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砂糖漬けのくちびる
2009.12.20 Sun
「ん、んー…」
借りてきたDVDを2人で見ながらまったりしていたら、何だかどうも慶太に落ち着きがない。
腕の中でモゾモゾしている慶太に気を取られているうち、映画のいいところを見逃してしまった。
「慶太、」
何してんだ、と聞こうとする前に、慶太は腕の中をすり抜けて、ごそごそと自分のカバンを漁り出した。
映画に意識を戻したいが、やっぱり慶太のほうが気になる。
「けい…」
「ねぇねぇ、相川さん」
もう1度声を掛けようとしたら、何を探していたのか知らないが、お目当てのものを見つけ出せなかったらしく、慶太がポテポテと戻って来た。
「リップ」
「あ?」
「リップ貸してください」
思い切りテレビと智紀の間に割り込んできて、でも慶太はそんなこと全然気にするふうもない(というか、気付いていないのだろう、変なところで鈍感なので)。
「お前、唇切れてる」
「だからリップ」
拗ねて、むぅと突き出した唇は荒れていて、ちょっと痛そう。
ずっとモゾモゾしていたのは、この荒れた唇が気になっていたかららしい。
「それずっと探してたのかよ。リップだったら、そこの――――」
そう言い掛けて、智紀はスッと立ち上がると、自分でカバンの中からリップクリームを持ってきた。
ようやくリップを発見した慶太は嬉しそうに手を伸ばすが、智紀はそれを慶太に渡そうとはせず、またどかっとソファに身を投げた。
「貸してくださいよ」
すぐに貸してくれるのかと思ったのに、智紀の行動の意味が分からない。
この伸ばした手は、どうしたらいいの?
「慶太、こっち来て」
リップクリームのキャップを外した智紀が、慶太を手招きするけれど、どういうことなのか、全然分からない。
そのまま渡してくれたら済む話だし、第一、こっちに来いと言っても、慶太は智紀の真ん前に、ちょこんと座っているのに。
「ここ座って」
「は?」
ここ、と言って智紀が示した場所は、彼のももの上。
つまり、そこを跨いで座れ、と。
「俺、リップ借りたいだけなんですけど」
「貸してやるから、ここ座って」
「……」
何でリップクリームを貸すだけなのに、恋人のももを跨いで座らなければならないのか。
絶対に善からぬことを考えているに違いない、危ない、と慶太の本能がそう警鐘を鳴らすけれど、カサカサになって血の滲んだ唇を、このままにしておきたくはなくて。
「ホントに貸してくれるんですよね?」
「貸す貸す」
疑わしげな表情で、戸惑いながらも、慶太は智紀のももを跨いだ。
「…これでいいですか?」
「オッケー、オッケー」
渋々顔の慶太と違い、智紀は満足そうに笑う。
しかも、ちゃんと座ったんだから早くリップ、と思うのに、智紀はなかなか渡してくれなくて。
「相川さん? えっちょっ…」
智紀は、手にしたリップクリームのキャップを外すと、それを徐に慶太のほうに近付けてきて、何をされるのかと、驚いて慶太が身を引いた。
「危ねぇな。下がんなよ、落ちるだろ」
「何、何するんですかっ?」
「俺が塗ってやる」
にんまりと笑った智紀に、しかしその言葉がまだ十分に思考回路に伝わっていないのか、慶太はポカンとしている。
「俺が塗ってやるから、動くな」
「……。…はっ!? ヤですよ!」
智紀にもう1度繰り返され、ようやく慶太は理解したのか、顔を赤くしてももの上から退こうとするけれど、左手をガシッと腰に回されて、慶太は逃げる術をなくした。
近付いてくるリップクリームから逃れようとすれば、そのまま後ろに引っ繰り返りかねない。
「ホラ、ジッとしろ。リップ塗るだけだろ?」
