恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2009年07月

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02. 理性と欲望の葛藤 (2)


 どんなものがいいかと尋ねれば、勉強になるものがいいと言う和衣に、一体何を買ってやればいいのか……DVDの通販サイトを見ながら、蒼一郎は頭を抱えた。

 基本的にアダルトビデオなんて、性欲の処理か趣味で見るくらいなもので、和衣のように本気で勉強するために見る人はあまりいない。
 それをどんな基準で選べばよいのか…。

「蒼ちゃんのお勧めのでいいよ?」
「そんなのありません!」

 今まで見たこともないし、これからも見るつもりなんてないのに、お勧めなんてあるわけがない。
 逆に、勧められたって絶対に見ない。

「よく分かんないけど、これでいい? 何か普通っぽいし」

 これまでの和衣の反応からして、とりあえずノーマルな感じのものを選んでおけば無難だろう。
 それをお勧めと思われても困るが…。

「次は?」
「え、次って?」
「だって1個だけじゃ、よく分かんないかもしんないじゃん。だからもう1個! ね、蒼ちゃん、お願い!」
「えぇー…」

 和衣のよく分からない理屈に押され、蒼一郎は仕方なしに別のDVDを探してやる。
 いろいろ見て参考にするのであれば、違った雰囲気のものを選んであげたほうがいいんだろうか。

「じゃあ、これでいい?」

 今度は、先ほどのものと違い、パッケージにも少し際どい写真が用いられている。
 和衣は少し照れているようだったけれど、「じゃあ、それにする」と頷いた。

「カズちゃんの名前で頼むから、パスワードとか決めて?」
「えっ、何で? 蒼ちゃんので頼んでよ」
「ヤダよ。また買うかもしれないんだし、登録しなよ」

 初めてネットでお買い物するのに、それがゲイビデオなんて何かヤダなーと思ったが、和衣の名前でなければ申し込みしないと言う蒼一郎に、和衣は渋々それを承諾した。

「でもどうやって届くのかな? みんなに俺がエッチなDVD買ったってバレたらどうしよう!」
「中が見えないように梱包するって書いてあるから、大丈夫なんじゃない? ねぇカズちゃん、もう頼んじゃっていい?」

 後は申し込みのボタンを押すだけ。
 マウスを握る手を和衣に掴まれた状態の蒼一郎は、どうするの? と和衣を見る。

「お…お願いします!」

 そこまで決意を固めるほどのことでもないような気はするが、とりあえず和衣からOKが出たので、蒼一郎はようやく申し込みボタンをクリックした。

「はぁー…頼んじゃった…」

 申し込みが完了したことを知らせる内容へと画面が変わると、和衣は気が抜けたように、その場にへたり込んだ。

「どうしよう、蒼ちゃん、頼んじゃったー!」
「だって欲しかったんでしょ? 勉強するんでしょ?」
「そうだけどー! あぁーどうしよう! ホントに届くのかな? 大丈夫かな?」
「大丈夫、大丈夫だから。届いたら、祐介くんと一緒に勉強しな?」

 オロオロしながら蒼一郎に縋り付く和衣を、まるで子どもをあやすように宥めてやる。

「師匠! 俺、がんばるね!」
「あーはいはい…」
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テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

02. 理性と欲望の葛藤 (3)


(き…来た…!)

 和衣が思っていたよりもずっと早く、頼んでいたDVDが届いた。
 申し込みの画面にあったとおり、中が見えないよう厳重に梱包されていたので同室者にはバレなかったが、気付かず包みを開けた和衣がビックリして変な声を上げたので、不審な目では見られてしまった。

(うわーうわー来ちゃった、来ちゃったーーー!!!)

 同室者がバイトに行き、部屋に残った和衣は1人舞い上がっていた。
 蒼一郎の多大なる協力のおかげで、ネットで初めて買い物も出来たし、念願のゲイDVDも手に入れることが出来たし、何だかすごく大人になった気分。
 後はこれで勉強して、祐介と…。

「ふ、ぁ…」

 キュウとDVDの包みを抱き締めて、和衣はベッドに倒れ込んだ。
 心臓がバクバクするし、顔も熱い。

(どうしよう、どうしよう、どっち見よう、どうやって見よう、どうやって…………)

 どうやって?
 同室者は今バイトで不在だが、この隙に見るというのも危険な気がするし、それに第一、1人で見る勇気もない。

「どうしよう…」

 こういうときは、師匠にお願いしようか。こんなときに頼りになるのは、やっぱり蒼一郎師匠だろう。
 そう思って蒼一郎の部屋に行ったのに、デートかバイトか蒼一郎は不在で、それでもと思って部屋にいた翔真に声を掛ければ、ひどく嫌そうに断られてしまった。

(ショウちゃんのケチ。ちょっとくらい付き合ってくれたっていいのに…!)

