恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

恋は七転び八起き

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恋は七転び八起き (10)


「何で槇村くん、俺と付き合ってくれないのかなぁ…?」

 はぁ…と溜め息を零して、央は半分ほど食べた焼きそばパンを机に置いた。先ほどの七海の言葉には、答える気はないようだ。

「央ちゃんが男だからじゃない?」

 自分の話が無視されたことは特に気にせず、七海は結構デリケートな央の質問に、あっさりばっさり、何のデリカシーもなく答えた。
 男である央に告白されて、それを気持ち悪がったり嫌悪したりすることはないから、少なくとも同性愛に対して偏見はなさそうだが、だからといって、槇村も男が好きかと言ったら、必ずしもそうとは限らないだろう。

「槇村くん、女のほうが好きなのかなぁ…?」
「そうなんじゃない? 知らんけど」

 適当に答えて、七海はパックの牛乳を吸い込んだ。そういえば七海はよく牛乳を飲んでいるけれど、やっぱり牛乳を飲むとこうも身長が高くなるのか…と、170cm台にも届かない圭人はしばしば思う。

「でもさぁ! 付き合ってみたら、おっ…男だっていいかもよ…?」
「いや…、それ、俺らに言われても…」

 急に力強く声を上げて、でも内容が内容だけに最後は声を潜めて央はそう言ったけれど、それを七海や圭人に言われても困る。

「じゃあ、槇村くんに言ってみたらいいの? そしたらオッケーしてくれるかな!?」
「どうだろうなぁ…」
「何だよ! お前が、何かしろとか、俺らに言っても…とか言ったんだろ!」

 七海の発言だけ考えれば、朝から切れどころはたくさんあったはずなのに、なぜか今さらこんなタイミングでぶち切れた央に、しかし七海はのん気に構えているから、圭人が代わりに央を宥めてやった。

「あぁ~もう、何でなの槇村くんっ…」
「んー…アレなんじゃない? 槇村さん、めっちゃおっぱい好きとか」
「は?」
「だって央ちゃん、全然おっぱいないじゃん? おっぱい好きなら、男もいいかも…とは思わなくない?」
「そ…そっかぁ…」

 何だその理論は、と圭人は呆れた気持ちで七海を見たが、央にはものすごく説得力のある説明だったようで、七海に尊敬の眼差しを向けていた。
 ちなみに、一回り以上年上の槇村のことを、当然圭人も七海も『さん付け』で呼ぶが、兄の純平の影響からか、央は普通に『槇村くん』と呼んでいるのだ。

「おっぱい…」

 央は、焼きそばパンの次に食べるつもりだったメロンパンと、七海が封を開けようとしていたあんパンを手に取ると、おもむろにそれを自分の胸元へと持って行った。

「央!」

 慌ててそれを止めたのは圭人だ。七海はあんパンを取られて、え~ちょっとぉ、みたいな顔をしたが、それはあんパンに対しての執着だけで、その後の央の行動など気にしていない。



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恋は七転び八起き (11)


「だって、おっぱい…。こんなのがいいんでしょ?」
「央、やめなって!」

 せっかく圭人が止めたのに、央は結局メロンパンとあんパンを自分の両胸に当てた。服の上からだが、即席の偽おっぱいの完成だ。

「あっはっはっはっ、央ちゃん、キモッ」

 本はと言えば、七海のおっぱい発言が原因だというのに、七海は無責任に高笑いしている。
 圭人の止める声と、七海のバカ笑いのせいで、クラスメイトの視線が3人……いや、パンでおっぱいを作っている央に向くが、それに気付いたのは圭人だけで、央は「おっぱい…、槇村くん…」と嘆き悲しんでいるだけだし、七海は笑いすぎて噎せ返っているしで、全然ダメだ。

