恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

遥斗×真琴

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09. もう知らないんだから


 俺が一生懸命、清楚な感じでやろうって思ってがんばってたら、はーちゃんがきょとんとした顔で俺のことを見てた。

「……マコ、何やってんの?」
「え?」
「さっきから何モゾモゾしてんの? 足、痺れた?」
「違う!!」

 バカ、そうじゃねぇだろ。
 清楚だっつーの!

「ねぇ…?」

 下から顔を覗き込んでみるけど…………反応なし。
 あれ?
 こんな感じじゃ、ダメ?

「はーちゃーん」
「ん? 何? さっきのキスだけじゃ、足んなかった?」
「ッッ!! たっ……そんなこと、ない」

 ホントは全然足んないけど。
 でもきっと、清楚で上品な子は、そんなこと言わない……と思う。

「はーちゃん…」

 うぅ……何かホントに足痺れてきちゃった。だって正座……苦手。
 何ではーちゃん、全然反応しないのかなぁ?
 もしかして俺、"清楚"の意味、履き違えてる?

「ねぇ、マコ」
「何?」
「何で正座してんの?」

 あ、やっと正座に気付いてくれた。
 でも、清楚を目指してます、とか言っちゃったら全部台無しだから、それは言わない。

「足、痛くないの?」
「い……たくない、」
「ホント?」
「ホント!」
「ふーん」

 そう言ってはーちゃんが視線を逸らしたから、ちょっと足を崩そうと思ったら、

「r@ガdjx;slkhツ;lkjv!!!!!」

 俺は声にならない声を上げて、その場を飛び退いた。

「なっなっ何すんだよ!!」

 はーちゃんが!!
 はーちゃんが俺の足を、ツンッて。
 足痺れてんのに、ツンッてすんだよ!?

「痺れてんじゃん」
「ッッッ…!!! はーちゃんのバカ!! もう知らない!!」

 そう言って部屋を飛び出していければいいのに、何しろ足がめちゃくちゃ痺れてる真っ最中。まともに立ち上がることも出来なくて。
 プイッて、体ごとはーちゃんから背けた。
 もう絶対ぜったいぜーったい許してやんないんだから!




「襲い受10のお題」

カテゴリー:遥斗×真琴

10. はいはい、俺の負け。


「マコ、こっち向いてよ」

 ヤなこった。絶対向いてやるもんか。
 だいたい、せっかく2人でいるのに、何ではーちゃんは1人の世界を作ろうとするわけ? 意味分かんない。昼間からエッチはともかくとして、一緒にくっ付いてたいって思う俺が変なの!?
 何だよ、大人ぶっちゃって。
 もうはーちゃんがしたいって言ったって、絶対させてやんないもん! そんで俺がどんな思いでいたか、思い知ればいいんだ!!

「マコってば」

 後ろから抱き締められる。

「ヤッ」

 もう、足痺れてんだから、やめてよっ!

「離してよ、バカ!」
「何で? こうしたかったんでしょ?」
「したくない。つーか、したくなくなった」

 そしたら、耳元にはーちゃんの溜め息。
 擽ったいし……って、何ではーちゃんが溜め息なわけ!? 溜め息つきたいの、俺のほうじゃん!!

「ゴメン、からかいすぎた」

 何だよ、今さら。
 そんなこと言ったって、許してやんないよ。

「マコ、」
「知らないよ、もう離して!!」
「ヤダ」

 グルって体を回されて、はーちゃんのほうを向かされる。

「何だよ、せっかく2人でいるのにさ、1人で本ばっか読んじゃって。俺がいる意味、全然ないじゃん! もう帰るし!」
「あー……」

 何だよ、あーって。
 今さら何かに気が付いたみたいな顔して。

「いる意味がないだなんて……それは絶対ない。だって俺も、マコと一緒にいたかったし」
「嘘ばっか。じゃあ何で本ばっか読んで、俺のほう見なかったんだよ」
「それはゴメン。でもマコの側にいたかったのは、ホントだから」
「そんな調子のいいこと信じない。だって俺があんだけ誘ったのに、全部無視したじゃん」

 チューも断わられたんだそ、俺!