「自分でします!」
「ダメ」
何で! と慶太は宙を仰ぐ。
この男前の恋人に、一体どこで、どんなスイッチが入ってしまったんだろう。
「やらせろ」
言葉だけ聞くと、何だかとっても卑猥な感じがするが、やりたがっていることは、慶太の荒れた唇に、リップクリームを塗ること。
これ以上の押し問答は無駄だと悟った慶太は、渋々「分かりました…」と頷いた。
「そんなにキュッとすんなよ、塗れねぇだろ」
やることは大したことでもないのに、何だかすごく恥ずかしい。
恥ずかしくって、ギュッと目を瞑って、口を噤んでいると、智紀の指が口元に触れた。
「もうちょい開いて」
「ん…早、く…」
素直に口元を緩める慶太に、智紀は笑みを深くする。
このセリフ、出来ればベッドの上で聞きたいなぁ、などと不埒なことを考えつつ、智紀は早速リップクリームを滑らせた。
2,3度唇の上をなぞられて、リップスティックの遠ざかっていく感覚。慶太はようやく目を開けた。
「ッ、」
思いのほか近くにあった智紀の顔に、思わず肩を竦めてしまう。
「も、下ろしてっ…」
何だか全部恥ずかしい。
ももの上に乗ることも、リップクリームを塗ってもらうことも。
だって、そんな。
「なぁ、慶太。キスしていい?」
「はぁっ?」
慌てて身じろぐ慶太をよそに、智紀はさらに慶太を驚かせる。
こっちはももから下ろしてもらいたい一心なのに、一体どうしてそうなってしまうんだろう。
「だってリップ塗ったら、慶太の唇、ツヤツヤでプルンとしてるし」
「……」
どこのオッサンですか、それ。
思わず呆れた視線を向けるが、智紀は少しも怯まない。
「慶太、いい?」
「ぅー…」
キスくらい、別にいいけれど。
でも何だか全部、智紀の思うままにされているような気がする。
「慶太?」
慶太は視線を彷徨わせ、散々逡巡したが、ようやくコクリと頷いた。
やっぱり智紀とキス、したい。
リップ貸してくれたお礼ですからね、と、慶太は静かに目を閉じた慶太は、だらしなく顔をにやつかせる智紀に気付くことなく、優しいキスを受け入れる。
映画はいつの間にか、終わっていた。
*END*
タイトルは、「約30の嘘」さまからお借りしました。thanks!
借りてきたDVDを2人で見ながらまったりしていたら、何だかどうも慶太に落ち着きがない。
腕の中でモゾモゾしている慶太に気を取られているうち、映画のいいところを見逃してしまった。
「慶太、」
何してんだ、と聞こうとする前に、慶太は腕の中をすり抜けて、ごそごそと自分のカバンを漁り出した。
映画に意識を戻したいが、やっぱり慶太のほうが気になる。
「けい…」
「ねぇねぇ、相川さん」
もう1度声を掛けようとしたら、何を探していたのか知らないが、お目当てのものを見つけ出せなかったらしく、慶太がポテポテと戻って来た。
「リップ」
「あ?」
「リップ貸してください」
思い切りテレビと智紀の間に割り込んできて、でも慶太はそんなこと全然気にするふうもない(というか、気付いていないのだろう、変なところで鈍感なので)。
「お前、唇切れてる」
「だからリップ」
拗ねて、むぅと突き出した唇は荒れていて、ちょっと痛そう。
ずっとモゾモゾしていたのは、この荒れた唇が気になっていたかららしい。
「それずっと探してたのかよ。リップだったら、そこの――――」
そう言い掛けて、智紀はスッと立ち上がると、自分でカバンの中からリップクリームを持ってきた。
ようやくリップを発見した慶太は嬉しそうに手を伸ばすが、智紀はそれを慶太に渡そうとはせず、またどかっとソファに身を投げた。
「貸してくださいよ」
すぐに貸してくれるのかと思ったのに、智紀の行動の意味が分からない。
この伸ばした手は、どうしたらいいの?
