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8月 暑気あたり、気づけば腕の中。 (11)
2009.05.04 Mon
「あのさ、さっきの、あの…」
「蒼ちゃんと郁のこと?」
「あ…うん。ゴメン、その…」
「何でアンタが謝んの?」
謝った後、冷静とも言える真大の突っ込みに、言葉が詰まる。
それは、ここに来るまでの間、翔真自身、何度も思ったことだ。
結局のところ、翔真は真大に対して何もしていないのだから、謝罪したところで、一体何に対して謝っているのやら。
「…知ってたんでしょ?」
「え?」
「蒼ちゃんと郁のこと。2人が付き合ってるって、アンタ、知ってたんだろ? さっきの、そんな反応だった」
「あ…、……うん」
やはり、真大が気付かないはずがなかった。
和衣が何の気なしに口にした言葉の意味をしっかりと読み取っていたし、慌てて和衣を止めようとした翔真の反応も、気付いていないようで、ちゃんと見ていたのだ。
「知ってて、ずっと黙ってたんだ…。俺が蒼ちゃんのこと好きだって知ってるくせに、蒼ちゃんと郁が付き合ってるって、黙ってたんだ?」
「それは…」
「何? バカみたいだって思ってた? 叶いもしないのに蒼ちゃんに付きまとって、バカみたいって。何だよ、ずっと笑ってたのかよ!」
「違う、そんなことっ」
そんなことは、絶対ない。
笑うだなんて、そんなこと。
「真大っ…」
違うって、そんなことないって言おうとして、けれど真大の目からボロボロと零れ落ちる涙に、言葉が続かなかった。
「何だよ、何なんだよ、アンタ…」
「違う、真大のこと、そんなふうになんか思ってないっ」
「うっさい! 気安く呼ぶなつってんだろ! もう出てけよ! アンタなんか大っ嫌いだよ! 俺に構うなっ…」
「真大! …真大?」
放っておいてくれと翔真の手を払う真大の顔色が、ひどく悪い。
「真大、おい、大丈夫か!?」
「放せっ…!」
「ちょっ」
掴まれた手首を振り払おうとした真大の体が、グラリと傾いた。
翔真は慌ててその体を抱えたけれど、真大は目を閉じていて、ひどく呼吸も荒い。何度か名前を呼べば、ふと目を開けたが、顔面は蒼白だし、翔真の腕から抜け出す力もないようで、ぐったりとしている。
明らかに熱中症の症状だ。
高温多湿で風も吹かない状態のだと、室内でも起こるのだと、この時期、ニュースでもしきりに言っていたから、翔真にも分かった。
症状は軽そうだが、部屋の状態がこんなでは、危険かもしれない。
扇風機すら回っていなかったことに気が付き、翔真は真大をベッドに寝かせると、扇風機のスイッチを入れ、入口のドアを開け放った。窓と対面にあるドアを開けると、かろうじて涼しいと言える風が、室内を吹き抜けた。
「真大、冷蔵庫、開けていい?」
「……は…?」
「何か飲み物、スポーツドリンクとか入ってる?」
返事はなかったが、待っていられなくて、勝手に冷蔵庫を開けた。小さな冷蔵庫の中には、食料と言えるようなものは殆ど見当たらなかったが、数本のペットボトルが入っていた。
「これお前の? つーか他にねぇから、とりあえずこれ飲め」
「ちょっ…」
翔真が開けたスポーツドリンクのペットボトルが、真大のものか、同室者のものかはよく分からなかったが、今はそれどころではないので、開けさせてもらった。
「いいよ…」
キャップを開けたペットボトルを真大に差し出せば、ひどく嫌そうな表情で、顔を背けられた。
「飲めって、真大」
「うっさい! もう俺に構うなっつってんだろ!」
「でも…」
「もうこれ以上、俺を惨めにさせないでよ…」
その声に滲む涙に、翔真は言葉が続かなかった。
激情に駆られ、雑言を浴びせた相手に、こんなふうに介抱されて、それがどんなに情けなく惨めなことか。
「分かるけど、でもこのままにしたら悪化するかも…」
「出てけっ!」
「……、分かった。でもホント、これだけは飲みな?」
真大からの返事はなくて、翔真は枕元にペットボトルを置くと、静かに部屋を出た。
けれど、そう言われても、具合の悪いヤツを放っておくことなんて出来なくて、翔真は部屋を出たばかりの廊下に立ち竦む。
誰か真大の友人に任せようかとも思ったが、1年生はよく知らない。
結局翔真は、真大の同室者が帰ってくるまで、ずっとそこにいた。
「蒼ちゃんと郁のこと?」
「あ…うん。ゴメン、その…」
