恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2012年01月

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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (131)


『ねぇ、どうなの?』
『……』
『…すぐに答えが出ないってことは、ハルちゃんのことは、もういい、てことだよね? 本気で諦めらんないなら、ヤダ、て即答するもんね。うん、分かったわ、水落の気持ち』

 え? 分かった?
 俺の気持ちが?
 俺の気持ちの、何が分かったの?

 俺はまだ、ハルちゃんのことが好きなのに…。


 何も答えられずに立ち竦む琉を尻目に、千尋はあっさりと背を向けると、『俺らがうまくいったら、お祝いしてよね。高いの』と言い残して、千尋は帰っていったのだ。





「…だから俺は、そのままアイツが、ハルちゃんトコに告白しに行ったんだと思ったの」

 話し終えた琉は、拗ねたように、少し気恥ずかしそうに、ローテーブルを挟んだ向かいに座る遥希から目を逸らした。
 遥希のためなら、千尋の言葉一つで、こんなにも取り乱してしまう自分。
 遥希には1度振られてしまっているわけで、それなのに、こんなに慌てて押し掛けて、チャイムの連打とノックの嵐。何をしているんだろう、と冷静になってみたら、恥ずかしくなる。

「ちーちゃん…」

 琉の話を聞いて、ようやく遥希は、千尋の謎の行動のカラクリが解けた。
 遥希に、実は琉のことが好きだったと打ち明けた千尋は、琉にはその逆に、遥希のことが好きだと言って、琉と遥希、それぞれの気持ちをけしかけたのだ。
 誰も波風を立てなければ、このままもう2度と会わない関係になっていた2人。千尋のタチの悪い芝居に、どちらも乗らなければ何も変わらない、でももしどちらかでも行動を起こせば――――。

「ねぇハルちゃん、ホントにアイツ、ここに来てないの?」
「来てないよ。もちろん告白もされてないし。…てか、ちーちゃん、俺には、琉のことが好きだから、振られて落ち込んでる琉のこと慰めて告白する、て言ったんだよ」
「はぁっ!? 何だそれ! え、まさか俺、アイツにはめられた、てこと!?」

 千尋がまだここに来ていないということは、遥希にまだ告白をしていないということで、その前にもう1度やり直せないだろうか、なんて考えていた琉は、それ以前に、千尋が遥希のことが好きだから告白する、ということ自体がまったくの嘘なのだと分かって、驚きのあまり、ポカンと口を開けた。
 だって、あのとき、琉の前で遥希への気持ちを打ち明けた千尋の表情は真剣そのもので、絶対に本気なんだと、疑う余地すら見えなかったのに。

「ちーちゃんて時々、すごいシレッと嘘つくことあるから…」

 遥希自身も、今回はまんまとはめられてしまったのだが、演技の仕事だってしている琉をも騙してしまうなんて、千尋の演技力…というか、そういうことを平然と出来る神経の図太さはすごいと思う。

「俺…もうホント、マジだと思ったんだけど…」

 千尋が単に、琉を騙したり遥希を傷付けたりしたかったのでなく、2人のことを心配してやったのだというのは、琉にも分かる。そのおかげで、再び遥希と会うきっかけも出来たし。
 けれど、それが千尋のおかげというのが不本意だし、まんまとしてやられたのも悔しい。
 琉は、「ないわー」と言って、ガックリと肩を落とした。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (132)


「でも、ちーちゃんなりに、俺らのこと心配してくれたんだよ」
「分かってる! でも…」

 心配した……というか、互いに思いを寄せ合っているのに、頑なに心を閉ざす遥希と、あと一歩を踏み出せないでいる琉に、焦れて焦れて焦れまくって、ブチ切れた、と言ったほうが正しいと思うが。
 どちらにしても、千尋に悪気は更々ないのだが、琉はやっぱり千尋に騙されたのが悔しいのかな? と遥希が小首を傾げていたら、向かいにいた琉が、遥希の隣にまでやって来た。

「え、何?」
「でもアイツ、ハルちゃんのこと、こんなに泣かせたじゃん」

 ふ、と琉の手が、遥希の頬に触れた。
 そこで遥希は、先ほどまで散々大泣きしていたことを思い出した。あれだけ泣いたのだ、目とか腫れて、絶対に顔がひどい…!

