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08. 嫌いなタイプ(じゃないけれど)
2008.01.09 Wed
男に抱かれた…………かもしれないのに、俺が意外と普通でいられるのは、"そのときのこと"を覚えてないからかもしれない。
もしあの朝、拓海からそんなこと聞かなかったら、すげぇいい人…ってだけで、終わってたかもしれないのに。
なのに何でアイツ、わざわざそんなこと俺に話したんだろ。酔った勢いで簡単に男に抱かれちゃうようなヤツ……女の子より男のほうが好きなんだろうって思っちゃったのかな。
だいたい、変だよ、アイツ。いくら女より男のほうがいいって言ったって、初対面の酔っ払いを抱くか!? そんなの普通じゃないよ。うん、普通じゃない。
あれから何度も店にはやって来るし。
……でも別に俺に何するでもないし、特に話し掛けてくるような感じでもない。
俺のことなんて、どうでも良くなったのかな…。単に学校が近いから、寄ってるだけなのかな。
…ってか、別にそれでいいんだよね。
俺だってそうなることを望んでたんだから。別にアイツとどうこうなりたいわけじゃないし。そうだよ、これでいいんだ…。
……なのに。
なのに何で…………ずっと頭から離れないの…?
*****
「橘ぁ、今日メシ食って帰んね?」
バイトが終わると、八尾がそう言ってきた。
「奢りならね」
「……奢らせていただきます」
相変わらずだなぁ、とか言いながら、八尾がポンポンって頭を撫でてくる。年の差なんて、たった1か月なのに、いつだって八尾は大人だし、俺は子供。
「そういえばさ、」
「ん?」
「俺がこんなこと聞くの、変な話かも…だけど、こないだ、何があったわけ?」
「え? こないだって……」
「バイト中、急に出てったじゃん。あの後から、何か元気ないみたいだし」
「元気、ないかな?」
「ないっていうか……ないかと思ったら、急にテンションが高くなったりするから、ちょっと心配になって…」
……きっと、拓海のことを思い出さないように、仕事に集中しようとして、無理やりテンションを上げたときだ。やっぱ、変だったかな、俺。
「何か……自分でもよく分かんないの。すっごいヤなことがあってね、でも自分じゃそのこと覚えてなくて。で、そいつのことも大っ嫌いなはずなのに、顔見ると超キョドっちゃって、どうしていいか分かんなくなるのね」
「どんなヤなことがあった?」
「それは…………あ、」
八尾に打ち明けようかどうか迷っていると、前方から見覚えのある姿。1人じゃない。拓海の横には、俺の知らない誰か。向こうはまだ、俺に気付いてない。
「橘?」
どんどん距離が近くなる。あと数メートルってとこで、目が合う。拓海が俺に気が付いた。
「たち…」
「―――八尾、早く行こうぜ!」
「え? おい、何だよ、急に」
八尾の手を取って、走り出す。拓海が声を掛けて来ようとしたのが、分かったから。
だから気付かない振りして。拓海がいたこと自体に気付かない振りして、逃げるように走り去る。
怖くなった。急に。隣にいるのは、誰? 一緒に楽しそうに笑っているのは。
そんなことを思う自分がいて。
何これ。バカ。恋する乙女か。相手は初対面の男を抱いちゃうような変態だぞ。
なのに、何でこんな気持ちになってんの? 俺、ホモじゃないし。別にアイツのことなんか、どうでもいいし。
「橘、橘!」
