拓海×悠也
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- 2008.01.11(金)
- 10. そして再び (前編)
- 2008.01.12(土)
- 10. そして再び (後編) R18
- 2008.01.24(木)
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- 君は愛しいヘムロック (前編)
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- 君は愛しいヘムロック (後編)
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10. そして再び (前編)
2008.01.11 Fri
2度目の、彼の部屋。
あの日、痛い頭を抱えて起きたベッド。拓海は床に落ちてたけど。今度はその彼に押し倒されてて。
「ちょっ…あの…」
この体勢は…。
やっぱ、あの、アレですよね? そういうことですよね?
え、思い出させるって、やっぱそういうことなの? 言っても思い出せないなら、体で思い出せって?
もっと抵抗したほうがいいのかな? だってこのままじゃ、完全に拓海のこと、信用しちゃったみたいじゃん。
「悠ちゃん、何考えてる?」
「……お前のこと」
「マジで? 嬉しいな」
「お前がバカで、悪い男かもしれないって」
「……あんまり嬉しくないな。バカかもしれないけど、優しいよ?」
「他に、誰にそんなこと言ってんの?」
そう言えば、拓海の顔が少し曇る。
だってさ、疑ったってしょうがなくない? 初対面の酔っ払いを抱いちゃった男だよ?
普段からそんなことしてるんだなって、こんなこと言っていろんな人を誘ってるのかもって、そりゃ思っちゃうじゃん。
でも、こんなとこにノコノコ付いて来て、まんまと押し倒されちゃってる、俺も俺だけど。
「悠ちゃんだけだよ?」
「…信用できない」
「何で?」
「だって、」
嫌な沈黙。
顔の距離が、すごく近い。
「思い出させてやるって、言ったでしょ?」
「思い出さなかったら?」
「どうしよう」
「…、」
ねぇ、俺はホントにあの夜、お前に抱かれたの?
今日またこうやってセックスすれば、そのこと、思い出す?
思い出せば、そのときのことを思い出せば、お前のことを信用できるようになるの?
どうせいろんな人にそんなこと言ってんだろ? て疑う気持ちと、俺だけだって言う拓海の言葉を信じたい気持ち。
どうしたらいいんだろう。
俺は、どうしたいんだろう。
きっとここで拒絶したら、拓海は俺のことを解放してくれるだろうけど、でも、きっと、それきりだ。
もう会うこともないだろうし、今日みたいに街で偶然会ったって、追い掛けては来てくれない。
俺は、どうなることを望んでる?
長いので分断しました…。次回で終わります。
あの日、痛い頭を抱えて起きたベッド。拓海は床に落ちてたけど。今度はその彼に押し倒されてて。
「ちょっ…あの…」
この体勢は…。
やっぱ、あの、アレですよね? そういうことですよね?
え、思い出させるって、やっぱそういうことなの? 言っても思い出せないなら、体で思い出せって?
もっと抵抗したほうがいいのかな? だってこのままじゃ、完全に拓海のこと、信用しちゃったみたいじゃん。
「悠ちゃん、何考えてる?」
「……お前のこと」
「マジで? 嬉しいな」
「お前がバカで、悪い男かもしれないって」
「……あんまり嬉しくないな。バカかもしれないけど、優しいよ?」
「他に、誰にそんなこと言ってんの?」
そう言えば、拓海の顔が少し曇る。
だってさ、疑ったってしょうがなくない? 初対面の酔っ払いを抱いちゃった男だよ?
普段からそんなことしてるんだなって、こんなこと言っていろんな人を誘ってるのかもって、そりゃ思っちゃうじゃん。
でも、こんなとこにノコノコ付いて来て、まんまと押し倒されちゃってる、俺も俺だけど。
「悠ちゃんだけだよ?」
「…信用できない」
「何で?」
「だって、」
嫌な沈黙。
顔の距離が、すごく近い。
「思い出させてやるって、言ったでしょ?」
「思い出さなかったら?」
「どうしよう」
「…、」
ねぇ、俺はホントにあの夜、お前に抱かれたの?
今日またこうやってセックスすれば、そのこと、思い出す?
思い出せば、そのときのことを思い出せば、お前のことを信用できるようになるの?
どうせいろんな人にそんなこと言ってんだろ? て疑う気持ちと、俺だけだって言う拓海の言葉を信じたい気持ち。
どうしたらいいんだろう。
俺は、どうしたいんだろう。
きっとここで拒絶したら、拓海は俺のことを解放してくれるだろうけど、でも、きっと、それきりだ。
もう会うこともないだろうし、今日みたいに街で偶然会ったって、追い掛けては来てくれない。
俺は、どうなることを望んでる?
「見知らぬあなたとの10のお題」
長いので分断しました…。次回で終わります。
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カテゴリー:拓海×悠也
10. そして再び (後編) R18
2008.01.12 Sat
*R18です。いきなりそれっぽい感じで始まりますんで、苦手な方はご注意ください。
「悠ちゃん?」
………………。
「いいよ。思い出させろよ」
「…ん、分かった。ね、キスしていい?」
「聞くな、そんなの」
……ねぇ、あの夜も、こんなふうに聞いたの?
