恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

アスファルトで溺死。

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5. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (中編) 2


 もうすぐ哲也の仕事が終わるから、迎えに行って、それからメシ食うんだって。

 啓ちゃんに連れられて哲也が働いてるって店に行ってみれば、確かに俺が普段着てるのとはだいぶ違う雰囲気の服が、いっぱい飾ってあった。
 まだデザイナーの卵やって言ってたから、ここに置いてある服みんなをデザインしてるわけじゃないだろうけど、雰囲気が哲也によく似てる。
 時々街でこんなカッコしてる人を見かけるけど、俺の知らない世界だなぁって思ってた。

「いらっしゃいま―――――あ、啓! もうすぐ上がるから、待ってて」
「おう」

 久々に聞く、ちょっと甲高いような哲也の声。
 どうやら哲也の位置からは俺が見えないらしく、俺はその存在を気付かれてないみたいで。
 そっと覗いてみれば、相変わらずの金髪頭が、ちょこまかと動いていた。

「じゃあ、お先に失礼しまーす」

 片付けと身支度を終えたのか、哲也は別の店員に頭を下げて、啓ちゃんとこにやって来た。

「ん? あれ? 貴久? え? 2人、一緒に来たの?」

 俺が、哲也と啓ちゃんが知り合いなのを知らなかったみたいに、哲也も俺と啓ちゃんの関係を知らなかったみたいで、驚いた顔してる。

「コイツ、同じ会社なんだよ。お前のことも知ってるみたいだったから、メシ誘った」
「ふぅん? 久し振りー」

 女の子みたく爪の色を赤くした(しかもその上から、白ので何か模様描いてる)手を、これまた女の子みたいな仕草で手を振った。

 …………えっと、この子、そういう気の子なんかな? ―――――まぁ言わないけど。


 それから3人で、何食う? って話になったけど、哲也は2人の食いたいもんでいいって言うし、俺はうまければ何でもいいしで譲り合ってたら、なかなか決まらなくて、優柔不断なことが嫌いな啓ちゃんが、「だったらラーメンでいい! ラーメンにしよ!」って、ビシッて決めてくれた。

 でもそしたら、じゃあどこにする? ってことになるわけで。
 やっぱり俺ら2人ではなかなか決められなくて、「もうここでいい!」って、啓ちゃんが近くのラーメン屋さんに入っていったから、俺ら2人で慌てて後を追い掛けた。

「啓は相変わらずせっかちだなぁ」
「違う。時間を無駄にしたくないだけ」

 対照的にのんびりした調子でそう言う哲也に、啓ちゃんはビシッと言い切った。

「早くメニュー決めないと、ド突く」

 席に着いた途端、そんな物騒なことを吐く啓ちゃんに、俺と哲也は慌ててメニューを覗き込む。啓ちゃんのことだから、ホントにやりかねないし。

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5. 隠されたテリトリーへいらっしゃい (後編)


 啓ちゃんとの食事って、何となく体育会系のノリがあるんだよね。
 早く食って、早く帰ろ、みたいな。

 出てくる順番もあれだったけど、啓ちゃんが食い終わりそうなのに、もともとのんびり体質なのか、食うのが遅いのか、哲也はまだ食べ終わる気配なし。

 啓ちゃんも高校のころからの付き合いだから、哲也のそういうのを知ってるのか、イライラもせずに待ってるけど。

 あー……それにしても、哲也の食ってるヤツも、うまそうだなぁ……。

「なぁ、俺、もう1杯食ってもいい?」
「ッッッ!!!???」

 啓ちゃんは慣れてるのか「替え玉頼めばいいじゃん」って言ってくれたけど、哲也はものすごいビックリした顔で俺のほうを見た。
 きっとラーメン啜ってる最中じゃなかったら、あの甲高い声を上げてたんじゃないかな?

「替え玉じゃなくて、別の味なのが食いたいんだよね」
「ええぇぇーーー!!! ったぁ…」

 今度こそ哲也は大きな声を張り上げた。直後、啓ちゃんにド突かれたけど。

「普通にもう1杯お代わりするってこと?」
「うん」

 啓ちゃんは勝手にしろって感じで俺のほうにメニューを寄越したけど、哲也はまだ口をポカンと開けて俺のことを見てる。
 どうせ哲也はまだ食い終わりそうもないし、啓ちゃんからのお許しも出たから、俺は遠慮なく2杯目のラーメンを頼んだ。



*****

「なぁ」

 俺が2杯目のラーメンに箸を付けたところで、啓ちゃんが携帯電話から顔を上げた。

「何か、友達からテレビの配線してくれってメール来てんだけど、俺食い終わったし、そっち行ってもいい?」

 そう聞きながらも、すでに帰り支度をしてる啓ちゃんに、ダメなんて言えなくて、哲也と2人で啓ちゃんを見送った。

「啓ちゃん、相変わらずだなぁ」

 別に他人に冷たいわけじゃないけど(むしろ友情に厚いほうなのに)、待ってるとか、そういう時間の無駄には厳しくて。
 でも俺が2杯目のラーメン頼む前からケータイ気にしてたし、もしかしてそれでも待っててくれたのかな?
 なのに哲也は食い終わらないし、俺は2杯目頼むし、待ち切れなかったのか。

「なぁなぁ、貴久」
「んー?」
「ホントに2杯も食えんの?」

 2杯もラーメン食うのがそんなに珍しいのか、やっと自分の分を食い終わった哲也が、俺のどんぶりを覗き込んでる。

「ホント豪気なヤツだなぁー」

 そこ、感心するとこかぁ? と思いつつ、俺はラーメンを啜った。

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6. 君は別腹 (前編)


