智紀×慶太
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ろくな愛をしらない 05
2008.01.29 Tue
「どうして相川さんは、俺を誘うんですかね」
約束どおり、俺は、春原さんと一緒に、相川さんが待っているという店に向かう。
その道中、何となく春原さんに尋ねてみた。
「さぁ、でも何か慶太のこと、ずいぶん気に入ってるみたいだけど」
グラデーションのかかった淡いブラックのサングラス越しに俺を見て、春原さんは肩を竦めた。
さすがの春原さんでも、自分の親友が何を考えてるのか分からないときがあるらしい。
そりゃそうだ。相川さんから聞かされでもしてない限り、相川さんがあんなことしただなんて、思いはしないだろう。
「……俺、別に相川さんに気に入られるようなこと、した覚えないんですけど」
「慶太、トモのこと、苦手?」
「え? いや、別に…」
「何かそういうふうに聞こえた。でもまぁ、何がきっかけでその人のこと好きになるかなんて分かんないじゃん? 話せば印象が変わることだってあるしさ」
「そう……ですね」
実際のところ、相川さんにどう思われてるのかは分からない。好かれているのか、嫌われているのか。
キスするくらいなんだから、嫌われているわけではないのかも。
それとも嫌がらせのキス? 嫌がらせだとしたって、俺は嫌いな奴にキスなんかしたくないけどな。
ってか、嫌われるほどの接点も持ち合わせてないんですが。
嫌いなら嫌いでもいいけど、なら何でまた誘うわけ?
考えれば考えるほど、分からなくなる。
待ち合わせの居酒屋。
通された個室では、相川さんがすでにビールの中ジョッキを半分以上空けていた。
「何だトモ、1人で始めちゃってんの?」
「だってお前ら遅ぇんだもん」
ちょっとふて腐れたようにそう言って、相川さんはジョッキを空にした。
「だって俺ら、忙しいし~?」
「俺だって忙しいよ!」
「補習?」
「うるせぇよ」
「受けさせてもらえるだけ、ありがたいと思いなよ」
「うるせぇって!」
春原さんに向ける、相川さんの顔。
ごく普通の、大学生の男の顔で(男前だけど)。
「慶太、何飲む? ウーロン茶?」
春原さんが相川さんとは向かい側の席に着いて、俺はその横に座ろうとしたのに、なぜか堂々と真ん中に座るもんだから、俺は仕方なく相川さんの隣に座る破目に。
メニューを見せられながら問われ、とりあえず頷くと、相川さんが不思議そうに俺のほうを見た。
「お前、飲まねぇの?」
「え?」
「酒」
「……未成年なんで」
一応そう断りを入れると、相川さんが大げさなくらい驚いた顔をする。
「はぁ!? ウッソ! マジで!?」
「……マジです。今度誕生日が来て、20歳になりますけど」
そう言ってもまだ相川さんは、『マジ!?』とか言ってる。年上に見られるのはいつものことだから、まぁいいんだけど。
「2月だからさ、もうすぐだよね、慶太」
「はい」
春原さんの言葉に頷けば、相川さんが「へぇ」と眉を少し上げた。
「俺も2月だし。4日」
お前は? と目で問われて、11日だと答えれば、「近いじゃん! 2人!」と、なぜか春原さんのテンションが急上昇した。
春原さんが一緒にいるからだろうか、この間、相川さんの家で2人きりになったときのような雰囲気はない。
「でも2月4日って、真琴と同じだよね、誕生日」
「真琴と!? そうなんだー、俺、真琴と同じ誕生日なんだー」
なんて、相川さんが急にはしゃぎ出した。
「何その喜び方」
「えー、嬉しいじゃん、真琴と誕生日一緒!」
「意味分かんないし」
「だって真琴かわいいじゃん」
「そうだけど、お前がはしゃぐ理由が分かんないし」
呆れたように冷静に突っ込む春原さんに、相川さんはまだニコニコしてる。
その顔見てると……何だろ、何かイライラする。別に今はいいじゃん、真琴のことは。てか、誕生日が同じだからって、はしゃぐようなキャラかよ。
何で真琴と誕生日一緒って分かって、そんなに喜ぶわけ?
