読み切り短編
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- 彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (2)
- 2009.03.10(火)
- 彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (3)
- 2009.03.11(水)
- 彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (4) R18
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夕暮れラブソング ~甘い運命 番外編
2009.03.01 Sun
コンビニに寄ってから帰ろうと提案したのは晴海のほうで、理由を聞けば、家に何も食べるものがないと言う。
なら、外で食べればいいのに、とも思ったが、別にコンビニに寄ることを拒否する理由もなかったので、晴海と一緒に、家から最寄りのコンビニの前で車を降ろしてもらった。
「……なぁ、」
夕暮れ、コンビニ帰り。人通りの少ない路地裏で、章吾は隣を歩く晴海に声を掛けた。
「何でお前が2つも持ってんの?」
「は?」
唐突な章吾の問いに、晴海は首を傾げた。
「それ! 袋!」
「袋? これのこと?」
晴海が、一纏めにして持っていたコンビニの袋2つを掲げて章吾に見せてやると、彼は黙って頷いた。
袋の1つにはペットボトルのドリンクとデザートが入っていて、もう1つには弁当が入っている。
しかし、なぜ2つ持っているのかと問われても、別に1人で持てない量でも重さでもなく、晴海にしてみたら、どうしてそんなことを聞かれるのかといった思いだ。
「俺も1つ持つ」
「は? 何で? 別に章吾の分まで取ったりしないよ?」
「分かってるよ! そういう意味で言ってんじゃねぇ!」
「……じゃあ、何で?」
「2つあるんだから、1つ貸せよ!」
おもしろくなさそうな顔で片手を差し出す章吾に、晴海は眉を顰める。
どう見ても章吾は不機嫌だ。だが、なぜなのか分からない。そして、どうしてそこまで袋を持ちたがるのかも。
「どうしたの?」
「いいから貸せってば!」
「別にいいけどさ、…………何?」
とりあえず言われるがまま、弁当のほうの袋を章吾に渡した。章吾はそれを奪うように受け取ると、晴海の問いには答えず、さっさと歩いて行く。
「章吾、」
「るせぇ」
「まだ何も言ってないじゃん」
何を言ってもぶっきらぼうに突っ返してくる章吾に、晴海は肩を竦めた。
1つ貸せと言われたコンビニの袋も、そのとおりにしてやったわけだし、章吾の機嫌を損ねるようなまねをした覚えはないのに。
「……別にいいじゃん、お前が俺の分まで持つ必要とかなくね?」
「は?」
少しだけ前を歩く章吾の耳がほんのり赤いのは、この夕陽のせいではないだろう。
「ね、章吾、ちょっと待ってよ!」
「ぁんだよ! うるせぇな!」
満面の笑みで隣に並ぶ晴海の脇腹に、章吾は拳をくれてやる。
「ホント章吾、かわいーんだから」
「―――――ッ、どこが!?」
このいかつい坊主の、どこをどう見て晴海はそんなことを言うのだろうか。それでも少しの素直さがあればまだしも、恋人の前でも、少しも素直になれないのに。
「早く帰ろう、章吾」
「え? ギャッ!」
袋を持っていないほうの手を掴まれて、章吾はまったく以てかわいげのない悲鳴のような声を上げた。
「何す、はるっ…」
「早くしないと日が暮れちゃう」
「知るか! 放せ、バカ!」
「いいから、いいから」
「晴海ー!」
そういう素直じゃないところも好きなんだってこと、まだ、気付いてないのかな?
