恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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Pure Blue (7)


 夢の続きならよかった。現実はあまりにも残酷すぎて。



Hinata




 セクフレの彼にメールして、返事を待ってるうちに、寝てしまっていた。
 ふと肩を揺さぶられる感覚に意識が戻って来て、やっと寝ているんだってことに気が付いた。
 言い訳するとすれば、直前まで彼とメールしてたからとか、ここが自分ちじゃなくてホテルだったからとか、何かここんとこずっと心がポッカリ寂しくて甘えたかったからとか、いろいろ出来るんだろうけど。

 俺は何を思ったか、起こしてくれてる朔也くんをセクフレの彼と勘違いし、あまつさえ甘えるような仕草までしてしまっていた…!!

「わっわっわっごごごごごごゴメンなさいっ!!」

 慌てて朔也くんから手を離し、まさに言葉どおり俺は飛び起きた。

「…陽向、寝惚けてたの? 彼女と間違えた?」

 若干顔を引き攣らせつつ俺を見てた朔也くんが、苦笑しながら体を起こしたので、俺はベッドの端まで逃げていって、大げさなほどブンブンと頭を振って頷いた。
 寝惚けていたのは間違いない。
 完全に寝惚けてた。
 けど、間違えたのは、"彼女と"じゃない、"彼と"だ。
 顔が熱い。

「風呂、空いたから」
「――――ぁ…は、はい!」

 俺はベッドを飛び降りて、寝巻き代わりに置いてある浴衣を引っ手繰り、バスルームへと駆け込んだ。いや、逃げ込んだ。

「はぁ…」

 バタン! と勢いよくドアを閉めた後、そこに寄り掛かったら、足の力が抜けて、その場にズルズルとへたり込んでしまった。

「何してんだ俺…」

 とにかく冷静になろうとして、けれど冷静になったらなったで、自分の仕出かしたことの重大さに、恐ろしくなった。

(心臓が痛い…)

 とりあえずシャワーを浴びて、頭を冷やして、いっそ湯船にお湯を溜めてゆっくり入ろうか、そうすればきっと上がるころには朔也くんも寝てるはず。
 でもお湯が溜まるまでこんなところいるなんて、ちょっとキツイ。ゆっくり浴びればいい、ゆっくり。

「冷た…」

 思い体を何とか動かして湯船に入りシャワーを出せば、温度調節がうまく出来なくて、殆ど水って言っていいほどのぬるま湯が降って来た。
 こんなのいつまでも浴びてたら、絶対風邪引いちゃうよって思う反面、もしお湯全開だったら火傷しちゃってたよ…なんて呑気なことを考えてる自分もいる。

「はぁ…」

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。
 なかったことにしたのに、意識しないって決めたのに、知らずに前よりももっと朔也くんのこと、気にするようになってた。

 そりゃ朔也くんのこと、やましい気持ちで見たことは、何度かあるけど。
 でも朔也くんとセックスするなんて、天地が引っ繰り返ったってあり得ないことだから、自分の気持ちを、憧れだとかファンの子が抱くような恋心だとかと同じだって、思い込ませるのは簡単だった。

 なのにこんなことになっちゃって、自分の気持ちをどう整理していいか分からない。
 なかったことにしなきゃいけないのに、そんなに簡単に割り切れない自分。
 おかしいよ。
 酔った勢いじゃなかったとしても、1回だけのエッチとか、あるじゃん。普通に男と女のカップルだって。
 別に酔っ払ってたからとか理由を付けなくたって、その場限りのお遊び、てことで、そっから先の関係を求めないことなら、いくらでもある。
 例えば今のセクフレの彼だって、何となく利害も一致してるし、体の相性もいいから続いてるけど、別にいつ切れたっておかしくない関係。
 そういうのと一緒だと思えばいいのに。

 なのにどうして俺は、朔也くんとの関係だけに、意味を持たせたがるんだろう。

(いや、そんなの、もうとっくに理由なんて分かってるけど)

 だからって、どうにか出来るわけじゃなくて。
 何て残酷。
 やっぱり気付かなきゃよかったよ。
 こんなことになる前から抱いていた感情は、憧れだとか、ファン目線の情熱的な想いだとか、そんなんじゃなくて。

(―――――ずっと好きだったんだ…)





 ―――――ガンガンガンッ!!

『陽向、大丈夫!?』





 ―――――え…?
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カテゴリー:読み切り中編
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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