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僕らの青春に明日はない (77)
2010.05.19 Wed
『九条さん、立てますか?』
「うー…」
司会の人も肩を貸してくれて、和衣はようやく立ち上がることが出来た。
「えーっと、今の頭突きで、質問の答え忘れちゃったみたいなんで、次行っちゃってくださーい!」
どうぞー! という感じで、真大が次の出場者のほうを指すので、司会者も笑いながら、和衣の隣に移動した。
「カズくん、大丈夫…?」
「ゴメ…真大…」
「痛い? あとで彼氏にナデナデしてもらおうね?」
そう言って真大は、先ほど振り解かれてしまった手を、もう1度繋いだ。
再び手を繋ぎ直す必要なんてないのだけれど、和衣はもうそんなことを考える余裕もなくて、大人しく真大と手を繋いでいた。
しかし、そんな余裕なしの和衣はもちろん気付いていないが、和衣の後ろにはあと10人くらい出場者がいて、その誰もが内心穏やかではなかった。
何しろ、和衣と真大でこんなに笑いを取ってしまったのだ。同じネタは通用しないし(和衣的にはネタでなく本気だったが)、寒い答えもしたくないが、あれ以上の笑いを取る自信もない。
中にはウケ狙いで、ゴツい体に無理やりメイド服や露出度の高い衣装を着けた者もいたが、和衣たちの後では、それもいまいち盛り上がりに欠けた。
そして結局、みんな無難な答えしか言えず、とくにインパクトも残せないまま、インタビュータイムは終わってしまった。
「もう終わり? 俺もうお家帰っていいの?」
「まだ、まだ。これから投票とかだよ」
もう帰ろうよ、と勝手に台を下りようとする和衣を、真大が引き止める。
無意識で、無自覚で、無防備なのに、無敵。
まさに和衣は、そんな子なのだ。
『ではみなさん、投票が終わるまでの間、最後のアピールをしちゃってくださ~い!』
審査は、会場に来ているお客さんの投票による。
席に着いている人に投票用紙が配られるほか、会場の入り口でも配布しているので、誰でも自由に投票が出来て、最終的に得票数の多かった人が優勝ということになる。
みんな最後の足掻きとばかりに、思い思いにアピールをしている中、和衣だけが「帰る、帰る~~~~」と駄々を捏ね、真大に「もうちょっとだから!」と宥められている。
女装コンテストの参加者なんて大抵、悪目立ちをしたいか、賞品目当てのどちらかだから、みんな投票が終わるまでがんばるものだ。
まさか和衣のように、ステージに上がってまで帰りたがっている者なんて、めったにいなくて、だからこそ、帰りたがる和衣と、それを引き止める真大は、相変わらずステージの上で目立ちまくっている。
「カズくん! ホラ、手振ろう? 投票してー、て」
「やぁ…!」
「旅行券! 彼氏と旅行!」
「ッ!」
和衣を釣る手段は、もはやこれしかない。
賞品の旅行券のことをチラつかせると、和衣はハッとして、大人しくなった。
「お手振り、お手振り」
真大に言われ、和衣なりにがんばって笑顔を作って、手を振る。
もはや、真大と手を繋いでいる理由なんて、どうでもよくなっていた。
「うー…」
司会の人も肩を貸してくれて、和衣はようやく立ち上がることが出来た。
「えーっと、今の頭突きで、質問の答え忘れちゃったみたいなんで、次行っちゃってくださーい!」
どうぞー! という感じで、真大が次の出場者のほうを指すので、司会者も笑いながら、和衣の隣に移動した。
「カズくん、大丈夫…?」
「ゴメ…真大…」
「痛い? あとで彼氏にナデナデしてもらおうね?」
そう言って真大は、先ほど振り解かれてしまった手を、もう1度繋いだ。
再び手を繋ぎ直す必要なんてないのだけれど、和衣はもうそんなことを考える余裕もなくて、大人しく真大と手を繋いでいた。
しかし、そんな余裕なしの和衣はもちろん気付いていないが、和衣の後ろにはあと10人くらい出場者がいて、その誰もが内心穏やかではなかった。
何しろ、和衣と真大でこんなに笑いを取ってしまったのだ。同じネタは通用しないし(和衣的にはネタでなく本気だったが)、寒い答えもしたくないが、あれ以上の笑いを取る自信もない。
中にはウケ狙いで、ゴツい体に無理やりメイド服や露出度の高い衣装を着けた者もいたが、和衣たちの後では、それもいまいち盛り上がりに欠けた。
そして結局、みんな無難な答えしか言えず、とくにインパクトも残せないまま、インタビュータイムは終わってしまった。
「もう終わり? 俺もうお家帰っていいの?」
「まだ、まだ。これから投票とかだよ」
もう帰ろうよ、と勝手に台を下りようとする和衣を、真大が引き止める。
無意識で、無自覚で、無防備なのに、無敵。
まさに和衣は、そんな子なのだ。
『ではみなさん、投票が終わるまでの間、最後のアピールをしちゃってくださ~い!』
審査は、会場に来ているお客さんの投票による。
席に着いている人に投票用紙が配られるほか、会場の入り口でも配布しているので、誰でも自由に投票が出来て、最終的に得票数の多かった人が優勝ということになる。
みんな最後の足掻きとばかりに、思い思いにアピールをしている中、和衣だけが「帰る、帰る~~~~」と駄々を捏ね、真大に「もうちょっとだから!」と宥められている。
女装コンテストの参加者なんて大抵、悪目立ちをしたいか、賞品目当てのどちらかだから、みんな投票が終わるまでがんばるものだ。
まさか和衣のように、ステージに上がってまで帰りたがっている者なんて、めったにいなくて、だからこそ、帰りたがる和衣と、それを引き止める真大は、相変わらずステージの上で目立ちまくっている。
「カズくん! ホラ、手振ろう? 投票してー、て」
「やぁ…!」
「旅行券! 彼氏と旅行!」
「ッ!」
和衣を釣る手段は、もはやこれしかない。
賞品の旅行券のことをチラつかせると、和衣はハッとして、大人しくなった。
「お手振り、お手振り」
真大に言われ、和衣なりにがんばって笑顔を作って、手を振る。
もはや、真大と手を繋いでいる理由なんて、どうでもよくなっていた。
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