まぁ、当分教える気もないけどね。
なら、外で食べればいいのに、とも思ったが、別にコンビニに寄ることを拒否する理由もなかったので、晴海と一緒に、家から最寄りのコンビニの前で車を降ろしてもらった。
「……なぁ、」
夕暮れ、コンビニ帰り。人通りの少ない路地裏で、章吾は隣を歩く晴海に声を掛けた。
「何でお前が2つも持ってんの?」
「は?」
唐突な章吾の問いに、晴海は首を傾げた。
「それ! 袋!」
「袋? これのこと?」
晴海が、一纏めにして持っていたコンビニの袋2つを掲げて章吾に見せてやると、彼は黙って頷いた。
袋の1つにはペットボトルのドリンクとデザートが入っていて、もう1つには弁当が入っている。
しかし、なぜ2つ持っているのかと問われても、別に1人で持てない量でも重さでもなく、晴海にしてみたら、どうしてそんなことを聞かれるのかといった思いだ。
「俺も1つ持つ」
「は? 何で? 別に章吾の分まで取ったりしないよ?」
「分かってるよ! そういう意味で言ってんじゃねぇ!」
「……じゃあ、何で?」
「2つあるんだから、1つ貸せよ!」
おもしろくなさそうな顔で片手を差し出す章吾に、晴海は眉を顰める。
どう見ても章吾は不機嫌だ。だが、なぜなのか分からない。そして、どうしてそこまで袋を持ちたがるのかも。
「どうしたの?」
「いいから貸せってば!」
「別にいいけどさ、…………何?」
とりあえず言われるがまま、弁当のほうの袋を章吾に渡した。章吾はそれを奪うように受け取ると、晴海の問いには答えず、さっさと歩いて行く。
「章吾、」
「るせぇ」
「まだ何も言ってないじゃん」
何を言ってもぶっきらぼうに突っ返してくる章吾に、晴海は肩を竦めた。
1つ貸せと言われたコンビニの袋も、そのとおりにしてやったわけだし、章吾の機嫌を損ねるようなまねをした覚えはないのに。
「……別にいいじゃん、お前が俺の分まで持つ必要とかなくね?」
「は?」
少しだけ前を歩く章吾の耳がほんのり赤いのは、この夕陽のせいではないだろう。
「ね、章吾、ちょっと待ってよ!」
「ぁんだよ! うるせぇな!」
満面の笑みで隣に並ぶ晴海の脇腹に、章吾は拳をくれてやる。
「ホント章吾、かわいーんだから」
「―――――ッ、どこが!?」
このいかつい坊主の、どこをどう見て晴海はそんなことを言うのだろうか。それでも少しの素直さがあればまだしも、恋人の前でも、少しも素直になれないのに。
「早く帰ろう、章吾」
「え? ギャッ!」
袋を持っていないほうの手を掴まれて、章吾はまったく以てかわいげのない悲鳴のような声を上げた。
「何す、はるっ…」
「早くしないと日が暮れちゃう」
「知るか! 放せ、バカ!」
「いいから、いいから」
「晴海ー!」
そういう素直じゃないところも好きなんだってこと、まだ、気付いてないのかな?
まぁ、当分教える気もないけどね。
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彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (1)
2009.03.08 Sun
2時間。
2時間我慢すればいい。
男の下になって、喘いで。
知らない男だけど、目を瞑ってれば平気。
平気だよ。
彼 の 胸 に 顔 を 寄 せ る と 、
上 品 な 煙 草 の 匂 い が し た の で す
めちゃくちゃに抱かれた後、明希(アキ)は汚れたベッドの上で体を丸くしていた。男は背広の内ポケットから1万円札を数枚取り出して、ベッドのほうへと放った。
やるだけやってホテルを出ていった男に、心の中で中指を立てて、明希は散らばった1万円札に手を伸ばす。