あーイライラする。
相川さんと春原さんが喋ってるって構図はこの間と一緒だけど、今日は歩がいなくて、俺は2人の話を聞きながらメシ食ってるだけ。
時々春原さんが話を振ってくれるのに答えるだけの俺をメシになんか誘って、相川さん、何がおもしろいのかな? 単にまたからかいたかっただけ?
「ちょっとトイレー」
店に来て1時間くらいしたところで、春原さんが個室を出て行った。
2人きり。
チラリと相川さんのほうを窺うと、こちらを見ていた相川さんと目が合った。
「、」
「何で目逸らすんだよ?」
「相川さんこそ……何、…ってか、俺なんか誘っておもしろいですか? お酒飲めるわけじゃないし、」
春原さんと2人で話し盛り上がってるし、…………真琴と誕生日一緒ではしゃいでるし。
「おもしろいね。お前見てると全然飽きない」
「どういう意味ですか?」
「だってさぁ、俺の言ったこと1個1個に超反応してるし」
「してません!」
「さっき俺が真琴と誕生日一緒ではしゃいでるとき、お前凄い顔してたぜ? 気付いてなかったの?」
「ッ、」
反論しようとして、言葉に詰まった。
確かにあのときは、何だか無性にイライラして…。
「俺が他の奴の話したのが、おもしろくなかったの?」
「…ッ、何で…、―――――ッ…」
スッと俺のほうへと伸びてきた相川さんの手に思わず身構えると、その指先が俺の唇に触れた。
ヤバイ。
首を振ればその手を払える。後ろにでも逃げさえすれば。
でも、動けない。
その目が。
「震えてる…………俺のこと、怖い?」
「ちが……ッ…」
相川さんの言葉を否定しようとして口を開けば、そのきれいな指先が、口の中に入り込んでくる。
冷たいような、熱いような、不思議な感覚。
逃げようと首を後ろに少し引けば、追い掛けるように指が動いて舌に触れた。
「やめ…」
俺の舌を押すように相川さんの指がゆっくりと動いて。
「ねぇ、俺が他の奴に興味示すの、イライラする? お前のほう見ないの、イヤ?」
違う、違う、違う!
何で俺がそんなことにイラ付かなきゃいけないんだ。
別にそんなこと、どうだっていい。
相川さんが誰のこと見てようと、誰に興味を持とうと、誰のことを好きになろうと…。
別に俺は相川さんのことなんて…………
「―――――イッ…」
漏れた小さな声に、俺はハッとした。
彷徨わせていた視線を相川さんに向ければ、少しだけ顔を歪めている。
高ぶった感情に任せて、相川さんの指を噛んだからだ。
口の中から相川さんの指がなくなって、俺は慌てて後ずさって逃げようとしたけれど、それより先に相川さんに手首を掴まれて。
「離し…!」
そんな俺の抵抗なんて物ともせず、相川さんは掴んだ俺の手をグイと引っ張って、自分のほうへと引き寄せた。
いきなりのことに頭も体も付いていかない俺は、ガクリと相川さんの前へとへたり込む。
何がどうなってるのかよく分からなくて、項垂れたままになっていると、相川さんの反対の手が俺の顎を掴んで、上を向かされた。
「ッ…」
その瞬間、かち合った瞳、その視線の強さに、思わず息を飲む。
「……おもしれぇ」
クッと、相川さんが喉の奥で笑った。
「ますますはまりそう」
約束どおり、俺は、春原さんと一緒に、相川さんが待っているという店に向かう。
その道中、何となく春原さんに尋ねてみた。
「さぁ、でも何か慶太のこと、ずいぶん気に入ってるみたいだけど」
グラデーションのかかった淡いブラックのサングラス越しに俺を見て、春原さんは肩を竦めた。
さすがの春原さんでも、自分の親友が何を考えてるのか分からないときがあるらしい。
そりゃそうだ。相川さんから聞かされでもしてない限り、相川さんがあんなことしただなんて、思いはしないだろう。
「……俺、別に相川さんに気に入られるようなこと、した覚えないんですけど」
「慶太、トモのこと、苦手?」
「え? いや、別に…」
「何かそういうふうに聞こえた。でもまぁ、何がきっかけでその人のこと好きになるかなんて分かんないじゃん? 話せば印象が変わることだってあるしさ」
「そう……ですね」
実際のところ、相川さんにどう思われてるのかは分からない。好かれているのか、嫌われているのか。
キスするくらいなんだから、嫌われているわけではないのかも。
それとも嫌がらせのキス? 嫌がらせだとしたって、俺は嫌いな奴にキスなんかしたくないけどな。
ってか、嫌われるほどの接点も持ち合わせてないんですが。
嫌いなら嫌いでもいいけど、なら何でまた誘うわけ?