「いや……だってマコ、ものすごい目がギラついてたし。さすがにあの感じで、昼間っからやってたら、持たないから」
「ギラ……別にギラついてなんかないし! それに持たないって……それって、おじいちゃんじゃん!」

 俺、そこまで溜まってないよ!!
 何だよ、何か俺、すごい性欲の固まりみたいじゃん。

「おじいちゃんだよ、俺は。マコだって、よくそう言うじゃん」
「グ…。で、でも! 俺がそんなギラついてたなら……それってはーちゃんのせいでしょ?」
「何で?」
「はーちゃんが毎日ちゃんとお相手してくれれば、そんなことないもん!」

 最近、ただでさえあんまり会えないでいたのに、せっかく会えても、3回に1回は、明日早いからとか言って断わられてたし!

「だから今日はその責任をしっかり取りなさい!!」
「わっ!?」

 俺ははーちゃんの肩をグイッて押して、その場に押し倒した。

「ちょっ、ちょっと待っ…」
「待たない」

 今まで、何となく余裕のある顔をしてたはーちゃんが、ちょっと焦ったみたいになってる。
 今日はもう何があったって、絶対最後までやらせてやるんだから!

「マコ……まだ、2時過ぎたばっか…」
「だから? んー……1回1時間として……何回出来るかな? 新記録、挑戦しちゃう?」
「…………う゛……」
「んふふ」

 俺はご満悦ではーちゃんのお腹に跨り、その唇を奪う。

「はーちゃん……好き…」

 とっておきの甘い声。上目遣い。
 いくらはーちゃんがおじいちゃんだからって、これで落ちなきゃ、嘘だね。

「マコ……分かった、俺の負けです…」
「満足させてくれなきゃ、許してやんない♪」

 にんまり笑って、もっかいはーちゃんの唇を奪った。


 やっぱりお休みの日は、2人で、ね?





*END*




「襲い受10のお題」



 話が進めば進むほど、マコちゃんのテンションが崩壊していく…。一応彼、20歳なんですけどね。20歳にしちゃ、ちょっと…(苦笑)
 それでも気に入った! という方は、ポチってしていただけると、励みになりますv →にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

 ここまでお付き合いありがとうございました。
 拍手やコメントをくださったみなさん、ランキングクリックしてくれたみなさん、励みになりました。
 バカ話ですが、彼らのシリーズはまだ続きます。というか、もう1組出す予定です。
 これからも、よろしくお願いします。

カテゴリー:遥斗×真琴

やわらかな夜


「あ、マコ! まだそんなカッコしてる」

 バスルームから寝室にやって来た遥斗は、スウェットパンツだけ穿いた格好で、髪も濡れたままの真琴を見つけ、眉を顰めた。

「んー?」

 呆れ顔の遥斗をよそに、真琴はベッドに転がって、のん気に雑誌を捲っている。

「マコ、ちゃんと髪乾かしな。風邪引くよ」
「んーやぁ…」

 遥斗が放ってきたタオルを、面倒臭そうに頭から退かす真琴。

「マーコ! ほら、ドライヤー」
「ん……はーちゃん、やってぇー」
 
もそもそと体を起こした真琴は、甘えるように遥斗に抱き付いた。

「マコの甘えんぼ」
「いいのぉ」
「はいはい」

 何だかんだで結局は真琴に甘い遥斗は、まずは放り投げられたタオルを手にして、まだ十分に水分を含んだ真琴の髪を、丁寧に拭いてやる。

「気持ちい…はーちゃんの手」
「そう? ありがと」

 だいたいタオルドライしたところで、遥斗はタオルを置いて、ドライヤーに切り替える。

「ドライヤー当てるよ? 熱いのでいい?」
「んー……ねぇ、髪、傷んでるでしょ?」
「ちょっとだけね」

 かつて繰り返したブリーチと、毎日のスタイリング。自分でも嫌になるくらいのダメージだ。

「ぅうん…」
「ん? 熱い?」
「へーき……はーちゃ…」
「ん?」

 真琴の顔を覗き込むと、トロリとした目で遥斗のほうを見上げた。

「眠いの?」
「んーん、ちが…」
「違うの?」
「…ぅん」

 ドライヤーを止めて、乾いてふわふわになった真琴の髪に指を通す。

「どうしたの、マコ」
「んー……俺、幸せだなぁって、思って」

 思い掛けない言葉を貰って、思わず遥斗の手が止まった。

「はーちゃ、ん…?」
「あ…いや……俺も今そう思ってた…」
「……おんなじこと考えてた? 俺ら」

 あぁ、奇跡のような確率で巡り会った俺たち。

 その中で、同じ気持ちでいられるなんて、何て幸せ。

「好きだよ」

カテゴリー:遥斗×真琴
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

Heavenly Kiss (前編)