1,2,3,4,……7万円。まぁ、悪くはないか。
床に投げ出されたジーンズのポケットにそれを捻じ込んで、重い体を引き摺りながらバスルームに向かう。
クソッ、この安ホテル。シャワーは水しか出ない。
明希は頭からシャワーを被って、汚れ切った体を洗い流す。
疲労感。
一眠りしてから帰ろうか、けれどこんなところ、1秒だって長くいたくない。
フラフラした足取りで、明希はホテルを後にした。
「アキ!」
ネオンのうるさい街を歩いていると、ギュッと後ろから抱き付かれて、驚いて振り返ると壱哉(イチヤ)だった。
「あれ? 何かお疲れ」
「さっき、バカ1人、相手にしてきたから」
「お勤め、ごくろうさまです」
真面目な顔して壱哉が敬礼するから、おかしくなって2人で吹き出した。
壱哉は、明希が何で稼いでいるか知っている。
明希も、壱哉がどうやって稼いでいるか知っている。
この街で、2人が生きていくには、それしかないから。
でも。
2人は、いつだって1つだ。
この世界には、2人だけでいい。自分の半身。
「ね、壱哉、ご飯食べた? 俺、お腹空いたんだけど、一緒に食べない? 奢るよ」
ジーンズから皺くちゃの7万円を取り出し、壱哉に見せ付ける。
「わっ、アキ、リッチ! ゴチになる。俺なんか今日、たった3万だよ」
1度抱かれただけで7万円だ。運がいい。
明希も壱哉も、顔は女っぽいが、体は男だ。男相手に、客は女を抱くようには優しくしない。無茶な要求をしてくる割に、相場の価格は女よりも安い。
割に合わない商売だ。
「今日はもう1人くらい、稼げるかなぁ」
「アキ、口のとこ、トマトソース付いてる」
「ん。壱哉はどうする?」
「うーん、もうちょっと、がんばろうかな」
2時間我慢すればいい。
男の下になって、喘いで。
知らない男だけど、目を瞑ってれば平気。
平気だよ。
彼 の 胸 に 顔 を 寄 せ る と 、
上 品 な 煙 草 の 匂 い が し た の で す
めちゃくちゃに抱かれた後、明希(アキ)は汚れたベッドの上で体を丸くしていた。男は背広の内ポケットから1万円札を数枚取り出して、ベッドのほうへと放った。
やるだけやってホテルを出ていった男に、心の中で中指を立てて、明希は散らばった1万円札に手を伸ばす。
1,2,3,4,……7万円。まぁ、悪くはないか。
床に投げ出されたジーンズのポケットにそれを捻じ込んで、重い体を引き摺りながらバスルームに向かう。
クソッ、この安ホテル。シャワーは水しか出ない。
明希は頭からシャワーを被って、汚れ切った体を洗い流す。
疲労感。
一眠りしてから帰ろうか、けれどこんなところ、1秒だって長くいたくない。
フラフラした足取りで、明希はホテルを後にした。
「アキ!」
ネオンのうるさい街を歩いていると、ギュッと後ろから抱き付かれて、驚いて振り返ると壱哉(イチヤ)だった。
「あれ? 何かお疲れ」
「さっき、バカ1人、相手にしてきたから」
「お勤め、ごくろうさまです」
真面目な顔して壱哉が敬礼するから、おかしくなって2人で吹き出した。
壱哉は、明希が何で稼いでいるか知っている。
明希も、壱哉がどうやって稼いでいるか知っている。
この街で、2人が生きていくには、それしかないから。
でも。
2人は、いつだって1つだ。
この世界には、2人だけでいい。自分の半身。
「ね、壱哉、ご飯食べた? 俺、お腹空いたんだけど、一緒に食べない? 奢るよ」
ジーンズから皺くちゃの7万円を取り出し、壱哉に見せ付ける。
「わっ、アキ、リッチ! ゴチになる。俺なんか今日、たった3万だよ」
1度抱かれただけで7万円だ。運がいい。
明希も壱哉も、顔は女っぽいが、体は男だ。男相手に、客は女を抱くようには優しくしない。無茶な要求をしてくる割に、相場の価格は女よりも安い。
