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ドルチェ (中編)
2008.02.15 Fri
バレンタイン当日は、学校で相川さんに会えなくて、外で待ち合せた。
いつもは手ぶらって言っていいほど身軽な相川さんだけど、何か今日はいつもより荷物が多いみたい。
外でご飯食べて、そのまま相川さんちに。
「お邪魔しまーす」
いつも座ってるソファに腰を掛ければ、相川さんがローテーブルに、持ってた荷物を置いた。
何の荷物かなって思ってたら。
あ、チョコ。
「あの、相川さん」
「ん?」
「これ…」
俺は袋から零れたパッケージを指差しながら、相川さんを振り返った。
「あ、チョコ? バレンタインだから」
「はぁ」
「断ったんだけど、何か結構強引に押し付けられて。1人受け取ったら、じゃあ私のも、みたいな感じになっちゃって」
「…」
別にどうってことない感じで話す相川さん。
そりゃそうだ。
だって女の子にあれだけ人気のある人だもん。
バレンタインにチョコくらい貰うって。
「まぁチョコっつったって、俺、甘いもん苦手だしさぁ」
「そ…なんですか? あ、でも、ちょっと食べてるじゃないですか」
中に、包みの開けてある箱を見つける。
ゴディバ。
こういうことに疎い俺だって分かる、高級チョコ。
俺が買おうとした"高級そう"なチョコとは全然違う、ホントに高級なヤツ。
「おいしかったですか?」
何を聞いてるんだ、俺は。
ゴディバのチョコがまずいわけない。
他の開いてないヤツを見たって、キレイに包装されてるし。
「んー? まぁうまかったけど。でも当分甘いものはいいよ、マジで」
「…」
「ん? どうした?」
「…え、いや、何でもないです」
「まさか慶太も、チョコくれるとか!?」
尋ねられて、言葉に詰まった。
あげる、つもりだったけど。
だって、別に、いらないでしょ?
「なーんてな。女の子じゃあるまいし」
「――――…ぁ、はい…」
そうだった。
俺、女の子じゃなかった…。
「慶太? どうした?」
「何でも…」
「そう? あ、ちょっと着替えてくるわ。さっきちょっとコーヒー零れたんだよね。落ちるかな」
「はぁ…」
そして相川さんは、クロゼットのある部屋に消えていった。
俺はそっと自分のカバンを開ける。
「女の子じゃあるまいし、か」
別に…忘れてたわけじゃないんだけどね。
これ、ムダになっちゃったかな?
ラッピングだってこんなにシワシワだし…、きっとおいしいチョコ、いっぱい貰ってるだろうし。
俺のも、真琴のお母さんが作ってくれたようなもんだから、おいしいだろうけど。
今さら、いらないよね…。
「………………、ック…」
鼻の奥の辺りがツンッ…て痛くなって、堪えてたのに涙が零れた。
何か急に悲しい気持ちになって、涙が止まらない。
「……ヒック…」
何で俺、女の子じゃないんだろ…。
何でもっと料理とか上手じゃないんだろ…。
何で…何で相川さん、俺なんかのこと、好きなんだろ…。
――――ガチャ。
「ぁ…」
ドアの開く音。
背中向けてるから分かんないけど、相川さんが来る。早く泣きやまないと、変に思われる…!
慌てて手の甲で涙を拭って、ごまかそうとテレビを点ける。
「あ、」
慌て過ぎてたせいで、リモコンが手から滑って、床に落ちた。
「慶太?」
「あ、えっと…」
グッと相川さんが顔を覗き込んできた。
「泣いた?」
「……泣いてません」
「嘘」
「テレビで、ちょっと…、あの、感動し…」
「ニュース?」
「……」
感動も何も、チャンネルはニュースで、しかも何かの特集なのか、楽しそうな笑い声しか聞こえない。
泣いてる理由にならない。
「さっきまで、その…」
言葉が続かなくて、俺は弾みで落っことしたテレビのリモコンに手を伸ばした。
でも。
「相川さ…」
「慶太、どうした?」
伸ばした手を相川さんに掴まれた。
「別にどうもしてません」
「じゃあ何で泣いてんだよ?」
「泣いてない」
「泣いてんじゃん」
相川さんの指が、頬をなぞった。
「何かあった?」
「……ないってばっ」
泣いたことがバレたせいで俺は慌てちゃって、乱暴に相川さんの手を振り払ってしまった。
「慶太?」
「……ゴメンなさ…」
「どうした? 何か今日、変だぞ?」
「何でもない……ホントに何でもないんです……ック…」
どうしよう、また涙が…。
「慶太、どうしたんだよ? 俺、何かした?」
俺は首を横に振った。
別に、相川さんが何かしたわけじゃない。
相川さんのせいじゃない…。
「慶太、なぁ、何で泣くんだよ?」
「何でもないって!」