「央、央、とりあえずそのパンを離そうか」

 シュンとして俯いてしまったにも関わらず、両手のパンおっぱいだけはそのままの央に、圭人はその手首を掴んで、何とか胸からパンを退かした。

「やっぱり槇村くん、ボインのオネエちゃんが好きなのかなぁ…」
「そりゃそうでしょ、男はみんな、ボインボインのオネエちゃんが好きなんだって」
「うぅ…」

 七海は追い討ちをかけると、央からあんパンを奪い返した。

「ななみん、余計なこと言わないで!」
「あっはっはっ」

 涙まで浮かべて笑っている七海には、この後、央を慰める気など更々ないだろう。その役目は、そのまま圭人に回って来るのだ、勘弁してほしい。

「央、ホラ、顔上げて、ご飯食べな?」
「圭ちゃ~ん…」

 素直に顔を上げた央は涙目で、人一倍の優しさを持っている圭人はそんな央が不憫でならなくて、自分の弁当から央の好物である唐揚げをつまむと、その口に入れてやった。

「でもさぁ、央ちゃんて、槇村さんのどこが好きなわけ?」
「カッコいいところ!」

 大好きな唐揚げを食べて少し復活した央が(唐揚げ1つで、単純な男だ…)、七海の質問に元気よく即答する。

「何だ、外見か」
「外見だけじゃないよ、中身もカッコいい」
「例えば?」
「ぅ?」
「中身もカッコいいエピソード、教えてよ」

 七海は、1度だけ槇村に会ったことがある。央が告白しに行こうとしたとき、圭人がどうしても都合が悪くて、けれど央がどうしても行くと言うから、代わりに付いて行ったのだ。外見なら、央が一目惚れしたと言ってもあり得なくはないイケメンだったが、たった1度の出会いでは、中身の良さまでは分からない。



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恋は七転び八起き (12)


「そんなのいろいろあるよ!」
「だから、何?」
「ッ、何でそんなん、お前に言わなきゃなんないんだよ! アホ! 死ね!」
「え…、何で俺、こんなに罵られないといけないの? いや、別にそこまで知りたいわけじゃないから、言いたくないなら言わなくてもいいけど」

 何となく流れで聞いただけで、槇村の内面の良さなんて、七海にしてみれば別にどうでもいいことだ。
 まぁ、もし槇村がすごく嫌な男で、恋人同士になったとき、央がツラい思いをするのだとしたら、それは困るけれど、そもそも槇村は央の告白を断っているわけで、今のところその心配もない。
 というか、央のこの焦り方からして、そんなエピソード、本当はないのではないかと思えてくるのだが…。

「あぁ~でもどうしよっ。槇村くんがボインのオネエちゃん好きなんだとしたら、俺、勝ち目ないわ~。なぁ圭ちゃん、どうしたらいいと思う!?」
「えっ…えー…」

 急に話を振られ、圭人は返事に困る。そんな難解な質問のときにだけ、自分に話を振らないでほしい。圭人は困って七海を見たが、パンを食べ終えた七海は、腹一杯で眠くなったのか、あくびをしていて、まったく頼りにならない。

「でも央、ホントに槇村さんがボインのネエちゃんが好きかどうかなんて分かんないじゃん。確かめたわけじゃないでしょ?」
「ないけどぉ…」

 先ほどの七海の話では、すべての男が女性の胸を好きであり、出来れば大きいほうがいいと思っている、ということになるが、一概にそうとは言えないだろう。現に央は、女性の胸への興味なんて、まるでないではないか。

「あー知りたいっ、知りたいよぉ、圭ちゃぁ~ん」
「そんなこと言われても…、俺、槇村さんにそんなこと聞くなんて嫌なんだけど」
「うぅ…」

 央が恋を実らせるためにがんばると言うなら、面倒くさいけれど、圭人も出来る限り手伝ってやりたいとは思うが、そんな変態くさい質問を投げ掛ける役目なんて、絶対にゴメンだ。

「そんなの、央ちゃん、自分で聞いたらいいじゃん。知りたいんでしょ?」
「絶対嫌だわっ。そんなの聞いたら、変態だと思われるだろっ」
「あ、変態くさい質問だってことは分かってたんだ」

 困り果てる央に七海がいい加減な提案をしたら、それはあっさりと拒絶された――――が、央はその質問が変態くさいことは自覚していていたようだ。分かっていて圭人に頼もうとしていたあたり…。

「あ、いいこと思い付いた!」
「え、何?」
「圭人、聞かないほうがいい。絶対ろくなことじゃないわ。見てみ、央ちゃんのあの悪そうな顔」

 急に央が顔を輝かせたので、一体どんな名案が閃いたのかと思ったが、七海の言うとおり、確かに悪そうな顔をしている。名案と言うより、悪知恵に違いない。余計なとばっちりを受けないためにも、ここは何も聞かないでおこう。
 それよりも、央は思い付いた『いいこと』にニンマリしているが、それによって知り得た槇村の女性の胸に対する志向が、央の望まない答えだったらどうするつもりなのだろう。
 浮かれている央を見ながら、圭人は困ったように眉を下げ、七海は呆れたように首を横に振った。



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恋は七転び八起き (13)