割に合わない商売だ。
「今日はもう1人くらい、稼げるかなぁ」
「アキ、口のとこ、トマトソース付いてる」
「ん。壱哉はどうする?」
「うーん、もうちょっと、がんばろうかな」
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彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (2)
2009.03.09 Mon
店を出ると、さっそく声を掛けられる。今日の稼ぎから、明希はその客を壱哉に譲ってやった。2人が暗闇に消えるのを見送って、明希は新たな客を物色する。
(あんま金持ってそうなヤツ、いないなぁー)
苦しいセックスはキライだけれど、金のためだと思えば、何でも出来る。
そう、すべては金のためだ。
じゃなきゃ、男になんて抱かれるもんか。
「あ、」
人通りが少なくなって、別の場所に移動とした明希の目に、1人の青年が止まる。まだ若い男だが、上等なスーツに身を包んでいて、ただのサラリーマンとは一線を画している感じがする。
「ねぇ、お兄さん」
明希がクイとスーツの裾を引くと、青年は眉を顰めて足を止めた。
「ヒマなら、俺のこと買わない?」
「―――……悪いけど、そういう趣味はないんだけどな」
「オンナより気持ちいいよ」
とっておきの笑みと、上目遣い。
これで落ちない男はいない。
青年は目を細めた。
「ね、どう?」
「……いくら?」
落ちた。
明希は口の端を上げた。
*****
どうせやることは1つだ。場所なんかどこでもいい。
そう言ったのに、明希が連れて来られたのは、明らかに上に"超"が付く高級ホテル。思わず足が竦んだ。
「怖くなった?」
エントランスの前で立ち竦む明希に、青年が声を掛けた。少しバカにしたような声色に、明希はムッとして足を進める。
ドアボーイの不躾な視線が、明希に絡む。身なりからして、こんな高級ホテルに入れるような人間じゃないことは、明希にも分かった。場違いにもほどがある。
「行こうか?」
けれど青年は、気にしたふうもなく、エレヴェータへと向かう。
「ね、ねぇ……あの、こんなとこ、」
「俺が滞在しているホテルだ。気にすることはない」
「……ソーデスカ」
部屋は最上階。スイートルーム。
ようやく明希は、とんでもない人に声を掛けてしまったのだと気が付いた。
(あんま金持ってそうなヤツ、いないなぁー)
苦しいセックスはキライだけれど、金のためだと思えば、何でも出来る。
そう、すべては金のためだ。
じゃなきゃ、男になんて抱かれるもんか。
「あ、」
人通りが少なくなって、別の場所に移動とした明希の目に、1人の青年が止まる。まだ若い男だが、上等なスーツに身を包んでいて、ただのサラリーマンとは一線を画している感じがする。
「ねぇ、お兄さん」
明希がクイとスーツの裾を引くと、青年は眉を顰めて足を止めた。
「ヒマなら、俺のこと買わない?」
「―――……悪いけど、そういう趣味はないんだけどな」
「オンナより気持ちいいよ」
とっておきの笑みと、上目遣い。
これで落ちない男はいない。
青年は目を細めた。
「ね、どう?」
「……いくら?」
落ちた。
明希は口の端を上げた。
*****
どうせやることは1つだ。場所なんかどこでもいい。
そう言ったのに、明希が連れて来られたのは、明らかに上に"超"が付く高級ホテル。思わず足が竦んだ。
「怖くなった?」
エントランスの前で立ち竦む明希に、青年が声を掛けた。少しバカにしたような声色に、明希はムッとして足を進める。
ドアボーイの不躾な視線が、明希に絡む。身なりからして、こんな高級ホテルに入れるような人間じゃないことは、明希にも分かった。場違いにもほどがある。
