅ…………。
 ……ヤバイ…………俺、変態か?

「なぁ、弘夢」
「な、に…?」
「お前さぁ、頼むから、他のヤツがいる前で、そんな顔すんなよ?」
「え?」

 そんな顔、って?
 隣で彰久が、空になったパックを握り潰して、ゴミ箱に放った。

「あきひ、さ…?」

 グッと彰久の顔が近付いてくる。
 ち…近い…。

「ッ、な…」

 彰久、って呼ぼうとするより先に、重なる、唇。
 ここ会社だし!! …って、頭を過ぎらなかったばっかりじゃない、けど。それよりももっと、この唇の感触を、味わいたかった。

「…ん、」

 ゆっくりと、彰久の唇が離れていく。何となく、名残惜しい気持ち。

「あ……ッ、こ、ここ、会社だしっ!!」

 キスされて、嬉しかったくせに。
 俺の口をついて出た言葉は、そんなかわいげのないセリフ。

「んー? いちごミルクのお礼」
「はぁ?」
「だって弘夢、キスしてほしいって顔してたから」
「し…してないし!」

 うわーうわー、超恥ずかしい!!
 そんなに顔に出てた? 俺。
 ってか、彰久って、そんなに聡いヤツだったっけ?

「続きはお家でね、ひーろちゃん」
「バッ…」

 ニヤリ。
 彰久には珍しい、人の悪そうな笑み。
 でも、不覚にも俺は、ドキリとしてしまうわけで。

「ちゃんと責任取ってよね!」






 いつも学生設定なんで、今回は社会人てことで。
 でも、全然社会人ぽくないし、そうする必要性も、どこにもなかった…orz

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