恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

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wish (15)


「遠山くん、俺…」

 遠山のほうを向いた遥琉の顔は、涙で濡れていた。

「俺もね、遠山くんのこと……好き」
「え…」
「だから、どうしても遠山くんの願い叶えたくて、直接願い事聞いたら、絶対間違いない、て思って姿見せたの。……でもさ、直接聞かなきゃ願い事も分かんないようなヤツじゃ、そんなの全然ダメだよね」
「遥琉…」
「結局、遠山くんのこと、悲しませることになっちゃった…。でも心配しないで! 俺のこと忘れちゃったら、きっと俺のこと好きだって気持ちも忘れちゃうから。そしたらステキな彼女作って、幸せになってね?」

 遥琉は無理やり笑って、そう言った。
 瞳からは、次々に新しい涙が零れてくる。

「忘れねぇよ。たとえ忘れたって、絶対に思い出す、お前のことは。お前以外のヤツなんか、好きになんねぇよ」
「遠山くん…」
「ホントに好きだから」

 静かに雪が降り出す。
 天使が泣いているから?


 最初で、最後のキス。





*****

「―――ん…んー…」

 ふと目を開けると、すでに辺りは真っ暗だった。遠山はコタツの中で体を反転させて、壁に掛かっていた時計に目をやった。

「6時か…」

 あくびをしながら大きく伸びをして、起き上がる。眠気を払うように頭を振ると、コタツを抜け出て部屋の明かりをつけた。

『くぅ~ん…』

 遠山の足に、子犬が甘えるように擦り寄ってきた。

「何だよ、起きたのか?」

 よしよしと言うように頭を撫でてから、子犬を抱き上げた。

「どうしたー? お腹空いたか? 今ミルクやるからなぁー」

 ミルクを用意すると、よほど腹を空かせていたのか、子犬はすぐに皿に飛び付き、おいしそうにミルクを飲み始める。
 遠山はしばらくその様子を眺めていたが、台所に戻って夕食の支度を始めた。

『きゃんっ!!』

 遠山が包丁を使っていると、ミルクを飲み終えたのか、子犬が遠山のもとへとやって来て、足にじゃれ付き出した。

「おい、コラ、危ないだろ? おいってば、えっと…」

 イタズラをやめさせようと、包丁を置いて叱ろうとするが、屈んで犬を抱き上げ、ふと気付く。

「名前…何だっけ…?」

 名前を呼んで注意しようと思ったのに、どういうわけか犬の名前が出てこない。
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カテゴリー:読み切り中編
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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りり ⇒

このまま忘れてしまって終わりとかそんな殺生なことを如月さんはしないはず……。

何て綺麗でピュアなお話でしょうか。
ダメっこ天使ちゃんも遠山くんも、心が綺麗で優しくて、読んでいて泣きそうになりました。
ずっと遥琉といたいっていう本当の願い、叶うといいな……(祈

  • |2010.01.05
  • |Tue
  • |21:10
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如月久美子 ⇒ >りりさん

> このまま忘れてしまって終わりとかそんな殺生なことを如月さんはしないはず……。

 じれったいところで、ぶった切ってしまってスミマセン(爆)
 もぉ~~~殺生なぁ~~~、て感じですよね。
 私も、これを人が書いてたら、絶対にそう言ってる…。

> 何て綺麗でピュアなお話でしょうか。
> ダメっこ天使ちゃんも遠山くんも、心が綺麗で優しくて、読んでいて泣きそうになりました。
> ずっと遥琉といたいっていう本当の願い、叶うといいな……(祈

 ピュア!
 そんなすてきな言葉を頂けるとは!
 実は天使とかそういうことは、私は全然詳しくなくて、そういうことをちゃんと勉強してる人からしたら、なんじゃこりゃ、なのかもしれませんが、とても純粋な存在なのだろうなぁ、という思いで書きました。
 遠山さんは感情的になることが多いんですが、それでも人間であるがゆえですよね。

 遥琉ちゃんみたいな優しい子がいたら、みんな優しい気持ちになれるんでしょうね(*^_^*)

 コメントありがとうございました!

  • |2010.01.05
  • |Tue
  • |22:39
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