「何でアンタが謝んの?」
謝った後、冷静とも言える真大の突っ込みに、言葉が詰まる。
それは、ここに来るまでの間、翔真自身、何度も思ったことだ。
結局のところ、翔真は真大に対して何もしていないのだから、謝罪したところで、一体何に対して謝っているのやら。
「…知ってたんでしょ?」
「え?」
「蒼ちゃんと郁のこと。2人が付き合ってるって、アンタ、知ってたんだろ? さっきの、そんな反応だった」
「あ…、……うん」
やはり、真大が気付かないはずがなかった。
和衣が何の気なしに口にした言葉の意味をしっかりと読み取っていたし、慌てて和衣を止めようとした翔真の反応も、気付いていないようで、ちゃんと見ていたのだ。
「知ってて、ずっと黙ってたんだ…。俺が蒼ちゃんのこと好きだって知ってるくせに、蒼ちゃんと郁が付き合ってるって、黙ってたんだ?」
「それは…」
「何? バカみたいだって思ってた? 叶いもしないのに蒼ちゃんに付きまとって、バカみたいって。何だよ、ずっと笑ってたのかよ!」
「違う、そんなことっ」
そんなことは、絶対ない。
笑うだなんて、そんなこと。
「真大っ…」
違うって、そんなことないって言おうとして、けれど真大の目からボロボロと零れ落ちる涙に、言葉が続かなかった。
「何だよ、何なんだよ、アンタ…」
「違う、真大のこと、そんなふうになんか思ってないっ」
「うっさい! 気安く呼ぶなつってんだろ! もう出てけよ! アンタなんか大っ嫌いだよ! 俺に構うなっ…」
「真大! …真大?」
放っておいてくれと翔真の手を払う真大の顔色が、ひどく悪い。
「真大、おい、大丈夫か!?」
「放せっ…!」
「ちょっ」
掴まれた手首を振り払おうとした真大の体が、グラリと傾いた。
翔真は慌ててその体を抱えたけれど、真大は目を閉じていて、ひどく呼吸も荒い。何度か名前を呼べば、ふと目を開けたが、顔面は蒼白だし、翔真の腕から抜け出す力もないようで、ぐったりとしている。
明らかに熱中症の症状だ。
高温多湿で風も吹かない状態のだと、室内でも起こるのだと、この時期、ニュースでもしきりに言っていたから、翔真にも分かった。
症状は軽そうだが、部屋の状態がこんなでは、危険かもしれない。
扇風機すら回っていなかったことに気が付き、翔真は真大をベッドに寝かせると、扇風機のスイッチを入れ、入口のドアを開け放った。窓と対面にあるドアを開けると、かろうじて涼しいと言える風が、室内を吹き抜けた。
「真大、冷蔵庫、開けていい?」
「……は…?」
「何か飲み物、スポーツドリンクとか入ってる?」
返事はなかったが、待っていられなくて、勝手に冷蔵庫を開けた。小さな冷蔵庫の中には、食料と言えるようなものは殆ど見当たらなかったが、数本のペットボトルが入っていた。
「これお前の? つーか他にねぇから、とりあえずこれ飲め」
「ちょっ…」
翔真が開けたスポーツドリンクのペットボトルが、真大のものか、同室者のものかはよく分からなかったが、今はそれどころではないので、開けさせてもらった。
「いいよ…」
キャップを開けたペットボトルを真大に差し出せば、ひどく嫌そうな表情で、顔を背けられた。
「飲めって、真大」
「うっさい! もう俺に構うなっつってんだろ!」
「でも…」
「もうこれ以上、俺を惨めにさせないでよ…」
その声に滲む涙に、翔真は言葉が続かなかった。
激情に駆られ、雑言を浴びせた相手に、こんなふうに介抱されて、それがどんなに情けなく惨めなことか。
「分かるけど、でもこのままにしたら悪化するかも…」
「出てけっ!」
「……、分かった。でもホント、これだけは飲みな?」
真大からの返事はなくて、翔真は枕元にペットボトルを置くと、静かに部屋を出た。
けれど、そう言われても、具合の悪いヤツを放っておくことなんて出来なくて、翔真は部屋を出たばかりの廊下に立ち竦む。
誰か真大の友人に任せようかとも思ったが、1年生はよく知らない。
結局翔真は、真大の同室者が帰ってくるまで、ずっとそこにいた。
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伽羅 ⇒ あぁぁぁ・・・
真大くんっ!! 大丈夫かっ!! ←(大丈夫じゃないって!)
暑さのためだけじゃなくて精神的にもかなりのダメージうけてますよね・・・。
翔ちゃんっ!!嫌がられてもここで粘ってっ!
