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彼の胸に顔を寄せると、上品な煙草の匂いがしたのです (3)
2009.03.10 Tue
「食事は? ルームサービスでも頼もうか?」
「もう……食べました。それより、」
「名前は?」
青年は背広を脱いで、ネクタイを緩めた。
明希は部屋の真ん中に所在なさそうに立ち竦み、嵌め殺しの窓の向こう、煌びやかな街の明かりを見つめる。
「名前」
もう1度問われて、視線を青年に向けた。
どうせ一夜限りの相手だ。名前を教える必要なんてない。そう思って口を噤んでいると、
「俺は、篠宮剛(ゴウ)。剛って呼んでいいよ」
先に名乗られてしまった。
普通、色々なことを考えて、自ら名乗る客なんていやしない。名乗ったとしても、偽名。なのに、目の前の青年は、フルネームで自分の名前を言う。
さきほど、フロント係が彼のことを『篠宮さま』と呼んでいたから、おそらく本名なのだろう。
「……明希」
「そう。じゃあ、脱いで、ベッドに上がって」
「え、あ…、あの、シャワー…」
「しなくてもいい」
もちろん、そのつもりで彼に声を掛けたのだけれど、いきなりのことに、明希はその場に固まってしまった。
シャワーくらい、浴びさせてほしい。どんな下衆なお客だって、そのくらいのことはさせてくれる。
それに今日はすでに1人相手にしてきている。水しか出なかったシャワーのせいで、ざっとしか体を流していないのだ。
「お願いします」
「しなくてもいいと言ったんだ。早くしろ」
「…はい」
明希は観念して、ティシャツを脱ぎ捨てると、ジーンズに手を掛けた。
篠宮の視線が気になる。
こんなことには慣れているのに。もっと無茶な要求だってされたことがある。なのにどうして今は、こんなに落ち着かないんだろう。
きっとこの場所の雰囲気のせいだ。いつもはボロくて狭い、安ホテルの一室だから。ベッドだって硬くて、体中が痛くなる。
「ぁ!?」
ジーンズの前を寛げただけで先に進まない明希に、歩み寄ってきた篠宮が、その細い体をベッドに押し倒した。スプリングの利いた柔らかなベッドが、2人の体を受け止める。
「この傷は?」
スルリと首筋から脇腹のラインを辿った篠宮の指先が、明希の腰骨の辺りにある5cmほどの傷痕の上で止まった。
「…………昔、刺され……」
その昔、客と金のことで揉めたとき、相手にナイフで襲い掛かられた。幸い傷はそれほど深くもなく、一命は取り留めたのだが、明希の体には、いまだにこうして傷痕が残ってるのだ。
「ふぅん」
「ぁ…」
篠宮の唇が、その傷痕に触れた。ピクリと明希の体が跳ねる。熱い舌でそこをなぞられて、体が震えた。
「もう……食べました。それより、」
「名前は?」
青年は背広を脱いで、ネクタイを緩めた。
明希は部屋の真ん中に所在なさそうに立ち竦み、嵌め殺しの窓の向こう、煌びやかな街の明かりを見つめる。
「名前」
もう1度問われて、視線を青年に向けた。
どうせ一夜限りの相手だ。名前を教える必要なんてない。そう思って口を噤んでいると、
「俺は、篠宮剛(ゴウ)。剛って呼んでいいよ」
先に名乗られてしまった。
普通、色々なことを考えて、自ら名乗る客なんていやしない。名乗ったとしても、偽名。なのに、目の前の青年は、フルネームで自分の名前を言う。
さきほど、フロント係が彼のことを『篠宮さま』と呼んでいたから、おそらく本名なのだろう。
「……明希」
「そう。じゃあ、脱いで、ベッドに上がって」
「え、あ…、あの、シャワー…」
「しなくてもいい」
もちろん、そのつもりで彼に声を掛けたのだけれど、いきなりのことに、明希はその場に固まってしまった。
シャワーくらい、浴びさせてほしい。どんな下衆なお客だって、そのくらいのことはさせてくれる。
それに今日はすでに1人相手にしてきている。水しか出なかったシャワーのせいで、ざっとしか体を流していないのだ。
「お願いします」
「しなくてもいいと言ったんだ。早くしろ」
「…はい」
明希は観念して、ティシャツを脱ぎ捨てると、ジーンズに手を掛けた。
篠宮の視線が気になる。
こんなことには慣れているのに。もっと無茶な要求だってされたことがある。なのにどうして今は、こんなに落ち着かないんだろう。
きっとこの場所の雰囲気のせいだ。いつもはボロくて狭い、安ホテルの一室だから。ベッドだって硬くて、体中が痛くなる。
「ぁ!?」
ジーンズの前を寛げただけで先に進まない明希に、歩み寄ってきた篠宮が、その細い体をベッドに押し倒した。スプリングの利いた柔らかなベッドが、2人の体を受け止める。
「この傷は?」
スルリと首筋から脇腹のラインを辿った篠宮の指先が、明希の腰骨の辺りにある5cmほどの傷痕の上で止まった。
「…………昔、刺され……」
その昔、客と金のことで揉めたとき、相手にナイフで襲い掛かられた。幸い傷はそれほど深くもなく、一命は取り留めたのだが、明希の体には、いまだにこうして傷痕が残ってるのだ。
「ふぅん」
「ぁ…」
篠宮の唇が、その傷痕に触れた。ピクリと明希の体が跳ねる。熱い舌でそこをなぞられて、体が震えた。
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COMMENT-FORM
りり ⇒ 剛さん、素敵…!
どうなっちゃうんだろう?
お仕事だと割り切っているから耐えられた部分もある気がする。
こんな素敵な人に出会ってしまって明希ちゃんは大丈夫なんでしょうか。
心配だー。
剛さんがいい人だといいな。
お仕事だと割り切っているから耐えられた部分もある気がする。
こんな素敵な人に出会ってしまって明希ちゃんは大丈夫なんでしょうか。
心配だー。
剛さんがいい人だといいな。
如月久美子 ⇒ >りりさん
剛さん、読み返してみると、妙にダンディな紳士ですよね。
一応、若い設定なのに…(笑)
> こんな素敵な人に出会ってしまって明希ちゃんは大丈夫なんでしょうか。
明希ちゃんの、お客さんを選ぶ目はいかがだったのか。
次の更新は18祭り突入です!
コメントありがとうございました!
一応、若い設定なのに…(笑)
> こんな素敵な人に出会ってしまって明希ちゃんは大丈夫なんでしょうか。
明希ちゃんの、お客さんを選ぶ目はいかがだったのか。
次の更新は18祭り突入です!
コメントありがとうございました!
柚子季杏 ⇒ ようやく読めた~!
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
お忙しいところ、ありがとうございます~!
今までとはちょこっと毛色の違う、アンダーグラウンド風味(あくまで風味です)のお話。
どうぞお楽しみください。
コメントありがとうございました!
今までとはちょこっと毛色の違う、アンダーグラウンド風味(あくまで風味です)のお話。
どうぞお楽しみください。
コメントありがとうございました!