 さすがに2杯食べる俺よりは先に食べ終わった哲也が、なぜか俺のほうをじっと見てる。

「何? 食う?」
「食わないよ! そんなに食えるか」
「いや、ジッと見てるから、食いたいのかと思って」
「食いっぷりいいなぁって思ってたの!」

 ムキになって言い返してくる哲也に少し笑ってから、残りのラーメンを平らげた。

「そう言えば、家、見つかったの?」

 この前のときは、何か友達の家を渡り歩いてるとか言ってたけど、そう言えば、その後の話がない。
 何とはなしに尋ねてみれば、哲也は渋い顔をしてる。

「……まだ、なんだ?」

 聞き返せば、コクリと頷いた。

「1日だけとかなら、みんな、いいって言ってくれんの。でもこれからずっとって言うと…………なぁ?」

 確かに。
 彼女と同棲するならまだしも、男の2人暮らして。

「安いアパート捜したほうが早いんじゃね?」
「うぅー…」
「なら実家帰ったら?」
「実家はダメだ」
「遠いの?」
「そうじゃないけど…………実家はダメ」

 断固として言い張る哲也に、それ以上何も言えなくなる。
 まぁ親はいろいろうるさいかもしれないけど、何でそこまで拒否るんだろ。

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6. 君は別腹 (後編)


「で、今日の宿はあんの?」
「…………なくなった」
「なくなった?」
「ホントは啓んち泊めてもらおうかな思ってたんだけど…」

 グズグズしてる間に帰られたわけね。
 それに啓ちゃん、実家暮らしだしなぁ。それこそ1日は良くても、ずっと毎日ってわけにはいかないだろうなぁ。

「しゃあないから、これ食ったら店戻るわ」
「ん?」
「どうせ明日もまた仕事だし。店長に言って、また寝さしてもらう」

 "また"ってことは、そうか、毎回友達んとこに泊めさせてもらえてるわけじゃないのか。
 実家に戻られない理由は知らないけど、意外と苦労してるんだなぁ。

「そんなら、今日、ウチ来る?」
「えっ!?」

 ほんの、軽い気持ちやった。
 啓ちゃんの知り合いで、見ず知らずの不審者じゃないって分かったし、まぁいいかなって。
 もうメシ食ったし、どうせ後は風呂入って寝るだけだし。

 何て言うか……コイツと一緒にいるの、そんなに嫌じゃない。
 俺にしたら突拍子もない行動を、まるで当たり前みたいにしてやってるヤツ、今までに会ったことないし。
 おもしろい。
 まだ今日で3回しか会ってないけど、全然飽きない。

「お店に泊まるのは、いざってときのために取っておいたら?」
「は? え? いいの…?」
「いいよ、別に。あ、でも暑苦しいからソファで寝ろよ?」

 グラスの中の、温くなった水を飲み干して顔を上げれば、哲也はまだ、信じられない…!! って顔で、俺のこと見てる。
 あれ?
 初対面の酔っ払ったお前の介抱までしてやった俺のこと、そんなに薄情なヤツだと思ってた? (あ、介抱まではしてなかった)

「ホントにいいの?」
「いいって。いや、店に泊まるほうがいいんだったら、別にそれでもいいけど」

 そう言えば、哲也はブンブンと、頭がもげそうな勢いで首を横に振った。

「そんなん! すっげぇ助かる! ありがとう! ホントに助かる!」

 たかが家に泊めるくらいでここまで喜ばれると、何かすごいいいことした気になる。

 哲也のちょっと汗ばんだ手が、ギュッと握手するみたいに俺の手を掴んだ。

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7. 空気と言うには濃いけれど、 (前編)


 前に水ようかん持って家に来たときの、あの大荷物は店に置かせてもらってるらしく、今晩の哲也は小振りなバッグ1つ持っているだけだった。

「哲也、水ようかん食う?」
「え…」

 冷蔵庫を開けながら、ソファにちょこんとしてる哲也を振り返れば、驚いたような、困ったような視線とぶつかった。

「何でそんな顔すんだよ。お前が30個も持ってきたんだぞ」
「いや、そうじゃなくて! だってメシ食ったばっかりだもん、そんなに食べられない!」
「小食だなぁ。そんなんだったら大きくなれないぞ?」
「うっさい、ボケェ! ホントはもっとおっきくなるはずだったんだ!!」

 哲也は、まるで子犬みたいにキャンキャンと噛み付いてくるから、おかしくなって笑い出せば、「何笑ってんだよっ! 俺、怒ってんだぞ!?」ってムキになって、もっとおかしくなる。

「貴久のアホ!」
「誰がアホだよ、天使のように優しいこの俺様に。何なら今からここ出てってもいいんだけど?」
「わっ! それは困る! ゴメンなさい!」

 ほんの冗談なのに、いちいち反応してくる哲也が、ホントおもろい。
 あーダメだ。コイツ、ツボだ。

「なら俺、水ようかん食ってるし、先風呂入ったら? 風呂、そこだから」
「貴久、まだ食うの!?」
「別に水ようかんの1個や2個くらい食える」
「ほぇ~~~」

 何とも言えない間の抜けた声を出してから、哲也は、「じゃあ、お言葉に甘えて…」とか言いながら、カバンを抱えて風呂場に向かった…………ら、すぐに部屋のほうに戻って来た。

「何?」

 水ようかんを食べる手を止めて顔を上げると、眉をハの字に下げて、ものすごく情けない顔をした哲也が突っ立っていた。

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