誰が帰ってくるんだろ・・・・・……(-。-) ボソッ
暑さのためだけじゃなくて精神的にもかなりのダメージうけてますよね・・・。
翔ちゃんっ!!嫌がられてもここで粘ってっ!
誰が帰ってくるんだろ・・・・・……(-。-) ボソッ
- |2009.05.04
- |Mon
- |08:51
- |URL
- |EDIT|
柚子季杏 ⇒ そうよねぇーー
マヒロたんからしたら、そういう解釈になっちゃうよねぇ。
でも、説明責任も何も無い翔ちゃんが、どうしてわざわざマヒロたんの元に来たのか、後からでもいいから少しは分かって欲しいなぁ。
翔ちゃんは、バカみたいとか、そんな風に裏で笑うような子じゃないよ??
蒼くんも、デートで浮かれてる場合じゃないっつ~の(´∀`;)
はよ帰ってきんしゃい!!
でも、説明責任も何も無い翔ちゃんが、どうしてわざわざマヒロたんの元に来たのか、後からでもいいから少しは分かって欲しいなぁ。
翔ちゃんは、バカみたいとか、そんな風に裏で笑うような子じゃないよ??
蒼くんも、デートで浮かれてる場合じゃないっつ~の(´∀`;)
はよ帰ってきんしゃい!!
如月久美子 ⇒ >伽羅さん
いつも強気な真大タンを、ここぞとばかりに弱らせてしまいました…!!
体も心もボロボロに…。
翔ちゃんも、もっと寄り添ってあげればいいのに……強く押されると引いてしまう、翔ちゃんの微妙な男心なのでした。
コメントありがとうございました!
体も心もボロボロに…。
翔ちゃんも、もっと寄り添ってあげればいいのに……強く押されると引いてしまう、翔ちゃんの微妙な男心なのでした。
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
事情を知らない真大タンにしたら、そういうふうになっちゃうんですよね。。。
打ち解けてきたとはいえ、真大タンからしたら、翔ちゃんは彼女を奪った憎い人ですし(^_^;)
> 蒼くんも、デートで浮かれてる場合じゃないっつ~の(´∀`;)
> はよ帰ってきんしゃい!!
まったくです!
元はといえば、蒼ちゃんがはっきりしないから…。
早く帰ってこさせないと…!!
コメントありがとうございました!
打ち解けてきたとはいえ、真大タンからしたら、翔ちゃんは彼女を奪った憎い人ですし(^_^;)
> 蒼くんも、デートで浮かれてる場合じゃないっつ~の(´∀`;)
> はよ帰ってきんしゃい!!
まったくです!
元はといえば、蒼ちゃんがはっきりしないから…。
早く帰ってこさせないと…!!
コメントありがとうございました!
りり ⇒ 翔ちゃんホントにいい奴…
真大ちゃんも早く気付いて欲しいなあ。
いい男じゃないか翔ちゃん!
真大ちゃんもね…。凄く好きな人が自分と共通の友達と付き合っていて、だけど自分は知らないでいて、翔ちゃんはしってるくせに黙ってた…て思う惨めで辛くなっちゃったんでしょうね。
真大ちゃん、ホントに好きになってくれる人がきっといるよ、身近に。
そしてどうしても真大ちゃんのこと放っておけない翔ちゃんがやっぱり好きです。
いい男じゃないか翔ちゃん!
真大ちゃんもね…。凄く好きな人が自分と共通の友達と付き合っていて、だけど自分は知らないでいて、翔ちゃんはしってるくせに黙ってた…て思う惨めで辛くなっちゃったんでしょうね。
真大ちゃん、ホントに好きになってくれる人がきっといるよ、身近に。
そしてどうしても真大ちゃんのこと放っておけない翔ちゃんがやっぱり好きです。
如月久美子 ⇒ >りりさん
真大タンは、翔ちゃんに対して良くないイメージの先入観があるせいで、なかなか本当の姿に気付けないんですよね。
失恋のショックも相俟って、心の中はもうグチャグチャです…。
> そしてどうしても真大ちゃんのこと放っておけない翔ちゃんがやっぱり好きです。
苦手意識を持ちつつも、真大タンを放っておけない翔ちゃん。
単なるお人好し、てだけでなければいいんですが…。
コメントありがとうございました!
失恋のショックも相俟って、心の中はもうグチャグチャです…。
> そしてどうしても真大ちゃんのこと放っておけない翔ちゃんがやっぱり好きです。
苦手意識を持ちつつも、真大タンを放っておけない翔ちゃん。
単なるお人好し、てだけでなければいいんですが…。
コメントありがとうございました!