「ちょっ、琉…!」

 見ないで~~! と遥希は、そばに来た琉を引き剥がそうとしたが、なぜか逆に、琉の腕にすっぽりと包みこまれてしまった。
 一体何事なのかと遥希はパニックになり掛けたが、その腕の温かさに、すぅ…と心が満たされていき、気持ちが落ち着いていくのが分かった。

「ハルちゃん…、やっぱり俺、ハルちゃんのことが好きだよ。俺はこんな仕事してるし、ゲイでもない。でも、そんな理由で断られるなんて嫌だ。仕事は……ファンの子もいるし、ハルちゃんもまだFATEのファンだって言うから、簡単には辞められないけど、」
「…辞めなくていい。歌ってる琉が好きだから…」
「歌ってる俺だけ?」
「ダンスしてるのも、お芝居してるのも、好き…」
「それだけ?」
「………………琉が好き……」

 偽りのない遥希の正直な気持ちを伝えれば、さらに強く抱き締められる。
 2人の心臓の音が重なるくらい、近く。

「…ハルちゃんは、俺がいつかハルちゃん以外の人……女の人を好きになる、て言うけど、…先のことは分かんないけど、でも俺はハルちゃんのことだけを愛してくよ。ハルちゃんが、そんなの不安に思わないくらい、いっぱい愛してあげる」
「琉…」
「だから、もう1回聞かせて? あのときの答え」

 琉は遥希を抱き締めたまま、まっすぐに遥希を見つめたまま、あのときと同じ言葉を紡ぐ。

「ハルちゃんのことが好きだから、友だちじゃなくて、恋人として、お付き合いしてください」

 その言葉は、ぶわっと、あっという間に遥希の中に染み込んでいった。
 こんなに真剣に、遥希のことを想ってくれている。
 すごくすごく幸せな気持ちに満たされて、嬉しいのに涙が溢れてしまう。

「ハルちゃん…」

 泣き出した遥希に、琉は困ったように眉を下げた。
 違う、ちゃんと伝えなきゃいけないのに。
 遥希の想いを。
 今度こそ、後悔しない決断を。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (133)


「俺も、琉のこと…好きだから、ふぇっ…、友だちじゃなくて、恋人として、ヒック…、お付き合いしたい…」

 言葉に詰まりながらも何とか気持ちを伝えると、後はもう堰を切ったように涙が零れ落ちて、遥希は子どものようにワンワンと泣きじゃくり、そんな遥希を、琉はただ、優しく抱き締めていた。



*****

 最終的には結果オーライだったのだが、どうしても気が済まない琉が、千尋に話があると言って聞かなかったので、遥希の家に呼び付けることにした。
 遥希としては、悲しくて大泣きした後に、嬉しくてまた泣いてしまい、顔がひどいから嫌だったんだけれど、琉は明日1日仕事だし、遥希も学校とバイトがあって時間が取れないから、仕方がない。

 けれど、こんなことがあった直後で、電話をしても出ないのではないかと思ったが、意外にも千尋は、遥希からの電話にあっさりと出た。

『もっしも~し! ハルちゃ~ん』
「…………」

 …いつかを思い起こさせるような、妙に陽気な千尋の声。
 え、また飲んでるの?

「あ、あの、ちーちゃん…」
『今南條と飲んでんだけど、慰めてほしかったらおいで~』
「な…何、慰める、て」
『んふふふふ、俺が慰める必要、なくなったのぉ~?』

 …酔ってはいるが、すべてに気付いているような千尋の口振り。
 わざと遠回しに言ってくるあたりも、いつもどおりだ。

「ちーちゃんの慰めなんか、必要ありません。てか、ちーちゃん、ひどいよ、あんな嘘つくなんて」
『え~、まさかハルちゃん、あんなの信じたの~? あんなバレバレの嘘』
「バレバレ…」

 遥希が、千尋の言った『琉が好き』という嘘について咎めれば、千尋はまったく悪びれたふうもなく笑っている。
 いや、バレバレどころか、1ミリも冗談になんか見えない、迫真の名演技だったんですけど…。

『何、俺の嘘信じて、また泣いちゃったの? ハルちゃん』
「なっ…何言って、別に泣いてなんかっ…」
『嘘ー、めっちゃ鼻声じゃん。泣いたんでしょ? もぉー、ちゃんと水落に慰めてもらうんだよ?』

 酔っていても、千尋の鋭さは相変わらずで、しっかりバッチリ遥希が大泣きしたことを見抜いてしまった。
 遥希にしたら、ちょっと不本意…。
 本気でショック受けて、傷付いたんだからね。



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