恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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Heavenly Kiss (前編)


「はーちゃん、明日も仕事……だよね?」

 お休み前のテレフォンタイム。
 バレンタインに手作りチョコを渡すぞ作戦を実行すべく、はーちゃんの予定を確認する。

『うん、仕事』

 まぁ…分かってたことだけどね。
 そんなにあっさり言わなくても。

「撮影? スタジオなの? それとも外?」
『確か屋外だったかな』
「遠く? どこでするの?」
『何、どうしたの、マコ』
「見に行っても……いい?」
『え?』

 ちょっとの沈黙。
 考えてるのかな?
 今までこんなこと、言ったことないもんね。

「ダメ?」
『まぁ…いいとは思うけど…』
「邪魔しないように、おとなしくしてるから! ちゃんといい子にしてるから!」
『分かった、分かった』

 だって、学生の俺と違って、はーちゃんは忙しいし。
 仕事が終わってから会うってなったら、行ったり来たりする時間もあるから、ちょっとしか一緒にいられないから。
 それならこっちから会いに行けば、少しでも一緒にいられるもんね。
 それに……はーちゃんが仕事してるトコ、ちゃんと見たことって1回もないし。

「じゃあ、明日、学校が終わったら直行するね!」
『夕方までやってるから、慌てなくても大丈夫だよ』
「分かってる!」






***

 はーちゃんは慌てなくても大丈夫って言ったけど、1秒でも早く行きたいから、チャイムが鳴ったら即ダッシュ。
 昨日教えてもらった場所に行ったら、何か人だかりっぽくなってるところがあって、すぐにそこだって分かった。
 そっと近づけば、はーちゃんのほかに何人かモデルさんがいて、あとカメラマンの人とか、機材持ってる人とか、メイクさんかな、女の人もいる。

「どこだったら、邪魔にならないかな…」

 あんまりジロジロ見てたり、ウロウロしてたりしたら、やじ馬かと思われちゃうかな?
 どうしよ…。

「はーちゃーん…」

 うわー…超カッコいい…。
 あの中ではやっぱ、はーちゃんが1番カッコいいよね。
 うん、絶対。
 何かお家で会うときと、雰囲気違う…。
 凛としてるし……あーでもカッコいー……。

「マコ!」
「うわっ!?」

 ボーっとしてたら、目の前にいきなりはーちゃんの顔。
 ビックリしすぎて、思わず後ろに飛び退いちゃった。

「大丈夫?」

 あんまりにも俺がビックリするもんだから、はーちゃんが苦笑してる。
 あれ? 撮影は?

「はーちゃん…。あれ?」
「休憩に入ったんだよ。マコ、こっち見てるのに、全然気付いてなかったから。声掛けたらすごいビックリしてるし」
「だってはーちゃん、カッコいいから、見惚れてた」
「大げさだよ」

 そう言ってはーちゃんは笑うけど、ううん、全然そんなことない。
 すごいカッコいいし。

「早かったね。もう学校終わったの?」
「うん。チャイム鳴って、即ダッシュで来た」
「慌て過ぎて事故るなよ?」
「大丈夫だよ!」

 子どもにするみたいに頭を撫で撫でするから、恥ずかしくてつい言い返しちゃう。
 ホントはその手、好きなんだけどね。

「もうちょっと撮影あるから、マコ、こっち来て待ってて?」
「え? そっち行ってもいいの?」
「いいよ、おいで」

 はーちゃんに言われるがまま、俺は待機してるスタッフさんのほうに行く。
 キレイな女の人が2人。

「わ、遥斗くん。誰、そのかわいい子!」
「ヤダ、ホント、かわいい! 遥斗の知り合い?」
「名前は?」
「あ…ぅ…」

 いきなり2人に囲まれて、何かどうしていいか分かんない。
 困ってはーちゃんを見れば、

「2人とも、マコがビックリして固まっちゃってるから」

 て、助け船を出してくれる。

「だって遥斗がかわいい子、連れて来るから」

 んん??
 かわいいって、俺のこと?
 別にかわいくなんかないし!
 それに俺、男だし、もう20歳なんだから、かわいいとか、ちょっとヤなんだけど(出来ればカッコいいとかのほうがいいよ)。