考えれば考えるほど、分からなくなる。
待ち合わせの居酒屋。
通された個室では、相川さんがすでにビールの中ジョッキを半分以上空けていた。
「何だトモ、1人で始めちゃってんの?」
「だってお前ら遅ぇんだもん」
ちょっとふて腐れたようにそう言って、相川さんはジョッキを空にした。
「だって俺ら、忙しいし~?」
「俺だって忙しいよ!」
「補習?」
「うるせぇよ」
「受けさせてもらえるだけ、ありがたいと思いなよ」
「うるせぇって!」
春原さんに向ける、相川さんの顔。
ごく普通の、大学生の男の顔で(男前だけど)。
「慶太、何飲む? ウーロン茶?」
春原さんが相川さんとは向かい側の席に着いて、俺はその横に座ろうとしたのに、なぜか堂々と真ん中に座るもんだから、俺は仕方なく相川さんの隣に座る破目に。
メニューを見せられながら問われ、とりあえず頷くと、相川さんが不思議そうに俺のほうを見た。
「お前、飲まねぇの?」
「え?」
「酒」
「……未成年なんで」
一応そう断りを入れると、相川さんが大げさなくらい驚いた顔をする。
「はぁ!? ウッソ! マジで!?」
「……マジです。今度誕生日が来て、20歳になりますけど」
そう言ってもまだ相川さんは、『マジ!?』とか言ってる。年上に見られるのはいつものことだから、まぁいいんだけど。
「2月だからさ、もうすぐだよね、慶太」
「はい」
春原さんの言葉に頷けば、相川さんが「へぇ」と眉を少し上げた。
「俺も2月だし。4日」
お前は? と目で問われて、11日だと答えれば、「近いじゃん! 2人!」と、なぜか春原さんのテンションが急上昇した。
春原さんが一緒にいるからだろうか、この間、相川さんの家で2人きりになったときのような雰囲気はない。
「でも2月4日って、真琴と同じだよね、誕生日」
「真琴と!? そうなんだー、俺、真琴と同じ誕生日なんだー」
なんて、相川さんが急にはしゃぎ出した。
「何その喜び方」
「えー、嬉しいじゃん、真琴と誕生日一緒!」
「意味分かんないし」
「だって真琴かわいいじゃん」
「そうだけど、お前がはしゃぐ理由が分かんないし」
呆れたように冷静に突っ込む春原さんに、相川さんはまだニコニコしてる。
その顔見てると……何だろ、何かイライラする。別に今はいいじゃん、真琴のことは。てか、誕生日が同じだからって、はしゃぐようなキャラかよ。
何で真琴と誕生日一緒って分かって、そんなに喜ぶわけ?
あーイライラする。
相川さんと春原さんが喋ってるって構図はこの間と一緒だけど、今日は歩がいなくて、俺は2人の話を聞きながらメシ食ってるだけ。
時々春原さんが話を振ってくれるのに答えるだけの俺をメシになんか誘って、相川さん、何がおもしろいのかな? 単にまたからかいたかっただけ?
「ちょっとトイレー」
店に来て1時間くらいしたところで、春原さんが個室を出て行った。
2人きり。
チラリと相川さんのほうを窺うと、こちらを見ていた相川さんと目が合った。
「、」
「何で目逸らすんだよ?」
「相川さんこそ……何、…ってか、俺なんか誘っておもしろいですか? お酒飲めるわけじゃないし、」
春原さんと2人で話し盛り上がってるし、…………真琴と誕生日一緒ではしゃいでるし。
「おもしろいね。お前見てると全然飽きない」
「どういう意味ですか?」
「だってさぁ、俺の言ったこと1個1個に超反応してるし」
「してません!」
「さっき俺が真琴と誕生日一緒ではしゃいでるとき、お前凄い顔してたぜ? 気付いてなかったの?」
「ッ、」
反論しようとして、言葉に詰まった。
確かにあのときは、何だか無性にイライラして…。
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「…ッ、何で…、―――――ッ…」
スッと俺のほうへと伸びてきた相川さんの手に思わず身構えると、その指先が俺の唇に触れた。
ヤバイ。
首を振ればその手を払える。後ろにでも逃げさえすれば。
でも、動けない。
その目が。
「震えてる…………俺のこと、怖い?」
「ちが……ッ…」
相川さんの言葉を否定しようとして口を開けば、そのきれいな指先が、口の中に入り込んでくる。
冷たいような、熱いような、不思議な感覚。
逃げようと首を後ろに少し引けば、追い掛けるように指が動いて舌に触れた。
「やめ…」
俺の舌を押すように相川さんの指がゆっくりと動いて。
「ねぇ、俺が他の奴に興味示すの、イライラする? お前のほう見ないの、イヤ?」
違う、違う、違う!