「……ん…」
女とするのとは、全然違うキス。舌を入れられて、口の中を蹂躙される。こんな、攻められるみたいなの、知らないよ。
「ゃ…ちょ…」
キスしながら、拓海の手がシャツの裾から入ってきて、ビックリして体を捩るけど、うまくいかない。
「や…ヤダって…」
「大丈夫だから……」
それだけ言って、また深く口付けられる。拓海の手は、俺の胸をいやらしい手付きで撫で回して。
「ぅん…、はぁっ……」
「悠ちゃ……悠也」
離れた唇が、耳元で俺の名前を呼ぶ。ゾクッ…と、背中を快感が駆け抜ける。コイツに名前、呼ばれただけで感じちゃうの? 俺って…。
「…ッ、」
拓海の手が俺のジーンズの前に触れた。自分でも分かる。キスだけで感じてるの。もう熱くなってて。直に触らなくなって、きっと拓海も気付いてる。
「続き……するよ?」
「…………」
答えられない。続きって? まったく分かんないわけじゃないけど、でも未知の世界。なのに体はどんどん熱くなるし。
「ちょっ……」
ジーンズの前を広げられて、脱がされる瞬間はちょっと抵抗したけど、ムダだった。服を全部脱がされて、拓海も自分のシャツを脱ぎ捨てる。
俺、コイツに抱かれるんだ……。
ボンヤリ思ってると、身を屈めた拓海がいきなり俺のを口に咥えた。
「ちょっ、やっ……待って…あぁっ……」
ビックリして拓海を引き剥がそうとしたけど、ダメだった。俺だって鍛えてるけど、拓海のほうが力があって、その体を退かせられない。
「ヤダ……お願い、やめて…」
「何で? 気持ち良くない?」
「はぅっ…」
丁寧にそこを愛撫されて、段々と頭の中が白んでくる。抵抗したい気持ちと、このままこの快感に流されたい気持ち。クラクラする。
「あ、あぁ……もぉ…」
「イッていいよ。気持ちいいでしょ? ね、イッて?」
「ひぁっ……あぁっ!」
ドクリ。抵抗し切れない俺は、拓海の口の中で達してしまう。それでも拓海は口を離してくれなくて。ゴクッ……と、拓海の喉が鳴るのが分かった。まさか…。
ゆっくりと拓海が離れてく。その姿を視線だけで追う。拓海の、白く汚れた唇。赤い舌が舐め取って。汚れた手もキレイにしていく。
「ん?」
「……飲んだ?」
「んー……うん。ヤダった?」
「バッカ、AVじゃないんだから! そんなことすんなよ!」
「いいじゃん、俺が飲みたかっただけだし」
平然とそんなこと言って、拓海はガサガサとベッドサイドの棚を漁り出して、取り出したのは小さなビン。何かピンク色した液体が入ってる。
「……それ、何?」
「これ? ローション。だって、慣らさなきゃでしょ?」
…………慣らす? え? もしかして、
「ちょ…やっぱヤ……」
「ダーメ。途中棄権は認めません」
「だって、こわ…」
「大丈夫……痛くしないから」
優しい顔で笑い掛け、ホッペとか耳元にキスしてくれる。唇にしないのは、きっとさっきフェラしたせいだから。拓海はてのひらにピンクのローションを垂らして、指先に絡ませてる。
「拓海……あっ…」
軽々と片足を持ち上げられる。怖い。恥ずかしい。俺、この前はこんなの普通にしてたの?
「悠ちゃん…」
ヤダ…そんな優しい声で名前呼ばれたら……ほだされるっ…!
「ホントに嫌? 無理ならやめ……」
「恥ずかしいんだから、さっさとしろ!!」
「イテッ」
この恰好がすごく恥ずかしくて、まともに拓海の顔なんか見れなくて、ギュッと目を瞑ったまま、抱えられたほうの足の踵で、拓海の背中を蹴っ飛ばした。
「……もう、嫌って言ったって、止めないよ?」
「いいから! そのかわり、痛くしたら承知しないからなっ!」
「最高に気持ち良くしてあげるよ」
何だよ、その自信。バカじゃねぇの。女抱くときも、こんななわけ? あ、いや、ホモだから、女は抱かないのか。女相手じゃ勃たないのかなー…………て、あれ? こんなこと、この間も思ったよな、俺。あれ?
「ギャッ!」
脳内で、ぼんやりと何かを掴みかけていたのに。
突然、おしりの、いや、その……ちょっと人には言いたくないような部分に、濡れた感触がして。
ビックリして、反射的に目を開けて体を起こしたら、とてもじゃないが見れたもんじゃない光景がそこにはあって、俺は再び目を閉じた。
もう、途中でやめるつもりはないから。
たとえ拓海が、ローションで濡れたその指先を、俺のおしりの間に這わせてたとしても。
「平気?」
「へい、き…」
……じゃ、ないけど。
でも。
「うぅ~…」
指が…指が中に入ってきてるっ…!
「我慢して。慣らさないとツライから、ね?」
子供をあやすような言い方。
前も、こんなふうに言われた。何のとき? 言ったのは…………拓海?
「あ、ぁ、やぁ……ヤダぁ…」
何とも言えない異物感に、思わず泣き声になる。
もう何か泣き出したい。
痛いのか、苦しいのかよく分かんないけど、とにかくこの時間が、早く終わってくれたらと思う。
「ひ、ぁっ…」
目を閉じたまま、ずっと下半身にだけ意識を飛ばしてたら、いきなり腹筋を撫で上げられて、乳首をつままれた。
自分でも、体がビクッてなったのが分かる。
何、俺、こんなトコいじられて感じてんのかな。うぅん…感じてんのかどうかなんて、よく分かんない。何かムズムズする…。
「いじられんの、好きだよね、ここ」
「んぅー…」
「乳首。さっきより俺の指、飲み込むようになったよ?」
「は…ぅ、ん…」
「ね、もう1本、入れていい?」
「入んな…」
「入るよ。この前も、入れたでしょ?」
この前も?