八尾に手を振り解かれて、俺はようやく足を止めた。
「何だよ、どうしたんだよ、急に!」
「……ゴメン」
「別にいいけど……何? 情緒不安定?」
「分かんない…」
もう、自分で自分が分かんない。何がしたいんだろ。
「……なぁ、橘。さっきのヤツって、こないだコンビニに来た…」
「覚えてたんだ」
「まぁ…何となく。もしかしてお前が変なのって、そいつのせい?」
「…………」
「いや、言いたくないならいいんだけど……あの、アイツ、追い掛けてきてるけど…」
「えっ!?」
八尾に言われて、来たほうを振り返ると、拓海がこっちに向かってダッシュしてきてる! しかもその後を、一緒に歩いてたヤツが、『どうしたんだ!?』って顔で追い掛けてきてるし。
何この図。
夕方、仕事帰りのサラリーマンとかOLさんで溢れた繁華街に、どうしたって不釣合いな光景。
「や…ど、ど…しよ…」
「どうしようって……」
「逃げよう!」
「へっ!?」
驚いてる八尾の手を掴んで、俺もダッシュ。悪いけど、俺だって足には自信がある。ある…………けど。
「八尾、もっと早く走れって!」
ダメだ、コイツと一緒じゃ。マジで、どうしよう。
拓海の声が聞こえる。
八尾の手を放してでも逃げようとした瞬間、
「逃げんなっ!!」
拓海の大きな声に、思わず足が止まった。勢いのつきすぎていた八尾が、俺の背中にぶつかった。
「はぁ……はぁ、橘…」
相当参ってるらしい八尾は、膝に両手を突いて項垂れている。息を整えながら、でも俺は後ろを振り返らない。
「何で逃げたんだよっ!」
息を切らしてる拓海が、俺の肩を掴んで、無理やり振り向かせた。
何でって……お前こそ何でここまでして俺のこと追い掛けて来るんだよ…。
「拓海、何なんだよ、急に!」
拓海と一緒に歩いてた男もようやく追いついて、苛立たしげに声を上げた。
「拓海?」
「真琴、悪ぃ、先帰って」
「はぁ!? おま……人をここまで走らせといて……」
連れの男の文句を気にするふうもなく、拓海は、今度は八尾に、「ちょっと彼のこと借りてきますけど、ご心配なく」 とか言ってる。
八尾もちょっとは何か言ってやればいいのに、脳に酸素が行き届いてないせいか、「はぁ…」とか間抜けな返事をしてるし。
そして俺は、わけの分からぬまま、拓海に腕を引かれて。
何これ。 意味分かんないよ。何なんだよ。こんな自分勝手なの。
ばか。お前みたいなヤツ、嫌いだよ。
大っ嫌い。人の気持ちを引っ掻き回して。
大っ嫌いだよ。
もしあの朝、拓海からそんなこと聞かなかったら、すげぇいい人…ってだけで、終わってたかもしれないのに。
なのに何でアイツ、わざわざそんなこと俺に話したんだろ。酔った勢いで簡単に男に抱かれちゃうようなヤツ……女の子より男のほうが好きなんだろうって思っちゃったのかな。
だいたい、変だよ、アイツ。いくら女より男のほうがいいって言ったって、初対面の酔っ払いを抱くか!? そんなの普通じゃないよ。うん、普通じゃない。
あれから何度も店にはやって来るし。
……でも別に俺に何するでもないし、特に話し掛けてくるような感じでもない。
俺のことなんて、どうでも良くなったのかな…。単に学校が近いから、寄ってるだけなのかな。
…ってか、別にそれでいいんだよね。
俺だってそうなることを望んでたんだから。別にアイツとどうこうなりたいわけじゃないし。そうだよ、これでいいんだ…。
……なのに。
なのに何で…………ずっと頭から離れないの…?
