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チャンス (前編)
2008.09.22 Mon
部屋はアルコールとタバコのにおいに満たされ、テーブルの周りは空き缶が転がってる。
決してキレイとは言い難いこの空間で、愛しい人は、かわいらしい寝息を立てて眠っていた。
「はぁ…、どうすりゃいいんだ…」
俺は普段吸わないように心がけているタバコに火を点けた。
*****
酔っ払ってぐでんぐでんになった海晴(ミハル)さんが俺んちに来たのは、夜中の2時を過ぎたころ。
ガンガンとドアを叩かれ、俺は慌てて玄関に向かった。
こんな時間に、この仕打ち。
イタズラにしては度が過ぎる。それとももっとヤバイ輩か? なんて思いつつ、モニターを覗けば、映っていたのは、職場の先輩で、俺の想い人の海晴さん。
俺の名前を呼ぶ声が、ドア越しに聞き取れる。
近所迷惑もいいところで、急いでドアを開けると、なだれるようにして海晴さんが入ってきた。
「酒くさ…」
俺に凭れるようにして何とか立っている海晴さんからは、それだけで分かるくらいアルコールのにおいが漂っている。
「ん~…アサノぉ~」
「どうしたの、海晴さん。とにかく中入って?」
子供に言って聞かせるようにして、海晴さんを連れて中に入る。
「あ、あ、あぁ…」
ソファに座らせてやろうとすると、海晴さんの体はズルリと滑って床に落ちた。
「水飲む?」
とりあえず海晴さんの体をソファに凭れさせる。
「いらな…、ん~アサノら~」
「そうですよー、アサノくんですよー」
すっかり呂律の回らなくなっている海晴さんは、俺の両手を掴んで、楽しそうに揺さ振っている。
「何か飲まないと、しんどいでしょ?」
「ビール!」
「飲めないでしょ?」
「飲むの! お前も飲め!」
飲めないと分かってても、とりあえず言われたとおりにビールぐらいは持ってこないと、海晴さんの気は治まらないかもしれない。
仕方なく缶ビールを持ってくると、海晴さんは吸いもしないタバコを1本灰にしていた。
「どうしたんすか? こんなに飲んで」
確か今日海晴さんは、友だちとメシに行くとか言って、嬉しそうに職場を後にしたはず。友だちとケンカしてやけ酒? まさか。
新しいタバコに火を点けた海晴さんは、一口吸って灰皿に置くと、ビールを受け取った。
「遊びらって…」
力の入らない手で必死にプルタブを開けようとしている海晴さんから缶ビールを受け取り、代わりに開けてやろうとしていると、ポツリと海晴さんが呟いた。
「俺とのことは遊びなんらって…、……う゛ー…」
「それって…」
"俺とのこと"ってことは、それには相手がいるわけで。
「今日、友だちとメシじゃなかったの?」
気付きかけてる真実から目をそむけ、俺は遠回しにそう尋ねる。
「メシじゃねぇよ、このデコ!」
もうフニャフニャになってるのに、しっかりと俺のデコに突っ込みを食らわせ、海晴さんはビールに口を付ける。
「ここんとこ急いで帰ってたの、そのため?」
「らって、好きらって…俺のこと…」
「いくつ年上?」
「……8…」
……てことは、31歳か。
ってことは、その8つも年上のキレエなお姉さんに、いいように遊ばれたってわけね。
海晴さんかて、そんなにマジになるほうじゃないけど……今回はかなりハマってたな、こりゃ。
「今まで散々好きらってゆってたのに……やっぱ旦那のほうがいいって…」
「っ!! 人妻かい!」
思わず突っ込む。
人様のもんに手ェ出したらダメでしょ、アンタも大人なんだから。
「うっせぇ、お前に何が分かるんだよ!」
「ゴメン、ゴメンて。だからもうちょっと声小さくして…」
零しそうになってるビールの缶を手から離してやり、何とか海晴さんの気を鎮めさせる。
夜中の2時にそんなに騒がないでよ、マジで。
