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その手なら離さないでね (5)
2016.07.26 Tue
「え?」
睦月の役目は、泣きじゃくる迷子の子どもを、お店の人に預けるところまでのはずだ。誰が決めたわけでもないが、一般的に言って、そういうものだろう。
だから今だって、店員さんにこの子を渡さなければと思うのに、その小さな手が、睦月のシャツをギュッと握り締めて離さないのだ。
睦月がその子の両脇に手を入れて、高い高いするときみたいに持ち上げようとしても、離す気配はなく、ただ睦月のシャツが引っ張られて伸びるだけだった。
「えーっと…」
さっきは散々泣き喚いていたのに、いつの間にか子どもは泣き止んでいる。
もしかして睦月が抱っこしてダッシュしたのがおもしろくて、機嫌が直ったのだろうか。それは有り難いけれど、手を離してもらわないことには…。
「手を…」
先ほどのように、声を掛けただけで泣かれたのでは堪らない、と睦月は恐る恐るその子に話し掛けようとしたが、その子が真っ直ぐに睦月を見つめていたせいで、言葉を詰まらせてしまった。
いや、だって、そんな…、何でその子が睦月のことをそんなに見つめているのか、分からない…。
「ぼくー、お名前は何ていうの?」
館内放送でこの子の名前や特徴をアナウンスし、母親に来てもらうという手筈なのだろう。そのためには、より多くの情報があったほうがいいに決まっている。
しかし子どもは一瞥した後、プイと反対のほうを向いてしまった。
「………………」
もし睦月がこの店員さんの立場だったら、怒り出しはしないが、ムッとした表情くらいにはなったはずだが、さすがに客商売をしているだけあって、店員さんは困ったように眉を下げただけで、その表情に苛立ちはない。どちらかというと、睦月に対して申し訳なさそうな顔をしているくらいだ。
「とりあえず、特徴だけでも放送する?」
先ほどまでレジをしていた店員さんが、そばにやって来た。並んでいた客が捌けたようだ。
「でも、呼び出して、来てもらうの、サービスカウンターのほうが分かりやすいよね?」
「んー…」
2人の女性店員は、困ったように顔を見合わせる。
早く迷子のアナウンスしたいけれど、迎えに来てもらう場所はここよりもサービスカウンターのほうが分かりやすいから、この子をサービスカウンターに連れて行きたいものの、この子がまったく睦月から離れようとしないから、なす術をなくしたのだ。
こういうときは、睦月が『一緒に行きましょうか?』と声を掛けたほうがいいのかもしれない。立場上、無関係の客に対して言い出せないだけで、きっと彼女たちもそれを望んでいるに違いないし。
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睦月の役目は、泣きじゃくる迷子の子どもを、お店の人に預けるところまでのはずだ。誰が決めたわけでもないが、一般的に言って、そういうものだろう。
だから今だって、店員さんにこの子を渡さなければと思うのに、その小さな手が、睦月のシャツをギュッと握り締めて離さないのだ。
睦月がその子の両脇に手を入れて、高い高いするときみたいに持ち上げようとしても、離す気配はなく、ただ睦月のシャツが引っ張られて伸びるだけだった。
「えーっと…」
さっきは散々泣き喚いていたのに、いつの間にか子どもは泣き止んでいる。
もしかして睦月が抱っこしてダッシュしたのがおもしろくて、機嫌が直ったのだろうか。それは有り難いけれど、手を離してもらわないことには…。
「手を…」
先ほどのように、声を掛けただけで泣かれたのでは堪らない、と睦月は恐る恐るその子に話し掛けようとしたが、その子が真っ直ぐに睦月を見つめていたせいで、言葉を詰まらせてしまった。
いや、だって、そんな…、何でその子が睦月のことをそんなに見つめているのか、分からない…。
「ぼくー、お名前は何ていうの?」
館内放送でこの子の名前や特徴をアナウンスし、母親に来てもらうという手筈なのだろう。そのためには、より多くの情報があったほうがいいに決まっている。
しかし子どもは一瞥した後、プイと反対のほうを向いてしまった。
「………………」
もし睦月がこの店員さんの立場だったら、怒り出しはしないが、ムッとした表情くらいにはなったはずだが、さすがに客商売をしているだけあって、店員さんは困ったように眉を下げただけで、その表情に苛立ちはない。どちらかというと、睦月に対して申し訳なさそうな顔をしているくらいだ。
「とりあえず、特徴だけでも放送する?」
先ほどまでレジをしていた店員さんが、そばにやって来た。並んでいた客が捌けたようだ。
「でも、呼び出して、来てもらうの、サービスカウンターのほうが分かりやすいよね?」
「んー…」
2人の女性店員は、困ったように顔を見合わせる。
早く迷子のアナウンスしたいけれど、迎えに来てもらう場所はここよりもサービスカウンターのほうが分かりやすいから、この子をサービスカウンターに連れて行きたいものの、この子がまったく睦月から離れようとしないから、なす術をなくしたのだ。
こういうときは、睦月が『一緒に行きましょうか?』と声を掛けたほうがいいのかもしれない。立場上、無関係の客に対して言い出せないだけで、きっと彼女たちもそれを望んでいるに違いないし。
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