恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2008年08月

DATE

  • このページのトップへ

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カテゴリー:スポンサー広告

23. ねぇ。ちゃんと聞いて! 俺の話を! (Please hear me!) (後編)


「…………ない、」
「え?」

 急に哲也は唇を噛んで、俺のことをキッと睨んだ後、小さく吐き捨てた。
 よく聞き取れなくて聞き返せば、さらにキツク睨まれる。

「分かるわけない! だって貴久、いっつもはぐらかしてたじゃん! いっつも、いっつも!! 好きみたいな素振り見せて、でもその気持ち確かめようとすれば、何でもない振りして、」
「…………それは……」
「そんなことされたら、好きでも嫌いでもないんだって、思うに決まってんじゃん!」

 あぁ、哲也の目に、涙が溜まってる。
 そういえばコイツ、よく泣く子だった。
 でも、今は俺が泣かしてんだ…。

「貴久の優しさは…………嬉しくて、でもツラかったよ? 真剣に俺のこと怒ってくれたり、単なる同情としても、ここに引き止めてくれたりして。勘違いしそうになるの、必死に堪えてた」
「勘違い、て?」
「…………もしかしたら、俺のこと、好きなんじゃないかな、って…」

 俺に涙を見られたくないのか、哲也は何度も瞬きをしたり、視線を彷徨わせたりしてる。

「でも…………でも貴久は、何でもない風にしてたじゃんか。だから、やっぱあぁ俺ら、友達でいないとダメなんだなって思って」
「…………」
「でもなぁ、もぉ無理」
「……何が?」
「俺、貴久のこと好き過ぎて」
「え?」
「苦しいの。こんなに好きなのに、何とも思ってくれない相手と一緒にいるなんて、これ以上無理…。普通でなんか、いられないもん…」

 瞬きの拍子に、とうとう哲也の瞳から涙が零れ落ちた。
 その涙を拭ってやりたいと思うのに、手が動かない。



「…………何とも思ってないなんて、誰が言ったよ?」



 グズグズと哲也の鼻を啜る音と、時折しゃくり上げる音以外しない室内。
 俺はしばらくの沈黙の後、溜め込んでいた想いを、溜息とともに吐き出した。



「た……ひさ…?」

「何とも思ってないわけ、ないだろ?」

「……………………」

 そんなわけ、ない。
 あるわけない。

「貴久…」

 俺は、抱えた頭を掻き毟った。



「哲也…、好きなんだよ、お前のこと…」

関連記事

カテゴリー:アスファルトで溺死。
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

24. No hug No kiss No loving


『好きだ』って。

 ずっと心に塞ぎ止めていた言葉を、とうとう吐き出してしまって。
 俺らの間にあるのは、重たいような、変な沈黙だけ。いや、相変わらず哲也は、グズグズ鼻を啜ってるけど。

「それ……ホント…? ホントに? 貴久」
「こんなときに、何で嘘つかいといけないんだよ」

 しつこいくらいに聞き返されて、何か勢いで告った恥ずかしさも手伝って、ぶっきらぼうに返してしまう。

「なら……何で、好きにすればいいなんて、言ったの? 止めてくれなかったの?」
「………………」
「貴久!」
「……しょうがないだろ。俺にお前を止める権利なんか、あるわけないだろ」

 確かに俺はお前のこと、好きだったよ?
 でも別にその想いを打ち明けたわけじゃないし、打ち明けたところでどうにかなるとも思ってなかったから。
 そんな俺が、どうやってお前のこと、引き止められるっていうの?

「でも……好き、なんでしょ? 俺のこと…」

 頬と目の縁を赤くしながら、哲也は戸惑うようにそう尋ねてきた。

「好きだよ?」

 1度認めてしまえば…………何だろう、あっさりと言うことが出来る。
 だって、ホントの気持ちだもん。
 今更、隠せない。

「なら何で。何で止める権利がないとか言うの?」
「だって、好きだなんて言うつもり……なかったし」
「言わない気だったの? 言わないまま、俺が出てくの、見送るつもりだったの?」
「……うん」

 ジッと哲也に見つめられてるのが、何だか居た堪れない。
 あぁ……もう何も隠してはおけない。

「だって……お前と一緒にいたかったんだもん」

 もし想いを打ち明けて、それが通じ合わなかったら、それこそ気まずくなって、もう一緒にいること出来ないじゃん。
 そうなるんが、怖かった。
 離れてまうくらいだったら、このままでもいいから、そばにいたかった。

「…………小ズルイ男だなぁ、貴久は」
「おい」

 正直に打ち明けたのに、この言われよう。
 思わず突っ込んだけど、でも哲也の目には、また新しい涙が溢れてて。

「ズルイよ、ホント……俺の気持ちも確かめないで、勝手にそんなの…」
「だってお前が、ノン気は相手にしないみたいなこと言ってたから」
「それは…」

 最初にそんなん言われてたら、言えるわけないじゃん。
 言っても報われないって分かってるのに、言ってしまえばこの関係が壊れてしまうって分かってんのに、どうして想いを打ち明けられるの?

