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ドルチェ (後編)
2008.02.16 Sat
――――ピンポーン…。
遠慮がちなチャイムの音に、意識が浮上してきた。
いつの間にか、寝てたらしい。
階下(した)から、お母さんと誰かの声。
何?
「慶太! 慶太!」
相川さん…?
……そんなわけない。だってあんなに怒ってたのに…。
「慶太、大丈夫か?」
「……ぇ…?」
「慶太!」
「相川…さん…?」
目の前には相川さんの顔……すごい心配そうな顔してる…。
「おま…こんな濡れたままで! 風邪引いたらどうすんだよ!」
相川さんの冷たい手が額に触れた。
冷たい手。
外、あんなに寒かったのに、俺のトコに来てくれたの…?
「とにかくコート脱げよ。あーもう、暖房も点けてないし!」
あんまりにも展開が早すぎて付いていけないけど、ぼんやりしてるうちに、相川さんが暖房のスイッチを入れてくれてた。
ていうか俺、上着も脱がないまま寝てたんだ…。
「ホントに風邪引いたらどうすんだよ」
「大丈夫です…。心配掛けて、ゴメンなさい」
とりあえず上着を片付けようと、ベッドから下りた、その拍子。
カタッ…。
「慶太、何か落ち…」
「あ、ダメ!!」
床に落ちたそれを、相川さんが拾おうとするより先、俺は慌てて奪い取って、自分の後ろに隠した。
「慶太?」
「あ…ゴメンなさい…」
「また謝る…」
「……ゴメンなさ…」
俺はまた悲しくなって俯いた。ポロポロと涙が落ちていく。
「慶太…」
「ごめんなさい…ごめんなさ……でも俺、相川さんのこと好き…だから…あの…」
ギュッ…。
え?
気が付いたら、相川さんの腕の中だ。
何で?
「俺も慶太のこと好きだよ…。さっきはゴメン、怒鳴ったりして…」
「……違う…俺が…」
俺は相川さんの腕の中から出て、後ろに隠してたチョコの包みを思い切って相川さんに差し出した。
「これ…たぶん、いらないと、思う、けど…」
「チョコ?」
「でも、もう15日になっちゃったし、俺が作ったヤツだし、キレイに包めてないし…リボンとかも全然だし……相川さん、甘いの苦手なのに…ふぇ…」
「……ありがとう、嬉しい」
「でも俺、女の子じゃない…」
「分かってる。ゴメン、俺、お前のこといっぱい傷付けてた。慶太が一生懸命作ってくれたのに、ひどいこといっぱい言った」
ギュッて相川さんが抱き締めてくれる。
「慶太、ありがとう、すげぇ嬉しい」
「……ホントに貰ってくれる? 相川さんが貰ったのみたいに、キレイじゃないよ…俺の…」
「好きな子から貰って、嬉しくないわけないじゃん。でも…手、大丈夫か?」
「え?」
ちょっとだけ体を離した相川さんが、俺の両手を取って、絆創膏やら火傷の痕を見た。
そういえば、傷だらけの手のこと、すっかり忘れてた…。
「大丈夫、です…」
恥ずかしくて、相川さんの手をほどいて、後ろに隠した。
「何か……もっと料理とか出来たら良かったのに…」
どう考えたって、料理の腕は、相川さんのほうが上だ。
俺は"湯煎"の意味も分からなければ、包丁を持つ手もぎこちない男で。
「別に、今のままで十分だって。お前、勉強も出来て、他のも何でもそつなくこなして、これで料理まで出来たら、完璧すぎて何かヤダよ」
「……相川さん…」
そんなこと言ってもらえると、嬉しいけど、恥ずかしい。
人に褒められるのって、慣れてない…。
「開けてもいい?」
「え、あ、はい…」
目の前で開けられるのはちょっと恥ずかしい気もするけど…、素直に頷いた。
それから相川さんはゆっくりと箱を開けた。
甘いにおいが暖かい部屋に広がる。
「じゃ、いただきます」
俺はちょっと緊張しながら相川さんを見てた。
おいしく出来てるのかなぁ…。
「ん、おいしい」
「……ホント…?」
「ホント」
相川さんが俺のほうに身を屈めて、チュッてキスしてきた。
「う…」
よく分かんないけど、こういうのが相川さんにとってはわりと普通で、俺にとっては、非日常的なことで。
どうしたらいいのか分からなくなる。
「慶太?」
「……ぁう…」
「顔赤い。マジで熱出た?」
「だだだだ大丈夫ですっ!」
「ん? そう?」
とりあえず、相川さんが顔を離してくれたら、すぐに治りますから…!!
「あーでも俺、何かすげぇ感動してる」
「は? え、何が? 感動って…」
「お前のことが好きだから」
「ッ…」
だから、そういうことを、さらっと言わないでほしい。
何か急に顔が熱くなってくような気がして、相川さんから体ごと背けて俯いた。
「でもお前、雪の中、濡れたまま帰って来て、風邪引くなよ?」
「はい…。あ、そうえいば、何でさっき電話出てくれなかったんですか?」
「電話? もしかして慶太、携帯に掛けた?」
「はぁ」
「ゴメンッ、実は携帯、家に忘れてきちゃって。気付いたときには、もうお前んちの近くだったから…」
何だ、そっか…。
あのときの、死ぬほど焦った自分を思い出して、ちょっとおかしくなる。
「……相川さん」
「ん?」
「………………」
「ん? 何?」
「あの、その…」
「ん?」
「俺…相川さんのこと……大好き…」
……………………。
か…顔が熱い!!
雰囲気に任せて、俺はもしかして、とんでもないことを言ったんじゃ…。
相川さん、何で何も言い返してくれないの?
もしかして引いた?
いや、もしかしなくても引くよな。
あぁ~~~~~、俺は一体、何を口走ってるんだ!?
けれど。
次の瞬間。
俺の顔を覗き込んできた相川さんは、いつにも増して男前で。
「俺も大好きだよ。ずっとに一緒にいような」
ドラマみたいな決め台詞を吐いたあと、ごく当たり前のようにキスをしてきて。
「慶太!?」
もう、パニックに陥った思考回路じゃ、何も考えられなくて。
俺は、その場に引っ繰り返りそうになるのを、必死に堪えるのが精いっぱいだった…。
*END*
ここまでの雰囲気を醸し出しておきながら、手を出さない男、相川…。いいのか?
それにしても、慶太くんを泣かせてしまった…。
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