恋三昧

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「…うん、じゃあそうする」

　お風呂嫌いなくせして、睦月は素直に頷くと、今度こそ風呂のほうに向かっていった。
　…睦月の嘘。
　前にもそういうことがあったけれど、睦月は自分の内緒の行動を隠しておきたくて、結果的に、亮たちの嘘をついてしまうことがある。
　それは、みんなに迷惑を掛けたくないとか、余計な心配を掛けたくないとか、睦月なりの思いがあってのことなのだが、今回も、翔真のあの様子からして、そういうことなのかもしれない。

　亮は少し考えてから、翔真の部屋に向かった。
　睦月が本当に風呂に行ったのなら、戻って来るのは早い。翔真から話を聞いている間に戻って来られたら、きっとお互い気まずいだろうから。

「ショウ～」
「…よぉ」

　亮が来るのを予想していたのか、部屋のドアはすんなり開いた。
　部屋に慶一郎はいないようで、翔真は亮を部屋に上げてくれる。

「結局、どういうことなわけ?　さっき、一緒に帰って来たんだよな?　睦月、俺には風呂行く、つって出てったんだけど?　なのに何でショウと一緒に帰って来るわけ?」
「…芽衣のこと、」
「は?」

　翔真の口から出たのが意外な名前だったので、亮は意味が分からず、思わず聞き返した。
　以前、相談…というか、愚痴を聞いてほしくて翔真にこのことを話したら、翔真のところにもその噂が届いていたというから、仰天したのは記憶に新しい。
　しかし今は睦月のことが聞きたいのであって、彼女の話はしたくないのに。

「お前のあの噂……嘘だから信じないで、て言いに行ってきた」
「、えっ、は?」

　翔真の言葉の意味が本気で分からず、亮は眉を寄せて首を傾げた。
　確かに芽衣との噂はまったくの嘘だが、それを信じないように言って来たって…………睦月が?　でも、睦月にはこの話はしていないし。

「お前、電話で芽衣とのこと、話さなかった?　何かむっちゃん、それ聞いてたみたいで、何があったんだ、て俺んトコに来たんだよ」
「あー……」　

　それには亮も覚えがある。
　斗真からメールが来た後、睦月は寝ているから大丈夫と思って、部屋で折り返し電話をしたのだ。まさかその電話を聞かれていたなんて…。



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