「お前なんかに俺の気持ちが分かるかよー…」
「そうだね、ゴメン」
「…ん、まぁ、い…けど」
「眠いの?」
「んーん…」
緩くかぶりを振るけど、もうまぶたは半分落ちてるし、頭は舟を漕いでる。
「もう寝る?」
「ん…」
コテンと海晴さんの頭が、俺の肩にも垂れてくる。
「海晴さん?」
呼びかけても返事はない。寝息だけが聞こえてきて。
「はぁ~、やっと寝た…」
ちょっとホッとする。
俺はソファからクッションを引っ張り下ろして海晴さんの枕にし、毛布を掛けてやった。
「年上、ねぇ…」
海晴さんが年上好きなのは前から知ってるし、最近も何となく浮き足立ってる海晴さんに、彼女いるんだろうなぁって薄々気付いてたけど、まさかそれが人妻で、しかも遊ばれてポイなんて結末は想像してなかった。
「年上、年下、年上…」
どんなに想っても。
どんなに努力しても。
決して変えられない、この年の差。
どんなにがんばっても俺は海晴さんの年下で。
男ってだけでもこの恋のハンデなのに、そんな余計な試練を与えなくてもいいのに。
「ホント、どうすりゃいいんだよ…」
短編だっつってんのに、前後編になってしまいました…。すみません。続きはまた明日。
決してキレイとは言い難いこの空間で、愛しい人は、かわいらしい寝息を立てて眠っていた。
「はぁ…、どうすりゃいいんだ…」
俺は普段吸わないように心がけているタバコに火を点けた。
*****
酔っ払ってぐでんぐでんになった海晴(ミハル)さんが俺んちに来たのは、夜中の2時を過ぎたころ。
ガンガンとドアを叩かれ、俺は慌てて玄関に向かった。
こんな時間に、この仕打ち。
イタズラにしては度が過ぎる。それとももっとヤバイ輩か? なんて思いつつ、モニターを覗けば、映っていたのは、職場の先輩で、俺の想い人の海晴さん。
俺の名前を呼ぶ声が、ドア越しに聞き取れる。
近所迷惑もいいところで、急いでドアを開けると、なだれるようにして海晴さんが入ってきた。
「酒くさ…」
俺に凭れるようにして何とか立っている海晴さんからは、それだけで分かるくらいアルコールのにおいが漂っている。
「ん~…アサノぉ~」
「どうしたの、海晴さん。とにかく中入って?」
子供に言って聞かせるようにして、海晴さんを連れて中に入る。
「あ、あ、あぁ…」
ソファに座らせてやろうとすると、海晴さんの体はズルリと滑って床に落ちた。
「水飲む?」
とりあえず海晴さんの体をソファに凭れさせる。
「いらな…、ん~アサノら~」
「そうですよー、アサノくんですよー」
すっかり呂律の回らなくなっている海晴さんは、俺の両手を掴んで、楽しそうに揺さ振っている。
「何か飲まないと、しんどいでしょ?」
「ビール!」
「飲めないでしょ?」
「飲むの! お前も飲め!」
飲めないと分かってても、とりあえず言われたとおりにビールぐらいは持ってこないと、海晴さんの気は治まらないかもしれない。
仕方なく缶ビールを持ってくると、海晴さんは吸いもしないタバコを1本灰にしていた。
「どうしたんすか? こんなに飲んで」
確か今日海晴さんは、友だちとメシに行くとか言って、嬉しそうに職場を後にしたはず。友だちとケンカしてやけ酒? まさか。
新しいタバコに火を点けた海晴さんは、一口吸って灰皿に置くと、ビールを受け取った。
「遊びらって…」
力の入らない手で必死にプルタブを開けようとしている海晴さんから缶ビールを受け取り、代わりに開けてやろうとしていると、ポツリと海晴さんが呟いた。
「俺とのことは遊びなんらって…、……う゛ー…」
「それって…」
"俺とのこと"ってことは、それには相手がいるわけで。
「今日、友だちとメシじゃなかったの?」
気付きかけてる真実から目をそむけ、俺は遠回しにそう尋ねる。
「メシじゃねぇよ、このデコ!」
