恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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女王様のバレンタイン (4)


 何だよ、上げるって。
 だってチロルじゃん。今ベッドの上に散らばっているのの総額で言ったって、きっと100円かそこらしかしない。
 俺、今日12個もチョコ貰ったんだよ、女の子から。その中には、高校生が買うにしては高級すぎるブランドのも交じっていた。なのに。

(何だよ、チロルて)

 水瀬は、そのうちの1つを手に取った。
 黒蜜とおもちのグミが入っているヤツで、水瀬のお気に入りの1つでもある。
 水瀬はスンと鼻を1つ啜ってから、それを口に入れた。

 石田は、水瀬の食べ掛けのチョコを、零さないように(特にココアパウダー!)片付けていた。
 水瀬はチョコの包み紙を握り潰してから、ベッドから降りずに、無理な体勢で床に置いてあるカバンに手を伸ばした(今さっき、ベッドから落ちたばかりなのに)。
 カバンは無駄に大きいが、大したものが入っていないせいで重くもないので、水瀬は今度はベッドから落ちることなく、カバンを手にすることが出来た。

「石田ー」
「ん? イテッ」

 呼ばれて振り返ったら、何かが頭に当たった。
 大して痛くもなかったが、不意打ちの攻撃に、思わず声が漏れる。

「何だよ」

 自分の頭に当たった何かは、間違いなく水瀬が石田に向かって投げ付けたもので、当たった感触からして、そんなに大きなものではない。
 まさか、今上げたばかりのチロルを投げたんじゃないだろうな?
 疑るように水瀬を見てから床に視線を落とせば、そこにあったのは、水瀬が女の子から貰ったものでも、石田が水瀬に上げたチロルチョコでもない、5円チョコが1つ。

「やるよ。バレンタインだから」

 それを拾い上げて水瀬を見れば、水瀬はなぜか得意げな顔で笑っていた。
 自分で食べようと思ってたおやつの残りなんじゃないかなぁ…と思えなくもないが、言えば機嫌を損ねそうなので、突っ込むのはやめておいたが。

「ねぇ石田、『ありがとう』は?」

 チョコを拾い上げ、水瀬を見遣れば、ベッドの上、水瀬は不遜に石田を見下ろしていた。
 チロルだって十分お手ごろ価格だけれど、こちらは価格で言えばその半分で、しかも1個。なのにどうして、ここまで上から礼を強請られているんだろう(しかも水瀬からは、何のお礼も言われていない…)。

「ねぇ、『ありがとう』は?」
「…ありがとうございます、水瀬さん」
「ふふん」

 随分と楽しげに笑っている水瀬に棒読みで礼を言えば、それに気を悪くするでもなく、水瀬は満足げに鼻を鳴らす。
 気分屋で気まぐれな女王様のご機嫌が変わらないうち、石田はそのパッケージの封を切って、5円玉の形をしたチョコを口に運んだ。

「石田ー」

 水瀬は貰ったチロルチョコを、枕元に一列に並べて遊んでいる。
 1つ食べてしまったから、残りは9個。
 何が楽しいのかは、石田には分からない。

「男同士で友チョコがないんだったら、これ、何チョコって言うんだろうね」

 水瀬は顔を上げ、石田を見遣った。
 石田は、5円チョコの入っていた包みを、手の中で弄んでいる。

「ねぇねぇ石田てばー」
「知らねぇよ、そんなの」
「義理チョコかなっ?」
「お前にチョコやる義理なんかないんだけど」

 石田が尤もなことを言えば、そりゃそうだと水瀬もケラケラ笑い出す。水瀬にだって、そんな義理はない。
 ならどうしてチョコなんか上げるんだと、それはお互い口にしない。

「ねぇ石田ー。甘いモンいっぱい食ったから、カロリー消費するために、ちょっと動こうぜ?」

 ニヤリ、水瀬がいやらしく口の端を上げた。
 本当にこんなこと、今日チョコをくれた女の子たちには、絶対に聞かせられないセリフ。
 けれど石田は逆らえず、キスを受け入れた。

 甘い、唇。
 溺れる。








「…やっぱ、友チョコてことにしとこっか」

 チョコの欠けらとココアパウダーと精液で汚れたシーツの波間で囁いた。





*END*



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 最後にアップして以来、2年半くらい書いてなかったのに、アンケで2位と健闘してる高校生男子。果たしてこういう雰囲気を望まれていたのか……違ってたらゴメンなさい。
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カテゴリー:高校生男子
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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