「慶太っ!!」
俺は泣きながら相川さんの腕を振りほどいて、体ごと相川さんから背けた。
「何なんだよっ」
相川さんは俺から離れて、床に座った。
どうしよう、相川さん、怒ってる。
俺のせいだ、どうしよう…。
……こんなはずじゃなかったのに。
ホントはチョコ上げて、喜んでもらうはずだったのに…。
…って、こんなチョコじゃ。
「……ゴメンなさい…」
「謝んなよ、何で泣いてんのか教えてほしいんだよ」
俺はまた首を横に振った。
言えないよ。
言えるわけない。
だって…、そしたらこのチョコのことも話さなきゃいけなくなる。
あんなキレイでおいしそうなチョコがあっても、甘いものはもういらないって言ってんのに…。
「ゴメ…」
「謝んなっ! 慶太、」
「ゴメンなさい……俺、帰ります…」
「慶太!? おいっ」
俺は相川さんの声から逃げるように、部屋を飛び出した。廊下を突っ走って、エレヴェータに飛び乗って、走って走って外に出た。
「あ…雪…」
真夜中。
珍しく降った雪のせいで、みんな、俺が泣いてることなんて気付いてない。俺はトボトボと家に向かう。
「相川さん…」
何でこんなことになっちゃったんだろ…。
何とか電車に乗り込んで、家に着いたらもう日付が変わってた。
……あーあ、バレンタイン、終わっちゃった…。
ベッドにカバンを投げ付けて、俺もベッドに寝転がった。
―――ケンカ、しちゃった…。
どうしよう…。
あんなこと言って、相川さんち飛び出して……絶対呆れられた。
俺たち、どうなっちゃうのかな。
このまま別れることになったら、どうしよう…。
「うぅ…」
ヤダ…そんなのヤダよ。
俺、相川さんと、別れたくない…。
携帯電話を取り出して、相川さんの番号にかける。
…でも、何回コールが鳴っても、相川さんは出てくれない。
(相川さん…)
結局、電話はそのまま留守電に代わった。
でも、どんなメッセージを残したらいいか分からなくて、何も言わないで切った。
「……はぁ…」
もう…ダメなのかな…。
カバンの中にはヨレヨレのチョコの包み。リボンもほどけてる…。
俺はそっとそのチョコを手に取った。
シワシワで、ヨレヨレで、リボンもほどけちゃってて…。中だって、溶かして固めただけの普通のチョコだし…(しかも自分じゃ殆ど何も出来てないし)。
ポトッ…と包みの上に涙が落ちた。
何で俺、もっと素直になれないんだろ…。
「相川さん…ゴメンなさい…」
いつもは手ぶらって言っていいほど身軽な相川さんだけど、何か今日はいつもより荷物が多いみたい。
外でご飯食べて、そのまま相川さんちに。
「お邪魔しまーす」
いつも座ってるソファに腰を掛ければ、相川さんがローテーブルに、持ってた荷物を置いた。
何の荷物かなって思ってたら。
あ、チョコ。
「あの、相川さん」
「ん?」
「これ…」
俺は袋から零れたパッケージを指差しながら、相川さんを振り返った。
「あ、チョコ? バレンタインだから」
「はぁ」
「断ったんだけど、何か結構強引に押し付けられて。1人受け取ったら、じゃあ私のも、みたいな感じになっちゃって」
「…」
別にどうってことない感じで話す相川さん。
そりゃそうだ。
だって女の子にあれだけ人気のある人だもん。
バレンタインにチョコくらい貰うって。
「まぁチョコっつったって、俺、甘いもん苦手だしさぁ」
「そ…なんですか? あ、でも、ちょっと食べてるじゃないですか」
中に、包みの開けてある箱を見つける。
ゴディバ。
こういうことに疎い俺だって分かる、高級チョコ。
俺が買おうとした"高級そう"なチョコとは全然違う、ホントに高級なヤツ。
「おいしかったですか?」
何を聞いてるんだ、俺は。
ゴディバのチョコがまずいわけない。
他の開いてないヤツを見たって、キレイに包装されてるし。
「んー? まぁうまかったけど。でも当分甘いものはいいよ、マジで」
「…」
「ん? どうした?」
「…え、いや、何でもないです」
「まさか慶太も、チョコくれるとか!?」
尋ねられて、言葉に詰まった。
あげる、つもりだったけど。
だって、別に、いらないでしょ?
「なーんてな。女の子じゃあるまいし」
「――――…ぁ、はい…」
そうだった。
俺、女の子じゃなかった…。
「慶太? どうした?」
「何でも…」
「そう? あ、ちょっと着替えてくるわ。さっきちょっとコーヒー零れたんだよね。落ちるかな」
「はぁ…」
そして相川さんは、クロゼットのある部屋に消えていった。
俺はそっと自分のカバンを開ける。
「女の子じゃあるまいし、か」
別に…忘れてたわけじゃないんだけどね。
これ、ムダになっちゃったかな?