あぁ…この前も、無理だって言ってんのに、何本も指入れてきた……コイツ…。
「はぁっ…!!」
「ホラ、3本入った…」
「ん、ぁ…あぁ…、な…もぉ…」
俺の中を、拓海の指がグチャグチャに動いてる。
も、ヤなのに、乳首はずっといじられてるし。
全身の感覚が、もうおかしい。
「悠ちゃん…………いい?」
「……ぇ…?」
「入れて、いい…?」
真剣みを帯びた拓海の声に、うっすらと目を開ければ、思いのほか近くに拓海の顔のアップ。
何て答えたらいいのか分からなくて、目を逸らした。
「沈黙は、肯定とみなします」
「…………」
「……いいの?」
何回も聞くなって、バカ!
最初にいいっつったじゃんか!
「…んっ、」
ズルリ。
まさにそんな感じで、拓海の指が中から出てった。
やっと異物感から解放されて、ホッと息をついたのも束の間。
「あぁーーーっっ!!」
今度は、さっきとは比べもんになんないくらいの質量が、俺の中に再び入ってこようとして。
「あ、や、無理ぃっ…」
「クッ…力抜いて…」
「ヤ、ヤ…無理、む…」
無理、無理、無理、無理!! もう無理!!
だって、こんなのっ…!
「悠ちゃ…悠、ふぅーって、息して…?」
「ふ、うぅ…」
苦しそうな拓海の声に、何とか俺も従おうとするんだけど、息なんてそんなの、全然出来ない。
今までどうやって呼吸してたのか、全然分かんない。
「うわっ…あっ、あんっ…」
拓海の手が、あまりの痛みに萎えかけていた俺の前へと伸びて、何の前触れもなくそれを扱き始めたから。
痛みと苦しさに集中したほうがいいのか、その中でかすかに芽生え始めた快感に意識を持っていったほうがいいのか分からなくて、頭が混乱してくる。
「ぁ…あ、ぅん…」
「悠、悠…」
「ん…ぁ…」
「目、開けて? 俺のこと、見て…?」
「あ…?」
拓海…。
「動くよ?」
「…ん、あぁっ…」
両足を抱えられて、腰をガクガク揺さぶられる。
うぅー……痛いけど、痛くないけど、早い動きに、意識が付いていかない。
「悠……好き、好きだよ…」
何度も囁かれて。
あぁ…そうだ。
女相手じゃ勃たないのかなー…て思った相手も。
子供をあやすように宥めてきたのも。
無理だっつってんのに、やめようとしなかったのも。
…………って、言ってきたのも…。
「たく、み…」
「…ん? 何…?」
酔ってたけど、酔ってたせいじゃなくて。
「はぁ…ぁ、ん……好、き…」
結局、だから。
そういうことなんだよ。
俺はコイツのこと、好きになってて。
「……俺もだよ…、俺も悠のこと、好き…」
あのとき、何度もそう言ってくれたから。
好きだって、言ってたの。
ゴメンね、忘れちゃってて…。
「ん、や…イク、イキそ…」
「……ん」
『あのときのこと、思い出させてあげようかなー、なんて』
『思い出させて…………どうすんの?』
『だってさ、忘れちゃってるわけでしょ。あのとき俺が…………』
―――――好き、て言ったこと…。
「悠、好き…。もう忘れないでよね…」
青臭いキスで唇を奪われた後、閉じた瞼の裏が、白く染まった。
*END*
果たして人は、こんなに簡単にホモになれるものなのか。
うぅん…ホントは悠ちゃん、もっとかわいくなるはずだったのに。結局体で思い出してしまいました…。
ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
拍手やコメントをくださったみなさん、ランキングクリックしてくれたみなさん、励みになりました。本当にありがとうございました。
ところでブログ拍手、何かお礼が書けるようになってましたね。
前からなってました? 私が気付かなかっただけ?
今まで返事を書こうにも、どうしたらいいのか分からなくて、何のお礼も出来ずにいましたこと、この場を借りてお詫びします。
でも全部大切に読ませていただきました。
これからは「公開」設定になっているものについて、きちんとお返事していきますね。
「悠ちゃん?」
………………。
「いいよ。思い出させろよ」
「…ん、分かった。ね、キスしていい?」
「聞くな、そんなの」
……ねぇ、あの夜も、こんなふうに聞いたの?
