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その手なら離さないでね (6)
2016.07.27 Wed
睦月は子どもに視線を移した。
彼はまだ、まっすぐに睦月を見ていた。そんなにじっくり見たいと思うような顔だろうか。普通の顔だと、自分では思っている。少なくとも、子どもがそんなに興味を示すほど、特徴的な顔だとは思わない。
「サービスカウンターまで…、一緒に行きましょうか?」
相手は店員さんで、睦月よりも年上の女性だ。睦月が声を掛けたくらいで、もちろん泣くことはなくて、むしろ睦月にそう言ってもらってホッとした様子だったのだが、知らない人に声を掛けるのは、睦月にとっては一苦労だ。
「ありがとうございます」
最初に応対をしてくれたほうの店員さんが、一緒にサービスカウンターへ行くこととなった。店員さんが一緒なら、誘拐犯と間違われることはないから、睦月はいくらか安心していられる。
睦月は店員さんの後に続きながら、腕の中の子どもに視線を落とす。静かになったから寝たのかと思ったのに、しっかり起きていたし、やっぱりまだ睦月のことをジッと見ていた。
『俺の顔に何か付いてる?』と聞いてみたかったけれど、下手に話し掛けて、また泣かれても困るので、睦月は黙っていた。
サービスカウンターに到着すると、店員さんが、サービスカウンターにいるお姉さんに事情を説明している。ひとまず服装などの特徴だけでもアナウンスしようという言葉と、念のためもう1度名前を聞いてみようという言葉が聞こえて来る。
名前くらい答えろよ、と睦月は思うが、もし睦月がこの子どもの立場だったら、絶対に言わない。だって知らない人と話をするなんて、無理過ぎる。
「ぼく、お名前は何ていうのかなー?」
今度はサービスカウンターのお姉さんが、少し身を屈めて目線を合わせて尋ねた。
その声に反応して、子どもはお姉さんのほうは見たけれど返事はしてくれない。でも、さっきまでは見向きもしなかった…というより、反対を向いてしまったくらいだから、少しは進歩があったのかも。
よし、このまま喋っちゃえ! と睦月は心の中で念じたものの、子どもはお姉さんをジッと見たまま口を噤んでいる。そんなに喋りたくないか! まるで睦月のようだ。
「お姉さんに、お名前、教えてくれないかな?」
「………………上原、睦月」
「え?」
笑顔を崩さずに再度尋ねて来たお姉さんに答えたのは、子どもではなく睦月だった。
当然、お姉さんは『え?』という反応をする。本当は『は?』と言いたかったのかもしれないが、そこは接客のプロだから、『え?』に留めておいたのだろう。
「えっと…」
「俺は、上原睦月」
お姉さんが何か言おうとしたのを、聞こえないふりで遮って、睦月はもう1度自分の名前を答えた。
いや、答えたというか、別にお姉さんの質問に代わりに答えたわけではなくて、この子が何にも言わないから、睦月が何か喋ったら、真似してくれるかなぁ、と思って言ってみたのだ。
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彼はまだ、まっすぐに睦月を見ていた。そんなにじっくり見たいと思うような顔だろうか。普通の顔だと、自分では思っている。少なくとも、子どもがそんなに興味を示すほど、特徴的な顔だとは思わない。
「サービスカウンターまで…、一緒に行きましょうか?」
相手は店員さんで、睦月よりも年上の女性だ。睦月が声を掛けたくらいで、もちろん泣くことはなくて、むしろ睦月にそう言ってもらってホッとした様子だったのだが、知らない人に声を掛けるのは、睦月にとっては一苦労だ。
「ありがとうございます」
最初に応対をしてくれたほうの店員さんが、一緒にサービスカウンターへ行くこととなった。店員さんが一緒なら、誘拐犯と間違われることはないから、睦月はいくらか安心していられる。
睦月は店員さんの後に続きながら、腕の中の子どもに視線を落とす。静かになったから寝たのかと思ったのに、しっかり起きていたし、やっぱりまだ睦月のことをジッと見ていた。
『俺の顔に何か付いてる?』と聞いてみたかったけれど、下手に話し掛けて、また泣かれても困るので、睦月は黙っていた。
サービスカウンターに到着すると、店員さんが、サービスカウンターにいるお姉さんに事情を説明している。ひとまず服装などの特徴だけでもアナウンスしようという言葉と、念のためもう1度名前を聞いてみようという言葉が聞こえて来る。
名前くらい答えろよ、と睦月は思うが、もし睦月がこの子どもの立場だったら、絶対に言わない。だって知らない人と話をするなんて、無理過ぎる。
「ぼく、お名前は何ていうのかなー?」
今度はサービスカウンターのお姉さんが、少し身を屈めて目線を合わせて尋ねた。
その声に反応して、子どもはお姉さんのほうは見たけれど返事はしてくれない。でも、さっきまでは見向きもしなかった…というより、反対を向いてしまったくらいだから、少しは進歩があったのかも。
よし、このまま喋っちゃえ! と睦月は心の中で念じたものの、子どもはお姉さんをジッと見たまま口を噤んでいる。そんなに喋りたくないか! まるで睦月のようだ。
「お姉さんに、お名前、教えてくれないかな?」
「………………上原、睦月」
「え?」
笑顔を崩さずに再度尋ねて来たお姉さんに答えたのは、子どもではなく睦月だった。
当然、お姉さんは『え?』という反応をする。本当は『は?』と言いたかったのかもしれないが、そこは接客のプロだから、『え?』に留めておいたのだろう。
「えっと…」
「俺は、上原睦月」
お姉さんが何か言おうとしたのを、聞こえないふりで遮って、睦月はもう1度自分の名前を答えた。
いや、答えたというか、別にお姉さんの質問に代わりに答えたわけではなくて、この子が何にも言わないから、睦月が何か喋ったら、真似してくれるかなぁ、と思って言ってみたのだ。
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