「はーちゃん、明日も仕事……だよね?」

 お休み前のテレフォンタイム。
 バレンタインに手作りチョコを渡すぞ作戦を実行すべく、はーちゃんの予定を確認する。

『うん、仕事』

 まぁ…分かってたことだけどね。
 そんなにあっさり言わなくても。

「撮影? スタジオなの? それとも外?」
『確か屋外だったかな』
「遠く? どこでするの?」
『何、どうしたの、マコ』
「見に行っても……いい?」
『え?』

 ちょっとの沈黙。
 考えてるのかな?
 今までこんなこと、言ったことないもんね。

「ダメ?」
『まぁ…いいとは思うけど…』
「邪魔しないように、おとなしくしてるから! ちゃんといい子にしてるから!」
『分かった、分かった』

 だって、学生の俺と違って、はーちゃんは忙しいし。
 仕事が終わってから会うってなったら、行ったり来たりする時間もあるから、ちょっとしか一緒にいられないから。
 それならこっちから会いに行けば、少しでも一緒にいられるもんね。
 それに……はーちゃんが仕事してるトコ、ちゃんと見たことって1回もないし。

「じゃあ、明日、学校が終わったら直行するね!」
『夕方までやってるから、慌てなくても大丈夫だよ』
「分かってる!」






***

 はーちゃんは慌てなくても大丈夫って言ったけど、1秒でも早く行きたいから、チャイムが鳴ったら即ダッシュ。
 昨日教えてもらった場所に行ったら、何か人だかりっぽくなってるところがあって、すぐにそこだって分かった。
 そっと近づけば、はーちゃんのほかに何人かモデルさんがいて、あとカメラマンの人とか、機材持ってる人とか、メイクさんかな、女の人もいる。

「どこだったら、邪魔にならないかな…」

 あんまりジロジロ見てたり、ウロウロしてたりしたら、やじ馬かと思われちゃうかな?
 どうしよ…。

「はーちゃーん…」

 うわー…超カッコいい…。
 あの中ではやっぱ、はーちゃんが1番カッコいいよね。
 うん、絶対。
 何かお家で会うときと、雰囲気違う…。
 凛としてるし……あーでもカッコいー……。

「マコ!」
「うわっ!?」

 ボーっとしてたら、目の前にいきなりはーちゃんの顔。
 ビックリしすぎて、思わず後ろに飛び退いちゃった。

「大丈夫?」

 あんまりにも俺がビックリするもんだから、はーちゃんが苦笑してる。
 あれ? 撮影は?

「はーちゃん…。あれ?」
「休憩に入ったんだよ。マコ、こっち見てるのに、全然気付いてなかったから。声掛けたらすごいビックリしてるし」
「だってはーちゃん、カッコいいから、見惚れてた」
「大げさだよ」

 そう言ってはーちゃんは笑うけど、ううん、全然そんなことない。
 すごいカッコいいし。

「早かったね。もう学校終わったの?」
「うん。チャイム鳴って、即ダッシュで来た」
「慌て過ぎて事故るなよ?」
「大丈夫だよ!」

 子どもにするみたいに頭を撫で撫でするから、恥ずかしくてつい言い返しちゃう。
 ホントはその手、好きなんだけどね。

「もうちょっと撮影あるから、マコ、こっち来て待ってて?」
「え? そっち行ってもいいの?」
「いいよ、おいで」

 はーちゃんに言われるがまま、俺は待機してるスタッフさんのほうに行く。
 キレイな女の人が2人。

「わ、遥斗くん。誰、そのかわいい子!」
「ヤダ、ホント、かわいい! 遥斗の知り合い?」
「名前は?」
「あ…ぅ…」

 いきなり2人に囲まれて、何かどうしていいか分かんない。
 困ってはーちゃんを見れば、

「2人とも、マコがビックリして固まっちゃってるから」

 て、助け船を出してくれる。

「だって遥斗がかわいい子、連れて来るから」

 んん??
 かわいいって、俺のこと?
 別にかわいくなんかないし!
 それに俺、男だし、もう20歳なんだから、かわいいとか、ちょっとヤなんだけど(出来ればカッコいいとかのほうがいいよ)。