「行こうか?」
けれど青年は、気にしたふうもなく、エレヴェータへと向かう。
「ね、ねぇ……あの、こんなとこ、」
「俺が滞在しているホテルだ。気にすることはない」
「……ソーデスカ」
部屋は最上階。スイートルーム。
ようやく明希は、とんでもない人に声を掛けてしまったのだと気が付いた。
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彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (3)
2009.03.10 Tue
「食事は? ルームサービスでも頼もうか?」
「もう……食べました。それより、」
「名前は?」
青年は背広を脱いで、ネクタイを緩めた。
明希は部屋の真ん中に所在なさそうに立ち竦み、嵌め殺しの窓の向こう、煌びやかな街の明かりを見つめる。
「名前」
もう1度問われて、視線を青年に向けた。
どうせ一夜限りの相手だ。名前を教える必要なんてない。そう思って口を噤んでいると、
「俺は、篠宮剛(ゴウ)。剛って呼んでいいよ」
先に名乗られてしまった。
普通、色々なことを考えて、自ら名乗る客なんていやしない。名乗ったとしても、偽名。なのに、目の前の青年は、フルネームで自分の名前を言う。
さきほど、フロント係が彼のことを『篠宮さま』と呼んでいたから、おそらく本名なのだろう。
「……明希」
「そう。じゃあ、脱いで、ベッドに上がって」
「え、あ…、あの、シャワー…」
「しなくてもいい」
もちろん、そのつもりで彼に声を掛けたのだけれど、いきなりのことに、明希はその場に固まってしまった。
シャワーくらい、浴びさせてほしい。どんな下衆なお客だって、そのくらいのことはさせてくれる。
それに今日はすでに1人相手にしてきている。水しか出なかったシャワーのせいで、ざっとしか体を流していないのだ。
「お願いします」
「しなくてもいいと言ったんだ。早くしろ」
「…はい」
明希は観念して、ティシャツを脱ぎ捨てると、ジーンズに手を掛けた。
篠宮の視線が気になる。
こんなことには慣れているのに。もっと無茶な要求だってされたことがある。なのにどうして今は、こんなに落ち着かないんだろう。
きっとこの場所の雰囲気のせいだ。いつもはボロくて狭い、安ホテルの一室だから。ベッドだって硬くて、体中が痛くなる。
「ぁ!?」
ジーンズの前を寛げただけで先に進まない明希に、歩み寄ってきた篠宮が、その細い体をベッドに押し倒した。スプリングの利いた柔らかなベッドが、2人の体を受け止める。
「この傷は?」
スルリと首筋から脇腹のラインを辿った篠宮の指先が、明希の腰骨の辺りにある5cmほどの傷痕の上で止まった。
「…………昔、刺され……」
その昔、客と金のことで揉めたとき、相手にナイフで襲い掛かられた。幸い傷はそれほど深くもなく、一命は取り留めたのだが、明希の体には、いまだにこうして傷痕が残ってるのだ。
「ふぅん」
「ぁ…」
篠宮の唇が、その傷痕に触れた。ピクリと明希の体が跳ねる。熱い舌でそこをなぞられて、体が震えた。
「もう……食べました。それより、」
「名前は?」
青年は背広を脱いで、ネクタイを緩めた。
明希は部屋の真ん中に所在なさそうに立ち竦み、嵌め殺しの窓の向こう、煌びやかな街の明かりを見つめる。
「名前」
もう1度問われて、視線を青年に向けた。
どうせ一夜限りの相手だ。名前を教える必要なんてない。そう思って口を噤んでいると、
「俺は、篠宮剛(ゴウ)。剛って呼んでいいよ」
先に名乗られてしまった。
普通、色々なことを考えて、自ら名乗る客なんていやしない。名乗ったとしても、偽名。なのに、目の前の青年は、フルネームで自分の名前を言う。
