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8月 暑気あたり、気づけば腕の中。 (10)
2009.05.03 Sun
バイトに行く時間になって和衣が出ていって、それからしばらくうだうだと考えていた翔真だったが、ようやく意を決して部屋を飛び出した。
向かうは寮の、真大の部屋。
今まで訪れたことはないが、蒼一郎たちの会話の中から、部屋番号だけは知っていた。
「はぁ…」
重苦しい溜め息が、静かな廊下に響く。
真大の部屋が近付くにつれ、再び翔真はいろいろなことを考え出した。
一体何をしに真大の部屋に行くつもりなのか。
蒼一郎が郁雅と出掛けたこと、知ってたのに黙っててゴメンね? ――――でも、黙っていてくれと言ったのは蒼一郎だ。
2人が付き合ってるの、何となく言っちゃってゴメン? ――――いや、言ったのは和衣だし、しかもこの場合、謝らなければならないとしたら、真大にではなくて、蒼一郎にだ。
真大は蒼一郎のことを好きで、けれどその蒼一郎には郁雅がいる。2人の関係を知らなかったとはいえ、詰まるところこれは、真大の報われない一方的な想いだ。
今回はこんな形で、その事実を知ってしまったけれど、そうでなくてもいつかは知らざるを得ないことで。
こんなこと、恋愛をしていれば誰だって経験しうることで、真大だけが特別なわけではない。
(なのに、俺は何をしに行こうとしているんだ…?)
何となく心に宿るのは、罪悪感。
別に何もしていない、と自分に言い聞かせているのだけれど、重苦しい胸の内が楽にならない。
「真大、いる?」
ノックの後、そっとドアノブを回してみたが、鍵が掛かっている。
ドア越しに窺う部屋の中の気配は静かで、出掛けているのか、居留守を使おうとしているのか、それは分からなかった。
「真大ー」
しつこくノックしても中からは何の反応もなくて、やはりいないのかと、翔真がホッとしたような、ガッカリしたような気持ちで、ドアに背を向けた。
カタリとかすかな物音がしたような気がして、思わず振り返った。
「真大?」
「…何」
静かに開いたドアの隙間から、ひどく不機嫌そうな真大が顔を覗かせた。
「何か用?」
「あ、いや…」
低いその声は、大学で出会ったばかりのころのそれに似ている。
嫌悪感を隠しもしない声。
誤解が解けて、ようやく打ち解けて来て、最近ではここまで冷たく声を掛けられたことはなかったのに。
「あの、ちょっと話でも…」
「何の?」
「いや、えっと…」
出来れば部屋に入れていただきたい。
こんなところで、立ち話でするような内容ではないし、翔真がそういう用件で来ていることくらい、真大だって気付いているはずなのに。
「何?」
「えっと…、部屋、誰かいるの? 出来れば、入れてほしいんだけど…」
「…………」
真大はしばらく何かを考えてから、厳しい表情のままではあったけれど、翔真を部屋に招き入れた。
ムアッと蒸し暑い空気に、翔真は眉を寄せた。
窓は開いているけれど風のない室内は、湿度が高い。
向かうは寮の、真大の部屋。
今まで訪れたことはないが、蒼一郎たちの会話の中から、部屋番号だけは知っていた。
「はぁ…」
重苦しい溜め息が、静かな廊下に響く。
真大の部屋が近付くにつれ、再び翔真はいろいろなことを考え出した。
一体何をしに真大の部屋に行くつもりなのか。
蒼一郎が郁雅と出掛けたこと、知ってたのに黙っててゴメンね? ――――でも、黙っていてくれと言ったのは蒼一郎だ。
2人が付き合ってるの、何となく言っちゃってゴメン? ――――いや、言ったのは和衣だし、しかもこの場合、謝らなければならないとしたら、真大にではなくて、蒼一郎にだ。
真大は蒼一郎のことを好きで、けれどその蒼一郎には郁雅がいる。2人の関係を知らなかったとはいえ、詰まるところこれは、真大の報われない一方的な想いだ。
今回はこんな形で、その事実を知ってしまったけれど、そうでなくてもいつかは知らざるを得ないことで。
こんなこと、恋愛をしていれば誰だって経験しうることで、真大だけが特別なわけではない。
(なのに、俺は何をしに行こうとしているんだ…?)