 ポニーテールで背の高いほうがメイクを担当してるアキさんで、茶髪のショートカットのほうが、衣装とかを担当してるアユミさん。
 何かはーちゃんのお仕事が終わるまで、このお姉さまたちと一緒にいなきゃいけないみたい。
 はーちゃんのお仕事邪魔しないように、いい子でいなきゃいけないから、しょうがないけど。

「マコちゃんて言うの? 名前」
「ん、真琴、だから、マコ」
「かわいー。ね、いくつなの?」
「えっと、ハタチ」
「はー…さすが20歳は肌の張りが違うわね」

 2人からの質問攻め。
 出来れば、はーちゃんのこと、見てたいんだけどなぁ。

「マコちゃんもモデルとかしてないの?」
「え? 俺が? まさか!」

 だってモデルさんて、はーちゃんみたいにカッコいい人がやるんでしょ?
 俺なんてブサイクだもん…。

「かわいいし、スタイルいいから、向いてるかもよ?」

 だから、かわいくないし!
 もー、お姉さまは、よく分かんない!!

「でも、はーちゃ…、……遥斗、何であんなカッコで撮影してるの? あれって、春物?」

 まだ2月なのに、モデルさんたち、半袖だったり薄着だったり。
 何でそんなカッコなの??

「実際に雑誌が発売されるのはまだ先だし、ファッション誌の場合、実際の季節よりも先取りで流行とかを伝えるじゃない? だから、夏物の撮影は冬。冬物の撮影は夏なのよ」
「えぇー…じゃあ、季節が真逆ってこと?」
「そうそう」

 知らなかったー…。
 屋内ならまだしも、この時期、外であのカッコはつらいよねー…。

「だからホント、実際は季節感ゼロよね。半袖のモデルさんに、バレンタインのチョコ渡して」
「夏なの? 冬なの? どっちよ! ていうね」

 ……。
 バレンタインのチョコ。
 え? お姉さまたち、はーちゃんにもチョコ渡したの?

「えっと、あの、2人とも、モデルさんに、チョコとか渡すの?」
「え? まぁ一応ね。ホラ、普通の会社で言うところの、同僚みたいなもんだし」
「ま、義理ですけどね」

 義理チョコ。
 そういえば、お父さんもお兄ちゃんも、会社の女の人からチョコ貰ってくるもんね。
 何か、そういう感じってこと?

「遥斗にも、あげた?」

 何か普段、"はーちゃん"て呼んでるから、今さら"遥斗"とか言いづらい。
 でもこんなトコで、"はーちゃん"なんて言ったら、このお姉さまがたに何て突っ込まれるか分かんない。

「遥斗くんにもあげたわよ」
「義理チョコ?」

 俺、何確認してんだ?

「あたしは本命のつもりであげても良かったんだけどね」
「えっ!?」
「あはは、アキ、何言ってんのよ。遥斗、本命チョコは彼女から貰うから、あんたの本命チョコなんか受け取らないわよ」
「あー、そうだよね。彼女いるって言ってたもんね」

 え?
 本命チョコ?
 んん??
 彼女?

 どういうこと?
 確かに俺は本命チョコ、はーちゃんにあげるつもりだけど、チョコのことは内緒にしてるし、だいいち俺は女じゃないもん。"彼女"じゃない。

 え…。
 俺のほかに、誰か、本命チョコくれるような彼女がいるってこと?

 そんなことない……よね?
 俺だけだよね?
 はーちゃんのこと、信じてていいんだよね?