*****
「橘ぁ、今日メシ食って帰んね?」
バイトが終わると、八尾がそう言ってきた。
「奢りならね」
「……奢らせていただきます」
相変わらずだなぁ、とか言いながら、八尾がポンポンって頭を撫でてくる。年の差なんて、たった1か月なのに、いつだって八尾は大人だし、俺は子供。
「そういえばさ、」
「ん?」
「俺がこんなこと聞くの、変な話かも…だけど、こないだ、何があったわけ?」
「え? こないだって……」
「バイト中、急に出てったじゃん。あの後から、何か元気ないみたいだし」
「元気、ないかな?」
「ないっていうか……ないかと思ったら、急にテンションが高くなったりするから、ちょっと心配になって…」
……きっと、拓海のことを思い出さないように、仕事に集中しようとして、無理やりテンションを上げたときだ。やっぱ、変だったかな、俺。
「何か……自分でもよく分かんないの。すっごいヤなことがあってね、でも自分じゃそのこと覚えてなくて。で、そいつのことも大っ嫌いなはずなのに、顔見ると超キョドっちゃって、どうしていいか分かんなくなるのね」
「どんなヤなことがあった?」
「それは…………あ、」
八尾に打ち明けようかどうか迷っていると、前方から見覚えのある姿。1人じゃない。拓海の横には、俺の知らない誰か。向こうはまだ、俺に気付いてない。
「橘?」
どんどん距離が近くなる。あと数メートルってとこで、目が合う。拓海が俺に気が付いた。
「たち…」
「―――八尾、早く行こうぜ!」
「え? おい、何だよ、急に」
八尾の手を取って、走り出す。拓海が声を掛けて来ようとしたのが、分かったから。
だから気付かない振りして。拓海がいたこと自体に気付かない振りして、逃げるように走り去る。
怖くなった。急に。隣にいるのは、誰? 一緒に楽しそうに笑っているのは。
そんなことを思う自分がいて。
何これ。バカ。恋する乙女か。相手は初対面の男を抱いちゃうような変態だぞ。
なのに、何でこんな気持ちになってんの? 俺、ホモじゃないし。別にアイツのことなんか、どうでもいいし。
「橘、橘!」
八尾に手を振り解かれて、俺はようやく足を止めた。
「何だよ、どうしたんだよ、急に!」
「……ゴメン」
「別にいいけど……何? 情緒不安定?」
「分かんない…」
もう、自分で自分が分かんない。何がしたいんだろ。
「……なぁ、橘。さっきのヤツって、こないだコンビニに来た…」
「覚えてたんだ」
「まぁ…何となく。もしかしてお前が変なのって、そいつのせい?」
「…………」
「いや、言いたくないならいいんだけど……あの、アイツ、追い掛けてきてるけど…」
「えっ!?」
八尾に言われて、来たほうを振り返ると、拓海がこっちに向かってダッシュしてきてる! しかもその後を、一緒に歩いてたヤツが、『どうしたんだ!?』って顔で追い掛けてきてるし。
何この図。
夕方、仕事帰りのサラリーマンとかOLさんで溢れた繁華街に、どうしたって不釣合いな光景。
「や…ど、ど…しよ…」
「どうしようって……」
「逃げよう!」
「へっ!?」
驚いてる八尾の手を掴んで、俺もダッシュ。悪いけど、俺だって足には自信がある。ある…………けど。
「八尾、もっと早く走れって!」
ダメだ、コイツと一緒じゃ。マジで、どうしよう。
拓海の声が聞こえる。
八尾の手を放してでも逃げようとした瞬間、
「逃げんなっ!!」
拓海の大きな声に、思わず足が止まった。勢いのつきすぎていた八尾が、俺の背中にぶつかった。
「はぁ……はぁ、橘…」
相当参ってるらしい八尾は、膝に両手を突いて項垂れている。息を整えながら、でも俺は後ろを振り返らない。
「何で逃げたんだよっ!」
息を切らしてる拓海が、俺の肩を掴んで、無理やり振り向かせた。
何でって……お前こそ何でここまでして俺のこと追い掛けて来るんだよ…。
「拓海、何なんだよ、急に!」
拓海と一緒に歩いてた男もようやく追いついて、苛立たしげに声を上げた。
「拓海?」
「真琴、悪ぃ、先帰って」
「はぁ!? おま……人をここまで走らせといて……」
連れの男の文句を気にするふうもなく、拓海は、今度は八尾に、「ちょっと彼のこと借りてきますけど、ご心配なく」 とか言ってる。
八尾もちょっとは何か言ってやればいいのに、脳に酸素が行き届いてないせいか、「はぁ…」とか間抜けな返事をしてるし。
そして俺は、わけの分からぬまま、拓海に腕を引かれて。
何これ。 意味分かんないよ。何なんだよ。こんな自分勝手なの。
ばか。お前みたいなヤツ、嫌いだよ。
大っ嫌い。人の気持ちを引っ掻き回して。
大っ嫌いだよ。
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カテゴリー:拓海×悠也