  央・純平



「ただいまー」
「あっ、純平くんだ!」

 夕食のトンカツを口に運んでいた央は、玄関から聞こえて来た純平の声に、バタバタと玄関に駆け出した。
 いつもは純平が帰って来ても知らん顔で夕食を食べている央が、顔を輝かせて純平を出迎えに行くものだから、両親は何事かと顔を見合わせた。

「純平くん、お帰りっ!」
「おぉ~央ちゃん、どうした」

 純平にとっても、央のお出迎えなんて滅多にないことだから、喜びのあまり、デレッと顔を崩す。

「なぁ純平くん、お願いがあるんだけど! 聞いてくれる?」
「お願い? 何でしょう! かわいい弟のためなら、何だってしようじゃありませんか!」
「ホント!? だったらお願い! 槇村くんに、ボインのオネエちゃんが好きかどうフガッ」

 何でも聞くと言った手前、純平は最後まで話を聞こうとしたが、飛び出したワードがあまりにもどえらいものだったので、慌てて央の口を塞いだ。
 ここは家の玄関で、ちょっと向こうの台所には両親がいるのだ。槇村の名前だけならギリギリセーフだが、その後のボインのオネエちゃんはまずい。非常によろしくない。

「央ちゃん、お部屋行こっか?」

 純平が声を潜めて尋ねると、央は黙ったままコクコクと頷いたが、果たして彼に、純平が口を塞いだ理由と、部屋に行こうと行った理由が理解できただろうか。

「純平くん、お願い! 槇村くんに、ボインのオネエちゃんが好きかどうか聞いて!」
「……………………はい?」

 素直に純平の言うことを聞いて、無言で部屋まで付いて来た央は、部屋に入った途端、先ほど途中で遮られたお願いを一気に伝えた……が、純平の反応は薄かった。玄関を開けて、『ただいま』と言ったときのテンションはど

こに行ったのだろう。

「えー…っと、央ちゃん、何て?」
「ぅん? だからぁ、槇村くんに、ボインのオネエちゃんが好きかどうか聞いて?」

 純平があまりにも静かに聞き返すものだから、つられたのか、央も普通の声色に戻って、しかし変わらずとんでもない内容を言うのだった。

「………………、えーっとですね、」

 央にしたら、もう3度も同じことを言っているのだ。これ以上聞き返したら、確実に切れられる。しかし純平は、それでももう1度確認したかった。1度と言わず、何度でも。



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恋は七転び八起き (14)


「槇村くんに…………聞く? ボインのオネエちゃんが好きかどうか…?」
「うん!」

 改めて自分の口から発してみて、それがいかにハレンチな質問かと自覚した純平は、いい年をして顔を赤くさせた。いや、央が明るくはつらつと言っていたときは、そんなこと全然思わなかったが、いざ自分が言うと、とんでもなく卑猥な感じがする。

「ゴメンな央ちゃん、もっかい確認させて? えっと…、槇村くんに、ボインのオネエちゃんが好きかどうかを聞くの? 俺が?」
「純平くん以外に誰がいるの!」
「えっ…」

 純平以外の誰かを挙げよ、と言われても誰も思い付かないが、かといって、純平がその質問を槇村にぶつけるのに最適な人間かと言われたら、そんなことはないと断言したい。
 だが、残念ながら央はそうとは思っていないようだ。

「だって純平くん、毎日会社で槇村くんに会ってるんでしょ? 聞くチャンス、いっぱいあるじゃん!」
「それだけの理由で!?」
「それだけ…て、十分すぎる理由じゃん!」

 理不尽な理由を純平にぶっつけては、何とか言い包めようとしてくる。

「ちょっちょっと待って央ちゃん、まずは話聞かせて? 何なん? 何でなん? 何でそんなこと知りたいわけ?」
「知りたいから」
「………………」

 自分に立った白羽の矢をどうにか抜いて、話を別の方向へ持って行こうと純平は奮闘したが、呆気なく返されて終わった。

「いや、だからね…、何で知りたいのかなぁ…て」
「何でそんなこと純平くんに言わなきゃなんないの!」
「えぇー!! そこは言ってもらわないと! 俺、わけも分からずそんなこと聞くの嫌だぁ!」
「あ、聞くことは聞いてくれるんだ! ありがとう純平くん!」
「あ…」

 最終的にはお断りする方向で考えていたのに、つい口を滑らせた純平は、央にしっかりと言葉尻を取られて、結局央のお願いを聞くはめになってしまった。
 兄と違い、央は頭の回転がすごく速いのだ。

「あーもうっ、分かりました! 聞きます、聞けばいいんでしょ!」

 純平はやけになって、開き直った。拗ねた言い方が、ちょっと気持ち悪い。



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