恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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ろくな愛をしらない 05


「どうして相川さんは、俺を誘うんですかね」

 約束どおり、俺は、春原さんと一緒に、相川さんが待っているという店に向かう。
 その道中、何となく春原さんに尋ねてみた。

「さぁ、でも何か慶太のこと、ずいぶん気に入ってるみたいだけど」

 グラデーションのかかった淡いブラックのサングラス越しに俺を見て、春原さんは肩を竦めた。
 さすがの春原さんでも、自分の親友が何を考えてるのか分からないときがあるらしい。
 そりゃそうだ。相川さんから聞かされでもしてない限り、相川さんがあんなことしただなんて、思いはしないだろう。

「……俺、別に相川さんに気に入られるようなこと、した覚えないんですけど」
「慶太、トモのこと、苦手?」
「え? いや、別に…」
「何かそういうふうに聞こえた。でもまぁ、何がきっかけでその人のこと好きになるかなんて分かんないじゃん? 話せば印象が変わることだってあるしさ」
「そう……ですね」

 実際のところ、相川さんにどう思われてるのかは分からない。好かれているのか、嫌われているのか。
 キスするくらいなんだから、嫌われているわけではないのかも。
 それとも嫌がらせのキス? 嫌がらせだとしたって、俺は嫌いな奴にキスなんかしたくないけどな。
 ってか、嫌われるほどの接点も持ち合わせてないんですが。
 嫌いなら嫌いでもいいけど、なら何でまた誘うわけ?

 考えれば考えるほど、分からなくなる。




 待ち合わせの居酒屋。
 通された個室では、相川さんがすでにビールの中ジョッキを半分以上空けていた。

「何だトモ、1人で始めちゃってんの?」
「だってお前ら遅ぇんだもん」

 ちょっとふて腐れたようにそう言って、相川さんはジョッキを空にした。

「だって俺ら、忙しいし~?」
「俺だって忙しいよ!」
「補習?」
「うるせぇよ」
「受けさせてもらえるだけ、ありがたいと思いなよ」
「うるせぇって!」

 春原さんに向ける、相川さんの顔。
 ごく普通の、大学生の男の顔で(男前だけど)。

「慶太、何飲む? ウーロン茶?」

 春原さんが相川さんとは向かい側の席に着いて、俺はその横に座ろうとしたのに、なぜか堂々と真ん中に座るもんだから、俺は仕方なく相川さんの隣に座る破目に。
 メニューを見せられながら問われ、とりあえず頷くと、相川さんが不思議そうに俺のほうを見た。

「お前、飲まねぇの?」
「え?」
「酒」
「……未成年なんで」

 一応そう断りを入れると、相川さんが大げさなくらい驚いた顔をする。

「はぁ!? ウッソ! マジで!?」
「……マジです。今度誕生日が来て、20歳になりますけど」

 そう言ってもまだ相川さんは、『マジ!?』とか言ってる。年上に見られるのはいつものことだから、まぁいいんだけど。

「2月だからさ、もうすぐだよね、慶太」
「はい」

 春原さんの言葉に頷けば、相川さんが「へぇ」と眉を少し上げた。

「俺も2月だし。4日」

 お前は? と目で問われて、11日だと答えれば、「近いじゃん! 2人!」と、なぜか春原さんのテンションが急上昇した。
 春原さんが一緒にいるからだろうか、この間、相川さんの家で2人きりになったときのような雰囲気はない。

「でも2月4日って、真琴と同じだよね、誕生日」
「真琴と!? そうなんだー、俺、真琴と同じ誕生日なんだー」

 なんて、相川さんが急にはしゃぎ出した。

「何その喜び方」
「えー、嬉しいじゃん、真琴と誕生日一緒!」
「意味分かんないし」
「だって真琴かわいいじゃん」
「そうだけど、お前がはしゃぐ理由が分かんないし」

 呆れたように冷静に突っ込む春原さんに、相川さんはまだニコニコしてる。
 その顔見てると……何だろ、何かイライラする。別に今はいいじゃん、真琴のことは。てか、誕生日が同じだからって、はしゃぐようなキャラかよ。
 何で真琴と誕生日一緒って分かって、そんなに喜ぶわけ?
 あーイライラする。




 相川さんと春原さんが喋ってるって構図はこの間と一緒だけど、今日は歩がいなくて、俺は2人の話を聞きながらメシ食ってるだけ。
 時々春原さんが話を振ってくれるのに答えるだけの俺をメシになんか誘って、相川さん、何がおもしろいのかな? 単にまたからかいたかっただけ?