さきほど、フロント係が彼のことを『篠宮さま』と呼んでいたから、おそらく本名なのだろう。
「……明希」
「そう。じゃあ、脱いで、ベッドに上がって」
「え、あ…、あの、シャワー…」
「しなくてもいい」
もちろん、そのつもりで彼に声を掛けたのだけれど、いきなりのことに、明希はその場に固まってしまった。
シャワーくらい、浴びさせてほしい。どんな下衆なお客だって、そのくらいのことはさせてくれる。
それに今日はすでに1人相手にしてきている。水しか出なかったシャワーのせいで、ざっとしか体を流していないのだ。
「お願いします」
「しなくてもいいと言ったんだ。早くしろ」
「…はい」
明希は観念して、ティシャツを脱ぎ捨てると、ジーンズに手を掛けた。
篠宮の視線が気になる。
こんなことには慣れているのに。もっと無茶な要求だってされたことがある。なのにどうして今は、こんなに落ち着かないんだろう。
きっとこの場所の雰囲気のせいだ。いつもはボロくて狭い、安ホテルの一室だから。ベッドだって硬くて、体中が痛くなる。
「ぁ!?」
ジーンズの前を寛げただけで先に進まない明希に、歩み寄ってきた篠宮が、その細い体をベッドに押し倒した。スプリングの利いた柔らかなベッドが、2人の体を受け止める。
「この傷は?」
スルリと首筋から脇腹のラインを辿った篠宮の指先が、明希の腰骨の辺りにある5cmほどの傷痕の上で止まった。
「…………昔、刺され……」
その昔、客と金のことで揉めたとき、相手にナイフで襲い掛かられた。幸い傷はそれほど深くもなく、一命は取り留めたのだが、明希の体には、いまだにこうして傷痕が残ってるのだ。
「ふぅん」
「ぁ…」
篠宮の唇が、その傷痕に触れた。ピクリと明希の体が跳ねる。熱い舌でそこをなぞられて、体が震えた。
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彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (4) R18
2009.03.11 Wed
*R18です。18歳未満の方、そういった表現の苦手な方はご遠慮ください。
ジーンズに手を掛けられ、下着ごと脱がされる。軽々と体を伏せさせられて、背後から圧し掛かられる。項から耳の後ろ、背中にキスをされて、前に回された手が小さな胸の突起を弄る。
金を貰う以上、奉仕するのは自分で、早く客の欲望を満たしてやらなければならないのに、あまりに丁寧な愛撫を施されて、明希は甘い吐息を洩らしながら、シーツに顔を押し付けた。
「篠宮さ……やめ、」
「剛と呼べって言っただろ?」
「あぁん、あ、ダメっ…!」
下に降りてきた手が、明希の下腹部に触れる。そこはもう、熱く濡れていて。
明希は腰を捩って逃げようとしたが、もう片方の手で押さえられて、動きを封じられる。焦らすように指の腹でなぞられると、ねだりがましく明希の腰が動いた。
篠宮はニンマリ笑うと、明希自身を強く刺激してやる。
「んんー! あぁ、やっ…!!」
耳を舌でなぶられ、胸と下半身を攻め立てられると、明希は一瞬身を硬くしてから、自身を解放した。
「はぁ、ン…」
篠宮の腕が離れ、クテン、と明希の体がベッドに沈んだ。
背後で衣擦れの音がして、わずかに首を動かすと、篠宮が来ていたシャツを脱いでいた。露になった逞しい体に、明希は息を飲んだ。
「篠宮さん…」
「剛だ」
「……ご、う…、あぁ…」
そのためのホテルではないから、ローションなんて気の利いたものは置いていなくて、かといって代用できるものをバスルームに取りに行くのも興が褪めるから、篠宮は明希が放ったモノを、その最奥に塗り込めた。
「ハッ…! くぅ…」