「慶太、こっち来て」
リップクリームのキャップを外した智紀が、慶太を手招きするけれど、どういうことなのか、全然分からない。
そのまま渡してくれたら済む話だし、第一、こっちに来いと言っても、慶太は智紀の真ん前に、ちょこんと座っているのに。
「ここ座って」
「は?」
ここ、と言って智紀が示した場所は、彼のももの上。
つまり、そこを跨いで座れ、と。
「俺、リップ借りたいだけなんですけど」
「貸してやるから、ここ座って」
「……」
何でリップクリームを貸すだけなのに、恋人のももを跨いで座らなければならないのか。
絶対に善からぬことを考えているに違いない、危ない、と慶太の本能がそう警鐘を鳴らすけれど、カサカサになって血の滲んだ唇を、このままにしておきたくはなくて。
「ホントに貸してくれるんですよね?」
「貸す貸す」
疑わしげな表情で、戸惑いながらも、慶太は智紀のももを跨いだ。
「…これでいいですか?」
「オッケー、オッケー」
渋々顔の慶太と違い、智紀は満足そうに笑う。
しかも、ちゃんと座ったんだから早くリップ、と思うのに、智紀はなかなか渡してくれなくて。
「相川さん? えっちょっ…」
智紀は、手にしたリップクリームのキャップを外すと、それを徐に慶太のほうに近付けてきて、何をされるのかと、驚いて慶太が身を引いた。
「危ねぇな。下がんなよ、落ちるだろ」
「何、何するんですかっ?」
「俺が塗ってやる」
にんまりと笑った智紀に、しかしその言葉がまだ十分に思考回路に伝わっていないのか、慶太はポカンとしている。
「俺が塗ってやるから、動くな」
「……。…はっ!? ヤですよ!」
智紀にもう1度繰り返され、ようやく慶太は理解したのか、顔を赤くしてももの上から退こうとするけれど、左手をガシッと腰に回されて、慶太は逃げる術をなくした。
近付いてくるリップクリームから逃れようとすれば、そのまま後ろに引っ繰り返りかねない。
「ホラ、ジッとしろ。リップ塗るだけだろ?」
「自分でします!」
「ダメ」
何で! と慶太は宙を仰ぐ。
この男前の恋人に、一体どこで、どんなスイッチが入ってしまったんだろう。
「やらせろ」
言葉だけ聞くと、何だかとっても卑猥な感じがするが、やりたがっていることは、慶太の荒れた唇に、リップクリームを塗ること。
これ以上の押し問答は無駄だと悟った慶太は、渋々「分かりました…」と頷いた。
「そんなにキュッとすんなよ、塗れねぇだろ」
やることは大したことでもないのに、何だかすごく恥ずかしい。
恥ずかしくって、ギュッと目を瞑って、口を噤んでいると、智紀の指が口元に触れた。
「もうちょい開いて」
「ん…早、く…」
素直に口元を緩める慶太に、智紀は笑みを深くする。
このセリフ、出来ればベッドの上で聞きたいなぁ、などと不埒なことを考えつつ、智紀は早速リップクリームを滑らせた。
2,3度唇の上をなぞられて、リップスティックの遠ざかっていく感覚。慶太はようやく目を開けた。
「ッ、」
思いのほか近くにあった智紀の顔に、思わず肩を竦めてしまう。
「も、下ろしてっ…」
何だか全部恥ずかしい。
ももの上に乗ることも、リップクリームを塗ってもらうことも。
だって、そんな。
「なぁ、慶太。キスしていい?」
「はぁっ?」
慌てて身じろぐ慶太をよそに、智紀はさらに慶太を驚かせる。
こっちはももから下ろしてもらいたい一心なのに、一体どうしてそうなってしまうんだろう。
「だってリップ塗ったら、慶太の唇、ツヤツヤでプルンとしてるし」
「……」
どこのオッサンですか、それ。
思わず呆れた視線を向けるが、智紀は少しも怯まない。
「慶太、いい?」
「ぅー…」
キスくらい、別にいいけれど。
でも何だか全部、智紀の思うままにされているような気がする。
「慶太?」
慶太は視線を彷徨わせ、散々逡巡したが、ようやくコクリと頷いた。
やっぱり智紀とキス、したい。
リップ貸してくれたお礼ですからね、と、慶太は静かに目を閉じた慶太は、だらしなく顔をにやつかせる智紀に気付くことなく、優しいキスを受け入れる。
映画はいつの間にか、終わっていた。
*END*
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