何で俺がそんなことにイラ付かなきゃいけないんだ。
別にそんなこと、どうだっていい。
相川さんが誰のこと見てようと、誰に興味を持とうと、誰のことを好きになろうと…。
別に俺は相川さんのことなんて…………
「―――――イッ…」
漏れた小さな声に、俺はハッとした。
彷徨わせていた視線を相川さんに向ければ、少しだけ顔を歪めている。
高ぶった感情に任せて、相川さんの指を噛んだからだ。
口の中から相川さんの指がなくなって、俺は慌てて後ずさって逃げようとしたけれど、それより先に相川さんに手首を掴まれて。
「離し…!」
そんな俺の抵抗なんて物ともせず、相川さんは掴んだ俺の手をグイと引っ張って、自分のほうへと引き寄せた。
いきなりのことに頭も体も付いていかない俺は、ガクリと相川さんの前へとへたり込む。
何がどうなってるのかよく分からなくて、項垂れたままになっていると、相川さんの反対の手が俺の顎を掴んで、上を向かされた。
「ッ…」
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「……おもしれぇ」
クッと、相川さんが喉の奥で笑った。
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ろくな愛をしらない 06
2008.01.30 Wed
3日前にアイツに付けられた指先の歯型は、とっくの昔に消え失せていた。
【相川智紀】
学校とかで流れてる噂が全部本当だとは言わないけれど、確かに女に不自由したことはない。嘘でも何でもいわゆる"愛"ってやつを囁けば、女は寄ってくるし。
愛だの恋だの、そんなの面倒臭い。
そんなことに自分の感情を振り回されるのも。
…………本気の恋なんか、絶対にしない。
たまたま一緒にメシを食う機会があっただけ。
今まで学生会室で見掛けたことはあったけど、喋ったことなんか、それこそ1回もないし、興味もなかった(たぶんそれは向こうも同じだろうけど)。
拓海と一緒に俺の家に来て、落ち着かなそうにしてるのがおかしくて。
だからちょっと、からかってやりたくなった。
拓海が帰って、あからさまに居心地悪そうにしてるのも、何だか笑えた。だから。
顔は悪くない。
女と間違うような容姿ではないけれど、あの目がいい。ドングリみたいな大きな目、惹き付けられる。
別に男になんか興味ないけどさ、こういうタイプって、はまるな…………遊び相手として。女だったら、面倒くせぇって思うとこだけどさ、久住は男だし。
予想以上に、いい反応。(いくら相手が男だからって、今どきキスくらいであんな初心な反応するか?)
楽しくて、たまらない。
もっと仕掛けたら、どんな顔する?
「―――――指、」
「…………え?」
授業の始まる前、不意に掛けられた声に、俺はハッとそちらに目を向けた。高遠だ。
「指さぁ」
「は?」
そう言われて、何のことか分からず、自分の手に視線を移してみる。
「最近よく触ってるよね?」
「何が? 指は触るでしょ? 普通に」
「気付いてないの?」
高遠はおもしろそうに片方の眉を上げて、「それともわざと?」って聞いてきた。
「……意味分かんないんだけど」
「見せ付けてんのかと思った」
「だから、」
少しだけ、意地悪そうな顔だ、と思った。
高遠は時々こんな顔する。何となくすべてを見透かされてるみたいで、嫌なんだけど。
「智紀、最近妙にご機嫌だもんねぇ~」
ニヤリ。
……感付かれてる。
まぁ、俺が何で機嫌がいいかまでは分からないだろうけど。
「かわいい子でも見つかったんだ?」
「まぁ、ね」
そうか、指。
指ねぇ。
そういや、アイツに歯を立てられたんだっけ。
怯えた色を含みながらも、キツク俺を睨み付けて。
マジで、はまっちゃうそう。
「……お前、今、すげぇヤな顔してる」
「そりゃどうも。今、お楽しみの真っ最中なもんで」
「ほどほどにしとけよ」
高遠は、それ以上何か追及する気はないらしく、カバンの中からテキストを取り出して、それを開いた。
「フフ…」
おもしろい、おもしろい、おもしろい。
もっと、アイツのいろんな顔が見たい。
あの瞳に、俺の顔、映して。
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ろくな愛をしらない 07
2008.01.31 Thu
大嫌いなのに、もう全部忘れちゃいたいのに。
頭から離れなくて。
ねぇ、どうしたらいいの?