「そう……思ってたよ。いっつもそれで失敗してたんもん。ノン気の男はさぁ、結局女の子のほうがいいって、離れてくんだもん」
「男見る目がないんだ」
「…………ホントだね。だから、貴久のことなんか好きになったのかな?」
「うっさい」

 小憎たらしいことを言う哲也に突っ込めば、2人して思わず吹き出した。

「俺だって……貴久と一緒にいたかったよ?」

 哲也は横を向いて、ごまかすように涙を拭った。今さら隠したって遅いのに。
 ホント、泣き虫だよね。
 いっつも泣いてばっかで。
 …………そんな哲也を慰めるのが、いつも俺だったら、いいのにな。

「でももう……無理だよね、俺ら」

 でも、哲也は諦めるようにそう言うから。

「哲也、やっぱり出ていくの?」
「今更聞くな、アホ」
「…………そうだな」

 あぁ、これは罰なのかな。
 自分の想い、哲也に打ち明けなかかった。伝えなければ、今までと同じようにしていれば、ずっと何も変わらずにいられると思い込んでいた、罰。
 ずっと側にいたいっていう、俺のエゴ。

「貴久、」
「ん?」
「貴久ぁ…」
「何だよ」
「俺…………幸せに、なれるかな? ―――――お前なしで…」
「…………幸せになれよ」
「うん…」

 その震える肩を、抱き締めることも出来ずに。
 夜は更けて、そして朝が来る…。
関連記事

カテゴリー:アスファルトで溺死。
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

25. 灰色の空。君のいない世界。


 哲也が出ていったからって、別に世界が終わるわけじゃない。
 いつもどおり朝は来るし、仕事には行かなきゃいけないし、飯を食わなきゃ腹も減る。

 ただ、俺の世界に、君がいないというだけ。


 哲也の荷物は基本的に服とかが殆どだから、それを無理やりバッグに詰め込めば、身支度は終わる―――――この部屋に帰って来ないための。
 朝、いつものように一緒に部屋を出て、アパート出たとこで別々の方向に進んで。
 ただ違うのは、夜になっても哲也がここに帰ってこないってこと。

 いつもみたいに「じゃあな」って別れて、いつもだったら振り返らないで会社に向かうのに。俺は1歩踏み出したところで足を止めて、くるっと回れ右。
 小さいけど派手な背中が、目一杯の荷物を抱えて歩いてる。
 あのときと同じだ。
 元カレと鉢合わせして、ここを出ていった、あのときの背中。
 ただ違うのは、今度こそもう……哲也はここに帰っては来ないってこと。

「アホらし…」

 こうなったのも、自分のせいなのに。
 こんな未練たらしいなんて。


***

 きっと分かってるはずなのに、啓ちゃんは何も言ってこない。俺も何も言わない。啓ちゃんとは、それこそ今までどおり。
 …………変なの。
 哲也がいなくなって、この喪失感で、どうかなってしまうんじゃないかって思ったのに、俺は今までどおりに生活してる。
 仕事が手に付かないこともないし、夜になれば眠くもなる。

(涙も出ないなんて…)

 実感が、湧いてないのかな。哲也がいなくなったってこの現実を、受け止めることが出来ないでいるのかな。
 もしかしたら、仕事を終えた哲也が、あのドア開けて帰って来るんじゃないか、なんて思ってんのか?
 もう、会えないのに…。

「バカだなぁ…」

 忘れようとすればするほど、いろんなことを思い出して、会いたくなるの。

 例えばさ、今みたいにリビングの床に寝転がってウダウダしてると、だらしない言って突っ込まれたりとか。
 このテーブルで、よく服のデザインしてたなぁとか。

 なぁ、哲也。
 お前が出てって気付いたこと、あるよ?
 この部屋、こんなに広いんだったって。
 もともと、1人で住むには部屋数が多いって思ってたけど、いつの間にか、そんなの忘れてた。お前が来るまでは、ずっと1人でここに暮らしてたのにな。

「引っ越そうかなぁ…」

 こんな部屋で、哲也との思い出だらけの部屋で、暮らしてくなんて。
 女々しいかもしれないけど、そんなの無理だわ、俺。

♪~~~♪~~~♪

 カバンの中に入れっ放しの携帯電話が、音を立てる。
 何だろ……あーケータイ取り行く元気ないよぉ。
 仕事の電話かな? 明日休みなのに、出勤しろとか言うんじゃないだろうな? まぁ、家にいてウダウダしてるよりは、そっちのほうがマシかもしれないけど。