「……ん…」
女とするのとは、全然違うキス。舌を入れられて、口の中を蹂躙される。こんな、攻められるみたいなの、知らないよ。
「ゃ…ちょ…」
キスしながら、拓海の手がシャツの裾から入ってきて、ビックリして体を捩るけど、うまくいかない。
「や…ヤダって…」
「大丈夫だから……」
それだけ言って、また深く口付けられる。拓海の手は、俺の胸をいやらしい手付きで撫で回して。
「ぅん…、はぁっ……」
「悠ちゃ……悠也」
離れた唇が、耳元で俺の名前を呼ぶ。ゾクッ…と、背中を快感が駆け抜ける。コイツに名前、呼ばれただけで感じちゃうの? 俺って…。
「…ッ、」
拓海の手が俺のジーンズの前に触れた。自分でも分かる。キスだけで感じてるの。もう熱くなってて。直に触らなくなって、きっと拓海も気付いてる。
「続き……するよ?」
「…………」
答えられない。続きって? まったく分かんないわけじゃないけど、でも未知の世界。なのに体はどんどん熱くなるし。
「ちょっ……」
ジーンズの前を広げられて、脱がされる瞬間はちょっと抵抗したけど、ムダだった。服を全部脱がされて、拓海も自分のシャツを脱ぎ捨てる。
俺、コイツに抱かれるんだ……。
ボンヤリ思ってると、身を屈めた拓海がいきなり俺のを口に咥えた。
「ちょっ、やっ……待って…あぁっ……」
ビックリして拓海を引き剥がそうとしたけど、ダメだった。俺だって鍛えてるけど、拓海のほうが力があって、その体を退かせられない。
「ヤダ……お願い、やめて…」
「何で? 気持ち良くない?」
「はぅっ…」
丁寧にそこを愛撫されて、段々と頭の中が白んでくる。抵抗したい気持ちと、このままこの快感に流されたい気持ち。クラクラする。
「あ、あぁ……もぉ…」
「イッていいよ。気持ちいいでしょ? ね、イッて?」
「ひぁっ……あぁっ!」
ドクリ。抵抗し切れない俺は、拓海の口の中で達してしまう。それでも拓海は口を離してくれなくて。ゴクッ……と、拓海の喉が鳴るのが分かった。まさか…。
ゆっくりと拓海が離れてく。その姿を視線だけで追う。拓海の、白く汚れた唇。赤い舌が舐め取って。汚れた手もキレイにしていく。
「ん?」
「……飲んだ?」
「んー……うん。ヤダった?」
「バッカ、AVじゃないんだから! そんなことすんなよ!」
「いいじゃん、俺が飲みたかっただけだし」
平然とそんなこと言って、拓海はガサガサとベッドサイドの棚を漁り出して、取り出したのは小さなビン。何かピンク色した液体が入ってる。
「……それ、何?」
「これ? ローション。だって、慣らさなきゃでしょ?」
…………慣らす? え? もしかして、
「ちょ…やっぱヤ……」
「ダーメ。途中棄権は認めません」
「だって、こわ…」
「大丈夫……痛くしないから」
優しい顔で笑い掛け、ホッペとか耳元にキスしてくれる。唇にしないのは、きっとさっきフェラしたせいだから。拓海はてのひらにピンクのローションを垂らして、指先に絡ませてる。
「拓海……あっ…」
軽々と片足を持ち上げられる。怖い。恥ずかしい。俺、この前はこんなの普通にしてたの?
「悠ちゃん…」
ヤダ…そんな優しい声で名前呼ばれたら……ほだされるっ…!
「ホントに嫌? 無理ならやめ……」
「恥ずかしいんだから、さっさとしろ!!」
「イテッ」
この恰好がすごく恥ずかしくて、まともに拓海の顔なんか見れなくて、ギュッと目を瞑ったまま、抱えられたほうの足の踵で、拓海の背中を蹴っ飛ばした。
「……もう、嫌って言ったって、止めないよ?」
「いいから! そのかわり、痛くしたら承知しないからなっ!」
「最高に気持ち良くしてあげるよ」
何だよ、その自信。バカじゃねぇの。女抱くときも、こんななわけ? あ、いや、ホモだから、女は抱かないのか。女相手じゃ勃たないのかなー…………て、あれ? こんなこと、この間も思ったよな、俺。あれ?
「ギャッ!」
脳内で、ぼんやりと何かを掴みかけていたのに。
突然、おしりの、いや、その……ちょっと人には言いたくないような部分に、濡れた感触がして。
ビックリして、反射的に目を開けて体を起こしたら、とてもじゃないが見れたもんじゃない光景がそこにはあって、俺は再び目を閉じた。
もう、途中でやめるつもりはないから。
たとえ拓海が、ローションで濡れたその指先を、俺のおしりの間に這わせてたとしても。
「平気?」
「へい、き…」
……じゃ、ないけど。
でも。
「うぅ~…」
指が…指が中に入ってきてるっ…!
「我慢して。慣らさないとツライから、ね?」
子供をあやすような言い方。
前も、こんなふうに言われた。何のとき? 言ったのは…………拓海?
「あ、ぁ、やぁ……ヤダぁ…」
何とも言えない異物感に、思わず泣き声になる。
もう何か泣き出したい。
痛いのか、苦しいのかよく分かんないけど、とにかくこの時間が、早く終わってくれたらと思う。
「ひ、ぁっ…」
目を閉じたまま、ずっと下半身にだけ意識を飛ばしてたら、いきなり腹筋を撫で上げられて、乳首をつままれた。
自分でも、体がビクッてなったのが分かる。
何、俺、こんなトコいじられて感じてんのかな。うぅん…感じてんのかどうかなんて、よく分かんない。何かムズムズする…。
「いじられんの、好きだよね、ここ」
「んぅー…」
「乳首。さっきより俺の指、飲み込むようになったよ?」
「は…ぅ、ん…」
「ね、もう1本、入れていい?」
「入んな…」
「入るよ。この前も、入れたでしょ?」
この前も?
あぁ…この前も、無理だって言ってんのに、何本も指入れてきた……コイツ…。
「はぁっ…!!」
「ホラ、3本入った…」
「ん、ぁ…あぁ…、な…もぉ…」
俺の中を、拓海の指がグチャグチャに動いてる。
も、ヤなのに、乳首はずっといじられてるし。
全身の感覚が、もうおかしい。
「悠ちゃん…………いい?」
「……ぇ…?」
「入れて、いい…?」
真剣みを帯びた拓海の声に、うっすらと目を開ければ、思いのほか近くに拓海の顔のアップ。
何て答えたらいいのか分からなくて、目を逸らした。
「沈黙は、肯定とみなします」
「…………」
「……いいの?」
何回も聞くなって、バカ!
最初にいいっつったじゃんか!
「…んっ、」
ズルリ。
まさにそんな感じで、拓海の指が中から出てった。
やっと異物感から解放されて、ホッと息をついたのも束の間。
「あぁーーーっっ!!」
今度は、さっきとは比べもんになんないくらいの質量が、俺の中に再び入ってこようとして。
「あ、や、無理ぃっ…」
「クッ…力抜いて…」
「ヤ、ヤ…無理、む…」
無理、無理、無理、無理!! もう無理!!
だって、こんなのっ…!