【久住慶太】
「なー、歩ー」
勝手知ったる歩の部屋。
俺はグダグダと床に転がりながら、雑誌を捲ってる歩に声を掛けた。
「んー?」
気のなさそうな声。こっちを見ようともしない。
「なー歩ー、なーってばぁ」
「何だよ」
面倒臭そうに顔を上げた歩は、だらけた格好の俺に、少しだけ眉を寄せた。しょうがねぇじゃん、今、心も体も疲れ切ってんだから。
「慶太さぁ、最近何か疲れてるよね」
「……あー、まぁ」
さすが親友。
俺のこと、よく見てるよね。
「で?」
「……最近、時々一緒にメシ行ったりする人がいるんだけど、何て言うか……正直、苦手だなぁ、って思うわけ」
「苦手なのに、一緒にメシ食いに行くんだ?」
「その人の友だちが、俺の知り合いで……何か断れない」
「何で苦手なんだよ」
歩は読んでた雑誌を閉じた。どうやら本格的に相談に乗ってくれるらしい。
でも俺は、だらけた格好のまま、体を起こさない。
「何考えてんのか、分かんないとこ」
チラリと、頭の片隅を、相川さんの顔が掠めた。
「話は?」
「時々する」
「するんだ」
「そんなにしたくないけど」
言うと、歩の眉間が少し寄った。
「話し掛けられるってこと? でも、仲良くなりたいなら、話し合うほかないんじゃない?」
「仲良くなりたいっていうか、何考えてんのか知りたい」
「なら、なおさら」
「でも、会いたくない」
「無茶言うなよ」
歩が困ったように溜息をつくから、俺はモゾモゾと身を丸くして、歩を視界から消した。
「だって、会うとイライラするし」
「何で?」
「知るかよ。その人のすること、全部イライラするし、その人の口から他の奴の名前が出るだけでイライラする」
そうなんだ。
あの人に会うと、いっつもイライラする。
だって、何考えてんのか全然分かんないし、俺のことからかって楽しんでるし、もう……わけ分かんない。
「…………あのさぁ、お前、」
少しの沈黙の後、歩が重々しく口を開いた。
俺は少し体を動かして、チラリと歩を見た。
「お前さぁ、その人のこと苦手なんじゃなくて、好きなんじゃねぇの?」
……………………。
「はぁ!?」
思わずガバッと体を起こした。
「いい反応するね。何? 図星?」
「バッ……そんなわけあるかよ! だってソイツ、おとっ…」
「は?」
「あ、いや…」
だって、ソイツ…………その人、男、だし。
ていうか、相川さんだし。
「慶太?」
「…………そんなわけない」
急に気が抜けちゃったみたいに、俺はペタンとそこに座った。
「そんなわけ…」
そんなわけ、あるはずない。
絶対ない。
絶対。
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ろくな愛をしらない 08
2008.02.01 Fri
授業が終わって、歩と待ち合わせてる構内のカフェテリアに向かおうとしていたところ、背後から肩を叩かれて、思わず身を竦めた。だって、全然気配を感じなかったから。
ビックリして振り返ったそこには、最悪の、1番会いたくない人物。
「……相川さん…」
「すげぇ嫌そうな顔。俺ってそんなに嫌われちゃってんの?」
「別に……何か用ですか?」
「冷たい奴ー」
わざとらしいオーバーリアクションで、相川さんは肩を竦めてみせる。
「何の用…」
「えー、一応メシのお誘いなんですが」
「ッ、何で、俺、なんですか?」
「何でって言われても」
結構勇気を持っての質問だったのに、苦笑にも似た曖昧な笑いに、あっさりと躱されてしまう。
「この後、何か予定あり?」
「…………」
予定はないけれど、ここで正直に答えれば、相手の思う壺だ。適当にごまかして流すしかない。
そう思って顔を上げた、相川さんのその向こう、
「あ…」
「え? アダッ!」
高遠さん……って付け加えようとするより先、渋い表情で背後にやって来た高遠さんが、その気配を感じて振り返った相川さんに何かを投げ付けた。