いきなり無遠慮に潜り込んできた指に明希が身を硬くしたのは一瞬で、すぐに明希の中は熱く篠宮の指に絡み付いてくる。
明希はいやらしく喘ぎながら、腰を揺らす。
いつもなら、相手の情を煽るため、少し大げさになくらいに喘いでみせるけれど、今日はそんな演技をしている余裕がない。
「あぁんっ!」
篠宮の指が明希の敏感な場所を掠めると、明希は大きな声を出して、そのきれいな背中をしならせた。
「はぁ、あ、ごうっ…」
熱っぽい声が篠宮を呼ぶ。
篠宮は唇を舐めると、ズルッと濡れそぼった指を抜き、篠宮は熱く硬くなった自身をその蕾に突き立てた。
「あぁっ…! や、ぁん…」
「明希」
「はぁんっ!」
名前を呼ばれて、明希の中がキツク篠宮を締め付けた。
「名前呼ばれると、感じる?」
恥ずかしくて、明希は涙を零しながら首を振る。
これは商売だ。対価を受け取るための行為。それだけのこと。感じてるなんて、そんなの演技だから。
なのに。
「あ、あぁ…!」
繋がったまま体を返され、体に響く甘い衝撃に、明希は身を仰け反らせた。
篠宮は明希の膝裏を掬うと、深く突き上げる。篠宮が腰を動かすたび、グチュグチュといやらしい音がする。
「あっ、あぁ…! もぉ…」
明希が堪え切れないと首を振るたび、真っ白なシーツの上に黒髪が散らばる。
こんな、与えられるようなセックス、知らない。
だってセックスなんて、苦しくて、汚くて、ツライだけだ。
「明希…」
「あぁんっ! はぁ…ッ、んん…」
耳元で名前を呼ばれ、そのまま耳たぶを食まれる。腰の奥から、ぞわぞわと快感が這い上がってくる。さっき見つけられた敏感な場所ばかり突かれて、もう何だか分からない。
ぐずぐずになって溶けてしまいそうだ。
「ひぁっ…イッ……あぁ、イッちゃう…!」
舌で胸の突起をなぶられ、いいところばかり突き上げられて、明希の限界はもう近かった。でも、客より先にイクわけにはいかない。明希は自分の指を噛んで、必死に堪える。
けれどそれに気付いた篠宮は、明希の指を口から外させると、その濡れた唇を自分のそれで塞いだ。この仕事で、キスは禁物だ。だけど明希は振り解けず、深く舌を絡ませる。
「ふ…ううんっ! ああぁっ!!」
いったん引き抜かれて、そして最奥まで一気に突き上げられると、明希は身を強張らせてイッてしまった。
「はぁ……え? あ、やっ、無理ぃ! はぁっ! あ、!」
イッて力の抜けた体を繋がったまま抱き起こされ、グンと、深いところまで篠宮が入り込んでくる。たわんだ背中を篠宮に支えられ、ガクガクと突き上げられる。
もう無理だと、何度も訴える。
ツラくて苦しいからではない。こんな、甘く蕩けるような快感、今までに感じたことがないから。
「あ、ぁん! ごぅ…」
「明希、かわいい…」
明希の唇を舐めると、それに応えて、明希が舌を絡ませる。
「あぁ……ごぉ…」
うっとりした明希の声。
篠宮はその背中をキツク抱き、熱い明希の中で果てた。
ジーンズに手を掛けられ、下着ごと脱がされる。軽々と体を伏せさせられて、背後から圧し掛かられる。項から耳の後ろ、背中にキスをされて、前に回された手が小さな胸の突起を弄る。
金を貰う以上、奉仕するのは自分で、早く客の欲望を満たしてやらなければならないのに、あまりに丁寧な愛撫を施されて、明希は甘い吐息を洩らしながら、シーツに顔を押し付けた。
「篠宮さ……やめ、」
「剛と呼べって言っただろ?」
「あぁん、あ、ダメっ…!」
下に降りてきた手が、明希の下腹部に触れる。そこはもう、熱く濡れていて。
明希は腰を捩って逃げようとしたが、もう片方の手で押さえられて、動きを封じられる。焦らすように指の腹でなぞられると、ねだりがましく明希の腰が動いた。
篠宮はニンマリ笑うと、明希自身を強く刺激してやる。