もうフニャフニャになってるのに、しっかりと俺のデコに突っ込みを食らわせ、海晴さんはビールに口を付ける。
「ここんとこ急いで帰ってたの、そのため?」
「らって、好きらって…俺のこと…」
「いくつ年上?」
「……8…」
……てことは、31歳か。
ってことは、その8つも年上のキレエなお姉さんに、いいように遊ばれたってわけね。
海晴さんかて、そんなにマジになるほうじゃないけど……今回はかなりハマってたな、こりゃ。
「今まで散々好きらってゆってたのに……やっぱ旦那のほうがいいって…」
「っ!! 人妻かい!」
思わず突っ込む。
人様のもんに手ェ出したらダメでしょ、アンタも大人なんだから。
「うっせぇ、お前に何が分かるんだよ!」
「ゴメン、ゴメンて。だからもうちょっと声小さくして…」
零しそうになってるビールの缶を手から離してやり、何とか海晴さんの気を鎮めさせる。
夜中の2時にそんなに騒がないでよ、マジで。
「お前なんかに俺の気持ちが分かるかよー…」
「そうだね、ゴメン」
「…ん、まぁ、い…けど」
「眠いの?」
「んーん…」
緩くかぶりを振るけど、もうまぶたは半分落ちてるし、頭は舟を漕いでる。
「もう寝る?」
「ん…」
コテンと海晴さんの頭が、俺の肩にも垂れてくる。
「海晴さん?」
呼びかけても返事はない。寝息だけが聞こえてきて。
「はぁ~、やっと寝た…」
ちょっとホッとする。
俺はソファからクッションを引っ張り下ろして海晴さんの枕にし、毛布を掛けてやった。
「年上、ねぇ…」
海晴さんが年上好きなのは前から知ってるし、最近も何となく浮き足立ってる海晴さんに、彼女いるんだろうなぁって薄々気付いてたけど、まさかそれが人妻で、しかも遊ばれてポイなんて結末は想像してなかった。
「年上、年下、年上…」
どんなに想っても。
どんなに努力しても。
決して変えられない、この年の差。
どんなにがんばっても俺は海晴さんの年下で。
男ってだけでもこの恋のハンデなのに、そんな余計な試練を与えなくてもいいのに。
「ホント、どうすりゃいいんだよ…」
短編だっつってんのに、前後編になってしまいました…。すみません。続きはまた明日。
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COMMENT-FORM
柚子季@携帯 ⇒
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
短編だって言ってるのに、ついつい話が長くなってしまう私…。
すみません~。
私には珍しい、年の差ネタ。
年上のくせに全然年上っぽくない海晴さんですが。。。
コメントありがとうございます!
すみません~。
私には珍しい、年の差ネタ。
年上のくせに全然年上っぽくない海晴さんですが。。。
コメントありがとうございます!
りり ⇒ 待てない~~~
危なっかしい年上の海晴さんがもう……。
アサノくん!チャンスだわ!!
ハァハァ…。
いけない。世の中に出かけていく時間になってしまった。
きっと顔がやばいほど弛んでる~~~(汗
アサノくん!チャンスだわ!!
ハァハァ…。
いけない。世の中に出かけていく時間になってしまった。
きっと顔がやばいほど弛んでる~~~(汗
如月久美子 ⇒ >りりさん
ホント、危なっかしい子…。
つい、無邪気な天然小悪魔ちゃんを書いちゃうことが多いんですよね。
そういう意味で、海晴さんはモロ好みだったりして。。。
お出かけ前の忙しい時間に、ご訪問ありがとうございます。
コメントありがとうございました!
つい、無邪気な天然小悪魔ちゃんを書いちゃうことが多いんですよね。
そういう意味で、海晴さんはモロ好みだったりして。。。
お出かけ前の忙しい時間に、ご訪問ありがとうございます。
コメントありがとうございました!