「バカ智紀! ふざけんな!」
「何? 何だよ、おい。てかこれ、俺のケータイじゃん! 何持ってんの?」
投げ付けられたものが自分の携帯電話だと分かって、相川さんが不満をぶつけるが、それよりも高遠さんの表情のほうがもっと険しいんですが。
「バカッ、何で俺とおんなじ機種のおんなじ色なんだよ!」
「は? 何が?」
「ケータイだよ! 俺も音バイブにしてっから、間違って出ちまったじゃねぇか!」
「何だよ、出たのかよ! 勝手に出るなよ!」
「俺のかと思ったんだよ!」
むーっと口を結んで、高遠さんは苛立たしげに言い放つ。まぁ、不可抗力とはいえ、勝手に電話に出られた相川さんも、腹立たしげだけど。
「つーか、何で待ち合わせに来ないの、て俺が怒鳴られたんだけど! 何で俺がお前の女に怒られなきゃなんないんだよ!」
「ゲッ…」
え…?
「あー、いや、妹?」
「お前んち、弟だろ?」
わざとらしい言い訳に、高遠さんは乗っかるでもなく冷静に突っ込み返すけど。
…………何?
女の子?
彼女ってこと? それとも遊び相手?
「何? その子が最近はまってるって子?」
「んー?」
「……まぁいいけど。つーか、折り返し掛けさせるっつっちゃったから、電話しとけよ?」
「えー!? 何でぇ? 超めんどくせぇ!」
「お前が俺と同じケータイにしてるから悪いんだ! 絶対掛け直せよ! 俺、こんなことで悪モンになりたくないし!」
高遠さんはもう1度念を押してから、俺らに背を向けて去っていった。
「ったく、高遠の奴ー」
ブツブツ言いながら、相川さんが俺のほうを振り返って、たった今高遠さんに押し付けられた携帯電話を、ジーンズのポケットにしまった。
「……掛けないんですか?」
「え?」
「電話」
「あー……まぁいいや」
「何で? 彼女でしょ? 俺なんか構ってないで、掛けたらどうですか?」
「違ぇって、いいんだっつの」
…………心がザワザワする。
彼女にしろ、単なる遊び相手にしろ、たとえ今電話を掛け直さないにしたって、結局はその子のところに行くんでしょう? それとも別の遊び相手?
それで…………キス、するの?
―――――冗談で。
「久住?」
「……もういいじゃないっすか。何で俺なの? 彼女だか遊び相手だか知らないけど、その子誘えばいいじゃん。冗談で俺にキスなんかしてないでさ」
「…んだよ、急に」
「キスは、好きな人とするもんでしょう?」
「はいはい、悪かったよ」
はぁー、って大きな溜め息。
キスを特別だって思ってるのは、俺だけかな? まぁ少なくとも、相川さんには通用しない理論みたいだけど。
「何で……そこまで俺のことからかいたいの? そんなの俺じゃなくて、言い寄って来る女にでもすればいい。あんたは冗談のつもりかもしれないけど、俺は…!」
「…………」
「……、ッ……もうこれ以上、俺の心を引っ掻き回さないでくれ!」
もう相川さんの顔なんか見てられなくて、怒ってるのか、呆れてるのか、お気に入りのおもちゃの反撃に戸惑っているのか、俺はそのまま相川さんに背を向けて駆け出した。
ビックリして振り返ったそこには、最悪の、1番会いたくない人物。
「……相川さん…」
「すげぇ嫌そうな顔。俺ってそんなに嫌われちゃってんの?」
「別に……何か用ですか?」
「冷たい奴ー」
わざとらしいオーバーリアクションで、相川さんは肩を竦めてみせる。
「何の用…」
「えー、一応メシのお誘いなんですが」
「ッ、何で、俺、なんですか?」
「何でって言われても」
結構勇気を持っての質問だったのに、苦笑にも似た曖昧な笑いに、あっさりと躱されてしまう。
「この後、何か予定あり?」
「…………」
予定はないけれど、ここで正直に答えれば、相手の思う壺だ。適当にごまかして流すしかない。
そう思って顔を上げた、相川さんのその向こう、
「あ…」
