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ろくな愛をしらない 04
2008.01.28 Mon
【久住慶太】
春原さんの口から「トモ」という言葉を聞いたときは、本当に卒倒しそうだった。いや、いっそ倒れてしまえれば良かったのかもしれない。
「トモがまた慶太と遊びたいって言ってた」
広い講堂で授業を受けた後、歩と待ち合わせしてる学食に向かおうとしたら、ばったり春原さんと出くわして。
ちょうど次にこの講堂で授業があるらしい。珍しく1人だから、相川さんはどっかでサボってんのかな。
「相川さんが、何て?」
「……また遊びたいって、慶太と」
「俺と? なん……俺と?」
遊ぶって何? 相川さんが言う"遊ぶ"ってさ。
またこの間みたいなことして、俺を困惑させたいの? そんで、冗談だって言って笑いたいの?
「よく分かんないけどさ、何か慶太と仲良くなりたいみたい」
「………………」
仲良くなりたいだって? どういうつもり?
おもしろいおもちゃを見つけたとでも思ってるんだろうか。
あぁそういえば、しきりに俺のことをおもしれぇヤツ、とか言ってたっけ。
「慶太?」
「……あ、いや…」
春原さんの手前、嫌だとか言えないし、かといって、ここでOKして、また相川さんとの場をセッティングされたら…。
「どうして相川さん、急に俺なんか」
「それが俺にもさっぱり。この前、一緒にメシに行ったのが、よっぽど楽しかったのかな」
「俺、相川さんとそんなに話した覚え、ないんですが…」
「俺もそう思うんだけど……まぁ、都合がついたら、また遊ぼうよ」
「…………はぁ、」
春原さん自身も、相川さんが何考えてるのかよく分かんないって感じで。
とりあえずが春原さんの言葉を社交辞令程度にとらえて、俺は曖昧に返事をしておいた。
"あの"日から何日も経って、俺もそれなりに忙しいし、春原さんも忙しいし、相川さんも忙しいみたいで("何"でとはあえて言わないけど)、春原さんが俺に言った言葉が実現することはなかった。
人間の記憶なんて便利に出来ていて、あんなに苦しく思っていたことも、日々に忙殺されて徐々に忘れていくもんだ。
あのとき相川さんが言ったみたいに、あの日のこと全部が冗談なんだって思えるような気がした。
全部冗談。
俺と相川さんの間には何もなかったんだって。
いっそあの日のこと全部が夢なのかもしれない。
「慶太ー、最近ちゃんと寝てるー?」
学生会室のソファのとこでグダグダしてたら、隣に歩がやって来た。
「寝てるよ。何、急に」
「いや、何かちょっと前まで、調子悪そうだったじゃん。目の下、クマとか作っちゃって」
「あー…」
やっぱ友だちなだけある。
歩は意外と面倒見のいいキャラだし、見てないようで結構いろいろ見ててくれる。
学生会室で真琴のこと怒鳴っちゃったってのもあるけど、それだけじゃなくて、このところ、さりげなく歩が気を遣ってくれてるの、分かってる。
「……ちょっと、疲れてたのかも」
いっそ、歩にでも相談してみようかとも思った。
でも、何て言う? 冗談で相川さんに襲われ掛けたんだけどー……って、歩の胃に穴が開いちゃうよ。
何も言わなくていい。
あのときのことは、静かにゆっくりと俺の記憶の中から消えていく。
もう元気だし、誰にも心配なんかかけない。真琴とだって相変わらずだし。
「拓海、ケータイ鳴ってるよー」
心地よさに任せて歩に寄り掛かってたら、テーブルの上の携帯電話が震えた。カバンにも入れずにその辺に放り出してるのは、たいてい春原さんか高遠さんしかいない。
機種から俺もそれが春原さんの携帯電話だって分かったけど、あれ以来、何となく自分から春原さんに声を掛けるのがしんどくて、黙ってた。
呼ばれてやって来た春原さんは、携帯電話のディスプレイを見ると、眉を顰めた。嫌な相手なのかな、とも思ったけど、春原さんは学生会室の外に出ることもなく、その場で電話に出た。
春原さんの電話の相手に興味はないし、何だかちょっと眠くて、俺は目を閉じる。すぐにふわふわしたような感じになって、電話する春原さんの声が遠くなった。
―――――けど。
「もしもし? いや、まだ学校だけど、え? 今日? いや、これが終れば何もないけど…………あぁ、いいよ。え? 慶太? 一緒だけど」
え?