ラッピングだってこんなにシワシワだし…、きっとおいしいチョコ、いっぱい貰ってるだろうし。
俺のも、真琴のお母さんが作ってくれたようなもんだから、おいしいだろうけど。
今さら、いらないよね…。
「………………、ック…」
鼻の奥の辺りがツンッ…て痛くなって、堪えてたのに涙が零れた。
何か急に悲しい気持ちになって、涙が止まらない。
「……ヒック…」
何で俺、女の子じゃないんだろ…。
何でもっと料理とか上手じゃないんだろ…。
何で…何で相川さん、俺なんかのこと、好きなんだろ…。
――――ガチャ。
「ぁ…」
ドアの開く音。
背中向けてるから分かんないけど、相川さんが来る。早く泣きやまないと、変に思われる…!
慌てて手の甲で涙を拭って、ごまかそうとテレビを点ける。
「あ、」
慌て過ぎてたせいで、リモコンが手から滑って、床に落ちた。
「慶太?」
「あ、えっと…」
グッと相川さんが顔を覗き込んできた。
「泣いた?」
「……泣いてません」
「嘘」
「テレビで、ちょっと…、あの、感動し…」
「ニュース?」
「……」
感動も何も、チャンネルはニュースで、しかも何かの特集なのか、楽しそうな笑い声しか聞こえない。
泣いてる理由にならない。
「さっきまで、その…」
言葉が続かなくて、俺は弾みで落っことしたテレビのリモコンに手を伸ばした。
でも。
「相川さ…」
「慶太、どうした?」
伸ばした手を相川さんに掴まれた。
「別にどうもしてません」
「じゃあ何で泣いてんだよ?」
「泣いてない」
「泣いてんじゃん」
相川さんの指が、頬をなぞった。
「何かあった?」
「……ないってばっ」
泣いたことがバレたせいで俺は慌てちゃって、乱暴に相川さんの手を振り払ってしまった。
「慶太?」
「……ゴメンなさ…」
「どうした? 何か今日、変だぞ?」
「何でもない……ホントに何でもないんです……ック…」
どうしよう、また涙が…。
「慶太、どうしたんだよ? 俺、何かした?」
俺は首を横に振った。
別に、相川さんが何かしたわけじゃない。
相川さんのせいじゃない…。
「慶太、なぁ、何で泣くんだよ?」
「何でもないって!」
「慶太っ!!」
俺は泣きながら相川さんの腕を振りほどいて、体ごと相川さんから背けた。
「何なんだよっ」
相川さんは俺から離れて、床に座った。
どうしよう、相川さん、怒ってる。
俺のせいだ、どうしよう…。
……こんなはずじゃなかったのに。
ホントはチョコ上げて、喜んでもらうはずだったのに…。
…って、こんなチョコじゃ。
「……ゴメンなさい…」
「謝んなよ、何で泣いてんのか教えてほしいんだよ」
俺はまた首を横に振った。
言えないよ。
言えるわけない。
だって…、そしたらこのチョコのことも話さなきゃいけなくなる。
あんなキレイでおいしそうなチョコがあっても、甘いものはもういらないって言ってんのに…。
「ゴメ…」
「謝んなっ! 慶太、」
「ゴメンなさい……俺、帰ります…」
「慶太!? おいっ」
俺は相川さんの声から逃げるように、部屋を飛び出した。廊下を突っ走って、エレヴェータに飛び乗って、走って走って外に出た。
「あ…雪…」
真夜中。
珍しく降った雪のせいで、みんな、俺が泣いてることなんて気付いてない。俺はトボトボと家に向かう。
「相川さん…」
何でこんなことになっちゃったんだろ…。
何とか電車に乗り込んで、家に着いたらもう日付が変わってた。
……あーあ、バレンタイン、終わっちゃった…。
ベッドにカバンを投げ付けて、俺もベッドに寝転がった。
―――ケンカ、しちゃった…。
どうしよう…。
あんなこと言って、相川さんち飛び出して……絶対呆れられた。
俺たち、どうなっちゃうのかな。
このまま別れることになったら、どうしよう…。
「うぅ…」
ヤダ…そんなのヤダよ。
俺、相川さんと、別れたくない…。
携帯電話を取り出して、相川さんの番号にかける。
…でも、何回コールが鳴っても、相川さんは出てくれない。
(相川さん…)
結局、電話はそのまま留守電に代わった。
でも、どんなメッセージを残したらいいか分からなくて、何も言わないで切った。
「……はぁ…」
もう…ダメなのかな…。
カバンの中にはヨレヨレのチョコの包み。リボンもほどけてる…。
俺はそっとそのチョコを手に取った。
シワシワで、ヨレヨレで、リボンもほどけちゃってて…。中だって、溶かして固めただけの普通のチョコだし…(しかも自分じゃ殆ど何も出来てないし)。
ポトッ…と包みの上に涙が落ちた。
何で俺、もっと素直になれないんだろ…。
「相川さん…ゴメンなさい…」
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