「悠ちゃ…悠、ふぅーって、息して…?」
「ふ、うぅ…」
苦しそうな拓海の声に、何とか俺も従おうとするんだけど、息なんてそんなの、全然出来ない。
今までどうやって呼吸してたのか、全然分かんない。
「うわっ…あっ、あんっ…」
拓海の手が、あまりの痛みに萎えかけていた俺の前へと伸びて、何の前触れもなくそれを扱き始めたから。
痛みと苦しさに集中したほうがいいのか、その中でかすかに芽生え始めた快感に意識を持っていったほうがいいのか分からなくて、頭が混乱してくる。
「ぁ…あ、ぅん…」
「悠、悠…」
「ん…ぁ…」
「目、開けて? 俺のこと、見て…?」
「あ…?」
拓海…。
「動くよ?」
「…ん、あぁっ…」
両足を抱えられて、腰をガクガク揺さぶられる。
うぅー……痛いけど、痛くないけど、早い動きに、意識が付いていかない。
「悠……好き、好きだよ…」
何度も囁かれて。
あぁ…そうだ。
女相手じゃ勃たないのかなー…て思った相手も。
子供をあやすように宥めてきたのも。
無理だっつってんのに、やめようとしなかったのも。
…………って、言ってきたのも…。
「たく、み…」
「…ん? 何…?」
酔ってたけど、酔ってたせいじゃなくて。
「はぁ…ぁ、ん……好、き…」
結局、だから。
そういうことなんだよ。
俺はコイツのこと、好きになってて。
「……俺もだよ…、俺も悠のこと、好き…」
あのとき、何度もそう言ってくれたから。
好きだって、言ってたの。
ゴメンね、忘れちゃってて…。
「ん、や…イク、イキそ…」
「……ん」
『あのときのこと、思い出させてあげようかなー、なんて』
『思い出させて…………どうすんの?』
『だってさ、忘れちゃってるわけでしょ。あのとき俺が…………』
―――――好き、て言ったこと…。
「悠、好き…。もう忘れないでよね…」
青臭いキスで唇を奪われた後、閉じた瞼の裏が、白く染まった。
*END*
「見知らぬあなたとの10のお題」
果たして人は、こんなに簡単にホモになれるものなのか。
うぅん…ホントは悠ちゃん、もっとかわいくなるはずだったのに。結局体で思い出してしまいました…。
ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
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ところでブログ拍手、何かお礼が書けるようになってましたね。
前からなってました? 私が気付かなかっただけ?
今まで返事を書こうにも、どうしたらいいのか分からなくて、何のお礼も出来ずにいましたこと、この場を借りてお詫びします。
でも全部大切に読ませていただきました。
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カテゴリー:拓海×悠也
愛してるなんて死んでも言ってやるもんか!
2008.01.24 Thu
「ねぇ悠ちゃん、好きだって言って?」
「……拓海、寝タバコ危ないから、やめて」
「好きだって言え」
「何でそんなに偉そうなんだよ」
情事の後の気怠い体。悠也は独り占めした柔らかな枕を抱き締めながら、隣でタバコをふかしている拓海を一瞥した。
「ねぇー悠ちゃーん」
「……全然かわいくないけど」
「言ってよー、好きって」
「何なの、急に」
「だってあんま言ってくれたことないじゃん、恥ずかしがってさぁ。俺はいつでも言ってっけど」
タバコを灰皿に押し付け、拓海は最後の紫煙を吐き出した。
「お前はいつでもどこでも言いすぎ。外とか、余計なとこで言わなくてもいいから」
「余計なって……オープンなだけでしょ、俺は」
「少しは羞恥心を持ちなさい」
「だっていつでも言いたいんだもん。だから悠ちゃんも言って? もっとこう……包み隠さずさぁ」
「…………ふぁ~……、もう眠くなっちゃった」
「おいっ! せめて好きって言ってから寝ろ!」
トロトロと微睡み始めている悠也を、拓海は必死に起こそうとするが、それもどうやらむだな努力に終わりそうな気配。悠也の瞬きは次第に速度を落としていく。
「悠也ぁ~」
「んー……」
「あ~あ、寝ちゃった…」
「……ん…、好、き……」
「―――へっ!?」
慌てて悠也を見ても、彼はかわいらしく寝息を立てているだけで。
「…………寝、ごと…?」
これが無意識なんだとしたら。
「……………………すっごい小悪魔なんですけど…………」
*END*
拓海さん、大学では学生会の役員とかやってて、結構真面目な人なんですよ。なのに悠ちゃんの前では、こんな…。
「……拓海、寝タバコ危ないから、やめて」
「好きだって言え」
「何でそんなに偉そうなんだよ」
情事の後の気怠い体。悠也は独り占めした柔らかな枕を抱き締めながら、隣でタバコをふかしている拓海を一瞥した。
「ねぇー悠ちゃーん」
「……全然かわいくないけど」
「言ってよー、好きって」
「何なの、急に」
「だってあんま言ってくれたことないじゃん、恥ずかしがってさぁ。俺はいつでも言ってっけど」
タバコを灰皿に押し付け、拓海は最後の紫煙を吐き出した。
「お前はいつでもどこでも言いすぎ。外とか、余計なとこで言わなくてもいいから」
「余計なって……オープンなだけでしょ、俺は」