 真大とのことでゴタ付いているなど知らない和衣は、拗ね気味で自分の部屋に戻った。

「はぁ…もぉどうしよ」

 和衣は再びベッドにコロンと転がった。
 あと頼れるのは亮か睦月だけれど、同室で恋人同士の2人のうち、どちらかだけをうまく誘い出すなんて、そんなこと出来るだろうか。

(3人で…?)

 でもそれってちょっと…。
 見ているうちに、亮と睦月が盛り上がってしまっても困るし。

「ひ…1人で…」

 ゴクリ、和衣の喉が鳴った。
 だって見たいし。
 せっかく買ったし。

 和衣は2つのDVDのパッケージを見比べ、その1つを開けてみる。
 そして徐にDVDプレーヤーに近づく。

「……」

 プレーヤーのボタンに指を伸ばす。
 あとはDVDをセット…

「ただいまー」
「ひぃっ…!」

 突然開いたドアに、和衣はビクンッと体を跳ね上げ、プレーヤーから離れた。

「お…帰り…」

 ドアを開けたのは、バイトから帰って来た同室者で、不自然な格好で部屋の真ん中に転がった和衣に、訝しげな視線をくれた。

「カズ、何してんの?」
「な…何でも…」

 DVDを見られないよう胸元に隠しながら、和衣は自分のベッドに戻った。

(心臓に悪いよぉ…)

 まだ帰って来るには早いと思っていたが、時計を見れば結構遅い時間で、和衣がわたわたしているうち、だいぶ時間が経っていたらしい。
 まぁとにかく、見ている真っ最中に帰って来なくてよかった…。

「はぁ…」

 とりあえず、DVDを見るのはしばらくお預けのようだ。
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02. 理性と欲望の葛藤 (4)


 蒼一郎師匠はなかなか捕まえられないし、翔真にもきっぱりさっぱり断られるしで、購入したDVDを見ることが出来ずにいたが、そんな和衣に願ってもないチャンスが訪れた。
 亮が、バイトの飲み会。
 つまり、今日の夜は、睦月が部屋に1人きりということだ。

 さっそく和衣はお泊りセットとDVDを持って睦月の部屋を訪れた。
 勉強のためだと、ひどく嫌そうにしている睦月を何とか丸め込んで、和衣は1つ目のDVDをプレーヤーにセットした……まではいいが、今まで見てきた動画よりも濃厚なシーンを盛り込んだその内容に、真っ赤な顔で固まった。

 第一、モザイクもネットの動画よりもずっと薄くて、同じ男の体を持つ身としては、そんなの、ないも同然に見える。
 そんな状態でフェラや顔に掛かる精液、大胆な体位を見せられて、和衣の心拍数はとんでもないくらい高くなっていた。

 今まで勉強してきたとおり、やはり男同士のセックスではお尻を使うわけで、ローションを垂らした尻の間に1本ずつ指が埋め込まれ、狭いそこをほぐしていく様子に、和衣の顔色は赤から青に変わる。

「ひぃっ…」

 とうとうそのイチモツが尻の間へと挿入されると、和衣は悲鳴ともつかない声を上げた。
 画面の2人は、すごく気持ちよさそうな顔をしているけれど、とても信じられない。

「…カズちゃん、今日はこのくらいにする?」

 がんばったし、今日はもう終わりにしようよ、と睦月はDVDのリモコンに手を掛けた――――まさにそのタイミングだった。

「睦月ー、こないだ貸したDVD…」

 !?