「え? アダッ!」
高遠さん……って付け加えようとするより先、渋い表情で背後にやって来た高遠さんが、その気配を感じて振り返った相川さんに何かを投げ付けた。
「バカ智紀! ふざけんな!」
「何? 何だよ、おい。てかこれ、俺のケータイじゃん! 何持ってんの?」
投げ付けられたものが自分の携帯電話だと分かって、相川さんが不満をぶつけるが、それよりも高遠さんの表情のほうがもっと険しいんですが。
「バカッ、何で俺とおんなじ機種のおんなじ色なんだよ!」
「は? 何が?」
「ケータイだよ! 俺も音バイブにしてっから、間違って出ちまったじゃねぇか!」
「何だよ、出たのかよ! 勝手に出るなよ!」
「俺のかと思ったんだよ!」
むーっと口を結んで、高遠さんは苛立たしげに言い放つ。まぁ、不可抗力とはいえ、勝手に電話に出られた相川さんも、腹立たしげだけど。
「つーか、何で待ち合わせに来ないの、て俺が怒鳴られたんだけど! 何で俺がお前の女に怒られなきゃなんないんだよ!」
「ゲッ…」
え…?
「あー、いや、妹?」
「お前んち、弟だろ?」
わざとらしい言い訳に、高遠さんは乗っかるでもなく冷静に突っ込み返すけど。
…………何?
女の子?
彼女ってこと? それとも遊び相手?
「何? その子が最近はまってるって子?」
「んー?」
「……まぁいいけど。つーか、折り返し掛けさせるっつっちゃったから、電話しとけよ?」
「えー!? 何でぇ? 超めんどくせぇ!」
「お前が俺と同じケータイにしてるから悪いんだ! 絶対掛け直せよ! 俺、こんなことで悪モンになりたくないし!」
高遠さんはもう1度念を押してから、俺らに背を向けて去っていった。
「ったく、高遠の奴ー」
ブツブツ言いながら、相川さんが俺のほうを振り返って、たった今高遠さんに押し付けられた携帯電話を、ジーンズのポケットにしまった。
「……掛けないんですか?」
「え?」
「電話」
「あー……まぁいいや」
「何で? 彼女でしょ? 俺なんか構ってないで、掛けたらどうですか?」
「違ぇって、いいんだっつの」
…………心がザワザワする。
彼女にしろ、単なる遊び相手にしろ、たとえ今電話を掛け直さないにしたって、結局はその子のところに行くんでしょう? それとも別の遊び相手?
それで…………キス、するの?
―――――冗談で。
「久住?」
「……もういいじゃないっすか。何で俺なの? 彼女だか遊び相手だか知らないけど、その子誘えばいいじゃん。冗談で俺にキスなんかしてないでさ」
「…んだよ、急に」
「キスは、好きな人とするもんでしょう?」
「はいはい、悪かったよ」
はぁー、って大きな溜め息。
キスを特別だって思ってるのは、俺だけかな? まぁ少なくとも、相川さんには通用しない理論みたいだけど。
「何で……そこまで俺のことからかいたいの? そんなの俺じゃなくて、言い寄って来る女にでもすればいい。あんたは冗談のつもりかもしれないけど、俺は…!」
「…………」
「……、ッ……もうこれ以上、俺の心を引っ掻き回さないでくれ!」
もう相川さんの顔なんか見てられなくて、怒ってるのか、呆れてるのか、お気に入りのおもちゃの反撃に戸惑っているのか、俺はそのまま相川さんに背を向けて駆け出した。
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ろくな愛をしらない 09
2008.02.02 Sat
【相川智紀】
『キスは、好きな人とするもんでしょう?』
…………ガキの戯言だよ。
そりゃ、気に食わねぇ奴とする気にはならねぇけど、だからって、キスくらい何だっての? 減るもんじゃなし。
何でそんなにマジになるのか分かんない。
ちょっと気になって声掛けてみたら、今まで周りにいなかったタイプで。それこそ言い寄ってくるバカな女どもとは、根本的に違う。