 何か急に心の中がモヤモヤしてきて、イライラ? ムカムカ? よく分かんないけど。
 お姉さま2人の話し声も、耳に入って来なくなる。


 はーちゃんがカメラに向かって、キレイな顔で笑ってる。
 俺の知らない顔。
 何かすごく遠くにいる人みたい。


 このままずっとはーちゃんのこと見てるのがつらくなって、俺ははーちゃんに内緒でその場を去った。
 お姉さまには、もうちょっとで終わるって言われたけど、もう無理…。

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Heavenly Kiss (中編)


 帰ったら、2番目のお兄ちゃんが、ビックリした顔で出迎えた。
 今日ははーちゃんちに行くって言ってたのに、こんな早い時間に帰って来たから。

「マコ、どうした? そんな顔して」

 そのまま部屋に一直線に向かおうと思ったのに、すごく心配そうに聞いてくるから、弱り掛けてた心がグラグラした。

「マコ?」
「……ぅ…ふぇ…」
「ちょっ…マコ!?」
「うわぁーん!」

 1つ、涙がポロッと零れて、その後はもう止まらなかった。
 リビングまで引っ張ってってくれて、泣きじゃくる俺を抱き締めて、背中をポンポンしてくれる。
 さっき、はーちゃんが頭をポンポンしてくれたみたいに優しくて、涙が止まんなくなる。

「何、何、どうしたー?」
「はーちゃ…ヒック…」
「ん? 遥斗くん? 今日は一緒じゃないの? 会えなかった?」
「会った、けど…」

 本命チョコくれる彼女がいるって…。

「会って、話、してきた?」
「……話、ていうか…、…ック」

 お姉さま2人とは話したけど…。
 ……はーちゃんに黙って、帰ってきちゃった…。

「遥斗くんて、マコのこと、こんなに泣かすヤツだったっけ?」
「……違う…」

 はーちゃんは、いっつも優しいよ。
 俺はわがままばっか言って、はーちゃんのこと、困らせてる。
 だからはーちゃん、俺のこと嫌になっちゃったのかな。
 他の女の子のほうが、良くなっちゃったのかな。

「うぅ…」
「あーマコ、もう泣くなって! 俺が泣かせてるみたいじゃん! 別に遥斗くんは何も言ってないんだろ? マコだって本人に確かめたわけじゃないんだろ?」
「…ん。だってそんなの、怖い…」
「でもこのままでいいの? 本人から何も聞いてないのに、勝手に疑ってるだけで」
「ヤダ…」

 聞くの、怖い。
 だって、もし他に彼女がいるって分かったら、そんなの。
 でも、このままでいるのも…。

「はーちゃんに、電話してみる…」
「そうしな。何かあったら、また慰めてあげるから」
「…ん。ありがと」
「ホラ、いつまでも鼻垂らしてないで、顔洗っといで?」
「垂らしてない!」

 両手で涙を拭って、お兄ちゃんから離れた。
 言われたとおりに顔を洗おうと、洗面所に向かおうとしたら、カバンの中から、携帯電話の着信音。

「はーちゃんだ!」

 はーちゃんからの電話だけ、着信音を変えてるから、すぐに分かるの。
 お兄ちゃんがニコニコ(ニヤニヤ?)こっち見てるから、カバン持って、ダッシュでリビングを出る。

「もしもし? はーちゃん?」
『あ、マコ! 今どこ? 家に帰ったの?』
「あ…うん」
『どうしたの? 具合悪くなった? 外寒かったし、風邪でも引いたんじゃ…』
「違うの、ゴメンなさい…」

 すごい心配そうな声。
 黙って帰って来ちゃったからだ。

 しっかりコートまで着込んでた俺が、あそこにちょっといたくらいで風邪引いてたんじゃ、半袖とか着て撮影してたモデルさんとかに申し訳ないよ。

『平気なんだね?』
「うん、大丈夫。ゴメンね、勝手に帰って来ちゃって」
『いや、いいんだけど。アキさんとかも、マコが元気ないみたいだって心配してたから』
「……ゴメンなさい」

 あの、アキさんてお姉さんのチョコは義理チョコだって分かってるけど、でも、それでも今、はーちゃんの口から女の人の名前を聞くのは、ちょっとキツイ。

『マコ、今家なんだよね? これから出られる?』
「うん」
『じゃあこれから迎えに行くよ。支度して待ってて?』

 本命チョコの彼女は?
 そこには行かなくていいの?

 聞こうと思ったけど、結局言葉にならなかった。
 会ったら、そしたらちゃんと聞くから、て、自分に言い聞かせて、電話を切った。

「お兄ちゃん、やっぱ出掛けてくるね?」
「おー、ちゃんと顔洗ってから行けよ?」
「分かってる!」

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