 ドアの開く音と同時に聞こえてきたのは、祐介の声。
 え? と思って睦月が振り返れば、やはりそこには祐介が立っていて。

 信じられないタイミングで登場した祐介に、3人とも微動だに出来ずにいたが、そんな沈黙を打ち破ったのは、点きっ放しのテレビから聞こえてきた甘い喘ぎ声だった。
 画面では、男の子2人が、本番真っ最中。
 どうがんばってもごまかしようのないこの状況に、和衣はその場にへたり込んだ。

 祐介にしても、睦月に貸していたDVDを返してもらいに来ただけなのに、一体どうしてこんなことになってしまったのか、と思う。

「あ、えっと……俺、帰ったほうが、いいよね、うん、あの……お邪魔しました…」
「ちょっ、祐介、待って! あ、あのね、あれ…」

 睦月が探し出したDVDを手にすると、祐介は引き攣りながらも何とか笑顔を作って、回れ右して部屋を出ていってしまったので、和衣は慌ててその後を追った。
 悲しいかな、変態さんに思われたかもしれない…と、和衣が一生懸命に言い訳しようとしているうち、祐介の部屋の前に到着してしまう。

「今、誰もいないから、おいで?」
「でも…」
「いいから来て」

 戸惑う和衣の腕を引いて部屋に入ると、先ほど部屋に鍵が掛かっていなかったばかりに、とんでもない目に遭ってしまった教訓から、今度こそしっかりと施錠した。
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02. 理性と欲望の葛藤 (5)


「…さっきのが、どういうことか、聞いてもいいよね、一応」

 和衣がどんなAVを見ようと構わないが(たとえそれが男同士のものだとしても)、けれどどうして睦月と一緒に見ていたのかだけは、聞いておきたい。

「…買ったはいいけど、1人で見る勇気なくて、むっちゃんと一緒に見てたの」
「和衣が買ったの?」

 当然ながら、祐介は驚いた様子で尋ねてくる。
 和衣は顔を赤くしながらも正直に頷いたが、祐介とエッチしたいからいろいろ勉強して、DVDもそのために買ったとか、そんなことはちょっと言い出しにくくて、俯いた。

「あのさ、和衣…」
「え?」

 恥ずかしさで祐介の顔をまともに見れずにいたが、名前を呼ばれてそちらを見れば、視線がぶつかって、また恥ずかしくなる。

「2人きりのとき、そんな顔すんのやめてよ…」
「え? え? そんな顔て? 俺、変な顔してる? 何? どんな顔!?」

 一体どんな顔をしているのだろうかと、和衣は赤く染まった両頬を押さえてキョロキョロするが、そんな仕草すら祐介の理性を揺さぶることに、和衣は本気で気付いていないのだろうか。
 祐介は、自分と向かい合うよう、和衣の体を反転させた。

「そういう色っぽい顔」

 え? と問われる前に、和衣の唇を塞いだ。
 唇を食むような、そんな深いキス。いつもの優しい、そっと触れるようなキスではない、けれど戸惑いつつも和衣が受け入れてくれたのが分かって、祐介は差し入れた舌を和衣の舌に絡ませた。
 柔らかくて甘い和衣の唇と舌を存分に堪能して、唇を離せば、和衣は「はぁっ…」と大きく息をついた。

「ぇ…何…?」

 何度も瞬きをしながら、和衣は本当に分かっていないような顔で、呆然と祐介に問い掛けてきた。
 まさか、こんなキスをされるとは、思わなかった?
 確かにこんなの、和衣とは今までにしたことはない。でも。

「そういう顔されると、こーゆうことしたくなって、我慢できなくなるよ」
「そんな顔してない…」
「してるよ。俺、しょっちゅうクラクラしてるもん」

 そんなことない、て否定する和衣の前髪を掻き上げて、額にキス。

「あのね、俺も一応男だからさ、好きな子といると、いろいろ我慢も出来なくなるし、抑えるの、大変なの」
「嘘…、そんなの嘘だもん…」

 まだ信じられない、て顔で、和衣は拗ねたようにそんなことを言う。
 和衣の中でどんなイメージが出来上がっているか知らないが、祐介だって、年相応の男の子だ。好きな子を前にして、まったく何にもなしにいられるはずがないのに。

「嘘じゃないって」
「じゃ…何で我慢、してたの…?」
「だって…そりゃなかなか言い出せないよ。和衣も男だから、分かるでしょ?」

 ん? と顔を覗き込めば、和衣は頬を赤くして目を逸らした。
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