「少しは羞恥心を持ちなさい」
「だっていつでも言いたいんだもん。だから悠ちゃんも言って? もっとこう……包み隠さずさぁ」
「…………ふぁ~……、もう眠くなっちゃった」
「おいっ! せめて好きって言ってから寝ろ!」
トロトロと微睡み始めている悠也を、拓海は必死に起こそうとするが、それもどうやらむだな努力に終わりそうな気配。悠也の瞬きは次第に速度を落としていく。
「悠也ぁ~」
「んー……」
「あ~あ、寝ちゃった…」
「……ん…、好、き……」
「―――へっ!?」
慌てて悠也を見ても、彼はかわいらしく寝息を立てているだけで。
「…………寝、ごと…?」
これが無意識なんだとしたら。
「……………………すっごい小悪魔なんですけど…………」
*END*
拓海さん、大学では学生会の役員とかやってて、結構真面目な人なんですよ。なのに悠ちゃんの前では、こんな…。
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君は愛しいヘムロック (前編)
2008.02.12 Tue
「やっぱ、手作りっしょ?」
唐突に拓海にそう言われたとき、悠也は八尾から借りたDVDに夢中になっていて、言葉を聞きそびれてしまった。
「は? 何か言った?」
視線は画面に向けたまま、悠也は問い返す。
拓海はそれにもへこたれず、もう1度、「手作りがいいよね?」と言った。
「手作りー?」
気持ちは完全にDVDだ。
声を掛けられて、気が散ってしょうがない。
「そう、手作りだよね、やっぱv」
グイ、と、悠也の視界に拓海が割り込んでくる。
「…………拓海、邪魔……」
「手作り、手作り!」
「……何が?」
この会話に参加しないことには、いつまで経っても埒が明かないと判断した悠也は、仕方なくDVDを一時停止させ、拓海のほうを向き直った。
「僕に分かるように、ちゃんと説明しなさい、拓海くん」
「だーかーらー、手作りだってば!」
「何が」
「チョコ」
「チョコ? …………それは、お猪口のほうの"チョコ"、ではなくて」
「ではなくて」
となると、悠也に思い付く"チョコ"といえば、チョコレートのほうのチョコしかない。
「…………で、チョコがどうしたって?」
「だから、手作り!!」
先ほどから懸命に、"手作り"と"チョコ"というキーワードを訴えてくる拓海だが、悠也はまだピンと来ていない様子で、小首を傾げている。
「だからぁ、手作りチョコ!」
「……手作りチョコ~?」
思い切り不審そうに、悠也は眉を顰めた。
「そう、手作りチョコ。ちょうだい?」
「……えーっと、拓海くん。君の言っていることを纏めると、俺が手作りのチョコを作って、君にプレゼントしろ、と」
「そうです」
「イヤ」
満面の笑みで頷く拓海に、悠也の冷たい一言。
「えぇ~~~!!?? 何でぇ!? 何でぇ!?」
案の定、拓海は大きな声で喚き出した。
「うるせぇよ! 声デカイっつーの。大体何で俺がお前に、わざわざチョコ作ってプレゼントしなきゃなんねぇんだよ」
「だってバレンタインじゃん!」
「知らねぇよ! そういうのは女にねだれって! いくらでもくれる女いるだろ?」
「いるけどさぁ!」
悠也の嫌味を込めたセリフを、聞き流すでもなくあっさりと肯定して、拓海は更に捲くし立てる。
「違くて! そういうんじゃねぇの! 俺は悠ちゃんから欲しいの!」
「何で! 俺は男だ!」
「知ってるよ! 知ってるけどー。ちょうだい、ちょうだい!」
「面倒臭ぇ…」
「そんな! オーマイガ!! 悠ちゃんの愛の籠もったチョコ!」
大げさなほど頭を抱えて床に突っ伏す拓海に、悠也は面倒臭くなって溜め息をついた。
それより早くDVDの続きが見たい。
「大体さぁ……こんな時期に男がチョコ買いに行くなんて、それだけで恥ずかしいんですけど…」
バレンタイン向けのチョコを売っている店は、どこだって女の子たちで溢れ返っている。そこで男がチョコを持ってレジに並ぶなんて……考えただけでも末恐ろしい。
しかも拓海は手作りチョコを望んでいるわけで。
「―――無理!! 無理無理無理! ぜーったい無理!!」
「なぁんで!!」
「じゃあ、拓海がちょうだいよ! 手作りチョコ!」
別にどれほどチョコが食べたいわけでもないし、バレンタインのチョコにこだわるわけではないけれど、男の自分が男にチョコを上げるのだから、その逆があったって、別におかしくはない。
「…………俺が、悠ちゃんに上げるの? チョコを」
「手作りね」
「えっ!?」
「そりゃそうでしょ? だってお前が先に言い出したんじゃん。手作りがいいって」
あんぐり口を開けたまま固まっている拓海を無視して、悠也はDVDを再開させる。
隣で拓海が、「う゛ー」とか「あ゛ー」とか、変な声を出しているが、気にしないことにする。
「じゃあ一緒に作る!?」
拓海なりの、最大限の譲歩、妥協案だったらしい。
拓海はまた、無理やり画面と悠也の間に割り込んできて、女の子が見たら失神ものの眩しい笑顔で、悠也にそう提案してきた。
「何で俺がお前と一緒にチョコ作んなきゃなんねぇんだよ! つーか、テレビ見えな、ちょっ……拓海!」
「だって欲しいんだもーん」
ユサユサ、悠也の体を揺すって、甘えてくる。