「ちょっとトイレー」

 店に来て1時間くらいしたところで、春原さんが個室を出て行った。
 2人きり。
 チラリと相川さんのほうを窺うと、こちらを見ていた相川さんと目が合った。

「、」
「何で目逸らすんだよ?」
「相川さんこそ……何、…ってか、俺なんか誘っておもしろいですか? お酒飲めるわけじゃないし、」

 春原さんと2人で話し盛り上がってるし、…………真琴と誕生日一緒ではしゃいでるし。

「おもしろいね。お前見てると全然飽きない」
「どういう意味ですか?」
「だってさぁ、俺の言ったこと1個1個に超反応してるし」
「してません!」
「さっき俺が真琴と誕生日一緒ではしゃいでるとき、お前凄い顔してたぜ? 気付いてなかったの?」
「ッ、」

 反論しようとして、言葉に詰まった。
 確かにあのときは、何だか無性にイライラして…。

「俺が他の奴の話したのが、おもしろくなかったの?」
「…ッ、何で…、―――――ッ…」

 スッと俺のほうへと伸びてきた相川さんの手に思わず身構えると、その指先が俺の唇に触れた。

 ヤバイ。

 首を振ればその手を払える。後ろにでも逃げさえすれば。
 でも、動けない。
 その目が。

「震えてる…………俺のこと、怖い?」
「ちが……ッ…」

 相川さんの言葉を否定しようとして口を開けば、そのきれいな指先が、口の中に入り込んでくる。
 冷たいような、熱いような、不思議な感覚。
 逃げようと首を後ろに少し引けば、追い掛けるように指が動いて舌に触れた。

「やめ…」

 俺の舌を押すように相川さんの指がゆっくりと動いて。

「ねぇ、俺が他の奴に興味示すの、イライラする? お前のほう見ないの、イヤ?」

 違う、違う、違う!

 何で俺がそんなことにイラ付かなきゃいけないんだ。
 別にそんなこと、どうだっていい。
 相川さんが誰のこと見てようと、誰に興味を持とうと、誰のことを好きになろうと…。

 別に俺は相川さんのことなんて…………

「―――――イッ…」

 漏れた小さな声に、俺はハッとした。
 彷徨わせていた視線を相川さんに向ければ、少しだけ顔を歪めている。

 高ぶった感情に任せて、相川さんの指を噛んだからだ。

 口の中から相川さんの指がなくなって、俺は慌てて後ずさって逃げようとしたけれど、それより先に相川さんに手首を掴まれて。

「離し…!」

 そんな俺の抵抗なんて物ともせず、相川さんは掴んだ俺の手をグイと引っ張って、自分のほうへと引き寄せた。
 いきなりのことに頭も体も付いていかない俺は、ガクリと相川さんの前へとへたり込む。
 何がどうなってるのかよく分からなくて、項垂れたままになっていると、相川さんの反対の手が俺の顎を掴んで、上を向かされた。

「ッ…」

 その瞬間、かち合った瞳、その視線の強さに、思わず息を飲む。

「……おもしれぇ」

 クッと、相川さんが喉の奥で笑った。

「ますますはまりそう」
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カテゴリー:智紀×慶太
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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イチゴ ⇒ ますますはまりそう…!

その通りですよ旦那!(誰)

慶太くんにこっそり囁いてあげたいです。イライラの原因を!
がんばれ!相川さんっ

拓海くん、トイレでもう後二時間くらい粘ってくれないかな…(=´Д`=)ゞ

  • |2008.01.29
  • |Tue
  • |19:25
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如月久美子 ⇒ >イチゴさん

 相川さんも男としてアレですけど、慶太くんも慶太くんで20歳でこれはちょっと…。
 相川さん、相当がんばらないとっ…!!

  • |2008.01.30
  • |Wed
  • |08:57
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如月久美子 ⇒ 拍手コメ→名無しさま

 リンクミスのご指摘ありがとうございます。

 ただ、ご指摘くださったと思われる個所を確認したのですが、正しくリンクされていると思われまして…。

 もしかして私が違う場所を見ているかもしれませんので、もしまだ正しくなっていないようでしたら、お手数ですが再度その場所を教えていただけますでしょうか。

 また、私のことなので、今後もこういったミスを犯す可能性が高いですが、今後も恋三昧をよろしくお願いいたします。

 拍手&コメントありがとうございました!

  • |2008.10.20
  • |Mon
  • |22:46
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