春原さんと電話越しの相手の会話の中に俺の名前が出てきた瞬間、ハッと意識が戻って来た。
確かに"慶太"って言った。
いや、春原さんの友だちの中にそう呼ばれてるヤツがいるのかもしれないけど、その後に『一緒だけど』って言ったってことは、その"慶太"って、俺のこと?
「んー……聞いてみるけどー…………慶太ー、あれ? 寝てる?」
やっぱり俺のことだ。
どうしよう、寝たふりを続けようか。
「慶太?」
歩が少し体を動かす。
どうしよう、これ以上うまく寝たふりなんかできない体勢なんですが…。
「…………何ですか?」
仕方なく、今起きたふうな感じで顔を上げた。
「ねぇ慶太、今日これ終わった後、何か予定ある?」
「え? いや、別にないですけど…」
「じゃあさぁ、終わったらメシ食いに行かね?」
「あ、はぁ、いいですよ」
「トモがさぁ、慶太のことも誘えって、言うから」
「え?」
トモが。
―――トモ。
「なっ…ちょっ」
断ろうとしたときにはもう、春原さんは電話の向こうの相川さんに、「慶太もいいってー」と答えた後で。
慌てたって、後の祭り。
春原さんはもう電話を切っていた…。
「え? 都合悪かった?」
「あ、いや…」
どうしよう、今さら断る理由が思い浮かばない。
「いいなぁー俺も行きたい!」
そう言い出した歩が救いの手を差し伸べているように思えたのに、
「でも俺、この後、教授のとこ行かなきゃだった…」
ホンット、役立たず!
春原さんの口から「トモ」という言葉を聞いたときは、本当に卒倒しそうだった。いや、いっそ倒れてしまえれば良かったのかもしれない。
「トモがまた慶太と遊びたいって言ってた」
広い講堂で授業を受けた後、歩と待ち合わせしてる学食に向かおうとしたら、ばったり春原さんと出くわして。
ちょうど次にこの講堂で授業があるらしい。珍しく1人だから、相川さんはどっかでサボってんのかな。
「相川さんが、何て?」
「……また遊びたいって、慶太と」
「俺と? なん……俺と?」
遊ぶって何? 相川さんが言う"遊ぶ"ってさ。
またこの間みたいなことして、俺を困惑させたいの? そんで、冗談だって言って笑いたいの?
「よく分かんないけどさ、何か慶太と仲良くなりたいみたい」
「………………」
仲良くなりたいだって? どういうつもり?
おもしろいおもちゃを見つけたとでも思ってるんだろうか。
あぁそういえば、しきりに俺のことをおもしれぇヤツ、とか言ってたっけ。
「慶太?」
「……あ、いや…」
春原さんの手前、嫌だとか言えないし、かといって、ここでOKして、また相川さんとの場をセッティングされたら…。
「どうして相川さん、急に俺なんか」
「それが俺にもさっぱり。この前、一緒にメシに行ったのが、よっぽど楽しかったのかな」
「俺、相川さんとそんなに話した覚え、ないんですが…」
「俺もそう思うんだけど……まぁ、都合がついたら、また遊ぼうよ」
「…………はぁ、」
春原さん自身も、相川さんが何考えてるのかよく分かんないって感じで。
とりあえずが春原さんの言葉を社交辞令程度にとらえて、俺は曖昧に返事をしておいた。
"あの"日から何日も経って、俺もそれなりに忙しいし、春原さんも忙しいし、相川さんも忙しいみたいで("何"でとはあえて言わないけど)、春原さんが俺に言った言葉が実現することはなかった。
人間の記憶なんて便利に出来ていて、あんなに苦しく思っていたことも、日々に忙殺されて徐々に忘れていくもんだ。
あのとき相川さんが言ったみたいに、あの日のこと全部が冗談なんだって思えるような気がした。
全部冗談。
俺と相川さんの間には何もなかったんだって。
いっそあの日のこと全部が夢なのかもしれない。
「慶太ー、最近ちゃんと寝てるー?」
学生会室のソファのとこでグダグダしてたら、隣に歩がやって来た。
「寝てるよ。何、急に」
「いや、何かちょっと前まで、調子悪そうだったじゃん。目の下、クマとか作っちゃって」
「あー…」