「ウザい…」
悠也は拓海を無視して、無理やりDVDの続きを観賞した。
バレンタインということで。1組目はこのカップルです。後編に続きます。
唐突に拓海にそう言われたとき、悠也は八尾から借りたDVDに夢中になっていて、言葉を聞きそびれてしまった。
「は? 何か言った?」
視線は画面に向けたまま、悠也は問い返す。
拓海はそれにもへこたれず、もう1度、「手作りがいいよね?」と言った。
「手作りー?」
気持ちは完全にDVDだ。
声を掛けられて、気が散ってしょうがない。
「そう、手作りだよね、やっぱv」
グイ、と、悠也の視界に拓海が割り込んでくる。
「…………拓海、邪魔……」
「手作り、手作り!」
「……何が?」
この会話に参加しないことには、いつまで経っても埒が明かないと判断した悠也は、仕方なくDVDを一時停止させ、拓海のほうを向き直った。
「僕に分かるように、ちゃんと説明しなさい、拓海くん」
「だーかーらー、手作りだってば!」
「何が」
「チョコ」
「チョコ? …………それは、お猪口のほうの"チョコ"、ではなくて」
「ではなくて」
となると、悠也に思い付く"チョコ"といえば、チョコレートのほうのチョコしかない。
「…………で、チョコがどうしたって?」
「だから、手作り!!」
先ほどから懸命に、"手作り"と"チョコ"というキーワードを訴えてくる拓海だが、悠也はまだピンと来ていない様子で、小首を傾げている。
「だからぁ、手作りチョコ!」
「……手作りチョコ~?」
思い切り不審そうに、悠也は眉を顰めた。
「そう、手作りチョコ。ちょうだい?」
「……えーっと、拓海くん。君の言っていることを纏めると、俺が手作りのチョコを作って、君にプレゼントしろ、と」
「そうです」
「イヤ」
満面の笑みで頷く拓海に、悠也の冷たい一言。
「えぇ~~~!!?? 何でぇ!? 何でぇ!?」
案の定、拓海は大きな声で喚き出した。
「うるせぇよ! 声デカイっつーの。大体何で俺がお前に、わざわざチョコ作ってプレゼントしなきゃなんねぇんだよ」
「だってバレンタインじゃん!」
「知らねぇよ! そういうのは女にねだれって! いくらでもくれる女いるだろ?」
「いるけどさぁ!」
悠也の嫌味を込めたセリフを、聞き流すでもなくあっさりと肯定して、拓海は更に捲くし立てる。
「違くて! そういうんじゃねぇの! 俺は悠ちゃんから欲しいの!」
「何で! 俺は男だ!」
「知ってるよ! 知ってるけどー。ちょうだい、ちょうだい!」
「面倒臭ぇ…」
「そんな! オーマイガ!! 悠ちゃんの愛の籠もったチョコ!」
大げさなほど頭を抱えて床に突っ伏す拓海に、悠也は面倒臭くなって溜め息をついた。
それより早くDVDの続きが見たい。
「大体さぁ……こんな時期に男がチョコ買いに行くなんて、それだけで恥ずかしいんですけど…」
バレンタイン向けのチョコを売っている店は、どこだって女の子たちで溢れ返っている。そこで男がチョコを持ってレジに並ぶなんて……考えただけでも末恐ろしい。
しかも拓海は手作りチョコを望んでいるわけで。
「―――無理!! 無理無理無理! ぜーったい無理!!」
「なぁんで!!」
「じゃあ、拓海がちょうだいよ! 手作りチョコ!」
別にどれほどチョコが食べたいわけでもないし、バレンタインのチョコにこだわるわけではないけれど、男の自分が男にチョコを上げるのだから、その逆があったって、別におかしくはない。
「…………俺が、悠ちゃんに上げるの? チョコを」
「手作りね」
「えっ!?」
「そりゃそうでしょ? だってお前が先に言い出したんじゃん。手作りがいいって」
あんぐり口を開けたまま固まっている拓海を無視して、悠也はDVDを再開させる。
隣で拓海が、「う゛ー」とか「あ゛ー」とか、変な声を出しているが、気にしないことにする。
「じゃあ一緒に作る!?」
拓海なりの、最大限の譲歩、妥協案だったらしい。
拓海はまた、無理やり画面と悠也の間に割り込んできて、女の子が見たら失神ものの眩しい笑顔で、悠也にそう提案してきた。
「何で俺がお前と一緒にチョコ作んなきゃなんねぇんだよ! つーか、テレビ見えな、ちょっ……拓海!」
「だって欲しいんだもーん」
ユサユサ、悠也の体を揺すって、甘えてくる。
「ウザい…」
悠也は拓海を無視して、無理やりDVDの続きを観賞した。
バレンタインということで。1組目はこのカップルです。後編に続きます。
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君は愛しいヘムロック (後編)
2008.02.13 Wed
「ゆうちゃーん…」
もさっ、と、雑誌を広げていた悠也の背中に、拓海が体重を掛けてきた。その重みに悠也は眉を顰めるが、何も言わない。顔も上げない。
2月14日。
街中が愛とチョコのにおいに包まれる日。
拓海は何も触れないが、前々から喚いていただけあって、その態度は、まさしく悠也にチョコをねだるソレだった。
けれどそれを分かっているはずの悠也は、ことごとく拓海を無視しているのだ。
「悠也くーん」
………………。
反応の薄い悠也にしょんぼりして、拓海は悠也の背中から剥がれた。
「ゆう……だぁーーー!!??」
バコンッ!!