 ポニーテールで背の高いほうがメイクを担当してるアキさんで、茶髪のショートカットのほうが、衣装とかを担当してるアユミさん。
 何かはーちゃんのお仕事が終わるまで、このお姉さまたちと一緒にいなきゃいけないみたい。
 はーちゃんのお仕事邪魔しないように、いい子でいなきゃいけないから、しょうがないけど。

「マコちゃんて言うの? 名前」
「ん、真琴、だから、マコ」
「かわいー。ね、いくつなの?」
「えっと、ハタチ」
「はー…さすが20歳は肌の張りが違うわね」

 2人からの質問攻め。
 出来れば、はーちゃんのこと、見てたいんだけどなぁ。

「マコちゃんもモデルとかしてないの?」
「え? 俺が? まさか!」

 だってモデルさんて、はーちゃんみたいにカッコいい人がやるんでしょ?
 俺なんてブサイクだもん…。

「かわいいし、スタイルいいから、向いてるかもよ?」

 だから、かわいくないし!
 もー、お姉さまは、よく分かんない!!

「でも、はーちゃ…、……遥斗、何であんなカッコで撮影してるの? あれって、春物?」

 まだ2月なのに、モデルさんたち、半袖だったり薄着だったり。
 何でそんなカッコなの??

「実際に雑誌が発売されるのはまだ先だし、ファッション誌の場合、実際の季節よりも先取りで流行とかを伝えるじゃない? だから、夏物の撮影は冬。冬物の撮影は夏なのよ」
「えぇー…じゃあ、季節が真逆ってこと?」
「そうそう」

 知らなかったー…。
 屋内ならまだしも、この時期、外であのカッコはつらいよねー…。

「だからホント、実際は季節感ゼロよね。半袖のモデルさんに、バレンタインのチョコ渡して」
「夏なの? 冬なの? どっちよ! ていうね」

 ……。
 バレンタインのチョコ。
 え? お姉さまたち、はーちゃんにもチョコ渡したの?

「えっと、あの、2人とも、モデルさんに、チョコとか渡すの?」
「え? まぁ一応ね。ホラ、普通の会社で言うところの、同僚みたいなもんだし」
「ま、義理ですけどね」

 義理チョコ。
 そういえば、お父さんもお兄ちゃんも、会社の女の人からチョコ貰ってくるもんね。
 何か、そういう感じってこと?

「遥斗にも、あげた?」

 何か普段、"はーちゃん"て呼んでるから、今さら"遥斗"とか言いづらい。
 でもこんなトコで、"はーちゃん"なんて言ったら、このお姉さまがたに何て突っ込まれるか分かんない。

「遥斗くんにもあげたわよ」
「義理チョコ?」

 俺、何確認してんだ?

「あたしは本命のつもりであげても良かったんだけどね」
「えっ!?」
「あはは、アキ、何言ってんのよ。遥斗、本命チョコは彼女から貰うから、あんたの本命チョコなんか受け取らないわよ」
「あー、そうだよね。彼女いるって言ってたもんね」

 え?
 本命チョコ?
 んん??
 彼女?

 どういうこと?
 確かに俺は本命チョコ、はーちゃんにあげるつもりだけど、チョコのことは内緒にしてるし、だいいち俺は女じゃないもん。"彼女"じゃない。

 え…。
 俺のほかに、誰か、本命チョコくれるような彼女がいるってこと?

 そんなことない……よね?
 俺だけだよね?
 はーちゃんのこと、信じてていいんだよね?

 何か急に心の中がモヤモヤしてきて、イライラ? ムカムカ? よく分かんないけど。
 お姉さま2人の話し声も、耳に入って来なくなる。


 はーちゃんがカメラに向かって、キレイな顔で笑ってる。
 俺の知らない顔。
 何かすごく遠くにいる人みたい。


 このままずっとはーちゃんのこと見てるのがつらくなって、俺ははーちゃんに内緒でその場を去った。
 お姉さまには、もうちょっとで終わるって言われたけど、もう無理…。
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カテゴリー:遥斗×真琴
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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