真面目で、素直で、だからって、つまらない一本気なわけじゃない。
俺の言葉1つに1つに面白いほど反応して、楽しませてくれる。狙ってそれが出来るほど器用な奴じゃないのは見てて分かるし。
だから、はまりかけてたのに。
『もうこれ以上、俺の心を引っ掻き回さないでくれ!』
あんな感情的な姿、初めて見た。
俺の目を見ようともせずに、掛けていった小さな後ろ姿。
あーあ、せっかく手に入れた掛けたおもちゃ、逃がしちゃった。
「……ん! トモ!」
「あ?」
拓海のデカイ声に視線を向ければ、咎めるような顔をした奴と目が合った。
「灰!」
「はい? 何?」
何かくれるの? って思ったら、「煙草の灰だよ、バカ!」って怒鳴られた。
「火事出す気か! 灰落ちるぞ」
拓海が俺の手から、吸い掛けのタバコを奪う。
殆ど吸わないうちに半分以上灰にしてしまったタバコを、拓海が灰皿に押し付ける様をぼんやりと眺める。
「トモ、何か今日、めっちゃテンション低くね?」
「俺が? 変わんねぇよ」
「んー……てか、今までが妙だったのかな?」
ブツブツ言ってる拓海をよそに、俺は新しい煙草に火を点ける。何となく拓海が嫌そうな顔をしたけれど、そんなのお構いなしだ。
「妙って何だよ」
「えー何かさぁ、何つーか、変だった! 何かこう……1人でほくそ笑んでる感じ」
「感じ悪ぃな、俺」
「うん、トモ、感じ悪いよ」
「そこは否定しろよ!」
相変わらずな感じの拓海に、2人でゲラゲラ笑い転げる。煙草の灰を落とさないように気を付けながら。
そしたら、ベッドの上に放り投げたままにしてた携帯電話が震えて、着信を告げる。
「あ、」
小さな液晶画面に表示されたのは、今はあんまり見たくなかった女の名前。
いいや、無視しちゃおう―――――って思ったのに。
「出ねぇの?」
すぐさま拓海に突っ込まれた。
「……出ねぇ。どうせ怒鳴られるだけだし」
「また何かしたんだ?」
ニヤニヤしながら拓海が聞いてくる。俺はタバコを灰皿に押し付けた。
「電話掛けろって言われてたのに、掛け忘れちった」
「バーカ、早く出てやれよ」
「もういいや」
「はぁ? またかよ」
拓海は呆れたように言ってくるけど、別に今、この女の声、聞きたい気分じゃないし。
しつこい電話のバイブレーションは、留守電に切り替わったところで途絶える。続けざまにもう1回掛って来て、それでも無視してたら、3回目の呼び出しはなかった。
「これでトモくんの失恋けってー」
拓海がさもおもしろそうに言ってくるから、足の裏で背中を蹴っ飛ばしてやる。
「るせぇよ、そんなんじゃねぇんだって、こいつは」
「あーそうですか。ったく、そんなことばっかしてっと、いつかしっぺ返し食うぜ? あ、しっぺ返しってのはね、」
「しっぺ返しの意味くらい知ってるよ!」
もう1回蹴ってやろうと思ったら、その足首を拓海に掴まれて、俺はベッドの上に転がってしまった。
「何すんだよ!」
「バーカ」
「あーもう、おもしろくねぇ!」
そのままベッドに大の字になって寝転がる。
何つーか、心がモヤモヤすんだよね。何かスッキリしねぇ。
「何それ。こないだまで気持ち悪いくらい上機嫌だったのに」
「気持ち悪いって何だよ、オイ!」
「あ、じゃあトモくんのお気に入りの、慶太でも呼んじゃう~?」
ベッドのほうに身を乗り出してきた拓海が、俺の顔覗き込みながらそう提案していた。
「トモ?」
「…………もういい」
「は?」
「アイツはもういいや」
「何それ。もう飽きたってこと?」
「別に」
せっかく見つけたお気に入りのおもちゃは、あっさりとその手を離れていって。
でもいい。
また代わりを見つければいいんだし。
そうすればきっと、またおもしろおかしい毎日が始まる。
それでいいんだ……。
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