諦め切れなくて、もう1度悠也の名前を呼びながら振り返った拓海の顔面に、何か軽くて硬いものがクリーンヒット。もちろん悠也が拓海に投げ付けたのだ。
「イデデ……ひでぇよ、悠也…」
拓海は鼻を押さえながら、床に落ちたそれに手を伸ばした。
「え、」
拓海の顔面を直撃したそれは、小さいながら、かわいいラッピングの施された箱。裏返しになって床に転がっているが、ご丁寧にリボンまで掛けられている。
「悠也、これ…」
「お前が欲しがったんだからな!」
乱暴な言葉と口調とは裏腹に、顔を背けた悠也は、耳まで赤くしている。
よく見れば、拾い上げたそれは、ラッピングされているとはいえ、店で購入したときのようなきれいな包み方には程遠い。
ということは、だ。
「もしかして、悠ちゃんの手作り…?」
「うっせ! いらないなら返せ!」
「いるいるいるいる! すっげぇ、嬉しい!!」
一気にテンションをヒートアップさせて、拓海は悠也の背中に抱き付く。
顔を赤くしたままだが、悠也はもちろんウザったそうな顔をするのを忘れない。
「悠ちゃん、有り難う、超嬉しい~~」
ギュウウゥ~~~、背中から羽交い絞め。首筋に顔をうずめて、額をスリスリして。
その様は、まるで大型犬がじゃれ付いている光景によく似ている。
「あ! ちょっと待っててね!」
そう言って拓海は悠也から離れると、今度は自分のカバンの中をゴソゴソと漁り出す。やっと拓海から解放された悠也は、ホッと息をつく。
「はい、コレ!」
ジャ~ンという間抜けな効果音付きで拓海かカバンから取り出したのは、同じようにかわいいラッピングの、小さな包み。
「へ?」
「悠ちゃんに」
ポカンとしている悠也の手の上に、その包みは置かれて。包みに貼られたシールには「HAPPY VALENTINE!」って書いてある。
「お、れに…?」
「もちろん」
「おま……自分で買いに行ったの!?」
この手のチョコが売っている店は、どう考えたって、女の子で溢れ返っているはず。しかもバレンタイン用のシールが貼ってあるということは、会計の際にその旨を店員から尋ねられたということだ。
この、モデル張りに整った顔立ちの男前が、女の子だらけの店で、バレンタイン用のチョコレートを買う…………カッコ悪すぎる!!
でもそんなカッコ悪いことを、自分のためにしてくれるなんて…。
「拓海のバカ!」
「え!?」
いきなり怒鳴られて、拓海は驚いて、声を引っ繰り返した。
「超嬉しいじゃん、もーバカァ…」
悠也はギュウと拓海に抱き付いた。
「ありがと……す、好き…」
「……うん」
拓海の胸に顔を埋めたまま、悠也は消え入りそうな小さな声で、そう言った。
*END*
ツンデレの神様、ここに降臨。
うちの受け子ちゃん3人の中で、悠ちゃんだけが唯一、ツンとデレが半々な気がする。
もさっ、と、雑誌を広げていた悠也の背中に、拓海が体重を掛けてきた。その重みに悠也は眉を顰めるが、何も言わない。顔も上げない。
2月14日。
街中が愛とチョコのにおいに包まれる日。
拓海は何も触れないが、前々から喚いていただけあって、その態度は、まさしく悠也にチョコをねだるソレだった。
けれどそれを分かっているはずの悠也は、ことごとく拓海を無視しているのだ。
「悠也くーん」
………………。
反応の薄い悠也にしょんぼりして、拓海は悠也の背中から剥がれた。
「ゆう……だぁーーー!!??」
バコンッ!!
諦め切れなくて、もう1度悠也の名前を呼びながら振り返った拓海の顔面に、何か軽くて硬いものがクリーンヒット。もちろん悠也が拓海に投げ付けたのだ。
「イデデ……ひでぇよ、悠也…」
拓海は鼻を押さえながら、床に落ちたそれに手を伸ばした。
「え、」
拓海の顔面を直撃したそれは、小さいながら、かわいいラッピングの施された箱。裏返しになって床に転がっているが、ご丁寧にリボンまで掛けられている。
「悠也、これ…」
「お前が欲しがったんだからな!」
乱暴な言葉と口調とは裏腹に、顔を背けた悠也は、耳まで赤くしている。
よく見れば、拾い上げたそれは、ラッピングされているとはいえ、店で購入したときのようなきれいな包み方には程遠い。
ということは、だ。
「もしかして、悠ちゃんの手作り…?」
「うっせ! いらないなら返せ!」
「いるいるいるいる! すっげぇ、嬉しい!!」
一気にテンションをヒートアップさせて、拓海は悠也の背中に抱き付く。
顔を赤くしたままだが、悠也はもちろんウザったそうな顔をするのを忘れない。
「悠ちゃん、有り難う、超嬉しい~~」
ギュウウゥ~~~、背中から羽交い絞め。首筋に顔をうずめて、額をスリスリして。
その様は、まるで大型犬がじゃれ付いている光景によく似ている。
「あ! ちょっと待っててね!」
そう言って拓海は悠也から離れると、今度は自分のカバンの中をゴソゴソと漁り出す。やっと拓海から解放された悠也は、ホッと息をつく。
「はい、コレ!」
ジャ~ンという間抜けな効果音付きで拓海かカバンから取り出したのは、同じようにかわいいラッピングの、小さな包み。
「へ?」
「悠ちゃんに」
ポカンとしている悠也の手の上に、その包みは置かれて。包みに貼られたシールには「HAPPY VALENTINE!」って書いてある。
「お、れに…?」
「もちろん」
「おま……自分で買いに行ったの!?」
この手のチョコが売っている店は、どう考えたって、女の子で溢れ返っているはず。しかもバレンタイン用のシールが貼ってあるということは、会計の際にその旨を店員から尋ねられたということだ。
この、モデル張りに整った顔立ちの男前が、女の子だらけの店で、バレンタイン用のチョコレートを買う…………カッコ悪すぎる!!
でもそんなカッコ悪いことを、自分のためにしてくれるなんて…。
「拓海のバカ!」
「え!?」
いきなり怒鳴られて、拓海は驚いて、声を引っ繰り返した。
「超嬉しいじゃん、もーバカァ…」
悠也はギュウと拓海に抱き付いた。
「ありがと……す、好き…」
「……うん」
拓海の胸に顔を埋めたまま、悠也は消え入りそうな小さな声で、そう言った。
*END*
ツンデレの神様、ここに降臨。
うちの受け子ちゃん3人の中で、悠ちゃんだけが唯一、ツンとデレが半々な気がする。
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