やっぱ友だちなだけある。
歩は意外と面倒見のいいキャラだし、見てないようで結構いろいろ見ててくれる。
学生会室で真琴のこと怒鳴っちゃったってのもあるけど、それだけじゃなくて、このところ、さりげなく歩が気を遣ってくれてるの、分かってる。
「……ちょっと、疲れてたのかも」
いっそ、歩にでも相談してみようかとも思った。
でも、何て言う? 冗談で相川さんに襲われ掛けたんだけどー……って、歩の胃に穴が開いちゃうよ。
何も言わなくていい。
あのときのことは、静かにゆっくりと俺の記憶の中から消えていく。
もう元気だし、誰にも心配なんかかけない。真琴とだって相変わらずだし。
「拓海、ケータイ鳴ってるよー」
心地よさに任せて歩に寄り掛かってたら、テーブルの上の携帯電話が震えた。カバンにも入れずにその辺に放り出してるのは、たいてい春原さんか高遠さんしかいない。
機種から俺もそれが春原さんの携帯電話だって分かったけど、あれ以来、何となく自分から春原さんに声を掛けるのがしんどくて、黙ってた。
呼ばれてやって来た春原さんは、携帯電話のディスプレイを見ると、眉を顰めた。嫌な相手なのかな、とも思ったけど、春原さんは学生会室の外に出ることもなく、その場で電話に出た。
春原さんの電話の相手に興味はないし、何だかちょっと眠くて、俺は目を閉じる。すぐにふわふわしたような感じになって、電話する春原さんの声が遠くなった。
―――――けど。
「もしもし? いや、まだ学校だけど、え? 今日? いや、これが終れば何もないけど…………あぁ、いいよ。え? 慶太? 一緒だけど」
え?
春原さんと電話越しの相手の会話の中に俺の名前が出てきた瞬間、ハッと意識が戻って来た。
確かに"慶太"って言った。
いや、春原さんの友だちの中にそう呼ばれてるヤツがいるのかもしれないけど、その後に『一緒だけど』って言ったってことは、その"慶太"って、俺のこと?
「んー……聞いてみるけどー…………慶太ー、あれ? 寝てる?」
やっぱり俺のことだ。
どうしよう、寝たふりを続けようか。
「慶太?」
歩が少し体を動かす。
どうしよう、これ以上うまく寝たふりなんかできない体勢なんですが…。
「…………何ですか?」
仕方なく、今起きたふうな感じで顔を上げた。
「ねぇ慶太、今日これ終わった後、何か予定ある?」
「え? いや、別にないですけど…」
「じゃあさぁ、終わったらメシ食いに行かね?」
「あ、はぁ、いいですよ」
「トモがさぁ、慶太のことも誘えって、言うから」
「え?」
トモが。
―――トモ。
「なっ…ちょっ」
断ろうとしたときにはもう、春原さんは電話の向こうの相川さんに、「慶太もいいってー」と答えた後で。
慌てたって、後の祭り。
春原さんはもう電話を切っていた…。
「え? 都合悪かった?」
「あ、いや…」
どうしよう、今さら断る理由が思い浮かばない。
「いいなぁー俺も行きたい!」
そう言い出した歩が救いの手を差し伸べているように思えたのに、
「でも俺、この後、教授のとこ行かなきゃだった…」
ホンット、役立たず!
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けんじ ⇒
イチゴ ⇒ だめです…!
さいつき ⇒
慶太くんこのあとどうなっちゃうの?!
ピンチなの?慶太くん!
それともチャンスですか?相川さん!
くふふ・・・笑いがとまりませんvvv
なにが起こるか楽しみ♪うふふふふ〃
ピンチなの?慶太くん!
それともチャンスですか?相川さん!
くふふ・・・笑いがとまりませんvvv
なにが起こるか楽しみ♪うふふふふ〃
如月久美子 ⇒ >けんじさん
如月久美子 ⇒ >イチゴさん
歩くんは、慶太くんの一番の友だちなのに、肝心なときに全然役に立てないんですよ。
実はいつもそうなんです (爆)
慶太くんのピンチはまだまだ続きます ←鬼か!
実はいつもそうなんです (爆)
慶太くんのピンチはまだまだ続きます ←鬼か!