「はいはいはい、今出るって!」

 ワタワタと携帯電話を取り出せば、背面のディスプレイには啓ちゃんの名前。

『…………貴久、ゴメンな、こんな時間に。今大丈夫?』

 電話に出てみれば、何となくいつもの啓ちゃんらしくない、小さな声。

「平気だけど……どうしたの?」
『今からお前んち、…………行ってもいい?』
「ふぇ? 俺んち? え? 今から?」
『ダメか?』
「いや、いいけど…………うん、いいよ。今どこいんの?」

 どうせ1人でウダウダしてるだけで、断る理由もないし、何か啓ちゃんの様子がいつもと違う感じがしたから。
 今いる場所を尋ねれば、啓ちゃんは自分ちじゃなくて、ここから少し離れた場所。歩いても10分足らずのトコにいるみたいだった。

 気を付けてね、て電話を切って、それから本当に10分くらいしたら、玄関のチャイムが鳴る。

「ゴメンな、急に」

 本当に申し訳なさそうに頭を下げた啓ちゃんだったけど、そんなことより、

「それ、どうしたの…?」

 啓ちゃんの口の端に、傷。
 ちょっと頬も腫れてるし。
 え? 誰かにぶたれたってこと?

「とにかく入って、って、ちょっ…」

 ひとまず啓ちゃんを家に上げようと、その手首を掴んだら、その手の冷たさに驚く。
 そういえば、もう秋も深まったってのに、啓ちゃんは上着も着てない。

「啓ちゃん…?」
関連記事

カテゴリー:アスファルトで溺死。
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

recent entry

recent comments

thank you for coming

category

monthly archive

2037年 01月 【1件】
2017年 01月 【1件】
2016年 11月 【13件】
2016年 10月 【15件】
2016年 09月 【1件】
2016年 08月 【3件】
2016年 07月 【17件】
2016年 06月 【12件】
2016年 05月 【13件】
2016年 04月 【14件】
2016年 03月 【12件】
2016年 02月 【18件】
2016年 01月 【28件】
2015年 12月 【30件】
2015年 11月 【28件】
2015年 10月 【31件】
2015年 09月 【27件】
2015年 08月 【2件】
2015年 07月 【1件】
2015年 06月 【24件】
2015年 05月 【31件】
2015年 04月 【31件】
2015年 03月 【31件】
2015年 02月 【22件】
2015年 01月 【31件】
2014年 12月 【30件】
2014年 11月 【30件】
2014年 10月 【29件】
2014年 09月 【22件】
2014年 08月 【31件】
2014年 07月 【31件】
2014年 06月 【30件】
2014年 05月 【31件】
2014年 04月 【30件】
2014年 03月 【31件】
2014年 02月 【28件】
2014年 01月 【30件】
2013年 12月 【14件】
2013年 11月 【30件】
2013年 10月 【31件】
2013年 09月 【30件】
2013年 08月 【31件】
2013年 07月 【31件】
2013年 06月 【30件】
2013年 05月 【31件】
2013年 04月 【31件】
2013年 03月 【32件】
2013年 02月 【28件】
2013年 01月 【31件】
2012年 12月 【31件】
2012年 11月 【30件】
2012年 10月 【31件】
2012年 09月 【30件】
2012年 08月 【31件】
2012年 07月 【31件】
2012年 06月 【30件】
2012年 05月 【32件】
2012年 04月 【30件】
2012年 03月 【29件】
2012年 02月 【29件】
2012年 01月 【33件】
2011年 12月 【35件】
2011年 11月 【30件】
2011年 10月 【31件】
2011年 09月 【31件】
2011年 08月 【31件】
2011年 07月 【31件】
2011年 06月 【31件】
2011年 05月 【34件】
2011年 04月 【30件】
2011年 03月 【31件】
2011年 02月 【28件】
2011年 01月 【31件】
2010年 12月 【31件】
2010年 11月 【30件】
2010年 10月 【31件】
2010年 09月 【30件】
2010年 08月 【32件】
2010年 07月 【31件】
2010年 06月 【31件】
2010年 05月 【32件】
2010年 04月 【30件】
2010年 03月 【31件】
2010年 02月 【28件】
2010年 01月 【32件】
2009年 12月 【32件】
2009年 11月 【31件】
2009年 10月 【34件】
2009年 09月 【32件】
2009年 08月 【31件】
2009年 07月 【34件】
2009年 06月 【30件】
2009年 05月 【32件】
2009年 04月 【31件】
2009年 03月 【32件】
2009年 02月 【28件】
2009年 01月 【32件】
2008年 12月 【40件】
2008年 11月 【38件】
2008年 10月 【37件】
2008年 09月 【32件】
2008年 08月 【33件】
2008年 07月 【32件】
2008年 06月 【31件】
2008年 05月 【33件】
2008年 04月 【31件】
2008年 03月 【32件】
2008年 02月 【29件】
2008年 01月 【35件】

ranking

sister companies

明日 お題配布
さよならドロシー 1000のだいすき。
東京の坂道 東京の坂道ほか
無垢で無知 言葉の倉庫

music & books