何となく心に宿るのは、罪悪感。
別に何もしていない、と自分に言い聞かせているのだけれど、重苦しい胸の内が楽にならない。
「真大、いる?」
ノックの後、そっとドアノブを回してみたが、鍵が掛かっている。
ドア越しに窺う部屋の中の気配は静かで、出掛けているのか、居留守を使おうとしているのか、それは分からなかった。
「真大ー」
しつこくノックしても中からは何の反応もなくて、やはりいないのかと、翔真がホッとしたような、ガッカリしたような気持ちで、ドアに背を向けた。
カタリとかすかな物音がしたような気がして、思わず振り返った。
「真大?」
「…何」
静かに開いたドアの隙間から、ひどく不機嫌そうな真大が顔を覗かせた。
「何か用?」
「あ、いや…」
低いその声は、大学で出会ったばかりのころのそれに似ている。
嫌悪感を隠しもしない声。
誤解が解けて、ようやく打ち解けて来て、最近ではここまで冷たく声を掛けられたことはなかったのに。
「あの、ちょっと話でも…」
「何の?」
「いや、えっと…」
出来れば部屋に入れていただきたい。
こんなところで、立ち話でするような内容ではないし、翔真がそういう用件で来ていることくらい、真大だって気付いているはずなのに。
「何?」
「えっと…、部屋、誰かいるの? 出来れば、入れてほしいんだけど…」
「…………」
真大はしばらく何かを考えてから、厳しい表情のままではあったけれど、翔真を部屋に招き入れた。
ムアッと蒸し暑い空気に、翔真は眉を寄せた。
窓は開いているけれど風のない室内は、湿度が高い。
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COMMENT-FORM
柚子季杏 ⇒ 直接対決?!
う~~ん。。。
そうですよねぇ、翔ちゃんの性格じゃそのまま見て見ぬフリは出来ないよなぁ。
意地っ張りなマヒロたん。
んーー心配。
まだ8月、先は長いですねぇ(´∀`;)
そうですよねぇ、翔ちゃんの性格じゃそのまま見て見ぬフリは出来ないよなぁ。
意地っ張りなマヒロたん。
んーー心配。
まだ8月、先は長いですねぇ(´∀`;)
伽羅 ⇒ 翔ちゃん・・・
自分から面倒を背負い込む性質なんですね?(笑)
そこが良い所なんですが、裏返すと、
それだけ真大が気になるってことじゃないのぉ~~~!!(声大)
この2人の今後も気になりますっ!!
先にこの結末を!!(おいっ!)
そこが良い所なんですが、裏返すと、
それだけ真大が気になるってことじゃないのぉ~~~!!(声大)
この2人の今後も気になりますっ!!
先にこの結末を!!(おいっ!)
- |2009.05.03
- |Sun
- |14:30
- |URL
- |EDIT|
如月久美子 ⇒ >柚子季さん
そうなんです。
面倒なことには首を突っ込まなきゃいいのに、それを見て見ぬふり出来ないのが翔ちゃん…。
> 意地っ張りなマヒロたん。
> んーー心配。
> まだ8月、先は長いですねぇ(´∀`;)
はい、そのとおりでございます!!
この2人がホントに和解するまでには……(^_^;)
コメントありがとうございました!
面倒なことには首を突っ込まなきゃいいのに、それを見て見ぬふり出来ないのが翔ちゃん…。
> 意地っ張りなマヒロたん。
> んーー心配。
> まだ8月、先は長いですねぇ(´∀`;)
はい、そのとおりでございます!!
この2人がホントに和解するまでには……(^_^;)
コメントありがとうございました!
如月久美子 ⇒ >伽羅さん
> 自分から面倒を背負い込む性質なんですね?(笑)
> そこが良い所なんですが、裏返すと、
> それだけ真大が気になるってことじゃないのぉ~~~!!(声大)
伽羅さん、ホントに翔ちゃんのことをよく分かってらっしゃるっっ!!!
翔ちゃん的には、何か申し訳ないような気がしないでもない……みたいなつもりでいる気なんですが、たぶん相手が真大タンでなかったら、ここまでしたかな? みたいな…。
でもそこにはまだ気付いてない翔ちゃん…。
> 先にこの結末を!!(おいっ!)
うははは、先に結末!!
確かに読んでるみなさんには、ホントにもどかしいですよね!?
焦らすプレイの如月久美子なんで!! ←今思い付いた
まだ8月ですが(^_^;)
どうぞお待ちくださいませ。
コメントありがとうございました!
> そこが良い所なんですが、裏返すと、
> それだけ真大が気になるってことじゃないのぉ~~~!!(声大)
伽羅さん、ホントに翔ちゃんのことをよく分かってらっしゃるっっ!!!
翔ちゃん的には、何か申し訳ないような気がしないでもない……みたいなつもりでいる気なんですが、たぶん相手が真大タンでなかったら、ここまでしたかな? みたいな…。
でもそこにはまだ気付いてない翔ちゃん…。
> 先にこの結末を!!(おいっ!)
うははは、先に結末!!
確かに読んでるみなさんには、ホントにもどかしいですよね!?
焦らすプレイの如月久美子なんで!! ←今思い付いた
まだ8月ですが(^_^;)
どうぞお待ちくださいませ。
コメントありがとうございました!