恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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気付かせないで、恋心 (7)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

「ッ…」

 封印していた感情を思わず曝け出しそうになったところで、クシャリ、襟足の髪に加倉井の指が絡み、希尋は言葉を詰まらせる。
 居た堪れなくて俯きそうになった希尋に、加倉井は指を絡めた髪を引っ張って、無理やり顔を上げさせる。
 強い視線。
 心臓を、鷲掴みにされる。

「カメラのほう、見ろってさ」

 けれど先に視線を外したのは、加倉井のほう。
 カメラマンの指示に従って、前を向く。

 希尋だってカメラのほうを向きたいのに、でも体が動かない。
 どんなふうに顔を作ってカメラを見たらいいのか、分からない。今はどうやったって、どんなにがんばったって、感情を隠せない。
 こんな顔、絶対に写したらダメだから。



 こんな…………加倉井のことが好き、て顔、誰にも見せちゃダメ――――。



 テレビで、雑誌で、希尋と加倉井が離されるようになったのは、何も大人の気まぐれではない。
 2人の知らない大人の事情なんかでもない。
 希尋がその感情を、加倉井を好きだという思いを、隠せなくなってしまったから。カメラを前にしても、その思いを溢れ出させてしまうから。

 たとえ実らない恋でも、人がその思いを抱くことは自由けれど、希尋はそんな普通の人ではない。おいそれと、同じグループの男に恋などしていられる立場ではないのだ。

 誰にも知られてはいけない感情。
 たとえ加倉井本人にでさえ、気付かれてはいけない思い。
 誰にも何にも知られなければ、グループはこのままでいられるし、希尋もずっと、加倉井の隣にいられる。

 だから全部、その思いも、ぬくもりも、みんな閉じ込めたのだ。
 こんな感情を知らなかったころに、何も知らなかったころに戻れるように。

 この距離は、加倉井との離れてしまったこの距離は、誰よりも、希尋自身が作り出したものだ。

「希尋ー、こっち見ろー」

 体が動かない。
 動かないよ。
 だって、こんな顔、写されちゃったら…。

「お前、いい加減に…、……え…」

 少しもカメラマンの言うことを聞こうとしない希尋に焦れたのか、加倉井は苛付いた声を上げたが、あまりに絶望的な表情で固まっている希尋を見て、言葉が続かなかった。

「槇村…?」
「ど、しよ…、俺…」

 どうして、こんな撮影なんか。
 どうして今さら、加倉井と2人で写真なんか。
 こんなふうに触れ合わなかったら、思い出さなかったのに。気付かないままでいられたのに。
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カテゴリー:読み切り中編
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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柚子季杏 ⇒ きゅ~~んと

切ないですねぇ゜+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
そうよね、写真は心を正直に映し出しちゃいますものね。
まして撮る側がプロであれば、それは如実に現れちゃう。
2人はこの先どうなるのでしょう~?
くぅ~~このきゅんきゅん展開! 悶えるー!!
流石です、如月さん!!

  • |2010.02.22
  • |Mon
  • |08:11
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如月久美子 ⇒ >柚子季さん

> 切ないですねぇ゜+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
> そうよね、写真は心を正直に映し出しちゃいますものね。
> まして撮る側がプロであれば、それは如実に現れちゃう。
> 2人はこの先どうなるのでしょう~?

 希尋タンは、自分で自分の気持ちを封印したんですが、それをこんなときに思い出しちゃって、どうしていいかまったく分からなくなってしまいました…。
 写真とかって、自分でも気付かないような気持ちが表情に出てたりして、怖いですよね。
 そのことが分かっちゃってる分だけ、どうしていいか分からないか分からないんですが。

> くぅ~~このきゅんきゅん展開! 悶えるー!!
> 流石です、如月さん!!

 最初はこんなにシリアスなお話になるはずもなかったのに、出来上がってみたら、この切なさ…。
 キュンキュンしていただけたら幸いです。
 私のほうこそ、こんな褒め殺しされちゃって、キュンキュンです~。

 コメントありがとうございました!

  • |2010.02.22
  • |Mon
  • |19:57
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