「んんー! あぁ、やっ…!!」
耳を舌でなぶられ、胸と下半身を攻め立てられると、明希は一瞬身を硬くしてから、自身を解放した。
「はぁ、ン…」
篠宮の腕が離れ、クテン、と明希の体がベッドに沈んだ。
背後で衣擦れの音がして、わずかに首を動かすと、篠宮が来ていたシャツを脱いでいた。露になった逞しい体に、明希は息を飲んだ。
「篠宮さん…」
「剛だ」
「……ご、う…、あぁ…」
そのためのホテルではないから、ローションなんて気の利いたものは置いていなくて、かといって代用できるものをバスルームに取りに行くのも興が褪めるから、篠宮は明希が放ったモノを、その最奥に塗り込めた。
「ハッ…! くぅ…」
いきなり無遠慮に潜り込んできた指に明希が身を硬くしたのは一瞬で、すぐに明希の中は熱く篠宮の指に絡み付いてくる。
明希はいやらしく喘ぎながら、腰を揺らす。
いつもなら、相手の情を煽るため、少し大げさになくらいに喘いでみせるけれど、今日はそんな演技をしている余裕がない。
「あぁんっ!」
篠宮の指が明希の敏感な場所を掠めると、明希は大きな声を出して、そのきれいな背中をしならせた。
「はぁ、あ、ごうっ…」
熱っぽい声が篠宮を呼ぶ。
篠宮は唇を舐めると、ズルッと濡れそぼった指を抜き、篠宮は熱く硬くなった自身をその蕾に突き立てた。
「あぁっ…! や、ぁん…」
「明希」
「はぁんっ!」
名前を呼ばれて、明希の中がキツク篠宮を締め付けた。
「名前呼ばれると、感じる?」
恥ずかしくて、明希は涙を零しながら首を振る。
これは商売だ。対価を受け取るための行為。それだけのこと。感じてるなんて、そんなの演技だから。
なのに。
「あ、あぁ…!」
繋がったまま体を返され、体に響く甘い衝撃に、明希は身を仰け反らせた。
篠宮は明希の膝裏を掬うと、深く突き上げる。篠宮が腰を動かすたび、グチュグチュといやらしい音がする。
「あっ、あぁ…! もぉ…」
明希が堪え切れないと首を振るたび、真っ白なシーツの上に黒髪が散らばる。
こんな、与えられるようなセックス、知らない。
だってセックスなんて、苦しくて、汚くて、ツライだけだ。
「明希…」
「あぁんっ! はぁ…ッ、んん…」
耳元で名前を呼ばれ、そのまま耳たぶを食まれる。腰の奥から、ぞわぞわと快感が這い上がってくる。さっき見つけられた敏感な場所ばかり突かれて、もう何だか分からない。
ぐずぐずになって溶けてしまいそうだ。
「ひぁっ…イッ……あぁ、イッちゃう…!」
舌で胸の突起をなぶられ、いいところばかり突き上げられて、明希の限界はもう近かった。でも、客より先にイクわけにはいかない。明希は自分の指を噛んで、必死に堪える。
けれどそれに気付いた篠宮は、明希の指を口から外させると、その濡れた唇を自分のそれで塞いだ。この仕事で、キスは禁物だ。だけど明希は振り解けず、深く舌を絡ませる。
「ふ…ううんっ! ああぁっ!!」
いったん引き抜かれて、そして最奥まで一気に突き上げられると、明希は身を強張らせてイッてしまった。
「はぁ……え? あ、やっ、無理ぃ! はぁっ! あ、!」
イッて力の抜けた体を繋がったまま抱き起こされ、グンと、深いところまで篠宮が入り込んでくる。たわんだ背中を篠宮に支えられ、ガクガクと突き上げられる。
もう無理だと、何度も訴える。
ツラくて苦しいからではない。こんな、甘く蕩けるような快感、今までに感じたことがないから。
「あ、ぁん! ごぅ…」
「明希、かわいい…」
明希の唇を舐めると、それに応えて、明希が舌を絡ませる。
「あぁ……ごぉ…」
うっとりした明希の声。
篠宮はその背中をキツク抱き、熱い明希の中で果てた。
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